説明

金属基板にクロム含有コーティングを塗布するための方法およびその被覆物品

【課題】 その上を覆う白金含有層(50)を有する基底の金属基板(21)に、クロム含有コーティング(46、58)を塗布するための方法(100)を提供する。
【解決手段】クロム含有層(58)が白金含有層(50)の上に堆積され(102)、アルミナイド拡散層(66)がクロム含有層(58)の上に堆積され(103)、アルミナイド拡散層(66)は、クロム含有層(58)に隣接する内側拡散層(72)と、内側拡散層(72)に隣接する外側付加層(78)とを有する。クロム含有層(58)は、後で堆積される(103)アルミナイド拡散層(66)内にクロム含有層(58)内のクロムがより容易に拡散できるようにする堆積法によって堆積される(102)。次いで、クロム含有層(58)からのクロムを少なくとも8%の量だけ外側付加層(78)内に拡散させるように、クロム含有層およびアルミナイド拡散層(58、66)が処理される(104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に腐食保護を提供するために、タービンエーロフォイルなどの物品の金属基板にクロム含有コーティングを塗布するための方法に関する。本発明は、さらに、そのようなコーティングを有する耐食性の物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンのより高い動作温度は、それらの効率を高めるために絶えず追求されている。高温性能の大幅な進歩は、ニッケルおよびコバルトベースの超合金の形成によって実現されてきた。ただし、そのような合金単独では、ガスタービンエンジンのある部分に配置されるところの、タービンロータ、ブレードおよびベーン、タービンシュラウド、バケット、ノズル、燃焼器ライナおよびそらせ板、オーグメンターなどの構成要素を形成するのにはしばしば不適切である。しかし、動作温度が上昇すると、それに応じて、エンジンの構成要素の高温耐久性(これらのタービン構成要素を取り囲み且つそれらに浸透する腐食環境に対する耐性をも含む)が高まらなければならない。
【0003】
タービンブレードおよびベーンで使用されるエーロフォイルなどのタービンエンジン構成要素は、通常、使用中に1500°F(815℃)を超える温度まで加熱され、ガスタービンからの高い腐食性を有する排気ガスに露出される。そのような温度では、
排気ガスの酸素およびその他の腐食成分は、タービンエーロフォイルの金属基板(ニッケルおよびコバルトベースの超合金からなる金属基板でさえ)に望ましくない腐食をもたらす可能性がある。さらに、通常、過剰な熱を除去するために、タービンエーロフォイルの冷却が必要である。例えば、タービンエーロフォイルに内部冷却経路を設けることができるが、空気は、これらの冷却経路を通して進められてエーロフォイルの外面にある開口から出ることとなり、これによりエーロフォイルの内部から熱が除去されて、ある場合には、エーロフォイルの表面に、より低温の空気の境界層がもたらされる。例えば、本発明の譲受人に譲渡された2001年2月6日に発行された米国特許第6183811B1号(Conner)、および1999年7月27日に発行された米国特許第5928725号(Howard等)を参照されたい。
【0004】

タービンエーロフォイルの寿命を改善するために、金属基板用の多くの保護コーティングが開発されている。これらの保護コーティングは、典型的には厚さが2〜5ミル(51〜127ミクロン)であり、エーロフォイルが動作中にさらされる高温での酸化および腐食からの金属基板を保護する。これらは、例えばニッケルアルミナイドおよび白金アルミナイドコーティングなどの耐酸化アルミナイド拡散コーティングを含む。これらのアルミナイド拡散コーティングは、パックセメンテーション法によって、あるいは、より近年では化学気相成長(CVD)法によって金属基板に塗布することができる。例えば、1979年4月10日に発行された米国特許第4148275号(Benden等)、本発明の譲受人に譲渡された1994年11月29日に発行された米国特許第5368888号(Rigney)、1999年7月27日に発行された米国特許第5928725号(Howard等)、2000年3月21日に発行された米国特許第6039810号(Mantkowski等)、2001年2月6日に発行された米国特許第6183811B1号(Conner)、および2001年5月1日に発行された米国特許第6224941B1号(Chen等)を参照されたい。上記の各特許は、アルミナイド拡散コーティングを塗布するための様々な装置および方法を開示している。
