説明

金属基材接着のための下地処理剤組成物

【課題】 より簡便に、常温乾燥で安全性も高く、接着性良好な金属基材表面が得られる下地処理剤組成物を提供すること。
【解決手段】 分子内に加水分解性シリル基及びエポキシ基を有するシラン化合物(A)と、リン酸類又はホスホン酸類(B)と、有機溶媒(C)とを含有する下地処理剤組成物であって、上記シラン化合物(A)と上記リン酸類又はホスホン酸類(B)との総和量が、上記下地処理剤組成物の全量の0.1〜15重量%であるとともに、上記シラン化合物(A)と、上記リン酸類又はホスホン酸類(B)の重量部比が、(A):(B)=1:0.3〜3であることを特徴とする、金属基材接着のための下地処理剤組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材に対して、良好な密着性を付与することができる下地処理剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築用パネル、船舶用パネルなどに使用される各種サンドイッチパネルなどの表面材には、金属基材が多く使用されている。しかし、金属基材の表面には、大気中の水分の吸着等によって水酸化物が存在したり、金属基材の精錬や圧延時の熱によって酸化物が存在したり、熱で変質した加工油などの物質が付着して接着性を阻害していることが多い。
【0003】
このような金属基材に対する接着性向上の手法としては、洗浄、研磨のような物理的処理、リン酸やクロム酸、硫酸などの酸を使用した化学的薬品処理、焼付塗装やプライマー等による被覆処理等の方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−297482号公報
【特許文献2】特開平7−278499号公報
【特許文献3】特開2000−154336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、物理的処理、化学的薬品処理、焼き付け塗装においては設備や工程が大掛かりになり簡便性に欠ける。また、特に酸化合物を用いた薬品処理では作業者の安全面での問題もある。プライマー処理は比較的簡便ではあるがその接着性向上の効果は充分でなかった。
【0006】
本発明は、これらの問題点を改善することを目的とし、より簡便に、常温乾燥で安全性も高く、接着性良好な金属基材表面が得られる下地処理剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、分子内に加水分解性シリル基及びエポキシ基を有するシラン化合物と、リン酸類又はホスホン酸類とをある特定の混合比で用いた下地処理剤組成物は、低濃度であっても接着性良好な金属基材表面が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次の第1〜4の発明から構成される。
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
第1の発明は、分子内に加水分解性シリル基及びエポキシ基を有するシラン化合物(A)と、リン酸類又はホスホン酸類(B)と、有機溶媒(C)とを含有する下地処理剤組成物であって、上記シラン化合物(A)と上記リン酸類又はホスホン酸類(B)との総和量が、上記下地処理剤組成物の全量の0.1〜15重量%であるとともに、上記シラン化合物(A)と、上記リン酸類又はホスホン酸類(B)の重量部比が、(A):(B)=1:0.3〜3であることを特徴とする、金属基材接着のための下地処理剤組成物に関するものである。
分子内に加水分解性シリル基及びエポキシ基を有するシラン化合物と、リン酸類又はホスホン酸類とをある特定の混合比で用いると、低濃度であっても接着性良好な金属基材表面が得られる。これによって、作業者の安全を確保しながらも簡便な作業で金属基材表面に対して良好な接着性を付与できる下地処理剤組成物を得ることができる。
【0009】
第2の発明は、上記リン酸類又はホスホン酸類(B)が、リン酸であることを特徴とする、第1の発明に係る金属基材接着のための下地処理剤組成物に関するものである。
上記リン酸類又はホスホン酸類(B)がリン酸であると、より効率的に接着性良好な金属基材表面を得ることができるため好ましい。
【0010】
第3の発明は、上記有機溶媒(C)が、炭素数6以下のアルコールであることを特徴とする、第1又は第2に発明に係る金属基材接着のための下地処理剤組成物に関するものである。
上記有機溶媒(C)として、炭素数6以下のアルコールを用いると、より安全性が高く、常温乾燥可能な下地処理剤組成物が得られるため好ましい。
【0011】
第4の発明は、上記金属基材が、アルミニウム又はステンレスであることを特徴とする、第1〜第3のいずれかの発明に係る下地処理剤組成物に関するものである。
本発明の下地処理剤組成物は、金属基材のなかでも特にアルミニウム又はステンレスに対して良好な接着性を付与できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る下地処理剤組成物を用いれば、より簡便に、常温乾燥で安全性も高く、接着性良好な金属基材表面が得られるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0014】
[シラン化合物(A)について]
本発明におけるシラン化合物(A)は、分子内に下記一般式(1)で表される加水分解性シリル基及びエポキシ基を有する化合物である。
−SiR3−a(OR ・・・式(1)
(但し、Rは炭素数1〜20個の炭化水素基を、Rはフェニル基又は炭素数1〜20のアルキル基から選ばれる一種以上の基を、aは1、2又は3を、それぞれ示す)
【0015】
