金属吸着材および金属の分離方法
【課題】希少金属や有害金属などの金属を効率よく吸着して回収する方法を提供すること。
【解決手段】ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーを用いて希少金属や有害金属などの金属を吸着して回収する。
【解決手段】ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーを用いて希少金属や有害金属などの金属を吸着して回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希少金属や有害金属などの金属の吸着材、および金属を含む試料溶液から金属を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希少金属(レアメタル)はいわゆるハイテク製品の製造に欠かせないが、これらの多くは埋蔵量が少なく、今後50年以内に多くの金属が枯渇する可能性がある。したがって、廃製品や海中に溶存する希少金属を効率よく回収するシステムの開発は急務の課題である。
また、環境問題の観点から、水銀、鉛などの有害金属を効率よく回収するシステムの開発も急務の課題である。
【0003】
希少金属や有害金属を回収する技術の一つとして、窒素原子、ないしはカルボン酸骨格を有するポリマーによる金属吸着が試みられている(特許文献1および後述の表1)。非特許文献1では、チオウレア基をポリスチレン樹脂またはシリカ樹脂に担持させた金属吸着材がQuadraPureという商品名で販売されている。しかしながら、これらの技術では回収量が十分ではなく、また、回収速度も遅いため、回収量の向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008-502470号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シグマ・アルドリッチ社ホームページ(ホーム>有機合成>注目のテクノロジー>メタルスカベンジャー)、[online]、[平成22年1月13日検索]、インターネット<URL: http://www.sigma-aldrich.co.jp/aldrich/organic/reaxa/metal_scavengers/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡便かつ高効率で希少金属や有害金属などの金属を回収するための材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなるポリマーが水に溶解し、希少金属や有害金属などの金属を吸着すると沈殿するという性質を有しており、かつ、金属吸着速度、金属吸着効率ともに高いということを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物の-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマー(本発明のポリマーとも呼ぶ)からなる金属(イオン)吸着材を提供する。
本発明はまた、金属を含む試料溶液から金属を分離する方法であって、試料溶液を、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物の-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーに接触させて、前記金属を前記水溶性ポリマーに吸着させる工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリマー中のアミノ基は酸性の水溶液中でアンモニウム塩化し、水溶液に溶解できるので、吸着反応が均一系で進行し、効率よく金属を回収することができる。さらに、吸着後は金属イオンを介した架橋構造を形成し水溶液から沈殿してくるので、ろ過により吸着したポリマーを簡便に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の金属吸着方法の模式図。
【図2】本発明のポリマーの一実施態様であるポリ(アミン-エステル)(R1)への水銀イオンの吸着前後の様子を示す図(写真)。
【図3】ポリ(アミン-エステル)(R1、R2、R3)への水銀イオンの吸着量の時間変化を示す図。
【図4】ポリ(アミン-エステル)(R1、R2)への水銀イオンの吸着に対する水銀イオン濃度の効果を示す図。
【図5】ポリ(アミン-エステル)(R1)の水銀結合後の1H NMRスペクトルを示す図。上段が吸着量0.0177mol/mol、下段が吸着量0.0724 mol/mol。
【図6】ポリ(アミン-エステル)(R1)への金イオンの吸着前後の様子を示す図(写真)。
【図7】ポリ(アミン-エステル)(R1、R2、R3)への金イオンの吸着に対するpHの効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明において金属吸着材として使用される、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーについて説明する。
【0012】
ジアミン化合物としては、下記一般式(I)の化合物が使用できる。
NHR1-S1-NHR2 (I)
ここで、R1、R2は水素、炭素数1〜5のアルキル、またはNとともにピペラジル環を形成する基であり、S1は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-に置換されてもよい)である。具体的には、下記のような化合物が挙げられる。また、ジアミン化合物は下記のピペラジンでもよい。
【0013】
【化1】
