説明

金属基材へポリマーを貼り合わせるための水系接着剤

水系接着剤組成物が開示され、該接着剤組成物は、
カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有し、該官能基が調製された上記の接着剤組成物中では非反応性である官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、調製された上記の接着剤組成物中では可逆的に不活性である官能基を含む水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションを含んでいる。好ましくは、上記の接着剤組成物のpHは7〜11であり、官能基を不活性化しpHを調整するために揮発性安定化塩基成分が用いられる。ポリマー成分と架橋剤成分の官能基は、積層時の熱処理により揮発性塩基が除去される時に活性化される。本発明の接着剤組成物は、非水系接着剤を用いることなく、様々なプラスチック製フィルムを金属基材に接着することに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、プラスチックフィルムを金属基材に結合させるための接着剤に関し、さらに詳しくは、貼り合わせプロセスにおいて金属基材に、ポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルムを結合させるための薄層水系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属に、ポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルムを結合させる、あるいは貼り合わせるために用いられている多くの接着剤は水系ではない。これらの接着剤は、水以外の溶媒、例えば有機溶媒やその同類を通常用いており、それら溶媒は多くの場合可燃性であり、また環境に優しいものではない。これらの接着剤では、溶媒は該溶媒に溶解または分散している活性な接着剤成分のキャリアとして働き、塗布プロセスおよび貼り合わせプロセスの間に取り除かれなければならない。これらの溶媒の除去は環境に対する問題を発生させ、および溶媒の可燃性に起因して取扱いに注意を要する。さらに、水系でない接着剤を装置から除去するのは困難で時間がかかる。金属表面にプラスチックフィルムを結合させるための多くのプロセスは、貼り合わせ工程の前に実施すべき他の工程を含んでいる。それらの工程には、リン酸塩前処理等の無機化成処理の適用、溶媒系プライマー等のプライマー層の適用および乾燥、および接着剤の適用および乾燥が含まれる。これらの前処理工程の後で、プラスチックフィルムを層状金属の表面に貼り合わせるが、この際、予備成形されたプラスチックのシート/フィルムを用いて、または接着剤で被覆された金属基材の上にプラスチックを押し出すことにより行う。その場合、金属とプラスチックフィルムの間の形成層の全厚さは8から40ミクロンまたはそれより大きい。これら従来の接着剤を用いる多くの用途では、これらの複数の被覆層には、金属表面に対するフィルムの接着力と積層体の耐蝕性との間に適切なバランスを持つことが要求されている。
【0003】
巻回金属ロールの分野では、金属を巻回する前に金属に塗布できる接着剤が望まれており、接着剤で被覆されたコイル状金属は後で延伸され、金属にプラスチックフィルムを貼り合わせるために用いられる。一つの問題は、多くの現在の接着剤が、ブロッキングという公知の現象を示すことである。巻回金属においては、ブロッキングという用語は、多くの接着剤のもたらす効果であって、コイルが延伸できないように金属同士が結合してしまう効果を意味している。この効果は、接着剤被覆層を有するまだ温かい金属がコイルに巻回される時に発現する。温かい金属は、接着剤を十分に活性化させるので、金属同士が接着剤によって付着し、コイルを続いて延伸させることができない。このことは、巻回金属の分野では、ブロッキングとして知られている。ブロッキングを防ぐための現在の一つの方法は、接着剤を活性化させないように接着剤を塗布した後で、追加の急激な冷却工程を設けることである。低い軟化温度を有する接着剤ポリマーを用いた場合には、ブロッキングはより顕著であり、それは巻回時の金属の温度がたいていポリマーの軟化温度近くまで上がるからである。したがって、追加の急激な冷却工程を設けない限り、巻回される金属に対して多くの望ましい接着剤ポリマーを用いることはできない。ブロッキングは工業的にも問題であり、なぜなら、金属基材に接着剤層を塗布し、次いで異なる場所へと輸送するためにコイルへと巻回し、その異なる場所で、さらなる処理を行った後で基材上へのプラスチックフィルムの貼り合わせを行うことが多くの場合好ましいからである。そのようなプロセスにおいて、もし接着剤がブロッキングを起こすと、追加の冷却工程なしでは、そのプロセスを続けて行うことはできない。それは、一旦作製されたコイルは、延伸できないからである。
【0004】
環境の問題、浄化の問題、および可燃性の問題から、現在使用されている非水系溶媒に依存しない接着剤組成物を創出することが望まれている。その目的のためには、環境に対して最小限の影響しか与えず、浄化し易く、非可燃性である水系接着剤組成物を開発することが望まれている。また、より薄い塗布層に使用可能で、好ましくは接着性と耐蝕性をも付与できる接着剤組成物を創出することが望まれている。また、温かい金属基材に塗布することができ、その場所で乾燥させることができ、次いで金属がまだ温かい状態で基材を巻き直すことができ、それによりブロッキングを低減または発生させないようにすることのできる接着剤組成物を創出することが望まれている。また、温かい内に巻き直された巻回金属ロールにブロッキングが発生しないように、低い軟化温度を有する接着剤ポリマーを添加しても、それに適応できる接着剤組成物を提供することも望まれている。最後に、金属にプラスチックフィルムを接着させるコストを低減できること、および処理時間を削減できることも望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概括的には、本発明は、金属基材にプラスチックフィルムを貼り合わせるのに用いることの可能な水系接着剤組成物を提供する。金属は、未処理でも、必要に応じてポリマー成分を含む無機化成処理による前処理を受けても、および/または接着剤を塗布する前に有機プライマー層で必要に応じて被覆されていてもよい。本発明は、水系接着剤組成物を含み、該組成物が、調製された接着剤組成物中では可逆的に不活性である接着性官能基を有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルション、および官能基を含み、該官能基が調製された接着剤組成物中では可逆的に不活性である架橋性官能基である水溶性または水分散性架橋剤成分を含み、接着剤組成物のpHが7〜12である。組成物中における活性基の可逆的なブロッキングまたは不活性化は、化学分野では公知である。本発明では、活性基の不活性化は、接着剤組成物中の揮発性成分によって達成されるのが好ましく、該揮発性成分は加熱乾燥時またはそれらが熱活性化に反応して除去される。活性官能基が可逆的に不活性である接着剤組成物を、金属基材またはプラスチックフィルムに塗布することができ、次いで官能基が活性化され、接着剤がプラスチックフィルムを金属基材に結合させる。本発明は、従来の非水系接着剤を用いることなく、貼り合わせの有効な手段を提供する。好ましい態様では、本発明は、単一の層の中に、プライマーとしても働く金属処理と、接着剤の両方を提供する。単一の処理としての本発明は、多くの従来の化成処理と同様の薄い厚さであって乾燥状態で100mg/ftと同様の薄さで用いられた場合、金属に対する接着剤と保護被覆の両方の働きをする。非常に薄い塗布厚みにおける本発明の効果により、本発明は、多くの用途に対して顕著なコスト低減および/または重量削減を可能とする。多層系を単一の非常に薄い層で置き換えることができ、該薄い層は、同等またはより優れた接着性と耐蝕性を付与する。本発明によれば、単位操作がより少ない簡略化されたプロセスを用いることにより、処理のコストと時間の両方を低減することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接着剤組成物は、過去の巻回金属ロールで問題であったブロッキング現象を示すこともない。本発明の接着剤のブロッキング防止特性により、金属基材への塗布、基材が温かいうちに巻回すること、必要に応じてそれを輸送すること、および基材を延伸して、前に塗布した接着剤を用いてプラスチックフィルムを金属に接着することを可能とする。本発明の接着剤組成物は、金属基材が温かい間にそれらを巻回する場合に金属基材上でブロッキングが発生することなく、従来のシステムで使用されていたよりもはるかに低い軟化温度を有する官能性ポリマーを用いることを可能とした。さらに、本発明は、接着性金属処理と、フィルムの貼り合わせを実質的に同時に行うことができるので、必要な設備のスペースを減らすことができる:もし貼り合わせる前に巻き直しが必要であれば、ブロッキングを防止するためには冷却工程と装置は必要がない。
