説明

金属帯の巻き取り装置

【課題】 本発明は、上述したような従来技術の問題を解消し、金属帯をコ イル状に巻き取るに際し、特に最尾端近傍で発生する腰折れ欠陥を発生させ ることなく金属帯を巻き取ることができる装置の提供を目的とするものであ る。
【解決手段】 金属帯1をテンションリール2によって連続的に巻き取るた めの装置において,前記金属帯1の外面を押圧するための回転自在な押さえ ロール3と,該押えロール3を前記テンションリールに2向かって進退させ るための第一シリンダー4と,前記押えロールと軸心を共有して揺動し,前 記金属帯1の進入をガイドするためのガイド板と6,該ガイド板6を前記押 えロール3の軸心回りに自在に揺動させるための第二シリンダー5とから成 る腰折れ防止装置を付設したことを特徴とする金属帯の巻き取り装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属帯の巻き緩みの原因となる腰折れ欠陥の防止装置を付設した金属帯の巻き取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に熱間圧延鋼帯、冷間圧延鋼帯、各種表面処理鋼帯等の製造において、最終工程である金属帯の巻き取りは、図4に示すように、金属帯hが最終ピンチロール1を介してテンションリール2によって連続的に巻き取られる。この場合、図4のAに示すように、金属帯hが連続的にテンションリール2で巻き取り中は該金属帯hはピンチロールー1とテンションリール2の間で一定の張力を保ちながら巻き取られていくため、巻き取られた金属帯hは径方向に隙間なく緊密に巻き取られていく。一方、図4のB及びCに示すように、金属帯hの最尾端がピンチロール1を通過した直後は金属帯hはピンチロールー1とテンションリール2間の拘束を解かれて自重により変形しながらテンションリール2に巻き取られていく。この場合、テンションリール2近傍で巻き取られる直前の金属帯hは、Dに示すような俗に腰折れと言われる山形の盛上がり変形を伴いながら巻き取られるため、最終的にコイル状に巻き取られた金属帯Hは腰折れ部において径方向に若干の隙間を有しており、これがコイル状態における巻き緩みの原因となっている。
【0003】
コイル状に巻き取られた金属帯Hは、巻き取り後、コイルカー7に載置されフープ等で結束された後、所定の場所へ移送され、精整、検査、梱包等の工程を経て、所定単位毎に、陸上、海上等を各種移送手段を通じて出荷先へ輸送される。この場合、特に、船舶による海上輸送においては航海中の船舶の揺動、振動などにより前記腰折れ欠陥を有する金属帯Hの径方向の隙間において、鋼帯の表面同士が擦れ合うことによって鋼帯表面に摩擦傷を発生させる。この表面欠陥は特に、亜鉛めっき等の表面処理を施した金属帯においては致命的なものである。したがって、加工中に検出された場合には当該部分は切断除去して使用されることが多く、巻き直しなどの処置が行われている。
【0004】
この腰折れ欠陥を防止するために、図5に示すようにコイル状に巻き取られる金属帯の最尾端の位置を検出するとともに、その動きを拘束して安全かつ作業性を向上させる目的で、金属帯を巻き取る際にピンチロールを通過した後の鋼帯の最尾端近傍を押圧ローラーRが押圧するように巻き取る技術(特許文献1など)が提案されているが、この場合には、押圧ローラーRによって押圧される直前に腰折れが発生することがあり完全に腰折れ欠陥を防止することは困難である。また、コイル状に巻き取られる鋼帯の内径側に生じる巻き緩みを防止すること及び種々の内径で鋼帯をコイル状に巻き取るための機構を備えた巻取り装置(特許文献2など)が提案されているが、特に、種々の内径でコイル状に金属帯を巻き取るための複雑な機構を必要とし製造コストの上昇は免れない。
【特許文献1】特開2000−190026号公報
【特許文献2】特開2003−311323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題を解消し、金属帯をコイル状に巻き取るに際し、特に最尾端近傍で発生する腰折れ欠陥を発生させることなく金属帯を巻き取ることができる装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前掲の目的(課題解決)を達成するために完成された本発明の要旨とする特徴は以下の通りである。
【0007】
(1) 金属帯をテンションリールによって連続的に巻き取るための装置において,前記金属帯の外面を押圧するための回転自在な押さえロールと,該押えロールを前記テンションリールに向かって進退させるための第一シリンダーと,前記押えロールと軸心を共有して揺動し,前記金属帯の進入をガイドするためのガイド板と,該ガイド板を前記押えロールの軸心回りに自在に揺動させるための第二シリンダーとから成る腰折れ防止装置を付設したことを特徴とする金属帯の巻き取り装置。
