説明

金属層を施すための分散物

本発明は、非導電性基材上に金属層を施すための、有機バインダー成分、金属成分、及び溶媒成分を含む分散物に関する。本発明は、更に、この分散物を製造するための方法、分散物を使用して、構造化されていない、又は構造化された金属層を製造する方法、及び基材の得られた表面、及びその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層に施すための分散物、その製造方法、及び分散物を使用して基材上に金属層を製造する方法に関する。本発明は、更にこのように被覆された基材表面、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を導かない基材上に導電性金属性層を製造するための技術が種々公知である。例えば、非導電性基材、例えばプラスチックが、高−真空金属化処理に処理されるが、この方法は複雑で高価である。
【0003】
プラスチックを金属化する通常の方法では、複数の連続的な工程段階を行う。この方法は、強酸又は強塩基(例えばクロモ硫酸(chromosulfric acid))を使用した表面活性化工程で始まる。そして、プラスチック表面が、適切な金属錯体の溶液を使用して被覆される。これらは、この方法において、活性化したプラスチック表面の金属化を可能にする。
【0004】
しかしながら、導電性ラッカー、又は導電性ペーストを使用して、非導電性の表面上に、導電性の被覆物を得ることも可能であり、該被覆物は、プラスチックに施されるが、しかしこの方法のために、これらは材料への良好な付着(接着)力を有する必要がある。
【0005】
特許文献1(DE−A1615786)には、例として、鉄を微細に分散した状態で含むラッカー層を使用して、非導電性の表面上に導電性層を製造する方法が開示されている。更にラッカーは、有機溶媒及び所定の割合のバインダーを含むことが意図されている。
【0006】
しかしながら、これらの導電性ラッカーは、比較的低い伝導値しか有していないことが公知である。この理由は、分散した金属性粒子が、密集した伝導層を形成することを、バインダーが妨げるからである。従って、これらの層の伝導値は、匹敵する厚さを有する金属ホイルの伝導値には達しない。層内の金属顔料を増加することにより伝導値の増加をもたらすが、ここで伝導層のプラスチック表面への不適切な付着に起因する問題が、頻繁に発生する。
【0007】
特許文献2(DE−A1521152)は、従って、バインダーと微細に分散した鉄を含む伝導性ラッカーを、非導電性表面に施し(塗布し)、そして次に無電流法を使用して、銀又は銅を伝導性ラッカーに施すことを提案している。
【0008】
特許文献3(EP−B200772)には、10kHzを超える周波数で、電磁シールドを達成するために、液体有機ペイントバインダーを使用して、非導電性製品を被覆することが記載されている。この方法は、液体有機ペイントバインダーを使用して、第1層(第1層中には、活性な金属粒子が分散されている)を施すことで開始されており、そして次に銅の第2層が、第1層の上に無電流法を使用して堆積され、そして最後に白金電気メッキされた金属で構成された第3層が第2層に施される。
【0009】
特許文献4(DE−A19945400)には、特に、(該分散物は、特定のバインダーと磁性又は磁化可能な材料を含むことが意図されている)磁性の分散物が記載されている。
【0010】
特許文献5(DE−A−102005043242A1)は、非導電性の基材上に(有機バインダー成分、種々の金属/金属粒子を有する金属成分、及び溶媒成分を含む)金属層を施すための分散層に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE−A1615786
【特許文献2】DE−A1521152
【特許文献3】EP−B200772
【特許文献4】DE−A19945400
【特許文献5】DE−A19945400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
要求(条件)が益々厳しくなる中で、加工処理の続く工程と使用において適切な機能性を確保するために、特に、付着(接着)を改良するために、非導電性の基材の金属性被覆を行うためのシステムを最適化する必要がある。
【0013】
従って、本発明の目的は、金属層を非導電性基材上に施すことができ、及び特に金属層の付着及び/又は層均一性を改良することができる分散物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、有機バインダー成分A、
金属成分B、
溶媒成分C、
を含み、有機バインダー成分Aが、
A1 ヒドロキシル基を有するポリビニルクロリドコポリマー、及び
A2 ヒドロキシル基を有するポリウレタン、
を本質的に含むことを特徴とする、非導電性の基材上に金属層を施すための分散物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい一実施の形態では、成分A1がビニルクロリドとヒドロキシアクリレート又はビニルアセテートの重合、及び次の少なくとも部分的な加水分解によって得られ、そしてA2がヒドロキシル基(水酸基)を有する直鎖状のポリウレタンである。一実施の形態では、成分A1は、繰り返しビニルアセテート単位と繰り返しビニルアルコール単位を含む。他の実施の形態では、A1は、アクリレート単位とビニルアルコール単位を含む。
【0016】
好ましい他の実施の形態では、成分A1及びA2は、少なくとも80質量%のバインダー成分Aを含む。
【0017】
好ましい他の実施の形態では、1質量部A2に対して、約0.25〜4質量部、特に1〜2質量部の成分A1が割り当てられる。
【0018】
好ましい他の実施の形態では、分散物の合計質量に対して、0.01〜30質量%の有機バインダー成分A、30〜89.99質量%の金属成分B、10〜69.99質量%の溶媒成分Cを含む。
【0019】
好ましい他の実施の形態では、成分Bが、
B1 金属成分Bの合計質量に対して、0.01〜99.99質量%の、第1の金属粒子形状を有する第1の金属、
B2 金属成分Bの合計質量に対して、99.99〜0.01質量%の、第2の金属粒子形状を有する第2の金属、
を含み、そして特に好ましい実施の形態では、以下の条件、
(1)第1と第2の金属が異なる、
(2)第1と第2の粒子形状が異なる、
の少なくとも1つに従う。
【0020】
更に分散物は、以下の成分:
D 分散物の合計質量に対して、0.01〜50質量%の分散剤成分;及び
E 分散物の合計質量に対して、0.01〜50質量%の充填剤成分、
の少なくとも1種を含むことができる。
【0021】
