説明

金属層を有する黒色真珠光沢顔料

【課題】不透明、暗色、または黒色を有する真珠光沢のある顔料の製造のための、費用効果の高い手法を提供する。
【解決手段】黒色真珠光沢顔料10は雲母またはガラスフレーク、等からなる非金属基材1、任意に酸化物層2、アミノシランなどの有機単分子からなるテンプレート層3、さらに金属層4からなる層で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、顔料に関し、特に、被覆顔料の設計および当該被覆顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基材に適用された一連の干渉層を有する効果顔料(effect pigments)が、一般に、真珠光沢顔料として公知である。透明基材は、天然もしくは合成雲母、ガラスフレーク、または板状の金属酸化物を含み得る。安価であり、入手可能が容易であり、平滑で薄い板状物へへき開することが容易である雲母が、一般的に使用されている。さらに、雲母をベースとした顔料は、化学処理または熱処理に対して安定している。
【0003】
色彩/光沢効果を生じさせるために様々な技術が開発されてきた。これらの顔料を製造するための1つの手法は、米国特許第6,599,355号(特許文献1)、米国特許第6,500,251号(特許文献2)、および米国特許第6,648,957号(特許文献3)に記載のように、TiO2、Fe23、およびZr23などの高屈折率金属酸化物層で、または高屈折率および低屈折率の層で交互に、板状物基材を被覆することである。
【0004】
反射層としての金属粒子層の使用も開示されている。例えば、米国特許第5,116,664号(特許文献4)は、雲母と、二酸化チタンからなる第1の被膜と、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、金、および銀からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の粉体粒子からなる第2の被膜とを含むチタン−雲母複合材を開示している。
【0005】
米国特許第6,794,037号(特許文献5)は、光反射層として銀の層で封止された板状基材と、次に金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物からなるスペーサー層と、最後に酸化鉄層とを含む、彩度の高い効果材料に関する。
【0006】
米国特許第6,440,208号(特許文献6)は、着色効果材料を開示しており、板状物基材は、銅、亜鉛、銅合金、および亜鉛合金からなる群から選ばれる光反射層でまず被覆され、次に二酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムからなる第二層で被覆され、次に光に対して選択的に透過性である第三層で被覆されている。
【0007】
米国特許第6,325,847号(特許文献7)は、貴金属着色効果材料を記載しており、板状物基材は、反射性の貴金属層と、二酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムからなる第二層とで、また選択的に透過性の第三層とで被覆されている。
【0008】
米国特許第7,226,503号(特許文献8)は、金属酸化物、金属亜酸化物、金属オキシハライド、および金属フッ化物などからなる1つ以上の層で被覆された、≦1.0μmの厚さを有するガラスフレークを含む効果顔料に関する。
【0009】
米国特許第5,308,394号(特許文献9)は、光透過性セラミック鱗片状基材と、基材の表面に被覆された錫(thin)化合物層と、錫化合物で被覆された基材の表面に形成されたルチル層二酸化チタン層と、二酸化チタン層の表面に被覆された金属化合物層(金属化合物は、Bi、Sb、As、Cd、Mn、Pb、およびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種である)と、散在するように表面に形成された金属光沢のある点(dots)とを含む顔料を開示している。
【0010】
米国特許第6,800,125号(特許文献10)は、光反射性の銀層、次に、酸化鉄層で封止された板状基材を含む酸化物メタリック着色効果材料を開示している。
【0011】
米国特許第6,582,764号(特許文献11)は、当たった光に対して反射材として作用する第一層で被覆された板状物基材コアを含む、ハイブリッド無機/有機着色効果材料を開示している。第一層は、銅と亜鉛との合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと亜鉛との合金、銅、または亜鉛を含み得る。当該材料はさらに、有機ポリマーの第二層および選択的に透過性の第三層を含む。
