説明

金属保護コーティング、溶融Znメッキ金属材料、およびこれを用いた溶融Al−Znメッキ金属材料

【課題】高い耐腐食性、高い耐水性、高い耐熱性、高い耐指紋性をもつ保護膜を形成することが可能な金属保護コーティングを提供する。
【解決手段】水溶性シリケート、促進剤、シランカップリング剤、酸化ケイ素パッキング、水溶性膜形成樹脂、水を含有する原料混合物を均一に混合することによって得られる金属保護コーティングであって、促進剤は、セルロース類およびこれらの可溶性塩から選択される少なくとも1種であり、シランカップリング剤は、式(1)で示される第1のシラン誘導体を含有し、式中、R、R、Rは、それぞれメトキシルまたはエチオキシルであり、nは、1〜4の範囲の整数である、金属保護コーティング。(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年9月28日に出願された中国出願第201110301944.9号、表題「金属保護コーティング、溶融Znメッキ金属材料および溶融Al−Znメッキ金属材料(Metal Protective Coating,Hot−Dip Zn Metallic Material and Hot−Dip Al−Zn Metallic Materia)」の優先権を主張し、この出願は、参考によって具体的かつ完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、金属保護領域に関し、特定的には、金属保護コーティング、溶融Znメッキ金属材料および溶融Al−Znメッキ金属材料に関する。
【背景技術】
【0003】
溶融メッキ金属材料(溶融Znメッキ金属材料および溶融Al−Znメッキ金属材料を含む)は、腐食を防ぐために、その表面を金属保護コーティング層でコーティングされ、保護膜を形成する。
したがって、金属保護コーティングの性質は、溶融メッキ金属材料の腐食を防ぐのに非常に重要である。
【0004】
例えば、特許文献1は、不動態化液を開示しており、この不動態化液は、金属保護コーティングにも属しており、不動態化剤は、水溶性モリブデン化合物、ホウ酸、水溶性有機物質、シリカゾルを含む水溶液であり、水溶性有機物質は、アルコールと有機カルボン酸の混合物である。
【0005】
しかし、実験から、金属保護コーティングによって形成される保護膜の耐腐食性、耐水性、耐熱性、耐指紋性が、まだ十分に良好ではないことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願第CN101608306A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐腐食性、耐水性、耐熱性、耐指紋性について、既存の金属保護コーティング材料によって形成される保護膜の欠点を克服することであり、また、高い耐腐食性、高い耐水性、高い耐熱性、高い耐指紋性をもつ保護膜を形成することが可能な金属保護コーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、水溶性シリケート、促進剤、シランカップリング剤、酸化ケイ素パッキング、水溶性膜形成樹脂、水を含有する原料混合物を均一に混合することによって得られる金属保護コーティングであって、促進剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースおよびこれらの可溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、シランカップリング剤は、式(1)で示される第1のシラン誘導体を含有し、
(1)

式中、R、R、Rは、メトキシルまたはエチオキシルであり、nは、1〜4の範囲の整数である、金属保護コーティングを提供する。
【0009】
本発明は、さらに、溶融Znメッキ金属基板と、該溶融Znメッキ金属基板に接着するコーティング層とを備える溶融Znメッキ金属材料であって、コーティング層は、上述の金属保護コーティングの硬化した生成物である溶融Znメッキ金属材料を提供する。
【0010】
本発明は、さらに、溶融Al−Znメッキ金属基板と、溶融Al−Znメッキ金属基板に接着するコーティング層とを備える溶融Al−Znメッキ金属材料であって、コーティング層は、上述の金属保護コーティングの硬化した生成物である溶融Al−Znメッキ金属材料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上の技術的なスキームを用い、本発明で提供される金属保護コーティングによって形成される保護膜は、顕著な耐腐食性、耐水性、耐熱性、耐指紋性といった性質を有する。