成分A
バインダー成分Aは、本質的に、ポリビニルクロリドA1及びポリウレタンA2を含む。好ましい一実施の形態では、成分A1及びA2は、80〜100%のバインダー成分Aを含む。
【0022】
成分A1
ヒドロキシル基を含む好ましいポリビニルクロリドの例は、Wacker Polymer Systems GmbH Burghausen,Germanyから市販されているVinnol(登録商標)Eグレードで、これらは、エマルジョン重合によって製造される。適切な成分A1の例は、ビニルクロリド及びヒドロキシ−官能性のコモノマー、例えばアリルアルコール;ヒドロキシアクリレート、特に2−ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メトアクリレート)、ヒドロキシブチル(メト)アクリレート;ヒドロキシカルボン酸のアリルエステル、特にアリルヒドロキシカプロエートから成るビニルクロリドコポリマーである。好ましい一実施の形態では、A1は、1〜50質量%、特に5〜30質量%の、共重合したヒドロキシ−官能性のコモノマーを含む。
【0023】
他の適切な材料は、ビニルクロリドとビニルアセテートから成るビニルクロリドコポリマーで、これは、重合反応の後、少なくとも所定の範囲まで加水分解して繰り返しビニルアルコール単位、例えば、DOW Chemical Companyから市販されているUCARTMグレードを形成する。好ましい一実施の形態では、A1は、1〜25質量%、特に3〜15質量%の繰り返しビニルアルコール単位を含む。
【0024】
特に好ましい成分A1のモル質量Mwは、20000〜200000g/molである。適切な成分A1は、例えばDD135620、page3〜6;US−A−3036029、column 1〜6、及びWO96/04135,page8〜18に記載されている。
【0025】
ポリウレタン成分A2
特に適切な成分A2は、ヒドロキシル基を有し、及び分子量Mwが、1000〜300000、好ましくは5000〜300000(GPCで測定)であり、そしてジイソシアネートと
a)ヒドロキシル基を有し、及び分子量Mwが、500〜10000で、アルカンジカルボン酸とアルカンジオールから成るポリエステル、又は
b)分子量Mwが、500〜10000で、ヒドロキシアルカンモノカルボン酸の重縮合、又はそのラクトンの重合によって得られるポリエステル、又は
c)ヒドロキシル基を有し、及び式(I)
HO−(R−X)n−H (I)
(但し:
Rが、C1−C10−アルキレン、C3−C10−シクロアルキレン、又はC5−C14−アリーレン、好ましくは、フェニレンであり、
Xが、酸素(O)及び/又は硫黄(S)であり、及び
nが、10〜100の整数である)
から製造されるポリウレタンである。式(I)中、数nは、好ましくは、ポリエーテルの分子量Mwが、500〜10000になるように選ばれる。
【0026】
これらのポリエーテルの例は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリヘキサメチレングリコール、等である。
【0027】
ヒドロキシル基を有し、及び(少なくとも6個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸及び少なくとも4個の炭素を有するアルカンジオールから由来する)ポリエステルから成るポリウレタンが好ましい。適切なアルカンジカルボン酸の例は、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、等である。適切なアルカンジオールの例は、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、等である。
aa)その分子量が600を超えるポリエステルジオール、及び任意に、
ab)鎖延長剤として、その分子量の範囲が62〜600のジオール、と、
ac)有機ジイソシアネート、
の反応によって製造されるポリエステルポリウレタンが好ましく、ここで、成分aa)とab)のヒドロキシル基の、成分ac)のイソシアネート基の当量割合(equivalent)は、1:0.9〜1:0.999に維持され、そして成分aa)は、(i)アジピン酸と(ii)1,4−ジヒドロキシブタン及び1,6−ジヒドロキシヘキサンから成る混合物に対して、少なくとも80質量%の(その分子量が4000〜6000の)ポリエステルジオールから(ジオールのモル割合が4:1〜1:4で)成ることが好ましい。
【0028】
成分aa)は、好ましくは、(i)アジピン酸と(ii)1,4−ジヒドロキシブタン及び1,6−ジヒドロキシヘキサンから成る混合物に対して、少なくとも80質量%のポリエステルジオール(該ポリエステルジオールの、ヒドロキシ数(hydroxy number)から計算することができる分子量が、4000〜6000である)から構成され、そしてジオールのモル割合が、4:1〜1:4、好ましくは7:3〜1:2であることが好ましい。これらのポリエステルジオールは、それ自体は公知の方法で、アジピン酸と、(上述した分子量に対応する)過剰のジオール混合物とを、100〜220℃で、反応混合物の酸価(acid number)が2未満に低下するまで反応させることによって製造される。
【0029】
成分aa)は、これらのポリエステルジオールと一緒に、20質量%以下の(ヒドロキシ数から計算することができる、その分子量が600を超える)他のポリエステルジオールを含むことができる。付随して使用されるポリエステルジオールの分子量は、適切であれば通常、1000〜4000である。これらのポリエステルジオールは、(好ましくは少なくとも6個の炭素原子を有する)アルカンジカルボン酸と、(好ましくは少なくとも4個の炭素原子を有する)アルカンジオールを反応させることにより、公知の方法で得られるものである。適切なジオールの例は、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、又は1,6−ジヒドロキシヘキサンである。
【0030】
ポリエステルエーテルポリウレタンの製造は、構成成分ab)として、適切であれば、2つの末端ヒドロキシル基を有する低分子量鎖延長剤を付随して使用することができる。これらは、通常、その分子量の範囲が62〜600、好ましくは62〜118の二価アルコールである。
【0031】
これらの鎖延長剤は、好ましくは、末端ヒドロキシル基を有し、及び2〜8個、好ましくは2〜6個、及び特に4〜6個の炭素原子を有するアルカンジオール、例えば、1,2−ジヒドロキシヘキサン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、又はこれらのジオールの任意、所望の混合物である。