【0007】
ある態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、以下のものを含む:カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションであり、該官能基は調製された上記の接着剤組成物中では不活性である;水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションであり、該架橋剤成分は、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、かつ調製された上記の接着剤組成物中では可逆的に不活性である官能基を含む;および上記の接着剤組成物のpHが7〜11であり、上記官能性ポリマー成分の官能基および上記架橋剤成分の官能基を、アンモニアの揮発、加熱乾燥、pH変化、脱水、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種により反応し易くすることが可能である。
【0008】
別の態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、官能性ポリマー成分が、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、架橋剤官能基が、官能性ポリマー成分、金属基材、または官能性ポリマー成分および金属基材の両方に結合することが可能である。
【0010】
別の態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、架橋剤成分が、記架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している。
【0011】
別の態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在する。
【0012】
別の態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している。
【0013】
別の態様では、本発明は、金属基材にポリマー製フィルムを貼り合わせるための水系接着剤組成物であり、さらに、ホスホン酸塩、リン酸塩、湿潤剤、非イオン性界面活性剤、五酸化バナジウム、モリブデン、クロム、システイン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体で以下のものを含む:金属基材;カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記官能性ポリマー成分、上記金属基材、または上記官能性ポリマー成分および上記金属基材の両方に結合することが可能な官能基を有する水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションと、を含む水系接着剤組成物;および上記金属基材に塗布されその場で乾燥され、塗布後の乾燥状態で厚さが100mg/ftから1ミルまでの量である水系接着剤。
【0015】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、官能性ポリマー成分が、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している。
【0017】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、接着剤組成物が金属基材に直接結合している。
【0018】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在し、および乾燥後の上記の接着剤が、連続した無機相と分散した機能性ポリマー相を含む形態を有している。
【0019】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している。
【0020】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、接着剤組成物が、さらに、ホスホン酸塩、リン酸塩、湿潤剤、非イオン性界面活性剤、五酸化バナジウム、モリブデン、クロム、システイン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体であり、金属基材が、該金属基材に接着剤組成物を塗布する前に、腐食防止前処理、化成処理前処理、プライマー前処理、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種の前処理を受けており、架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、積層体であり、以下のものを含む:金属基材とプラスチック製フィルムとの間に配置されている接着剤組成物;該接着剤組成物が、カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有し、該官能基が上記プラスチック製フィルムに結合している官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記官能性ポリマー成分、上記金属基材、または上記官能性ポリマー成分および上記金属基材の両方に結合することが可能な官能基を有する水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションとを含み;上記金属基材に塗布されその場で乾燥された上記の接着剤組成物が、塗布後の乾燥状態で厚さが100mg/ftから1ミルの量であり;上記の接着剤組成物が、上記プラスチック製フィルムを上記金属基材に結合している。
【0023】
別の態様では、本発明は、積層体であり、金属基材が、該金属基材に接着剤組成物を塗布する前に、腐食防止前処理、化成処理前処理、プライマー前処理、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種の前処理を受けている。
【0024】
別の態様では、本発明は、積層体であり、接着剤組成物が金属基材に直接結合している。
【0025】
別の態様では、本発明は、積層体であり、官能性ポリマー成分が、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、積層体であり、架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している。
【0027】
別の態様では、本発明は、積層体であり、架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在し、および乾燥後の上記の接着剤が、連続した無機相と分散した官能性ポリマー相を含む形態を有している。
【0028】
別の態様では、本発明は、積層体であり、架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している。
【0029】
別の態様では、本発明は、金属をポリマー製フィルムに結合する水系接着剤組成物であり、さらに、ホスホン酸塩、リン酸塩、湿潤剤、非イオン性界面活性剤、五酸化バナジウム、モリブデン、クロム、システイン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、積層体であり、プラスチックフィルムが、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、熱可塑性オレフィンフィルム、またはそれらの混合物の少なくとも1種から成るシート状プラスチックまたは押出プラスチックを含む。