【0012】
本発明の他の特徴および利点を、以下の実施形態でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本明細書に記載の実施形態は、単に、本発明を記述し、説明するためだけに与えられているが、本発明を限定する構成であるとみなすべきではないことを理解されたい。
【0014】
本発明で提供される金属保護コーティングは、水溶性シリケート、促進剤、シランカップリング剤、酸化ケイ素パッキング、水溶性膜形成樹脂、水を含有する原料混合物を均一に混合することによって得られ、促進剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースおよびこれらの可溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、シランカップリング剤は、式(1)で示される第1のシラン誘導体を含有し、
(1)

式中、R、R、Rは、メトキシルまたはエチオキシルであり、nは、1〜4の範囲の整数である。
【0015】
ここで、金属保護コーティングは、原料混合物を均一に混合することによって得られ、安定で均一な液体である。
好ましくは、原料混合物の成分を均一に混合した後、1〜180日以内に金属保護コーティングを塗布する。
ここで、成分を混合する順序に特別な要件はなく、つまり、均質で安定な相が得られるのであれば、原料混合物の成分を同時に、バッチで、または段階的に直接混合し得、好ましくは、成分を混合している間、原料混合物を撹拌し、原料混合物をさらに均一にする。
【0016】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、水溶性シリケート1重量部(pbw)を基準として、促進剤の用量は0.2〜1.8pbw、好ましくは、0.5〜0.7pbwであり得る。
【0017】
ここで、1pbwの水溶性シリケートに対し、シランカップリング剤の用量は、0.5〜4.5pbw、このましくは1.4〜1.8pbwであり得る。
【0018】
ここで、1pbwの水溶性シリケートに対し、酸化ケイ素パッキングの用量は、0.25〜2.2pbw、好ましくは0.6〜0.85pbwであり得る。
【0019】
ここで、1pbwの水溶性シリケートに対し、固体物質について計算すると、水溶性膜形成樹脂の用量は、0.8〜6.8pbw、好ましくは、2.1〜2.7pbwであり得る。
【0020】
ここで、1pbwの水溶性シリケートに対し、水の用量は、10〜100pbw、好ましくは、25〜40pbwであり得る。
【0021】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、水溶性シリケートは、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムであり得る。
【0022】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、促進剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースおよびこれらの可溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、これらの可溶性塩は、ナトリウム塩および/またはカリウム塩、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カリウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシエチルセルロース、カリウムカルボキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロース、カリウムカルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースであり得、金属保護コーティングの性能をさらに向上させるために、好ましくは、促進剤はメチルセルロースである。
【0023】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、式(1)に示される第1のシラン誘導体では、R、R、Rのうち、少なくとも1つはメトキシルであるか、または、R、R、Rのうち、少なくとも2つはメトキシルであるか、または、R、R、Rはすべてメトキシルであり、nは、1、2、3または4であり得、金属保護コーティングの性能をさらに向上させるために、好ましくは、式(1)に示される第1のシラン誘導体では、R、R、Rのすべてがメトキシルであり、nが2である。