【0005】
より低温下での腐食に対して、或いは腐食性の塩が存在するような海洋環境での腐食に対してさらなる保護を行うために、保護コーティング内にクロムを含むことが望ましい場合がある。クロムは、金属基板の表面上にクロム含有粉末を噴霧することによって、金属基板表面に塗布することができる。しかし、内部空気冷却経路を有するタービンエーロフォイルでは、エーロフォイルの外面でのそのようなスプレーコーティングの不均一性、特に表面粗さが望ましくない。また、クロムは、金属基板上にクロムを堆積させ、次いでクロムと基板内の金属合金とを相互拡散させることによって塗布することもできる。本発明の譲受人に譲渡された2001年9月4日に発行された米国特許第6283715号(Nagaraj等)を参照されたい。典型的には、これに続いて、パックセメンテーションまたはCVD法によって、堆積クロム含有層にアルミナイド拡散コーティングを塗布する。
【0006】
堆積されたクロム含有層に塗布されるこのアルミナイド拡散コーティングは、典型的には、クロム含有層に隣接する内側拡散層と、拡散層に隣接する外側付加層とを形成する。有益な腐食保護を提供するために行われる後続の拡散プロセス中に、この外側付加層へは不十分なクロムしか届かないことが判明している。特に、この外側付加層に到達するクロムのレベルは、この外側層の約6重量%以下である。
【特許文献1】米国特許第6183811B1号
【特許文献2】米国特許第5928725号
【特許文献3】米国特許第4148275号
【特許文献4】米国特許第5368888号
【特許文献5】米国特許第6039810号
【特許文献6】米国特許第6224941B1号
【特許文献7】米国特許第6283715号
【特許文献8】米国特許第5399313号
【特許文献9】米国特許第4116723号
【特許文献10】米国特許第5482789号
【非特許文献1】Kirk-Othmer'sEncyclopedia of Chemical Technology, 3rd Ed., Vol.12, pp. 417-479 (1980)、およびVol.15,pp.787-800 (1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、金属基板への有益な腐食保護を提供するように、また金属基板用のコーティングの成分としてクロムを取り入れることができ、このコーティングが、アルミナイド拡散コーティングも含むことが望ましい。また、内部冷却空気経路または同様の経路を有するタービンエーロフォイルまたは他の構成要素で使用される金属基板の保護コーティング内にこのクロムを取り入れることができることが望ましい。さらに、タービンエーロフォイルを形成する様々な金属基板、および他の材料に適合し、かつ比較的安価な保護コーティングを提供するプロセスを使用して、このクロムを取り入れることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、基底の金属基板に耐食クロム含有コーティングを塗布するための方法であって、金属基板が、上を覆う白金含有層を有する方法に関する。この方法は、
【0009】
後で堆積されるアルミナイド拡散コーティング層内にクロム含有層内のクロムがより容易に拡散できるようにする堆積法によって、白金含有層の上にクロム含有層を堆積するステップと、
【0010】
クロム含有層に隣接する内側拡散層と、内側拡散層に隣接する外側付加層とを有するアルミナイド拡散層をクロム含有層の上に堆積するステップと、
クロム含有層からのクロムを少なくとも約8%の量だけ外側付加層内に拡散させるように、クロム含有層およびアルミナイド拡散層を処理するステップと
を含む。
【0011】
本発明の別の実施形態は、耐食被覆物品に関する。この物品は、
金属基板と、
【0012】
基板に隣接して基板を覆う白金含有層と、
【0013】
白金含有層に隣接して白金含有層を覆うクロム含有層と、
【0014】
クロム含有層を覆ってクロム含有層に隣接する内側拡散層、および内側拡散層に隣接する外側付加層を備えるアルミナイド拡散層とを備え、外側付加層が、少なくとも約8重量%の拡散されたクロムを含む。
【0015】