【0031】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、以下の工程を含む:金属基材を用意する工程;カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記官能性ポリマー成分、上記金属基材、または上記官能性ポリマー成分および上記金属基材の両方に結合することが可能な官能基を有する水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションとを含む水系接着剤組成物を用意する工程;プラスチック製フィルムを用意する工程であって、上記官能性ポリマー成分の上記官能基が該プラスチック製フィルムに結合可能である該工程;上記水系接着剤組成物を、金属基材、プラスチック製フィルム、またはその両方に塗布する工程であって、乾燥状態で厚さが100mg/ftから1ミルとなるように、十分に塗布する該工程;必要に応じ、金属基材に塗布した接着剤組成物から水を除去する工程であって、金属基材を45〜150℃のピーク金属温度まで加熱する該工程;130〜250℃のピーク金属温度まで金属基材を加熱し、該金属基材との間に上記の接着剤組成物を有するプラスチック製フィルムを加熱した該金属基材に適用し、加圧してプラスチック製フィルムを金属基材に貼り合わせる工程。
【0032】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、腐食防止前処理、化成処理前処理、プライマー前処理、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種の前処理を受けている金属基材を用意する工程を含む。
【0033】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む官能性ポリマー成分を含む。
【0034】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している。
【0035】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在し、および乾燥後の上記の接着剤が、連続した無機相と分散した機能性ポリマー相を含む形態を有している。
【0036】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している。
【0037】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、ホスホン酸塩、リン酸塩、湿潤剤、非イオン性界面活性剤、五酸化バナジウム、モリブデン、クロム、システイン、またはそれらの混合物の少なくとも1種をさらに含む接着剤組成物を用意する工程を含む。
【0038】
別の態様では、本発明は積層体の製造方法であり、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、熱可塑性オレフィンフィルム、またはそれらの混合物の少なくとも1種から成るプラスチックフィルムを用意する工程を含む。
【0039】
本発明のこれらのおよび他の特徴並びに利点が、好ましい態様に係る詳細な説明により当業者にはより明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、金属基材にプラスチックフィルムを結合させるのに用いる水系接着剤組成物に関する。本願の明細書とクレームにおいては、貼り合わせの用語は、本発明の接着剤組成物を用いて予備成形されたプラスチックフィルムを基材に結合させること、および本発明の接着剤組成物がプレコートされたプラスチックフィルムを金属基材上に直接押し出すことの両方を含んでいる。本発明の接着剤組成物と、従来の非水系組成物との違いは、本発明の接着剤組成物が水系エマルションまたはディスパージョンである点にある。水の意味は(meaning water)、それが主たるキャリア成分であるということである。ある態様では、水はキャリアの100重量%〜80重量%である。本発明において金属基材上に貼り合わせる好ましいプラスチックフィルムには、シート状または押出の低表面エネルギーのポリマー製フィルムであり、例えば、ポリエチレン系またはポリプロピレン系フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム等のビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムおよびアクリル系フィルムである。「低表面エネルギーポリマー製フィルム」の用語は、非極性表面を有するフィルムを意味することは当業者には理解できるであろう。フィルムは、高密度、低密度、直鎖低密度ポリオレフィンおよび他の形態のポリオレフィンフィルムでもよい。フィルムは、ポリプロピレンまたはポリエチレンの共重合体フィルム、熱可塑性オレフィン(TPOs)等でもよい。これらのフィルムに対しては、コロナ処理、水素炎イオン化処理および他の公知の方法を含む、ポリオレフィン系フィルムに対する特別な処理を必要に応じて行ってもよい。フィルムの厚さは、用途に応じて大きく変えてもよい。ある種の用途では、フィルムを単一の金属表面に貼り合わせ、その場合フィルムの厚さは、通常非常に薄く25ミクロン以上のオーダーである。ある態様では、フィルムの厚さは、30〜500ミクロンである。本発明の他の用途では、2つの金属表面の間に比較的厚いフィルムを貼り合わせて金属−フィルム−金属の積層体を作製する。これらの用途では、フィルムの厚さは、25ミクロンから最大1cmの範囲でもよい。その金属−フィルム−金属の積層体は、消音環境や制振環境に使用される。前述のように、フィルムは貼り合わせの前に予備成形されてもよく、あるいは本発明の接着剤組成物でプレコートされた金属基材の上に直接押し出してもよい。
【0041】
本発明を用いてフィルムを結合させる金属基材は、金属基材または真空金属蒸着のフィルムおよび箔であり、該フィルムおよび箔は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム等のビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムおよびアクリル系フィルム等に基づく低表面エネルギーシート材料に結合している。金属基材は、鋼等の未処理金属、冷間圧延鋼、亜鉛めっきまたはスズめっきがされた改質鋼、亜鉛、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛および/またはアルミニウムで被覆されたまたは被覆されていない鉄系金属、および包装に用いる金属箔を含む。必要があれば、特別な表面処理、例えば、リン酸塩化成処理を単独で、あるいはそれと従来のプライマー被覆および他の前処理被覆とを組み合わせて、金属基材を前処理してもよい。
【0042】
本発明の接着剤組成物は、官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションを含む水系接着剤組成物であり、官能基は調製された接着剤組成物中では非常に非反応性である。本願の明細書およびクレームでは、ポリマーという用語は、広い用語であり、ポリマーを形成するのに用いられる異なるモノマーの数に関係なくすべてのポリマーを含み、および単一のモノマーから成るホモポリマーも含む。接着性官能性ポリマー成分の好ましい官能基は、酸基であり、例えば、カルボン酸基、および水酸基である。前述のように、これらの官能基は、最初に調製された接着剤組成物中では非常に反応性がない。好ましい接着性官能性ポリマー成分類には、酸変性ポリオレフィン、ポリウレタンディスパーションの形態をとり、カルボン酸基または水酸基を含む側鎖基を有するポリウレタン主鎖を有する変性ポリウレタン、および側鎖基としてカルボン酸基または水酸基を有するアクリル系共重合体が含まれる。本明細書では、アクリル系共重合体は、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、およびスチレンの少なくとも1種を含む共重合体を意味する。有効な官能性ポリマー成分は、調製された接着剤組成物中で雰囲気温度において実質的に非反応性であると見なすことのできるものであるが、加熱乾燥、ブロッキング成分、アンモニアの蒸発および/または組成物からの水の蒸発による接着剤組成物中のpHの変化、または貼り合わせ時における高温条件に曝すことにより、反応性を高めることができる。
【0043】
