説明

金属ロジュウムと金属レニュウムの合金を、電解技術を用いて、造られる合金薄膜を、提供する。

【課題】高感度の電気伝導度を必要とし、ON−OFFの反復回数の激しい接点のスパークによる、接点面の損傷及び酸化等による劣化を防止する為に、その耐久性の向上を目的として、前記接点部に施工される電解ロジュウムめっきに関して、改良されたRh−Re合金めっき浴および合金めっき被膜を提供する。
【解決手段】Rhめっき浴にReを添加したRh−Re合金めっき浴組成とし、当該めっき浴から電解により合金比率Rh:Reが1.0:0.1〜1.0、かつ膜厚が0.1〜10.0ミクロンとなるRh−Re合金めっき薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ロジュウムと、同じく金属レニュウムをイオン化した溶液を用いて、電解技術により、ロジュウム・レニュウムの二元合金の、0.1ミクロン〜10.0ミクロンの厚みを有する薄膜を、提供する。
【背景技術】
【0002】
パソコンを初めとし、家庭用電気機器、自動車のオートマチック機器等に、多数用いられているリード・スイッチの、接点部は、現在、激しいON−OFFの反復作動に、耐える為に,膜厚2.0〜5.0μのロジュウムめっきを施工し、ON=OFFに際して生じる、電気スパークによる高温と機械的消耗に耐えている。
【0003】
近年では,同スイッチのON−OFFの反復回数・通電電流の容量が大きくなり、ロジュウム膜の耐摩耗性・耐スパーク性の改良が望まれている。
【0004】
その為に、現在では、ロジュウム被膜の上に,ルテニュウム、又はイリジュウムの、めっきを施工する手段が用いられているが、これ等のめっきが未だ完全とはいえず、また、コスト面でも、マイナス要因となっている。
【0005】
本発明は、上記の欠点を解除する為に、金属表面技術を用いて、ロジュウムRh・レニュウムReの合金めっき被膜を形成し、この分野の電気接点に対応する性能の改善を試みた。
【0006】
また、本発明によるRh−Re合金被膜は、独特の青味を持った銀白色の色調を呈するので、その合金比率を、変動する事により、青銀白色から,青灰色と、色調の変動が出来、時計など装飾品の表面処理にも応用される。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
りーど・スイッチの接点部は、電流のON−OFFの作動時に、スパークを発生する為に、ピン・ポイントで、高温度になり、此れが連続反復を繰り返す為に、接点部表面の温度が上昇し、通常の接点部のように、銅又は、その合金に、金めっきを施工した程度では、忽ち、接点の表面が、スパークにより、飛散したり、溶解又は、酸化し、本来の機能の働きを、損ねてしまう。
【0008】
その為に、リード・スイッチの場合は、接点部を、ガラス管の中に封入して、ガラス管の中を、真空又は、不活性ガスを充満し、酸化防止を行っている。
【0009】
更に、ON−OFFによる、発熱による消耗を、防止する為に、融点の高い、金属を、接点部に被服する必要がある。
【課題を解決する手段】
【0010】
現在、リード・スイッチの接点部には、一般には、2〜5ミクロンのロジュウムめっきを施工している。用途によっては、その被膜の上に、更に、ルテニュウム或いは、イリジュウムのめっきを重ねて、その耐熱特性の向上を図っている。併し、この方法では、製作工程の、複雑さと、製品のコスト高が回避できない。
【0011】
課題を解決する手段として、本発明は、ロジュウムに対し、更に高融点で且つ、硬度を有し、更に、コスト・ダウンの期待が持てる金属を選択し、此れを、金属ロジュウムと、同一溶液中で、合金として、電解析出させ、所定の性能を保持した金属薄膜を提供する事を、開発した。
【0012】
本発明では、金属ロジュウムと共析して、金属ロジュウムの特性を更に向上させる事に期待できる金属として、原子番号75のレニュウムReを採用した。
【0013】
金属レニュウムは、融点3180℃であり、この数値は、タングステン(W)に次ぐ、現在地球上で、発見されている金属で、2番目である。
【0014】
又、電解を行う時の、分解電位が、ロジュウムと近い値なので、合金めっきとして適合していると判断した。
【発明を実施する最良の形態】
【0015】
以下、本発明の、電解析出による、合金薄膜の製法について、実姉例により、具体的に説明する。
【実姉例1】
【0016】
ロジュウムめっきの母体となるめっき液として、硫酸ロジュウム浴を採用る。
硫酸ロジュウムよくは、金属分2g/Lに相当するりゅうさんロジュウム伝導補助として硫酸を加え、トータル酸量として硫酸50g/Lを含有する電解液を調整した。
【0017】
レニュウムは、比較的容易に入手できる、過レニュウム酸アンモンを用いた。
同塩は、金属レニュウム分69.4%を含有する。
(Re/NHReO)=(186.2/268.24)=0.6945=69.45%