本発明の方法、および結果として得られる耐食被覆物品は、いくつかの利益を提供する。この方法は、耐食保護コーティング、特にコーティングのアルミナイド拡散層の成分として、クロムの効果的な取入れを可能にして、基底の金属基板に効果的な耐食性および保護を提供する。特に、コーティングのアルミナイド拡散層の外側付加層内に、十分なクロム(すなわち少なくとも約10%)が拡散することができる。この方法は、タービンエーロフォイルが備える様々な金属基板および他の材料に適合するクロム含有コーティングを提供する。また、この方法を使用して、内部冷却空気経路または同様の経路を有するタービンエーロフォイル(例えばタービンブレード)または他の構成要素で使用される基底の金属基板用の保護コーティング内に、そのような内部冷却経路の閉鎖など他の望ましくない影響をもたらさずに、または過剰な熱処理による表面粗さおよび損傷を増大することなく、所望の有益なクロムを取り入れることができる。また、この方法は、前には保護コーティングを上に有さなかった構成要素、特にタービンエーロフォイルの修理も考慮に入れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書で使用する際、用語「備える」または「含む」(comprising)は、様々な組成物、化合物、成分、層、ステップなどを、本発明において併せて使用することができることを意味する。したがって、用語「備える」または「含む」は、より限定的な用語「本質的に〜からなる」(consisting essentially of)および「からなる」(consisting of)を包含する。
【0017】
本明細書で使用する全ての量、割合、比率、およびパーセンテージは、特に指定がない限り、重量によるものである。
【0018】
本発明の方法の実施形態は、高温で、特に通常のエンジン動作中に生じる高い温度で操作される、またはそのような高温に露出される様々なタービンエンジン(例えばガスタービンエンジン)部分および構成要素で使用される、様々な金属、および超合金を含めた金属合金からなる金属基板にクロム含有耐食保護コーティングを塗布するのに有用である。これらのタービンエンジン部分および構成要素は、ブレードおよびベーンなどのタービンエーロフォイル、タービンシュラウド、タービンノズル、燃焼器構成要素、例えばライナ、そらせ板、およびそれらの当該のドームアセンブリ、ガスタービンエンジンのオーグメンターハードウェアなどを含むことができる。本発明の方法の実施形態は、タービンブレードおよびベーン、特にそのようなブレードおよびベーンのシャンクおよびエーロフォイル部分にクロム含有耐食保護コーティングを塗布するのに特に有用である。しかし、本発明の方法の実施形態の以下の論述は、タービンブレードおよびベーン、特にそれらのブレードおよびベーンを構成するそれらのエーロフォイル部分に関するものであるが、本発明の方法は、耐食保護コーティングを必要とする金属基板を備える他の物品でも有用な場合があることを理解されたい。
【0019】
本明細書で以下に説明するように、本発明の方法の様々な実施形態を、図面を参照してさらに例示する。図面を参照すると、図1は、タービンブレードまたはタービンベーンなどガスタービンエンジンの構成要素物品、特に一般に参照番号20として識別されるタービンブレードを示す(タービンベーンは、当該の部分に関して同様の外観を有する)。タービンブレード20は、任意の使用可能な材料、例えばニッケルベースの超合金から形成され、これがタービンブレード20のベース金属である。タービンブレードのベース金属は、本明細書で以下に説明するコーティングのための金属基板21(図2参照)として働く。タービンブレード20は、エーロフォイル22を含み、エーロフォイル22に対して、高温排気ガスの流れが向けられる。エーロフォイル22は、凹形に形状を取られた参照番号24で示される「高圧側」と、凸形に形状を取られ、時として「低圧側」または「後面」と呼ばれる参照番号26で示される吸気側とを有する。動作時、高温燃焼ガスは、高圧側24に向けられる。
【0020】
エーロフォイル22は、プラットフォーム28から上方に延在し、プラットフォーム28は、エーロフォイル22から横方向外側に延在する。プラットフォーム28は、エーロフォイル22に近い上面30と、エーロフォイル22から遠い下面32とを有する。図1に示されるように、タービンブレード20は、プラットフォーム28から下方に(すなわち、エーロフォイル22とは反対の方向に)延在するシャンク34を有する。タービンブレード20は、シャンク34から下方に延在してタービンディスクのスロットに係合するダブテール36によって、タービンディスクまたはハブ(図示せず)に取り付けられる。