官能化ポリオレフィンの官能性ポリマー成分を製造するために、ポリオレフィンの重合に酸モノマーを導入する方法は、公知である。代表的な適切な酸変性ポリオレフィンには、ポリエチレンアクリル酸共重合体、およびマレイン酸化ポリプロピレン共重合体等のマレイン酸化ポリオレフィンが含まれる。ポリプロピレン等のポリオレフィンをマレイン酸化する方法は、広く知られており、米国特許第5,955,547号に記載されている。適切なポリエチレンアクリル酸共重合体の代表的な例には、プリマコール(Primacor)(登録商標)の名前でダウケミカル社から商業的に入手可能な共重合体が含まれる。マレイン酸化ポリオレフィンの代表的な例は、ハネウェルパフォーマンスアディティブ社から商業的に入手できるA−C(登録商標)596およびA−C(登録商標)597である。他の有用な共重合体は、ウェストレイクロングビュー社から商業的に入手できるエポレン(Epolene)(登録商標)Eシリーズを含む。米国特許第5,585,192号には、カルボン酸基を有するポリオレフィンのエマルションの製造方法が開示されている。水系エマルションの形態で供給される好ましいマレイン酸化ポリプロピレンは、マイケルマン(Michelman)社から商業的に入手できるマイケム(Michem)(登録商標)エマルション91735である。さらに水酸基を含むエマルション型の酸含有ポリオレフィンの別の好ましい例は、イーストマンケミカル社のアドバンティス(Advantis)(登録商標)510Wである。エチレンアクリル酸共重合体の水系ディスパーションの製造方法は公知であり、アンモニアやモノエタノールアミン等のアミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびアミンと強塩基の混合物を用いる。これらの成分の製造方法については、米国特許第3,389,109号、3,782,039号、3,899,389号、4,181,566号、5,206,279号および5,387,635号を参照されたい。ポリエチレンアクリル酸共重合体の水酸化ナトリウムとエタノールアミンの水溶液からなる水系ディスパーションの製造は、米国特許第5,387,635号の実施例19に記載されている。商業的に入手可能なエチレンアクリル酸共重合体ディスパーションは、マイケム(Michem)(登録商標)プライム2960、マイケム(Michem)(登録商標)プライム4983R、マイケム(Michem)(登録商標)プライム4990R、マイケム(Michem)(登録商標)プライム5931、およびマイケム(Michem)(登録商標)プライム4983−40Rを含む。機能性ポリウレタンディスパーションの代表的な例は、ホートウェイ社のホータン(Hauthane)HD2001、HD4664、L2255およびL2245である。
【0044】
本発明の接着剤組成物は、官能基を有し、水溶性、または水エマルションまたはディスパーションである架橋剤成分を含み、該官能基は、調製された接着剤組成物中ではかなり反応性がない。調製された接着剤組成物は、pHが、少なくとも次の値であり、7、7.5、8、8.5、9の順に好ましさが大となり、および次の値を超えないものであり、12、11.5、11、10.5、10、9.5の順に好ましさが大となる。好ましい態様では、アンモニア等の揮発性塩基を導入する。これによりpHを増加させるとともに、調製した接着剤組成物中のポリマー成分の官能基と架橋剤成分の官能基との反応を抑制するのに寄与する。
【0045】
効果的な架橋剤成分は、基材、または官能性ポリマー成分の官能基、または好ましくは両方と反応する官能基を有している。効果的な架橋剤成分は、雰囲気温度において調製した接着剤組成物中で実質的に非反応性と見なせるものであるが、加熱乾燥、ブロッキング成分、アンモニアの蒸発および/または組成物からの水の蒸発による接着剤組成物中のpHの変化、または貼り合わせ時における高温条件に曝すことにより、反応性を高めることができる。架橋剤成分は、水溶性、水中エマルション、または水の中に分散した状態でもよい。好ましい水溶性無機架橋剤成分は、バコート(Bacote)(登録商標)20等の炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液、またはハイチャーム社から商業的に入手可能なハイチャーム炭酸ジルコニウムアンモニウム、またはマグネシウムエレクトロン社から商業的に入手可能なプロテック(Protec)ZZA(登録商標)等の炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛溶液からなる無機組成物を含む。これらの架橋剤成分では、アンモニアと炭酸塩が、調製時の接着剤組成物に含まれる架橋剤成分の官能基をブロックする安定化剤である。架橋剤成分と官能性ポリマー成分の官能基を活性化させるために、アンモニアと炭酸塩を蒸発除去することができる。これらの無機架橋剤成分は、基材が裸の金属表面である場合には非常に効果的である。架橋剤成分が無機成分である場合、活性架橋剤成分および活性官能性ポリマー成分の合計重量に対して活性無機架橋剤成分の好ましい重量%は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%であり、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%を越える必要はない。好ましい態様では、この量は1%〜50%、より好ましくは3%〜40%、さらに好ましくは5%〜30%である。好ましい水溶性有機架橋剤成分は、カルボジイミドを含み、例えば、日清紡社から商業的に入手可能な、カルボジライト(Carbodilite)(登録商標)SV−02やカルボジライト(Carbodilite)(登録商標)V−02−L2である。エマルション型の好ましいカルボジイミド架橋剤成分は、これも日清紡社から商業的に入手可能な、カルボジライト(Carbodilite)(登録商標)E−02である。カルボジイミドは、カルボン酸官能基と非常に反応し易い。日清紡のカルボジライトシリーズは、日清紡社によれば、カルボジイミド基と親水性セグメントを有するポリカルボジイミド樹脂であると説明されている。カルボジイミド変性架橋剤成分は、下塗りされた金属表面または塗布された耐蝕性前処理を有する金属表面の上に適用するのに非常に適している。追加の好ましい種類の有機架橋剤成分には、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂およびその改質品、例えば、ハーキュレス社からポリカップ(Polycup)(登録商標)の名前で販売されているもの、および多官能アジリジンが含まれる。架橋剤成分が有機架橋剤である場合、活性架橋剤成分および活性官能性ポリマー成分の合計重量に対して活性有機架橋剤成分の好ましい重量%は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%であり、25%、24%、23%、22%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%を越える必要はない。好ましい態様では、この量は、1〜25%、より好ましくは2%〜20%、さらに好ましくは5%〜15%である。接着剤組成物は、結合させる基材に応じて、単一の架橋剤成分または架橋剤成分の組み合わせを用いることができる。
【0046】
接着剤組成物の1つの好ましい態様では、接着剤のポリオレフィン官能性ポリマー成分は、活性分35%のエマルション型のマレイン酸化ポリプロピレンであり、架橋剤成分は、活性分20%の炭酸ジルコニウムアンモニウムである。相対濃度の広い範囲において、金属表面に対するポリプロピレンフィルムの優れた接着性が達成できる。活性炭酸ジルコニウムアンモニウムおよび活性マレイン酸化ポリプロピレンエマルションの合計重量に対する活性炭酸ジルコニウムアンモニウムの好ましい重量%は、1%〜50%、より好ましくは3%〜40%、さらに好ましくは5%〜30%である。別の好ましい態様では、接着剤のポリオレフィン官能性ポリマー成分は、活性分35%のエマルション型のマレイン酸化ポリプロピレンであり、架橋剤成分は、ポリカルボジイミドの水溶液である。活性カルボジイミドおよび活性マレイン酸化ポリプロピレンエマルションの合計重量に対する活性カルボジイミドの好ましい重量%は、1%〜25%、より好ましくは2%〜20%、最も好ましくは5%〜15%である。
【0047】
