説明

金属容器保持ケース及び金属容器の内面塗膜の焼付け方法

【課題】乾燥炉内の金属容器表面の温度上昇を促進し、かつ熱効率の向上を図った金属容器保持ケース。
【解決手段】金属容器5aの乾燥炉内に、発熱体8に対向して設けられ、内面塗料が塗装された金属容器5aを収納するための金属容器保持ケース1であって、該金属容器保持ケース1の内面又は外面の少なくとも一方に、熱吸収効率を向上するために塗膜7の表面処理を施した金属容器保持ケース1。塗膜7が、酸化金属顔料を含む物質、無機金属又は無機酸化物より選ばれる1種、或いはこれらの物質を混合して構成される金属容器保持ケース1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール缶、アルミチューブ等の容器(以下「金属容器」という)の金属容器保持ケース及び金属容器の内面塗膜の焼付け方法に関し、さらに詳しくは、金属容器及び金属容器保持ケースの表面温度を、短時間に高温かつ効率的に温度上昇でき、併せて乾燥炉内の熱効率の向上を図った金属容器保持ケース及び金属容器の内面塗膜の焼付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属容器の内面には、内容物とアルミ等の金属が化学反応を起こすことを防止するために、エポキシフェノール、ポリアミドイミド等の内面塗料が塗装されている。これらの内面塗料は、ノズル等により金属容器の内面に吹き付けられた後、焼付け工程において、乾燥炉内において内面塗料が焼き付けられていた。このような焼き付け工程における従来の乾燥機は、図7に示すようなものがある。乾燥機50内には、縦方向に複数の発熱体51が支持体52に固定されており、この発熱体51の表面温度は約1200℃である。他方、この発熱体51と一定間隔(50〜100mm)を隔て、この発熱体51と対向する側に、縦方向に複数の金属容器保持ケース53が、チェーンコンベア54に支持されている。そして、これらの金属容器保持ケース53は、チェーンコンベア54の移動と共に、移動可能に配列されている。この複数の金属容器保持ケース53内には、金属容器55が保持され、発熱体51に加熱されながら一定の速度で移動する。そして、金属容器の内面塗料が焼き付けられ乾燥工程を終了した後、金属容器は次の工程に送られる。このように、発熱体51から熱を吸収して、金属容器の内面塗料を焼き付ける従来の文献としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−305965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の金属容器の乾燥工程における内面塗膜の焼付けにおいては、乾燥機内に設置された発熱体と、加熱される金属容器及び金属容器保持ケースとの関係は、熱効率の点において、以下のような欠点があった。
(1)直接的に加熱対象となるのは、エアゾール缶、アルミチューブ等の金属容器の内面に塗装されたエポキシフェノール、ポリアミドイミド等の内面塗料であるが、金属容器の表面は、元々発熱体からの熱吸収効率が悪いだけでなく、発熱体の熱が熱伝導率が高いため、金属容器保持ケース側に逃げるという欠点があり、そのため短時間で金属容器表面の温度が上昇せず、短時間で内面塗膜を焼き付けることができない、熱効率が頗る悪いという欠点があった。
(2)発熱体からの熱に対して、金属容器表面の熱の吸収効率が悪いため、従来、乾燥炉内の雰囲気温度を焼付けのための目的温度にしてから、金属容器の内面塗料を焼き付ける必要があり、乾燥炉内の雰囲気温度が目的の高温に達するまで、長時間を必要とする欠点があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、金属容器の乾燥工程における内面塗膜の焼付けにおいて、金属容器及び金属容器保持ケースを、短時間に高温かつ効率的に温度上昇ができ、併せて乾燥炉内の熱効率の向上を図った、金属容器保持ケース及び金属容器の内面塗膜の焼付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、金属容器の乾燥炉内に、発熱体に対向して設けられ、内面塗料が塗装された金属容器を収納するための金属容器保持ケースであって、この金属容器保持ケースの内面又は外面の少なくとも一方に、熱吸収効率を向上するために塗膜の表面処理を施したことを特徴とする金属容器保持ケースである。
【0006】
この課題を解決するため、請求項2記載の発明の解決手段は、塗膜が、酸化金属顔料を含む物質、無機金属又は無機酸化物より選ばれる1種、或いはこれらの物質を混合して構成されることを特徴とする金属容器保持ケースである。
【0007】
この課題を解決するため、請求項3記載の発明の解決手段は、金属容器保持ケースは、乾燥炉内において、発熱体に対向して移動可能に複数連なって設けられたことを特徴とする金属容器保持ケースである。
【0008】
