説明

金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法

【課題】径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、且つ保存性に優れた金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8nm以上3nm以下であり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8nm以上4nm未満であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、
ことを特徴とする金属化合物のコロイド溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物や金属塩などの金属化合物は触媒など様々な用途に用いられている。このような金属化合物においては、近年、その機能を十分に発揮させたり、バルク体にはない機能を発揮させたりするためにナノサイズ化が図られている。
【0003】
例えば、特開2008−19106号公報(特許文献1)には、金属イオンを含有する水溶液に水溶性アミンを添加し、水溶液のpHを4以上にすることによって一次粒子径がナノメートルオーダーの金属酸化物粒子の製造する方法が開示されている。さらに、金属酸化物粒子を含む水溶液のpHを1〜4に調整した後、超音波処理を施して前記金属酸化物粒子を一次粒子として分散した状態にすることが可能であることも開示されている。また、高分子分散剤を共存させて製造することにより金属酸化物粒子を水へ高分散させることが可能であることも開示されている。
【0004】
しかしながら、本発明者らが、セリウムイオン、ジルコニウムイオンおよびイットリウムイオンを含有する水溶液にジエタノールアミンおよびポリエチレングリコールを添加した後、得られた溶液に硝酸を添加してpH3に調整し、さらに超音波処理を施して金属酸化物のコロイド溶液を調製したところ、コロイド溶液中での金属酸化物粒子の粒子径はサブミクロンオーダーと大きく、さらにコロイド溶液の保存性も十分なものではなかった。
【0005】
また、特開2005−133135号公報(特許文献2)には、反応液を瞬時に混合し、配管内で反応を進行させて金属微粒子を形成させる方法が開示されており、この方法は、特に、界面活性剤を用いた逆ミセル法による金属微粒子形成に好適な方法であることが開示されている。そして、上記特許文献2には、混合方法として、高速撹拌混合方式、微小ギャップ混合方式、高圧混合方式が開示されている。しかしながら、前記高速撹拌混合方式に用いられる混合装置においては、反応液は反応場に滴下した後、混合されており、高い剪断力が付与された反応場に直接導入されて混合されるものではない。また、前記微小ギャップ混合方式に用いられる混合装置においては、狭小な反応場で剪断力を付与しながら反応液が供給されて混合されているが、反応液の供給口が離れており、瞬時の混合という観点においては十分なものではなかった。さらに、上記特許文献2には、高圧混合方式に用いられる混合装置としてY字型やT字型のものが開示されているが、これらにおいては反応液を配管内で衝突させて混合するものであり、剪断力を考慮したものではない。このため、上記特許文献2に記載の方法では、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している貴金属系コロイド溶液を得ることは困難であった。
【0006】
そこで、本発明者らは、ナノメートルオーダーの金属化合物微粒子が高度に分散したコロイド溶液およびその製造方法について鋭意検討し、先に、「粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nmであり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子の凝集体と、高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、前記凝集体が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が4〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記D50の2.5倍以下のものである、金属化合物のコロイド溶液」および「2種類以上の原料溶液を混合して金属化合物のコロイド溶液を製造する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は高分子分散剤を含有するものであり、3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することを特徴とする金属化合物のコロイド溶液の製造方法」という特許出願(特願2008−287007(特許文献3))を行なった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−19106号公報
【特許文献2】特開2005−133135号公報
【特許文献3】特願2008−287007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記特許文献3に記載の発明に続くものであり、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、且つ保存性に優れた金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金属化合物の原料である金属の硝酸塩および高分子分散剤を含有する2種類以上の原料溶液を所定の高剪断速度となっている領域に独立に直接導入して均質混合し、さらに、金属化合物結晶子を析出させると同時に単独の結晶子に高分子分散剤を吸着させることにより、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の金属化合物のコロイド溶液は、粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8nm以上3nm以下であり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8nm以上4nm未満であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の金属化合物のコロイド溶液において、前記高分子分散剤の含有量は前記金属化合物の結晶子の単位表面積に対して9〜21mg/mであることが好ましい。
【0012】
このような金属化合物のコロイド溶液としては、以下のような本発明の金属化合物のコロイド溶液の製造方法により製造されたものが好ましい。
【0013】
すなわち、本発明の金属化合物のコロイド溶液の製造方法は、2種類以上の原料溶液を混合して金属化合物のコロイド溶液を製造する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属の硝酸塩を含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は高分子分散剤を含有するものであり、3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することを特徴とする方法である。
【0014】
このようなコロイド溶液の製造方法においては、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属の硝酸塩を含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであることが好ましく、前記高分子分散剤を含有する原料溶液としては中和剤をさらに含むものがより好ましい。また、前記金属の硝酸塩を含有する原料溶液の陽イオン濃度としては0.01〜0.5mol/Lが好ましい。