【0012】
米国特許第6,821,333号(特許文献12)は、銀、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどから選ばれる金属からなる反射性の高い層と、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物もしくはカーバイドまたはポリマーからなるスペーサー層と、金属または金属酸化物から選ばれる外層とで封止された板状基材を含む着色効果材料を開示している。
【0013】
米国特許第6,582,764号(特許文献13)は、3つの層で封止された板状基材を含むハイブリッド/有機着色効果材料に関する。第一層は、銅と亜鉛との合金、アルミニウムと銅との合金、またはアルミニウムと亜鉛との合金のいずれかを含む。第二層は有機層であり、第一層を封止する。第三層は、選択的に透過性の層である。
【0014】
これらの真珠光沢顔料はいずれも、干渉色効果および光沢効果を有する。しかしながら、このような真珠光沢顔料の隠蔽力は非常に弱く、下層を十分に隠すことができない。したがって、顔料は透明かまたは半透明となる。さらに、このような顔料が、CIE lab表色系を用いた比色分析評価に供されると、顔料は、真珠光沢効果を維持する一方で、黒色効果を示さない。
【0015】
CIE lab値は、15°、25°、45°、75°、および110°という異なる角度で、マルチアングル分光光度計を用いて測定される。報告される色座標(L、a*、b*)は、明度(L)および色度(a*およびb*)に関係する。a*は、赤/緑の含量であり、b*は、青/黄の含量である。顔料が、特定の角度において、低いL値を有し、a*値およびb*値がゼロに近い場合、これは、顔料がその角度において黒色であることを意味する。さらに、同じ顔料が異なる角度で非常に高い明度(L)値を有する場合、これは当該顔料が高い光伝播特性を有することを意味する。
【0016】
黒さ(漆黒度(Jetness)とも呼ばれる)は、色依存型の黒色値Mcを用いて評価することができる。Mcはこれまでのところ最良の漆黒度パラメーターであり、漆黒度の増加に対するヒトの認識とよく相関する。Mcが増加するにつれて、マストーンの漆黒度が増加する。Mcは、次の方程式に基づいて、照明光源の三刺激値(Xn、Yn、Zn)および試料の反射光の三刺激値(X、Y、Z)から計算される:
L=116(Y/Yn)1/3−16
*=500[(X/Xn)1/3−(Y/Yn)1/3
*=200[(Y/Yn)1/3−(Z/Zn)1/3
Mc=100[log(Xn/X)−log(Zn/Z)+log(Yn/Y)]。
【0017】
150以上のMc値は、漆黒度が高いとみなされる。
【0018】
特にフロップ角で黒色で、高光伝播であり、高い漆黒度を示す顔料が、広く必要とされてきた。黒色効果を生ずるように炭素を混合することができるが、このような添加は、真珠光沢効果を著しく減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6,599,355号明細書
【特許文献2】米国特許第6,500,251号明細書
【特許文献3】米国特許第6,648,957号明細書
【特許文献4】米国特許第5,116,664号明細書
【特許文献5】米国特許第6,794,037号明細書
【特許文献6】米国特許第6,440,208号明細書
【特許文献7】米国特許第6,325,847号明細書
【特許文献8】米国特許第7,226,503号明細書
【特許文献9】米国特許第5,308,394号明細書
【特許文献10】米国特許第6,800,125号明細書
【特許文献11】米国特許第6,582,764号明細書
【特許文献12】米国特許第6,821,333号明細書
【特許文献13】米国特許第6,582,764号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
暗色効果を得るために研究が行われてきた。例えば、米国特許第5,753,024号は、酸化錫および少なくとも1種のさらなる金属酸化物で被覆され、900〜1100℃の温度でか焼される有機コロイドでさらに被覆された基材を含む灰色顔料を開示している。チタニア、酸化鉄(III)、および酸化錫で被覆した雲母を有する銀灰色半透明着色顔料が公知である。雲母ベースであり、コバルト鉄酸化物およびコバルト酸化物で被覆された黒オリーブ色の半透明顔料も公知である。このような顔料は、茶色のアンダートーン色を有する。しかしながら、上記の顔料は、望ましくないアンダートーンを有しており、良好な隠蔽力は有していない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