【0021】
タービンブレード20のいくつかの実施形態では、複数の内部経路が、エーロフォイル22の内部を通って延在し、エーロフォイル22の表面にある参照番号38で示される開口で終端する。動作中、冷却空気の流れが、内部経路を通して導かれて、エーロフォイル22を冷却する、すなわちエーロフォイル22の温度を低下させる。
【0022】
基板21は、典型的にはアルミナイド拡散コーティングによって保護された様々な金属または金属合金の任意のものを備えることができる。例えば、基板21は、高温耐熱合金、例えば超合金を備えることができる。そのような高温合金は、1995年3月21日に発行された米国特許第5399313号(Ross等)、および1978年9月26日に発行された米国特許第4116723号(Gell等)など様々な参考文献に開示されており、上記特許の両方を参照として本明細書に組み込む。また、高温合金は、一般に、Kirk-Othmer's Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd Ed., Vol.12,
pp. 417-479 (1980)、およびVol.15, pp. 787-800 (1981)に記載されている。例示的な高温ニッケルベース合金は、商標名Inconel(登録商標)、Nimonic(登録商標)、Rene(登録商標)(例えば、Rene(登録商標)80およびRene(登録商標)N5合金)、およびUdimet(登録商標)で表される。
【0023】
本発明の保護コーティングは、ニッケルベースの超合金で特に有用である。本明細書で使用する際、「ニッケルベース」は、組成に、任意の他の元素よりも多くニッケルが存在することを意味する。ニッケルベース超合金は、典型的には、ガンマプライム相の析出によって強化された組成からなる。より典型的には、ニッケルベース合金は、約4〜約20%のコバルトと、約1〜約10%のクロムと、約5〜約7%のアルミニウムと、0〜約2%のモリブデンと、約3〜約8%のタングステンと、約4〜約12%のタンタルと、0〜約2%のチタンと、0〜約8%のレニウムと、0〜約6%のルテニウムと、0〜約1%のニオブと、0〜約0.1%の炭素と、0〜約0.01%のホウ素と、0〜約0.1%のイットリウムと、0〜約1.5%のハフニウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる組成を有する。
【0024】
本発明の保護コーティングは、Rene N5などのニッケルベース合金組成物で特に有用であり、Rene N5は、約7.5%のコバルトと、約7%のクロムと、約6.2%のアルミニウムと、約6.5%のタンタルと、約5%のタングステンと、約1.5%のモリブデンと、約3%のレニウムと、約0.05%の炭素と、約0.004%のホウ素と、約0.15%のハフニウムと、最大で約0.01%のイットリウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する。他の使用可能なニッケルベース超合金としては、例えば以下のものがある。Rene N6(約12.5%のコバルトと、約4.2%のクロムと、約1.4%のモリブデンと、約5.75%のタングステンと、約5.4%のレニウムと、約7.2%のタンタルと、約5.75%のアルミニウムと、約0.15%のハフニウムと、約0.05%の炭素と、約0.004%のホウ素と、約0.01%のイットリウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、Rene 142(約6.8%のクロムと、約12.0%のコバルトと、約1.5%のモリブデンと、約2.8%のレニウムと、約1.5%のハフニウムと、約6.15%のアルミニウムと、約4.9%のタングステンと、約6.35%のタンタルと、約150ppmのホウ素と、約0.12%の炭素と、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、CMSX−4(約9.60%のコバルトと、約6.6%のクロムと、約0.60%のモリブデンと、約6.4%のタングステンと、約3.0%のレニウムと、約6.5%のタンタルと、約5.6%のアルミニウムと、約1.0%のチタンと、約0.10%のハフニウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、CMSX−10(約7.00%のコバルトと、約2.65%のクロムと、約0.60%のモリブデンと、約6.40%のタングステンと、約5.50%のレニウムと、約7.5%のタンタルと、約5.80%のアルミニウムと、約0.80%のチタンと、約0.06%のハフニウムと、約0.4%のニオブと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、PWA1480(約5.00%のコバルトと、約10.0%のクロムと、約4.00%のタングステンと、約12.0%のタンタルと、約5.00%のアルミニウムと、約1.5%のチタンと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、PWA1484(約10.00%のコバルトと、約5.00%のクロムと、約2.00%のモリブデンと、約6.00%のタングステンと、約3.00%のレニウムと、約8.70%のタンタルと、約5.60%のアルミニウムと、約0.10%のハフニウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、およびMX−4(約0.4〜約6.5%のルテニウムと、約4.5〜約5.75%のレニウムと、約5.8〜約10.7%のタンタルと、約4.25〜約17.0%のコバルトと、0〜約0.05%のハフニウムと、0〜約0.06%の炭素と、0〜約0.01%のホウ素と、0〜約0.02%のイットリウムと、約0.9〜約2.0%のモリブデンと、約1.25〜約6.0%のクロムと、0〜約1.0%のニオブと、約5.0〜約6.6%のアルミニウムと、0〜約1.0%のチタンと、約3.0〜約7.5%のタングステンとからなり、モリブデンとクロムとニオブとの和が約2.15〜約9.0%であり、アルミニウムとチタンとタングステンとの和が約8.0〜約15.1%であり、かつ残部がニッケルおよび付随する不純物である、米国特許第5482789号に記載された公称組成を有する)。本発明の使用は、これらの好ましい合金から作成されたタービン構成要素に限定されず、より広い適用可能性がある。
【0025】
図2に示されるように、基板21に隣接して基板21を覆って、一般に参照番号46で示される保護コーティングが存在する。保護コーティング46は、典型的には、約1〜約6ミル(約25〜約152ミクロン)、より典型的には約2〜約4ミル(約51〜約102ミクロン)の厚さを有する。
【0026】
この保護コーティング46は、基板21を覆って基板21に直に隣接する、一般に参照番号50で示される白金含有層を備える。この白金含有層50は、典型的には約0.1〜約0.5ミル(約2.5〜約13ミクロン)、より典型的には約0.1〜約0.2ミル(約2.5〜約5ミクロン)の厚さを有する。白金含有層50は、典型的には、約99〜100%の白金を含む。本明細書で以下に説明する白金含有層50の堆積後熱処理中、基板21からの元素(例えばアルミニウムおよびニッケル)が、層50内に拡散することができ、より限られた程度で、白金が、層50から基板21内に拡散することができる。
【0027】
図2に示されるように、保護コーティング46は、さらに、白金含有層50を覆う参照番号54で示される耐食部分を備える。コーティング46のこの耐食部分54は、約0.5〜約5.9ミル(約13〜約150ミクロン)、より典型的には約2〜約4ミル(約51〜約102ミクロン)の厚さを有する。
【0028】
コーティング46の耐食部分54は、白金含有層50に直に隣接して白金含有層50を覆うクロム含有層58を含む。このクロム含有層58は、典型的には約0.5〜約2ミル(約13〜約51ミクロン)、より典型的には約0.5〜約1ミル(約13〜約25ミクロン)の厚さを有する。これらの厚さは、通常、クロム含有層58の初期堆積に関連する。このクロム含有層の堆積中、特に本明細書で以下に説明する後続の熱処理中に、層58の境界が明確でなくなる場合がある。
【0029】
図2に示されるように、コーティング46の耐食部分54は、さらに、クロム含有層58に隣接してクロム含有層58を覆うアルミナイド拡散層66を備える。このアルミナイドコーティング層66は、約1〜約4ミル(約25〜約102ミクロン)、より典型的には約1.5〜約3ミル(約38〜約76ミクロン)の厚さを有する。クロム含有層58と同様に、このアルミナイド拡散層66に関するこれらの厚さは、通常、層66の初期堆積に関連する。このアルミナイド拡散層66の堆積中、特に本明細書で以下に説明する後続の熱処理ステップ中に、層66の境界が明確でなくなる場合がある。
