説明

金属含有組成物及び触媒組成物としてのそれらの使用

【課題】金属含有組成物の提供及び、それらの触媒反応における使用。
【解決手段】本発明に従う金属含有組成物は、金属ヒドロキシ塩を、pHに依存する、ホウ素含有アニオン、バナジウム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオブ含有アニオン、タンタル含有アニオン、アルミニウム含有アニオン、及びガリウム含有アニオンからなる群から選択されるところの1以上のpHに依存するアニオンを含む溶液と接触させることにより得られ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ヒドロキシ塩を、1以上のアニオンを含む溶液と接触させることにより得られ得る金属含有組成物に関する。
【0002】
金属ヒドロキシ塩(MHS、metal hydroxy salt)は、(i)金属として1以上の2価の、又は1以上の3価の金属、(ii)骨組のヒドロキシド(framework hydroxide)、及び(iii)1以上の置換可能なアニオンを含む化合物である。
【0003】
用語「骨組のヒドロキシド」は、金属に結合され、置換可能ではないヒドロキシドを意味する。さらに、金属ヒドロキシ塩は、置換可能なアニオンを含む。用語「置換可能なアニオン」は、適切な条件下でMHSを置換されるべき他のアニオンの溶液と接触させると、これらの他のアニオンで置換される能力を有するアニオンを意味する。
【0004】
MHSの例は、以下の理想化された式に従う2価の金属のヒドロキシ塩:[(Me2+,M2+(OH)(Xn−1/n]であり,ここでMe2+及びM2+は、同じ又は異なる2価の金属イオンを表し、OHは、骨組のヒドロキシドを指し、Xは、置換可能なアニオンであり、nはXの原子価である。MHSの別の例は、一般式[(Me2+,M2+(OH)2+(Xn−2/n]を有し、ここでMe2+及びM2+は同じ又は異なる2価の金属イオンであることができ、OHは、骨組のヒドロキシドを意味し、Xは、置換可能なアニオンであり、nはXの原子価である。
【0005】
[(Me2+,M2+(OH)(Xn−1/n]−タイプのMHSの例は、Cu(OH)NO及びCuCo2−x(OH)NOである。MHSは、2つの異なる金属を含むならば、2つの金属の相対的な量の比は、1に近くてもよい。又は、この比は、実質的に1からはずれていてもよく、そのことは、金属の1つが他より優勢であることを意味する。これらの式は理想的であること、及び化学分析は、該理想式を満足しない組成を示すかもしれないが、実際には、全体的な構造は維持されることを理解することが重要である。例えば、層構造、例えばZnCo0.39(NO0.44(OH)2.33及びZnCu1.5(NO1.33(OH)3.88において、理想的には25%の骨組のヒドロキシドがNOイオンにより置換されている。これらの構造において、NOイオンの1つの酸素は、1つの骨組のヒドロキシドの位置を占め、それに対して、他の2つの酸素イオンは、層の間に存在する。従って、該層を式[(Me2+,M2+(OH)O]で記載してもよい。
【0006】
[(Me2+,M2+(OH)2+(Xn−2/n]−タイプのMHSの例は、[(Zn)(OH)(NO)]である。この物質の構造は、25%の八面体の位置が占められていないブルサイトタイプの[Zn(OH)2−層からなる。これらの空いている八面体のサイトの上及び下に、四面体状に配位されたZnイオンが層の各面の上に1つ、配置されている。そのような八面体のZnイオンの二重置換は、層の上に電荷を、及び中間層内に電荷のバランスをとる必要性及び置換可能なアニオンを生じさせる。報告された、この構造に基づく混合された金属系の例は、Zn3。2Ni1.8(OH)(NO1.7(OH)0.3及びZn3.6Ni1.4(OH)(NO1.6(OH)0.4を含む。これらの2つの式は、2つの(そして実際はもっと多くの)種々の金属が層に存在し得ること、及びアニオン交換(即ちOHを置換するNO)もまた起こりうることを示す。
【0007】
さらに別のMHSの例は、[M3+(OH)(Xn−1/n,例えばLa(OH)NOにより例示され、ここで金属は今度は3価である。この物質中で、ナイトレートアニオンは、中間層領域内に存在し、直接層に結合されていないと考えられる。Laをこの純粋な状態で組成物中に取り込む能力は、触媒製造業の当業者にとって明らかであるように触媒製造業者にとって特に有利である.
