説明

金属付着物の除去方法、基板処理装置、および記録媒体

【課題】有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる金属付着物の除去方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】金属付着物の除去方法は、金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器の内部に付着した金属付着物を昇華させるように、前記処理容器内部の温度と、前記処理空間の圧力とを、制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物により基板処理を行う基板処理方法、当該基板処理方法を用いた半導体装置の製造方法、有機化合物により基板処理を行う基板処理装置、および当該基板処理装置を動作させるプログラムが記載された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高性能化に伴い、半導体装置の配線材料として抵抗値の小さいCuを用いることが広く普及してきている。しかし、Cuは酸化されやすい性質を有しているため、例えばダマシン法によってCuの多層配線構造を形成する工程において、層間絶縁膜から露出したCu配線が酸化してしまう場合がある。このため、酸化されたCuを還元により除去するため、NHやHなどの還元性を有するガスが用いられる場合があった。
【0003】
しかし、NHやHを用いた場合には、Cuの還元処理の処理温度を高くする必要があったため、Cu配線の周囲に形成されている、いわゆるLow−k材料よりなる層間絶縁膜にダメージが生じる懸念があった。そのため、例えば蟻酸や酢酸などのカルボン酸を気化して処理ガスとして用いることで,Cuの還元を200℃程度の低温で行うことが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3373499号公報
【特許文献2】特開2006−216673号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】David R. Lide (ed) CRC Handbook of Chemistry and Physics, 84th Edition
【非特許文献2】E. Mack et al., J. Am. Chem. Soc., 617, (1923)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蟻酸や酢酸などの有機化合物による還元処理では、Cuの一部は金属有機化合物錯体として昇華することでエッチングされる場合があった。更に昇華した金属有機化合物は、被処理基板を処理する処理空間で熱分解し、処理空間を画成する処理容器の内壁面や被処理基板を保持する保持台などの処理容器内部にCuが付着する場合があった。
【0007】
また、付着したCuは、再び蟻酸や酢酸などによりエッチングされて被処理基板に再付着してしまう懸念があった。このように、Cuが被処理基板に再付着すると、製造される半導体装置の特性が劣化してしまう懸念があった。
【0008】
そこで、本発明では、上記の問題を解決した、新規で有用な基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、および記録媒体を提供することを統括的課題としている。
【0009】
本発明の具体的な課題は、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる金属付着物の除去方法と、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる基板処理装置、および当該基板処理装置を動作させるプログラムが記載された記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点では、上記の課題を、金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器の内部に付着した金属付着物を昇華させるように、前記処理容器の温度と、前記処理空間の圧力とを、制御することを特徴とする金属付着物の除去方法により、解決する。
【0011】
当該金属付着物の除去方法によれば、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能になる。
【0012】
本発明の第2の観点では、上記の課題を、金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器と、前記被処理基板を保持する保持台と、前記処理空間への有機化合物を含む処理ガスの供給を制御するガス制御手段と、前記処理容器内の圧力を制御する圧力制御手段と、金属が付着した処理容器内壁面と保持台の少なくともいずれかの温度を制御する温度制御手段と、を有する基板処理装置であって、前記被処理基板が前記処理容器内に収容されていない状態で、前記処理ガスが前記処理容器内への供給を停止するように前記ガス制御手段が制御され、かつ前記圧力制御手段と前記温度制御手段とが、前記処理容器内壁面もしくは前記保持台に付着した金属付着物を昇華させるように制御されることを特徴とする基板処理装置により、解決する。
【0013】
当該基板処理装置によれば、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる。
【0014】
本発明の第3の観点では、上記の課題を、金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器と、前記被処理基板を保持する保持台と、前記処理空間への有機化合物を含む処理ガスの供給を制御するガス制御手段と、前記処理容器内の圧力を制御する圧力制御手段と、金属が付着した処理容器内壁面と保持台の少なくともいずれかの温度を制御する温度制御手段と、を有する基板処理装置に、コンピュータにより金属付着物の除去方法を動作させるプログラムを記録した記録媒体であって、前記金属付着物の除去方法は、金属付着物を昇華させるように、前記処理容器内壁面もしくは前記保持台の温度と、前記処理容器の圧力とを、制御することを特徴とする記録媒体により、解決する。
【0015】
当該記録媒体によれば、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる金属付着物の除去方法と、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる基板処理装置、および当該基板処理装置を動作させるプログラムが記載された記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1による基板処理方法を示すフローチャートである。
【図2】図1の基板処理に用いる基板処理装置の一実施例を示すである。
【図3】図1の基板処理に用いる基板処理装置の他の実施例を示す図である。
【図4】図1の基板処理に用いる基板処理装置の他の実施例を示す図である。
【図5】固体CuとCuOの蒸気圧を比較する図である。
【図6】CuOの平衡酸素濃度を示す図である。
【図7】図1の基板処理に用いる基板処理装置の他の実施例を示す図である。
【図8】図1の基板処理に用いる基板処理装置の他の実施例を示す図である。
【図9】図1の基板処理に用いる基板処理システムの全体構成を示す図である。
【図10】被処理基板からの脱離ガスを調べた結果を示す図である。
【図11】金属層上に形成された酸化銅厚さと、処理によって揮発するCu検出量を調べた結果を示す図である。
【図12】除去された膜の膜厚を調べた結果を示す図である。
【図13】基板処理装置の変形例を示す図である。
【図14】基板処理装置のさらなる変形例を示す図である。
【図15A】実施例3による半導体装置の製造方法を示す図(その1)である。
【図15B】実施例3による半導体装置の製造方法を示す図(その2)である。
【図15C】実施例3による半導体装置の製造方法を示す図(その3)である。
【図15D】実施例3による半導体装置の製造方法を示す図(その4)である。
【図15E】実施例3による半導体装置の製造方法を示す図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態に関して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1による基板処理方法を示すフローチャートである。
【0020】
図1を参照するに、まず、ステップ1(図中S1と表記、以下同じ)において、表面が酸化されて金属酸化膜が形成された金属層(例えば金属配線など)を有する被処理基板を、処理容器内の所定の処理空間に配置し、被処理基板が第1の温度となるように制御(設定)する。ここで、処理容器内(処理空間)に、蟻酸等の有機化合物ガスを導入し、被処理基板上の金属層表面に有機化合物を吸着させて金属錯体(金属有機化合物錯体)を形成する。
【0021】
上記のステップ1では、形成される金属有機化合物錯体の昇華を抑制するために、被処理基板の温度を低温にすることが好ましい。例えば、上記の第1の温度は、金属有機化合物錯体の蒸気圧が処理空間の圧力よりも低くなる温度とされることが好ましい。