つまり、式(1)で示される第1のシラン誘導体は、2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−エチル−トリメトキシシランである。
【0024】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、金属保護コーティングの性能をさらに向上させるために、好ましくは、シランカップリング剤は、さらに、第2のシラン誘導体を含み、第2のシラン誘導体は、γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、γ−グリシドールエーテルプロポキシ−トリメトキシシラン、γ−メタクリル−オキシ−プロピル−トリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0025】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、金属保護コーティングの性能をさらに向上させるために、好ましくは、第1のシラン誘導体と第2のシラン誘導体の重量比は1:0.1〜0.4、さらに好ましくは、1:0.2〜0.3である。
【0026】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、酸化ケイ素パッキングについて特別な要件はなく、つまり、酸化ケイ素パッキングは、任意の酸化ケイ素系パッキング材料であり得、例えば、酸化ケイ素パッキングは、ナノメートル二酸化ケイ素粉末および/またはシリカゾルであり得、好ましくは、酸化ケイ素パッキングは、粒径が10〜90nmのナノメートル二酸化ケイ素粉末である。
【0027】
本発明で提供される金属保護コーティングにおいて、水溶性膜形成樹脂は、膜を形成可能な任意の水溶性の改質樹脂または未改質樹脂であり得、本発明の水溶性膜形成樹脂について特別な要件はなく、例えば、水溶性膜形成樹脂は、水溶性ポリエステル膜形成樹脂(例えば、Guangzhou LAPO Fine Chemical Co.,Ltd.製ポリエステル樹脂CB2200)、水溶性スチレン−アクリル膜形成樹脂(例えば、Guangzhou Chaolong Chemical Technology Co.,Ltd.製スチレン−アクリルエマルジョンxy−108b)、水溶性エポキシ膜形成樹脂(例えば、Dongguan Heima Chemical Co.,Ltd.製エポキシ樹脂BH620)、水溶性ポリウレタン膜形成樹脂(例えば、Fujian Jinjiang Jianhua Co.,Ltd.製ポリウレタン樹脂812)、水溶性シリコーン−アクリル膜形成樹脂(例えば、Qingdao Xingguo Paint Co.,Ltd.製シリコーン−アクリルエマルジョンTC−05、固形分含有量48wt%)、水溶性アクリル膜形成樹脂(例えば、Guangzhou Oupeng Chemical Co.,Ltd.製アクリル樹脂A−3418)、水溶性フルオロカーボン膜形成樹脂(例えば、Beijing Sokang Nano Technology Co.,Ltd.製水溶性フルオロカーボンエマルジョンSKFT−I)からなる群から選択される少なくとも1種であり得、好ましくは、水溶性膜形成樹脂は、水溶性スチレン−アクリル膜形成樹脂、水溶性エポキシ膜形成樹脂、水溶解性シリコーン−アクリル膜形成樹脂、水溶性アクリル膜形成樹脂、水溶性ポリウレタン膜形成樹脂、水溶性ポリエステル膜形成樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0028】
上述の成分以外に、本発明で提供される金属保護コーティングはまた、金属保護コーティングの性質に悪影響を与えない他の成分、例えば、染料、顔料、分散剤、消泡剤のうち1つ以上を含有し得る。金属保護コーティングの合計重量を基準として、他の成分の合計含有量は、20wt%を超えず、好ましくは、10wt%を超えない。
消泡剤は、当該技術分野でよく知られた任意の消泡剤、例えば、ポリエーテル消泡剤、高級アルコール、シリコン消泡剤、ポリエーテル修飾シリコーン消泡剤などのうち1つ以上であり得る。
さらに具体的には、消泡剤は、Dongying Shidachuangxin Science & Technology Co.Ltd.から購入した1種類以上のSD−401シリーズの消泡剤であり得る。
好ましくは、金属保護コーティングの合計重量を基準として、消泡剤の含有量は0.01〜0.05wt%である。
【0029】
本発明で提供される溶融Znメッキ金属材料は、溶融Znメッキ金属基板と、溶融Znメッキ金属物質に接着するコーティング層とを備え、コーティング層は、上述の金属保護コーティングの硬化した生成物である。