【0014】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物としては、アクリル基もしくはメタクリル基、ハロゲン化炭素などの-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有し、ジアミン化合物と重付加反応させたときに水溶性の重合体を生成できるものであれば特に制限されないが、アクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物またはハロゲン化炭素を2つ有する化合物が好ましく、下記一般式(II)で表わされるアクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物がより好ましい。
CH2=CR3-C(=O)-X1-S2-X2-C(=O)-CR4=CH2 (II)
ここで、R3、R4は水素またはメチルであり、X1、X2はOまたはNHであり、S2は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-またはフェニレンに置換されてもよい)である。また、X1-S2-X2がピペラジン環を形成してもよい。
【0015】
上記アクリル基を2つ有する化合物としては、下記のようなジアクリレート、ビスアクリルアミドなどが挙げられる。
【0016】
<ジアクリレート>
【化2】
【0017】
ビスアクリルアミド
【化3】
【0018】
上記ハロゲン化炭素を2つ有する化合物としては、下記のようなジハロゲン化物が例示される。なお、ジハロゲン化物を使用する場合は、水溶性ポリマーを得るために、ジアミン化合物としてスペーサー部分に酸素原子を含むものを用いることが好ましい。
【化4】
【0019】
上記のようなジアミンと、ジアクリレートなどのジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物の様々な組み合わせにより、目的に合わせた本発明ポリマーの分子設計が可能である。なお、本発明においては、ジアミンと、ジアクリレートの重付加反応により得られるポリマーをポリ(アミン-エステル)と呼ぶことがある。
本発明ポリマーを得るための反応は通常のジアミンとジアクリレート等の重付加反応に従って行うことができる。すなわち、ジアミンと、ジアクリレートなどのジアミン化合物の-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物を適当な溶媒に溶解し、必要に応じて触媒を用い、適当な温度で反応させることによって行うことができる。以下に反応スキームの一例を示す。
【化5】
【0020】
本発明ポリマーの分子量は、金属吸着に使用可能なポリマーが得られる範囲であれば特に制限されないが、好ましくは数平均分子量(Mn)5,000〜200,000、より好ましくは数平均分子量5,000〜60,000である。
【0021】
吸着対象となる希少金属の種類としては、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどが挙げられる。
【0022】
吸着対象となる有害金属の種類としては、鉛、鉄、銅、カドミウム、水銀、ヒ素、マンガン、コバルト、ビスマス、ウラン、スズなどが挙げられる。
【0023】
吸着反応は例えば、本発明ポリマーを金属水溶液に適量(この量は金属濃度などにより適宜定めることができる)添加し、室温(室温に限定されない)で攪拌することによって行うことができる。なお、本発明ポリマーの水溶液に金属を添加してもよい。この際、効率よく吸着させるには、金属が水に溶解してイオン化しやすいpHに調整することが好ましい。例えば、水銀や金や白金やパラジウムはpH5以下が好ましい。その他の金属についても、好ましいpHは適宜設定することができる。
【0024】
本発明ポリマーを用いた場合、金属の吸着に伴い、本発明ポリマーは沈殿するので、ろ過や遠心分離などにより金属を吸着した本発明ポリマーを回収することができる。
金属を吸着したポリ(アミン-エステル)からの金属の脱着は例えば以下のいずれか方法により行うことができる。1)チオ尿素水溶液による金属の抽出、2)高温、例えば、500℃で加熱してポリ(アミン-エステル)を焼失させることによる金属の脱着、3)pHを変化させて金属を脱離させる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
<使用した試薬および機器>
塩化水銀(HgCl2)は関東化学から購入した。テトラクロロ金(III)酸ナトリウム・2水和物(NaAuCl4・2H2O、>95.0%)は和光純薬から購入した。
1H NMRスペクトルは日本電子(株)製 JNM-λ500を用いて測定した。UV/可視吸収スペクトルはHitachi U-3000 UV-visスペクトロメーターを用いて測定した。
【0027】
1. ポリ(アミン-エステル)の合成
ポリ(アミン-エステル)として、ジアミン(1,3-dipiperidylpropane)と、異なるアルキレン基R1〜R3を有するジアクリレートの反応によりの3種類のポリマー(ポリ(アミン-エステル)R1〜R3)を合成した。ジアミンとジアクリレートをそれぞれ0.38Mずつテトラヒドロフラン中に加え、50℃、10〜48時間の条件で重合を行ったところ、数平均分子量8000〜14000のポリ(アミン-エステル)が得られた(表1)。得られたポリ(アミン-エステル)の異なるpHにおける溶解性試験を行ったところ、ポリ(アミン-エステル)R1、R2はpH2以下の塩酸水溶液に溶解し、ポリ(アミン-エステル)R3はpH5以下に溶解することが分かった。
なお、1,3-di4-piperidylpropaneは東京化成より入手した。また、各ジアクリレート化合物は和光純薬より入手した。
また、ポリ(アミン-エステル)の数平均分子量はポリスチレンを標準物質としTHFを溶媒としたSEC分析により決定した。
【0028】
反応スキームは以下の通り。
【化6】
なお、アルキレン基R3を有するジアクリレートは数平均分子量(Mn)258のものを用いたが、575または700のものも市販されており、代替可能である。
【0029】
【表1】
【0030】