【0022】
例えば、処理ガスとして蟻酸の蒸気を用いる場合、上記の第1の温度は、室温もしくは室温以下程度とされることが好ましい。このように、ステップ1における第1の温度を制御することで金属有機化合物錯体の昇華が抑制され、処理容器内部への金属の付着が抑制される。ステップ1の処理を所定の時間行った後、ステップ2に移行(被処理基板の温度が上昇)する前に、処理ガスの処理空間への供給を停止する。
【0023】
次に、ステップ2において、処理ガスの処理空間への供給が停止した状態で、金属有機化合物錯体が金属層表面に形成された被処理基板を、不活性ガス雰囲気もしくは減圧雰囲気で加熱して、ステップ1の第1の温度よりも高い第2の温度とする。ここで、金属層上の金属有機化合物錯体を昇華させて除去する。上記のステップ1、ステップ2を経て、金属層に形成されていた金属酸化膜を除去することができる。
【0024】
上記のステップ2においては、処理ガス(蟻酸蒸気などの有機化合物ガス)が処理空間に供給されていないため、仮に昇華した金属有機化合物錯体の一部が分解して処理容器内部に付着した場合であっても、付着した金属のエッチングが抑制される。この結果、エッチングされた金属の被処理基板への再付着が抑制されることになる。尚、処理容器内部に付着した金属に関しては、金属が付着した処理容器内部の温度を高くし、処理空間の圧力を低くすることで除去することも可能である。金属付着物の除去を行う場合には、例えば、処理容器内部の温度における金属付着物の蒸気圧が、処理空間の圧力よりも高くなるようにすることが好ましい。一般的には、金属付着物の蒸気圧は低いため、処理空間の圧力はできるだけ低くすることが好ましい。
【0025】
また、加熱された被処理基板が高温(例えば100℃以上)のまま、大気雰囲気に暴露されると、大気中の酸素により金属が再度酸化されてしまう懸念があるため、必要に応じてステップ3を設けて被処理基板の冷却を行うようにしてもよい。
【0026】
上記の基板処理方法では、金属層の表面で金属有機化合物錯体を形成するステップ1と、形成された金属有機化合物錯体を昇華させるステップ2とを、実質的に分離していることが特徴である。すなわち、処理ガスが供給されるステップ1では被処理基板を低温(第1の温度)とし、形成される金属有機化合物錯体の昇華を抑制する一方で、処理ガスの供給が停止されるステップ2では被処理基板の温度を高温(第2の温度)とし、新たな金属のエッチングが生じることを抑制しながら形成された金属有機化合物錯体を積極的に昇華させている。
【0027】
このため、本実施例による基板処理方法では、被処理基板(被処理基板に形成されるデバイス、配線、絶縁層など)が、有機化合物ガスによりエッチングされた金属の再付着により汚染されることが抑制され、清浄な基板処理を行うことが可能となっている。例えば、上記の基板処理方法を用いて、Cu配線に形成されるCuの酸化膜を除去し、Cuの多層配線構造を有する半導体装置を製造することができる(具体例は実施例4図11A以下で後述)。
【0028】
また、除去する金属酸化膜が厚い場合は、上記のステップ1乃至ステップ3(またはステップ1乃至ステップ2)の処理を繰り返し行うことで、効率的に金属酸化膜を除去することが可能となる。
【0029】
また、従来の基板処理方法であっても、被処理基板が処理容器に収容されていない状態で、前述した金属付着物の除去方法(金属が付着した処理容器内部の温度を高くし、処理空間の圧力を低くする方法、例えば、処理容器内部の温度における金属付着物の蒸気圧が、処理空間の圧力よりも高くなるようにする方法)を適用することで、処理容器内部の金属付着物を除去すれば、金属の被処理基板への再付着を抑制することも可能である。
【0030】
また、上記のステップ1乃至ステップ2、もしくはステップ1乃至ステップ3の処理においては、被処理基板が所定の減圧雰囲気または不活性雰囲気に保持されるようにして、連続的に速やかに処理が行われるようにされることが好ましい。
【0031】
このため、上記の基板処理方法を、複数の処理容器(処理空間)を有するいわゆるクラスター型(マルチチャンバー型)の基板処理装置を用いて行うようにしてもよい。クラスター型の基板処理装置は、減圧状態または不活性ガスで内部が置換された搬送室に、複数の処理容器が接続されてなる構造を有している。この場合、ステップ1乃至ステップ2、もしくはステップ1乃至ステップ3に係る処理は、それぞれ別個の処理容器(処理空間)で行われることになる。例えば、ステップ1は、第1の処理容器(処理空間)にて実施され、その後、ステップ2、ステップ3は、それぞれ、第2の処理容器(処理空間)、第3の処理容器(処理空間)に順次搬送されて実施されることになる。
【0032】
このように、上記の基板処理方法がクラスター型の基板処理装置で実施されることで、被処理基板が酸素に曝されることによる金属層の酸化や、あるいは、汚染物質の被処理基板への付着などが抑制され、清浄に基板処理を行うことが可能となる。また、処理ガスが供給される、金属有機化合物錯体が形成される第1の処理容器(処理空間)と、処理ガスが供給されない、金属化合物錯体が昇華される第2の処理容器が分離されているため、金属の再付着をより効果的に抑制することが可能となる。
【0033】
また、上記の基板処理方法において、ステップ1乃至ステップ2、もしくはステップ1乃至ステップ3に係る処理を同じ処理容器(処理空間)で行うようにしてもよい。この場合、基板処理装置の構造が単純となり、基板処理(半導体製造)に係るコストを低減することが可能となる。また、上記のステップ1乃至ステップ2、もしくはステップ1乃至ステップ3に係る処理を同じ処理容器で行った場合においても、従来の基板処理方法(金属有機化合物錯体の形成と昇華を平行して進行させる方法)に比べて、金属の再付着が抑制された清浄な処理となる。
【0034】
次に、上記の基板処理方法を実施する基板処理装置の具体的な構成例について、クラスター型の基板処理装置を例にとり、説明する。
【0035】
図2は、図1に示した基板処理方法を実施するクラスター型の基板処理装置の一部を示した図であり、具値的には図1のステップ1を実施する第1の処理部100を模式的に示す図である。
【0036】
図2を参照するに、第1の処理部100は、内部に第1の処理空間101Aが画成される処理容器101を有しており、処理空間101Aには,被処理基板Wを保持する保持台102が設置されている。
【0037】
上記の保持台102の表面には、被処理基板Wを静電吸着するための静電吸着構造体102Aが設置されている。静電吸着構造体102Aは、たとえば、セラミック材料などの誘電体層内に、電圧が印加される電極102aが埋設されて構成され、当該電極に電圧が印加されることで被処理基板Wを静電吸着することが可能に構成されている。
【0038】
また、保持台102の内部には、例えばフロロカーボン系の流体などよりなる冷却媒体を流通させる流路よりなる冷却手段102Bが設けられている。上記の構造において、当該冷却媒体(図中冷媒と表記)による熱交換によって保持台102、静電吸着構造体102Aの温度制御が行われ、保持される被処理基板Wが所望の温度に制御(冷却)される。
【0039】
例えば、上記の冷却手段(流路)102Bには、冷凍機を内蔵した公知の循環装置(図示せず)が接続され、循環される冷却媒体の温度または流量を制御することで被処理基板Wの温度制御が可能に構成される。上記の循環装置は、例えばチラーと呼ばれる場合がある。
【0040】
また、第1の処理空間101Aは、処理容器101に接続された排気ライン104から真空排気され、減圧状態に保持される。排気ライン104は、圧力調整バルブ105を介して排気ポンプに接続され、第1の処理空間101Aを所望の圧力の減圧状態とすることが可能になっている。また、上記の排気ポンプの後段に、排出された有機化合物を回収するための容器を備えて、有機化合物を回収してリサイクル可能なように構成してもよい。
【0041】
また、第1の処理空間101Aの、保持台102に対向する側には、処理ガス供給路106から供給される処理ガスを第1の処理空間101Aに拡散させるためのシャワーヘッド103が設けられており、処理ガスを被処理基板W上に良好な均一性で拡散させる構造になっている。
【0042】
また、上記のシャワーヘッド103に処理ガスを供給する処理ガス供給路106には、液体または固体の原料110を内部に保持する原料容器109が接続されている。また、処理ガス供給路106には、バルブ107と、処理ガスの流量を制御する流量制御手段(たとえばMFCと呼ばれる質量流量コントローラ)108とが設置され、処理ガスの供給の開始、停止と、供給される処理ガスの流量の制御が可能な構造になっている。
【0043】
例えば、原料110は蟻酸などの有機化合物よりなり、原料容器109内で気化または昇華される構造になっている。例えば、蟻酸を例にとると、蟻酸は常温で液体であって、常温でも所定量が気化される。また、原料容器109を加熱して気化を安定させるようにしてもよい。
【0044】
また、上記の原料容器109、処理ガス供給路106、バルブ107、および流量制御手段108などは、保持台102に供給される冷媒と同じ冷媒を用いて冷却されるように構成してもよい。
【0045】