不透明、暗色、または黒色を有する真珠光沢のある効果顔料を開示する。開示の効果顔料の真珠光沢は、正真正銘の真珠光沢効果のものに匹敵する。開示の方法は、開示の効果顔料の製造のための、費用効果の高い手法を提供する。
【0022】
1つの実施形態では、暗色または黒色の真珠光沢顔料は、板状の非金属反射材コア、酸化物層、テンプレート層、および金属層を含む。1つの例では、テンプレート層によって、実質的に均一で平滑な被覆面を形成することが可能になる。1つの実施様式では、テンプレート層は、有機層を含む。1つの事例では、テンプレート層は、原子移動ラジカル重合(ATRP)を介して成長した有機ポリマー層である。別の事例では、テンプレート層は、有機単分子層である。
【0023】
別の例では、テンプレート層は、金属層で被覆される。金属層は、実質的に連続している。1つの実施様式では、金属層は、無電解析出により形成される。この事例では、テンプレート層は、高密度触媒部位の形成に寄与するアミン基を含む。1つの例では、高密度触媒部位によって、金属層を均一にし連続させることが可能になり、不透明性が生まれる。1つの実施様式では、アミン基は、基材を増感させるための金属イオン錯形成部位を提供する。基材の金属イオン増感表面は、無電解析出のための活性化前処理の際に、基材への触媒層の強い吸収をもたらす。
【0024】
暗色または黒色の真珠光沢顔料の製造方法の1つの実施形態では、方法は、基材の表面にin situで触媒層を形成すること、および当該触媒層に金属層を析出させることを含む。1つの例では、金属層を析出させることは無電解析出を伴い、増感した基材の活性化および金属塩の還元は、一段階反応である。
【0025】
本開示の製品は、真珠光沢顔料を使用することができる、自動車、化粧品、工業、または任意の他の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1Aおよび図1Bは、開示の被覆顔料の実施形態を示す。
【図2A】図2Aは、高倍率(100K)での効果顔料表面のSEM画像を示す。図2Aは、被覆前の白色真珠光沢顔料表面の画像である。
【図2B】図2Bは、高倍率(100K)での効果顔料表面のSEM画像を示す。図2Bは、多層被覆後の表面である。
【図3】図3は、Ag層が連続していることを示すオージェ分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
非金属基材、酸化物層、テンプレート層、および金属層を含む被覆顔料、ならびに当該被覆顔料の製造方法を記載する。開示の被覆顔料は、暗色または黒色のアンダートーンを有しており、優れた隠蔽特性を有する。
【0028】
図1Aを参照すると、被覆顔料10は、基材1を含む。1つの例では、基材1は、封止可能板状物であり得る。封止可能板状物1の寸法は、効果顔料を形成するのに適切な任意の寸法であり得る。1つの実施様式では、封止可能板状物1は、5μm〜700μmの範囲の直径および5nm〜500nmの厚さを有する。直径および厚さは、例えば、電界放射型走査電子顕微鏡法(FESEM)を用いて測定することができる。この事例では、直径は、板状物の水平断面で見られるように測定され、厚みは、板状物の垂直断面で見られるように測定される。
【0029】
1つの例では、基材1は、非金属基材である。本明細書では「金属」なる語は、基材中に存在する元素金属の酸化状態がゼロであることを意味する。本明細書では「非金属」なる語は、基材中に存在する元素の酸化状態がゼロではないことを意味する。
【0030】
1つの事例では、基材1は、ガラス、ケイ素酸化物、および二酸化チタン被覆雲母を含むがこれらに限定されるものではない、効果顔料を形成するために適切な任意の材料で形成することができる。別の事例では、基材1は、酸化物層を含み、当該酸化物層は、SiO2、TiO2、およびZrO2などの金属酸化物を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0031】
基材1は、第一層2で被覆されている。1つの例では、第一層2は、酸化物層である。酸化物層2は、SiO2、TiO2、およびZrO2などの金属酸化物を含み得るが、これらに限定されるものではない。1つの実施様式では、酸化物層2は、白色真珠光沢顔料の一部であり、これはTiO2で被覆された雲母である。1つの例では、第一層2の厚さは、数nm〜数10nmの範囲である。
【0032】
