説明

金属化フィルムの製造方法および金属化フィルムの製造装置

【課題】金属化フィルムの破損することなく製造する。
【解決手段】帯状のプラスチックのフィルム12と、帯状の支持板16を貼り合わせ、貼り合わせた状態で、差圧シール機構30を介し、蒸着室36に導入する。蒸着室36内でフィルム12に金属膜を蒸着し、金属膜が蒸着された金属化フィルム44と支持板16が貼り付けられた状態で、差圧シール機構30を介し、蒸着室36から排出する。その後、支持板16を金属化フィルムから剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに用いる金属化フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、一対の電極を、誘電体を介して配置することによって構成され、その容量を大きくするためには、電極および誘電体を薄くすると共に面積を大きくする必要がある。このために、電極と誘電体として、長尺のプラスチックフィルムに金属を蒸着した金属化フィルムを用いることで大容量化したコンデンサが知られている。特に、ハイブリッド自動車や、電気自動車などでは、インバータの入力電圧を平滑するためのコンデンサなど大容量コンデンサが必要とされるが、車載する都合上なるべく小型、軽量のものが望まれ、金属化フィルムを利用したコンデンサが好適である。そして、このようなコンデンサでは、金属化フィルムを効率的に製造したいという要求がある。
【0003】
特許文献1では、フィルムローラに巻回されたプラスチックフィルムを巻きだして、これ移動させながら蒸着室を通過させてプラスチックフィルムに金属膜を蒸着する。そして、蒸着済みのプラスチックフィルムを巻き取りロールに巻き取ることで金属化フィルムを製造する。そして、蒸着室における蒸着を可能とするために、装置全体を真空室内に収容する。
【0004】
特許文献2では、フィルムローラと、巻き取りローラを真空室の外部に配置し、真空室のフィルムの出入り口には、シール用のローラを複数段配設してここをシールする。そして、フィルムローラから巻きだしたフィルムを真空室内に送り込み、ここで表面に金属膜を蒸着して、その後蒸着されたフィルムを外に取り出している。また、フィルムの最初の送り出しの際には、ガイドベルトで移動するガイドシートにフィルムを固定して、真空室内を通過する経路にフィルムを移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−224444号公報
【特許文献2】特開平03−120363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、真空室をオープンし、原反(フィルムを巻回したロール状のもの)をセットし、真空引きにより所定の真空状態とし、その後フィルムを移動しながら蒸着し、真空室をオープンし蒸着後の金属化フィルムを取り出す、という工程を原反のセットの度に繰り返さなければならない。
【0007】
特許文献2では、真空シール機構の前後における差圧により、乱流が発生などして、フィルムに大きな力が掛かり、フィルムが破断するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属化フィルムの製造方法または製造装置であって、帯状のプラスチックフィルムと、帯状の支持板を貼り合わせ、貼り合わせた状態で、シール機構を介し、蒸着室に導入し、蒸着室内でプラスチックフィルムに金属膜を蒸着し、金属膜が蒸着されたプラスチックフィルムと支持板が貼り付けられた状態で、シール機構を介し、蒸着室から排出し、前記支持板を金属膜が蒸着されたプラスチックフィルムから剥離することで、金属化フィルムを得ることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記プラスチックフィルムと、前記支持板を貼り合わせる前に前記プラスチックフィルムまたは前記支持板を帯電させておき、前記プラスチックフィルムと、前記支持板とを静電力を利用して貼り合わせることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルムをシール機構を介し蒸着室に導入し、蒸着を行った後シール機構を介し外に送出する。従って、フィルムの蒸着室への導入、金属化フィルムの取り出しの際に、蒸着室を開放する必要がなく、効率的な金属化膜の製造が可能となる。そして、支持板を用いて、フィルムを保護するため、フィルムが乱流によって震えて破れたりするのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る金属化フィルムの製造装置の構成を示す図である。
【図2】差圧室における乱流の発生を説明する図である。
【図3】金属化膜製造のための工程を説明する図である。
【図4】他の実施形態を説明する図である。
【図5】さらに、他の実施形態を説明する図である。