【0008】
上に説明されたように、2価金属に基づく上述のMHS−構造のうちのあるものは、変性されたブルサイト様層の交互に並ぶ列と考えられ、該層において該2価の金属は、骨組のヒドロキシドイオンと八面体状に配位されている。1つのファミリーにおいて、骨組のヒドロキシドは、部分的に他のアニオン(例えばナイトレート)により置換されている。別のファミリーにおいては、八面体層における空格子(vacancies)は、四面体状に配位されたカチオンを伴っている。金属水酸化物の別の構造は、Helv.Chim.Acta.第47巻(1964年)272〜289ページに記載されている3次元構造である。
【0009】
用語「金属ヒドロキシ塩」は、先行技術において「(層状)ヒドロキシ塩((layered) hydroxy salt)」、「(層状)ヒドロキシ複塩((layered) hydroxy double salt)」、及び「層状塩基性塩(layered basic salt)」と呼ばれている物質を含む。これらのタイプの物質に関する論文については、以下を参照されたい。
J.Solid State Chem.第148巻(1999年)26〜40ページ
Recent Res.Devel.In Mat.Sci.第1巻(1998年)137〜188ページ
Solid State lonics第53〜56巻(1992年)527〜533ページ
Inorg.Chem.第32巻(1993年)1209〜1215ページ
J.Mater.Chem.第1巻(1991年)531〜537ページ
Russian J.Inorganic Chemistry,第30巻,(1985年)1718〜1720ページ
Reactivity of Solids,第1巻(1986年)319〜327ページ
Reactivity of Solids,第3巻(1987年)67〜74ページ
Compt. Rend.第248巻(1959年)3170〜3172ページ
C.S.Bruschini及びM.J.Hudson著、「イオン交換における進歩;進歩と応用」(A.Dyer,M.J.Hudson,P.A.Williams編集),Cambridge,Royal Society of Chemistry, 1997年,403〜411ページ
【0010】
本発明は、金属ヒドロキシ塩を、pHに依存する1以上のアニオンを含む溶液と接触させることにより得られ得る新しい金属含有組成物に関し、該pHに依存するアニオンは、pHに依存するホウ素含有アニオン、pHに依存するバナジウム含有アニオン、pHに依存するタングステン含有アニオン、pHに依存するモリブデン含有アニオン、pHに依存する鉄含有アニオン、pHに依存するニオブ含有アニオン、pHに依存するタンタル含有アニオン、pHに依存するアルミニウム含有アニオン、及びpHに依存するガリウム含有アニオンからなる群から選択される。
【0011】
これらのpHに依存するアニオンは、得られる金属含有組成物を、特定の用途、例えば特定の触媒用途に、非常に適切にすることのできる新しい機能を与える。例えば、Ni−Co MHSのアニオン(例えばOH又はNO3−)がMoO6−と交換されると、Ni及びCo中心に加えてMo中心を含む組成物が得られる。使用されるアニオン及び条件に依存して、得られる金属含有組成物は、層の間にMoO6−を有するMHS、Ni,Co,及びMo含有層を含む組成物、又はそれらの組み合わせになる。そのような金属含有組成物は、特に焼成及びスルフィド化の後の水素化反応における触媒として非常に適切に使用され得る。
【0012】
pHに依存するアニオン
pHに依存するアニオンとは、水に溶解されたとき、溶液のpHが変化されると、構造及び組成において変化することのできるアニオンである。
【0013】
pHに依存するアニオンは、pHに依存する、ホウ素含有アニオン、バナジウム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオブ含有アニオン、タンタル含有アニオン、アルミニウム含有アニオン、及びガリウム含有アニオンからなる群から選択される。
【0014】
pHに依存するホウ素含有アニオンの例は、ボレート、例えばBO2−,B(OH)4−,[BO(OH),[B(OH),[B(OH)2−,及び[B(OH)2−である。
【0015】
pHに依存するバナジウム含有アニオンの例は、バナデート、例えばVO,VO3−,HVO2−,HVO,V4−,HV3−,V93−,V124−,VI0286−,HV10285−,H10284−,V184212−,及びV含有ヘテロポリ酸、例えばV195−及びVW194−である。
【0016】
pHに依存するタングステン含有アニオンの例は、タングステート、例えばWO2−,HW215−,W246−,W10334−,W12404−,W18626−,W21868−,及びW−含有へテロポリ酸、例えばV195−,VW194−,[SiW11Fe(OH)O396−,NbW193−,及びNb196−である。
【0017】
pHに依存するモリブデン含有アニオンの例は、モリブデート、例えばMoO,Mo192−,Mo246−,及びMo244−である。
【0018】
pHに依存する鉄含有アニオンの例は、Fe(OH)4−,Fe(OH)4−,Fe(OH)3−,及び[SiW11Fe(OH)O396−である。
【0019】
pHに依存するニオブ含有アニオンの例は、ニオベート、例えばNbO3−,Nb1612−,Nb198−,HNb198−,HNb196−,Nb10286−,[NbO(OH)3−,及びNb含有へテロポリ酸、例えばNbW193−及びNb196−である。
【0020】
pHに依存するタンタル含有アニオンの例はタンタレート、例えばTaO3−,Ta198−,及びHTa197−である。
【0021】
pHに依存するアルミニウム含有アニオンの例は、AlW1139n−及びAlVIV12409−である。
【0022】
pHに依存するアニオンのさらなる情報及び例については、M.T.Pope著、「ヘテロポリ及びイソポリオキソメタレート」、シュピンガー出版、ベルリン、ハイデルベルグ、1983年を参照されたい。