2. ポリ(アミン-エステル)によるHg(II)の吸着挙動
2-1. Hg(II)の吸着挙動
室温で、塩化水銀を4mmol/Lの濃度で溶解させた塩酸水溶液(pH 1)にポリ(アミン-エステル)(R1)を13mg加えたところ、瞬時にHg(II)を吸着したポリ(アミン-エステル)が沈殿しはじめ、2時間では完全に沈殿した(図2)。そして、沈殿物はろ過により、吸着したポリ(アミン-エステル)を簡便に分離できることが明らかとなった。これは、ポリ(アミン-エステル)中のアミノ基が金属イオンを介して架橋構造を形成し、水溶液に溶解しなくなったためと考えられる。吸着したポリ(アミン-エステル)をろ過により分離した後、溶液のUV測定を行ったところ、Hg(II)が大量に吸着されており、ポリ(アミン-エステル)1g当たり0.64 gのHgが吸着されていることが分かった。これにより、ポリ(アミン-エステル)は均一系で効率よく金属を吸着し、吸着後は簡便に分離できる高効率金属捕集材料として有効であることが明らかとなった。
【0031】
2-2. Hg(II)吸着における吸着速度
R1〜R3のポリ(アミン-エステル)を用い、Hg(II)の吸着速度を調べた(図3)。具体的には、R1〜R3のポリ(アミン-エステル)を用いて上記2−1と同様の条件で吸着反応を行い、各時点における吸着量を測定した。
その結果、三種類のポリ(アミン-エステル)いずれの場合も吸着速度は極めて速く5分以内に吸着が完了していることが分かった。反応時間5分以降、R1、R2のポリ(アミン-エステル)では吸着反応は平衡に達するが、R3では徐々に吸着量が低下した。これは、R3の親水性が最も高いために、一度沈殿したポリ(アミン-エステル)が、長時間攪拌すると水溶液中に溶解してしまうためであると考えられる。
【0032】
2-3. ポリ(アミン-エステル)の最大吸着量
以上の結果から、金属捕集材料としては、ポリ(アミン-エステル)R1、R2がより適していることが分かったので、R1、R2のポリ(アミン-エステル)の最大金属吸着量を調べた。実験方法としては、13mgのポリ(アミン-エステル)に対し、濃度を変えたHgを添加し、それぞれ24時間後の吸着量を測定した。そして、平衡に達した点を最大吸着量とした(図4)。その結果、最大吸着量は、R1(0.64gHg/gポリマー)、R2(0.65gHg/gポリマー)であり、これらのポリ(アミン-エステル)はHg(II)を大量に回収できることが明らかとなった。
【0033】
2-4. Hg(II)吸着における他のイオンの影響
R1のポリ(アミン-エステル)を用い、Hg(II)吸着に対するハロゲン化物イオンの影響をNaCl、NaBr、NaIを用いて調べた。実験方法としては、室温で、塩化水銀を2.5mmol/Lの濃度で溶解させた塩酸水溶液(pH 1)にポリ(アミン-エステル)(R1)を13mg加え、さらに、NaCl、NaBr、またはNaIを各濃度で加えて、それぞれ24時間後の吸着量を測定した(表2)。その結果ハロゲンイオン存在下でもポリ(アミン‐エステル)はハロゲン化物イオンの影響を受けずにHg(II)を吸着することが分かった。なお、10ppm程度のHg(II)濃度でもハロゲン化物イオンの影響を受けずに吸着できる。
【0034】
【表2】
【0035】
2-5. ポリ(アミン-エステル)の吸着機構
図5にHg(II)吸着後のR1のポリ(アミン-エステル)の1H NMRスペクトルを示した。その結果、アミノ基に隣接するプロトンのピークがHg(II)吸着量の増加に伴い低磁場側へとシフトしたことから、Hg(II)の吸着にアミノ基が関与していることが分かった。
【0036】
3. ポリ(アミン-エステル)の金吸着挙動
3-1. Au(III)の吸着挙動
ポリ(アミン-エステル)のAu(III)の吸着挙動を検討した結果、Hg(II)の場合と同様の効果が得られた。すなわち、R1のポリ(アミン-エステル)13mgを3mM NaAuCl4のpH1塩酸水溶液に加えて25℃で吸着反応させたところ、瞬時に吸着したポリ(アミン-エステル)が沈殿しはじめ、6時間では完全に沈殿した。そして、ろ過により、吸着したポリ(アミン-エステル)を分離できることが明らかとなった(図6)。吸着したポリ(アミン-エステル)をろ過により分離した後、溶液のUV測定を行ったところ、Au(III)が大量に吸着されており、ポリ(アミン-エステル)1g当たり0.43 gのAu(III)が吸着されていることが分かった。
【0037】
3-2. Au(III)の吸着に対するpHの効果
図6にポリ(アミン-エステル)R1〜R3の金吸着におけるpHの効果を示す。具体的には、R1〜R3のポリ(アミン-エステル)を用いて、pHを変えた以外は上記3−1と同様の条件で吸着反応を行い、各pHにおけるAu(III)吸着量をUV測定により測定した。その結果、いずれのポリ(アミン-エステル)も酸性条件で効率よくAu(III)を吸着し、pH4で最大値を与えた。それぞれの最大吸着量は、R1(0.59gAu/gポリマー)、R2(0.39gAu/gポリマー)、およびR3(0.34gAu/gポリマー)であった。
【0038】
本発明のポリ(アミン‐エステル)での最大吸着量を、他の吸着材を使った水銀吸着の最大吸着量と比較したところ、表3に示すように、このポリ(アミン‐エステル)は数ある水銀吸着材の中でも高い吸着量を示すことがわかった。
【0039】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の材料はパラジウム、白金、金などの産業上有用でありながら埋蔵量の少ない希少金属に対して高い吸着性を示す。このことから、触媒等に用いられるこれらの金属を効率良く回収できるほか、環境中に存在する水や工場などの排水からこれらの希少金属を回収することも可能であり、資源の効率的な利用と排水の浄化に役立つ。廃家電製品からの希少金属のリサイクルにも有用である。
触媒の回収としては、医薬品や有機エレクトロニクス材料の合成に頻繁に用いられるパラジウム触媒の回収や使用済みの燃料電池用白金の回収にも有効であると期待できる。