上記加水分解性シリル基の珪素原子については、加水分解性シリル基の残基との結合手以外に加水分解性基としてアルコキシル基(OR)が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が2〜0個結合している。
【0016】
ここで、アルコキシル基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのがより好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。また、加水分解性シリル基は、アルキルジアルコシキシリル基(a=2)又はトリアルコキシシリル基(a=3)であることが、入手の容易さの観点から好ましい。
【0017】
上記シラン化合物(A)としては、上記を満たすものであれば、特に制限はなく、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等を使用することができる。これらは1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0018】
また、上記シラン化合物(A)は市販品を用いてもよい。このような市販品としては、KBM303、KBM402、KBM403、KBE402、KBE403(商品名、いずれも信越化学工業株式会社製)、G0261、G0210、D2632(商品名、いずれも東京化成工業株式会社製)、PP−40(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)、SILQUEST A−186、A−187、A−1871(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0019】
[リン酸類又はホスホン酸類(B)について]
本発明におけるリン酸又はホスホン酸類(B)としては、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで表されるものであれば、特に制限はなく使用できる。
O−P(=O)(OH) ・・・式(2)
HO−P(=O)(OR ・・・式(3)
−P(=O)(OH) ・・・式(4)
(但し、いずれの式においてもRは水素又は有機基を表す)
【0020】
具体的には、リン酸、メチルリン酸、ブチルリン酸、イソデシルリン酸、2−エチルヘキシルリン酸、ラウリルリン酸、ステアリルリン酸、オレイルリン酸、ホスホン酸、フェニルホスホン酸などが使用できる。これらは1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。これらのなかでも、リン酸を使用すると、より効率的に接着性良好な金属基材表面を得ることができるため好ましい。また、上記リン酸又はホスホン酸類(B)は市販品を用いてもよい。このような市販品としては、AP−1、AP−4、DP−4、MP―4、AP−8、AP−10、MP−10(商品名、いずれも大八化学工業株式会社製)、Phoslex A−8、Phoslex A−18D、Phoslex A−18(商品名、いずれも堺化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
[有機溶媒(C)について]
本発明における有機溶媒(C)としては、上記シラン化合物(A)と上記リン酸類又はホスホン酸類(B)と相溶し、均一溶液になるものであれば特に制限はない。なかでも、作業者に対する毒性、臭気、乾燥性の点で、炭素数6以下のアルコールであることが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等を使用できるが、なかでも2−プロパノールが好ましい。
【0022】
[下地処理剤組成物について]
本発明の下地処理剤組成物は、少なくとも上記シラン化合物(A)、上記リン酸又はホスホン酸類(B)及び上記有機溶媒(C)を撹拌混合することで容易に得ることができる。この際には、上記シラン化合物(A)が有する加水分解性シリル基が空気中の湿気により反応しないよう、密閉式容器を用い、窒素ガス等の不活性雰囲気下で混合するのが好ましい。
【0023】
本発明においては、上記シラン化合物(A)とリン酸類又はホスホン酸類(B)の配合比が重要である。上記シラン化合物(A)と、上記リン酸類又はホスホン酸類(B)とは重量部比が、(A):(B)=1:0.3〜3である(より好ましくは(A):(B)=1:0.5〜2)で配合されたときに金属基材に対して良好な接着性を付与することができる。
発明者らは、上記シラン化合物(A)が分子内に有するエポキシ基と、上記リン酸又はホスホン酸類(B)が分子内に有する水酸基とが相互作用(又は反応)することによって、効率的に金属基材表面を改質できるものと推察している。特に上記重量配合比の範囲においてシラン化合物(A)とリン酸又はホスホン酸類(B)との相互作用(又は反応)の効率がよく、良好な接着性が付与されるものと考えている。
【0024】
上記配合比の範囲外であると、金属基材表面への接着性付与効果が低減する。これは、上記シラン化合物(A)と、上記リン酸類又はホスホン酸類(B)との相互作用(又は反応)が進行しにくい、又は両者の相互作用(又は反応生成物)が不安定となる傾向にあるためであると考えられる。
【0025】
本発明の下地処理剤組成物における有機溶媒(C)の配合割合は、上記シラン化合物(A)及びリン酸又はホスホン酸類(B)の総和量が、下地処理剤組成物の全量の0.1〜15重量%(好ましくは0.2〜10重量%)である。
本発明の下地処理剤組成物においては、上記シラン化合物(A)とリン酸又はホスホン酸類(B)が有効成分であるが、これらの総和量が上記配合量を下回ると十分な接着強さが得られない。また、上記配合割合を上回る場合は、常温での乾燥性が悪く、金属基材表面にベタつきが残りやすく十分な接着強さが得られないため、上記配合割合が好ましい。