【図6】さらに、他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、金属化フィルムコンデンサのための金属化フィルムの製造装置を示している。フィルムローラ10には、帯状のプラスチックのフィルム(プラスチックフィルム)12が巻き付けられている。フィルムローラ10が回転することで、フィルム12が巻出される。ここで、フィルム12としては、ポリプロピレン(PP)などコンデンサの誘電材料として用いられる材料が適宜採用される。なお、フィルム12は、例えばポリプロピレンの場合、厚み10μm程度のものが利用するとよい。
【0014】
また、支持板ローラ14には、帯状の支持板16が巻き付けられており、支持板ローラ14が回転することで、支持板16が巻出される。支持板16としては、金属が強度や柔軟性などの観点から好適であり、アルミニウムや、ステンレス材などが利用されるが、シリコン樹脂などの強度および柔軟性があり、安定な樹脂などが採用される。例えば、支持板16としては、アルミニウムであって、厚み0.1mm程度のものが採用される。
【0015】
フィルムローラ10および支持板ローラ14から巻出されたフィルム12および支持板16は、一対の貼り合わせローラ20,20間に導入され、この貼り合わせローラ20,20によって押圧されることで直接貼り合わせられ、合一体18となる。この例では、上方に配置された支持板ローラ14から下方に向けて支持板16が送られてきて、左側方に位置しているフィルムローラ10からのフィルム12の左側の面(裏面)にフィルム12が貼り合わされる。フィルム12は、ある程度粘着性があり、押しつけられることで、支持板16に貼り合わされる。
【0016】
貼り合わされたフィルム12と支持板16の合一体18は、真空チャンバ32のフィルム導入側に設けられた差圧シール機構30に導入される。この差圧シール機構30は、真空チャンバ32のフィルム排出側にも設けられている。差圧シール機構30は、合一体18が導入されて、これを両側から押しつける一対のシールローラ22,22を複数段有している。このシールローラ22,22は、真空チャンバの側壁との間が非常狭い間隙とされており、シールローラ22,22の両側において差圧を維持することができる。そして、この一対のシールローラ22,22を複数段も受けることによって、シールローラ22,22によって仕切られた複数の差圧室34が差圧シール機構30内に形成される。
【0017】
複数段のシールローラ22の最下段の差圧室34の下流側は、蒸着室36となっている。そして、この蒸着室36から真空ポンプなどによる排気が行われる。従って、蒸着室36が最も真空度が高く、複数の差圧室34は、蒸着室36から離れるに従って大気圧に徐々に近づく圧力になっている。なお、蒸着室36は、通常1Pa以下の真空状態とされる。
【0018】
この蒸着室36には、冷却ローラ38が配置されており、上方から送られて来る合一体18はフィルム12を外側に位置させた状態で、冷却ローラ38の下半分に沿って折り返され、上方に向けて移動する。
【0019】
蒸着室36の底部には、蒸発源40が設けられている。この蒸発源40は、るつぼに蒸着物質を収容し、これを加熱することで、蒸着物質を合一体18のフィルム12の表面に蒸着する。従って、合一体18は、支持板16と金属が蒸着された金属化フィルム44が貼り合わされものとなる。ここで、蒸着物質としては、コンデンサの電極として利用可能な、アルムニウムや、亜鉛などが採用される。
【0020】
金属化フィルム44と支持板16からなる合一体18は、真空チャンバ32のフィルム排出側設けられた差圧シール機構30を通過して、真空チャンバ32の外側に送り出される。そして、一対の剥離ローラ42,42を通過したところで、支持板16と金属化フィルム44が分離され、金属化フィルム44は、右側に位置する巻き取りローラ46に巻き取られる。一方、支持板16は、上方に位置している巻き取りローラ48に巻き取られる。
【0021】
このようにして、フィルム12を支持板16に貼り合わせた状態で、差圧シール機構30を介し、真空チャンバ32内の蒸着室36に導入する。そして、蒸着部36において、金属をフィルム12の表面に真空蒸着し、得られた金属化フィルム44を支持板16に貼り合わせた状態で、差圧シール機構30を介し、真空チャンバ32の取り出し、支持板16を剥離して、金属化フィルム44を得る。従って、圧力の変化する差圧シール機構30の通過の際に強度の弱いフィルム12であっても、破れたりすることを防止できる。
【0022】