上記の処理ガス供給路106から供給される処理ガスは、シャワーヘッド103に形成された複数のガス穴より、第1の処理空間101Aに供給される。第1の処理空間101Aに供給された処理ガスは、所定の温度(第1の温度)に制御(冷却)された被処理基板Wに到達し、被処理基板Wに形成された金属層(例えばCu配線など)の表面に吸着して、金属有機物錯体が形成される。また、制御される第1の温度が室温程度の場合には、実質的に積極的な制御を行う必要はなく、冷却媒体による冷却などの積極的な温度制御は不要となる。
【0046】
また、被処理基板Wの温度は、静電吸着構造体102Aの吸着力の制御によっても変更することが可能である。例えば、電極102aに印加される電圧を大きくして被処理基板Wの吸着力(吸着面積)を大きくすることで冷却効率を良好とし、被処理基板の温度を低くすることが可能となる。
【0047】
また、上記のステップ1の処理において、処理ガスに、他のガスを加えることで、被処理基板に対しての処理性能を向上させることも可能である。例えば酸化性を有するガスとして、OやNOを添加しても良いし、還元性を有する他のガスとして、例えばHやNHを添加しても良い。
【0048】
また、上記の第1の処理部100のステップ1に係る処理は、制御手段201を介して、コンピュータ202によって動作される構造になっている。また、コンピュータ202は、記録媒体202Bに記憶されたプログラムに基づき、上記に説明した処理を動作させる。なお、制御手段201やコンピュータ202にかかる配線は図示を省略している。
【0049】
上記の制御手段201は、温度制御手段201Aと、ガス制御手段201B、および圧力制御手段201Cを有している。温度制御手段201Aは、冷却手段(流路)102Bを流れる冷却媒体の流量、温度を制御することで、被処理基板Wの温度を制御する。また、温度制御手段201Aは、電極102aに印加される電圧の制御(吸着力の制御)によっても被処理基板Wの温度を制御する。
【0050】
ガス制御手段201Bは、バルブ107、流量調整手段108の制御を行い、処理ガスの供給の開始、処理ガスの供給の停止、および供給される処理ガスの流量を制御する。圧力制御手段201Cは、圧力調整バルブ105の開度を制御し、第1の処理空間101Aの圧力を制御する。
【0051】
また、上記の制御手段201を制御するコンピュータは、CPU202A、記録媒体202B、入力手段202C、メモリ202D、通信手段202E、および表示手段202Fを有している。例えば、基板処理に係る基板処理方法(ステップ1)のプログラムは、記録媒体202Bに記録されており、基板処理は当該プログラムに基づき、行われる。また、当該プログラムを通信手段202Eから入力したり、または入力手段202Cから入力してもよい。
【0052】
上記のステップ1の処理においては、被処理基板Wが低温(第1の温度)とされて処理ガスが供給されるため、被処理基板の金属層に形成された金属有機化合物錯体の昇華が抑制されていることが特徴である。このため、金属有機化合物錯体の昇華によって処理容器101の内壁面への金属の付着が抑制されている。
【0053】
また、上記の第1の温度は、形成される金属有機化合物錯体の蒸気圧が第1の処理空間101Aの圧力よりも低くなるような温度とされることが好ましく、より効果的に金属有機化合物錯体の昇華を抑制することが可能となる。
【0054】
上記のステップ1の処理では、蟻酸に限定されず、同様の化学反応性を有する他の有機化合物を用いてもよい。
【0055】
上記の処理ガスとして用いることが可能な有機化合物の例として、カルボン酸、無水カルボン酸、エステル、アルコール、アルデヒド、ケトン等を挙げることができる。
【0056】
カルボン酸は、少なくとも一つのカルボキシル基を含む物質であり、具体的には
一般式 R−COOH
(Rは水素原子もしくは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができる化合物、あるいはポリカルボン酸が挙げられる。上記の具体的な炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などをあげることができる。具体的なハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素をあげることができる。
【0057】
上記のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−エチルへキサン酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などがある。
【0058】
一般的な無水カルボン酸は、
一般式 R−CO−O−CO−R
(R、Rは、水素原子もしくは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができる。RとRに関する性質は前記カルボン酸のRと同様に挙げることができる。
【0059】
上記の無水カルボン酸としては、無水酢酸、無水蟻酸、無水プロピオン酸、無水酢酸蟻酸、無水酪酸、および無水吉草酸などがある。
【0060】
一般的なエステルは、
一般式 R−COO−R
(Rは、水素原子もしくは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基、Rは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができる。Rに関する性質は前記カルボン酸のRと同様に挙げることができる。Rに関する性質は前記カルボン酸のRと同様(但し水素原子を除く)に挙げることができる。
【0061】
上記のエステルとしては、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、酢酸アリル、酢酸プロペニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ベンジル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、酪酸ブチル、吉草酸メチル、および吉草酸エチルなどがある。
【0062】
アルコールは、少なくとも一つのアルコール基を含む物質であり、具体的には
一般式 R−OH
(Rは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができる化合物、あるいはジオールおよびトリオールのようなポリヒドロキシアルコール等が挙げられる。Rに関する性質は前記カルボン酸のRと同様(但し水素原子を除く)に挙げることができる。
【0063】
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチルプロパノール、2−メチルブタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、o−、p−、およびm−クレゾール、レゾルシノール、2、2、2−トリフルオロエタノール、エチレングリコール、グリセロールなどがある。
【0064】
アルデヒドは、少なくとも一つのアルデヒド基を含む物質であり、具体的には
一般式 R−CHO
(Rは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができる化合物、あるいはアルカンジオール化合物等が挙げられる。Rに関する性質は前記カルボン酸のRと同様に挙げることができる。
【0065】
上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサルなどがある。
【0066】
一般的なケトンは、
一般式 R−CO−R
(R、Rは炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができる。また、ケトンの一種として、
一般式 R10−CO−R11−CO−R12
(R10、R11、R12は炭化水素基もしくは炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された官能基)と表記することができるジケトンがある。
【0067】
上記ケトン、ジケトンとしては、アセトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、1、1、1、5、5、5‐ヘキサフルオロアセチルアセトンなどがある。
【0068】
次に、上記の第1の処理部100によるステップ1の処理に続いて、ステップ2の処理を実施する第2の処理部について説明する。
【0069】
図3は、図1に示した第1の処理部100と同様に、クラスター型の基板処理装置の一部を構成する第2の処理部100A示した図である。第2の処理部100Aでは、図1のステップ2が実施される。
【0070】
図3を参照するに、第2の処理部100Aは、内部に第2の処理空間111Aが画成される処理容器111を有しており、処理空間111Aには,被処理基板Wを保持する保持台112が設置されている。
【0071】
上記の保持台112には、例えばヒータよりなる加熱手段112Aが埋設されている。保持台112に保持された被処理基板Wは、加熱手段112Aにより加熱されてステップ1の第1の温度よりも高い第2の温度とされることが可能となるように構成されている。
【0072】
また、第2の処理空間111Aは、処理容器111に接続された排気ライン114から真空排気され、減圧状態に保持される。排気ライン114は、圧力調整バルブ115を介して排気ポンプに接続され、第2の処理空間111Aを所望の圧力の減圧状態とすることが可能になっている。
【0073】
また、第2の処理空間111Aの、保持台112に対向する側には、ガス供給路116から供給される不活性ガスを第2の処理空間111Aに拡散させるためのシャワーヘッド113が設けられている。
【0074】
また、上記のシャワーヘッド113に不活性ガスを供給するガス供給路116には、例えば、ArやN、またはHeなどの不活性ガスを内部に保持するガス容器119が接続されている。また、上記の不活性ガスとしては、ArやHe以外の希ガス(例えばNe,Kr,Xeなど)を用いることも可能である。また、ガス供給路116には、バルブ117と、不活性ガスの流量を制御する流量制御手段(MFC)118とが設置され、不活性ガスの供給の開始、停止と、供給される不活性ガスの流量の制御が可能な構造になっている。
【0075】
上記の第2の処理部100Aによるステップ2の処理は、下記のようにして行われる。まず、第1の処理部100によるステップ1の処理の後、被処理基板Wは第2の処理部100Aの処理容器111内に搬送され、保持台112上に載置される。
【0076】
ここで、加熱手段112Aによって被処理基板Wが加熱され、被処理基板Wの温度が、ステップ1の第1の温度よりも高い第2の温度に制御される。このため、被処理基板Wの金属層(金属配線)に形成された金属有機化合物錯体が昇華され、排気ライン114から排気される。また、上記の被処理基板Wの加熱(金属有機化合物錯体の昇華)にあたって、第2の処理空間111A内は所定の減圧状態(真空状態)とされるが、先に説明したガス供給路116からシャワーヘッド113を介して不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0077】
上記の第1の処理部100によるステップ1の処理と、第2の処理部100Aによるステップ2の処理により、被処理基板の金属層(例えばCu配線)に形成された金属酸化膜(例えば銅酸化膜)を除去することができる。
【0078】
また、上記の第2の処理部100Aは、図2で先に説明した制御手段201とコンピュータ202を、第1の処理部100と共有する構造になっている。なお、第1の処理部100と第2の処理部100Aとで、制御手段とコンピュータをそれぞれ別途有するように基板処理装置を構成してもよい。
【0079】
温度制御手段201Aは、加熱手段112Aを制御することにより、処理基板Wの温度を制御する。また、ガス制御手段201Bは、バルブ117、流量調整手段118の制御を行い、不活性ガスの供給の開始、処理ガスの供給の停止、および供給される不活性ガスの流量を制御する。圧力制御手段201Cは、圧力調整バルブ115の開度を制御し、第2の処理空間111Aの圧力を制御する。
【0080】
また、上記の制御手段201を制御するコンピュータ202は、記録媒体202Bに記録されたプログラムに基づき、基板処理に係る基板処理方法(ステップ2)を第2の処理部100Aに実行させる。
【0081】
上記のステップ2の処理においては、処理ガスの供給が行われない第2の処理空間111Aにおいて被処理基板Wが高温(第2の温度)とされて金属有機化合物錯体が昇華されることが特徴である。このため、例えば処理容器111の内壁面や保持台112に金属が付着した場合であっても当該金属が処理ガスのエッチングにより被処理基板に再付着する影響が抑制される。
【0082】
また、さらに基板処理が行われる処理容器(保持台)のチャンバークリーニングを行えば、処理容器内の清浄度が維持され、基板処理の履歴に依らず、安定した基板処理をすることが可能となる。この時の処理温度は、処理容器111の内壁面または保持台112に付着した金属錯体を昇華させるように、処理容器111の内壁面または保持台112の温度を、基板処理の第2の温度より高く(例えば400℃以上)することが望ましい。
【0083】
なお、処理容器111の内壁面や保持台112などの処理容器111の内部に付着した金属を除去したい場合、例えば次のようにすればよい。
【0084】
被処理基板Wが処理容器111内に収容されていない状態にし、更に処理容器111内への処理ガスの供給を停止する。次に、処理容器内部に付着した金属付着物を昇華させるように、金属が付着した処理容器111の内部(処理容器111の内壁面や保持第112)を、被処理基板の処理を行う温度よりも高温に加熱し、更に処理空間111A内の圧力を低圧(例えば1×10−5Pa以下、好ましくは1×10−6Pa以下、更に好ましくは1×10−7Pa以下)となるように制御することで、金属付着物を除去する。
【0085】
処理空間111A内の圧力をこのような低い圧力に制御するためには、例えば、ターボ分子ポンプとクライオポンプとドライポンプなどを組みあせて使用することが好ましい。また、金属が付着した処理容器111の内部を加熱する温度は、金属付着物の蒸気圧が処理空間111Aの圧力よりも高くなる温度であることが望ましく、より効果的に金属付着物の除去を行うことが可能となる。
【0086】
なお、保持台112の上面に付着する金属の量が多く、この金属付着物を除去したい場合には、次のようにすることもできる。保持台112の上面に保持台を覆うように薄板状のサセプタを設置し、サセプタの上に被処理基板を保持するようにして、基板処理を行う。このようにすれば、金属は保持台112の上面に対しては付着せず、サセプタの上面に付着する。次に、薄板状のサセプタを搬送装置により、処理容器111から搬出し、処理容器111とは別の容器内にサセプタを搬入し、この別の容器内にてサセプタに付着した金属付着物を昇華させるようにしてもよい。
【0087】
したがって、被処理基板に形成される配線、層間絶縁膜などが金属の再付着により汚染される影響が抑制され、清浄な基板処理を行うことが可能となる。このため、例えば、有機化合物ガスを用いた、Cu配線の酸化膜の除去を、Cuの再付着による汚染の影響を抑制して清浄に行い、Cu配線を有する半導体装置を製造することが可能となる。
【0088】
また、被処理基板Wを加熱する加熱手段としては、例えばヒータを用いる場合を例にとって説明したが、加熱手段はこれに限定されるものではない。例えば、上記の加熱手段としては、第1の処理部100の場合と同様にして、保持台112に流路を形成し、該流路に所定の熱交換のための流体を循環させる方法をとってもよい。
【0089】
また、被処理基板の加熱手段としては、図4に示すように紫外線ランプを用いた方法をとってもよい。
【0090】
図4は、図3に示した第2の処理部100Aの変形例の第2の処理部100Bを示す図である。ただし、図3で先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0091】
本図の場合、処理容器111の、保持台112に対向する位置に、被処理基板Wを加熱する紫外線ランプよりなる加熱手段120が設置されている。本図に示す第2の処理部100Bでステップ2の処理を行う場合、加熱手段120により被処理基板Wに紫外線を照射することで被処理基板を加熱する。
【0092】
このように紫外線照射により被処理基板の加熱を行う場合、被処理基板を第2の温度とするまでの昇温時間が短くなり、基板処理の効率が良好となる効果を奏する。また、保持台を介した加熱と比較した場合、処理終了後(紫外線照射の停止後)の被処理基板の降温速度が速い特徴がある。このため、特にステップ1とステップ2の処理を繰り返すなど、昇温と降温を繰り返す場合には、紫外線照による被処理基板の加熱は処理効率が良好となる。
【0093】
ところで、固体CuとCuOの蒸気圧は、非特許文献1及び非特許文献2に記載されており、両者の蒸気圧を比較した結果を図5に示す。
【0094】
図5を参照するに、酸化銅の蒸気圧は金属銅の蒸気圧よりも高いことが分かる。一方、特許文献2によれば、CuOの平衡酸素濃度は、図6のように記載されており、温度と酸素分圧が、平衡酸素濃度曲線Bo−rより下の還元領域Rrに設定されると、CuOが還元されることが記載されている。
【0095】
従って、処理容器111の内壁面や保持台112に付着した金属がCuである場合、金属Cuを酸化させてから、高真空雰囲気(但し図6の平衡酸素濃度曲線より高い酸素分圧雰囲気)で処理容器111の内壁面や保持台112を加熱することで、銅を効率的に除去することができる。
【0096】
例えばO2,O3,N2O,CO2等の酸素を含む酸化性ガスを処理容器内に供給し、銅が付着した箇所を少なくとも100℃以上に加熱することで、処理容器や保持台に付着した銅を酸化させることができる。
【0097】
また、Cu以外の金属に関しても、金属酸化物の蒸気圧が金属の蒸気圧よりも高い場合に、Cuの場合と同様、金属を酸化させてから、高真空雰囲気で処理容器111の内壁面や保持台112を加熱することで、金属を効率的に除去することができる。
【0098】
処理容器の内壁面や保持台に付着した金属を酸化させるための酸化性ガスとしてO2を使用する場合の装置構成例100B1を図7に示す。
【0099】
