説明

金属屋根における馳部の溝幅ゲージ

【目的】本発明は、金属屋根8の馳部(馳締部)の溝幅を簡易且つ正確に測定すること。
【構成】測定主板1と、金属屋根8の馳部81の背面基準線81aを支持する被押圧部2と、金属屋根8の馳部81の溝部81c箇所の所定の高さ位置の溝幅の正常幅に相当する間隔を有しつつ、正常値を超えたときに後退するように弾性を有する押圧棒状部31とからなること。被押圧部2と押圧棒状部31とが測定主板1の下方に設けられていること。測定時において前記溝幅が正常値を超えたときに警報信号が検出されるように警報手段Xが備えられてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馳部(馳締部)の溝幅を簡易且つ正確に測定することができる金属屋根における馳部の溝幅ゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、馳部にて屋根板の端部相互を結合して葺成する金属屋根は数多く存在している。その葺成後の馳部は、長さが100m程度存在しても、断面として見れるのは、両端部のみであり、その途中は、平面的に外観を見れるのみである。これを目視したのみでは、施工が適正であるか、不適正ではないかの見分けは殆どできないのが現状である。その金属屋根8における馳部81における正常な断面(適正断面)は、図6(A)に示すように、丸形タイプの馳部81の横幅(馳幅)が所定値Mとなることが前提となる。この外に、同図〔図6(A)〕に示す前記馳部81の上辺より孤状の溝部箇所の略中心までの高さ位置の溝幅も所定値を取ることが必要である。
【0003】
これが、図6(A)の鎖線又は図6(B)及び(C)のL´のように、馳締加工された場合には、雨水が容易に浸入する危険性がある。また、図6(D)に示すように、逆L形タイプの馳部81の横幅(馳幅)Mが所定の値であったとしても、同図に示すように、溝部(上辺の下側は全て溝部箇所)の下側が膨らんで馳締加工された場合にも、雨水が容易に浸入する危険性がある。この場合も、上側からの目視でも、馳幅でも所定値Mを所有していることも多い。ところで、公知又は特許文献1に示すノギスなどの測定ゲージにて馳部81の横幅(馳幅)は測定できるが、スポット的な箇所のみであり、馳部の溝幅の測定は全くできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−344003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、携帯性に優れていると共に、金属屋根の馳部の溝幅の測定が簡単にできるものが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、測定主板と、金属屋根の馳部の背面基準線を支持する被押圧部と、金属屋根の馳部の溝部箇所の所定の高さ位置の溝幅の正常幅に相当する間隔を有しつつ、正常値を超えたときに後退するように弾性を有する押圧棒状部とからなり、前記被押圧部と前記押圧棒状部とが前記測定主板の下方に設けられ、測定時において前記溝幅が正常値を超えたときに警報信号が検出されるように警報手段が備えられてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージとしたことにより、前記課題を解決した。
【0007】
請求項2の発明を、請求項1において、前記押圧棒状部の先端にて馳部の溝部を押圧するようにしてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージとしたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記被押圧部が前記測定主板に対して正常位置より適宜後退できるように摺動可能に設けられてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージとしたことにより、前記課題を解決した。
【0008】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3において、前記警報手段の電源は直流電源による閉ループが構成され、前記直流電源と前記警報手段との間に、正常値を超えたときに後退するように構成された金属製の押圧棒状部接点と、前記箱状体に固定された対応接点とが直列に設けられてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージとしたことにより、前記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4において、前記警報手段はブザー又は発光部とからなると共に、前記警報信号は音又は光からなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージとしたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明においては、馳部の溝幅の測定が簡単にでき、しかも正確な測定ができる利点がある。特に、測定時には、音又は光などの警報信号が検出されため、計測のミスが回避できる利点がある。請求項2においては、請求項1と同様の効果を奏する。請求項3の発明では、金属屋根の馳部箇所に装着するときに、被押圧部を正常位置より適宜後退させることで、簡単にできる利点がある。請求項4の発明では、簡単な直流電源による簡易な回路で安価に実現できる。請求項5の発明では、特に、ブザーか発光部の何れかによるもので不良箇所を警告してくれるため、簡単で且つ正確な測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を底面から見た一部省略した斜視図である。