【0030】
図2に示されるように、アルミナイド拡散層66は、典型的には、クロム含有層58に直に隣接する内側拡散層72(典型的にはコーティング層66の厚さの約30〜約60%、より典型的にはコーティング層66の厚さの約40〜約50%)と、拡散層72に直に隣接する外側付加層78(典型的には層66の厚さの約40〜約70%、より典型的には層66の厚さの約50〜約60%)とを備える。望みであれば、セラミック断熱コーティングなど他の任意選択のコーティング層を、アルミナイド拡散層66の上に堆積することもできる。
【0031】
図3に、保護コーティング46、特に耐食部分54を提供するための、一般に参照番号100で示される本発明の方法の実施形態のブロック図を示す。図3に示されるように、参照番号101で示されるこの方法の最初のステップは、基板21上に白金含有層50を堆積することを含む。白金含有層50は、当業者に知られている任意の適切な方法によって基板21上に形成することができる。例えば、典型的には電気めっきを使用して、基板21に白金含有層50を塗布する。電気めっきでは、白金含有層50は、典型的には、溶解した白金塩を含む水溶液から基板21上に堆積される。例えば、濃度約4〜20グラム/リットルの白金を有するPt(NHHPOの白金含有水溶液を使用して、約1〜約4時間、約190°〜約200°F(約88°〜約93℃)の温度で、(約0.5〜約10amps/ftの電圧/電流源を使用して)白金含有層50にめっきすることができる。電気めっきの代わりに、スパッタリングやイオンプラズマ法など、金属基板上に白金含有層を塗布するための他の法を使用することもできる。
【0032】
さらに図3に示されるように、参照番号102で示されるこの方法の次のステップは、白金含有層50の上にクロム含有層58を堆積することを含む。通常、層50の上にクロム含有層58を堆積する前に、典型的には約1700°〜約2000°F(約927°〜約1093℃)の温度で約0.5〜約2時間にわたって白金含有層50が熱処理される。クロム含有層58は、(アルミニウム拡散層66を堆積するための本明細書で以下に説明する法を用いた)化学気相成長(CVD)およびパックセメンテーションを含めた拡散法によって、めっき法によって、かつスパッタリングやイオンプラズマなどオーバーレイコーティング法によって白金含有層50の上に堆積することができる。クロム含有層58を堆積するためのこれらの法の主要な特徴は、それらの法では、この層からのクロムが、後に、後続の熱処理中にアルミナイド拡散層内により容易に拡散できることである。例えば、約20〜約30%のクロムと、シリコンなど何らかの任意選択の修正元素とを含む組成物を含めた、そのような堆積法に適した任意のクロム含有組成物を使用して、クロム含有層58を形成することができる。クロム含有層58は、タービンブレード20の表面全体を覆うように堆積することができ、あるいは、例えば、保護コーティング46が必要とされないブレード20の他の部分、例えばダブテール36をマスクすることによって、タービンブレード20の一部分にのみ、例えばシャンク34の表面および/またはエーロフォイル部分22の表面にのみ堆積することができる。クロム含有層58が、タービンブレード20の表面全体を覆うように堆積される場合、堆積された層58を、保護コーティング46が必要とされないブレード20の部分から(例えば機械加工によって)除去することができる。
【0033】
図3に示されるように、参照番号103で示されるこの方法の次のステップは、クロム含有層58の上にアルミナイド拡散層66を塗布または堆積することを含む。パックセメンテーション、上部パックアルミナイド処理(above−the−pack aluminiding)、スラリ堆積、化学気相成長(CVD)、および有機金属化学気相成長など、アルミナイド拡散コーティングを堆積するための任意の従来の方法を使用することができる。例えば、本発明の譲受人に譲渡された1994年11月29日に発行された米国特許第5368888号(Rigney)、2000年3月21日に発行された米国特許第6039810号(Mantkowski等)、2001年2月6日に発行された米国特許第6183811B1号(Conner)、2001年5月1日に発行された米国特許第6224941B1号(Chen等)、本発明の譲受人に譲渡された2001年9月4日に発行された米国特許第6283715号(Nagaraj等)の第8欄25〜61行を参照されたい。