図7を参照するに、前記装置構成100B1は、前記図4の装置100Bと同様な、処理容器119,ガス供給路116,流量調整手段118およびバルブ117を含む構成を有しているが、さらに酸素ガス源119A,酸素供給路116A,流量調整手段118Aおよびバルブ117Aを含む酸素供給手段を有しており、前記処理容器111に酸素ガスを供給することにより、前記処理容器や保持台に付着したCuなどの金属を酸化させることが可能である。
【0100】
次に、上記の第2の処理部100Aまたは100Bによるステップ2の処理に続いて、ステップ3の処理を実施する第3の処理部について説明する。
【0101】
図8は、クラスター型の基板処理装置の一部を構成する第3の処理部100Cを示した図である。第3の処理部100Cでは、図1のステップ3が実施される。
【0102】
図8を参照するに、第3の処理部100Cの基本的な構造は、図3に示した第2の処理部100Aと同一である。本図に示す、処理容器121、第3の処理空間121A、保持台122、シャワーヘッド123、排気ライン124、圧力調整バルブ125、ガス供給ライン126、バルブ127、流量調整手段128、およびガス容器129は、図3の第2の処理部100Aの、処理容器111、第2の処理空間111A、保持台112、シャワーヘッド113、排気ライン114、圧力調整バルブ115、ガス供給ライン116、バルブ117、流量調整手段118、およびガス容器119にそれぞれ相当し、同様の構造、機能を有している。
【0103】
また、上記の第3の処理部100Cは、先に説明した制御手段201とコンピュータ202を、第1の処理部100、第2の処理部100A(または100B)と共有する構造になっている。なお、第1の処理部100、第2の処理部100A、および第3の処理部100Cが、制御手段とコンピュータをそれぞれ別途有するように基板処理装置を構成してもよい。
【0104】
上記の制御手段201とコンピュータ202は、第2の処理部100Aの場合と同様に第3の処理部100Cを制御し、動作させる。
【0105】
上記の第3の処理部100Cによるステップ3の処理は、下記のようにして行われる。まず、第2の処理部100Aまたは100Bによるステップ2の処理の後、被処理基板Wは第3の処理部100Cの処理容器121内に搬送され、保持台122上に載置される。
【0106】
ここで、ガス供給路126からシャワーヘッド123を介して第3の処理空間に不活性ガスが供給される。供給された不活性ガスは、被処理基板Wに到達し、ステップ2で加熱された被処理基板Wを冷却する。
【0107】
また、上記の第3の処理部100Cでは、冷却方法として不活性ガスを供給する場合を例にとって説明したが、冷却方法はこれに限定されるものではない。例えば、第1の処理部100の場合と同様にして、保持台122に冷却手段(流路)を設けて冷却媒体を循環させる方法をとってもよい。また、この場合に保持台122に静電吸着構造体を設け、被処理基板の吸着力により冷却量を制御する方法を併用するようにしてもよい。
【0108】
また、ステップ2が終了した後の被処理基板の冷却は、第2の処理部100Aまたは100Bで行うようにしてもよい。または、ステップ1とステップ2の処理を繰り返し行う場合には、被処理基板の冷却を第1の処理部100で行うようにしてもよい。上記の場合、第3の処理部100C(ステップ3)は、省略することができる。一方で、第3の処理部100C(ステップ3)を設けた場合には、被処理基板の降温速度が速く、被処理基板の処理効率が良好となる効果を奏する。
【0109】
次に、上記の第1の処理部100、第2の処理部100A、および第3の処理部100Cを有するクラスター型の基板処理装置の全体の構成の一例について説明する。
【0110】
図9は、先に説明した第1の処理部100、第2の処理部100A、および第3の処理部100Cを有するクラスター型の基板処理装置300の構成を模式的に示す平面図である。
【0111】
図9を参照するに、本図に示す基板処理装置300の概略は、内部が所定の減圧状態または不活性ガス雰囲気とされる搬送室301に、第1の処理部100(処理容器101)、第2の処理部100A(処理容器111)、第3の処理部100C(処理容器121)、および第4の処理部100D(後述)が接続されてなる構造を有している。
【0112】
搬送室301は、平面視した場合に六角形状を有し、六角形の複数の辺に相当する面に、第1の処理部100、第2の処理部100A、第3の処理部100C、および第4の処理部100Dがそれぞれ接続されている。また、搬送室301の内部には、回転・伸縮可能に構成された搬送アーム302が設置されており、搬送アーム302によって被処理基板Wが複数の処理容器の間を搬送されるように構成されている。
【0113】
さらに、搬送室301の2つの辺にはそれぞれロードロック室303、304が接続されている。上記のロードロック室303、304の、搬送室301と接続された側の反対側には、被処理基板搬入出室305が接続されている。さらに、被処理基板搬入出室305には、被処理基板Wを収容可能なキャリアCを取り付けるポート307、308、309が設けられている。また、被処理基板搬入出室305の側面にはアライメント室310が設けられており、被処理基板Wのアライメントが行われる。
【0114】
また、被処理基板搬入出室305内には、キャリアCに対する被処理基板Wの搬入出、およびロードロック室303、304に対する被処理基板Wの搬入出を行う搬送アーム306が設置されている。上記の搬送アーム306は、多関節アーム構造を有しており、被処理基板Wを載せてその搬送を行う構造になっている。
【0115】
上記の第1の処理部100、第2の処理部100A、第2の処理部100C、およびロードロック室303、304は、搬送室301の各辺にゲートバルブGを介して接続されている。上記の処理部またはロードロック室は、ゲートバルブGを開放することにより搬送室301と連通され、ゲートバルブGを閉じることにより搬送室301から遮断される。また、同様のゲートバルブGは、ロードロック室303、304と、被処理基板搬入出室305が接続される部分にも設けられている。
【0116】
また、上記の被処理基板Wの搬送に係る動作は、制御部311によって制御される構造になっている。制御部311は、図2乃至図8で先に説明したコンピュータ202に接続されている(接続配線は図示を省略)。基板処理装置300の基板処理(被処理基板Wの搬送)に係る動作は、コンピュータ202の記録媒体202Bに記憶されたプログラムによって実行される。
【0117】
上記の基板処理装置300による基板処理は、以下のようにして行われる。まず、搬送アーム306により、キャリアCから表面に銅酸化膜が形成されたCu配線が形成された被処理基板Wが取り出されて、ロードロック室303に搬入される。次に、搬送アーム302により、被処理基板Wがロードロック室303から、搬送室301を介して第1の処理部100(第1の処理空間101A)に搬送される。第1の処理部100では、先に説明したステップ1に係る処理が行われ、Cu配線に処理ガス(蟻酸など)が吸着され、Cu配線の表面に金属有機物錯体が形成される。
【0118】
次に、搬送アーム302により、被処理基板Wが第1の処理部100から第2の処理部100A(第2の処理空間111A)に搬送される。第2の処理部100Aでは、先に説明したステップ2に係る処理が行われ、Cu配線表面の金属有機物錯体が昇華される。
【0119】
次に、搬送アーム302により、被処理基板Wが第2の処理部100Aから第3の処理部100C(第3の処理空間121A)に搬送される。第3の処理部100Aでは、先に説明したステップ3に係る処理が行われ、被処理基板Wが冷却される。
【0120】
上記のステップ1乃至ステップ3の処理が施された被処理基板Wは、搬送アーム302によりロードロック室304に搬送され、さらに搬送アーム306によってロードロック室304から所定のキャリアCに搬送される。このような一連の処理を、キャリアCに収容されている枚数の被処理基板Wに対して連続的に行うことで、複数の被処理基板を連続的に処理することが可能となる。
【0121】
上記の基板処理装置300によれば、被処理基板Wが酸素に曝されることによるCu配線の酸化や、あるいは、汚染物質の被処理基板Wへの付着などが抑制され、清浄に基板処理を行うことが可能となる。また、処理ガスが供給される、金属有機化合物錯体が形成される第1の処理空間101Aと、処理ガスが供給されない、金属化合物錯体が昇華される第2の処理空間111Aが分離されているため、金属の再付着をより効果的に抑制することが可能となる。
【0122】
また、上記の基板処理装置において、ステップ1乃至ステップ2、もしくはステップ1乃至ステップ3に係る処理を同じ処理容器(処理空間)で行うように基板処理装置を構成してもよい。この場合、基板処理装置の構造が単純となり、基板処理(半導体製造)に係るコストを低減することが可能となる。この場合、1つの処理部(処理容器)に、冷却手段、加熱手段などの構造を有する温度制御手段を設け、処理ガスと不活性ガスの双方が供給されるように構成すればよい。
【0123】
また、上記のステップ1乃至ステップ2、もしくはステップ1乃至ステップ3に係る処理を同じ処理容器で行った場合においても、従来の基板処理方法(金属有機化合物錯体の形成と昇華を平行して進行させる方法)に比べて、金属の再付着が抑制された清浄な処理となる。