【0023】
下の表は複数のアニオンの形を対応するpH範囲とともに記載する。
【0024】

【0025】
pHに依存するアニオンに加えて、本発明に従う金属含有組成物は、他の有機又は無機アニオンを含み得る。これらは、無機アニオン、例えばNO,NO,CO2−,HCO,SO2−,SONH,SCN,S2−,SeO,F,Cl,Br,I,C1O,C1O,BrO,及びIO,シリケート、アルミネート、及びメタシリケート、及び有機アニオン、例えばアセテート、オキザレート、及びフォルメート、長鎖カルボキシレート、(例えばセバケート、カプレート、及びカプリレート(CPL))、アルキルサルフェート(例えばドデシルサルフェート(DS)及びドデシルベンゼンサルフェート)、ステアレート、ベンゾエート、フタロシアニンテトラスルホネート、及びポリマー状アニオン、例えばポリスチレンスルホネート、ポリビニルベンゾエート、及びポリ(メタ)アクリレートを含む。
【0026】
これらの有機酸の存在の利点は、該金属含有組成物を加熱すると、これらのアニオンが分解し、そうすることにより、孔を作り出すことである。さらに、これらの有機アニオンは、親水性及び/又は疎水性の特徴を金属含有組成物に導入し、それは、例えば、個々の触媒成分が単一の触媒粒子を形成するように近づけられるとき、触媒目的のために有利であり得る。有機アニオンは、金属含有組成物の柱状化(pilaring)、層間剥離(delamination)、及び剥奪作用(exfoliation)にもまた有用であり、それらは、金属含有組成物を、場合により有機ポリマー、樹脂、プラスチック、ゴム、顔料、塗料、染料、コーティングのマトリックス中に含むナノコンポジットの生成をもたらし得る。
【0027】
金属ヒドロキシ塩
MHS−構造において適切な2価の金属は、Ni2+,Co2+,Cu2+,Cd2+,Ca2+,Zn2+,Mg2+,Fe2+,及びMn2+を含む。
【0028】
1タイプの金属のみを含む、適切な金属ヒドロキシ塩の例は、Zn−MHS(例えばZn(OH)(X),Zn(OH)X),Cu−MHS(例えばCu(OH)X,Cu(OH)X,Cu(OH)12(X)),Co−MHS(例えばCo(OH)X),Ni−MHS(例えばNi(OH)X),Mg−MHS(例えばMg(OH)X),Fe−MHS,Mn−MHS,及びLa−MHS(La(OH)NO)を含む。
【0029】
2以上の異なるタイプの金属を含む、適する金属ヒドロキシ塩の例は、Zn−CuのMHS,Zn−NiのMHS,Zn−CoのMHS,Fe−CoのMHS,Zn−MnのMHS,Zn−FeのMHS,Ni−CuのMHS,Cu−CoのMHS,Cu−MgのMHS,Cu−MnのMHS,Ni−CoのMHS,Zn−Fe−CoのMHS,Mg−Fe−CoのMHS,及びNi−Cu−CoのMHS,Mg−NiのMHS,Mg−MnのMHS,Mg−FeのMHS,Cu−FeのMHS,Mg−Cu−FeのMHS,Mg−Zn−FeのMHS,Ni−Co−MgのMHSである。
【0030】
金属ヒドロキシ塩の製造
金属ヒドロキシ塩は、複数の方法により製造され得る。方法1は、スラリー中における、金属酸化物又は水酸化物と、溶解された金属塩、例えば硝酸塩との反応を含む。方法2は、金属塩溶液からの(共)沈殿を含む。
【0031】
方法1については、Inorg.Chem.第32巻(1993年)1209〜1215ページ;方法2については、J.Solid State Chem.第148巻(1999年)26〜40ページ及びJ.Mater.Chem.第1巻(1991年)531〜537ページを参照されたい。これらの参考文献はすべてヒドロキシ(複)塩の製造に関するが、これらの資料は、用語「金属ヒドロキシ塩」により取り扱われている。
【0032】
MHSは、固体化合物から、又は固体化合物の存在下で、形成されるならば、これらの化合物(の1つ)を粉砕することが望ましい。この明細書において、用語「粉砕すること」とは、粒子サイズの縮小をもたらす任意の方法として定義される。そのような粒子サイズの縮小は、同時に反応性の高い表面の生成、及び/又は粒子の加熱をもたらすことができる。粉砕のために使用されることができる器具は、ボールミル、高剪断ミキサー、コロイドミキサー、及び超音波をスラリーに導入できる電気トランスデューサーを含む。低剪断混合、即ち成分を基本的に懸濁状態に保つために行われる攪拌は、粉砕とはみなされない。
【0033】
添加剤は任意の加工段階において添加されることができる。例えば方法1において、塩、又は所望される添加剤の(水)酸化物は、MHSを形成するための反応の間、存在することができる。さらに、すでに添加剤を含む金属酸化物若しくは金属水酸化物が使用されることができる。
【0034】
方法2において、所望される添加剤の金属塩は、MHSを形成する2価の金属とともに共沈されることができる。
さらに、添加剤は、形成されたMHS上に沈殿されること、又は埋め込まれることができる。
【0035】
方法1は好ましくは連続法で行われる。より好ましくは、2以上の転化容器、例えば米国特許出願公開第2003-0003035号の下で発行された米国特許出願において記載されている装置を含む装置中で行われる。
【0036】
例えば、金属塩及び金属酸化物を含むスラリーが、フィード製造容器中で製造され、その後、混合物は2以上の転化容器を通って連続的にポンプ移送される。もしそのように所望されるならば、添加剤、酸、又は塩基が、任意の転化容器中の混合物に添加され得る。各容器は、それ自身の望ましい温度に調節されることができる。
【0037】
本発明に従う金属含有組成物の製造
本発明に従う金属含有組成物は、1以上の金属ヒドロキシ塩を1以上のpH依存性アニオンを含む溶液と接触させることにより製造され得る。
【0038】