【0032】
付随して使用される成分ab)の量は、(使用される場合には、)成分aa)に対して、200ヒドロキシ−当量パーセント以下、好ましくは100以下、及び好ましくは70ヒドロキシ−当量パーセント以下である。特に、上述したタイプのアルカンジオールの混合物が成分ab)として使用された場合、付随して使用される鎖延長剤の合計量は、成分aa)に対して、100〜200ヒドロキシ−当量パーセントが可能である。例えば、上述したタイプの鎖延長剤が1種類のみ使用された場合、成分ab)の量は、成分aa)に対して、通常、最大で100ヒドロキシ−当量パーセントである。成分ab)を、成分aa)に対して、30〜70ヒドロキシ−パーセントの量で使用することが特に好ましい。
【0033】
本発明で使用されるヒドロキシポリウレタン成分(A)の製造は、脂肪族、脂環式、アラリファティック、及び芳香族の任意、所望のジイソシアネートを使用し、特に、式、
Q(NCO)2
(但し、
Qが、(特に4〜10個、好ましくは6個の炭素原子を有する)脂肪族炭化水素部分、(特に5〜15個の炭素原子、好ましくは6〜13個の炭素原子を有する)脂環式炭化水素部分、(6〜15個の炭素原子、好ましくは7〜13個の炭素原子を有する)芳香族炭化水素部分、又は(1〜13個の炭素原子を有する)アラリファティック炭化水素部分である。)
を使用する。
【0034】
好ましいジイソシアネートの例は、ブタン1,4−ジイソシアネート、ヘキサン1,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアネートシクロヘキサン、2,4−又は2,6−ジイソシアネートトルエン、及びこれらの混合物、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、等である。
【0035】
ジイソシアネートとヒドロキシポリエステル及び対応するエステルエステルa)〜c)の反応は、それ自体公知の方法で、成分を一緒に、70〜160℃の温度に加熱することによって行われる。
【0036】
適切な材料の例は、Bayer AG/Bayer Material Science AG,LeverkusenからのDesmocoll(登録商標)グレード、特にグレード140、500及び530である。
【0037】
バインダー成分Aの更なる成分
バインダー成分Aは、更なるバインダー、例えば天然、及び合成ポリマー、及びその誘導体、天然樹脂、及び合成樹脂、及びその誘導体、天然ゴム、合成ゴム、プロテイン、セルロース誘導体、例えば、セルロースニトレート、アルキルセルロース、セルロースエステル、乾燥及び非乾燥オイル、及びこれらに類似するもの、特にポリアルキレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、アルキレン−ビニルアセテート及びコポリマー、(ビニルクロリド及びビニルエーテルから成る)コポリマー、ポリアミド、及びこれらのコポリマー、ポリ(メト)アクリレート、又はポリビニルエーテル、ポリビニルアセテート及びこれらのコポリマーを含むことができる。
【0038】
分散物の合計質量に対して、有機バインダー成分A)の割合は、特に0.01〜30質量%であり;この割合は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0039】
成分B
金属成分Bは、第1の粒子形状を有する第1の金属、及び第2の粒子形状を有する第2の金属を含む。
【0040】
第1の金属は、第2の金属と同一又は異なる金属が可能である。第1の金属粒子の形状は同様に、第2の金属粒子の形状と同一であるか、又は異なることができる。しかしながら、少なくとも金属又は粒子形状が異なることが好ましい。しかしながら、第1及び第2の金属のみならず、第1及び第2の粒子形状も相互に異なることもできる。
【0041】
この分散物は、金属成分B1及びB2と一緒に、第1及び第2の金属とは異なる更なる金属、第1又は第2の金属とは異なる更なる金属、又は第1及び第2の金属と同一の更なる金属を含むことができる。類似の記載が、更なる金属の金属粒子形状に適用される。しかしながら、本発明の目的のために、少なくとも、第1及び第2の金属の少なくとも1方、及び第1の金属形状、及び第2の金属形状が、以下の条件、すなわち、第1と第2の金属が異なり、及び/又は第1と第2の粒子形状が相互に異なることが好ましい。
【0042】
本発明の目的のために、金属の酸化状態は0で、そしてこれらは金属粉の状態で、分散物中に導入することができる。
【0043】
金属の平均粒子径は、好ましくは、0.001〜100μmで、好ましくは0.002〜50μm、及び特に好ましくは0.005〜10μmである。平均粒子径は、例えばMicrotrac X100装置上で、レーザー散乱測定を使用して測定することができる。粒子径の分布は、これらのために使用される製造方法に依存する。直径の分布は、代表例では、最大値(最高点)が1つだけであるが、最大値が複数あっても良い。
【0044】
従って、例えば、粒子のより密な充填を得るために、その平均径が<100nmの粒子を、>1μmの粒子と混合することも可能である。
【0045】
適切な金属の例は、亜鉛、ニッケル、銅、スズ、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、クロム、ビスマス、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、及びこれらの合金である。適切な合金の例は、CuZn、CuSn、CuNi、SnPb、SnBi、SnCo、NiPb、ZnFe、ZnNi、ZnCo、及びZnMnである。特に好ましくは、鉄、亜鉛、アルミニウム、及び銀である。
【0046】
金属は、金属性材の他に、非−金属性材を含むこともできる。従って、金属の表面の少なくとも一部は、被覆物を有することができる。適切な被覆物は、無機(例えば、SiO2、フォスフェイト)又は有機タイプのものである。当然、金属は、更なる金属又は金属酸化物(metal oxide)を有することもできる。金属は、同様に、所定の範囲で酸化された状態で存在することができる。
【0047】
本発明で、2種の異なる金属が金属成分Bを形成する場合、これは2種の金属を混合することによって達成することができる。2種の金属が、鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、及び銀から成る群から選ばれることが特に好ましい。
【0048】