【0124】
また、上記の基板処理装置300において、被処理基板Wを、第1の処理部100と第2の処理部100Aに交互に繰り返し搬送し、ステップ1とステップ2の処理が繰り返されるようにしてもよい。この場合、金属層上の酸化膜を効率的に除去することが可能となる。また、上記の場合に必要に応じて被処理基板Wが第3の処理部100Cに搬送される(ステップ3の処理を入れる)ようにしてもよい。
【0125】
また、第2の処理部100Aでの処理(ステップ2の処理)、または第3の処理部100Cでの処理(ステップ3の処理)の後、被処理基板Wを第4の処理部100Dに搬送し、さらに基板処理を行うようにしてもよい。例えば、第4の処理部100Dにおいて、Cuの拡散防止膜の成膜を行うように基板処理装置を構成してもよい。
【0126】
また、搬送室301の形状は六角形に限定されず、さらに多くの処理部(処理室)が接続可能なように構成してもよい。例えば、搬送室に、金属膜または絶縁膜(層間絶縁膜)の成膜を行う処理部(処理容器)を接続し、Cuの拡散防止膜に続いて金属膜または層間絶縁膜の成膜が実施されるように基板処理装置を構成してもよい。
【実施例2】
【0127】
次に、上記に説明した基板処理方法を用いて基板処理を行ってCuの酸化膜を除去し、酸化膜の除去に係る分析を行った結果について説明する。最初にCuの酸化膜の除去を行った具体的な例について説明する。
【0128】
まず、表面が酸化されたCuを有する被処理基板に、気化した蟻酸(処理ガス)を供給した。Cuの表面には蟻酸が吸着され、金属錯体(金属有機化合物錯体)が形成される。上記の蟻酸の吸着は、上記の被処理基板の脱ガスの分析により確認されている。この場合、被処理基板が保持される処理空間の圧力は0.4乃至0.7kPaとし、被処理基板の温度は室温程度とした(ステップ1)。
【0129】
次に、被処理基板を、圧力が1×10―5Pa以下の減圧雰囲気となる処理空間で加熱し、金属有機化合物錯体を含む反応生成物を昇華させた(ステップ2)。ここで、質量分析器によって当該処理空間のガス(昇華)を分析した結果を図10に示す。
【0130】
図10は、上記のガス分析の結果を示す図であり、横軸に加熱時間、縦軸に検出強度(任意単位)をとり、Cu(質量63)の検出結果について示したものである。
【0131】
図10を参照するに、Cuは、加熱開始後7分と約20分で検出されていることがわかる。加熱開始後7分の被処理基板の温度は150℃程度であり、加熱開始後約20分の被処理基板の温度は少なくとも400℃より高い温度であった。尚、蟻酸(処理ガス)の供給を行わなかったCuを有する被処理基板を同様に加熱しても、約7分ではCuは検出されなかったが、約20分ではCuは検出された。従って、加熱開始後約7分(約150℃)で検出されたCuは、上記の昇華した金属錯体に由来すると言える。即ち、上記の金属錯体を昇華させるためには、150℃以上の温度に被処理基板を加熱すればよいことが確認された。
【0132】
金属錯体の蒸気圧は約150℃では少なくとも1×10−5Pa以上であると言える。また、上記金属錯体ではない金属(Cu)を昇華するためには、少なくとも400℃より高い温度に加熱する必要があることが確認された。金属錯体ではない金属(Cu)の蒸気圧は、少なくとも400℃以上の高い温度にしないと、1×10−5Pa以上にはならない。また、被処理基板の昇温速度は上記の場合に限定されず、さらに高速になるようにしてもよい。
【0133】
次に、上記の銅酸化膜が除去される厚さの測定結果について説明する。図11は、光学測定(エリプソメトリ法、波長633nm)によって測定された位相差dΔ(横軸)を元に処理前の銅酸化膜の厚さと、Cuの検出量を元に除去された銅酸化膜の量に相当する値(縦軸)の関係を示したものである。エリプソメトリ法による測定では、銅酸化膜の膜厚は位相差dΔの変化として大きく現れるため、横軸は処理前の銅酸化膜の厚さに対応している。
【0134】
図11を参照するに、形成される銅酸化膜の厚さに対応して除去される銅酸化膜(Cu換算)が増大しており、上記の基板処理によって銅酸化膜が除去されていることが確認された。例えば、Cuに形成される自然酸化膜は、上記の位相差dΔに換算すると10度程度で検出され4nm程度であるので、上記の基板処理方法により、容易に除去することができる。
【0135】
また、除去される銅酸化膜の量は、形成されている銅酸化膜の厚さの増大に対して収束する傾向にあるので、除去する銅酸化膜の厚さが厚い場合には、ステップ1〜ステップ2(ステップ3)の処理を繰り返すと、効果的に銅酸化膜を除去することが可能となる。
【0136】
また、図12はステップ1の処理時間(Cuの処理ガスへの暴露時間)を横軸にとり、縦軸に、除去された銅酸化膜の厚さ(Cu膜の膜厚に換算)を示したものである。
【0137】
図12を参照するに、銅酸化膜除去量(Cu換算)は、ステップ1の処理時間(暴露時間)に対応して大きくなる傾向にある。また、処理効率を上げるためには、被処理基板の冷却温度(ステップ1での第1の温度)を低くすることで処理ガスの吸着量を増大させ、暴露時間を長くした場合と同様に、除去可能な銅酸化膜の膜厚を厚くすることができると考えられる。
【実施例3】
【0138】
次に、従来の基板処理方法(金属有機化合物錯体の形成と昇華を平行して進行させる方法)を実行可能な処理部(基板処理装置)であって、さらに処理容器内部に付着した金属付着物を除去することが可能となるように構成された処理部100Dの例について、図13に基づき、説明する。上記の処理室100Dは、先に説明した処理室100、100A〜100Cと同様に、クラスター型の基板処理装置の一部として機能するものであり、例えば搬送室301に接続して用いられる。
【0139】
図13を参照するに、処理部100Dは、内部に処理空間131Aが画成される処理容器131を有しており、処理空間131Aには,被処理基板Wを保持する保持台132が設置されている。
【0140】
上記の保持台132には、例えばヒータよりなる加熱手段132Aが埋設されている。保持台132に保持された被処理基板Wは、加熱手段132Aにより保持台132と共に加熱することが可能となるように構成されている。また、処理容器131には、例えばヒータよりなる加熱手段140が設置され、処理容器131の内壁面(金属が付着する部分)を加熱することが可能になっている。
【0141】
また、処理空間131Aは、処理容器131に接続された排気ライン134から真空排気され、減圧状態に保持される。排気ライン134は、圧力調整バルブ135を介して排気ポンプに接続され、処理空間131Aを所望の圧力の減圧状態とすることが可能になっている。また、上記の排気ポンプの後段に、排出された有機化合物を回収するための容器を備えて、有機化合物を回収してリサイクル可能なように構成してもよい。
【0142】
また、処理空間131Aの、保持台132に対向する側には、処理ガス供給路136から供給される処理ガスを処理空間131Aに拡散させるためのシャワーヘッド133が設けられており、処理ガスを被処理基板W上に良好な均一性で拡散させる構造になっている。
【0143】
また、上記のシャワーヘッド133に処理ガスを供給する処理ガス供給路136には、液体または固体の原料130を内部に保持する原料容器139が接続されている。また、処理ガス供給路136には、バルブ137と、処理ガスの流量を制御する流量制御手段(たとえばMFCと呼ばれる質量流量コントローラ)138とが設置され、処理ガスの供給の開始、停止と、供給される処理ガスの流量の制御が可能な構造になっている。
【0144】
例えば、原料130は蟻酸などの有機化合物よりなり、原料容器139内で気化または昇華される構造になっている。例えば、蟻酸を例にとると、蟻酸は常温で液体であって、常温でも所定量が気化される。また、原料容器139を加熱して気化を安定させるようにしてもよい。
【0145】
また、上記の原料容器139、処理ガス供給路136、バルブ137、および流量制御手段138などは、例えばフロロカーボン系の流体などよりなる冷却媒体を用いて冷却されるようにしてもよい。
【0146】
上記の処理ガス供給路136から供給される処理ガスは、シャワーヘッド133に形成された複数のガス穴より、処理空間131Aに供給される。処理空間131Aに供給された処理ガスは、所定の温度(例えば100℃〜400℃、好ましくは150℃〜250℃)に制御(加熱)された被処理基板Wに到達し、被処理基板Wに形成された金属層(例えばCu配線など)の表面に吸着して、金属有機化合物錯体が形成され、形成された金属有機化合物錯体は直ちに昇華除去される。この有機金属化合物錯体の形成と昇華除去に関しては、処理ガスが供給され、かつ金属層の表面に残存している限り、繰り返し行われる。すなわち、金属有機化合物錯体の形成と昇華は平行して進行する。
【0147】
また、処理ガスに、有機化合物以外の他のガスを加えることで、被処理基板に対しての処理性能を向上させることも可能である。例えば酸化性を有するガスとして、OやNOを添加しても良いし、還元性を有する他のガスとして、例えばHやNHを添加しても良い。
【0148】
