説明

金属含有化合物精製

【課題】非常に低いレベルの金属不純物及び酸素含有不純物を有する、高純度金属含有化合物、特に有機金属化合物を一貫して提供する方法を提供する。
【解決手段】連続抽出を使用する金属含有化合物の精製方法が提供される。この金属含有化合物は高純度で提供され、および金属フィルム、特に電子デバイスで使用される薄い金属フィルムを堆積する際に使用するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有化合物の分野に関する。特に、本発明は、金属フィルムを堆積するために有用である有機金属化合物の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
金属含有化合物は、種々の用途、例えば、薄い金属フィルムを成長させるためのソースにおいて使用される。このような化合物の一つの使用は、電子デバイス、例えば半導体の製造におけるものである。多くの半導性材料は、超純粋有機金属化合物を使用する、確立された堆積技術、例えば、有機金属気相エピタキシー(「MOVPE」)、有機金属分子ビームエピタキシー(「MOMBE」)、有機金属化学蒸着(「MOCVD」)及び原子層堆積(「ALD」)を使用して製造される。これらの方法において有用であるために、有機金属化合物には、汚染物質及び/又は有害な不純物が含有されていてはならない。除去しない場合には、有機金属ソース中に存在するこのような不純物は、電子デバイスの電子的及び/又は光電子的特性に悪影響を及ぼし得る。
【0003】
最近、従来のLEDよりも少ない電力を消費する高輝度発光ダイオード(「HB−LED」)の製造のために特に有用であり、および種々の色で製造することができる、AlGaInPをはじめとする高レベルのアルミニウムも含有する革新的なインジウム含有化合物半導体組成物が開発された。HB−LEDの性能における一貫性は、半導性層を形成するために使用されるソースの最高純度に依存する。このような層の性能は、微量レベルの、ソース中におそらく存在し得る金属不純物、例えば、ケイ素、ゲルマニウム及びスズ、並びにソース材料中に存在し得る及び相の中に組み込まれ得る酸素含有種に対して特に敏感である。有機金属ソース中に存在し得る典型的な酸素含有不純物には、エーテル(溶媒として使用される)、金属アルキルエーテル付加化合物、アルキル金属アルコキシド、金属トリアルコキシド及び金属酸化物粒子が含まれる。
【0004】
金属不純物及び酸素含有不純物は、種々のソースから、例えば、使用される原材料、使用される溶媒から、漏洩又はシリンダーの完全性の不足によるソースバブラー中への空気の不慮の汚染により、並びに堆積チャンバーへの前駆体蒸気の輸送に使用される担体ガス及び環境により、有機金属化合物の中に取り込まれ得る。有機金属化合物中に存在するこれらの金属及び/又は酸素含有種は、有機金属化合物と共に反応器の中に移送され、これらの不純物は分解して金属不純物及び/又は酸素を放出し、これらは堆積層の中に取り込まれる。このような汚染された層から製造された任意の半導体デバイスの性能は、激しく低下される。高純度及び性能における一貫性についての懸念が、HB−LED及び白色LEDが使用される特定の市場により要求される厳しい性能規格のために、一層重要になっている。
【0005】
分別蒸留、昇華、結晶化、付加精製及び帯域精製(全ては、特に、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム及びジシクロペンタジエニルマグネシウムの精製において、成果が限られている)をはじめとする多数の技術が、有機金属化合物を精製するために使用されてきた。米国特許第3,229,469号(Katon)には、テトラシアノエチレンと金属塩との反応生成物の調製が開示されている。着色した不純物は、このような反応生成物から、ピリジンをはじめとするアミン溶媒を使用するソックスレー抽出によって除去される。この反応生成物は、使用した抽出溶媒中には全く可溶性ではなかった。