接着剤組成物は、他の任意の成分を含むこともできる。好ましい任意成分は、ホスホン酸塩またはリン酸塩の機能性添加物を含み、代表例としてはデクエスト(Dequest)(登録商標)2010である。デクエスト(Dequest)(登録商標)2010は、モンサントケミカル社から入手でき、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−二リン酸とリン酸の混合物であり60%溶液として供給されている。ホスホン酸塩またはリン酸塩の機能性添加物は金属基材に対する接着力を向上させることができる。接着剤組成物に水や湿潤剤を追加することも有効である。有用な湿潤剤の代表例は、ビックケミー社から入手できるシリコーン界面活性剤である、ビック(Byk)(登録商標)347とビック(Byk)(登録商標)348を含む。水中に安定化されている官能性ポリマー成分のエマルションまたはディスパーションの特性は広い範囲で変化するので、本発明のいくつかの態様では、接着剤組成物の他の成分と混合する前に、非イオン性界面活性剤または界面活性剤の混合物をエマルションまたはディスパーションに添加することが有効であり、特に、相が不安定とならないように、炭酸ジルコニウムアンモニウム等の可溶性無機架橋剤成分を混合する前がよい。非イオン性界面活性剤は、工業分野で広く知られている。非イオン性界面活性剤の1つの好ましい種類は、エチレンオキサイドの重縮合で製造されるポリエチレンオキサイド鎖によって親水性とされている。有効な非イオン性界面活性剤は、分子当たり非常に広い範囲のエチレンオキサイド単位を有しており、本発明に適した界面活性剤は通常その単位を4〜70有している。有用な非イオン性界面活性剤の群は、限定されるものではないが、タージトール15−S−20等のエトキシ化アルコールまたはエトキシ化ポリアルコール、ダウケミカル社から入手できるトリトンX−100等のエトキシ化アルキルフェノール、BASF社から提供される洗剤のプルロニック類等のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体を含む。また、金属基材、プラスチックフィルム、および接着剤組成物中の反応性官能基との間の重要な相互作用を抑制またはその誘因となる手段として、揮発性アミン等のpH調整剤を追加することも有用である。他の用途のために、腐食防止成分が望ましい。適切な腐食防止材料には、五酸化バナジウム等のバナジウム化合物、モリブデン、および/またはクロムは含まれ、最適な効果を得るために、システイン等の還元剤または酸化剤とともに用いることができる。いくつかの場合、他の好ましいフィルム形成樹脂または結合剤を用いてもよい。
【0048】
ある態様では、貼り合わせる前に、接着剤組成物を、金属基材、またはプラスチックフィルムまたはその両方に塗布してもよい。接着剤の塗布は、ロール塗布、吹き付け塗布、浸漬または金属ドローバーを含む多くの方法で実施することができるが、ロール塗布法が好ましい。金属基材に塗布した後、望む結果に応じて、本発明の接着剤組成物を2面の一方に適用することができる。ある態様では、プロセスは2段階プロセスであり、別の態様では、単一工程のプロセスである。
【0049】
2段階プロセスでは、水系接着剤組成物を金属基材に塗布し、45〜150℃、より好ましくは85〜100℃の比較的低いピーク金属温度まで加熱するが、加熱時間は、接着剤組成物の水分を除去するとともに、アンモニア等の揮発性安定化塩基のいくらかあるいはすべてを除去するのに十分な時間とし、それにより金属基材に結合した乾燥した薄い接着剤フィルムが得られる。この薄い層は、金属基材上の腐食防止層として働くことができる。これらの温度条件では、架橋剤成分、例えばポリマー状炭酸ジルコニウムアンモニウムと必要に応じてホスホン酸塩基は、金属表面に強く結合し、前処理腐食防止特性を有するマトリックスを形成する。架橋剤は、官能性ポリマー成分の官能性酸基のいくつかと部分的に反応すると考えられている。乾燥した接着剤の薄い層を有する金属基材は、巻き直され、後の使用まで所定の期間保管される。ある好ましい態様では、配合物は、架橋剤成分として炭酸ジルコニウムアンモニウムまたは他の無機架橋剤の1つを含み、そのまま金属に塗布される。2段階プロセスに用いる場合、架橋剤成分により形成された無機マトリックスは、金属基材上に塗布され非常に大きなブロック耐性を有する接着剤層に寄与し、該接着剤層は、接着剤で被覆された金属基材が高温で巻き直される時に重要である。最も重要なことは、水が除去された接着剤組成物はブロッキングが弱くなるかあるいはブロッキングを示さないので、接着剤組成物を塗布し水を除去した後、プラスチックフィルムと結合させる前に保管のため、まだ温かい状態であっても、金属基材を巻回することができる。典型的な「温かい」巻き直し温度は、37℃〜50℃の範囲である。巻回された金属基材は、後で伸ばすことができ、うまくプラスチックフィルムに結合させることができる。被覆された金属基材を保管できるこの能力は、金属加工において非常に便利である。なぜなら、ある施設で金属基材を接着剤組成物で被覆し、次いでその被覆された金属を、結合プロセスにおいて後で使用するために別の施設に送ることが可能となる。
【0050】
2段階プロセスの第2工程では、塗布された乾燥接着剤フィルムを有する金属基材を、130〜250℃、より好ましくは180〜210℃の比較的高いピーク金属温度まで加熱し、次いで熱い金属基材をロールの間を通過させ、一方のロールで、プラスチックフィルム、例えばポリオレフィンフィルムを金属基材の上に押しつけ、それによりポリオレフィンフィルムを金属基材に貼り合わせる。必要な温度は、官能性ポリマー成分とプラスチックフィルムの種類に依存する。この高い処理温度において、接着剤組成物中の溶融した官能性ポリマー成分が、鎖の絡み合い、イオン結合の形成および/または共有結合の形成等の1つまたは複数の機構を通してフィルムと結合する。積層体が一旦冷却されると、結晶化により結合が強化される。前述のように、金属基材に貼り合わせたフィルムは、予備成形されたフィルムでもよく、あるいは加熱された金属基材の上にフィルムをシート状に直接押し出して結合させてもよい。接着剤で被覆された金属基材の上にフィルムが直接押し出された場合、金属を別に予備加熱する必要がないように、接着剤を活性化するのに十分なだけ熱くする必要がある。また、必要な温度は、フィルムと官能性ポリマー成分の種類に依存する。
【0051】
別の態様では、雰囲気温度から、130〜250℃、より好ましくは180〜210℃のピーク金属温度である貼り合わせ温度まで1段階のみの加熱工程を用い、水の除去、アンモニア等の揮発性pH調整剤の蒸発、反応性官能基の熱活性化、および官能性ポリマー成分の溶融が、連続状態および/または半連続状態で起きる。上記の工程で引用された温度は、本発明の接着剤組成物を用いる多くのフィルムについて適用できるが、いくつかのフィルムについては、その組成と厚さに応じて異なる温度範囲が必要となる。金属基材の加熱は、赤外線ランプ、ガス炊き炉、IH炉または電気炉の使用を含む公知の方法で行うことができる。塗布により変化する広い範囲の塗布厚みに亘って、接着剤組成物は効果を有する。接着剤組成物の厚さに応じて、塗布された乾燥接着剤の好ましい測定方法は変化する。厚い場合、ミルまたはミクロンの厚さを直接測定することが通常は好ましく、その方法は公知である。薄くなると、乾燥した塗布接着剤は、基材の平方フィート当たりの乾燥接着剤のミリグラム(mg/ft)で十分に表すことができる。本発明の乾燥した塗布接着剤の好ましい範囲は、塗布後の乾燥状態で、100mg/ftから1.0ミル、より好ましくは150mg/ftから0.35ミル、最も好ましくは175mg/ftから0.2ミルである。
【0052】
本発明のさらなる利点は、従来使用されていた非水溶媒系接着剤とは異なり、水を用いて接着剤組成物を装置から除去できることにある。本発明の接着剤組成物は、従来の非水溶媒系接着剤と比較して、可燃性でもなく、環境に対して好ましくないものでもない。以下に示すように、本発明の一連の実施例が、作製および試験された。実施例では、エマルションAは、官能性ポリマー成分が、非イオン性の乳化剤を含み活性固形分が35重量%であるマレイン酸化ポリプロピレンエマルションであった。実施例では、架橋剤Aは、活性固形分が40重量%で、官能基当量が385g/当量、pHが9.5である水溶性ポリカルボジイミドである。実施例では、架橋剤Bは、活性固形分が40重量%で、官能基当量が430g/当量、pHが9.5である水溶性ポリカルボジイミドである。実施例では、架橋剤Cは、活性固形分が40重量%で、官能基当量が445g/当量、pHが10であるポリカルボジイミドエマルションである。最後に、実施例では、架橋剤Dは、約20重量%のZrOを含む炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液である。
【実施例】
【0053】
実施例1
接着剤組成物の第1の系列では、官能性ポリマー成分にはエマルションAを用いた。水酸化アンモニウム、28.8%NH溶液を用いてエマルションAのpHを9.0に調整した。このエマルションに、以下の表1に記載された異なるレベルの3種の架橋剤成分を添加した。3つの例については、シリコーン界面活性剤の湿潤剤を用いた。すべての試料を、均一になるまで低速度で混合した。実験例1Aは、架橋剤成分を含んでおらず、したがって本発明に基づいて調製されたものではないので比較例である。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例2