上記の処理においては、昇華した金属有機化合物錯体は熱的に不安定であるため、処理空間131A内で分解しやすく、処理容器131の内部、特に処理容器103の内壁面もしくは保持台132へ金属が付着する場合がある。更に、付着した金属は処理ガスによって再び昇華され、被処理基板Wに再付着する場合がある。
【0149】
次に、処理容器131の内部に付着した金属付着物を除去する方法の例について説明する。まず、被処理基板Wが処理容器131内に収容されていない状態にし、更に処理容器131内への処理ガスの供給を停止する。
【0150】
次に、処理容器131内部に付着した金属付着物を昇華させるように処理容器131内部(例えば処理容器131の内壁面もしくは保持台132)を、被処理基板の処理を行う温度よりも高温に加熱し、更に処理空間131A内の圧力を低圧(例えば1×10−5Pa以下、好ましくは1×10−6Pa以下、さらに好ましくは1×10−7Pa以下)となるように制御することで金属付着物を除去する。処理空間131Aをこのような低い圧力に制御するためには、処理空間131Aを排気するための排気手段として、例えば、ターボ分子ポンプとクライオポンプとドライポンプなどを組みあせて使用することが好ましい。
【0151】
また、金属が付着した処理容器131内部を加熱する温度は、金属付着物の蒸気圧が処理空間131A内の圧力よりも高くなる温度とされることが望ましく、より効果的に金属付着物の除去を行うことが可能となる。
【0152】
また、上記の処理部100Dに係る処理は、制御手段231を介して、コンピュータ232によって動作される構造になっている。また、コンピュータ232は、記録媒体232Bに記憶されたプログラムに基づき、上記に説明した処理を動作させる。なお、制御手段231やコンピュータ232にかかる配線は図示を省略している。
【0153】
上記の制御手段231は、温度制御手段231Aと、ガス制御手段231B、および圧力制御手段231Cを有している。温度制御手段231Aは、加熱手段132Aおよび140を制御することで、被処理基板Wおよび処理容器131の内部(処理容器131の内壁面、保持台132)の温度を制御する。
【0154】
ガス制御手段231Bは、バルブ137、流量調整手段138の制御を行い、処理ガスの供給の開始、処理ガスの供給の停止、および供給される処理ガスの流量を制御する。圧力制御手段231Cは、圧力調整バルブ135の開度を制御し、処理空間131Aの圧力を制御する。
【0155】
また、上記の制御手段231を制御するコンピュータ232は、CPU232A、記録媒体232B、入力手段232C、メモリ232D、通信手段232E、および表示手段232Fを有している。例えば、基板処理に係る基板処理方法および金属付着物除去方法のプログラムは、記録媒体232Bに記録されており、基板処理は当該プログラムに基づき、行われる。また、当該プログラムを通信手段232Eから入力したり、または入力手段232Cから入力してもよい。
【0156】
なお、上記の基板処理で使用する処理ガスは蟻酸に限定されず、同様の化学反応を有する他の有機化合物を用いてもよい。具体例としては、実施例1のステップ1の処理ガスとして用いることが可能な有機化合物の例として記載した物質と同じ物質をあげることができる。
【0157】
なお、保持台132の上面に付着する金属の量が多く、この金属付着物を除去したい場合には、次のようにすることもできる。保持台132の上面に保持台を覆うように薄板状のサセプタを設置し、サセプタの上に被処理基板を保持するようにして、基板処理を行う。このようにすれば、金属は保持台132の上面に対しては付着せず、サセプタの上面に付着する。次に、薄板状のサセプタを搬送装置により、処理容器131から搬出し、処理容器131とは別の容器内にサセプタを搬入し、この別の容器内にてサセプタに付着した金属付着物を昇華させるようにしてもよい。
【0158】
また、実施例1の場合と同様に、処理容器131の内壁面や保持台132に付着した金属がCuである場合、金属Cuを酸化させてから、高真空雰囲気(但し図6の平衡酸素濃度曲線より高い酸素分圧雰囲気)で処理容器131の内壁面や保持台132を加熱することで、銅を効率的に除去することができる。
【0159】
2,O3,N2O,CO2等の酸素を含む酸化性ガスを処理容器内に供給し、銅が付着した箇所を少なくとも100℃以上に加熱することで、処理容器や保持台に付着した銅を酸化させることができる。
【0160】
また、Cu以外の金属に関しても、金属酸化物の蒸気圧が金属の蒸気圧よりも高い場合に、Cuの場合と同様、金属を酸化させてから、高真空雰囲気で処理容器131の内壁面や保持台132を加熱することで、金属を効率的に除去することができる。
【0161】
処理容器の内壁面や保持台に付着した金属を酸化させるための酸化性ガスとしてO2を使用する場合の装置構成例100D1を図14に示す。
【0162】
図14を参照するに、前記装置構成例100D1は、先に図13で説明した装置構成例100Dと同様な構成を有しているが、さらに酸素ガス源139A,酸素供給路136A,流量調整手段138Aおよびバルブ137Aを含む酸素供給手段を有しており、前記処理容器131に酸素ガスを供給することにより、前記処理容器や保持台に付着したCuなどの金属を酸化させることが可能である。
【実施例4】
【0163】
次に、上記の基板処理装置(基板処理方法)を用いた、半導体装置の製造方法の一例について、図15A〜図15Eに基づき、手順を追って説明する。
【0164】
まず、図15Aには、半導体装置を製造する工程の一例を示している。
【0165】
図15Aを参照するに、本図に示す工程における半導体装置では、シリコンからなる半導体基板(被処理基板Wに相当)上に形成されたMOSトランジスタなどの素子(図示せず)を覆うように絶縁膜401(例えばシリコン酸化膜)が形成されている。当該素子に電気的に接続されている、例えばW(タングステン)からなる配線層(図示せず)と、これに接続された、例えばCuからなる配線層402が形成されている。
【0166】
また、絶縁層401上には、配線層402を覆うように、第1の絶縁層(層間絶縁膜)403が形成されている。第1の絶縁層403には、溝部404aおよびホール部404bが形成されている。溝部404aおよびホール部404bには、Cuにより形成された、トレンチ配線とビア配線からなる配線部404が形成され、これが前述の配線層402と電気的に接続された構成となっている。
【0167】
また、第1の絶縁層403と配線部404の間にはCu拡散防止膜404cが形成されている。Cu拡散防止膜404cは、配線部404から第1の絶縁層403へCuが拡散するのを防止する機能を有する。さらに、配線部404および第1の絶縁層403の上を覆うように絶縁層(Cu拡散防止層)405及び第2の絶縁層(層間絶縁膜)406が形成されている。
【0168】
以下では、第2の絶縁層406に、先に説明した基板処理方法を適用して、Cuの配線を形成して半導体装置を製造する方法を説明する。なお、配線部404に関しても、以下に説明する方法と同様の方法で形成することが可能である。
【0169】
図15Bに示す工程では、第2の絶縁層406に、溝部407aおよびホール部407bを、例えばドライエッチング法などによって形成する。この場合、ホール部407bは絶縁層405も貫通するように形成する。ここで、前記第2の絶縁層406に形成された開口部より、Cuよりなる配線部404の一部が露出することになる。露出した配線部404の表層は酸化されやすいため、酸化膜(図示せず)が形成される。
【0170】
次に、図15Cに示す工程において、先に説明した基板処理装置(基板処理方法)を用いて、露出したCu配線404の酸化膜の除去(還元処理)を行う。
【0171】
この場合、まず、被処理基板Wを第1の温度(例えば室温程度)に制御し、被処理基板W上に、処理ガス(例えば気化された蟻酸)を供給し、金属錯体を形成する(ステップ1)。
【0172】
次に、処理ガスの供給を停止した後、被処理基板を加熱して第2の温度とし、形成された金属錯体を昇華させる(ステップ2)。このようにして、Cuの酸化膜の除去を行うことができる。
【0173】
次に、図15Dに示す工程において、溝部407aおよびホール部407bの内壁面を含む第2の絶縁層406上、および配線部404の露出面に、Cu拡散防止膜407cの成膜を行う。Cu拡散防止膜407cは、例えば高融点金属膜やこれらの窒化膜、または高融点金属膜と窒化膜の積層膜からなる。例えばCu拡散防止膜407cは、Ta/TaN膜、WN膜、またはTiN膜などからなり、スパッタ法やCVD法などの方法により、形成することが可能である。また、このようなCu拡散防止膜407cは、いわゆるALD法によって形成することも可能である。
【0174】
次に図15Eに示す工程において、前記溝部407aおよび前記ホール部407bを含む、Cu拡散防止膜407cの上に、Cuよりなる配線部407を形成する。この場合、例えばスパッタ法やCVD法でCuよりなるシード層を形成した後、Cuの電界メッキにより、配線部407を形成することができる。また、CVD法やALD法により、配線部407を形成してもよい。配線部407を形成後、化学機械研磨(CMP)法により、基板表面を平坦化する。
【0175】