【0026】
本発明の下地処理剤組成物は、金属基材全般に接着性が向上された表面を与えるものであるが、特にアルミニウム又はステンレスに対して、より顕著な効果を表す。
本発明の下地処理剤組成物の使用方法としては、刷毛等を用いて金属基材表面に塗布し、常温で乾燥させた後、次工程の作業(接着作業や塗装作業)に供すればよい。下地処理剤組成物の塗布量としては、特に制限されないが概ね10〜50g/m(好ましくは20〜40g/m)である。また、本発明の下地処理剤組成物は、接着作業(すなわち接着剤塗布作業)の前工程としても、塗装作業(すなわち塗料の塗布作業)の前工程としても好適に使用できるものである。また、本発明の下地処理剤組成物は、特にウレタン樹脂系又は加水分解性シリル基含有ポリマー系の接着剤又は塗料に対して特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、特定の化合物を特定の割合で混合した下地処理剤組成物は、良好な接着性を金属基材表面に対して付与できるとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0028】
[下地処理剤組成物の調製]
下地処理剤組成物として、以下のA液〜L液を調製した。
・A液
リン酸(キシダ化学株式会社「特級りん酸」)0.5重量部を2−プロパノール(キシダ化学株式会社「2−プロパノール」)99重量部に溶解させた後、シラン化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部(信越化学工業株式会社「KBM403」)溶解させ、下地処理剤組成物「A液」を得た。
【0029】
・B液
リン酸2重量部を、2−プロパノール96.5重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1.5重量部溶解させ、下地処理剤組成物「B液」を得た。
【0030】
・C液
リン酸2重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3重量部溶解させ、下地処理剤組成物「C液」を得た。
【0031】
・D液
リン酸5重量部を、2−プロパノール90重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5重量部溶解させ、下地処理剤組成物「D液」を得た。
【0032】
・E液
リン酸5重量部を、メタノール(キシダ化学株式会社「メタノール」)90重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5重量部溶解させ、下地処理剤組成物「E液」を得た。
【0033】
・F液
ホスホン酸(キシダ化学株式会社「ホスホン酸」)2重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3重量部溶解させ、下地処理剤組成物「F液」を得た。
【0034】
・G液
メチルリン酸(大八化学工業株式会社「AP−1」)2重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3重量部溶解させ、下地処理剤組成物「G液」を得た。
【0035】
・H液
リン酸2重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させた後、シラン化合物として3−グリシジドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社「KBE402」)を3重量部溶解させ、下地処理剤組成物「H液」を得た。
【0036】
・I液
リン酸5重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させ、下地処理剤組成物「I液」を得た。
【0037】
・J液
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させ、下地処理剤組成物「J液」を得た。
【0038】
・K液
リン酸2重量部を、2−プロパノール88重量部に溶解させた後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを10重量部溶解させ、下地処理剤組成物「K液」を得た。
【0039】
・L液
リン酸2重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させた後、シラン化合物として、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社「KBM1003」)を3質量部溶解させ、下地処理剤組成物「L液」を得た。
【0040】
・M液
リン酸2重量部を、2−プロパノール95重量部に溶解させた後、シラン化合物として、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社「KBM603」)を3質量部加え、下地処理剤組成物を調製しようと試みた。しかし、シラン化合物を加えた時点で白濁し沈降物が生じたため、均質な下地処理剤組成物が得られなかった。
【0041】
[被着材料及び接着剤の準備]
被着材料(すなわち下地処理剤組成物の適用材料)として以下の試験片を準備した。これら各試験片の長辺端部20mmを90°に折り曲げ、後述する「T形はく離試験」に供した。
・アルミニウム(A3003) 100mm×25mm×0.5mm
・ステンレス (SUS304) 100mm×25mm×0.7mm
・塗装アルミ 100mm×25mm×0.7mm