接着剤組成物の第2の系列では、実施例1と同じ官能性ポリマー成分を用い、水酸化アンモニウム、28.8%NH溶液を用いてエマルションAのpHを9.0に調整し、それを用いて以下の表2の実験例2A〜2Dを調製した。すべての試料は、均一になるまで低速度で混合した。これらの実験例では、架橋剤成分として、炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液、すなわち架橋剤Dまたは実施例1の架橋剤Aを用いた。さらに、接着剤組成物はホスホン酸塩溶液を含んでおり、その溶液は、脱イオン水 84.3重量部、28.8%NH溶液 5.7重量部、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−二リン酸、デクエスト2010の60%溶液 10重量部を混合して調製した。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例3
接着剤組成物の第3の系列では、以下の表3に記載された試料を調製した。記載された順番にしたがって成分を添加し、均一になるまで低速度で混合して接着剤組成物を調製した。それぞれの接着剤組成物は、密封容器中で24時間エージングした。官能性ポリマー成分はまたエマルションAであった。すべての接着剤組成物はアルカリ性であり、pHは8以上であった。すべての接着剤組成物は架橋剤Dを含んでいた。1つの試料は実施例1の架橋剤Aも含んでいた。最後に、3つの接着剤組成物は、腐食防止剤Vとシステインも含んでいた。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例4
一連の試験において、表1の接着剤組成物の実験例1Bから1Jおよび比較実験例1Aを、以下の表4に記載されているように、予めプライマー処理された金属パネルに、ワイヤラップドローバーを用いて塗布した。金属パネルは、溶融亜鉛めっき鋼であり、それは、予め亜鉛リン酸塩化成処理がなされ、べークした溶媒系フェノール系プライマーが塗布されたものである。得られた接着剤の乾燥フィルムの厚さは、乾燥されてはいるが貼り合わされていないパネルとは別々に決定した。ドローバー#14では、乾燥後、0.33ミルの平均乾燥フィルム接着剤厚さが得られた。ドローバー#8では、乾燥後、0.20ミルの平均乾燥フィルム接着剤厚さが得られた。塗布後、湿った接着剤で被覆されたパネルを、赤外線ランプを用いて1〜2秒、215℃のピーク金属温度まで加熱し、加圧したロールの間を6ミル厚さのプラスチックポリプロピレンフィルムとともに通過させて該プラスチックポリプロピレンフィルムを熱い接着剤被膜と接触させることにより、基材に対しフィルムを貼り合わせかつ結合させた。用いたプラスチックポリプロピレンフィルムの長さは、金属パネルよりも3〜4インチ長かった。貼り合わせ後、積層パネルを雰囲気温度まで冷却した。パネル表面に対して135度の角度で、フィルムの非貼り合わせ部分を貼り合わせ領域全体にわたって手で引張ることにより接着力を測定した。積層体の接着力を、以下の表4に示す。接着力値のゼロは、接着していないことを意味し、接着力値の1は、ポリプロピレンフィルムを比較的容易に引き剥がすことができることを意味し、接着力値の2は、フィルムを何とか引き剥がせることを意味し、接着力値の3は、フィルムを金属基材から引き剥がすことができず、その代わりフィルムが破れあるいは凝集破壊されたことを意味する。結果は、各接着剤についての複数パネルの結果を平均したものを示している。
【0060】
【表4】

【0061】
結果は、本発明のいくつかの重要な特徴を示している。第1に、本発明のすべての実験例は、比較実験例1Aと比較すると、フィルムとプライマー処理された金属基材との間の結合を達成するためには、架橋剤成分が必要である。第2に、調製したすべての接着剤組成物は、カルボジイミド架橋剤の増加とともに、接着力が増加した。第3に、ドローバー#8で達成された0.2ミルからドローバー#14で達成された0.33ミルまで、接着剤層を増加させても、接着力については顕著な効果は認められなかった。いずれの層も接着力値は3であった。最後に、接着剤組成物の中に湿潤剤を用いても、接着力値に悪影響はなかった。
【0062】
実施例5
実験例2A〜2Dの接着剤組成物を、以下の表5に示すように、0.3ミルの乾燥フィルム厚さに対応する厚さとなるようにドローバーを用いて種々の未処理金属パネルに塗布した。塗布後、湿った接着剤で被覆されたパネルを、上記の実施例4に記載したように、赤外線ランプを用いて1〜2秒、215℃のピーク金属温度まで加熱し、プラスチックポリプロピレンフィルムと貼り合わせた。冷却後、反復実験として、積層体に対して、実施例4に記載したと同様の方法で、金属に対するポリプロピレンフィルムの接着力を試験し、以下の表5に結果を示す。
【0063】
【表5】

【0064】
結果は、いくつかの興味深い傾向を示している。第1に、未処理の冷間圧延鋼では、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋剤成分はすべての試験濃度で、優れた接着力を発現させる上で有効であった。カルボジイミド架橋剤成分は、ホスホン酸塩添加物が最も多く含まれるにも拘わらず効果はなかった。前処理をしていない溶融亜鉛めっき鋼の場合も、3.3%の最も少ない量でわずかに減少したが、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋剤成分が優れた接着力を与える上で有効であった。カルボジイミド架橋剤成分も、冷間圧延鋼に比べればこの鋼に対しては効果があったが、優れた接着力に関してはほとんど効果がなかった。最後に、前処理をしていないアルミニウムの場合、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋剤成分とカルボジイミド架橋剤成分の効果の関係は、冷間圧延鋼の場合と同じであった。特に、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋剤成分のすべての試験濃度で、金属に直接塗布する場合には、優れた接着力を発現させる上で非常に有効であった。カルボジイミド架橋剤成分は、ホスホン酸塩添加物が最も多く含まれている場合であっても効果はなかった。
【0065】
実施例6
溶融亜鉛めっき鋼は、中性pHの水性吹き付け洗浄剤を用いて洗浄し、次いで水切れがなくなるまで水で濯いだ。接着剤金属処理組成物3A〜3Dを、ワイヤラップドローバー#6を用いてパネルに塗布した。該ドローバーは、175±25mg/ftの乾燥被膜重量を与えた。塗布後、乾燥/貼り合わせの2つのプロセスの一方を行った。#1のプロセスでは、被覆パネルを93℃の低いピーク金属温度で最初に乾燥して、非粘着性の薄い接着剤フィルムを作製し、後の使用のためパネルを積層した。ヴェルナーマティス社のマティスラボドライヤータイプ(Mathis Labdryer type)LTHを用い、空気温度300℃、炉内時間17秒で、この93℃のピーク金属時間を達成した。次の日、これらの乾燥接着剤被覆パネルのそれぞれを、赤外線ランプを用い204℃のピーク金属温度まで加熱し、次いでポリプロピレンフィルムに貼り合わせた。次いで、積層パネルを、上記の実施例4に記載されたと同様の方法で試験した。プロセス#2では、湿った接着剤被覆パネルを赤外線ランプを用いてすぐに204℃のピーク金属温度で乾燥し、続いて貼り合わせ、冷却後実施例4に記載されたと同様の方法で試験した。作製した積層体の接着力を以下の表6に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
175mg/ftという本発明の非常に低い塗布量であっても、金属基材にポリオレフィンフィルムを貼り合わせるための優れた接着剤層を提供できることを結果は示している。結果は、プロセス#1が、プロセス#2と同様の優れた効果を有することも示している。このことは、本発明の適応性を示している。金属基材を接着剤組成物で被覆し、その場で乾燥し、基材を積層しまたはコイルに巻回できる。後で、基材を貼り合わせ温度まで加熱し、フィルム、例えば実施例6のポリプロピレンフィルムを基材と貼り合わせて高レベルの接着力を得ることができる。これらの結果より、従来の非水溶媒系システムを適用できなかった範囲まで本発明の用途を広げることが可能となる。
【0068】
実施例7
実施例7では、洗浄以外には前処理を行っていない金属基材に直接使用するための本発明の接着剤組成物を、以下の表7に示す成分を記載された順番に添加して、均一になるまで低速度で混合して作製した。官能性ポリマー成分は、マレイン酸化ポリプロピレンである、マイケルマン社のマイケムエマルション91735を用い、その活性固形分は35重量%である。架橋剤Dは、約20重量%のZrOを含む炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液であった。ホスホン酸塩溶液は、脱イオン水 84.3重量部、28.8%NH溶液 5.7重量部、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−二リン酸、デクエスト2010の60%溶液 10重量部を混合して調製した。