また、本工程の後に、さらに前記第2の絶縁層406の上部に第2+n(nは自然数)の絶縁層を形成し、それぞれの絶縁層に上記の方法によりCuよりなる配線部を形成し、多層配線構造を有する半導体装置を形成することが可能である。
【0176】
また、本実施例では、デュアルダマシン法を用いて、Cuの多層配線構造を形成する場合を例にとって説明したが、シングルダマシン法を用いてCuの多層配線構造を形成する場合にも上記の方法を適用できることは明らかである。
【0177】
また、本実施例では、絶縁層に形成される金属配線(金属層)として、おもにCu配線を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、Cuのほかに、Ag、W、Co、Ru、Ti、Taなどの金属配線(金属層)に対しても本発明を適用することが可能である。
【0178】
このように、本実施例による半導体装置の製造方法では、金属配線に形成される酸化膜の除去を、安定に行うことが可能である。
【0179】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【0180】
例えば、上記の実施例では、絶縁層に対してエッチングを行って形成された開口部に露出した下層配線のCuの表面酸化膜を除去する工程に対して、本発明の基板処理方法を適用しているが、他の工程でCuの表面酸化膜を除去する場合に本発明を適用しても良い。例えば、シード層あるいは配線層を形成した後、もしくはCMPを行った後に対して本発明を適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明によれば、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる基板処理方法と、当該基板処理方法を用いた半導体装置の製造方法、有機化合物ガスによる基板処理を清浄に行うことが可能となる基板処理装置、および当該基板処理装置を動作させるプログラムが記載された記録媒体を提供することが可能となる。
【0182】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0183】
100,100A,100B,100C,100D 処理部
101,111,121,131 処理容器
101A,111A,121A,131A 処理空間
102,112,122,132 保持台
102A 静電吸着構造体
102a 電極
102B 冷却手段
103,113,123,133 シャワーヘッド
104,114,124,134 排気ライン
105,115,125,135 圧力調整バルブ
106,116,126,136 ガス供給路
107,117,117A,127,137,137A バルブ
108,118,118A,128,138,138A 流量調整手段
109,119,129,139 容器
112A,120,132A,140 加熱手段
116A,139A 酸素供給路
119A,139A 酸素源
201,201A,201B,201C、231,231A,232B,232C 制御手段
202,232 コンピュータ
202A,232A CPU
202B,232B 記録媒体
202C,232C 入力手段
202D,232D メモリ
202E,232E 通信手段
202F,232F 表示手段
300 基板処理装置
301 搬送室
302,306 搬送アーム
303,304 ロードロック室
305 被処理基板搬入出室
307,308,309 ポート
310 アライメント室
311 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器の内部に付着した金属付着物を昇華させるように、前記処理容器内部の温度と、前記処理空間の圧力とを、制御することを特徴とする金属付着物の除去方法。
【請求項2】
前記金属付着物を酸化性ガスにより酸化させて昇華させることを特徴とする請求項1記載の金属付着物の除去方法。
【請求項3】
前記酸化性ガスは、O2,O3,N2O,CO2よりなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載の金属付着物の除去方法。
【請求項4】
前記処理容器内部の温度は、前記金属付着物の蒸気圧が、前記処理空間の圧力よりも高くなるように選ばれることを特徴とする、請求項1乃至3記載の金属付着物の除去方法。
【請求項5】
前記金属層が形成された被処理基板の処理は、有機化合物を含む処理ガスにより前記金属層の表面にされた酸化物が除去されることを特徴とする請求項1乃至4記載の金属付着物の除去方法。
【請求項6】
前記有機化合物は、カルボン酸、無水カルボン酸、エステル、アルコール、アルデヒド、およびケトンよりなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載の金属付着物の除去方法。
【請求項7】
前記金属層が形成された被処理基板の処理は、請求項1乃至5いずれか1項記載の基板処理であり、前記第2の工程により処理空間を内部に有する処理容器の内部に付着した金属付着物の除去を、請求項1乃至6いずれか1項記載の方法を使用することを特徴とする金属付着物の除去方法。
【請求項8】
金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器と、
前記被処理基板を保持する保持台と、
前記処理空間への有機化合物を含む処理ガスの供給を制御するガス制御手段と、
前記処理容器内の圧力を制御する圧力制御手段と、
金属が付着した処理容器内壁面と保持台の少なくともいずれかの温度を制御する温度制御手段と、を有する基板処理装置であって、
前記被処理基板が前記処理容器内に収容されていない状態で、前記処理ガスが前記処理容器内への供給を停止するように前記ガス制御手段が制御され、かつ前記圧力制御手段と前記温度制御手段とが、前記処理容器内壁面もしくは前記保持台に付着した金属付着物を昇華させるように制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記処理空間への酸化性ガスの供給を制御するガス制御手段を更に有し、
前記金属付着物を前記酸化性ガスにより酸化させて昇華させることを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記酸化性ガスは、O2,O3,N2O,CO2よりなる群より選択されることを特徴とする請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理容器内壁面もしくは前記保持台の温度は、前記金属付着物の蒸気圧が、前記処理空間の圧力よりも高くなるように選ばれることを特徴とする、請求項8乃至10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記有機化合物は、カルボン酸、無水カルボン酸、エステル、アルコール、アルデヒド、およびケトンよりなる群より選択されることを特徴とする請求項8乃至11記載の基板処理装置。
【請求項13】
金属層が形成された被処理基板を処理する処理空間を内部に有する処理容器と、
前記被処理基板を保持する保持台と、
前記処理空間への有機化合物を含む処理ガスの供給を制御するガス制御手段と、
前記処理容器内の圧力を制御する圧力制御手段と、
金属が付着した処理容器内壁面と保持台の少なくともいずれかの温度を制御する温度制御手段と、を有する基板処理装置に、コンピュータにより金属付着物の除去方法を動作させるプログラムを記録した記録媒体であって、
前記金属付着物の除去方法は、金属付着物を昇華させるように、前記処理容器内壁面もしくは前記保持台の温度と、前記処理空間の圧力とを、制御することを特徴とする記録媒体。
【請求項14】
前記処理空間への酸化性ガスの供給を制御するガス制御手段を更に有し、
前記金属付着物を前記酸化性ガスにより酸化させて昇華させることを特徴とする請求項13記載の記録媒体。
【請求項15】
前記酸化性ガスは、O2,O3,N2O,CO2よりなる群より選択されることを特徴とする請求項14記載の記録媒体。
【請求項16】
前記処理容器内壁面もしくは前記保持台の温度は、前記金属付着物の蒸気圧が、前記処理空間の圧力よりも高くなるように選ばれることを特徴とする、請求項13乃至15記載の記録媒体。
【請求項17】
前記有機化合物は、カルボン酸、無水カルボン酸、エステル、アルコール、アルデヒド、およびケトンよりなる群より選択されることを特徴とする請求項13乃至16記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【公開番号】特開2013−33996(P2013−33996A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232362(P2012−232362)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2007−149614(P2007−149614)の分割
【原出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)有機酸ドライクリーニング技術の銅配線形成プロセスへの試験研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】