しかしながら、金属成分Bは、第2の金属が(第1の金属と、又は1種以上の金属との)合金の状態で存在する、第1の金属と第2の金属を含むことができ、又、金属成分Bは、2種の異なる合金を含むこともできる。これらの2種の例では、それぞれの金属成分B1及びB2は、相互に異なることができ、そして従って、その金属粒子形状は、相互に独立して同一又は異なるように選択することができる。
【0049】
金属の選択と共に、金属の金属粒子形状は、被覆の後、本発明の分散物の特性に影響を及ぼす。形状について、この技術分野の当業者にとって公知の種々の可能な変形例が存在する。例えば、金属の形状は、針状、シリンダー状、薄板状、又は球状が可能である。これらの粒子形状は、理想化された形状で、そして実際の形状は、例えば製造工程の結果として、これらとは僅かに、又は大きく異なることができる。従って例えば、滴−形状の粒子は、本発明の目的のために、理想化された球形状からの実際上の偏差である。
【0050】
種々の形状を有する金属が市販されている。
【0051】
金属成分B1及びB2が、その粒子形状で異なる場合、第1のものは球状で、そして第2のものは薄板状、又は針状であることが好ましい。
【0052】
粒子形状が異なる場合、好ましい金属は同様に、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び銀である。
【0053】
上述のように、金属は、その粉の状態で、分散物に加えることができる。この種の金属粉は、良く市販されている製品であるか、又は例えば、電気的な沈殿、又は金属塩の溶液からの化学的還元によって、又は例えば水素を使用することによる酸化粉の還元によって、又は溶融金属の噴射、又は特に冷却剤、例えばガス又は水でのアトマイズ化によって、公知の方法で容易に製造することができる。ガスアトマイズ化又は水アトマイズ化が好ましい。
【0054】
鉄の場合、ガスアトマイズ化及び水アトマイズ化のみならず、カルボニル鉄の製造用のカルボニル鉄粉法(CEP法)も好ましい。これは、ペンタカルボニル鉄の熱分解を使用する。この方法は、例えば、Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition vol.A14,page 599に記載されている。ペンタカルボニル鉄の分解は、例えば温度を上昇させて、及び圧力を上昇させて、(加熱装置、例えば、加熱槽、又は加熱ワイヤー、又は内部を加熱流体が流れる加熱ジャケットによって囲まれた、)耐熱材料、例えば石英ガラス又はV2Aスチールから成るチューブを好ましくは垂直位置に有する加熱可能な分解反応器中で行うことができる。
【0055】
薄板状の金属は、製造工程における条件を最適化することによって得ることができ、又はその後、機械的な処理、例えば攪拌ボールミル中での処理によって得ることができる。
【0056】
金属成分Bの割合は、分散物の合計量に対して、30〜89.99質量%である。金属副成分(metal subcomponent)B1の割合は、成分Bの合計質量に対して、99.99〜0.01質量%である。金属副成分の割合は、0.01〜99.99質量%である。更なる金属が存在しない場合、B1及びB2は、金属成分Bの100%を与える。
【0057】
Bの好ましい範囲は、分散物の合計質量に対して、50〜85質量%である。
【0058】
成分B1とB2の質量割合は、好ましくは1000:1〜1:1の範囲、より好ましくは、100:1〜1:1、最も好ましくは20:1〜1:1である。
【0059】
成分C
本発明の分散物は、更に、溶媒Cを含む。これは、本質的に溶媒、又は溶媒混合物から成る。
【0060】
適切な溶媒は、アセトン、アルキルアセテート、ブチルジグリコール、アルキルグリコールアセテート、例えば、ブチルグリコールアセテート、ブチルグリコール、ベンジルアセテート、ブチルアセテート、ガンマ−ブチロールアセトン、ベンジルアルコール、クロロホルム、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジグリコールジメチルエーテル、ジオキサン、エチルアセテート、エチレンクロリド、エチレングリコールアセテート、エチルグリコール、エトキシプロピルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、イソホロン、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、メチルアセテート、メチルグリコール、メチレンクロリド、メチレングリコール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルグリコールアセテート、プロピルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、メトキシプロピルアセテート、カーボンテトラクロリド、テトラヒドロフラン、及びこれらの溶媒の2種以上の混合物である。
【0061】
好ましい溶媒は、アセトン、アルキルアセテート、アルキルグリコールアセテート、例えば
ブチルグリコールアセテート、ガンマ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、ベンジルアセテート、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール、ジオキサン、エチルアセテート、エチレングリコールアセテート、エトキシプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルグリコールアセテート、プロピルアセテート、プロピルグリコールモノアルキルエーテル、例えば、メトキシプロピルアセテート、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物である。
【0062】
溶媒成分Cの、分散物の合計質量に対する割合は、10〜69.99質量%である。この割合は、好ましくは15〜50質量%である。
【0063】
成分D
分散物は、更に、分散剤成分を含むことができる。これは、1種以上の分散剤から成る。
【0064】
原則として、この技術分野の当業者にとって公知の任意の分散に使用するための分散剤、及び従来技術に記載された分散剤が、適切である。好ましい分散剤は、界面活性剤、又は界面活性剤混合物、例えば、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性界面活性剤である。
【0065】