所望されるpH依存性のアニオンを含む溶液を得るために、溶液のpHは、酸又は塩基で調節されて、pH依存性の平衡を所望される方向に移動させる。もし酸が、pH調節のために必要とされるならば、鉱酸、例えば硝酸又は塩酸、又は有機酸、例えば酢酸、蟻酸、プロピオン酸、又はシュウ酸が使用され得る。もし塩基が必要とされるならば、それは好ましくは、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、又は水酸化テトラアルキルアンモニウムである。これらの塩基は好ましい、なぜならアルカリ金属を含まず、従って洗浄又は濾過工程を要求することなしに、本発明に従うアルカリフリーの金属含有組成物の製造を可能にするからである。これは触媒用途に使用される、本発明に従う金属含有組成物にとって、特に有利である、なぜならほとんどの触媒用途(例えばFCC)にとって、アルカリ金属、特にナトリウムの存在は、望ましくないからである。
【0039】
金属ヒドロキシ塩の安定性もまたpH依存性であることができる。ある金属ヒドロキシ塩は、酸性条件下では非常に安定というわけではない一方、他は塩基性条件下で非常に安定というわけではない。従って、溶液のpHを選択するとき、MHSの安定性をもまた考慮に入れなければならない。
【0040】
しかし、そのpHでは金属ヒドロキシ塩が非常に安定というわけではないpHを用いることは、必ずしも望ましくないわけではない:もしMHS層の一部が溶解すると、溶解された金属は、(続く沈殿により、又は乾燥の間に)やがて金属含有組成物の上に堆積され、追加の機能を与え得る。例えば、MHS層の一部を溶解する条件下で、Zn−MHSをバナデートと接触させることは、乾燥の間にMHSの上に亜鉛バナデートの堆積をもたらし得る。得られる金属含有組成物、場合により他の成分、例えばアルミナ、チタニア、シリカ−アルミナ、ゼオライト、又は粘土、への添加の後であってもよい、は、減少された硫黄含有量を有する燃料の製造用のFCCにおいて適切に使用され得る。
【0041】
金属ヒドロキシ塩及びpH依存性アニオンの接触は、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは5分〜12時間、及び最も好ましくは15分〜4時間、続く。
【0042】
溶液のpHは、反応が進行するにつれて変化し得、その結果溶液中のアニオンは、構造が変化し得る。これは種々のアニオンが取り込まれるのに便利であり得る。しかし、適切な酸及び塩基を添加することにより反応の間、pHを一定のレベルに維持することが適切であり得る。
【0043】
この接触の間、温度は一般的に25〜300℃である。100℃未満の好ましい温度は、50〜70℃である;100℃より上の好ましい温度範囲は、120〜160℃である。
【0044】
この接触は、空気中、又は二酸化炭素フリーの雰囲気で行われ得る。
【0045】
MHSをpH依存性のアニオンと接触させた後、得られる金属含有組成物は単離され、場合により洗浄、濾過、乾燥されてもよい。
【0046】
金属含有組成物は、成形体を形成するために成形され得る。適切な成形法は、噴霧乾燥、ペレット化、押出(場合により混練と組み合わせてもよい)、ビーズ化、又は触媒、及び吸着剤の分野で使用される任意の他の慣用の成形方法、又はそれらの組み合わせを含む。好ましくは、金属含有組成物は、500nm未満の直径を有する粒子の形で成形される。
【0047】
本発明に従う(成形された)金属含有組成物は、次に焼成、還元、スチーム処理、再脱水、イオン交換、及び/又はスルフィド化されることができる。焼成は該金属含有組成物を酸化性の、又は不活性な雰囲気中で、200〜1,000℃、好ましくは200〜800℃の温度において加熱することにより行われる。
【0048】
スルフィド化は、先行技術において公知の任意の方法により行われることができる。一般的に、それは、金属含有組成物を、硫黄含有化合物、例えば元素硫黄、硫化水素、DMDS、又はポリスルフィドと接触させることを含む。スルフィド化は、一般的にインシチュー及び/又はエクスシチューで実行されることができる。還元は、水素雰囲気中で100〜800℃、好ましくは200〜500℃の好ましい温度において加熱することにより行われる。
【0049】
焼成された(成形された)金属含有組成物は、次に金属塩を含む溶液中で処理され得る。適する金属塩は、遷移金属(例えば、V,Mo,W,Cr,Mn,Ni,Co,Fe)、貴金属(例えばPt、Pd)、及び希土類金属(例えばCe,La)とアニオンとの塩を含む。これらの金属に適するアニオンは、無機アニオン、例えばNO、NO、CO2−、HCO、SO2−、SONH、SCN、S2−、SeO4−、F、ClBr,I、ClO,ClO,BrO,及びIO、シリケート、アルミネート、及びメタシリケート、及び有機アニオン、例えばアセテート、オキザレート、フォルメート、長鎖カルボキシレート(例えばセバケート、カプレート及びカプリレート(CPL)),アルキルサルフェート(例えばドデシルサルフェート(DS)及びドデシルベンゼンサルフェート)、ステアラート、ベンゾエート、フタロシアニンテトラスルホネート、及びポリマー状アニオン、例えばポリスチレンスルホネート、ポリイミド、ビニルベンゾエート、及びビニルジアクリレート、並びにpH依存性ホウ素含有アニオン、ビスマス含有アニオン、タリウム含有アニオン、リン含有アニオン、ケイ素含有アニオン、クロム含有アニオン、バナジウム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオブ含有アニオン、タンタル含有アニオン、マンガン含有アニオン、アルミニウム含有アニオン、及びガリウム含有アニオンを含む。
【0050】
場合により焼成、還元、及び/又はスルフィド化工程後であってもよい、本発明に従う金属含有組成物は、他の化合物と共に構成されて、触媒又は吸着剤組成物を形成してもよい。この、他の化合物は室温において固体であり、金属酸化物若しくは金属水酸化物、粘土(変性粘土、例えば酸で活性化された粘土及びリン酸塩で処理された粘土を含む)、(変性された、又はドープされた)アルミニウムホスフェート、ゼオライト、ホスフェート、(例えばメタ又はピロホスフェート)、孔制御剤(例えば糖類、界面活性剤、ポリマー)、バインダー、フィラー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