【特許文献1】米国特許第3,229,469号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非常に低いレベルの金属不純物及び酸素含有不純物を有する、高純度金属含有化合物、特に有機金属化合物を一貫して提供する方法についての要求が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ある量の金属含有化合物と不純物とを含む組成物を提供する工程、この組成物を、ある量の溶媒を使用する連続抽出に付す工程、並びに溶媒から金属含有化合物を回収する工程を含む、金属含有化合物の精製方法であって、金属含有化合物がこの溶媒中に僅かに可溶性であり、および溶媒の前記量が、金属含有化合物の前記量を完全に溶解するためには不十分である方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書を通して使用されるとき、下記の略語は、文脈が他の意味を明らかに示していない限り、下記の意味を有するものとする。℃=摂氏温度、g=グラム、L=リットル、mL=ミリリットル、Pa=パスカル、ppm=百万分率、およびmtorr=ミリトール。「脂肪族炭化水素」には、線状脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素が含まれる。「アルキル」には、線状、分枝状及び環式アルキルが含まれる。同様に、「アルケニル」及び「アルキニル」には、それぞれ、線状、分枝状及び環式のアルケニル及びアルキニルが含まれる。「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。本明細書で使用されるとき、「CVD」は、MOCVD、有機金属気相エピタキシー(「MOVPE」)、有機金属気相エピタキシー(「OMVPE」)、有機金属化学蒸着(「OMCVD」)及びリモートプラズマ化学蒸着(「RPCVD」)をはじめとする化学蒸着の全ての形を含むと意図される。
【0009】
他に指摘しない限り、すべての量は重量パーセントであり、全ての比はモル比である。全ての数字範囲は、境界値を含み、かかる数字範囲が、合計で100%に制約されることが明白である場合以外は、任意の順序で組み合わせることができる。
【0010】
本発明は、ある量の金属含有化合物と不純物とを含む組成物を提供する工程、この組成物を、ある量の溶媒を使用する連続抽出に付す工程、並びに溶媒から金属含有化合物を回収する工程を含む、金属含有化合物の精製方法であって、金属含有化合物がこの溶媒中に僅かに可溶性であり、および溶媒の前記量が、金属含有化合物の前記量を完全に溶解するためには不十分である方法を提供する。組成物には、金属含有化合物及び1以上の不純物が含有されている。不純物は、金属不純物、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉄、マンガン及びアルミニウムであり得る。存在し得る他の不純物は、酸素含有不純物、例えば、エーテル(溶媒として使用される)、金属アルキルエーテル付加化合物、アルキル金属アルコキシド、金属トリアルコキシド及び金属酸化物粒子である。
【0011】
種々の金属含有化合物を、本発明の方法によって精製することができる。かかる金属含有化合物は、抽出工程において使用される温度で典型的に固体である。容易に固化される液化した金属含有化合物を、本発明の方法において使用することができる。例えば、トリメチルアルミニウム(融点、約15℃)は、トリメチルアルミニウムを、抽出工程の間、その溶融温度以下に維持する抽出チャンバーを使用することによって、本発明の方法において使用することができる。好適な金属含有化合物には、これらに限定されないが、第IIA族化合物、メタロセン、β−ジケトナート、第IIIA族化合物、第IVA族化合物、第VA族化合物及び遷移金属化合物が含まれる。第IIA族化合物には、マグネシウム化合物、例えばジシクロペンタジエニルマグネシウムが含まれる。典型的な第IIIA族化合物には、これらに限定されないが、ハロゲン化第IIIA族化合物、例えば、三臭化ガリウム、三塩化ガリウム、三塩化アルミニウム、三臭化インジウム及び三塩化インジウム;モノ−、ジ−及びトリ−アルキル第IIIA族化合物;モノ−、ジ−及びトリ−アルケニル第IIIA族化合物;並びにモノ−、ジ−及びトリ−アルキニル第IIIA族化合物が含まれる。第IVA族化合物には、これらに限定されないが、ハロゲン化第IVA族化合物、例えば、四塩化ゲルマニウム及び四臭化ゲルマニウム;モノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−アルキル第IVA族化合物、例えばターシャリーブチルトリクロロゲルマン;モノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−アルケニル第IVA族化合物;モノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−アルキニル第IVA族化合物;並びにモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−アリール第IVA族化合物、例えばトリフェニルゲルマニウムクロリドが含まれる。