【0008】
(2)ガイド板が湾曲した形状である上記(1)に記載の金属帯の巻き取り装置。
【0009】
(3)ガイド板の先端に硬質部材が配設された上記(1)又は(2)に記載の金属帯の巻き取り装置。
【0010】
(4)硬質部材がロールである上記(3)に記載の金属帯の巻き取り装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、金属帯をコイル状に巻き取る際に、特に金属帯の最尾端近傍で発生する腰折れ欠陥の発生を有効に防止し、これにより金属帯コイルにおける隙間を無くし、金属帯同士の摩擦による表面欠陥を皆無にする表面品質の優れた製品を提供することができる。また、比較的簡単な装置で金属帯の腰折れを防止することができるため、実用性に富む発明といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細説明する。
図1、図2及び図3は本発明に係る腰折れ防止装置を付設した金属帯の巻取り装置を示すもので、金属帯hはピンチロール1を通過後、テンションリール2によって巻き取られるように構成されている。一方、コイルカー7の近傍には金属帯hの外面を押圧するための回転自在な押えロール3と、該押えロール3をテンションリール2に向かって進退させるための第一シリンダー4と、前記押えロール3と軸心を共有して揺動し、金属帯hの進入をガイドするためのガイド板6と、該ガイド板6を前記押えロール3の軸心回りに自在に揺動させるための第二シリンダー5で構成される腰折れ防止装置が付設されている。この腰折れ防止装置は図1においてはテンションリール2の下方で、コイルカー7の近傍に付設されているが、この位置に限定されるものではなく、テンションリール2の周囲であれば設備上許容されるどの位置に付設してもよい。
【0013】
圧延あるいは表面処理された金属帯hがピンチロール1を介してテンションリール2で連続的に巻き取られている間は、前記腰折れ防止装置はテンションリール2の下方、コイルカー7の近傍に待機しているが、金属帯hの最尾端をピンチロール2の前方に配置されているゲージロール(図示していない)が感知すると、押えロール3をテンションリール2で巻取り中の金属帯hに接触させるように第一シリンダー4がテンションリール2の方向に移動する。また、前記第一シリンダー4の動作に連動してガイド板6をテンションリール2の近傍に配置すべく第二シリンダー5が移動する。この第一シリンダー4及び第二シリンダー5の動作は金属帯hの最尾端がピンチロール1を通過するまでに終了するように制御される。ガイド板6は、金属帯hの最尾端がピンチロール1を通過した後に金属帯hに腰折れ欠陥を生じることなくテンションリール2に導くためのガイドとなるもので、その詳細を図2及び図3に示している。
【0014】
即ち、ガイド板6は押えロール3と軸心を共有して揺動可能に軸受け8、ブラケット9を介して取り付けられている。ガイド板6は通常薄鋼板製で、そのテンションリール側即ち、金属帯hと接触する面は前記金属帯hの表面に摩擦による傷を生じないようにウレタンゴム等の緩衝材10が貼付されている。このガイド板6は、最終的に巻き取られるコイル状の金属帯Hの大きさ即ちコイル径によってその形状を変えることができる。巻き取り径が比較的小さい場合には、短い直棒状にしてもよく、また、コイル径が比較的大きい場合には図3に示すように巻き取るコイル径に相応した曲率をもつ湾曲した形状にするのが好ましい。また、ガイド板6の先端部11はMCナイロン等の硬質部材が貼付されており、金属帯hとの著しい摩擦による損傷を防止するように構成される。
【0015】
また、金属帯hとの摩擦軽減のためにガイド板6の先端部にロールを配置し、金属帯hとの接触によって自由に回転できるように構成してもよい。この場合、前記ロールの表面に硬質ゴム等の緩衝材を貼付して金属帯hとの接触による表面欠陥の発生を防止するように構成してもよい。
【0016】
こうした本発明の装置構成により、金属帯hの最尾端がピンチロール1を通過した後の該金属帯hがガイド板6によってガイドされ、腰折れ欠陥を生じることなくテンションリール2に巻き取られる様相を図1の(a)から(f)に模式的に示している。
【0017】