この課題を解決するため、請求項4記載の発明の解決手段は、発熱体から発生する熱エネルギーを、一定の距離を隔て対向して設けられた金属容器及び金属容器保持ケースに吸収させて、金属容器の内面塗料を焼き付ける金属容器の乾燥工程において、金属容器保持ケースの内面又は外面の少なくとも一方に、塗膜の表面処理を施したことを特徴とする金属容器の内面塗膜の焼付け方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る金属容器保持ケースを用いて、金属容器の内面塗料を焼き付ける場合において、金属容器及び金属容器保持ケースを、短時間に高温かつ効率的に温度上昇ができ、かつ乾燥炉内の熱効率の向上を図ることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る金属容器保持ケースの側面図(a)、平面図(b)、及び正面図(c)。
【図2】本発明に係る金属容器及び金属容器保持ケースに対して、発熱体から熱を供給している状態を示す実施例1を示す断面図。
【図3】本発明に係る金属容器及び金属容器保持ケースに対して、発熱体から熱を供給している状態を示す実施例2を示す断面図。
【図4】本発明に係る金属容器保持ケース内に、エアゾール容器を収納して保持している状態を示す正面図。
【図5】本発明に係る金属容器保持ケース内に、アルミチューブを収納して保持している状態を示す正面図。
【図6】エアゾール容器の各製造工程を示す工程図。
【図7】金属容器を金属容器保持ケースに収納・保持して、発熱体から熱を供給して内面塗料を焼付けている状態を示す、従来の乾燥炉内を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例の一例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1において、1は金属容器保持ケースであり、金属容器保持ケース1は籠状に形成されている。この籠状に形成された金属容器保持ケース1の底部には、複数の孔2が形成されている。この複数の孔2は、溶剤成分放散のために設けられている。金属容器保持ケース1の左右には連結片3設けられており、この連結片3がチェーンコンベア4に連結されることにより、金属容器保持ケース1は、左右でチェーンコンベア4に接続されている。図4及び図5に示すように、複数の金属容器保持ケース1がチェーンコンベア4に、縦方向に連続して連結されている。
【0013】
金属容器保持ケース1内には、図2〜図5に示すように、エアゾール容器5又はアルミチューブ6等の金属容器(以下「金属容器5a」という)が、各々収納し保持されている。そして、モーター等による駆動力によりチェーンコンベア4が稼動し、それに伴って金属容器5aを収納する複数の金属容器保持ケース1は一定速度で移動する。金属容器保持ケース1の移動速度は、150mm/secが適する。移動中は、金属容器保持ケース1は支持体9により固定された発熱体8に対して、一定間隔L(50〜100mm)を保っている。そして、金属容器5aの表面は発熱体8からの熱を吸収し、内面に熱が伝導することにより、金属容器5aの内面塗料が焼き付けられる。この発熱体51の表面温度は800〜1600℃であり、約1200℃が適する。
【0014】
図2、図3は、支持体9に固定された発熱体8と、金属容器保持ケース1の表面に黒クロムメッキの塗膜7を塗膜した金属容器保持ケース1を示す断面図であり、本発明に係る黒クロムメッキの塗膜7を塗装した金属容器保持ケース1は、発熱体8から熱エネルギーの吸収効率が高く、又金属容器5aの表面から、金属容器保持ケース1の金属部への熱の逃げを防止する機能を有する。したがって、金属容器5,6及び金属容器保持ケース1には、発熱体8からの熱エネルギーが直接かつ効率的に伝達され、金属容器保持ケース1は、短時間に高温かつ効率的に温度上昇されると共に、間接的に、加熱された金属容器保持ケース1の熱エネルギーが、金属容器5aに伝達されるので、金属容器5aの表面は短時間で高温に温度上昇する。さらに、乾燥炉内の雰囲気温度も、短時間に高温に温度上昇する。この容器本体5,6の内面塗料の焼付け温度は、150〜350℃であり、好ましくは200〜250℃が適する。なお、黒クロムメッキの塗膜7のその他の性質として、耐熱性が高く、洗浄によって塗膜が剥げ落ちない等の特有の性質がある。
【実施例1】
【0015】
図2は、この発明の実施例1を示すもので、金属容器保持ケース1の外面にのみ、熱吸収効率を向上させるための塗膜7の表面処理が施されている。塗膜7としては、酸化金属顔料を含む物質、無機金属又は無機酸化物より選ばれる1種、或いはこれらの物質を混合して構成される物質が、塗膜7として適する。酸化金属顔料を含む物質としては、SiZrO4、Cr2O3、Fe2O3、Al2TiO5、2MgO・2Al2O3・5SiO2、Al2O3・3SiO2等である。無機金属としては、各種金属メッキ、黒クロムメッキ等の酸化物複合メッキ、セラミック粉を皮膜に混合する酸化金属成分の混合メッキ等がある。無機酸化物皮膜としては、シリカ、アルミナ、酸化クロム等のPVD、CVD等の化成皮膜、ガラス、セラミック等の溶射塗装皮膜、金属酸化物ポリマーによる塗装皮膜等がある。なお、金属容器保持ケース1の内面にのみ、塗膜7の表面処理が施されてもよい。