【0030】
ここで、溶融Znメッキ金属基板は、亜鉛メッキを備える金属基板であり、亜鉛メッキは、亜鉛含有量が92.5〜95.5wt%であり得る。
亜鉛メッキはまた、亜鉛メッキで従来から用いられている他の成分(例えば、シリコン)を含有し得る。
【0031】
本発明で提供される溶融Znメッキ金属材料において、コーティング層の厚みは、溶融Znメッキ金属材料の耐腐食性コーティング層の通常の厚みであり得、コーティング層の性能を向上させるために、好ましくは、コーティング層の厚みは、0.05〜2μm、さらに好ましくは、0.1〜1μmである。
【0032】
本発明で提供される溶融Znメッキ金属材料において、コーティング層を溶融Znメッキ金属基板に接着する方法は、溶融Znメッキ金属基板の表面に金属保護コーティングを塗布することと、次いで、乾燥することとを含み得、乾燥温度は、60〜120℃、好ましくは、90〜110℃であり得、乾燥時間は、0.5〜3秒であり得る。
金属保護コーティングの用量は、コーティング層の厚みにしたがって決定し得る。
【0033】
発明で提供される溶融Al−Znメッキ金属材料は、Al−Znメッキ金属基板と、溶融Al−Znメッキ金属基板に接着するコーティング層とを備え、コーティング層は、上述の金属保護コーティングの硬化した生成物である。
【0034】
ここで、溶融Al−Znメッキ金属基板は、Al−Znメッキを備える金属基板であり、Al−Znメッキにおいて、Zn含有量は、41.5〜43.5wt%であり得、Al含有量は、51.5〜55.0wt%であり得る。
また、Al−Znメッキは、Al−Znメッキで従来から用いられている他の成分(例えば、シリコン)を含有し得る。
【0035】
本発明で提供される溶融Al−Znメッキ金属材料において、コーティング層の厚みは、溶融Al−Znメッキ金属材料の耐腐食性コーティング層の通常の厚みであり得、コーティング層の性能を向上させるために、好ましくは、コーティング層の厚みは、0.05〜2μm、さらに好ましくは、0.1〜1μmである。
【0036】
本発明で提供される溶融Al−Znメッキ金属材料において、コーティングを溶融Znメッキ金属基板に接着する方法は、溶融Al−Znメッキ金属基板の表面に金属保護コーティングを塗布することと、次いで、乾燥することとを含み得、乾燥温度は、60〜120℃、好ましくは、90〜110℃であり得、乾燥時間は、0.5〜3秒であり得る。
金属保護コーティングの用量は、コーティング層の厚みにしたがって決定し得る。
【0037】
ここで、乾燥方法は、温風乾燥、誘導加熱、赤外線照射加熱のうち、1種類以上から選択され得る。
【0038】
本発明では、特に明記しない限り、任意の液体または固体の容積は、標準的な大気圧下、20℃での容積を指す。
【0039】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0040】
1pbwの水溶性シリケート(NaSiO)、0.6pbwの促進剤(メチルセルロース)、1.6pbwのシランカップリング剤(第1のシラン誘導体であるHubei Debang Fine Chemical Co.,Ltd.から購入した(2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−エチル−トリメトキシシラン)および第2のシラン誘導体(Hubei Debang Fine Chemical Co.,Ltd.から購入したγ−アミノプロピル−トリエトキシシラン)を重量比で1:0.25混合)、0.72pbwの酸化ケイ素パッキング(GE(USA),RNS−Eから購入したナノメートル二酸化ケイ素粉末、平均粒径20nm)、2.4pbw(固体物質で計算)の水溶性膜形成樹脂(水溶性シリコーン−アクリル膜形成樹脂(Qingdao Xingguo Paint Co.,Ltd.から購入したシリコーン−アクリルエマルジョンTC−05、固形分含有量48wt%)、28pbwの水を、1,500rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、混合して均一な状態とし、本実施例の金属保護コーティングを得る。
【実施例2】
【0041】