【0069】
【表7】

【0070】
実施例8
実施例8では、実施例7の接着剤組成物を、以下に記載したアルミニウム金属基材に塗布した。実施例7の接着剤を塗布する前に、3003グレードのアルミニウムパネルを、ヘンケル社からパルコ(Parco)(登録商標)洗浄剤1200(濃度4%)として入手できるアルカリ性吹き付け洗浄剤を用いて60℃で10秒間洗浄し、次いで水で濯ぎ、空気ナイフで乾燥した。実施例7では、アルミニウムパネル上にフィルム厚さが0.09〜0.11ミルの乾燥接着剤層が形成されるように、接着剤表面処理組成物をドローバーで塗布した。次いで、被覆されたパネルを、赤外線ランプを用い、200℃のピーク金属温度まで加熱した。接着力の試験のため、200℃のピーク金属温度に到達後、上記の実施例4に記載されたと同様にして接着剤被覆パネルにポリプロピレンフィルムを貼り合わせた。一旦雰囲気温度まで冷却すると、強力な積層体が得られ、フィルムをパネルから剥がして取り除くことはできなかった。剥がす時、3という接着力値が証明するように、結合はそのまま残り、ポリプロピレンフィルムは裂けた。
【0071】
実施例9
実施例9では、実施例8の積層体の1つを切断し、研磨して、金属と接着剤の界面および接着剤とポリプロピレンフィルムの界面を露出させた。次いで、集束させたガリウムイオンビームを用いて積層体の薄片を切り取り、その薄片を暗視野走査透過型電子顕微鏡で観察した。結果を図1に示す。図1は、本発明に基づいて作製した接着剤組成物においては、架橋剤成分が無機架橋剤の場合、例えば炭酸ジルコニウムアンモニウムまたは炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛であり、架橋剤が活性架橋剤重量と活性官能性ポリマー成分重量の合計量に対して25〜50重量%存在すると、特有の形態が得られることを示している。図1は、連続した無機相に、かなり分離・分散した官能性ポリマー相を有する特有の形態を示している。画像の中の領域の相対輝度は、薄片の領域の平均原子数Zを反映している。被膜の中の観察された、かなり分離・分散した官能性ポリマー成分領域の大きさは、表7に示す配合で使用されたポリマーエマルションの粒径測定と整合している。図1では、金属基材は10、連続する無機層は例えば12、および分離・分散した官能性ポリマー成分は例えば14で示される。この特有の接着剤の形態は、これらの接着剤組成物で被覆された金属コイルで、ブロッキング現象が顕著に防止されたことと関係している。さらに、以下に示すように、この特有の形態は、従来のシステムで可能であった温度よりも非常に低い軟化温度を持った官能性ポリマー成分を用いることができることと関係しており、巻回する前に冷却しなくても巻回金属ロールのブロッキングを発生させることがない。前述のように、この特有の形態は、無機架橋剤成分が接着剤組成物中に、活性架橋剤重量と活性官能性ポリマー成分重量の合計量に対して25〜50%存在する時に観察される。
【0072】
実施例10
実施例10では、本発明に基づき、官能性ポリマー成分としてエチレン−アクリル酸共重合体、マイケム(登録商標)プライム4990Rを用いて、官能性ポリマー成分を調製した。この共重合体は、非常に低いTgと40℃の軟化点を有しており、低い軟化点のため、温かい金属基材に塗布された場合、巻き直す前に基材を十分に冷却する必要がある。以下の表10に示す成分を用い、温かい脱イオン水に非イオン性界面活性剤のタージトールを混合して透明な溶液を調製することにより、官能性ポリマー成分を調製した。次いで、その溶液にマイケルマン社から入手した、活性固形分が33.5%であるエチレン−アクリル酸共重合体、マイケム(登録商標)プライム4990Rを添加した。
【0073】
【表10】

【0074】
実施例11
実施例11では、以下の表11に記載されているように、実施例10の官能性ポリマー成分を用い、本発明に基づいて一連の接着剤組成物、実験例11A、11B、11Cを製造した。ホスホン酸塩溶液は、上記の実施例7に記載された方法で調製し、架橋剤Dは上述のように約20重量%のZrOを含む炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液である。本発明に基づくものではないが、比較実験例12は、架橋剤Dなしでまたはホスホン酸塩溶液なしで調製した。溶融亜鉛めっき鋼パネルに対する接着剤のブロッキング性を試験するために実験例を用いた。前述のように、接着剤のブロッキング性は、その有用性を制限する。なぜなら、高いブロッキング性を有する接着剤は、接着剤で金属基材をプレコートし、プロセスに組み入れられた十分な冷却工程なしで積層体またはコイルの状態で保管するためには使用することができない。用いた官能性ポリマー成分の軟化点に基づけば、当業者は、そのポリマー成分を用いて調製した接着剤組成物が、温かい金属基材に対して高いブロッキング性を示すことを予想できる。
【0075】
【表11】

【0076】
実施例13
接着剤組成物のブロッキング性を試験するために、実験例11Aから11Cおよび比較実験例12の組成物を、清浄な溶融亜鉛めっき鋼パネルに塗布した。各パネルに対し200mg/ftの乾燥被膜重量となるようにドローバーを用いて接着剤組成物を塗布し、93℃のピーク金属温度まで乾燥した。乾燥は、マティスラボドライヤーを用いて行い、空気温度は300℃、炉内時間は15秒であった。雰囲気温度まで冷却し、最初の被覆パネルの中央部から切り出し、縁部のバリ取りを行って、4.4cm×7.6cmの乾燥した接着剤被覆パネルを作製した。1対のパネルは、各接着剤組成物は、接着剤被覆面が対向した状態で、互いに接触していた。次いで各実験例11A〜11Cと12のパネル対を積層し、ブロッキング抵抗を評価するために熱プレスの上で圧縮した。2954.5kgの負荷を加え、プラテンを60℃で30分間加熱し、その後パネルと装置を雰囲気温度まで冷却した。一旦十分に冷却した後、負荷を除き、パネル対を分離し、ブロッキング性を評価した。評価は以下のように行った:ゼロの評価は、パネルが容易に分離でき、自由に別々にスライドすることを意味し;1の評価は、パネルを分離するには少し力を要することを意味し;2の評価は、パネルを分離するのにかなりの力を要することを意味する。結果を以下の表13に示す。結果は、意外にも、本発明の接着剤組成物には非常に低い軟化点を有する官能性ポリマー成分を用いることが可能であり、冷却工程なしで、予想された高いブロッキング傾向を示すことがないことを示している。このことは重要である。なぜなら、非常に低い軟化点と非常に高い接着特性を有する官能性ポリマー成分は、それ故接着剤組成物には有用であるが、従来においては、その高いブロッキング性のため、冷却工程なしでは使用されていなかった。比較実験例12は、本発明の架橋剤を含まず、官能性ポリマーのみを含んでいるが、予想通り非常に高いブロッキングレベルを示した。
【0077】
【表13】

【0078】
前述の発明は、適切な法律的基準に基づいて記載されたものであり、本質的にその記載は例示であり限定的なものではない。開示された態様に対する変形および改良は当業者には明らかであり、本発明の範囲内に含まれる。したがって、本発明に与えられる法律の保護範囲は、以下のクレームを検討することによってのみ決定される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー製フィルムを金属基材に貼り合わせるために用いる水系接着剤組成物であって、以下のものを含む該水系接着剤組成物:
カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションであり、該官能基は調製された上記の接着剤組成物中では不活性であり;
水溶性、または水エマルション、またはディスパーションである架橋剤成分であり、該架橋剤成分は、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、かつ調製された上記の接着剤組成物中では可逆的に不活性である官能基を含む;および
上記の接着剤組成物のpHが7〜11であり、上記官能性ポリマー成分の官能基および上記架橋剤成分の官能基を、アンモニアの揮発、加熱乾燥、pH変化、脱水、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種により反応し易くすることが可能である。
【請求項2】
上記官能性ポリマー成分が、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む請求項1記載の、ポリマー製フィルムを金属基材に貼り合わせるために用いる水系接着剤組成物。
【請求項3】