【0015】
本発明に用いられる高分子分散剤の重量平均分子量としては800〜8000が好ましく、また、高分子分散剤としては(メタ)アクリル酸系重合体が好ましい。高分子分散剤として(メタ)アクリル酸系重合体を使用する場合、コロイド溶液のpHは5.0〜10.0に調整することがより好ましく、さらに、前記(メタ)アクリル酸系重合体中の全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合が90%以上100%以下である場合にはコロイド溶液のpHを5.0以上10.0以下に調整し、前記親水基を有する繰り返し単位の割合が50%以上90%未満である場合にはコロイド溶液のpHを7.0以上10.0以下に調整することが特に好ましい。
【0016】
なお、本発明の製造方法によって、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、金属化合物結晶子などのナノ粒子は水などの水性溶液中では凝集しやすく、通常、高分子分散剤を添加してナノ粒子に吸着させて凝集を抑制している。本発明に用いられる高分子分散剤もナノ粒子に吸着して凝集を抑制するものと推察されるが、高分子分散剤を添加して通常の攪拌を行なっただけでは粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、通常、高分子分散剤が一次粒子よりも大きく、架橋構造を形成しやすいため、高分子分散剤の架橋反応に伴って高分子分散剤が吸着したナノ粒子が凝集するため、また、高分子分散剤が複数の金属化合物結晶子に同時に吸着するためであると推察される。
【0017】
また、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加した場合にも粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、ポリエチレングリコールのみを添加した場合でも液中で凝集体が形成するが、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加すると金属化合物を生成させるために添加したジエタノールアミンが、生成した金属化合物粒子に吸着してポリエチレングリコールの吸着を阻害するため、ポリエチレングリコールによる凝集抑制効果がさらに劣るものとなり、また、ジエタノールアミンが金属化合物粒子に吸着しても液中で十分な立体障害斥力が作用せず、ジエタノールアミンによる凝集抑制効果も十分に発揮されないためであると推察される。また、ポリエチレングリコールの斥力発現作用が小さい上に吸着量が少ないため、斥力の作用が小さくなり、コロイド溶液の保存中に凝集体がさらに凝集して液中での分散性が低下するものと推察される。
【0018】
一方、本発明の製造方法においては、高分子分散剤の添加に加えて反応場に高い剪断力を付与しているため、金属化合物結晶子が析出するのと同時に高分子分散剤が結晶子に吸着し、金属化合物結晶子は、そのままの状態、または粒子径が更に小さく均一な凝集体の状態でコロイド溶液中に存在するものと推察される。また、高分子分散剤はコロイド溶液中で安定に存在するため、結晶子および小さな凝集体は凝集せず、コロイド溶液中で安定に分散しているものと推察される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、且つ保存性に優れた金属化合物のコロイド溶液を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に用いられる金属化合物コロイド溶液の製造装置の好適な一実施形態を示す模式縦断面図である。
【図2】図1に示すホモジナイザー10の先端部(攪拌部)を示す拡大縦断面図である。
【図3】図1に示す内側ステータ13の側面図である。
【図4】図1に示す内側ステータ13の横断面図である。
【図5】実施例1で得られたコロイド溶液中の金属化合物微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【図6】実施例3で得られたコロイド溶液中の金属化合物微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明の金属化合物のコロイド溶液について説明する。本発明の金属化合物のコロイド溶液は、粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8nm以上3nm以下であり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8nm以上4nm未満であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、ことを特徴とするものである。
【0023】
本発明において、金属化合物結晶子の粒度分布は、例えば、金属化合物の透過型電子顕微鏡観察において50個の金属化合物結晶子を抽出して結晶子径を直接測定することによって求めることができる。本発明のコロイド溶液に含まれる金属化合物結晶子は、このようにして測定された粒度分布において累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8nm以上3nm以下(好ましくは1.0nm以上2.0nm以下)であり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下(好ましくは1.3倍以下)のものである。このような結晶子径d50およびd90を有する金属化合物結晶子は比表面積が大きく、例えば高活性且つ高耐久性の触媒の出発原料として有用である。
【0024】
本発明のコロイド溶液中には、このような金属化合物の結晶子および/またはその凝集体からなる微粒子が分散している。このコロイド溶液中の微粒子の粒度分布は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。本発明のコロイド溶液中の微粒子は、このようにして測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が0.8nm以上4.0nm未満(好ましくは0.8nm以上3.0nm以下、より好ましくは0.8nm以上2.0nm以下)であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下(好ましくは2.0倍以下)のものである。このような粒子径D50およびD90を有する前記金属化合物微粒子は比表面積と耐熱性とのバランスに優れた触媒担体として有用である。また、前記金属化合物微粒子(例えば、セリアを主成分とする複合酸化物微粒子)を、拡散障壁として作用するアルミナ骨格を有する粒子と混合した場合、金属化合物微粒子とアルミナ骨格を有する粒子とを均一に配置させることによって高温においても高い比表面積を有する触媒担体を調製することができる。さらに、このアルミナ骨格を有する粒子の細孔径を変化させることによって、前記触媒担体の細孔径分布を任意に制御することが可能となる。また、前記金属化合物微粒子が金属化合物結晶子の凝集体である場合、この凝集体を熱処理することによってこの凝集体の粒子径に対応する大きさの結晶子を形成することができる。したがって、触媒担体の調製の際に本発明の金属化合物のコロイド溶液を用いることによって、触媒の使用温度領域に応じて理想的な形状の触媒担体を設計することが可能となり、例えば、ガス拡散性に最適な細孔径(1100℃で50m以上)を有し、拡散律速領域で理想的な触媒活性を有する高耐熱性の触媒を得ることが可能となる。
【0025】