1pbwの水溶性シリケート(KSiO)、0.5pbwの促進剤(メチルセルロース)、1.4pbwのシランカップリング剤(第1のシラン誘導体であるHubei Debang Fine Chemical Co.,Ltd.から購入した(2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−エチル−トリエトキシシラン)および第2のシラン誘導体(Hubei Debang Fine Chemical Co.,Ltd.から購入したγ−グリシドールエーテルプロポキシ−トリメトキシシラン)を重量比で1:0.4混合)、0.6pbwの酸化ケイ素パッキング(GE(USA),RNS−Eから購入したナノメートル二酸化ケイ素粉末、平均粒径20nm)、2.1pbwの固体物質で計算)水溶性膜形成樹脂(水溶性アクリル膜形成樹脂(Guangzhou Oupeng Chemical Co.,Ltd.から購入したアクリル樹脂A−3418)、25pbwの水を、1,500rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、混合して均一な状態とし、本実施例の金属保護コーティングを得る。
【実施例3】
【0042】
1pbwの水溶性シリケート(NaSiO)、0.7pbwの促進剤(カルボキシエチルセルロース)、1.8pbwのシランカップリング剤(第1のシラン誘導体であるHubei Debang Fine Chemical Co.,Ltd.から購入した(2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−プロピル−トリメトキシシラン)および第2のシラン誘導体(Hubei Debang Fine Chemical Co.,Ltd.から購入したγ−グリシドールエーテルプロポキシ−トリメトキシシラン)を重量比1:0.1で混合)、0.85pbwの酸化ケイ素パッキング(30wt%シリカゾル、固体物質で計算)、2.7pbw(固体物質で計算)の水溶性膜形成樹脂(水溶性ポリウレタン膜形成樹脂(Fujian Jinjiang Jianhua Co.,Ltd.から購入したポリウレタン樹脂812)、40pbwの水を、1,500rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、混合して均一な状態とし、本実施例の金属保護コーティングを得る。
【実施例4】
【0043】
実施例1に記載した方法で金属保護コーティングを製造するが、以下の点が異なっている。水溶性フルオロカーボン膜形成樹脂(Beijing Sokang Nano Technology Co.,Ltd.から購入した水溶性フルオロカーボンエマルジョンSKFT−I)を水溶性膜形成樹脂として使用する。
【実施例5】
【0044】
実施例1に記載した方法で金属保護コーティングを製造するが、以下の点が異なっている。水溶性スチレン−アクリル膜形成樹脂(Guangzhou Chaolong Chemical Technology Co.,Ltd.から購入したスチレン−アクリルエマルジョンxy−108b)を水溶性膜形成樹脂として使用する。
【実施例6】
【0045】
実施例1に記載した方法で金属保護コーティングを製造するが、以下の点が異なっている。
第2のシラン誘導体を加えない。
【比較例1】
【0046】
実施例1に記載した方法で金属保護コーティングを製造するが、以下の点が異なっている。
促進剤を加えない。
【比較例2】
【0047】
実施例1に記載した方法で金属保護コーティングを製造するが、以下の点が異なっている。
第1のシラン誘導体を加えない。
【調製例1】
【0048】
実施例1〜6で得られた金属保護コーティングと、比較例1〜2で得られた金属保護コーティングを使用して、これらをそれぞれZnメッキ鋼シート(Pangang Group Panzhihua Vanadium & Titanium Co.,Ltd.から購入したDX54D型、Znメッキ中に95wt%のZn)に塗布し、90〜110℃の温風で2秒間乾燥させ、処理したZnメッキ鋼シート1〜8を得る。
ここで、金属保護コーティングの用量は、Znメッキ鋼シート1〜8のコーティング層の厚みが0.8μmになるように適宜決定される。
コーティング層の厚みは、XRF unit(蛍光X線分光計)を用いて測定した値である。
【調製例2】
【0049】
実施例1〜6で得られた金属保護コーティングと、比較例1〜2で得られた金属保護コーティングを使用して、これらをそれぞれAl−Znメッキ鋼シート(Pangang Group Panzhihua Vanadium & Titanium Co.,Ltd.から購入したDX51D+AZ型、Al−Znメッキ中に42.5wt%のZnと52.3wt%のAl)に塗布し、90〜110℃の温風で2秒間乾燥させ、処理したAl−Znメッキ鋼シート1〜8を得る。
ここで、金属保護コーティングの用量は、Al−Znメッキ鋼シート1〜8のコーティング層の厚みが0.8μmになるように適宜決定される。
コーティング層の厚みは、XRF unit(蛍光X線分光計)を用いて測定した値である。