カチオン性及びアニオン性界面活性剤は、例えば“Encyclopedia of polymer Science and Technology”,J.Wiley&Sons(1966),volume 5,pages 816 to 818,及び“Emulsion polyperisation and Emulsion polymers”,editors P.Lovell and M.El−Asser,publisched by Wiley&Sons(1997),pages 224−226に記載されている。
【0066】
脂肪酸(例、オレイン酸、又はステアリン酸)も、分散剤として適切である。
【0067】
しかしながら、使用する分散剤は、アンカー基(該アンカー基は、顔料親和性を有する)を有する、この技術分野の当業者にとって公知のポリマーをも含むことができる。
【0068】
分散剤成分Dの使用量は、分散剤の合計量に対して、0.01〜50質量%の範囲をとることができる。この割合は、好ましくは0.1〜25質量%、特に好ましくは0.3〜10質量%である。
【0069】
成分E
本発明の分散剤は、更に、充填剤成分Eを含むことができる。これは、1種以上の充填剤から成ることができる。金属化可能な組成物の成分Eは、従って、ファイバー性(繊維質)又は粒子状の充填剤、又はこれらの混合物を含むことができる。ここで材料は、好ましくは、市販されている製品、例えば、炭素、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、及びガラスファイバーの状態のものである。
【0070】
使用可能な他の充填剤、又は補強材料は、ガラス粉、無機ファイバー、ウィスカー、酸化アルミニウム、マイカ、石英粉、又は珪灰石である。使用可能な他の材料は、炭素、シリカ、シリケート、例えば、アエロシル、フィロケイ酸塩、染料、脂肪酸、脂肪族アミド、可塑剤、湿潤剤、デシカント(乾燥剤)、触媒、錯化剤、カルシウムカーボネート、バリウムサルフェイト、ワックス、顔料、結合剤、又は伝道性ポリマー粒子である。
【0071】
成分Eの、分散物の合計質量に対する割合は、好ましくは0.01〜50質量%である。更に好ましくは、0.1〜10質量%であり、及び特に好ましくは0.3〜5質量%の範囲である。
【0072】
更に加工助剤、及び安定化剤、例えば、UV安定剤、滑剤、防蝕剤、及び難燃剤が、本発明の分散物中に存在することができる。これらの、分散物の合計量に対する割合は、通常、0.01〜5質量%である。この割合は、好ましくは、0.05〜3質量%である。
【0073】
本発明は、
A 成分A〜C、及び任意に、D、E、及び更なる成分を混合する工程、
B 混合物を分散させる工程、
によって、本発明の分散物を製造する方法をも提供する。
【0074】
分散物は、この技術分野の当業者にとって公知のアセンブリーを使用して、強力な混合(ミキシング)と分散によって製造することが可能である。これは、溶解機内、又は強力な分散を与える匹敵するアセンブリー内での成分の混合、又は攪拌ボールミル内、又は大量処理用の粉流動化装置内での分散を含む。
【0075】
更に本発明は、
a)基材(substrate)に本発明の分散物を施す(塗布する)工程;
b)基材に施した層を乾燥させる工程;及び
c)適切であれば、無電流、及び/又は電気メッキ法で、金属を乾燥した分散層上に沈澱させる工程、
によって、非導電性基材の表面の少なくとも一部に、金属層を製造する方法を提供する。
【0076】
適切な基材は、非導電性材料、例えば、ポリマーである。適切なポリマーは、エポキシ樹脂、例えば二官能性、又は多官能性の、アラミド−補強、又はガラスファイバー−補強の、又は紙−補強のエポキシ樹脂(例えば、FR4)、ガラスファイバー−補強のプラスチック、ポリフェニレンスルフィッド(PPS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフテンネート(PEN)、ポリイミド(PI)、フェノール樹脂−被覆−アラミド−ペーパー誘導体、APPE、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールアミド(PAA)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、及び上述したポリマーの、広範囲に及ぶ2種以上の混合物(ブレンド)である。基材は、この技術分野の当業者にとって公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、又は難燃剤を含むことができる。
【0077】
特に好ましい基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフテネート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)である。
【0078】
他の適切な基材は、複合材料、フォーム状ポリマー、Styropor(登録商標)、Styrodur(登録商標)、セラミック表面、テキスタイル、ペーパーボード、ペーパー、ポリマー被覆ペーパー、ウッド、無機材料、ガラスである。
【0079】
本発明の目的のために、「非導電性」という用語は、好ましくは、抵抗率(resistivity)が109ohm×cmを超えることを意味する。
【0080】
分散物は、この技術分野の当業者にとって公知の方法で施すことができる。基材表面への付与(塗布等)は、1方側以上で行うことができ、そして1、2、3次元に渡って広げることができる。基材は、通常、意図された用途にとって適切な、所望の形状を有することができる。
【0081】
通常の方法を、同様に、施されたペーパーを乾燥させるために使用することができる。この替わりに、バインダーを、化学的又は物理的に、例えば、熱を使用して硬化させることもできる。
【0082】
分散物の付与と乾燥の後に得られた層には、次に、無電流、及び/又は電気メッキ法により、金属を、乾燥した分散層上に沈澱させることができる。
【0083】
本発明の分散物は、工程a)で、構造化状態、又は非構造化状態で施すことができる。付与を行う工程(工程a)、乾燥を行う工程(工程b)、及び適切であれば、更なる金属の沈澱を行う工程(工程c)は、連続的に行うことが好ましい。工程a)、b)及び適切であれば、c)の単純性がこのことを可能にする。しかしながら、非連続法又は半連続法を使用することも、当然可能である。
【0084】
被覆工程は、通常の被覆法(キャスティング、スプレッディング、ドクトリング、ブラシング、印刷(凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソグラフ印刷、パッド印刷、インクジェット、オフセット、等)、スプレイング、浸漬被覆、パウダリング、流動床、等)を使用することができる。層厚さは、好ましくは、0.01〜100μm、より好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは1〜25μmの範囲である。非構造化された層にも、構造化された層にも施すことができる。