特に好適な第IVA族化合物は、ゲルマニウム及びスズを含有するものである。好適な遷移金属化合物には、これらに限定されないが、ニッケル、白金、ルテニウム、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛及びカドミウムの有機金属化合物が含まれる。好適なアルキル基は、典型的に、1〜10個の炭素原子、更に典型的に、1〜6個の炭素原子、なお更に典型的に、1〜4個の炭素原子を有する。アルケニル基及びアルキニル基は、典型的に、2〜10個の炭素原子、更に典型的に2〜6個の炭素原子を有する。典型的な金属含有化合物としては、ジシクロペンタジエニルマグネシウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、ジ−イソプロピルメチルインジウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、メチルピロリジンアラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム及びトリ−ターシャリーブチルアルミニウムが挙げられる。他の典型的な金属含有化合物としては、これらに限定されないが、ジメチルカドミウム、シクロペンタジエニルカドミウム、シクロペンタジエニル亜鉛、三塩化アンチモン及びメチルアンチモンジクロリドが挙げられる。一つの態様において、金属含有化合物は有機金属化合物である。
【0012】
種々の溶媒が、本発明において使用するために好適である。かかる溶媒は、それらが、溶質(金属含有化合物)よりも比較的に大きい揮発性を有し、その使用の条件下で溶質の熱安定性と釣り合い、および抽出に続く有効な結晶化を可能にするため溶質に対し最適な溶解度を有するように選択される。金属含有化合物は、本発明の方法において使用される溶媒中に僅かに可溶性である。用語「僅かに可溶性」は、金属含有化合物が、溶媒1モル当たり0.05モル以下の溶解度を有することを意味する。典型的に、金属含有化合物は、溶媒1モル当たり0.04モル以下、更に典型的に溶媒1モル当たり0.03モル以下の溶解度を有する。
【0013】
好適な溶媒には、脂肪族炭化水素が含まれる。典型的な脂肪族炭化水素としては、これらに限定されないが、C〜C40炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、スクアラン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン及び石油エーテルが挙げられる。例えば、金属含有化合物がトリメチルインジウムであるとき、特に有用な溶媒としては、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ヘキサデカン及びスクアランが挙げられる。金属含有化合物がジシクロペンタジエニルマグネシウムであるとき、特に有用な溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ドデカン及びスクアランが挙げられる。溶媒の混合物を使用することができることは、当業者によって理解される。一つの態様において、金属含有化合物が芳香族炭化水素溶媒中で可溶性であり過ぎることが多い場合、溶媒は芳香族炭化水素ではない。他の態様において、金属含有化合物がエーテル含有溶媒中で可溶性であり過ぎ、およびかかる溶媒が、金属含有化合物と強い配位錯体を作り得る場合には、溶媒はエーテル含有溶媒ではない。
【0014】
本発明の方法において使用される溶媒の量は、精製すべき個々の金属含有化合物及びかかる化合物の量に依存する。典型的に、一定の量の溶媒が抽出工程において使用される。溶媒の量は、組成物中の金属含有化合物の量を完全に溶解させるために不十分である。この方法において、精製された金属含有化合物は、連続抽出工程の間に抽出溶媒から沈殿(結晶化)する。
【0015】
任意の好適な連続抽出工程を、本発明において使用することができる。代表的な連続抽出工程はソックスレー抽出である。「連続抽出」とは、金属含有化合物と不純物とを含有する組成物が、一定の期間、抽出溶媒に連続的に曝されることを意味する。個々の該時間は、溶媒、金属含有化合物及び除去すべき不純物に依存する。
【0016】
一般的には、金属含有化合物と不純物とを含有する組成物を、好適な抽出容器に添加する。組成物を、場合によっては、抽出容器に入れる前に、小さい粒子にまで粉砕してもよい。ソックスレー抽出器の場合には、この組成物を円筒ろ材に添加する。種々の円筒ろ材を使用することができる。一つの態様において、円筒ろ材は多孔質ステンレススチールである。次いで、円筒ろ材をソックスレー抽出器の抽出チャンバー内に入れる。