上記特許は全て、参照として本明細書に組み込む。アルミナイド拡散層66は、任意選択で、合金元素を含めることによって修正することができる。アルミニウムの発生源は、気相アルミナイド処理(vapor phase aluminiding)におけるように、ガス源にすることができる。この手法では、塩化水素などのハロゲン化水素ガスが、アルミニウム金属またはアルミニウム合金と接触して、対応するハロゲン化アルミニウムガスを生成する。任意選択で、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、シリコン、チタン、タンタル、コバルト、白金、およびパラジウムなどのアルミナイド修正元素を、同様の発生源からガス源内にドープすることができる。原料ガスが、保護コーティング46によって覆われるべきタービンブレード20の部分に接触する。堆積反応は通常、約1800°〜約2100°F(約982°〜約1149℃)の範囲内など高温で、典型的には約4〜約8時間の期間にわたって生じる。
【0034】
図3に示されるように、結果として得られた層58と66の組合せは、ステップ104で示されるように、層58からコーティング層66の外側付加層78内へのクロムの十分な拡散がもたらされるように処理される。ステップ104における処理中、少なくとも約8%のクロム(典型的には、約8〜約25%の範囲内のクロム、より典型的には約10〜約15%の範囲内のクロム)が、クロム含有層58から外側付加層78内に拡散される。ステップ104中の処理は通常、ある期間にわたって、クロム含有層58から外側付加層78内へのクロムの十分な拡散を可能にするのに適した高い温度まで層58および66を加熱することによって行われる。十分なクロム拡散を可能にするのに適した温度への層58および66の加熱は、アルミナイド拡散層66の堆積中に行われる場合がある。これは、層66の堆積中に関わる温度(および発生する熱)が、層58から外側付加層78内へのクロムの適切な拡散をもたらすのに十分に高い場合があるためである。しかし、ステップ104は、典型的には、全ての層(すなわち58および66)の堆積が完了した後に、結果として得られた保護コーティングを加熱することによって行われる。熱処理は通常、結果として得られた保護コーティング46を、約1800°〜約2100°F(約982°〜約1149℃)、より典型的には約1925°〜約1975°F(約1052°〜約1079℃)の範囲内の温度に約1〜約8時間、より典型的には約2〜約4時間さらすことを含む。また、熱処理は、典型的には真空下で行われ、または別法として、不活性ガス雰囲気内で行うこともできる。
【0035】
本発明の方法の実施形態の前記の説明は、ブレードまたはベーン20の基板21に新たな保護コーティング46を塗布することに関するものであったが、本発明の方法の別の実施形態を使用して、ブレードまたはベーン20の基板21上の、部分的に、または完全に損傷を受けた既存のコーティング46、または少なくともその耐食部分54を修理または交換することもできる。この方法の実施形態では、部分的に、または完全に損傷を受けた既存のコーティングが、必要な場合には、例えばグリットブラスト法によって基板21から除去され、それにより、上で説明し、図3に示したように、新たな保護コーティング46、または少なくともその耐食部分54を基板21に塗布することができるようにする。
【0036】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、頭記の特許請求の範囲内で定義した本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それらに様々な修正を施すことができることを当業者は理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の保護コーティングを有用とするタービンブレードの斜視図である。
【図2】本発明の保護コーティングの実施形態を示す、線2−2に沿って取られた図1のタービンブレードのエーロフォイル部分を通る拡大断面図である。
【図3】タービンブレードに保護コーティングを塗布するための本発明の方法の実施形態のブロック流れ図である。
【符号の説明】
【0038】
20 タービンブレード、耐食被覆物品