本発明にかかる金属化合物に含まれる金属としては特に制限はないが、Ti、Zr、Al、Si、希土類金属(La、Ce、Pr、Y、Scなど)、アルカリ土類金属(Sr、Ca、Baなど)、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rh、Ag、Pt、Pd、Au、V、Mnなどが挙げられる。これらの金属は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、酸素ストレージ能と耐熱性を有するという観点からZr、Ce、Y、Al、Laが好ましい。
【0026】
また、本発明にかかる金属化合物としては特に制限はないが、前記金属の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物、これらの中間生成物などが挙げられる。前記金属酸化物としては、前記金属を1種含有する酸化物、前記金属を2種以上含有する複合酸化物、前記金属を1種含有する酸化物の混合物などが挙げられる。具体的な金属酸化物としては、CeO、ZrO、Y、TiO、Al、Fe、これらの複合酸化物、および混合物などが挙げられ、中でも、酸素ストレージ能と耐熱性を有するという観点から、CeOまたはZrOを主成分とする複合酸化物が好ましく、CeO−ZrO−Y3元系複合酸化物がより好ましい。
【0027】
また、前記金属水酸化物としては、前記金属を1種または2種以上含有する水酸化物、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的な金属水酸化物としては、Ce(OH)、Zr(OH)、Al(OH)、Ti(OH)、Fe(OH)などが挙げられる。さらに、前記金属塩としては、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、BaSO、CaCO、シュウ酸カルシウム、リン酸チタニウムなどが挙げられる。また、炭化物、窒化物、硫化物等についても同様である。
【0028】
本発明のコロイド溶液には高分子分散剤が含まれている。コロイド溶液中に高分子分散剤が存在することによって、前記金属化合物結晶子は、そのままの状態、または前記粒子径および前記粒度分布を有する凝集体の状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。
【0029】
本発明のコロイド溶液において、前記高分子分散剤の含有量としては、前記金属化合物結晶子の単位表面積に対して9〜21mg/mが好ましく、9〜15mg/mがより好ましい。高分子分散剤の含有量が前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。また、このようなコロイド溶液を用いて触媒担体を調製する場合、この高分子分散剤の含有量(添加量)を変化させることによって触媒担体の細孔径分布を任意に制御することができる。一方、前記高分子分散剤の含有量が前記下限未満になると金属化合物微粒子の表面を高分子分散剤が十分に被覆することができず、金属化合物微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中に遊離の高分子分散剤が多く存在するため、高分子分散剤の架橋反応が著しく進行し、より大きな凝集体が残存する傾向にある。
【0030】
このような高分子分散剤の重量平均分子量としては特に制限はないが、800〜8000が好ましく、800〜3000がより好ましい。高分子分散剤の重量平均分子量が前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、高分子分散剤の重量平均分子量が前記下限未満になると高分子分散剤が金属化合物微粒子に吸着しても立体障害や静電反発による斥力が十分に発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると高分子分散剤が金属化合物微粒子に比べて極端に大きくなり、より大きな凝集体が残存する傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0031】
本発明に用いられる高分子分散剤としては、(メタ)アクリル酸の単独重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と他のビニルモノマーとの共重合体といった(メタ)アクリル酸系重合体などが挙げられ、中でも、水溶性を保持するという観点から、(メタ)アクリル酸系重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸の単独重合体および(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体がより好ましい。
【0032】
また、高分子分散剤として(メタ)アクリル酸系重合体を用いた場合、本発明のコロイド溶液のpHは5.0〜10.0であることが好ましく、6.0〜9.0であることがより好ましい。コロイド溶液のpHが前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中のカルボキシル基が解離しないため、(メタ)アクリル酸系重合体の金属化合物微粒子への吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属化合物の種類にも依るが、金属化合物微粒子の表面が負にチャージしやすく、カルボキシル基が解離した(メタ)アクリル酸系重合体の吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0033】
また、前記(メタ)アクリル酸系重合体中の全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合としては、得られるコロイド溶液のpHが5.0以上7.0未満の場合には90%以上100%以下が好ましい。また、コロイド溶液のpHが7.0以上10.0以下の場合には親水基を有する繰り返し単位の割合は50%以上100%以下が好ましく、75%以上100%以下がより好ましい。親水基を有する繰り返し単位の割合が前記範囲にあると(メタ)アクリル酸系重合体が金属化合物微粒子にループトレイン型で吸着するため、立体障害による斥力が作用して金属化合物微粒子の凝集が効果的に抑制され、金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、親水基を有する繰り返し単位の割合が前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中の解離したカルボキシル基が不足し、(メタ)アクリル酸系重合体の金属化合物微粒子への吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0034】
本発明に用いられる溶媒としては、水が好ましい。したがって、本発明のコロイド溶液としてはコロイド水溶液が好ましい。
【0035】
このような本発明の金属化合物のコロイド溶液は、例えば、2種類以上の原料溶液(好ましくは原料水溶液。以下、同様である。)を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記金属の硝酸塩を含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記高分子分散剤を含有するものを使用し、これら原料溶液を剪断速度が3000sec−1以上となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することができる。前記金属化合物の原料として、対応する金属の硝酸塩を使用することによって、コロイド溶液中での粒子径が非常に小さい金属化合物微粒子(金属化合物の結晶子および/またはその凝集体)を得ることができる。また、この方法によれば、金属化合物結晶子が凝集しやすい水中においても、金属化合物結晶子をそのままの状態、または径がより更に小さく均一な凝集体の状態で分散させることが可能となる。