また、環境中に放出された有害金属も効率よく吸着して回収することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は希少金属や有害金属などの金属の吸着材、および金属を含む試料溶液から金属を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希少金属(レアメタル)はいわゆるハイテク製品の製造に欠かせないが、これらの多くは埋蔵量が少なく、今後50年以内に多くの金属が枯渇する可能性がある。したがって、廃製品や海中に溶存する希少金属を効率よく回収するシステムの開発は急務の課題である。
また、環境問題の観点から、水銀、鉛などの有害金属を効率よく回収するシステムの開発も急務の課題である。
【0003】
希少金属や有害金属を回収する技術の一つとして、窒素原子、ないしはカルボン酸骨格を有するポリマーによる金属吸着が試みられている(特許文献1および後述の表1)。非特許文献1では、チオウレア基をポリスチレン樹脂またはシリカ樹脂に担持させた金属吸着材がQuadraPureという商品名で販売されている。しかしながら、これらの技術では回収量が十分ではなく、また、回収速度も遅いため、回収量の向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008-502470号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シグマ・アルドリッチ社ホームページ(ホーム>有機合成>注目のテクノロジー>メタルスカベンジャー)、[online]、[平成22年1月13日検索]、インターネット<URL: http://www.sigma-aldrich.co.jp/aldrich/organic/reaxa/metal_scavengers/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡便かつ高効率で希少金属や有害金属などの金属を回収するための材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなるポリマーが水に溶解し、希少金属や有害金属などの金属を吸着すると沈殿するという性質を有しており、かつ、金属吸着速度、金属吸着効率ともに高いということを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物の-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマー(本発明のポリマーとも呼ぶ)からなる金属(イオン)吸着材を提供する。
本発明はまた、金属を含む試料溶液から金属を分離する方法であって、試料溶液を、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物の-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーに接触させて、前記金属を前記水溶性ポリマーに吸着させる工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリマー中のアミノ基は酸性の水溶液中でアンモニウム塩化し、水溶液に溶解できるので、吸着反応が均一系で進行し、効率よく金属を回収することができる。さらに、吸着後は金属イオンを介した架橋構造を形成し水溶液から沈殿してくるので、ろ過により吸着したポリマーを簡便に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の金属吸着方法の模式図。
【図2】本発明のポリマーの一実施態様であるポリ(アミン-エステル)(R1)への水銀イオンの吸着前後の様子を示す図(写真)。
【図3】ポリ(アミン-エステル)(R1、R2、R3)への水銀イオンの吸着量の時間変化を示す図。
【図4】ポリ(アミン-エステル)(R1、R2)への水銀イオンの吸着に対する水銀イオン濃度の効果を示す図。
【図5】ポリ(アミン-エステル)(R1)の水銀結合後の1H NMRスペクトルを示す図。上段が吸着量0.0177mol/mol、下段が吸着量0.0724 mol/mol。
【図6】ポリ(アミン-エステル)(R1)への金イオンの吸着前後の様子を示す図(写真)。
【図7】ポリ(アミン-エステル)(R1、R2、R3)への金イオンの吸着に対するpHの効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明において金属吸着材として使用される、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーについて説明する。
【0012】
ジアミン化合物としては、下記一般式(I)の化合物が使用できる。
NHR1-S1-NHR2 (I)
ここで、R1、R2は水素、炭素数1〜5のアルキル、またはNとともにピペラジル環を形成する基であり、S1は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-に置換されてもよい)である。具体的には、下記のような化合物が挙げられる。また、ジアミン化合物は下記のピペラジンでもよい。
【0013】
【化1】
【0014】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物としては、アクリル基もしくはメタクリル基、ハロゲン化炭素などの-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有し、ジアミン化合物と重付加反応させたときに水溶性の重合体を生成できるものであれば特に制限されないが、アクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物またはハロゲン化炭素を2つ有する化合物が好ましく、下記一般式(II)で表わされるアクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物がより好ましい。