【0085】
特に好ましい一実施の形態では、本発明の分散物は、印刷法(該方法では、エネルギーを電磁波の状態で放出する装置の使用下に分散物が、体積及び/又は位置の変化を受け、その結果分散物が基材に移される)によって基材に施される。このタイプの方法は、例えばWO03/074278A1、WO01/72518A1、及びDE−A−10051850から公知である。このタイプの方法は、Aurentum Innovationstechnologien GmbH as LaserSonic(登録商標)Technologyによって供給される。
【0086】
工程c)で行われる、無電流、及び/又は電気メッキ法による金属の沈澱は、この技術分野の当業者にとって公知であり、そして文献に記載されている方法を使用することができる。電流、及び/又は電気メッキ法により、すなわち、外部電圧を施し、そして電流を使用することにより、1層以上の金属層に施すことができる。無電流及び/又は電気メッキ法による沈澱(堆積)のために使用可能な金属は、原則として、分散物の最も低い貴の金属よりも貴であるか、同等の貴である任意の金属である。銅層、クロム層、銀層、金層、及び/又はニッケル層を電気メッキ法で沈澱させることが好ましい。アルミニウムから成る層を、電気メッキ法で沈澱させることも好ましい。工程c)で沈澱された1種以上の層の厚さは、この技術分野の当業者にとって公知の範囲内であり、そして本発明にとって、実質的に重要なことではない。
【0087】
好ましい一実施の形態では、基材は、本発明の分散物を施す前に、下塗剤(プライマー)で処理される。好ましい一実施の形態では、下塗剤は、(金属成分Bを含まないという条件で、)本発明の分散物に相当する。従って、一実施の形態では、下塗り剤は、本質的に、有機バインダー成分A、溶媒C、適切であれば分散剤成分D、及び適切であれば充填剤Eを含む。他の好ましい実施の形態では、充填剤成分Eは、スペーサーとして作用可能であり、そして従って、被覆された基材が巻かれた時に閉塞を防止できる充填剤を含む。
【0088】
本発明は、更に、所定の表面(該表面は、金属層を製造するための、上述した本発明の方法によって得ることができる導電性金属層を、少なくとも部分的に有する)を有する基材を提供する。
【0089】
この種の基材表面は、電流又は熱を導くために、又は電磁気放射を遮断するために、又は他に、磁化のために使用することができる。
【0090】
本発明は、更に、本発明の分散物を金属層を施すために使用する方法を提供する。
【0091】
本発明の基材は、特に、以下に示した種々の用途のために使用することができる。
【0092】
例えば、導体−トッラク構造体、例えば、アンテナ、例えばRFIDアンテナ、又はトランスポンダーアンテナ、印刷回路基板(多層、内部及び外部副層、ミクロビアス、チップ−オン−ボード、柔軟性及び剛性の印刷回路基板、ペーパー及び複合体、等)、リボンケーブル、シート加熱システム、無接触チップボード、キャパシター、抵抗、コネクター、ホイル導体、電気のヒューズを製造することができる。
【0093】
有機電子部品のための接触部を有するアンテナを製品造することも可能であり、そして非導電性材料で構成された表面上に、(電磁気を遮断するために)被覆物を製造することも可能である。
【0094】
次に(上述した非導電性基材から成る)成形物を装飾的に金属化するために、構造化されていない、又は構造化された導電性材料を製造することも可能である。
【0095】
本発明の分散物を使用して金属層を製造するための本発明の方法の用途の幅、及び本発明の基材表面は、(特に、スイッチ、センサー、及びMIDs(molded interconnect devices)、電磁気放射のための吸収体、装飾部分、特に自動車分野、衛生分野、おもちゃ分野、家庭用品分野、及び事務分野、及び包装、及びホイルとして使用するための、)金属化された非導電性基材を安価に製造することを可能にする。本発明は、銀行券、クレジットカード、身分証明書、等のセキュリティ印刷の分野でも使用することができる。本発明の方法は、テキスタイルを電気的及び磁気的に機能化するために使用することができる(トランスミッタ、RFIDアンテナ、トランスポンダアンテナ、及び他のアンテナ、センサー、加熱素子、静電気防止システム、(プラスチックを含む)、遮断システム、等)。
【0096】
これらの用途の例は、ケース、例えばコンピュータケース、ディスプレースクリーン用のケース、携帯電話、音響装置、ビデオ装置、DVD、及びカメラ、及び電子部品のためのケース、ミリタリー、及び非ミリタリー遮断装置、シャワーフィッティング、及び洗浄フィッティング、シャワーヘッド、シャワーレール、及びシャワーホールド、金属化ドアハンドル、及びドアノブ、トイレット−ペーパー−ロールホルダー、バスタブグリップ、家具及び鏡の金属化された装飾ストリップ、及びシャワー部分のフレーム、及びパッキング材料である。
【0097】
更に、自動車分野での金属化されたプラスチック表面、例えば、装飾ストリップ、外部ミラー、ラジエーターグリル、フロントエンドメタリゼーション、エアロホイル表面、外部ボディーワーク部分、及び内部部品、ドアシル、トレッドプレートサブスティチュート、及び装飾ホイールカバーが記載されて良い。
【0098】
統合化された電機的モジュール上に、接触個所、又は接触パッド又は配線を製造することも可能である。
【0099】
本発明の分散物は、同様に、印刷基板の上側と下側を通しての接触を形成する目的で、印刷回路基板及びRFIDアンテナ中の、ブラインドホールを含むホール、バイアス(vias)を金属化するために使用することもできる。
【0100】
本発明で製造される金属化された物品は、更に−これらが磁化できる金属を含む限り−磁化可能な機能性部分、例えば、磁性パネル、磁性ゲーム、及び例えば冷蔵子のドアの磁性表面を含む部門でされる。これらは、良好な熱伝導性が有利である部門例えば、シート−加熱システム、フロア−加熱システムのためのホイル、及び絶縁材料でも使用される。
【0101】
本発明で金属化された基材表面の好ましい用途は、得られた基材が印刷回路基板、RFIDアンテナ、トランスポンダアンテナ、シート−加熱システム、リボンケーブル、又は非接触チップカードとして作用するものである。
【実施例】
【0102】
本発明の実施例1