第一層2はさらに、第二層3で被覆されている。1つの例では、第二層3は、テンプレート層である。1つの事例では、テンプレート層3は有機単分子層である。本明細書では「有機単分子層」なる語は、有機鎖を有する分子を含む層を意味する。1つの例では、有機単分子層3は、アミノシラン単分子層を含み、シリル化により提供される。利用することができるアミノシランの例としては、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および鎖中または鎖の末端にアミノ基を含むものが挙げられる。アミノ基は、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンであり得る。1つの事例では、含まれるアミノシランの量は、出発基材の重量に基づいて、0.1〜20重量%の範囲である。別の事例では、含まれるアミノシランの量は、出発基材の重量に基づいて、1〜50重量%の範囲である。さらに別の事例では、含まれるアミノシランの量は、出発基材の重量に基づいて、1〜20重量%の範囲である。さらに別の事例では、含まれるアミノシランの量は、出発基材の重量に基づいて、1〜10重量%の範囲である。
【0033】
別の実施形態では、テンプレート層3は、有機ポリマー層である。有機ポリマー層3は、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリレート(PMA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、および/またはメタクリル酸ジメチルアミノエチルを含み得る。
【0034】
1つの例では、有機ポリマー層3は、第一層2の表面に開始剤分子を固定化することにより形成される。1つの実施様式では、開始剤は、表面活性基および開始剤部分を含み、第一層2の表面は、官能基を含む。開始剤分子は、開始剤分子の表面活性基を、第一層2の表面にある官能基と反応させることによって固定化される。次に、固定化された開始剤分子を1種以上の重合性モノマーと反応させて、モノマーが開始剤部分に付加し、第一層2の表面に結合したポリマー鎖を形成する。1つの事例では、有機ポリマー層3は、原子移動ラジカル重合(ATRP)を介して成長する。
【0035】
さらに別の例では、有機ポリマー層3が実質的に均一な厚さを有するほどに、有機ポリマー層3内のポリマー鎖は、長さが実質的に均一である。1つの事例では、有機ポリマー層3は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察すると、実質的に均一な厚さを有する。この事例では、有機ポリマー層3の厚さは、数ナノメートル〜100nmの範囲であり得、20,000倍〜100,000倍の倍率で透過型電子顕微鏡を用いて測定すると、平均厚みの15%未満の標準偏差を有し得る。
【0036】
別の実施様式では、有機ポリマー層3の厚さは、反応時間を増加または減少させることにより、それぞれ増加または減少させることができる。さらに別の実施様式では、有機ポリマー層3の厚さは、反応温度を増加または減少させることにより、それぞれ増加または減少させることができる。またさらに別の実施様式では、有機ポリマー層3の厚さは、モノマー濃度を増加または減少させることにより、それぞれ増加または減少させることができる。
【0037】
さらに別の例では、テンプレート層3は、アミノ基を含む。アミノ基は、第一級アミンまたは第二級アミンであり得る。テンプレート層3が有機ポリマー層である場合は、アミノ基は、初期のポリマー鎖に所望の長さが達成された後、ポリマー鎖末端上に親水性被覆層を成長させることにより提供される。1つの例では、親水性層は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)を含む。
【0038】
図1Bを参照すると、別の実施形態では、被覆顔料20は、酸化物層を含まない。1つの例では、被覆顔料20の基材1は、水酸基を含む。この事例では、基材1は、第二層3で直接被覆されている。1つの実施様式では、基材1は、ガラスフレークである。
【0039】
図1Aおよび図1Bを参照すると、第二層3は、第三層4でさらに被覆されている。1つの実施形態では、第三層4は、金属層である。金属層4は、銀、銅、またはニッケルを含み得る。1つの事例では、金属層4の被覆を判定するために、オージェ電子顕微鏡観察(AES)によるマッピングを使用することができる。1つの例では、金属層4の被覆は、金属層4内の金属に関するAESマップが、7500倍の倍率および256画素×256画素密度を用いた15μm×15μmの走査範囲で、金属層4の被覆中に不連続部を示さないほどに、実質的に連続している。本明細書では、「実質的に連続」なる語は、7500倍および256画素×256画素密度を用いた15μm×15μmの走査範囲に対する所与の倍率でのオージェ電子顕微鏡観察が、個々の金属粒子が観察されないほどに、金属層4の不連続部を解像することができないことを意味する。
【0040】