【試験例1】
【0050】
GB/T10125−1997によって中性塩噴霧試験を行い、Znメッキ鋼シート1〜8とAl−Znメッキ鋼シート1〜8の耐腐食性能を測定する。
このシートは、「96時間塩噴霧試験の後、腐食面積が20%未満である」という基準にしたがい、許容される範囲にあると評価される。
【0051】
Znメッキ鋼シート1〜8およびAl−Znメッキ鋼シート1〜8の耐水性能を以下の方法を用いて測定する。
【0052】
水平に置かれたZnメッキ鋼シート1〜8とAl−Znメッキ鋼シート1〜8の表面に約2mlの沸騰した水を液滴として加え、シートを自然に24時間乾燥させ、水滴を落とした部分に3M接着テープを貼り、接着テープを剥がし、シミのある点を数え、接着テープ1cmあたり、シミの点の数にしたがって、膜の耐水性能を判定する。
シミの点が多いほど、耐水性能は悪い。
【0053】
Znメッキ鋼シート1〜8およびAl−Znメッキ鋼シート1〜8の耐熱性能を以下の方法を用いて測定する。
【0054】
Znメッキ鋼シート1〜8およびAl−Znメッキ鋼シート1〜8を熱風炉に入れ、300℃で20分間ベーキングし、次いで、これを取り出し、コーティング表面に形態変化があるかどうかを調べ、ベーキング前後のサンプル表面の△L(輝度の変動)、△a(赤色および緑色の変動)、△b(黄色および青色の変動)を比色計で測定し、ΔE(色収差)=(△L+△a+△b1/2を計算する。
ΔEが小さいほど、コーティングの耐熱性能は高い。
【0055】
Znメッキ鋼シート1〜8およびAl−Znメッキ鋼シート1〜8の耐指紋性を以下の方法を用いて測定する。
【0056】
0.5g/mのワセリン塗布前後のZnメッキ鋼シート1〜8およびAl−Znメッキ鋼シート1〜8の△L(輝度の変動)、△a(赤色および緑色の変動)、△b(黄色および青色の変動)を比色計で測定し、ΔE(色収差)=(△L+△a+△b1/2を計算する。ΔEが小さいほど、耐指紋性能は大きい。
【0057】
試験結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1のデータから、本発明で提供される金属保護コーティングによって形成される保護膜は、顕著な耐腐食性、耐水性、耐熱性、耐指紋性といった性質をもつことが理解し得る。
【0060】
それに加え、シランカップリング剤が第2のシラン誘導体も含有する場合、金属保護コーティングから形成される保護膜の耐腐食性、耐水性、耐熱性、耐指紋性といった性質は、さらに向上し得る。
【0061】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を上述したが、本発明は、これらの実施形態の詳細に限定されない。
当業者は、本発明の精神を逸脱することなく、本発明の技術スキームの改変例および変形例を作成し得る。
しかし、これらすべての改変例および変形例は、本発明の保護範囲にあると考えるべきである。
【0062】
それに加え、上の実施形態で記載した具体的な技術的特徴は、矛盾がない限り、任意の適切な形態と組み合わせ得ることを留意されたい。
不必要な繰り返しを避けるために、可能な組み合わせを本発明で具体的には記載していない。
【0063】
さらに、必要な場合、組み合わせることによって本発明の理想および精神から逸脱しない限り、本発明の異なる実施形態を自由に組み合わせ得る。
しかし、このような組み合わせも、本発明で開示した範囲に入ると考えるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性シリケート、促進剤、シランカップリング剤、酸化ケイ素パッキング、水溶性膜形成樹脂、水を含有する原料混合物を均一に混合することによって得られる金属保護コーティングであって、
促進剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル−ヒドロキシエチルセルロースおよびこれらの可溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、
シランカップリング剤は、式(1)で示される第1のシラン誘導体を含有し、
(1)

式中、R1、R2、R3は、それぞれメトキシルまたはエチオキシルであり、nは、1〜4の範囲の整数である
金属保護コーティング。
【請求項2】
水溶性シリケート1重量部を基準として、促進剤の用量は、0.2〜1.8重量部であり、シランカップリング剤の用量は0.5〜4.5重量部であり、酸化ケイ素パッキングの用量は0.25〜2.2重量部であり、固体物質で算出した水溶性膜形成樹脂の用量は、0.8〜6.8重量部であり、水の用量は10〜100重量部である
