説明

金属容器

【課題】耐汚染性、耐浸透性及び耐薬品性に優れる金属容器
【解決手段】
容器本体の外面に下地塗装、印刷及びトップコート塗装を施して製造される金属容器において、少なくとも下地塗装に用いるサイジングニス又はホワイトコーティングを硬化する硬化剤に、アミノ系樹脂を用いることを特徴とする金属容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属容器の外面に下地塗装、印刷及びトップコート塗装を施して製造される
金属容器に関し、さらに詳しくは、耐汚染性、耐浸透性及び耐薬品性に優れる金属容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器等の金属容器の製造工程において、容器本体の外面に印刷を施す印刷工程の前に、アルミニウム等の金属素材の傷や表面の荒れを覆い隠し、金属素材の保護を図ると共に、その上に施される印刷インクの本来の色相を正しく表現することを目的として、下地塗装であるサイジングニスを塗装している。特に、アルミニウム等の金属素材と、印刷インク及びトップコート層の強い密着性が要求される、比較的加工度が高い部分には、ホワイトコーティングのベースコートに代えて、ポリエステル系樹脂を主成分とする透明なサイジングニスが下地塗装されている。そして、従来、サイジングニスを、乾燥工程において速攻的に乾燥させるために、硬化剤として塗料イソシアネート系樹脂1〜10重量%を混合して塗装し乾燥することが行われている。又従来、下地塗装であるサイジングニスの上に印刷される印刷インクを保護するために、透明なトップコート層が塗装されているが、このトップコート層の樹脂には、同様にポリエステル樹脂を主成分とする樹脂が使用されている。トップコート層の樹脂には、硬化剤としてアミノ系樹脂が使用されている。従来の文献としては特許文献1がある。
【特許文献1】特開2003−221039号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来のエアゾール容器の外面に、誤って内容物である染毛剤、薬剤等が付着した場合に、外面が着色し印刷文字が読めなくなったり、ブリスター(水膨れ状態)又は剥離が発生するという欠点があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、強アルカリ性、強酸性、硫化物又はハロゲン化物等の染毛剤、ヘアカラーやインドメタシン含有等の薬剤の内容物が充填されたエアゾール容器等の金属容器において、これらの内容物が、誤って金属容器の外面に付着した場合であっても、外面が着色することにより、印刷文字が読取り不可能になることを防止し、又内容物の浸透により、ブリスターの発生又は剥離を防止することにより、耐汚染性、耐浸透性及び耐薬品性に優れた金属容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、容器本体の外面に下地塗装、印刷及びトップコート塗装を施して製造される金属容器において、少なくとも下地塗装に用いるサイジングニス又はホワイトコーティングを硬化する硬化剤に、アミノ系樹脂を用いることを特徴とする金属容器である。
【0005】
請求項2記載の発明の解決手段は、容器本体の外面に下地塗装、印刷及びトップコート塗装を施して製造される金属容器において、少なくともトップコート層の樹脂に、アクリル系樹脂を用いることを特徴とする金属容器である。
【0006】
請求項4記載の発明の解決手段は、金属容器が、通常のエアゾール容器、二重エアゾール容器又は耐食性エアゾール容器から選択される1つであることを特徴とする。
【0007】
請求項5記載の発明の解決手段は、金属容器を組み合わせて、2連式エアゾール容器とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る下地塗装に用いるサイジングニス又はホワイトコーティングを硬化する硬化剤に、アミノ系樹脂硬化剤を用い、又はトップコート塗装の樹脂に、アクリル系樹脂を用いることにより、充填される内容物が染毛剤や薬剤等である場合、これらの内容物が、誤って金属容器の外面に付着した場合であっても、外面が着色することにより、印刷文字が読取り不可能になることを防止できる効果を有する。又内容物の浸透により、ブリスター発生又は剥離を防止することにより、耐汚染性、耐浸透性及び耐薬品性に優れた金属容器を提供できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例の一例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、この発明に係る実施例1を示す図面である。図中1は容器本体であり、バルブ2が、口部先端のカール部3にクリンチされるタイプの通常のエアゾール容器(以下「カール部を有するエアゾール容器」という)である。