【実施例2】
【0016】
図3は、この発明の実施例2を示すもので、金属容器保持ケース1の内面及び外面に、熱吸収効率を向上させるための塗膜7の表面処理が施されている。塗膜7としては、上記した内面塗料が選択される。
【0017】
図6は金属容器の一連の製造工程を示す工程図である。図(a)において、10はエアゾール容器5の材料であるインパクトスラグである。このインパクトスラグ10をインパクト加工するインパクト加工工程(b)と、このインパクト加工により得られた有底筒状の金属容器5の開口端を切りそろえるトリミング工程(c)と、このトリミングされた金属容器5の内面及び外面を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥工程(d)と、前記金属容器5の内面に内面塗料塗装する内面塗装工程(e)と、この内面塗料を焼き付ける乾燥工程(f)と、この金属容器5の外面に印刷を施す印刷工程(g)と、この外面印刷された金属容器5の開口部を、ネッキング加工するネッキング加工工程(h)と、このネッキング加工された金属容器5の開口部に、カール加工を施すカール加工工程(i)とからなる。本発明に係る金属容器保持ケース1は、前記内面塗料を焼き付ける乾燥工程(f)において用いられる。
【0018】
本発明に係る塗膜7の表面処理が施されている金属容器保持ケース1と、塗膜の表面処理が施されていない金属容器保持ケースとについて、上昇温度と時間を比較した。
(試験条件)
・金属容器保持ケースの材質;SUS304材。
・金属容器保持ケースの塗膜;黒クロムメッキ。
・金属容器保持ケースの外面に、電解メッキ方法で黒クロムメッキ処理を施す。
(温度測定方法)
・電気加熱ヒーターで、70mm隔てた位置の両側から加熱し、金属容器保持ケースに保持されているアルミチューブ内面の表面温度を測定した。
【0019】
【表1】

【0020】
表1から、ケースの両面に本発明に係る黒クロムメッキ処理をした、SUS304製の金属容器保持ケースに保持されているアルミチューブの内面塗膜の温度は、電気加熱ヒーターで加熱開始から700秒(約12分)後において、245℃に達した。又、ケースの片面に本発明に係る黒クロムメッキ処理をした、SUS304製の金属容器保持ケースに保持されているアルミチューブの内面塗膜の温度は、加熱開始から780秒(約13分)後において、235℃に達した。これに対して、黒クロムメッキ処理をしない金属容器保持ケース(SUS304のみ)に保持されているアルミチューブの内面塗料の温度は、加熱開始から750秒(約13分)後において190℃であった。したがって、本発明に係る金属容器保持ケース及びこれを用いた金属容器の焼付け方法によれば、アルミチューブ内面塗膜の焼付け温度を、短時間で高い到達温度に達する効果が得られた。よって、本発明に係る金属容器保持ケースを用いて、金属容器の内面塗料を焼き付けた場合、金属容器及び金属容器保持ケースの温度を、短時間で高温に上昇させることができるだけでなく、乾燥炉内の雰囲気温度も効率的に温度上昇を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
内面に塗装されたエポキシフェノール、ポリアミドイミド等の内面塗料が塗装された金属容器は、本発明に係る金属容器保持ケースに保持されて、発熱体からの熱で焼き付けた場合、熱エネルギーを効率的に金属容器の内面塗料に伝達できるので、エアゾール容器、アルミチューブ以外の他の金属容器の内面塗料の焼き付けにおいても、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 金属容器保持ケース
5,6 金属容器
8 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器の乾燥炉内に、発熱体に対向して設けられ、内面塗料が塗装された金属容器を収納するための金属容器保持ケースであって、
該金属容器保持ケースの内面又は外面の少なくとも一方に、熱吸収効率を向上するために塗膜の表面処理を施したことを特徴とする金属容器保持ケース。
【請求項2】
前記塗膜が、酸化金属顔料を含む物質、無機金属又は無機酸化物より選ばれる1種、或いはこれらの物質を混合して構成されることを特徴とする請求項1記載の金属容器保持ケース。
【請求項3】
前記金属容器保持ケースは、乾燥炉内において、発熱体に対向して移動可能に複数連なって設けられたことを特徴とする請求項1記載の金属容器保持ケース。
【請求項4】
発熱体から発生する熱エネルギーを、一定の距離を隔て対向して設けられた金属容器及び金属容器保持ケースに吸収させて、金属容器の内面塗料を焼き付ける金属容器の乾燥工程において、金属容器保持ケースの内面又は外面の少なくとも一方に、塗膜の表面処理を施したことを特徴とする金属容器の内面塗膜の焼付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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