CH2=CR3-C(=O)-X1-S2-X2-C(=O)-CR4=CH2 (II)
ここで、R3、R4は水素またはメチルであり、X1、X2はOまたはNHであり、S2は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-またはフェニレンに置換されてもよい)である。また、X1-S2-X2がピペラジン環を形成してもよい。
【0015】
上記アクリル基を2つ有する化合物としては、下記のようなジアクリレート、ビスアクリルアミドなどが挙げられる。
【0016】
<ジアクリレート>
【化2】
【0017】
ビスアクリルアミド
【化3】
【0018】
上記ハロゲン化炭素を2つ有する化合物としては、下記のようなジハロゲン化物が例示される。なお、ジハロゲン化物を使用する場合は、水溶性ポリマーを得るために、ジアミン化合物としてスペーサー部分に酸素原子を含むものを用いることが好ましい。
【化4】
【0019】
上記のようなジアミンと、ジアクリレートなどのジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物の様々な組み合わせにより、目的に合わせた本発明ポリマーの分子設計が可能である。なお、本発明においては、ジアミンと、ジアクリレートの重付加反応により得られるポリマーをポリ(アミン-エステル)と呼ぶことがある。
本発明ポリマーを得るための反応は通常のジアミンとジアクリレート等の重付加反応に従って行うことができる。すなわち、ジアミンと、ジアクリレートなどのジアミン化合物の-NH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物を適当な溶媒に溶解し、必要に応じて触媒を用い、適当な温度で反応させることによって行うことができる。以下に反応スキームの一例を示す。
【化5】
【0020】
本発明ポリマーの分子量は、金属吸着に使用可能なポリマーが得られる範囲であれば特に制限されないが、好ましくは数平均分子量(Mn)5,000〜200,000、より好ましくは数平均分子量5,000〜60,000である。
【0021】
吸着対象となる希少金属の種類としては、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどが挙げられる。
【0022】
吸着対象となる有害金属の種類としては、鉛、鉄、銅、カドミウム、水銀、ヒ素、マンガン、コバルト、ビスマス、ウラン、スズなどが挙げられる。
【0023】
吸着反応は例えば、本発明ポリマーを金属水溶液に適量(この量は金属濃度などにより適宜定めることができる)添加し、室温(室温に限定されない)で攪拌することによって行うことができる。なお、本発明ポリマーの水溶液に金属を添加してもよい。この際、効率よく吸着させるには、金属が水に溶解してイオン化しやすいpHに調整することが好ましい。例えば、水銀や金や白金やパラジウムはpH5以下が好ましい。その他の金属についても、好ましいpHは適宜設定することができる。
【0024】
本発明ポリマーを用いた場合、金属の吸着に伴い、本発明ポリマーは沈殿するので、ろ過や遠心分離などにより金属を吸着した本発明ポリマーを回収することができる。
金属を吸着したポリ(アミン-エステル)からの金属の脱着は例えば以下のいずれか方法により行うことができる。1)チオ尿素水溶液による金属の抽出、2)高温、例えば、500℃で加熱してポリ(アミン-エステル)を焼失させることによる金属の脱着、3)pHを変化させて金属を脱離させる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
<使用した試薬および機器>
塩化水銀(HgCl2)は関東化学から購入した。テトラクロロ金(III)酸ナトリウム・2水和物(NaAuCl4・2H2O、>95.0%)は和光純薬から購入した。
1H NMRスペクトルは日本電子(株)製 JNM-λ500を用いて測定した。UV/可視吸収スペクトルはHitachi U-3000 UV-visスペクトロメーターを用いて測定した。
【0027】
1. ポリ(アミン-エステル)の合成
ポリ(アミン-エステル)として、ジアミン(1,3-dipiperidylpropane)と、異なるアルキレン基R1〜R3を有するジアクリレートの反応によりの3種類のポリマー(ポリ(アミン-エステル)R1〜R3)を合成した。ジアミンとジアクリレートをそれぞれ0.38Mずつテトラヒドロフラン中に加え、50℃、10〜48時間の条件で重合を行ったところ、数平均分子量8000〜14000のポリ(アミン-エステル)が得られた(表1)。得られたポリ(アミン-エステル)の異なるpHにおける溶解性試験を行ったところ、ポリ(アミン-エステル)R1、R2はpH2以下の塩酸水溶液に溶解し、ポリ(アミン-エステル)R3はpH5以下に溶解することが分かった。
なお、1,3-di4-piperidylpropaneは東京化成より入手した。また、各ジアクリレート化合物は和光純薬より入手した。
また、ポリ(アミン-エステル)の数平均分子量はポリスチレンを標準物質としTHFを溶媒としたSEC分析により決定した。
【0028】
反応スキームは以下の通り。
【化6】
なお、アルキレン基R3を有するジアクリレートは数平均分子量(Mn)258のものを用いたが、575または700のものも市販されており、代替可能である。
【0029】
【表1】
【0030】
2. ポリ(アミン-エステル)によるHg(II)の吸着挙動
2-1. Hg(II)の吸着挙動