この容器本体1内には、内容物4が充填されており、内容物4は、例えば金属腐食性の強い染毛剤(染料等)、ヘアカラー又はインドメタシンを含有する薬剤等である。容器本体1のA−A線拡大断面図を、図5に示す。図中5は容器本体1を構成するアルミニウム層であり、このアルミニウム層5の上には、順次サイズニス6、印刷インク層7及びトップコート層8が各々塗装されている。この発明の特徴は、サイズニス6に、アミノ系樹脂の硬化剤を1〜10重量%混合した点が特徴である。硬化剤は、乾燥工程においてサイズニス6を、速攻的に乾燥させる役割を有する。実施例1では、サイズニス6はポリエステル系樹脂を用いるが、その他エポキシ系、アクリル系、ビニル系の塗料であってもよい。サイズニス6の塗装後の焼付け温度は、130〜200℃であり、100〜180℃が適する。さらに、発明者は、トップコート層8の樹脂に、アクリル系樹脂を用いた場合に、さらに効果的に、容器本体1外面の着色を防止でき、かつブリスターの発生及び剥離を防止できることを見出したのである。このトップコート層8のアクリル系樹脂には、同様にアミノ系樹脂の硬化剤が、塗料として10〜30重量%混合される。トップコート層8の塗装後の焼付け温度は、170〜230℃であり、180〜220℃が適する。なお、サイズニス6の硬化剤とトップコート層8の硬化剤は、共にアミノ系樹脂が用いられるが、その配合量が異なる。
【実施例2】
【0011】
図2は、この発明に係る実施例2を示す図面である。実施例2が実施例1と異なるのは、容器本体21内に、ポリエチレン等を素材とする内袋22が挿入されている点である。同様に、この内袋22内には、内容物として染毛剤、薬剤等が充填される。内袋22と容器本体21の間隙には、内袋22を押圧するプロペラント25が充填されている。内袋22は、容器本体21内に懸吊されるか、又は容器本体21の底部に載置されている。プロペラントの充填方法は、例えば、容器本体21のカール部23と内袋22の開口部のフランジ部との隙間から充填する、所謂アンダーカップ充填方法がある。
【実施例3】
【0012】
図3は、この発明に係る実施例3を示す図面である。実施例3が実施例2と異なる点は、実施例3は、カール部を有するエアゾール容器ではなく、容器本体31内にバルブ(図示せず)が挿入され、バルブに上蓋33を被せて、外側からカシメることによりバルブを固定するエアゾール容器(以下「上蓋を被せてカシメるエアゾール容器」という)である。この上蓋を被せてカシメるエアゾール容器は、容量の小さな小型エアゾールであり、この容器本体31の内袋32の素材及び充填される内容物34は、実施例2と同様に、染毛剤、薬剤等である。同様に内袋32と容器本体31の間隙には、プロペラント35が充填されている。内袋32は、容器本体31内に懸吊されるか、又は容器本体31の底部に載置されている。プロペラントの充填方法は、同様に、例えばアンダーカップ充填方法である。
【実施例4】
【0013】
図4は、この発明に係る実施例4を示す図面である。実施例4が実施例3と異なる点は、実施例4は、上蓋を被せてカシメるエアゾール容器ではなく、容器本体41内にバルブ(図示せず)が挿入され、容器本体41の開口部43を、バルブの天面において、内側に折り曲げてカシメることにより、バルブを固定するエアゾール容器(以下「容器先端を内側で折り曲げてカシメるエアゾール容器」という)である。この容器先端を内側で折り曲げてカシメるエアゾール容器は、容量の小さな小型エアゾールであり、容器本体41に充填される内容物44は、実施例3と同様に、染毛剤、薬剤等である。そして、実施例4のさらなる特徴は、耐食性エアゾール容器であり、アルミニウム等の容器本体41の内面に、ポリオレフィン系、ポリアミド系又はポリ塩化ビニール系の樹脂層42を、スプレー塗装、或いは粉体塗装したものである。
【実施例5】
【0014】
図6は、この発明に係る実施例5を示す図面である。実施例5は、実施例1〜4まで
の中のエアゾール容器、例えば、上蓋を被せてカシメるエアゾール容器又は容器先端を内側で折り曲げてカシメるエアゾール容器を任意に選択し、2本組合せた2連式エアゾール容器50を示す実施例である。2連式エアゾール容器50は、例えば染毛1剤を充填した第1容器51と、染毛2剤を充填した第2容器52とを一対として構成し、カバー部材53で、第1容器51及び第2容器52を連結し固定したものである。カバー部材53は、第1容器51と第2容器52の各々のバルブから連通する吐出口54と吐出ボタン55を有する。そして、吐出口54から染毛1剤と染毛2剤を同時に混合して吐出することができる。混合液はブラシ上に取り、頭髪を梳くことにより染毛剤を塗布することができる。
以上、本発明は、例えば実施例1〜実施例5にあげた、エアゾール容器等の金属容器の外面に適用することができる。