【0017】
抽出チャンバーを、典型的に沸騰容器、抽出容器及び凝縮器を含む連続抽出装置に設置する。溶媒を沸騰容器に添加し、および還流させる。溶媒は蒸発し、および凝縮器の中に上昇し、そこで溶媒は液体に凝縮する。この液体は、金属含有化合物を含む抽出チャンバーの中に滴下する。金属含有化合物は、還流下で溶媒によって繰り返して洗浄又は浸出されることによって抽出される(「連続抽出」)。
【0018】
抽出チャンバーは、組成物を取り囲む溶媒が一定のレベルを超えたとき、それがオーバーフローし、沸騰容器の中に下りて移動し、それと共に溶液中のある量の金属含有化合物を運ぶように、計略的に設計されている。抽出の工程は、毎回、金属含有化合物をますます沸騰容器の中に運び下ろし、および不溶性の不純物、例えば、ケイ素、ゲルマニウム又はスズの1以上の金属酸化物を後に残すように続く。
【0019】
数時間続き得る抽出工程の終わりに、溶媒及び金属含有化合物を含有するフラスコを、不活性雰囲気下で抽出装置から取り外す。この段階で、金属含有化合物は既に結晶化し、およびより大きい塊部分を形成している。次いで、沸騰容器内の溶媒を、好適な技術、例えばデカンテーション及び/又は濾過によって除去する。微量の溶媒は、適切な技術、例えば真空蒸留によって除去することができ、および結晶は、任意に、例えば、洗浄及び/又は真空昇華により更に精製される。一つの態様において、得られた結晶化した金属含有化合物を、任意に、溶媒の完全な除去を確実にするために、ショートフォア−カット(short fore−cut)を含めて昇華させることができる。別の任意の工程において、抽出チャンバーの頂部に漏斗を使用して、漏斗と抽出チャンバーとの間のバルブを閉じることによって、抽出の終わりに溶媒を回収するようにする。また任意に、抽出チャンバーをフリットにして、即ち、多孔質底にして、濾過による抽出を容易にすることができる。
【0020】
本発明の方法から得られた精製した金属含有化合物を、場合によっては、任意の好適な技術により、例えば、再結晶、昇華及び分別蒸留を含む蒸留により、更に精製してもよい。
【0021】
代わりの態様において、抽出装置には、任意に、抽出チャンバーと沸騰容器との間に配置された濾過手段が含まれていてよい。この態様において、抽出チャンバーから出る金属含有化合物を含有する溶媒を、最初にこの濾過手段に向け、次いで、濾過手段から出して、沸騰容器に戻す。この濾過手段は、フィルター、多孔質板、フリット又は結晶化した金属含有化合物を除去するための他の好適な手段が取り付けられた単純な凝縮装置であってもよい。溶媒が濾過手段に入るとき、溶媒は、金属含有化合物を結晶化させるために十分な条件に曝される。好適な条件には、溶媒を冷却して結晶を生じさせること、溶媒を蒸発、例えば、フラッシュ蒸発させて、金属含有化合物を結晶化させること、及び溶媒を金属含有化合物の種結晶にさらして、溶解している金属含有化合物の結晶を生じさせることの1以上が含まれる。金属含有化合物を溶媒から除去した後、次いで溶媒を沸騰容器に戻すことができる。
【0022】
抽出溶媒中に可溶性ではない組成物中の不純物は、抽出容器内に残る。抽出溶媒中に可溶性である不純物は、一般的に、金属含有化合物の結晶化後の抽出溶媒中に残る。本発明の方法は、単一の方法内で、抽出工程と結晶化工程との両方を用いる精製方法を提供する。
【0023】
本発明は、従来の精製技術を超えた幾つかの利点を提供する。即ち、本発明は、(a)大量の溶媒の使用を必要とせず、(b)頻繁な溶媒交換を必要とせず、(c)抽出によって、不純物よりも相対的に大きい割合の金属含有化合物を取り去り、(d)結晶化によって金属含有化合物の殆ど全量を回復し、及び(e)長期間に亘って、無人で又は操作者の最少の注意で作動し得る。本発明は、従来の精製技術に比較した場合、資源の顕著な節約をもたらす。
【0024】
下記の実施例は、本発明の更なる種々の態様を例示すると期待されるが、いかなる態様においても本発明の範囲を限定することを意図しない。全ての操作は、不活性雰囲気中で、典型的に乾燥窒素の雰囲気下で実施される。
【実施例】
【0025】
実施例1
ジ−(シクロペンタジエニル)マグネシウム(CpMg)精製
グローブバッグ内で、窒素の雰囲気下で、未精製CpMg(120g)を、抽出容器内に装入した。溶媒凝縮器を含む一式の装置を、含まれるCpMg装入物と共に組み立てた。次いで、この装置をグローブバッグから取り出し、および直ちにヒュームフード内で窒素源に連結した。
【0026】