適切な金属を保持する源は、遷移金属(例えばV,Mo,W,Cr,Mn,Ni,Co,Fe)、貴金属(例えばPt、Pd)、及び希土類金属(例えばCe,La)の化合物を含む。
【0052】
金属酸化物、水酸化物、バインダー、及びフィラーの例は、アルミナ(例えばベーマイト、ギブサイト、瞬間焼成されたギブサイト、ゲルアルミナ、非晶質アルミナ)、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、チタニア−アルミナ、ジルコニア、ボリア、(変性された)メソ多孔性酸化物(例えばMCMタイプのゼオライト、及びメソ多孔質のアルミナ)、及びホスフェートである。
【0053】
適切なゼオライトは、ペンタシルゼオライト(例えばZSM−5、ゼオライトベータ、シリケート)及びフォージャサイトゼオライト(例えばゼオライトX又はY、REY、USY、RE−USY)を含む。適切な粘土はアニオン性粘土(即ち層状複水酸化物、又はハイドロタルサイト状物質)、カチオン性粘土(例えばスメクタイト、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、及びサポナイト)、(メタ)カオリン、脱アルミ化カオリン、及び脱ケイ素化カオリンを含む。
【0054】
そのような触媒又は吸着剤組成物は、該他の化合物又はその前駆体を本発明に従う金属含有組成物と混合すること、即ちMHSをpH依存性アニオンと接触させた後に製造されることができる。あるいは、それらはそのような接触の前にMHSと混合されることができる。
【0055】
第一の場合、2〜10の範囲のpHを有し、他の化合物又はその前駆体を含むスラリーに、本発明に従う金属含有組成物を添加し、(ii)該スラリーを噴霧乾燥することが好ましい。
【0056】
第二の場合、金属ヒドロキシ塩は、他の化合物又はその前駆体の存在下で製造され得、又は他の化合物は、過剰の2価の金属酸化物若しくは金属水酸化物を用いて方法1(上を参照のこと)に従ってMHSを製造する間に形成される。得られるMHS及び他の化合物の組成物は、次にpH依存性アニオンと接触され、本発明に従う金属含有組成物を生成する。従って、例えば(瞬間焼成された)アルミニウム三水和物の存在下でMHSを製造することが可能である。これは、MHS及び他の化合物として(瞬間焼成された)アルミニウム三水和物を含む組成物を与える。(瞬間焼成された)アルミニウム三水和物は、エージングによりベーマイトに転化され得、MHS及び他の化合物としてベーマイトを含む組成物を与える。得られたMHS含有組成物は、次にpH依存性のアニオンと接触される。
他の化合物を本発明に従う金属含有組成物と、その焼成、還元、及び/又はスルフィド化の後、混合することもまた可能である。
【0057】
組成物の使用
本発明に従う金属含有組成物は、FCC再生化装置からのSO及び/又はNO排出物の削減、鉄鋼工場、発電所、及びセメント工場からの有毒ガス(例えばHCN,アンモニア、又はハロゲン、例えばCl,及びHCl)の除去、燃料例えばガソリン及びディーゼル中の硫黄及び/又は窒素含有量の削減、COのCOへの転化、及びフィッシャー−トロプシュ合成、水素化工程(水素化脱硫化、水素脱窒化、脱金属化)、水素化分解、水素化、脱水素化、アルキル化、異性化、フリーデルクラフツ法、アンモニア合成等のための触媒、又は添加剤の製造のために使用されることができる。
【0058】
さらに、該金属含有組成物は、一般的に親水性である組成物の表面をより疎水性にする有機剤で処理されることができる。これは該組成物が有機媒体中により容易に分散することを許す。
【0059】
ナノコンポジット(即ち、約500nm未満の直径を有する粒子)として使用されるとき、本発明に従う金属含有組成物は、プラスチック、樹脂、ゴム、及びポリマーにおいて適切に使用されることができる。例えば有機剤での処理により得られた、疎水性表面を有するナノコンポジットは、この目的のために特に適する。
【0060】
金属含有組成物は、公知の方法を用いて柱状化、脱アルミ化、及び/又は剥離化されていてもよい。
【0061】
フィッシャートロプシュ
フィッシャートロプシュ触媒の製造のために、Fe及び/又はCo含有MHSから製造された本発明に従う金属含有組成物は非常に適切である。適する金属含有組成物は、例えばFe−MHS、Fe−Co MHS、Co−LDS、Fe−Zn MHS、Mg−Zn MHS、Co−Fe MHS、Ni−Co−MHS及び/又はZn−Co−Fe−MHSから製造される。適するpH依存性アニオンは、Fe含有pH依存性アニオン、例えば[SiW11Fe(OH)O396−,Fe(OH),Fe(OH)4−,及びFe(OH)3−である。
好ましくは、フィッシャー−トロプシュ触媒は、追加的にアルミナ(例えば擬似ベーマイト)、鉄、亜鉛、コバルト、及び/又はルテニウム含有化合物を含む。フィッシャー−トロプシュ触媒は、好ましくは水素雰囲気において還元される。
【0062】
HPC
水素化法(hydroprocessing)(HPC)触媒の製造のために適する、本発明に従う金属含有組成物の例は、Ni−MHS又はCo−Ni MHSから製造された金属含有組成物である。適するpH−依存性アニオンは、モリブデート例えばMoO,Mo192−,Mo246−,及びMo244−及びタングステート、例えばWO2−,HW215−,W246−,W10334−,W12404−,W18626−及びW21868−である。
【0063】
水素化法触媒中に存在する、適する他の化合物は、キャリアー物質、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、チタニア、又はそれらの混合物、及び金属塩を含む。
HPCにおける使用の前に、好ましくは焼成及び/又は還元工程の後、触媒はスルフィド化される。