金属層4は、第二層3上に金属を析出させるのに適切な任意の表面被覆技術によって、第二層3上に形成することができる。1つの例では、金属層4は、無電解析出によりめっきされる。
【0041】
一般に、無電解金属析出は、溶液から金属をめっきするために化学的還元剤の使用を伴う。無電解析出技術によって、被膜の厚さを制御することが可能になる。この種の1つの有用なめっき技術は、還元剤から金属イオンまでの均一な電子移動の反応速度が無電解めっき浴内では遅く、金属イオンがバルク溶液中で還元されるのを防ぐように、化学作用を調整することである。次に、金属イオンの還元速度を加速させる触媒が、被覆する表面に適用される。このようにして、金属イオンは表面でのみ還元され、表面は所望の金属で被覆される。金属は、金属の水性塩の還元から析出させることができる。
【0042】
1つの例では、金属層4は、水溶性金属塩を還元することにより形成される。利用することができる金属塩としては、硫酸銀、塩酸銀、硝酸銀、炭酸銀など、硫酸銅、塩酸銅、硝酸銅、炭酸銅など、および硫酸ニッケル、塩酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルなどが挙げられる。
【0043】
さらに別の例では、金属層4が、水溶性金属塩を用いた無電解析出により第二層3上に形成される前に、第二層3の表面は、前処理により活性化される。1つの事例では、前処理は、第二層の表面に触媒層を形成させる増感−活性化処理である。
【0044】
1つの実施様式では、金属イオンを含む増感液が利用される。1つの例では、利用される金属イオンは、Sn(II)である。この事例では、第二層3内に含まれるアミン基が、第二層3の表面にSn(II)を結合させる「分子アンカー」として作用し、これにより第二層3の表面が増感される。第二層3の表面が増感すると、表面は、Ag、Pd、またはPtを含む金属塩水溶液に浸漬されて活性化される。これは、個々のナノスケールのAg、Pd、またはPt粒子で表面が被覆される酸化還元反応をもたらす。これらの粒子は、触媒部位を提供し、一緒になってAg、Pd、またはPt核を含む触媒層を形成する。その後、金属層4は、無電解めっきによりこの触媒層の表面に形成され得る。特に、上記のように、触媒層が無電解めっき液に暴露されると、めっき液中の還元剤が、触媒活性によって触媒層の表面で酸化する。次に、無電解めっき液中の金属塩が、放出された電子により還元され、金属が触媒層の表面にのみ析出し、連続する金属層4が形成される。
【0045】
1つの例では、触媒層を形成することおよび金属層を析出させることは、一段階反応である。
【0046】
1つの実施形態では、開示の被覆顔料は、開示の被覆顔料のCIE lab値を、15°、25°、45°、75°、110°という異なった角度でX−rite MA68IIマルチアングル分光光度計を用いて測定すると、a*値およびb*値が当該測定角度においてゼロに近くなるような、暗色または黒色を有する。1つの事例では、a*値およびb*値は、110°では、それぞれ、0.26および−0.06であり、15°では、それぞれ、1.87および−3.17である。
【0047】
別の実施形態では、開示の被覆顔料は、開示の被覆顔料のCIE lab値を、15°、25°、45°、75°、110°という異なった角度でX−rite MA68IIマルチアングル分光光度計を用いて測定すると、明度(L値)が当該測定角度で非常に高くなるような、極めて大きな光伝播を示す。1つの事例では、L値は、15°の角度で最大99.62であり、L値は、110°の角度で最大5.17である。
【0048】
さらに別の実施形態では、開示の被覆顔料は、開示の被覆顔料を色依存型の黒色値Mcを用いて評価すると、Mc値が75°および110°の角度で150を超えるほどの、高い漆黒度を有する。
【実施例1】
【0049】
テンプレート層としての単分子層の結合
10〜60μmの粒度を有するTiO2被覆(アナターゼ)雲母(マルバーン粒度分析によればD50=19μm)(20g)を、撹拌しながら、グリコールエーテルPM(500mL)に分散させ、5分後に、TiO2被覆雲母上のγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(1重量%)を上記分散液に加え、10分間撹拌し、水1%を触媒として撹拌しながら室温で加えた。2時間後、スラリーをろ過し、まずグリコールエーテルPMで、続いて水で洗浄した。
【実施例2】
【0050】
テンプレート層としての単分子層の結合
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン10%および水10%を加えた以外は実施例1を繰り返した。
【実施例3】
【0051】
テンプレート層としてのポリマー層の結合
工程1―ATRP開始剤でのTiO2被覆雲母の官能化