31.8gのメチルエチルケトン中の、3.5gのVinnol(登録商標)15/40A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wacker)及び1.7gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液に、50.5gの球状の鉄粉及び12.5gの薄板状の銅粉を、溶解攪拌器を使用して攪拌しながら導入した。得られた分散物を、ドクターを使用して、約4μmの厚さでPETホイルに施した。乾燥の後、市販されている酸性硫酸銅浴槽を使用して、厚さが約20μmの銅層を、この金属層上に沈澱させた。5日間、室温で保管した後、沈澱した金属層の付着(接着)を張力試験装置(tensile tester)(Zwick)を使用して測定した。
【0103】
本発明の実施例2
31.5gのメチルエチルケトン中の、3.5gのVinnol(登録商標)15/40A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wackerより)及び1.7gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液を、ドクターを使用して、約1.5μmの厚さでPETホイルに施し、そして乾燥させた。本発明の実施例1からの分散物を、このように下塗りしたPETホイルに施した(塗布した)。乾燥の後、市販されている酸性硫酸銅浴槽を使用して、厚さが約20μmの銅層を、この金属層上に沈澱させた。5日間、室温で保管した後、沈澱した金属層の付着(接着)を張力試験装置(Zwick)を使用して測定した。
【0104】
本発明の実施例3
31gのメチルエチルケトン中の、3gのVinnol(登録商標)15/48A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wackerより)及び3gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液に、50.5gの球状の鉄粉及び12.5gの薄板状の銅粉を、溶解攪拌器を使用して攪拌しながら導入した。得られた分散物を、ドクターを使用して、約4μmの厚さでPETホイルに施した。乾燥の後、市販されている酸性硫酸銅浴槽を使用して、厚さが約20μmの銅層を、この金属層上に沈澱させた。5日間、室温で保管した後、沈澱した金属層の付着(接着)を張力試験装置(Zwick)を使用して測定した。
【0105】
本発明の実施例4
31.5gのメチルエチルケトン中の、3gのVinnol(登録商標)15/48A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wackerより)及び3gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液を、ドクターを使用して、約1.5μmの厚さでPETホイルに施し、そして乾燥させた。本発明の実施例3からの分散物を、このように下塗りしたPETホイルに施した(塗布した)。乾燥の後、市販されている酸性硫酸銅浴槽を使用して、厚さが約20μmの銅層を、この金属層上に沈澱させた。5日間、室温で保管した後、沈澱した金属層の付着(接着)を張力試験装置(Zwick)を使用して測定した。
【0106】
本発明の実施例5
31.5gのメチルエチルケトン中の、3.5gのVinnol(登録商標)15/40A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wackerより)及び1.7gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液を、ドクターを使用して、約1.5μmの厚さでPETホイルに施し、そして乾燥させた。
【0107】
次に、以下の分散物をこのように下塗りしたPETホイルに施した。
【0108】
31gのメチルエチルケトン中の、3gのVinnol(登録商標)15/40A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wacker)及び3gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液に、50.5gの球状の鉄粉及び12.5gの薄板状の銅粉を、溶解攪拌器を使用して攪拌しながら導入した。得られた分散物を、ドクターを使用して、約4μmの厚さでPETホイルに施した。乾燥の後、市販されている酸性硫酸銅浴槽を使用して、厚さが約20μmの銅層を、この金属層上に沈澱させた。5日間、室温で保管した後、沈澱した金属層の付着(接着)を張力試験装置(Zwick)を使用して測定した。
【0109】
本発明の実施例6
31.5gのメチルエチルケトン中の、3.5gのVinnol(登録商標)15/40A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wackerより)及び1.7gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液を、ドクターを使用して、約1.5μmの厚さでPETホイルに施し、そして乾燥させた。
【0110】
次に、以下の分散物をこのように下塗りしたPETホイルに施した。
【0111】
31gのメチルエチルケトン中の、1.7gのVinnol(登録商標)15/40A(OH−官能基化したPVCコポリマー、Wacker)及び3.5gのDesmicoll(登録商標)140(OH−官能基化したPUポリマー)から成る溶液に、50.5gの球状の鉄粉及び12.5gの薄板状の銅粉を、溶解攪拌器を使用して攪拌しながら導入した。得られた分散物を、ドクターを使用して、約4μmの層厚さでPETホイルに施した。
【0112】
乾燥の後、市販されている酸性硫酸銅浴槽を使用して、厚さが約20μmの銅層を、この金属層上に沈澱させた。5日間、室温で保管した後、沈澱した金属層の付着(接着)を張力試験装置(Zwick)を使用して測定した。
【0113】
比較例1
DE−A−102005043242の実施例1を正確に繰り返した:
8.4gのエチレン−ビニルアセテートコポリマーを、126gのn−ブチルアセテートに溶解させた。378gの球状の鉄粉及び42.0gの薄板状の銅粉を、溶解攪拌器を使用して攪拌しながら、この溶液に分散させた。得られた分散物を4μmの厚さで、下塗りしたPETホイルに施した(塗布した)。乾燥の後、酸性硫酸銅浴槽中で、厚さが9μmの銅層を施した。
【0114】
比較例2
DE−A−102005043242の実施例2を正確に繰り返した:
8.4gのエチレン−ビニルアセテートコポリマーを、96.6gのn−ブチルアセテートに溶解させた。378gの球状の鉄粉及び42.0gの薄板状の銅粉を、溶解攪拌器を使用して攪拌しながら、この溶液に分散させた。得られた分散物を4μmの厚さで、下塗りしたPETホイルに施した(塗布した)。乾燥の後、酸性硫酸銅浴槽中で、厚さが9μmの銅層を施した。