【0015】
次に、本発明に係る金属容器の外面における内容物付着試験結果を、以下の表1に示す。
以下の目的、試験条件で試験を行う。
(1)目的
本発明に係るサイジングニスとトップコート層の組合せと、従来のサイジングニスと
トップコート層の組合せについて、金属容器外面の内容物付着評価試験を行う。
(2)試験条件
・サイジングの条件
1)樹脂・・・ポリエステル系樹脂、塗膜厚・・・5〜8μm
2)硬化剤・・・アミノ系樹脂、混合割合・・・8重量%(塗料中)
3)焼き付け温度条件・・・170℃で約3分
・印刷層の条件
印刷層の焼き付け温度条件・・・190℃で約4分
・トップコート層の条件
1)樹脂・・・アクリル系樹脂、塗膜厚・・・10〜13μm
2)硬化剤・・・アミノ系樹脂、混合割合・・・22重量%(塗料中)
3)焼き付け温度条件・・・200℃又は220℃で約5分
・テスト液・・・水、乳酸、エタノール、グリセリン、水酸化ナトリウム、リンゴ酸等を主成分とする染毛料
・金属容器・・・アルミエアゾール容器の外面に、サイジングニス、印刷層、トップコート層を順次塗装。
(3)試験方法
金属容器を、テスト液に40°で24時間浸漬後、浸透性、ブリスター、剥離状態の有無を目視で観察した。
【表1】

【0016】
(試験結果)
実験において、表1に示すように、従来の金属容器の資料No.1は、評価テストにお
いて、容器外面の印刷文字の読取りが不可能であり、かつ外面が剥離していた。しかし、
本発明に係る金属容器の資料No.2、No.3は、若干の着色があったものの、印刷文字を
読むことができ、又微小のブリスターの発生が観察されたが、概ね外面の状態は良好であった。又同様に本発明に係る金属容器の資料No.4、No.5は、若干の着色があったが、
印刷文字を読むことができ、外面の状態は良好であった。以上のテスト結果から、少なくとも、サイジングニスの硬化剤をアミノ系樹脂にすることで、外面の状態は良好になることが判明した。そして、サイジングニスの硬化剤をアミノ系樹脂とすることに加え、トップコート層の樹脂をアクリル樹脂にすることにより、さらに大きな効果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係る金属容器の外面は、耐汚染性、耐浸透性及び耐薬品性に優れるので、染毛剤、薬剤の他、脱色剤、保湿剤、鎮痛剤、制汗剤、育毛剤等、又殺虫剤、消臭剤、芳香剤等の浸透性の強い内容物を充填できるエアゾール容器等の金属容器として、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る実施例1のカール部を有するエアゾール容器を示す、一部切り欠き正面図。
【図2】この発明に係る実施例2のカール部を有するエアゾール容器を示す、一部切り欠き正面図。
【図3】この発明に係る実施例3の上蓋を被せてカシメるエアゾール容器を示す、一部切り欠き正面図。
【図4】この発明に係る実施例4の容器先端を内側で折り曲げてカシメるエアゾール容器を示す、一部切り欠き正面図。
【図5】この発明に係る実施例1〜実施例4のエアゾール容器において、外面の層構成を示す拡大断面図。
【図6】この発明に係る実施例1〜実施例4のエアゾール容器を、2本組み合わせた2連式エアゾール容器を示す斜視図。
【符号の説明】
【0019】
1、21、31、41 容器本体
6 サイジングニス
7 印刷層
8 トップコート層
50 2連式エアゾール容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の外面に下地塗装、印刷及びトップコート塗装を施して製造される金属容器において、少なくとも下地塗装に用いるサイジングニス又はホワイトコーティングを硬化する硬化剤に、アミノ系樹脂を用いることを特徴とする金属容器。
【請求項2】
容器本体の外面に下地塗装、印刷及びトップコート塗装を施して製造される金属容器において、少なくともトップコート層の樹脂に、アクリル系樹脂を用いることを特徴とする金属容器。
【請求項3】
前記金属容器が、通常のエアゾール容器、二重エアゾール容器又は耐食性エアゾール容器から選択される1つであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属容器。
【請求項4】
前記金属容器を組み合わせて、2連式エアゾール容器とすることを特徴とする請求項3記載の金属容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−105713(P2010−105713A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281235(P2008−281235)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】