磁気撹拌子および冷却器を装着した500mL丸底フラスコを用いて換気フード中で反応を行った。
【0052】
次の化学物質を反応フラスコに加えた:
TiO2被覆雲母(37.5g)
3−(トリメトキシシリルプロピル)−2−ブロモ−2−メチルプロピオネート(0.3mL)
トルエン(300mL)。
【0053】
反応混合物を加熱し、還流下で18時間維持した。反応時間が満了したら、混合物を室温まで冷却した。フレークを真空ろ過した。トルエン(200mL)で3回洗浄した。
【0054】
工程2―スチレンとメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの表面開始重合
機械式撹拌機および加熱マントルを装着した100mL反応フラスコを用いて換気フード中で次の反応を行った。
【0055】
反応フラスコに、撹拌子および次の試薬を加えた:
CuBr(0.25g)
スチレン(40mL)
工程1からのTiO2被覆雲母(6.38g)(NVを4g含む)
トルエン(40mL)。
【0056】
フラスコをゴム膜で密閉し、N2で脱気し、次に、溶液を60℃まで加熱した。別のフラスコ中で、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を窒素で30分間脱気した。次に、N2でパージした注射器を用いて、脱気したPMDETA0.37mLを反応フラスコに移した。溶液を60℃で1時間維持した後、反応フラスコ(mask)から反応混合物を40mL回収した。1.5時間の重合後、N2でパージした注射器を用いて、脱気したメタクリル酸ジメチルアミノエチル37mLを反応フラスコに移した。反応混合物を60℃でさらに1時間維持した後、室温まで反応フラスコを冷却して反応を停止させた。遠心分離により顔料を反応混合物から分離した。
【実施例4】
【0057】
白色真珠光沢顔料への銀層の被覆
工程1―テンプレート層としての単分子層の結合
実施例1と同様に行った。
【0058】
工程2―テンプレート層被覆顔料の前処理
工程1からのテンプレート層が結合した白色真珠光沢顔料を、水500mL中のSnCl2(2.5g)およびHCl(2.5mL)の溶液に分散させ、20分間の前処理の間撹拌を続け、次に、ろ過した。
【0059】
工程3―銀層被覆
次の溶液を使用した:
溶液A―AgNO3(5g)を、水(50mL)に溶解し、NH4OH(10mL)を加え、さらに水を加えて全量を200mLにした;
溶液B―酒石酸カリウムナトリウム(7.5g)を、水(200mL)に溶解した。
【0060】
工程2からのろ過顔料を、水(200mL)に分散させ、撹拌機および温度調節装置を装着した2L反応器に移した。スラリーを350rpmで撹拌した。このスラリーに、まず溶液Aを加え、5分間静置した。薄茶色が観察された。次に、溶液Bを加え、350rpmで撹拌した。温度を30分間まず50℃に設定し、次に60℃まで上昇させた。総反応時間は、2.5時間であった。次に、スラリーを室温まで冷却し、ろ過し、水で十分に洗浄し、イソプロピルアルコールで一回洗浄し、風乾させた。生じた粉末は黒色であった。
【実施例5】
【0061】
工程1―テンプレート層としての単分子層の結合
白色真珠光沢顔料(50g)をグリコールエーテルPM(1000mL)に分散させた以外は、実施例1と同様に行った。
【0062】
工程2―テンプレート層被覆顔料の前処理
工程1からのテンプレート層が結合した白色真珠光沢顔料を、水1000mL中のSnCl2(6.25g)およびHCl(6.25mL)の溶液に分散させ、30分間の前処理の間撹拌し、次に、ろ過し、水で洗浄した。
【0063】
工程3―銀被覆
次の溶液を使用した:
溶液A―AgNO3(12.5g)を、水(50mL)に溶解し、NH4OH(18.75mL)を加え、さらに水を加えて全量を200mLにした;
溶液B―酒石酸カリウムナトリウム(18.75g)を、水(300mL)に溶解した。
【0064】
工程2からのろ過顔料を、水(500mL)に分散させ、撹拌機および温度調節装置を装着した2L反応器に移した。スラリーを350rpmで撹拌した。このスラリーに、まず溶液Aを加え、5分間静置した。薄茶色が観察されたら、溶液Bを加え、350rpmで撹拌した。温度を、まず30℃に設定し、次に、20分毎に10℃ずつ60℃に到達するまで徐々に上昇させた。総反応時間は、2.5時間であった。次に、スラリーを室温まで冷却し、ろ過し、水で十分に洗浄し、イソプロピルアルコールで一回洗浄し、風乾させた。生じた粉末は黒色であった。
【実施例6】
【0065】
実施例3からのポリマー層が結合した白色真珠光沢顔料(2g)を、水(200mL)中のSnCl2(0.5g)およびトリフルオロ酢酸(1.0mL)の溶液に分散させ、前処理として20分間撹拌し、次にろ過し、水で洗浄した。