金属帯hの最尾端がピンチロール1を通過した後、該金属帯hが腰折れ欠陥を生じることなく、ガイド板6によってガイドされつつテンションリール2に巻き取られるためにはガイド板6の先端部の位置は、テンションリール2で巻き取られているコイル状の金属帯Hの表面よりも若干外側で金属帯Hの最外面との間に隙間sをもたせて配置するのが効果的である。この隙間sの大きさは、金属帯hの厚さによって適切に調節される。このように押えロール3の軸心を共有した揺動可能なガイド板6で金属帯hの開放端をその内側に拘束し、ガイドしながらの最尾端まで巻き取ることにより巻取りの開始から終了まで腰折れ欠陥を生じることなく緊密にコイル状に巻き取ることができるのである。
【0018】
そして、金属帯hが図1の(f)の状態を通過して最終的にコイル状に巻き取られた金属帯Hは、テンションリール2の下方で待機しているコイルカー7上に載置され、フープ等で結束された後、所定の場所へ移送されるとともに、押えロール3、ガイド板6、第一シリンダー4、第二シリンダー5からなる腰折れ防止装置は次の巻き取り工程に向けて所定の初期位置へ移動して待機することになる。
【0019】
(実施例)
以下に実施例の結果を示した図6及び図7を用いて本発明の優れた効果を実証する。
【0020】
図6は図4で開示した従来技術で種々の板厚の電気亜鉛めっき処理鋼帯を最終工程でテンションリールでコイル状に巻取り、その後、該鋼帯をコイルカーに載置した状態で、該鋼帯の外周2、3巻き部分の最大の隙間をテーパーゲージで測定した値を、鋼帯の厚さ別にプロットしたものである。鋼帯の厚さが大きくなると隙間も大きくなる傾向にあり、図示した板厚においては隙間は1〜3mmを呈している。
【0021】
一方、図7は、図1から図3で開示した本発明に係る腰折れ防止装置を付設した巻き取り装置を用いて、前記同様に種々の板厚の電気亜鉛めっき処理鋼帯を最終工程でテンションリールでコイル状に巻取り、巻き取られた鋼帯の外周2、3巻き部分の最大の隙間をテーパーゲージで測定した値を、鋼帯の厚さ別にプロットしたものである。試験に使用した全ての板厚で隙間は最大値で0.3mmで、ほとんどの鋼帯で隙間は認められなかった。
【0022】
本図から明らかなように、本発明に係る巻取り装置で金属帯を巻き取ると特に金属帯が最終ピンチロールを通過した後で、該金属帯が腰折れを起こすことなく巻き取ることができるため、コイル全体にわたって隙間を生じることなく緊密に巻き取ることができることがわかる。従って、こうして巻き取られた金属帯コイルは例え輸送時に揺動、振動を受けても表面欠陥(傷)の発生などの問題の恐れはなく、安心して出荷しうることが明かである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る金属帯の巻取り装置の実施態様を示す側面図である。
【図2】本発明に係る金属帯の巻取り装置の実施態様を示す正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】従来技術に係る金属帯の巻取り装置の一例を示す説明図である。
【図5】従来技術に係る金属帯の巻取り装置の他の例を示す説明図である。
【図6】従来技術に係る巻取り装置で巻き取った鋼帯の板厚毎の隙間の測定結果を示す図である。
【図7】本発明に係る巻取り装置で巻き取った鋼帯の板厚毎の隙間の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1:ピンチロール 2:テンションリール 3:押えロール
4:第一シリンダー 5:第二シリンダー 6:ガイド板 7:コイルカー
8:軸受 9:ブラケット 10:ガイド板緩衝材 11:先端硬質部材
h:金属帯 H:コイル状に巻かれた金属帯 A〜D及びa〜f:金属帯の巻取り状況を示す符号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯をテンションリールによって連続的に巻き取るための装置において、前記金属帯の外面を押圧するための回転自在な押えロールと、該押えロールを前記テンションリールに向かって進退させるための第一シリンダーと、前記押えロールと軸心を共有して揺動し、前記金属帯の進入をガイドするためのガイド板と、該ガイド板を前記押えロールの軸心回りに自在に揺動させるための第二シリンダーとから成る腰折れ防止装置を付設したことを特徴とする金属帯の巻き取り装置。
【請求項2】
ガイド板が湾曲した形状である請求項1に記載の金属帯の巻き取り装置。
【請求項3】
ガイド板の先端に硬質部材が配設された請求項1又は2に記載の金属帯の巻き取り装置。
【請求項4】
硬質部材がロールである請求項3に記載の金属帯の巻き取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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