【図2】本発明を金属屋根に装着して動作させている断面図である。
【図3】(A)は本発明を金属屋根に装着するのにして被押圧部を後退させた断面図、(B)は本発明の一部斜視図、(C)本発明を金属屋根に装着して動作させている要部拡大状態図である。
【図4】(A)は本発明の回路図、(B)は(A)の(ア)部の箇所の具体的構成の一部側面とした断面図である。
【図5】フローチャートである。
【図6】(A)は正常に施工した金属屋根の丸形タイプの馳部箇所の断面図、(B)及び(C)は正常ではなく施工した金属屋根の馳部箇所の断面図、(D)は(C)は正常ではなく施工した金属屋根の逆L形タイプの馳部箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。本発明は、図1及び図2に示すように、主に帯状で長方形状の測定主板1と、金属屋根8の馳部81の横幅(馳幅)の背面基準線81aを支持する被押圧部2と、前記金属屋根8の馳部81の溝部81c箇所の所定の高さ位置の馳幅の正常な間隔に相当する間隔を有しつつ、正常値を超えたときに後退するように弾性を有する押圧部3と、ケース5とから構成されている。
【0012】
前記馳部81が丸形タイプの馳部81の場合には、該馳部81の上辺より溝部81c箇所の略中心までの高さ位置の溝幅であり〔図6(A)参照〕る。すなわち、前記馳部81の背面基準線81aから前記溝部81cまでの間隔が溝幅である。また、逆L形タイプの馳部81の場合は、上辺の下側は全て溝部箇所に該当する〔図6(D)参照〕。特に、この逆L形タイプの馳部81では、前記押圧部3の押圧棒状部31は比較的下側箇所が溝幅となる。
【0013】
前記被押圧部2は、図1,図3(A)及び(B)に示すように、四角筒状をなし、前記測定主板1に対して適宜の領域m(前記馳部81の馳幅と同等距離)摺動可能に構成されている。つまり、前記被押圧部2の上側の扁平筒部21が前記測定主板1に挿通され、同測定主板1の設けた停止突部11,12間を適時摺動するように構成されている。前記被押圧部2には、ネジ杆付き摘み22が埴設され、適宜の締め付けにて、前記被押圧部2が前記測定主板1に固定される。勿論、摺動させるときには、ネジ杆付き摘み22を緩める。
【0014】
図4に示すように、測定時において正常値を超えたときに警報信号である音又は光が検出されるように警報手段Xが備えられている。前記押圧部3の押圧棒状部31にて、前記馳部81の上辺より溝部81c箇所の略中心までの高さの部位を押圧するように構成されている。なお、前記馳部81の前記背面基準線81aの反対側を屈曲側線81bという。前記警報手段Xの電源は直流電源E(一般には、1.5V)によるブザー回路92及び発光回路91が並列に構成されている。前記警報手段Xとしては、ブザー96の場合と、発光部95との場合がある。
【0015】
本発明では、ブザー96と発光部95とを両方設けたが、どちらか1つにする場合もある。特に、前記直流電源Eと前記警報手段Xとの間に、正常値を超えたときに後退するように構成された金属製の前記押圧棒状部31の後部端に固着された押圧棒状部接点35と、前記測定主板1に固定された対応接点15とが直列に設けられている。該対応接点15と前記押圧棒状部接点35とで接点スイッチSが構成されている〔図4(A)及び(B)参照〕。また、前記測定主板1の約半分は、四角筒状のケース5に挿入されつつ、前記測定主板1に固着された取付部材13を介してボルトなどにて固着されている。
【0016】
前記押圧部3と被押圧部2の関係を詳細に説明する。該被押圧部2は、前記金属屋根8の馳部81の背面基準線81aを支持する部位であり、前記押圧部の押圧棒状部31にて、常時、前記馳部81の溝部81c箇所を弾発支持するようにした構成部材である。具体的には、前記押圧部3は、門形状の押圧本体部33内に、前記押圧棒状部31が、コイル状の弾性体34にて常時外側〔図2及び図3(C)において右側方向〕に弾発支持するように構成されている。該弾性体34は、前記押圧棒状部31に設けられた弾性体受片34aと、前記押圧本体部33の後部片との間に介在されている。
【0017】
特に、前記押圧部3の押圧棒状部31の内端〔図3(A)において右側端〕と、前記被押圧部2の内端〔図3(A)において左側端〕との間の間隔W(以下、「押圧部3と被押圧部2との間隔W」という)は、前記馳部81の横幅(馳幅)によって適宜広くなるが、該馳部81の馳幅の正常幅Lの許容限界寸法(正常寸法)をWとする〔図3(C)参照〕。この正常寸法を正常値とも言う。また、正常幅Lを合格寸法とも言う。