室温で、塩化水銀を4mmol/Lの濃度で溶解させた塩酸水溶液(pH 1)にポリ(アミン-エステル)(R1)を13mg加えたところ、瞬時にHg(II)を吸着したポリ(アミン-エステル)が沈殿しはじめ、2時間では完全に沈殿した(図2)。そして、沈殿物はろ過により、吸着したポリ(アミン-エステル)を簡便に分離できることが明らかとなった。これは、ポリ(アミン-エステル)中のアミノ基が金属イオンを介して架橋構造を形成し、水溶液に溶解しなくなったためと考えられる。吸着したポリ(アミン-エステル)をろ過により分離した後、溶液のUV測定を行ったところ、Hg(II)が大量に吸着されており、ポリ(アミン-エステル)1g当たり0.64 gのHgが吸着されていることが分かった。これにより、ポリ(アミン-エステル)は均一系で効率よく金属を吸着し、吸着後は簡便に分離できる高効率金属捕集材料として有効であることが明らかとなった。
【0031】
2-2. Hg(II)吸着における吸着速度
R1〜R3のポリ(アミン-エステル)を用い、Hg(II)の吸着速度を調べた(図3)。具体的には、R1〜R3のポリ(アミン-エステル)を用いて上記2−1と同様の条件で吸着反応を行い、各時点における吸着量を測定した。
その結果、三種類のポリ(アミン-エステル)いずれの場合も吸着速度は極めて速く5分以内に吸着が完了していることが分かった。反応時間5分以降、R1、R2のポリ(アミン-エステル)では吸着反応は平衡に達するが、R3では徐々に吸着量が低下した。これは、R3の親水性が最も高いために、一度沈殿したポリ(アミン-エステル)が、長時間攪拌すると水溶液中に溶解してしまうためであると考えられる。
【0032】
2-3. ポリ(アミン-エステル)の最大吸着量
以上の結果から、金属捕集材料としては、ポリ(アミン-エステル)R1、R2がより適していることが分かったので、R1、R2のポリ(アミン-エステル)の最大金属吸着量を調べた。実験方法としては、13mgのポリ(アミン-エステル)に対し、濃度を変えたHgを添加し、それぞれ24時間後の吸着量を測定した。そして、平衡に達した点を最大吸着量とした(図4)。その結果、最大吸着量は、R1(0.64gHg/gポリマー)、R2(0.65gHg/gポリマー)であり、これらのポリ(アミン-エステル)はHg(II)を大量に回収できることが明らかとなった。
【0033】
2-4. Hg(II)吸着における他のイオンの影響
R1のポリ(アミン-エステル)を用い、Hg(II)吸着に対するハロゲン化物イオンの影響をNaCl、NaBr、NaIを用いて調べた。実験方法としては、室温で、塩化水銀を2.5mmol/Lの濃度で溶解させた塩酸水溶液(pH 1)にポリ(アミン-エステル)(R1)を13mg加え、さらに、NaCl、NaBr、またはNaIを各濃度で加えて、それぞれ24時間後の吸着量を測定した(表2)。その結果ハロゲンイオン存在下でもポリ(アミン‐エステル)はハロゲン化物イオンの影響を受けずにHg(II)を吸着することが分かった。なお、10ppm程度のHg(II)濃度でもハロゲン化物イオンの影響を受けずに吸着できる。
【0034】
【表2】
【0035】
2-5. ポリ(アミン-エステル)の吸着機構
図5にHg(II)吸着後のR1のポリ(アミン-エステル)の1H NMRスペクトルを示した。その結果、アミノ基に隣接するプロトンのピークがHg(II)吸着量の増加に伴い低磁場側へとシフトしたことから、Hg(II)の吸着にアミノ基が関与していることが分かった。
【0036】
3. ポリ(アミン-エステル)の金吸着挙動
3-1. Au(III)の吸着挙動
ポリ(アミン-エステル)のAu(III)の吸着挙動を検討した結果、Hg(II)の場合と同様の効果が得られた。すなわち、R1のポリ(アミン-エステル)13mgを3mM NaAuCl4のpH1塩酸水溶液に加えて25℃で吸着反応させたところ、瞬時に吸着したポリ(アミン-エステル)が沈殿しはじめ、6時間では完全に沈殿した。そして、ろ過により、吸着したポリ(アミン-エステル)を分離できることが明らかとなった(図6)。吸着したポリ(アミン-エステル)をろ過により分離した後、溶液のUV測定を行ったところ、Au(III)が大量に吸着されており、ポリ(アミン-エステル)1g当たり0.43 gのAu(III)が吸着されていることが分かった。
【0037】
3-2. Au(III)の吸着に対するpHの効果
図6にポリ(アミン-エステル)R1〜R3の金吸着におけるpHの効果を示す。具体的には、R1〜R3のポリ(アミン-エステル)を用いて、pHを変えた以外は上記3−1と同様の条件で吸着反応を行い、各pHにおけるAu(III)吸着量をUV測定により測定した。その結果、いずれのポリ(アミン-エステル)も酸性条件で効率よくAu(III)を吸着し、pH4で最大値を与えた。それぞれの最大吸着量は、R1(0.59gAu/gポリマー)、R2(0.39gAu/gポリマー)、およびR3(0.34gAu/gポリマー)であった。
【0038】
本発明のポリ(アミン‐エステル)での最大吸着量を、他の吸着材を使った水銀吸着の最大吸着量と比較したところ、表3に示すように、このポリ(アミン‐エステル)は数ある水銀吸着材の中でも高い吸着量を示すことがわかった。
【0039】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の材料はパラジウム、白金、金などの産業上有用でありながら埋蔵量の少ない希少金属に対して高い吸着性を示す。このことから、触媒等に用いられるこれらの金属を効率良く回収できるほか、環境中に存在する水や工場などの排水からこれらの希少金属を回収することも可能であり、資源の効率的な利用と排水の浄化に役立つ。廃家電製品からの希少金属のリサイクルにも有用である。
触媒の回収としては、医薬品や有機エレクトロニクス材料の合成に頻繁に用いられるパラジウム触媒の回収や使用済みの燃料電池用白金の回収にも有効であると期待できる。
また、環境中に放出された有害金属も効率よく吸着して回収することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーからなる金属吸着材。
【請求項2】