別に、3Lの三つ口丸底フラスコ内で、ヘキサン(1.5L)を、溶媒を通して窒素をバブリングさせることによって脱気した。ドライアイス凝縮器を使用して、いくらかの飛沫同伴するヘキサンを保持した。脱気を45分間続けた。脱気が完結した時点で、ドライアイス凝縮器を取り外し、および凝縮器を有する前記抽出器装置を、窒素の連続パージ下でこのフラスコに取り付けた。
【0027】
ヘキサンを還流させ、および抽出サイクルを開始した。CpMgの連続抽出のための時間は10時間であった。この時間の間に、全てのCpMgは抽出され、抽出器内に不溶性のベージュ色残渣が残された。次いで、溶媒を室温にまで冷却すると、精製されたCpMgが、ヘキサン溶媒から析出した。
【0028】
ヘキサン溶媒の大部分を、サイフォン技術によって析出したCpMgから除去した。次いで、幾らかの残留するヘキサンを、真空(50〜100mtorr又は6.66〜13.33Pa)下で除去し、液体窒素冷却したトラップ内に捕捉した。約30mLのヘキサンが、液体窒素冷却したトラップ内に回収されたことがわかった。これにより、溶媒を含有しない、白色結晶性CpMg(97g、80.83%)が生じた。低ppmレベルでの有機不純物の不存在が、フーリエ変換核磁気共鳴分光法を使用し、真正の純粋なCpMg試料との比較によって確認された。出発材料及び純粋生成物中に存在する典型的なドナー金属不純物に対するスパークソース質量分析(SSMS)の分析を、下記の表に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例2
トリメチルインジウム(TMI)精製
グローブボックス内で、窒素の雰囲気下で、未精製TMI(500g)を、抽出チャンバーの容器の中に装入する。次いで、抽出設備を、窒素下で、溶媒凝縮器及びボイラーフラスコと共に組み立てる。次いで、脱気したペンタン(1.0L)を、窒素の連続パージ下でボイラーフラスコの中に添加する。次いで、連続して10〜12時間の期間の連続抽出を始めるためにペンタンを還流させる。TMIの大部分が抽出され、抽出器チャンバー内に不溶性残渣が残されると期待される。精製されたTMIをボイラーフラスコ内に回収し、次いで、室温にまで冷却することにより、その過飽和ペンタン溶液から再結晶させる。結晶性塊からペンタン溶媒の大部分を、デカンテーションにより除去する。次いで、結晶を、新しい予冷却したペンタン溶媒で洗浄し、および残留する微量のペンタンは、真空下で除去され、冷却したトラップ内に捕捉されると期待される。純粋のTMI、即ちペンタンを含有しない白色結晶性生成物が、高収率で得られると期待される。低ppmレベルでの有機及び酸素化不純物の不存在が期待される。金属不純物は、高周波誘導結合光学発光分光法(Inductively Coupled Optical Emission Spectrometry)(ICPOES)の検出限界よりも低いと期待される。
【0031】
実施例3
トリメチルアルミニウム(TMA)精製
グローブボックス内で、窒素の雰囲気下で、未精製の凍結したTMA(600g)を、ジャケット付き抽出チャンバーの容器の中に装入する。次いで、抽出設備を、窒素下で、溶媒凝縮器及びボイラーフラスコと共に組み立てる。抽出チャンバーのジャケット内に冷却液(0℃〜5℃)を循環させることによって、TMAを固体結晶(15℃〜17℃の溶融範囲)として維持する。次いで、脱気したペンタン(1.0L)を、窒素の連続パージ下でボイラーフラスコの中に添加する。次いで、連続して10〜12時間の期間の連続抽出を始めるために、ペンタンを還流させる。TMAの大部分が抽出され、抽出器チャンバー内に不溶性残渣及びアルミナの粒子が残されると期待される。精製されたTMAをボイラーフラスコ内に回収し、次いで、その過飽和溶液からTMAの結晶化を起こすようにするため10℃にまで冷却させる。結晶性塊からペンタン溶媒の大部分を、デカンテーションにより除去する。次いで、結晶を、新しい予冷却したペンタン溶媒(5℃〜10℃)で洗浄し、および残留する微量のペンタンは、真空下で除去され、および液体窒素冷却したトラップ内に捕捉されると期待される。純粋で凍結したTMA、即ちペンタンを含有しない白色結晶性生成物が、高収率で得られると期待される。低ppmレベルでの有機及び酸素化不純物の不存在が期待される。金属不純物は、高周波誘導結合光学発光分光法(ICPOES)分析の検出限界よりも低いと期待される。
【0032】
実施例4
メチルピロリジン−アラン(MPA)精製