【0064】
FCC
本発明に従う金属含有組成物は、FCC添加剤及びFCC触媒の製造のために使用され得る。FCC添加剤はFCC触媒と同時に、即ち2粒子システムにおいて使用される物質である。
【0065】
この目的のため、Mg−MHS、Zn−MHS,Fe−MHS、Mg−Fe MHS、Zn−Fe MHS,及び/又はZn−Cu MHSから製造された本発明に従う金属含有組成物が好ましく、Zn含有金属ヒドロキシ塩が最も好ましい。好ましいpH依存性アニオンは、バナジウム、タングステン、ニオブ、ホウ素、及びモリブデン含有アニオンである。
【0066】
より好ましくは、そのような金属含有組成物は、セリウム、ランタン、プラチナ、及びパラジウムの群から選択された金属をもまた含む。
【0067】
金属含有組成物は別として、FCC触媒は、好ましくは固体酸、バインダー及びマトリックス物質(例えばアルミナ、カオリン)、希釈剤(diluent)、増量剤(extender)及び/又はアニオン性粘土を含む。適する固体酸はゼオライト、例えばフォージャサイト型ゼオライトに基づくゼオライト(例えば、希土類、遷移金属、及び/又はアンモニウム交換されたゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトUSY)、及び脱アルミ化されたゼオライト、モルデナイト、又は小さい孔のゼオライト(例えばZSM−5、ZSM−21、ゼオライトベータ、並びにそれらの金属ドープされた形、及びリン酸塩処理された形)、又はそれらの変性された形、シリコアルミナホスフェート(SAPO)、アルミニウムホスフェート(AIPO)、及び/又はメソ多孔質物質(の変性された形)、例えばMCM−41又はメソ多孔質アルミナである。
【0068】
FCC添加剤は、好ましくは、金属含有組成物は別として、小さな孔のゼオライト及びマトリックス物質(例えばアルミナ)を含む。金属含有組成物は、硫分の低い燃料の生産のための触媒添加剤の製造に特に適する。
【0069】
吸着剤としての使用
本発明に従う金属含有組成物は、例えば、発電所、及びFCC再生装置の送管ガスからのハロゲン(C1,HCI),HCN,NH,SO及び/又はNO用の吸着剤の製造、及びガソリン及びディーゼル燃料中の硫黄及び/又は窒素の削減のために適切に使用され得る。そのような吸着剤は、好ましくはアルミナ、ホスフェート、チタニア、ジルコニア、及び/又はシリカ−アルミナをもまた含む。
【0070】
この目的のための適切な金属ヒドロキシ塩の例は、Mg−MHS、Zn−MHS、Fe−MHS、Mg−Fe MHS、Zn−Fe MHS,及びZn−Cu MHSである。好ましいpH依存性のアニオンは、バナジウム、タングステン、モリブデン、ホウ素、及びニオブ含有アニオンである。
【0071】
より好ましくは、そのような吸着剤が、セリウム、ランタン、プラチナ、及びパラジウムの群から選択された金属をもまた含む。
【実施例】
【0072】
実施例1
モノバナジウム酸アンモニウム、(NH)VO、1.25gが、連続攪拌下で、500mlの脱イオン水中に(一晩)溶解された。透明な無色の溶液のpHが、アンモニア溶液(10%)を用いて8に調節された。1gの粉砕されたZn−MHS(Zn(NO(OH)・2HO)が、激しい攪拌下で添加された。5分後、混合物は濾過され、65℃において一晩乾燥された。製品は白色の粉末であった。X−線蛍光分光(XRF)で測定された元素組成(酸化物として計算された)は、0.79重量%のV及び99.2重量%のZnOであった。
【0073】
実施例2
モノバナジウム酸アンモニウム、(NH)VO、1.25gが、連続攪拌下で、500mlの脱イオン水中に(一晩)溶解された。透明な無色の溶液のpHが、硝酸(20%)を用いて5に調節された。懸濁物は直ちに橙色に変わった。1gの粉砕されたZn−MHS(Zn(NO(OH)・2HO)が、激しい攪拌下で添加された。5分後、混合物は濾過され、65℃において一晩乾燥された。製品は黄色の粉末であった。XRFで測定された元素組成(酸化物として計算された)は、2.76重量%のV及び79.2重量%のZnOであった。
【0074】
実施例1及び2は、アニオン含有溶液のpHが、形成される金属含有組成物に影響を及ぼすことを示す。実施例2から生じる組成物は、実施例1のものよりバナジウムを多く含むので、実施例2のZn−MHS(pH=5)に取り込まれたアニオンは、実施例1(pH=8)に取りこまれたアニオンより多くのV原子を含んでいたことが結論付けられる。
【0075】
実施例3
84.56gのCu(NO・2HOを100mlのHOに溶解させることによりCu−MHSが製造され、3.5Mの溶液を与えた。NaNOが該溶液を飽和させるために該溶液に添加された。溶液は、次にホットプレート上で沸騰するまで加熱された。
【0076】
250mlの0.75MNaOHが、該沸騰している溶液に激しく攪拌しながら滴下され、鮮やかな緑/青の懸濁物を生じた。懸濁物は洗浄されて、残渣は乾燥オーブン中で60℃において乾燥された。乾燥された試料(Cu−MHS)は、緑の粉末であった。粉末X線回折(PXRD)はCu(NO)(OH)の生成を示した。
【0077】
このように生成されたCu−MHS(3.309g)は、2.534gのバナジウム酸アンモニウム(NHVO)を含む溶液に添加された。懸濁物は、からし黄色に変わった。2時間のエージングの後、この懸濁物は、アンモニア(10重量%)の添加によりpH7に至らせられてあった、370.4gのCatapal(商標)(擬似ベーマイト)を含むスラリーに添加された。次に、21.11gの硝酸セリウムが添加された。粘度の上昇は観察されなかった。
【0078】
得られたスラリーは、120℃において一晩乾燥され、乾燥された生成物はボールミルにおいて粉砕され、600℃において焼成された。得られた粉末の色は褐色であった。
【0079】
表1は、XRFで測定された、得られた生成物の化学組成を示す。
【0080】
実施例4