請求項1に記載の金属保護コーティング。
【請求項3】
水溶性シリケート1重量部に対して、促進剤の用量は0.5〜0.7重量部であり、シランカップリング剤の用量は1.4〜1.8重量部であり、酸化ケイ素パッキングの用量は0.6〜0.85重量部であり、固体物質で算出した水溶性膜形成樹脂の用量は、2.1〜2.7重量部であり、水の用量は25〜40重量部である
請求項2に記載の金属保護コーティング。
【請求項4】
促進剤がメチルセルロースである
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属保護コーティング。
【請求項5】
、R、Rがすべてメトキシルであり、nが2である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属保護コーティング。
【請求項6】
シランカップリング剤は、さらに、第2のシラン誘導体を含み、
第2のシラン誘導体は、γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、γ−グリシドールエーテルプロポキシ−トリメトキシシラン、γ−メタクリル−オキシ−プロピル−トリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属保護コーティング。
【請求項7】
第1のシラン誘導体と第2のシラン誘導体の重量比は、1:0.1〜0.4である
請求項6に記載の金属保護コーティング。
【請求項8】
酸化ケイ素パッキングが二酸化ケイ素ナノ粉末および/またはシリカゾルである
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属保護コーティング。
【請求項9】
水溶性膜形成樹脂が、水溶性ポリエステル膜形成樹脂、水溶性スチレン−アクリル膜形成樹脂、水溶性エポキシ膜形成樹脂、水溶性ポリウレタン膜形成樹脂、水溶性シリコーン−アクリル膜形成樹脂、水溶性アクリル膜形成樹脂、水溶性フルオロカーボン膜形成樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属保護コーティング。
【請求項10】
溶融Znメッキ金属基板と、溶融Znメッキ金属基板に接着するコーティング層とを備える溶融Znメッキ金属材料であって、
コーティング層が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属保護コーティングの硬化した生成物である
溶融Znメッキ金属材料。
【請求項11】
コーティング層の厚みが0.05〜2μmである
請求項10に記載の溶融Znメッキ金属材料。
【請求項12】
コーティング層を溶融Znメッキ金属基板に接着する方法が、溶融Znメッキ金属基板の表面に金属保護コーティングを塗布することと、次いで、60〜120℃で0.5〜3秒間乾燥させることとを含む
請求項10または11に記載の溶融Znメッキ金属材料。
【請求項13】
溶融Al−Znメッキ金属基板と、溶融Al−Znメッキ金属基板に接着するコーティング層とを備える溶融Al−Znメッキ金属材料であって、
コーティング層が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属保護コーティングの硬化した生成物である
溶融Al−Znメッキ金属材料。
【請求項14】
コーティング層の厚みが0.1〜1μmである
請求項13に記載の溶融Al−Znメッキ金属材料。
【請求項15】
コーティング層を溶融Al−Znメッキ金属基板に接着する方法が、溶融Al−Znメッキ金属基板の表面に金属保護コーティングを塗布することと、次いで、60〜120℃で0.5〜3秒間乾燥させることとを含む
請求項13または14に記載の溶融Al−Znメッキ金属材料。

【公開番号】特開2013−72140(P2013−72140A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−212195(P2012−212195)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(509069401)攀鋼集團攀枝花鋼鐵研究院有限公司 (3)
【氏名又は名称原語表記】PanGang Group Panzhihua Iron & Steel Research Institute Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.90 Taoyuan Road, East District, Panzhihua, Sichuan Province 617000, P.R.China
【Fターム(参考)】