図2には、真空チャンバ32の外側から1段目の差圧室34に合一体18を導入する部分を示してある。なお、差圧室34同士の仕切り部分についても同様である。一対のシールローラ22,22に両側から押圧されながら合一体18は下方に移動される。ここで、一対のシールローラ22,22と差圧室を仕切る壁50の間には、若干の隙間が生じる。一対のシールローラ22,22は回転し、壁50は、固定されているため、若干の隙間が必然的に生じる。なお、移動する合一体を真空チャンバ32内の高真空の蒸着室36に導入するために多段の差圧室34からなる差圧シール機構30を設けているが、1つ1つの差圧室34を仕切る部分において、完全なシールをすることはできず、若干の隙間が生じる。
【0023】
そして、図示したように、空気は、真空度の高い方(圧力が低い方)の差圧室34に向けて流れ込む。この流れ込みによって、乱流が発生しやすい。フィルム12は、強度が小さく、従って発生した乱流によって、破損する可能性がある。しかし、本実施形態では、フィルムは、比較的強度の大きな支持板16に貼り付けられている。従って、乱流などによって破損することを効果的に防止することができる。
【0024】
図3には、金属化フィルムの製造工程について示してある。まず、装置に原反をセットする(S11)。すなわち、フィルム12をロール状とした原反をフィルムローラ10にセットする。次に、初期条件出しをして、装置の運転条件を設定する(S12)。送り出しや巻き取りを行う自回転ローラの回転スピードや、蒸着室36の真空度、るつぼの加熱温度など、本装置を行う初期条件を設定する。なお、基本的条件は、制御部において、一旦設定した場合にそれを記憶しておき、原反や製品仕様などに応じて変更するとよい。
【0025】
生産中は、次のような処理を繰り返し行う。すなわち、原反を送り出し(S21)、これを差圧シール機構30を介し、真空チャンバ32(蒸着室36)内にフィルム12を支持板16に貼り合わせた状態で導入する。そして、蒸着室36において、フィルム12に金属を蒸着する(S23)。そして、蒸着後の金属化フィルム44を支持板16と共に、差圧シール機構30を介し排出し(S24)、巻き取りローラ46に巻き取る(S25)。
【0026】
そして、1つの原反についての処理が終了した場合には、S11に戻り、次の原反について処理を行う。
【0027】
図4には、他の実施形態を示してある。この実施形態では、フィルムローラ10から巻出されたフィルム12の近くに、帯電装置52を有している。帯電装置52は、静電気を帯びさせるものであり、この例では、フィルム12を帯電させて、支持板16に静電力を利用して密着させる。帯電装置52としては、DC方式のイオナイザを利用することができる。例えば、放電針に直流電圧(DC)を印加してコロナ放電を行い+または−のいずれかのイオンを発生させ、これを対象に衝突させることで対象を帯電させることができる。
【0028】
物質は、+または−のいずれか一方の極性に帯電しやすい場合が多く、1つの帯電装置によって、他方と逆極性に帯電させることで、両者の密着力を向上し、しわやずれの発生を防止することができる。例えば、フィルム12がポリプロピレンであれば、−に帯電しやすいため、支持板16を+に帯電させるとよい。また、支持板16が金属であれば、直流の電圧を印加してもよい。さらに、帯電装置52を2つ設け、フィルム12と支持板16の両方を互いに逆極性となるように帯電させることも好適である。
【0029】
このような帯電による密着性の改善は、蒸着室36における真空蒸着に対し悪影響がなく、また剥離の際にも問題がない。従って、金属化フィルム44の製造において非常に効果的である。
【0030】
図5には、さらに他の実施形態を示してある。この例では、巻き取りローラ46の上流側にバッファ装置54を有している。このバッファ装置54は、複数のローラ間に金属化フィルム44を掛け渡しておくものである。そして、フィルムローラ10への原反のかけ直しなど蒸着処理を中断している間でも、金属化フィルム44の送出が可能となる。
【0031】
例えば、巻き取りローラ46を設けずに、金属化フィルム44をそのまま次工程に供給する場合などに、次工程への供給を停止する必要がなく、次工程での問題が生じない。なお、このバッファ装置54をフィルムローラ10から巻きだした位置(入口側)に配置することできる。これによって、原反交換の際にも、蒸着を停止しなくてもよい。また、バッファ装置を入口側に配置すると、フィルムローラ10を有さず、前工程からフィルム12が供給される場合に、フィルムの供給が止まっても、バッファ装置54から繰り出すフィルム12によって、蒸着処理を継続することができる。
【0032】
図6には、さらに他の実施形態を示してある。この例では、支持板16がエンドレス状(無端状)になっている。そして、支持板ローラ14、巻き取りローラ48に代えて、2つのローラ56に無端状の支持板16が掛け回されている。支持板16は、基本的に、いつまででもそのまま使い続けることができ、掛け換えなどが不要となる。
【0033】