実施例3において製造されたCu−MHS(3.310g)が、3.232gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO)を含む溶液に添加された。懸濁物は緑色のままであった。60℃の温度における2時間のエージングの後、この懸濁物は、アンモニア(10重量%)の添加によりpH7に至らせられてあった、318.2gのCatapal(商標)(擬似ベーマイト)を含むスラリーに添加された。
【0081】
得られたスラリーは、120℃において一晩乾燥され、乾燥された生成物はボールミルで粉砕され、600℃において焼成された。得られた粉末の色は、暗緑色であった。
【0082】
表1は、XRFで測定された、得られた生成物の化学組成を示す。
【0083】
実施例5
100mlのHOに76.93gのMg(NO・6HOを溶解させることによりMg−MHSが製造され、3.0Mの溶液を与えた。NaNOが、溶液を飽和させるために添加された。溶液は次にホットプレート上で沸騰するまで加熱された。
【0084】
250mlの0.75MNaOHが、該沸騰している溶液に激しく攪拌しながら滴下され、鮮やかな緑/青の懸濁物を生じた。沸騰の間、体積は、液体の定常的な添加により一定に保たれた。
【0085】
懸濁物は、次に氷水の添加により0℃に向けて冷却され、残渣は乾燥オーブン中で60℃において乾燥された。乾燥された試料(Mg−MHS)は、白色の粉末であった。PXRDは、Mg(OH)3.14(NO0.86・0.19HO及びブルサイト(Mg(OH))の生成を示した。
【0086】
そのように生成されたMg−MHS(2.009g)が、3.940gのバナジウム酸アンモニウム(NHVO)を含む溶液に添加された。懸濁物は、少し緑色に変色した。2時間のエージングの後、この懸濁物は、アンモニア(10重量%)の添加によりpH6に至らせられてあった、287.050gのCatapal(商標)(擬似ベーマイト)を含むスラリーに添加された。次に、21.93gの硝酸セリウムが添加された。懸濁物は、錆色になったが、粘度の上昇は観察されなかった。
【0087】
得られたスラリーは、120℃において一晩乾燥され、乾燥された生成物はボールミルにおいて粉砕され、600℃において焼成された。得られた粉末の色は褐色であった。
【0088】
表1は、XRFで測定された、得られた生成物の化学組成を示す。
【0089】
実施例6
Zn−MHS(Zn(NO(OH)・2HO)は、以下のようにバナデートとイオン交換された:30.009gの白色Zn−MHSが1.009gのバナジウム酸アンモニウム(NHVO)を含む溶液に添加された。懸濁物は、少し黄色に変色した。2時間のエージングの後、この懸濁物は、アンモニア(10重量%)の添加によりpH6に至らせられてあった、397.550gのCatapal(商標)(擬似ベーマイト)を含むスラリーに添加された。
【0090】
得られたスラリーは、120℃において一晩乾燥され、乾燥された生成物はボールミルにおいて粉砕され、600℃において焼成された。得られた粉末の色はからし黄色であった。
【0091】
表1は、XRFで測定された、得られた生成物の化学組成を示す。
【0092】
実施例7
Zn−MHSは、以下のようにタングステートとイオン交換された:30.000gの白色Zn−MHSが0.546gのタングステン酸アンモニウム((NH(W1241))を含む溶液に添加された。懸濁物は、白色のままであった。2時間のエージングの後、この懸濁物は、アンモニア(10重量%)の添加によりpH6に至らせられてあった、397.700gのCatapal(商標)(擬似ベーマイト)を含むスラリーに添加された。
【0093】
得られたスラリーは、120℃において一晩乾燥され、乾燥された生成物はボールミルにおいて粉砕され、600℃において焼成された。得られた粉末の色は白色であった。
【0094】
表1は、XRFで測定された、得られた生成物の化学組成を示す。
【0095】
実施例8
Zn−MHSは、以下のようにモリブデートとイオン交換された:
30.000gの白色Zn−MHSが0.462gのモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO)を含む溶液に添加された。懸濁物は、白色のままであった。2時間のエージングの後、この懸濁物は、アンモニア(10重量%)の添加によりpH6に至らせられてあった、397.600gのCatapal(商標)(擬似ベーマイト)を含むスラリーに添加された。
【0096】
得られたスラリーは、120℃において一晩乾燥され、乾燥された生成物はボールミルにおいて粉砕され、600℃において焼成された。得られた粉末の色は白色であった。
【0097】
表1は、XRFで測定された、得られた生成物の化学組成を示す。
【0098】
【表1】

【0099】
実施例9
(添加剤として)20重量%の実施例3〜8の生成物、及び80重量%の平衡FCC触媒(E−cat)を含む混合物が製造された。これらの混合物は、マイクロ活性試験(MAT)装置で試験された。添加剤により吸収された硫黄、及び得られたガソリン、ライトサイクルオイル(LCO)、及びヘビーサイクルオイル(HCO)中の硫黄の濃度が図1〜4に示され、100重量%E−cat(添加剤なし)と比較される。
【0100】
これらの図から、本発明に従う金属含有組成物は、削減された硫分を有する燃料の生産のためのFCCにおいて非常に適する添加剤の製造に使用されることができる:これらの添加剤は、LCO及びHCO中の硫分を減少させることが結論付けられる。これらの添加剤上に堆積されたコーク(coke)の硫分は、添加剤なしのE−catの硫分より高い。特に、Zn−MHSから生成された組成物は、ガソリンの硫分を削減することにおいて成功している。
【0101】