グローブボックス内で、窒素の不活性雰囲気下で、未精製の凍結したMPA(500g)を、ジャケット付き抽出チャンバーの容器の中に装入する。次いで、抽出設備を、窒素下で、溶媒凝縮器及びボイラーフラスコと共に組み立てる。抽出チャンバーのジャケット内に冷却液(10℃〜15℃)を循環させることによって、MPAを固体結晶性化合物として維持する。次いで、脱気したペンタン(1.0L)を、窒素の連続パージ下でボイラーフラスコの中に添加する。次いで、連続して8〜10時間の期間の連続抽出を始めるためにペンタンを還流させる。MPAの大部分が抽出され、抽出器チャンバー内に不溶性残渣及びアルミナの粒子を残すと期待される。精製されたMPAをボイラーフラスコ内に回収し、次いで、その過飽和溶液からのMPAの結晶化を起こすようにするために10℃にまで冷却させる。結晶性塊からのペンタン溶媒の大部分を、デカンテーションにより除去する。次いで、結晶を、新しい予冷却したペンタン溶媒(5℃〜10℃)で洗浄し、および残留する微量のペンタンは、真空下で除去され、および液体窒素冷却したトラップ内に捕捉されると期待される。純粋で凍結したMPA、即ちペンタンを含有しない白色結晶性生成物が、高収率で得られると期待される。低ppmレベルでの有機及び酸素化不純物の不存在が期待される。金属不純物は、高周波誘導結合光学発光分光法(ICPOES)分析の検出限界よりも低いと期待される。
【0033】
実施例5〜14
種々の他の金属含有化合物が、実施例1〜4の手順に従って精製されると期待される。個々の金属含有化合物及び期待される好適な抽出溶媒を、下記の表に報告する。
【0034】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の金属含有化合物と不純物とを含む組成物を提供する工程、該組成物を、ある量の溶媒を使用する連続抽出に付す工程、並びに溶媒から金属含有化合物を回収する工程を含む、金属含有化合物の精製方法であって、金属含有化合物がこの溶媒中に僅かに可溶性であり、および溶媒の前記量が、金属含有化合物の前記量を完全に溶解するためには不十分である方法。
【請求項2】
金属含有化合物が、第IIA族化合物、メタロセン、β−ジケトナート、第IIIA族化合物、第IVA族化合物、第VA族化合物及び遷移金属化合物から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属含有化合物が、ジシクロペンタジエニルマグネシウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、ジ−イソプロピルメチルインジウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、メチルピロリジンアラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム及びトリ−ターシャリーブチルアルミニウムから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
金属含有化合物が、溶媒1モル当たり0.05モル以下の溶解度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
金属含有化合物の溶解度が、溶媒1モル当たり0.03モル以下である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
回収工程が濾過及びデカンテーションから選択される工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
回収された金属含有化合物を、再結晶、蒸留及び昇華から選択される工程に付す工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
連続抽出工程を、ソックスレー抽出器を使用して実施する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
溶媒が脂肪族炭化水素である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
金属含有化合物を溶媒から結晶化させる、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2006−290889(P2006−290889A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−107112(P2006−107112)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(596156668)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (31)
【住所又は居所原語表記】455 Forest Street,Marlborough,MA 01752 U.S.A
【Fターム(参考)】