【0036】
このような金属化合物のコロイド溶液の製造に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。以下、図面を参照しながら、本発明の金属化合物のコロイド溶液を製造するための好適な装置ついて詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
【0037】
図1に示す製造装置は、高速攪拌装置としてホモジナイザー10を備えており、ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。ホモジナイザー10の先端部は、図2に示すように、凹型のローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凹型の外側ステータ12と、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凸型の内側ステータ13とを備えている。さらに、ローター11は、回転シャフト14を介してモーター15に接続されており、高速回転することが可能な構造となっている。
【0038】
そして、図1に示す製造装置においては、複数のノズル、すなわち、原料溶液Aを導入するためのノズル16Aと原料溶液Bを導入するためのノズル16Bとが、それぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられている。また、ノズル16Aには流路17Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル16Bには流路17Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)がそれぞれ接続されており、ローター11と内側ステータ13との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能な構造となっている。
【0039】
さらに、図1に示す製造装置においては、図3および図4に示すように、ノズル16Aおよびノズル16Bが、内側ステータ13におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸Xに対して直交する所定の面Yの外周方向に交互に設けられている。
【0040】
なお、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ12個ずつ設けられているが(24孔タイプ)、ノズル16Aおよびノズル16Bの数は特に限定されるものではない。したがって、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ1個ずつ設けられていればよいが(2孔タイプ)、原料溶液Aおよび原料溶液Bが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間をより短縮できるという観点から、ノズル16Aおよびノズル16Bの数はそれぞれ10個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましい。一方、ノズル16Aおよびノズル16Bのそれぞれの数の上限は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、交互に配置されたノズル16Aおよびノズル16Bの開口部の直径が0.1mm程度以上の寸法を取り得るようにすることが好ましい。このようにノズルの開口部の直径は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましい。
【0041】
また、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bが、ローター11の回転軸Xに対して直交する一つの面Yの外周方向に一列に交互に設けられているが、複数の面の外周方向に複数の列において交互に設けられていてもよい。
【0042】
以上説明した図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11の内周と内側ステータ13の外周との間の領域において、剪断速度が3000sec−1以上であることが好ましく、6000sec−1以上であることが特に好ましい。この領域の剪断速度が前記下限未満になると金属化合物微粒子の凝集と複数の微粒子に高分子分散剤が吸着した構造が分離されず、より大きな凝集体が残存する傾向にある。
【0043】
このような範囲の剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度およびローターとステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、例えば、内側ステータ13の外径12.2mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップ0.5mm、およびローター11と内側ステータ13との間のギャップ0.5mmの場合にはローター11の回転速度を好ましくは3000〜30000rpm、より好ましくは3000〜20000rpmに設定することによって前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。
【0044】
また、ローター11と内側ステータ13との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。さらに、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。このギャップの大きさの変化に対応してローター11の回転速度を調整することにより前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。これらのギャップが前記下限未満になるとギャップの詰まりが発生し易くなる傾向にあり、前記上限を超えると高い剪断速度を達成できなくなる傾向にある。
【0045】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとからそれぞれ供給された原料溶液Aおよび原料溶液Bが、前記領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.5msec以内)に均質混合されるようにノズル16Aおよびノズル16Bが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、ノズル16A(またはノズル16B)から導入された原料溶液A(または原料溶液B)がローター11の回転につれて移動し、隣接するノズル16B(またはノズル16A)の位置に到達してノズル16B(またはノズル16A)から導入された原料溶液B(または原料溶液A)と混合されるまでの時間をいう。
【0046】
以上、本発明のコロイド溶液の製造に用いられる装置について説明したが、本発明のコロイド溶液の製造方法は、図1に示す製造装置を用いる方法に限定されるものではない。例えば、図1に示す製造装置においては、2種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を構成してもよい。
【0047】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられているが、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられていてもよい。そのように構成すれば、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となる。なお、その領域における剪断速度は前記条件を満たすように設定する必要がある。