【0066】
ろ過した基材を、水(200mL)に分散させ、磁気撹拌子および冷却器を装着した1Lの丸底フラスコに移した。スラリーを撹拌している間、2種の溶液を調製した:溶液A―AgNO3(0.5g)を、水(20mL)に溶解し、NH4OH(1.0mL)を加え、さらに水を加えて全量を100mLにした;溶液B―酒石酸カリウムナトリウム(3.0g)を、水(100mL)に溶解した。
【0067】
上記スラリーに、まず溶液Aを加え、5分間静置した。薄茶色が観察されたら、溶液Bを加え、撹拌した。温度を60℃に設定した。総反応時間は、2.5時間であった。反応の完了後、スラリーを室温まで冷却し、ろ過し、水で十分に洗浄し、イソプロピルアルコールで一回洗浄し、風乾させた。生じた粉末は黒色であった。
【実施例7】
【0068】
黒色顔料の評価―ニトロセルロースインクの引き伸ばし(drawdown)
得られた顔料の色彩を評価するため、いずれの場合も、顔料試料(1g)を、固形分20重量%の酢酸イソプロピル中でニトロセルロースと混合し、フラックテック社(Flack Tek Inc)からのスピードミキサー(DAC 150 FVZ−K)中で30秒間分散させた。伸ばし棒(drawdown bar)(#14)を用いて、1片の黒色および白色インクボール紙に着色塗料を引き伸ばした。膜を室温で乾燥させた後、CIE Lab値を、15°、25°、45°、75°、110°という異なった角度でX−rite MA68IIマルチアングル分光光度計を用いて測定した。報告された色座標(L、a*、b*)は、標準光源D65および視角10°に関連したものである。Lは、明度であり、a*は、赤/緑の含量であり、b*は、青/黄の含量である。白地の上の一回引き伸ばしたものに測定を行い、結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
上記測定から計算されたMc値を下記表2に示す。
【0071】
【表2】

【実施例8】
【0072】
黒色顔料の評価―補修塗料系
塗料系において実施例4から得られた黒色真珠光沢顔料(black pearls)を評価するため、ベースコートおよびクリアコートのいずれにも、溶剤を含むアクリル系を使用した。乾燥黒色真珠光沢顔料(8g)を、ベースコートアクリル樹脂塗料(92g)中に分散させ、次に、同容量の溶媒混合物シンナーと混合した。得られた塗料をろ過し、サイフォンを用いて透明なABSプラスチック片に噴霧した。噴霧したプラスチック片を、オーブン中で150°Fで20分間焼き付けした。下記のクリアコートの場合、クリアコートアクリル樹脂塗料3部を、クリアコートジイソシアネート硬化剤1部と溶媒混合物シンナー1部と混合した。次に、得られたクリアコートをプラスチック片に噴霧し、オーブン中170°Fで30分間焼き付けした。噴霧され焼き付けされた被膜は黒色に見え、非常に良好な隠蔽力を持していた。実施例7と同様に、プラスチック片のCIE Lab値を、15°、25°、45°、75°、110°という異なった角度でX−rite MA68IIマルチアングル分光光度計を用いて測定した(表3)。
【0073】
【表3】

【0074】
対応するMc値を下記表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
[SEM画像分析]
清浄な実験用のへらを用いて、一枚の導電性カーボン両面テープを介して試料をアルミニウム短部材に載せた。余分な粉末(power)を窒素パージにより除去した後、SEM分析槽に入れた。試料の取り扱いには全て、清浄なピンセットおよび手袋を使用した。試料を分析槽に入れ、これを<1×10-5トルまで減圧した。顕微鏡検査はすべて15mmの作動距離で行った。図2Aは、被覆前の白色真珠光沢顔料表面のSEM画像であり、図2Bは、多層被覆後の表面のSEM画像である。
【0077】
[オージェ電子顕微鏡法(AES)によるマッピング]
乾燥粉末から懸濁液を調製し、分析のために透明なSi上に流し込んだ。図3は、析出させた試料の銀の概観走査を示す。
【0078】
開示の被覆顔料および方法を好ましい実施形態と共に記載したが、開示の範囲内において、開示の被覆顔料および方法の他の目的や改良が行われてもよいことは当業者には明らかである。
【0079】
本開示は、その種々の態様および開示の形態において、記載の目的および利点ならびに他の目的および利点の達成のために適宜変更される。開示の詳細は、請求項に対する限定と見なされるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属である基材と、
有機単分子層または有機ポリマー層であるテンプレート層と、
金属層とを含む、被覆顔料。
【請求項2】