ジアミン化合物が下記一般式(I)で表わされる化合物またはピペラジンである、請求項1に記載の金属吸着材。
NHR1-S1-NHR2 (I)
ここで、R1、R2は水素、炭素数1〜5のアルキル、またはNとともにピペラジル環を形成する基であり、S1は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-に置換されてもよい)である。
【請求項3】
ジアミン化合物が下記式で表わされる、請求項1に記載の金属吸着材。
【化1】
【請求項4】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が、アクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物またはハロゲン化炭素を2つ有する化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【請求項5】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記一般式(II)で表わされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属吸着材。
CH2=CR3-C(=O)-X1-S2-X2-C(=O)-CR4=CH2 (II)
ここで、R3、R4は水素またはメチルであり、X1、X2はOまたはNHであり、S2は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-またはフェニレンに置換されてもよい)である。また、X1-S2-X2がピペラジン環を形成してもよい。
【請求項6】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記式のいずれかである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【化2】
【請求項7】
金属が、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる1種類以上の希少金属である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【請求項8】
金属が、鉛、鉄、銅、カドミウム、水銀、ヒ素、マンガン、コバルト、ビスマス、ウラン、スズからなる群から選ばれる1種類以上の有害金属である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【請求項9】
金属を含む試料溶液から金属を分離する方法であって、試料溶液を、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーに接触させて、前記金属を前記水溶性ポリマーに吸着させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
ジアミン化合物が、下記一般式(I)で表わされる化合物またはピペラジンである、請求項9に記載の方法。
NHR1-S1-NHR2 (I)
ここで、R1、R2は水素、炭素数1〜5のアルキル、またはNとともにピペラジル環を形成する基であり、S1は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-に置換されてもよい)である。
【請求項11】
ジアミン化合物が、下記式で表わされる、請求項9に記載の方法。
【化3】
【請求項12】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が、アクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物またはハロゲン化炭素を2つ有する化合物である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記一般式(II)で表わされる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
CH2=CR3-C(=O)-X1-S2-X2-C(=O)-CR4=CH2 (II)
ここで、R3、R4は水素またはメチルであり、X1、X2はOまたはNHであり、S2は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-またはフェニレンに置換されてもよい)である。また、X1-S2-X2がピペラジン環を形成してもよい。
【請求項14】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記のいずれかである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【化4】
【請求項15】
金属が、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる1種類以上の希少金属である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属が、鉛、鉄、銅、カドミウム、水銀、ヒ素、マンガン、コバルト、ビスマス、ウラン、スズからなる群から選ばれる1種類以上の有害金属である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーからなる金属吸着材。
【請求項2】
ジアミン化合物が下記一般式(I)で表わされる化合物またはピペラジンである、請求項1に記載の金属吸着材。
NHR1-S1-NHR2 (I)
ここで、R1、R2は水素、炭素数1〜5のアルキル、またはNとともにピペラジル環を形成する基であり、S1は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-に置換されてもよい)である。
【請求項3】
ジアミン化合物が下記式で表わされる、請求項1に記載の金属吸着材。
【化1】