【0048】
次に、本発明のコロイド溶液の製造方法の好適な一実施形態について説明する。本発明のコロイド溶液の製造方法においては、原料溶液を導入する領域の剪断速度を前記範囲に設定し、前記各原料溶液を前記領域に独立して直接的に導入する。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11と内側ステータ13との間の領域の剪断速度が前記範囲となるようにローター11を高速回転させ、原料溶液Aおよび原料溶液Bをそれぞれノズル16Aおよびノズル16Bから前記領域に独立して直接的に導入する。このように極めて高い剪断速度となっている領域に直接導入された各原料溶液は、極めて短時間の間に均質混合されて反応が終了し、前記金属の硝酸塩に由来する金属化合物の結晶子が形成される。これと同時に、高分子分散剤が、極めて高い剪断速度となった反応場において瞬時に効果的に結晶子の表面に吸着する。その結果、結晶子が高分散したコロイド溶液を得ることができる。
【0049】
本発明のコロイド溶液の製造方法においては、前記金属の硝酸塩と前記高分子分散剤は、同じ原料溶液に含まれていてもよいし、各々別の原料溶液に含まれていてもよいが、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属の硝酸塩を含むものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含むものであることが好ましい。さらに、硝酸アンモニウムおよびアンモニア水などの中和剤は前記金属の硝酸塩と同一の原料溶液には含まれず、前記高分子分散剤と同一の原料溶液には含まれていてもよい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、前記金属の硝酸塩と前記高分子分散剤がともに原料溶液Aに含まれていてもよいし、原料溶液Aに前記金属の硝酸塩が含まれ、原料溶液Bに前記高分子分散剤が含まれていてもよいが、後者が好ましい。
【0050】
また、本発明のコロイド溶液の製造方法において、前記金属イオンを含む原料溶液(例えば前記原料溶液A)の陽イオン濃度としては0.01〜0.5mol/Lが好ましく、0.05〜0.2mol/Lがより好ましい。陽イオン濃度が前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、陽イオン濃度が前記下限未満になると金属化合物結晶子の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中の金属化合物微粒子間の距離が短くなるため、金属化合物微粒子に吸着した高分子分散剤が多数の金属化合物微粒子に吸着しやすくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0051】
本発明のコロイド溶液の製造方法において高分子分散剤として(メタ)アクリル酸系重合体を用いた場合には、コロイド溶液のpHを5.0〜10.0に調整することが好ましく、6.0〜9.0に調整することがより好ましい。特に、前記(メタ)アクリル酸系重合体として全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合が90%以上100%以下のものを用いる場合には、コロイド溶液のpHを5.0以上10.0以下に調整することがさらに好ましい。また、親水基を有する繰り返し単位の割合が50%以上90%未満(より好ましくは75%以上90%未満)のものを用いる場合には、コロイド溶液のpHを7.0以上10.0以下に調整することがさらに好ましい。コロイド溶液のpHを前記範囲に調整することにより金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が更に小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中のカルボキシル基が解離しないため、(メタ)アクリル酸系重合体の金属化合物微粒子への吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属化合物の種類にも依るが、金属化合物微粒子の表面が負にチャージしやすく、カルボキシル基が解離した(メタ)アクリル酸系重合体の吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0052】
各原料溶液の送液速度としては特に制限はないが、1.0〜30ml/minが好ましい。原料溶液の送液速度が前記下限未満になると金属化合物微粒子の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属化合物微粒子の液中における凝集粒子径が大きくなる傾向にある。
【0053】
このような本発明のコロイド溶液の製造方法に適用できる反応系は特に制限されず、アルコキシドの加水分解反応や貧溶媒を用いた溶解度変化を利用する析出反応などが挙げられるが、中和反応や酸化還元反応といった核生成速度や反応速度が極めて早い反応においても前記製造方法によれば金属化合物微粒子は粒子径が小さく均一なものとなり、保存安定性に優れたコロイド溶液が得られるため、本発明の製造方法はこのような核生成速度や反応速度が極めて早い反応系に対して特に有用である。
【0054】
このような中和反応、酸化還元反応などにおける具体的な反応系は特に制限されるものではないが、例えば、2種類の原料溶液を用いる場合には以下のような反応系が挙げられる。
【0055】
(i)中和反応I
原料溶液A(金属イオン含有溶液):金属化合物の原料である前記金属の硝酸塩を含有する溶液
原料溶液B(中和剤):アンモニア水、脂肪酸(例えばシュウ酸)もしくは無機酸(例えば硝酸、硫酸、塩酸)のアンモニウム塩を含有する溶液、またはアルカリ金属水酸化物溶液(水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)。
【0056】
(ii)中和反応II
原料溶液A(アルカリ性原料液):硝酸バリウム、硝酸カルシウムなどを含有する溶液
原料溶液B(酸性原料液):硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどを含有する溶液。
【0057】
(iii)酸化還元反応
原料溶液A(金属イオン含有溶液):金属化合物の原料である前記金属の硝酸塩を含有する溶液
原料溶液B(還元剤):アセトアルデヒド溶液、水素化ホウ素ナトリウム溶液、ヒドラジン、エタノールなど。
【0058】
なお、高分子分散剤は、上記いずれの反応においても原料溶液Aおよび原料溶液Bの少なくとも一方に含まれていればよいが、原料溶液Bに含まれていることが好ましい。例えば、前記中和反応Iにおいては、金属化合物の原料である前記金属の硝酸塩を含有する原料溶液Aと、中和剤と高分子分散剤とを含有する原料溶液Bとを用いることが好ましい。
【0059】
このような原料溶液の組成や組み合わせは、目的とする金属化合物のコロイド溶液の種類や使用する原料の種類などに応じて適宜設定することができる。例えば、CeOを含有する金属酸化物のコロイド溶液を製造する場合、原料溶液Aとして4価のセリウムイオンを含むもの、および3価のセリウムイオンを含むもののいずれの原料溶液も使用することもできるが、後者の原料溶液Aを使用する場合には、酸化させて4価のセリウムイオンとするために、原料溶液Bとして中和剤の他に、原料溶液A中のセリウムイオンに対して当量以上の過酸化水素を含むものを使用することが好ましい。
【0060】