さらに、図6の例では、支持板60を有し、これを貼り付けローラ20,20に導入し、フィルム12の表面側に貼り付ける構成となっており、フィルムは支持板16,60に表裏両面から支持される。そして、支持板60は、冷却ローラ38に接触する辺りまで下降した位置で、ローラ62の周りを回って上方向に反転される。これによって、支持板60がフィルム12の表面側から剥離され、蒸発源40からの蒸着物はフィルム12の表面に蒸着される。
【0034】
ローラ62によって反転された支持板60は、シールローラ22の脇を通って、真空チャンバ32の外部に至り、3つのローラ64に掛け回されて、貼り付けローラ20,20間に戻る。
【0035】
このように、フィルム12を表裏両面から支持板16,60で支持することで、フィルム12が差圧室34を通過する際に確実に破損から守ることができる。
【0036】
なお、シールローラ22をもう1つ設け支持板60を両側から押さえる構成としてもよい。さらに、図6では、冷却ローラ38の上流側についてのみ支持板60を設けフィルム12を両側から支持したが、同様の構成を冷却ローラ38の下流側にも設け、フィルムを保護することも好適である。
【0037】
図4,5,6に示した変形例は、それぞれ別々の機能であって、これらを全部備えることもでき、適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0038】
このように、実施形態に係る金属化フィルムの形成においては、真空チャンバ32の外側からフィルム12を真空チャンバ32内に導入し、真空室内で金属膜を蒸着した金属化フィルム44を真空チャンバ32から外に送出する。従って、フィルム12の真空チャンバへの導入、金属化フィルム44の取り出しの際に、真空チャンバ32を開放する必要がなく、効率的な製造が可能となる。また、支持板16を用いて、フィルム12を保護するため、大気中と、蒸着室36との移動過程において、フィルム12が乱流によって震えて破れたりするのを効果的に防止することができる。
【0039】
なお、本実施形態に係る金属化フィルムは、コンデンサだけでなく、薬の収容袋などにも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 フィルムローラ、12 フィルム、14 支持板ローラ、16,60 支持板、18 合一体、20,46,48,62,64,56 ローラ、22 シールローラ、30 差圧シール機構、32 真空チャンバ、34 差圧室、36 蒸着室、38 冷却ローラ、40 蒸発源、42 剥離ローラ、44 金属化フィルム、50 壁、52 帯電装置、54 バッファ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化フィルムの製造方法であって、
帯状のプラスチックフィルムと、帯状の支持板を貼り合わせ、
貼り合わせた状態で、シール機構を介し、蒸着室に導入し、
蒸着室内でプラスチックフィルムに金属膜を蒸着し、
金属膜が蒸着されたプラスチックフィルムと支持板が貼り付けられた状態で、シール機構を介し、蒸着室から排出し、
前記支持板を金属膜が蒸着されたプラスチックフィルムから剥離することで、金属化フィルムを得ることを特徴とする金属化フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属フィルムの製造方法であって、
さらに、前記プラスチックフィルムと、前記支持板を貼り合わせる前に前記プラスチックフィルムまたは前記支持板を帯電させておき、前記プラスチックフィルムと、前記支持板とを静電力を利用して貼り合わせることを特徴とする金属化フィルムの製造方法。
【請求項3】
金属化フィルムの製造装置であって、
帯状のプラスチックフィルムと、帯状の支持板を貼り合わせる貼り合わせ手段と、
貼り合わせた状態で、シール機構を介し、蒸着室に導入する導入手段と、
蒸着室内でプラスチックフィルムに金属膜を蒸着する蒸着手段と、
金属膜が蒸着されたプラスチックフィルムと支持板が貼り付けられた状態で、シール機構を介し、蒸着室から排出する排出手段と、
前記支持板を金属膜が蒸着されたプラスチックフィルムから剥離することで、金属化フィルムを得る剥離手段と、
を有することを特徴とする金属化フィルムの製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の金属フィルムの製造装置であって、
さらに、前記プラスチックフィルムと、前記支持板を貼り合わせる前に前記プラルチックフィルムまたは前記支持板を帯電させる帯電手段を有し、
帯電したプラスチックフィルムと、前記支持板とを静電力を利用して貼り合わせることを特徴とする金属化フィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−169358(P2012−169358A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27509(P2011−27509)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】