その上、実施例7の組成物(タングステートで交換されたZn−MHS)の分解活性は、使用されたE−catの活性より少し高いことが観察された。これは、この組成物の相対的に多い量が、転化率を犠牲にすることなく装置に添加され得ることを意味する。高い転化率において、製造されたこの組成物は、匹敵するコーク生成とともにE−catよりさらにより多いガソリンを生産した。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例3〜8の金属含有組成物がマイクロ活性試験において添加剤として使用されたときに、該組成物により吸収された硫黄を、そのような組成物なしのE−cat(「添加剤なし」)により吸収された硫黄と比較して表示する。
【図2】添加剤として実施例6〜8の金属含有組成物を用いるマイクロ活性試験の間に製造されたガソリンの硫分を、そのような組成物の不存在において(添加剤なし)製造されたガソリンの硫分と比較して示す。
【図3】添加剤として実施例3〜8の金属含有組成物を用いるマイクロ活性試験の間に製造されたライトサイクルオイル(LCO)の硫分を、そのような組成物の不存在において(添加剤なし)製造されたLCOの硫分と比較して示す。
【図4】添加剤として実施例3〜8の金属含有組成物を用いるマイクロ活性試験の間に製造されたヘビーサイクルオイル(HCO)の硫分を、そのような組成物の不存在において(添加剤なし)製造されたHCOの硫分と比較して示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ヒドロキシ塩を、pHに依存する、ホウ素含有アニオン、バナジウム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオブ含有アニオン、タンタル含有アニオン、アルミニウム含有アニオン、及びガリウム含有アニオンからなる群から選択されるところの、pHに依存する1以上のアニオンを含む溶液と接触させることにより得られ得る金属含有組成物。
【請求項2】
金属ヒドロキシ塩が、Ni2+,Co2+,Cu2+,Cd2+,Ca2+,Zn2+,Mg2+,Fe2+,及びMn2+からなる群から選択された1以上の2価の金属から構築されているところの、請求項1に記載の金属含有組成物。
【請求項3】
成形体の形をとっている、請求項1〜2のいずれか1項に記載の金属含有組成物。
【請求項4】
500nm未満の直径を有する粒子の形をとっている、請求項3に記載の金属含有組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属含有組成物、及び金属酸化物若しくは金属水酸化物、粘土、アルミニウムホスフェート、ゼオライト、ホスフェート、孔制御剤、バインダー、フィラー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1の化合物を含む触媒組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属含有組成物及び有機ポリマーを含む組成物。
【請求項7】
金属ヒドロキシ塩が、pHに依存する、ホウ素含有アニオン、バナジウム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオブ含有アニオン、タンタル含有アニオン、アルミニウム含有アニオン、及びガリウム含有アニオンからなる群から選択されたpHに依存する1以上のアニオンを含む溶液と接触されるところの、請求項1に記載の金属含有組成物を製造する方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属含有組成物が、2〜10の範囲のpHを有し、金属酸化物若しくは金属水酸化物、粘土、アルミニウムホスフェート、ゼオライト、ホスフェート、孔制御剤、バインダー、フィラー、及びそれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1の化合物を含むスラリーに添加され、(ii)該スラリーを噴霧乾燥する、請求項5に記載の触媒組成物を製造する方法。
【請求項9】
焼成が続いて行われる、請求項7又は8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
還元が続いて行われる、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
スルフィド化が続いて行われる、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
流動接触分解法、水素化脱硫化法、水素化脱窒法、脱金属化法、水素化分解法、フィッシャー−トロプシュ法、水素化法、脱水素化法、又は異性化法における使用に適する触媒組成物又は触媒添加剤組成物の製造のために、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属含有組成物を使用する方法。
【請求項13】
FCC再生化装置におけるSOx及び/又はNOxの削減に適する触媒組成物若しくは触媒添加剤組成物の製造のために、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属含有組成物を使用する方法。
【請求項14】
燃料の硫黄含有量及び/又は窒素含有量の削減のための触媒組成物の製造のために、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属含有組成物を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500593(P2007−500593A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529907(P2006−529907)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005562
【国際公開番号】WO2004/103553
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505002495)アルベマーレ ネザーランズ ビー.ブイ. (19)
【Fターム(参考)】