以上説明した本発明の製造方法においては、2種類以上の原料溶液は事前に緩い攪拌条件下で混合されることなく、また各原料溶液に対して攪拌条件が相違することなく、極めて短時間の間に高剪断力下で均質混合され、且つ金属化合物結晶子の析出と同時に高分子分散剤が表面に吸着し、分散状態が安定化されるため、生成する金属化合物微粒子は粒子径が小さく均一なものとなり、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることが可能となる。
【0061】
本発明によって得られる金属化合物のコロイド溶液の組成は特に限定されず、様々な原料溶液を用いることによって、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩といった種々の組成のコロイド溶液を得ることが可能となる。
【0062】
このように、本発明によれば、結晶子径が小さく均一な微粒子が水中に高度に分散した金属化合物のコロイド溶液を得ることができる。このようなコロイド溶液を使用することによって、触媒担体調製の際に結晶子径と細孔径を任意に制御することが可能となる。その結果、材料と使用温度に応じて最適な耐熱性と高比表面積を有する触媒担体を設計することが可能となる。また、本発明によれば、金属化合物の種類を任意に選択できるため、触媒活性種に応じて理想的な組成を有する触媒担体を設計することも可能となる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いてCeO−ZrO−Y3元系金属化合物のコロイド溶液を作製した。なお、ステータ13としてはノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0065】
先ず、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)20.8g、オキシ硝酸ジルコニウム二水和物(硝酸ジルコニル二水和物)15.2gおよび硝酸イットリウム1.9gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lであり、セリウムとジルコニウムとイットリウムのモル比がCe:Zr:Y=38:57:5である原料水溶液(原料溶液A)を調製した。また、硝酸アンモニウム30.1g、ポリアクリル酸ナトリウム塩(重量平均分子量:1200、全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合:100%、固形分濃度:50質量%)140gおよび硝酸60gをイオン交換水300gに溶解し、高分子分散剤水溶液(原料溶液B)を調製した。
【0066】
図1に示すように、ホモジナイザー10の先端を100mlビーカー20の中に浸るようにセットし、ホモジナイザー10におけるローター11を10000rpmの回転速度で回転させながら、上記原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ12.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル16Aおよびノズル16Bからローター11と内側ステータ13との間の領域に送液して混合し、金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0067】
なお、ローター11の外径は17.8mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は18730sec−1であった。また、内側ステータ13の外径は12.2mm、ローター11と内側ステータ13との間のギャップは0.2mmであり、それらの間の領域における剪断速度は18730sec−1であった。さらに、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.126msecであった。ここで、均質混合されるまでの時間とは、ノズル16Aまたはノズル16Bから吐出された原料溶液Aまたは原料溶液Bがローター11の回転によって隣接するノズル16Bまたはノズル16Aに到達するまでの時間と定義されるものである。
【0068】
ビーカー20からあふれて出てくる中和反応後のコロイド溶液を、上記ビーカー20のさらに下に1Lビーカー(図示せず)をセットして受け止めた。
【0069】
得られた金属化合物のコロイド溶液のpHを表1に示す。また、コロイド溶液の一部を80℃で24時間乾燥させ、粉末状の試料を作製した。この試料について高分解能透過型電子顕微鏡(高分解能TEM)の電子線回折測定を行い、得られた電子線回折パターンから前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。さらに、この試料について高分解能TEM写真を撮影し、TEM写真中の50個の金属化合物結晶子を抽出して結晶子径を直接測定して粒度分布を求めた。この金属化合物結晶子の粒度分布から金属化合物の累積個数が50%となる結晶子径d50(平均結晶子径)を求め、さらに、金属化合物結晶子の比表面積を算出して金属化合物結晶子の単位表面積当りの高分子分散剤の含有量を求めた。また、金属化合物結晶子の粒度分布から、累積個数が90%となる結晶子径d90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0070】
次に、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定したところ、図5に示すような粒度分布が得られた。このコロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)、および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒度分布を上記動的光散乱法により測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
高分子分散剤として重量平均分子量が1200のポリアクリル酸ナトリウム塩の代わりに重量平均分子量が2000のポリアクリル酸アンモニウム塩(全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合:100%、固形分濃度:50質量%)140gを使用した以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0072】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0073】
(実施例3)
硝酸アルミニウム37.6gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lの原料水溶液を調製した。また、硝酸アンモニウム31.2g、ポリアクリル酸アンモニウム塩(重量平均分子量:2000、全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合:100%、固形分濃度:50質量%)140gおよび硝酸60gをイオン交換水300gに溶解し、高分子分散剤水溶液を調製した。これらの原料水溶液および高分子分散剤水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用した以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0074】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、コロイド溶液中の微粒子は結晶性の低い水酸化アルミニウムなどのアルミナ前駆体微粒子であることが確認された。また、1000℃の熱処理を施した後のX線回折パターンを測定したところ、γ−アルミナの結晶相が形成していることが確認された。その後、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0075】