【0018】
また、馳部81の溝幅の正常幅Lとし、正常でない幅L´とすると、
L´>W>Lが成り立つ。
つまり、正常でない幅L´のときには、前記接点スイッチSが動作して、警報手段Xとしては、ブザー96又は発光部95が作動し、馳幅が正常でないことを作業者に知らせるように構成されている。
【0019】
次に、溝幅の測定方法について説明する。つまり、溝幅検査のフローについて説明する。馳部81の溝幅を測定するのに、図3(A)実線のように、被押圧部2を後退させておき、金属屋根8の山部の両肩部82,82上で、且つ馳部81箇所を覆うようにする。つまり、前記押圧棒状部31と被押圧部2との間に馳部81箇所を入れたら、直ぐに、前記被押圧部2を停止突部11に当てるようにして基の位置に戻す。そして、図2に示すように、前記押圧棒状部31の先端が、馳部81の溝部81c箇所を押圧するようにセットする。
【0020】
この状態で、正常な馳部81として、前記押圧部3の押圧棒状部31先端と被押圧部2との間隔Wは、許容限界寸法(正常寸法)Wを保持しており、馳部81の溝幅は、合格寸法Lとなっている〔図6(A)参照〕。そして、図6(B),(C)及び(D)に示すように、馳部81の溝幅が正常ではない場合(L´)には、広がりを生じ、跨ぐようにした前記押圧部3の押圧棒状部31と被押圧部2との間隔Wは、許容限界寸法(正常寸法)Wを超えた状態となり、図3(C)実線に示すように、接点スイッチSが動作して、警報手段Xが動作して、ブザー96又は発光部95が作動し、馳幅が正常でないことを作業者に知らせる。
【0021】
このような場合には、その箇所を正常ではない馳部81として、ハサミ部、接着テープ、ペンキ塗りなどマーキングして、後に、その箇所を補修する必要がある。これらをフローチャートで説明すると、図5に示すようになる。本発明の馳幅ゲージにて検査すると(ステップ10)、ステップ11の判断にて、警報手段Xが動作した場合には、ブザー96又は発光部95が作動し、YES状態となり、次のハサミ部などのマーキング処理(ステップ12)することになり、この検査は終了する。検査終了後にそのマーキング処理した箇所を再馳締処理して、もう一度検査して、これが合格したときに補修の終了となる。
【符号の説明】
【0022】
1…測定主板、15…対応接点、2…被押圧部、31…押圧棒状部、8…金属屋根、
35…押圧棒状部接点、81…馳部、81a…背面基準線、81c…溝部、
95…発光部、96…ブザー、L…正常幅、W…間隔、E…直流電源、X…警報手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定主板と、金属屋根の馳部の背面基準線を支持する被押圧部と、金属屋根の馳部の溝部箇所の所定の高さ位置の溝幅の正常幅に相当する間隔を有しつつ、正常値を超えたときに後退するように弾性を有する押圧棒状部とからなり、前記被押圧部と前記押圧棒状部とが前記測定主板の下方に設けられ、測定時において前記溝幅が正常値を超えたときに警報信号が検出されるように警報手段が備えられてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージ。
【請求項2】
請求項1において、前記押圧棒状部の先端にて馳部の溝部を押圧するようにしてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記被押圧部が前記測定主板に対して正常位置より適宜後退できるように摺動可能に設けられてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージ。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、前記警報手段の電源は直流電源による閉ループが構成され、前記直流電源と前記警報手段との間に、正常値を超えたときに後退するように構成された金属製の押圧棒状部接点と、前記箱状体に固定された対応接点とが直列に設けられてなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージ。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4において、前記警報手段はブザー又は発光部とからなると共に、前記警報信号は音又は光からなることを特徴とする金属屋根における馳部の溝幅ゲージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−215045(P2011−215045A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84544(P2010−84544)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000175973)三晃金属工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】