21 金属基板
22 エーロフォイル
28 プラットフォーム
34 シャンク
36 ダブテール
46 保護コーティング
50 白金含有層
58 クロム含有層
66 アルミナイド拡散層
72 内側拡散層
78 外側付加層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上を覆う白金含有層(50)を有する基底の金属基板(21)にクロム含有コーティング(46、58)を塗布するための方法(100)であって、
白金含有層(50)の上にクロム含有層(58)を堆積するステップであって、次に堆積されるアルミナイド拡散層(66)内にクロム含有層(58)内のクロムがより容易に拡散せしめる堆積法を用いるステップ(102)と、
前記クロム含有層(58)に隣接する内側拡散層(72)と、前記内側拡散層(72)に隣接する外側付加層(78)とを有するアルミナイド拡散層(66)を前記クロム含有層(58)の上に堆積するステップ(103)と、
前記クロム含有層(58)からのクロムを少なくとも約8%の量だけ前記外側付加層(78)内に拡散させるように、前記堆積されたクロム含有層およびアルミナイド拡散層(58、66)を処理するステップ(104)と
を具備する方法(100)。
【請求項2】
前記白金含有層(50)が、堆積ステップ(1)の前に、927°〜1093℃の温度で0.5〜約2時間にわたって熱処理される請求項1記載の方法(100)。
【請求項3】
前記クロム含有層(58)が、拡散コーティング、めっき、またはオーバーレイコーティング法によって、12.7〜約51ミクロンの厚さに堆積される請求項1乃至2に記載のいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項4】
処理ステップ(3)(104)が、前記外側付加層(72)が前記クロム含有層(58)から拡散される少なくとも約10%のクロムを含むまで、前記堆積されたクロム含有層およびアルミナイド拡散層(58、66)を加熱することを含む請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項5】
処理ステップ(3)(104)が、ステップ(2)(103)における前記アルミナイド拡散層(66)の堆積中に発生した熱によって行われる請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項6】
処理ステップ(3)(104)が、ステップ(2)(103)が完了した後に、前記堆積されたクロム含有層およびアルミナイド拡散層(58、66)を982°〜1149℃の範囲内の温度まで1〜8時間にわたって加熱することによって行われる請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記金属基板(21)が、その上に、損傷を受けた既存の保護コーティング(46)を有し、前記方法が、ステップ(1)(102)の前に、前記損傷を受けた既存の保護コーティング(46)を除去するさらなるステップを含む請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項8】
金属基板(21)と、
前記基板(21)に隣接して基板(21)を覆う白金含有層(50)と、
前記白金含有層(50)に隣接して白金含有層(50)を覆うクロム含有層(58)と、
前記クロム含有層(58)を覆ってクロム含有層(58)に隣接する内側拡散層(72)、および前記内側拡散層(72)に隣接する外側付加層(78)を備えるアルミナイド拡散層(66)とを備え、前記外側付加層(78)が、少なくとも約8%の拡散されたクロムを含むことを特徴とする耐食被覆物品(20)。
【請求項9】
前記クロム含有層とアルミナイド拡散層(58、66)が、12.7〜約150ミクロンの合計の厚さを有する請求項8記載の物品。
【請求項10】
前記外側付加層(78)が、8〜25%の拡散されたクロムを含む請求項8乃至9のいずれか1項記載の物品(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−131994(P2006−131994A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309254(P2005−309254)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】