また、図6には、D50およびD90を求める際に、動的光散乱法により測定したコロイド溶液中の微粒子の粒度分布を示す。図6に示した結果から明らかなように、コロイド溶液中において、アルミナ前駆体微粒子の結晶子径d50は前駆体微粒子の粒子径D50より小さく、また前駆体微粒子の結晶子径d90は前駆体微粒子の粒子径D90より小さいことが確認された。
【0076】
(比較例1)
酢酸セリウム一水和物(III)12.7g、オキシ酢酸ジルコニウム12.8gおよび酢酸イットリウム四水和物1.7gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lの原料水溶液を調製した。また、酢酸アンモニウム23.2g、過酸化水素水13.6gおよびポリアクリル酸ナトリウム塩(重量平均分子量:1200、全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合:100%、固形分濃度:50質量%)140gをイオン交換水360gに溶解し、高分子分散剤水溶液を調製した。
【0077】
これらの原料水溶液および高分子分散剤水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用し、これらをビーカー中で混合し、攪拌子を用いて100rpmの回転速度で攪拌して金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0078】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
比較例1と同様にして調製した原料水溶液と高分子分散剤水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用し、ローター11を回転させずに原料溶液Aと原料溶液Bとを送液した以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0080】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0081】
(比較例3)
比較例1と同様にして調製した原料水溶液と高分子分散剤水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBを使用し、ローター11の回転速度を1000rpmに変更した以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は1873sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は1873sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は1.26msecであった。
【0082】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0083】
(比較例4)
酢酸アンモニウム23.2gおよび過酸化水素水13.6gをイオン交換水500gに溶解した。この高分子分散剤を含まない水溶液を原料溶液Bとして使用し、比較例1と同様にして調製した原料水溶液を原料溶液Aとして使用した以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0084】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0085】
(比較例5)
先ず、酢酸セリウム一水和物(III)12.7g、オキシ酢酸ジルコニウム12.8gおよび酢酸イットリウム四水和物1.7gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lの原料水溶液を調製した。また、ジエタノールアミン31.6g、過酸化水素水13.6gおよび重量平均分子量20000のポリエチレングリコール0.68gをイオン交換水500gに溶解し、高分子分散剤水溶液を調製した。
【0086】
これらの原料水溶液および高分子分散剤水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用し、これらをビーカー中で混合し、硝酸を添加してpH3に調整した。この溶液に、振動数20kHz、振幅30μm、出力200Wの超音波ホモジナイザーを用いて30分間超音波処理を施し、金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0087】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0088】
また、得られた金属化合物のコロイド溶液に遠心加速沈降処理を施して、より大きな凝集体粒子を除去し、上澄み液のみを採取することを試みたが、極く一部(数%)の微粒子が残留したのみで、試料のほとんどは沈殿として除去された。
【0089】
(比較例6)
ローター11の回転速度を1000rpmに変更した以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は1873sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は1873sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は1.26msecであった。
【0090】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0091】
(参考例1)
重量平均分子量1200のポリアクリル酸ナトリウム塩の代わりに重量平均分子量8000のポリアクリル酸ナトリウム塩(全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合:100%、固形分濃度:50質量%)140gを用いた以外は実施例1と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0092】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物は蛍石構造且つ単相のCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、高分子分散剤の含有量、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の微粒子の粒子径D50およびD90、30日間静置したコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により高剪断力下で原料溶液を混合して得られた金属化合物のコロイド溶液(実施例1〜3)においては、コロイド溶液中の微粒子の粒子径が金属化合物の結晶子径に比べて増大しなかったことから、結晶子径がナノオーダーで粒径分布も狭い金属化合物結晶子が、そのままの状態で完全に分散していることが確認された。また、30日間保存してもコロイド溶液中の微粒子の粒子径に変化は見られず、実施例1〜3で得たコロイド溶液は保存性に優れたものであった。
【0095】
一方、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加し、pHを3に調整して超音波処理を施した場合(比較例5)においては、結晶子径がナノオーダーの金属化合物結晶子は、コロイド溶液中で粒子径がサブミクロンオーダーの凝集体を形成しており、分散性に劣るものであった。また、超音波処理により水溶液の温度が若干上昇したため、結晶子が一部成長し、粒度分布幅が大きくなったと推察される。さらに、30日間保存したコロイド溶液においては、凝集体の粒子径がさらに大きくなり、保存性に劣るものであった。
【0096】