さらに、接着剤として、以下の方法で調製した2液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤を準備した。
・主剤
ひまし油系ポリオール(伊藤製油株式会社「URIC H―30」)100質量部、炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社「NS♯2300」)100質量部、合成ゼオライト(ユニオン昭和株式会社「モレキュラーシーブ4A」)10質量部、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)のフェノール塩(サンアプロ株式会社「U―CAT SA―1」)0.3質量部を2Lのプラネタリーミキサーに投入し、減圧下で30分間撹拌混合して、主剤(A剤)を得た。
・硬化剤
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社「スミジュール44V20」)をそのまま硬化剤(B剤)として準備した。
これら主剤(A剤)と硬化剤(B剤)とを主剤中の水酸基(OHと表記)と硬化剤中のイソシアネート基(NCOと表記)とが、NCO/OH=1.25となるように混合して使用した。
【0042】
[試験方法/T字はく離試験]
上記アルミニウム又はステンレスの試験片に各下地処理剤組成物(A液〜L液)を刷毛を用いて塗布し(塗布量:30g/m)乾燥させた。
その後、23℃に調温し、混合した上記2液混合型ウレタン樹脂系接着剤をアルミニウム又はステンレスの試験片にガラス棒で塗布(塗布量:約150g/m)し、それぞれ塗装アルミと貼り合わせた(接着面積:25mm×15mm)。これを23℃、相対湿度50%で3日間養生した後、T形はく離試験(引張速度:200mm/min)を行い、接着強さを測定し、破壊状態を観察した。結果を表1に示す。ここで、破壊状態の記号「AF」はアルミニウム又はステンレスの界面でのはく離を、「CF」は接着剤層の凝集破壊を、「CF/AF」は凝集破壊と界面破壊の混合であることを表す。
【0043】
[実施例1] 下地処理剤組成物「A液」を使用した。
[実施例2] 下地処理剤組成物「B液」を使用した。
[実施例3] 下地処理剤組成物「C液」を使用した。
[実施例4] 下地処理剤組成物「D液」を使用した。
[実施例5] 下地処理剤組成物「E液」を使用した。
[実施例6] 下地処理剤組成物「F液」を使用した。
[実施例7] 下地処理剤組成物「G液」を使用した。
[実施例8] 下地処理剤組成物「H液」を使用した。
[比較例1] 下地処理剤組成物を用いずに試験片をそのまま試験に供した。
[比較例2] 下地処理剤組成物「I液」を使用した。
[比較例3] 下地処理剤組成物「J液」を使用した。
[比較例4] 下地処理剤組成物「K液」を使用した。
[比較例5] 下地処理剤組成物「L液」を使用した。
[参考例] 下地処理剤として、市販のウォッシュプライマー:「ビニレックス110
アクチブプライマー」(商品名、エポキシ変性メラミンアルキド樹脂系、
日本ペイント株式会社)を使用した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に結果を示したように、本発明の構成要件を備える下地処理剤組成物(実施例1〜7)を予め塗布して表面を処理した金属基材(アルミニウム、ステンレス)の貼り合わせ試験では、良好な接着強さと破壊状態が得られた。一方、下地処理剤組成物を用いないもの(比較例1)や、本発明の構成要件を欠いた下地処理剤組成物を用いた場合(比較例2〜5)には総じて接着強さの値が低く、破壊状態も界面破壊となった。また、本発明の下地処理剤組成物は、金属基材の下地処理剤として現在よく用いられている市販のウォッシュプライマーを用いたもの(参考例)よりも、良好な接着強さと破壊状態を示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る下地処理剤組成物は、より簡便に、常温乾燥で安全性も高く、接着性良好な金属基材表面が得られるという効果を奏するものであり、産業上極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に加水分解性シリル基及びエポキシ基を有するシラン化合物(A)と、
リン酸類又はホスホン酸類(B)と、
有機溶媒(C)とを含有する下地処理剤組成物であって、
上記シラン化合物(A)と上記リン酸類又はホスホン酸類(B)との総和量が、上記下地処理剤組成物の全量の0.1〜15重量%であるとともに、
上記シラン化合物(A)と、上記リン酸類又はホスホン酸類(B)の重量部比が、(A):(B)=1:0.3〜3であることを特徴とする、金属基材接着のための下地処理剤組成物。
【請求項2】
上記リン酸類又はホスホン酸類(B)が、リン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の金属基材接着のための下地処理剤組成物。
【請求項3】
上記有機溶媒(C)が、炭素数6以下のアルコールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属基材接着のための下地処理剤組成物。
【請求項4】
上記金属基材が、アルミニウム又はステンレスであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の下地処理剤組成物。


【公開番号】特開2012−56993(P2012−56993A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199136(P2010−199136)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】