【請求項4】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が、アクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物またはハロゲン化炭素を2つ有する化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【請求項5】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記一般式(II)で表わされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属吸着材。
CH2=CR3-C(=O)-X1-S2-X2-C(=O)-CR4=CH2 (II)
ここで、R3、R4は水素またはメチルであり、X1、X2はOまたはNHであり、S2は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-またはフェニレンに置換されてもよい)である。また、X1-S2-X2がピペラジン環を形成してもよい。
【請求項6】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記式のいずれかである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【化2】
【請求項7】
金属が、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる1種類以上の希少金属である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【請求項8】
金属が、鉛、鉄、銅、カドミウム、水銀、ヒ素、マンガン、コバルト、ビスマス、ウラン、スズからなる群から選ばれる1種類以上の有害金属である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属吸着材。
【請求項9】
金属を含む試料溶液から金属を分離する方法であって、試料溶液を、ジアミン化合物と、該ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物とを重付加反応させてなる水溶性ポリマーに接触させて、前記金属を前記水溶性ポリマーに吸着させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
ジアミン化合物が、下記一般式(I)で表わされる化合物またはピペラジンである、請求項9に記載の方法。
NHR1-S1-NHR2 (I)
ここで、R1、R2は水素、炭素数1〜5のアルキル、またはNとともにピペラジル環を形成する基であり、S1は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-に置換されてもよい)である。
【請求項11】
ジアミン化合物が、下記式で表わされる、請求項9に記載の方法。
【化3】
【請求項12】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が、アクリル基もしくはメタクリル基を2つ有する化合物またはハロゲン化炭素を2つ有する化合物である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記一般式(II)で表わされる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
CH2=CR3-C(=O)-X1-S2-X2-C(=O)-CR4=CH2 (II)
ここで、R3、R4は水素またはメチルであり、X1、X2はOまたはNHであり、S2は炭素数2〜15のアルキレン(炭素数2〜15のアルキレンは分岐を有してもよく、連続しない-CH2-が-O-またはフェニレンに置換されてもよい)である。また、X1-S2-X2がピペラジン環を形成してもよい。
【請求項14】
ジアミン化合物のNH部分と反応して共有結合を形成しうる基を2つ以上有する化合物が下記のいずれかである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【化4】
【請求項15】
金属が、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる1種類以上の希少金属である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属が、鉛、鉄、銅、カドミウム、水銀、ヒ素、マンガン、コバルト、ビスマス、ウラン、スズからなる群から選ばれる1種類以上の有害金属である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−236319(P2011−236319A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108385(P2010−108385)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 第18回ポリマー材料フォーラム 講演予稿集 発行所 社団法人高分子学会 発行日 平成21年11月11日 刊行物名 第24回群馬・栃木地区講演会 ポスター発表・要旨集 発行所 高分子学会関東支部 発行日 平成22年3月9日
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 第18回ポリマー材料フォーラム 講演予稿集 発行所 社団法人高分子学会 発行日 平成21年11月11日 刊行物名 第24回群馬・栃木地区講演会 ポスター発表・要旨集 発行所 高分子学会関東支部 発行日 平成22年3月9日
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】
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