上記架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している請求項1記載の、ポリマー製フィルムを金属基材に貼り合わせるために用いる水系接着剤組成物。
【請求項4】
上記架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している請求項1記載の、ポリマー製フィルムを金属基材に貼り合わせるために用いる水系接着剤組成物。
【請求項5】
金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体で以下のものを含む該積層中間体:
金属基材;
カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記官能性ポリマー成分、上記金属基材、または上記官能性ポリマー成分および上記金属基材の両方に結合することが可能な官能基を有する水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはエマルションと、を含む水系接着剤組成物;および
上記金属基材に塗布されて乾燥され、塗布後の乾燥状態で厚さが100mg/ft〜1ミルの量である上記の水系接着剤。
【請求項6】
上記官能性ポリマー成分が、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む請求項5記載の、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体。
【請求項7】
上記架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している請求項5記載の、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体。
【請求項8】
上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在し、および乾燥後の上記の接着剤が、連続した無機相と分散した機能性ポリマー相を含む形態を有している請求項7記載の、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体。
【請求項9】
上記架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している請求項5記載の、金属基材、接着剤、プラスチック製フィルムの積層中間体。
【請求項10】
金属基材とプラスチック製フィルムとの間に配置されている接着剤組成物を有し、
該接着剤組成物が、カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有し、該官能基が上記プラスチック製フィルムに結合している官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記官能性ポリマー成分、上記金属基材、または上記官能性ポリマー成分および上記金属基材の両方に結合することが可能な官能基を有する水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションとを含み、
上記金属基材に塗布され乾燥された上記の接着剤組成物が、塗布後の乾燥状態で厚さが100mg/ftから1ミルの量であり、
上記の接着剤組成物が、上記プラスチック製フィルムを上記金属基材に結合している、積層体。
【請求項11】
上記架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している請求項10記載の積層体。
【請求項12】
上記架橋剤成分が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在し、および乾燥後の上記の接着剤が、連続した無機相と分散した機能性ポリマー相を含む形態を有している請求項11記載の積層体。
【請求項13】
上記架橋剤成分が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している請求項10記載の積層体。
【請求項14】
上記プラスチック製フィルムが、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、熱可塑性オレフィンフィルム、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含むシート状プラスチックまたは押出プラスチックを含む請求項10記載の積層体。
【請求項15】
以下の工程を含む積層体の製造方法:
a)金属基材を用意する工程;
b)カルボン酸基、水酸基、またはそれらの混合物の少なくとも1種の官能基を複数有する官能性ポリマー成分の水系ディスパーションまたはエマルションと、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含み、上記官能性ポリマー成分、上記金属基材、または上記官能性ポリマー成分および上記金属基材の両方に結合することが可能な官能基を有する水溶性架橋剤成分、あるいは架橋剤成分の水エマルションまたはディスパーションとを含む水系接着剤組成物を用意する工程;
c)プラスチック製フィルムを用意する工程であって、上記官能性ポリマー成分の上記官能基が該プラスチック製フィルムに結合可能である該工程;
d)上記水系接着剤組成物を、金属基材、プラスチック製フィルム、またはその両方に塗布する工程であって、乾燥状態で厚さが100mg/ftから1ミルとなるように、十分に塗布する該工程;
e)必要に応じ、金属基材に塗布した接着剤組成物から水を除去する工程であって、金属基材を45〜150℃のピーク金属温度まで加熱する該工程;
f)130〜250℃のピーク金属温度まで金属基材を加熱し、該金属基材との間に上記の接着剤組成物を有するプラスチック製フィルムを加熱した該金属基材に適用し、加圧してプラスチック製フィルムを金属基材に貼り合わせる工程。
【請求項16】
上記の工程b)が、酸変性ポリオレフィン、変性ポリウレタン、アクリル系共重合体、ポリエチレンアクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー、またはそれらの混合物を含む官能性ポリマー成分を用意することを含む請求項15記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
上記の工程b)が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム亜鉛、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含む架橋剤成分を用意することを含み、該架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜50重量%存在している請求項15記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
上記の工程b)が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して25〜50重量%存在する架橋剤成分を用意することを含み、および工程d)の乾燥後の上記の接着剤が、連続した無機相と分散した機能性ポリマー相を含む形態を有している請求項17記載の積層体の製造方法。
【請求項19】
上記の工程b)が、カルボジイミド、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、多官能アジリジン、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含む架橋剤成分を用意することを含み、および上記架橋剤成分が、活性架橋剤および活性官能性ポリマー成分の合計量に対して1〜25重量%存在している請求項15記載の積層体の製造方法。
【請求項20】
上記の工程c)が、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、熱可塑性オレフィンフィルム、またはそれらの混合物の少なくとも1種を含むプラスチック製フィルムを用意することを含む請求項15記載の積層体の製造方法。

【公表番号】特表2013−506034(P2013−506034A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531050(P2012−531050)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/050127
【国際公開番号】WO2011/038182
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】