【0018】
純度99.9%の過レニュウム酸アンモンを、2.882g精秤し、純水100mlに投入する。純水中には、予め0.5mlの硫酸を加えておき、レニュウム塩の溶解を容易にした。
この溶液は、金属レニュウム2.0g/100mlの溶液となる。
【0019】
0016項で表示した硫酸ロジュウムめっき浴に、0018項のレニュウム溶液加え、Rh:Re=2.0:0.1〜2.0まで、段階的に添加し,各比率に於ける電解析出を、観察した。
【0020】
電解条件としては、通常のロジュウム単体のめっき浴の条件に準じて行った。通常のロジュウムめっきの場合の電流密度を印加した場合にはRh−Reの含有比率を、Rh10:Re1にした場合に、析出被膜は、Rh単体の析出より、黒味を帯びた灰白色を呈し、明らかに、Rh−Reの共析被膜である事が確認された。
【0021】
電解条件を一定にし、浴中のRh:REの含有比率を10:1から10:5まで、少しずつ変動した結果、Reの増加にしたがって、析出被膜の色調は、灰黒色が濃くなって来る事が確認された。
【0022】
Rh:Reの合金比率は、(10:1)〜(10:2)の範囲で、光沢のある青味を帯びた灰黒色の被膜が形成され、耐摩耗性も、Rh単体の被膜と同等の物が得られた。
【実施例2】
【0023】
りーど・スイッチ等、工業的に、利用される場合は、通常は2〜5ミクロンの膜厚が要求されているので、厚付け用として、燐酸浴のめっき液を用いた。
金属分3g/L;遊離燐酸70〜120gの基本液に、過レニュウム酸アンモンを溶解し、添加して、燐酸錯塩型のRh−Reの合金めっき浴を造り、電解析出のテストを行った。
【0024】
同めっき浴でも、硫酸浴と、同様の光沢のある青灰黒色の被膜が得られた。
電解条件は、Rh単体の厚付け燐酸ロジュウム浴と同様の条件で、目的の膜厚(2〜5ミクロン)の被膜が得られた。
【0025】
同被膜は、5ミクロンの膜厚でも、マイクロクラックを生ぜず、良好な合金組成の被膜として、電気接点、及び、その他の耐熱性、耐摩耗性を必要とする部品の表面被服に対応できる事が、確認された。
【0026】
析出被膜のRh:Reの合金の含有比率は、I.C.P.で測定した結果、モル比で、Rh(70%)Re(30%)の値が、確認された。
I.C.P.に依る測定グラフを参考に、提示する。
【蚕業上の利用】
【0027】
リードスイッチ用端子に応用する為に、52アロイ(52%ニッケル含有スチール)素材に,然るべき、脱脂、表面活性の工程を経て、その表面に純金めっきを、1ミクロンめっき施工を行い、次いで、本発明の、Rh−Re合金のめっきを、燐酸浴を用いて、2ミクロン、及び5ミクロンの二段階のめっきを行い、実用試験に供し、好結果をえた。
【0028】
装飾品に対しては、本発明の硫酸酸性浴の同Rh−Re合金めっきを0.1〜0.5ミクロン厚さに、ネックレス、指輪、ペンダントに被服して、実用に供した。 これ等は、いずれも、耐摩耗性に優れた、明るい光沢を持った、青灰色の美麗な装飾品として、評価された。
いずれも、従来の、ロジュウムめっき品と、遜色ない耐久性を持った被膜として、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】Rh−Reの薄膜中に於ける、両合金々属の成分比をICPX線強度分析により得たグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度の、耐熱性、耐摩耗性、耐食性、電気伝導性および、硬度を保持し、且つ、銀白色から、青色を帯びたグレイ色の色調を呈する、電解析出により、提供される金属ロジュウムと同じく金属レニュウムの、合金比率(1.0:0.1〜1.0)の、膜厚0.1〜10.0ミクロンを有する合金薄膜に関する。
【請求項2】
所定の素材に、その表面に、活性処理、及び下地めっきを、施工した上に、合金比率(Rh.1.0:Re.0.1〜1.0)の、ロジュウムと、レニュウムの、合金薄膜を、0.5〜10.0ミクロンの厚さに、電解析出により形成された、電気接点及び、その他の工業用部材。
【請求項3】
真鍮、及び、銅合金、ステンレス鋼、銀、金及び、その合金で造られた、腕時計側、装飾品等、身辺細貨の表層に、請求項1 と同様の合金比率の、ロジュウム・レニュウムの合金薄膜を、電解析出により被服したもの。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263759(P2009−263759A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133629(P2008−133629)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(505255046)共栄メタル株式会社 (2)
【出願人】(501021243)
【Fターム(参考)】