【0115】
得られた結果を以下の表(表1)に示す。
【0116】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機バインダー成分A、
金属成分B、
溶媒成分C、
を含み、有機バインダー成分Aが、
A1 ヒドロキシル基を有するポリビニルクロリドコポリマー、及び
A2 ヒドロキシル基を有するポリウレタン、
から本質的に成ることを特徴とする、非導電性の基材上に金属層を施すための分散物。
【請求項2】
成分A1が、ビニルクロリドとアリルアルコール、及び/又はヒドロキシアクリレート、及び/又はヒドロキシカルボン酸のアリルエステルを重合することにより得られ、及び成分A2が、ヒドロキシル基を含む直鎖状のポリウレタンであることを特徴とする請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
成分A1が、ビニルクロリドとビニルアセテートを重合することにより得られ、そして得られたポリマーを更に加水分解して、繰り返しビニルアルコール単位を形成することができ、及びA2が、ヒドロキシル基を含む直鎖状のポリウレタンであることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の分散物。
【請求項4】
成分A1とA2が、少なくとも80質量%のバインダー成分Aを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分散物。
【請求項5】
1質量部A2に対して、約0.25〜4質量部、特に1〜2質量部の成分A1が割り当てられることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の分散物。
【請求項6】
分散物の合計質量に対して、
0.01〜30質量%の有機バインダー成分A、
30〜89.99質量%の金属成分B、
10〜69.99質量%の溶媒成分C、
を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の分散物。
【請求項7】
成分Bが、
B1 金属成分Bの合計質量に対して、0.01〜99.99質量%の、第1の金属粒子形状を有する第1の金属、
B2 金属成分Bの合計質量に対して、99.99〜0.01質量%の、第2の金属粒子形状を有する第2の金属、
を含み、以下の条件、
(1)第1と第2の金属が異なる、
(2)第1と第2の粒子形状が異なる、
の少なくとも1つに従うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の分散物。
【請求項8】
更に以下の成分:
D 分散物の合計質量に対して、0.01〜50質量%の分散剤成分;及び
E 分散物の合計質量に対して、0.01〜50質量%の、炭素に基づく充填剤成分、
の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の分散物。
【請求項9】
金属成分Bが、所望により被覆され、及び亜鉛、ニッケル、銅、スズ、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、クロム、ビスマス、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、タンタル、及びこれらの合金から成る群から、相互に独立して選ばれることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の分散物。
【請求項10】
金属成分Bが、少なくとも2種の異なる金属を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の分散物。
【請求項11】
金属成分Bが、少なくとも2種の異なる粒子形状で存在することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の分散物。
【請求項12】
金属成分Bの金属の平均粒子径が、0.001〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の分散物。
【請求項13】
1.成分A〜C、及び所望によりD、E及び更なる成分を混合する工程、及び
2.混合物を分散させる工程、
により、請求項1〜12の何れか1項に記載の分散物を製造する方法。
【請求項14】
a)請求項1〜12の分散物を基材上に施す工程、
b)基材上に施された層を乾燥させる工程、及び
c)所望により、無電流、及び/又は電気メッキ法により、乾燥した分散層上に、金属を沈澱させる工程、
を含むことを特徴とする、非導電性の基材の表面の少なくとも一部に金属層を製造するための方法。
【請求項15】
分散物を施す前に、下塗剤がバッキングに施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
下塗剤のバインダー成分が、成分A1+A2、及び所望により分散剤成分D及び充填剤成分Eを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
基材がPET、PVC、PEN、PC又はPAホイルであることを特徴とする請求項14〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
分散物が、基材に、印刷法によって施され、該印刷法で、エネルギーを電磁波の状態で放つエネルギー放出装置を使用し、分散物が体積−及び/又は位置の変化を受け、及びこれにより分散物の基材への転写が行なわれることを特徴とする請求項14〜17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項14〜18の何れか1項に記載の方法により得ることができる、被覆された基材。
【請求項20】
請求項19に記載の基材の表面を、電流又は熱を伝えるために、又は装飾金属表面として、又は電磁気放射からの遮断のために、又は他に磁化のために使用する方法。

【公表番号】特表2011−525034(P2011−525034A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512947(P2011−512947)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057004
【国際公開番号】WO2009/150116
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】