暗色または黒色を有する、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項3】
前記被覆顔料のCIE lab値a*およびb*を、15°、25°、45°、75°、110°の角度で標準光源に対して分光光度計を用いて測定すると、a*値およびb*値は、それぞれの角度においてゼロに近い、請求項2に記載の被覆顔料。
【請求項4】
前記a*値およびb*値が、110°では、それぞれ、0.26および−0.06であり、15°では、それぞれ、1.87および−3.17である、請求項3に記載の被覆顔料。
【請求項5】
前記被覆顔料のCIE lab値Lを、15°、25°、45°、75°、110°の角度で標準光源に対して分光光度計を用いて測定すると、L値は、15°の角度で最大99.62であり、L値は、110°の角度で最大5.17である、請求項2に記載の被覆顔料。
【請求項6】
前記開示の被覆顔料を色依存型の黒色値Mcを用いて評価すると、Mc値は、75°および110°で150を超えるほどに、前記被覆顔料が漆黒度を有する、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項7】
酸化物層をさらに含む、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項8】
前記酸化物層が、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、および二酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の被覆顔料。
【請求項9】
前記金属層が、銀、銅、またはニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項10】
前記基材が雲母またはガラスフレークであり、前記被覆顔料が、正真正銘の真珠光沢効果の光沢に匹敵する真珠光沢効果を提供するほどの、干渉層を含む、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項11】
前記テンプレート層が、アミノ基を含む、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項12】
前記アミノ基が、第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項9に記載の被覆顔料。
【請求項13】
前記テンプレート層が、有機ポリマー層であり、当該有機ポリマー層が、長さが実質的に均一なポリマー鎖を含む、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項14】
前記有機ポリマー層が、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリレート(PMA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸ジメチルアミノエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項13に記載の被覆顔料。
【請求項15】
前記テンプレート層が、前記有機単分子層であり、前記有機単分子層が、アミノシラン層を含み、当該アミノシラン層が、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびガンマ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項16】
前記金属層が、実質的に連続している、請求項1に記載の被覆顔料。
【請求項17】
前記基材の表面にin situで触媒層を形成すること、および
当該触媒層に前記金属層を析出させることを含む、請求項1の被覆顔料の製造方法。
【請求項18】
前記金属層を析出させることが、無電解析出を用いて前記基材の表面に金属を析出させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒層を形成することおよび前記金属層を析出させることが、一段階反応である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116987(P2011−116987A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−268691(P2010−268691)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(511034594)シルバーライン マニュファクチュアリング カンパニー,インク. (7)
【Fターム(参考)】