また、表1に示した結果から明らかなように、攪拌子を用いて混合した場合(比較例1)、反応場に剪断力を付与しなかった場合(比較例2)、反応場に低剪断力を付与した場合(比較例3および6)、高分子分散剤を添加しなかった場合(比較例4)、および高分子分散剤であるポリアクリル酸ナトリウム塩の重量平均分子量が8000である場合(参考例1)においては、結晶子径がナノオーダーの金属化合物結晶子は、コロイド溶液中で粒子径がミクロンオーダーの凝集体の状態で含まれており、分散性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本発明によれば、粒子径が小さく粒度分布が狭い金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または粒子径が更に小さく粒度分布が狭い凝集体の状態で分散したコロイド溶液を得ること可能となる。
【0098】
したがって、本発明の金属化合物のコロイド溶液は、金属化合物の結晶子および/またはその凝集体がナノサイズで高度に分散したものであるため、様々な用途においてナノサイズ効果の発現が期待され、耐熱性と比表面積とのバランスに優れた触媒担体の出発原料などとして有用である。
【符号の説明】
【0099】
10…ホモジナイザー、11…ローター、12…外側ステータ、13…内側ステータ、14…回転シャフト、15…モーター、16A,16B…ノズル、17A,17B…流路(供給管)、20…反応容器、A,B…反応溶液、X…回転軸、Y…回転軸Xに対して直交する面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8nm以上3nm以下であり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8nm以上4nm未満であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、
ことを特徴とする金属化合物のコロイド溶液。
【請求項2】
前記高分子分散剤の含有量が前記金属化合物の結晶子の単位表面積に対して9〜21mg/mであることを特徴とする請求項1に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項3】
前記高分子分散剤の重量平均分子量が800〜8000であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項4】
前記高分子分散剤が(メタ)アクリル酸系重合体であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項5】
pHが5.0〜10.0であることを特徴とする請求項4に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸系重合体中の全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合が、コロイド溶液のpHが5.0以上7.0未満の場合には90%以上100%以下であり、コロイド溶液のpHが7.0以上10.0以下の場合には50%以上100%以下であることを特徴とする請求項5に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項7】
2種類以上の原料溶液を混合することにより製造された金属化合物のコロイド溶液であって、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属の硝酸塩を含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記高分子分散剤を含有するものであり、
3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項8】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属の硝酸塩を含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであることを特徴とする請求項7に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項9】
前記高分子分散剤を含有する原料溶液が中和剤をさらに含むものであることを特徴とする請求項8に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項10】
前記金属の硝酸塩を含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.01〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項11】
2種類以上の原料溶液を混合して金属化合物のコロイド溶液を製造する方法であって、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属の硝酸塩を含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は高分子分散剤を含有するものであり、
3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することを特徴とする金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項12】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属の硝酸塩を含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであることを特徴とする請求項11に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項13】
前記高分子分散剤を含有する原料溶液が中和剤をさらに含むものであることを特徴とする請求項12に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項14】
前記金属の硝酸塩を含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.01〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項15】
前記高分子分散剤の重量平均分子量が800〜8000であることを特徴とする請求項11〜14のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項16】
前記高分子分散剤が(メタ)アクリル酸系重合体であることを特徴とする請求項11〜15のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項17】
pHを5.0〜10.0に調整することを特徴とする請求項16に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項18】
前記(メタ)アクリル酸系重合体中の全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合が90%以上100%以下である場合にはコロイド溶液のpHを5.0以上10.0以下に調整し、前記親水基を有する繰り返し単位の割合が50%以上90%未満である場合にはコロイド溶液のpHを7.0以上10.0以下に調整することを特徴とする請求項17に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143340(P2011−143340A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5642(P2010−5642)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】