説明

金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法

【課題】連続ライン中の2つのパスライン部P1,P2を少ない設備コストで効率的に切替できる方法を提供する。
【解決手段】(イ)金属帯Sを、パスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側の位置で切断し、先行材(金属帯)Saと後行材(金属帯)Sbとに分離し、(ロ)先行材Saを移動させて旧使用のパスライン部P1又はP2を通過させ、先行材Saの尾端をパスライン部P1,P2の合流部f近傍に位置させ、(ハ)パスライン内に導入され、新規使用のパスライン部P1又はP2内に通されたロープRの先端を先行材Saの尾端に連結した後、該ロープRを巻取装置1で巻き取ることで、先行材Saを牽引して新規使用のパスライン部P1又はP2内に引き込み、先行材Saの尾端をパスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側に位置させ、(ニ)先行材Saの尾端とロープRとの連結を解除した後、先行材Saの尾端と後行材Sbの先端とを溶接により接合し、パスライン部P1,P2の切替を完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鋼帯の連続処理ラインなどのような金属帯の連続ラインにおいて、金属帯を選択的に通板させる2つのパスライン部を切り替えるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の連続処理ラインのなかには、鋼帯を選択的に通板させる2つのパスライン部を備え、この2つのパスライン部を適宜切り替えて操業するものがある。例えば、冷延鋼帯とステンレス鋼帯の両方の焼鈍処理を行う連続焼鈍ライン(CAL)では、連続焼鈍設備の下流側に、ステンレス鋼帯用の酸洗設備を備えたパスライン部と、このパスライン部をバイパスするための冷延鋼帯用のパスライン部を設け、処理する鋼帯(ステンレス鋼帯・冷延鋼帯)に応じてパスラインを切り替えて操業が行われる。また、鋼帯を選択的に通板させる2つのパスライン部がそれぞれ処理設備を備え、この2つのパスライン部を適宜切り替えて鋼帯の処理を行う場合もある。
【0003】
このような2つのパスライン部の切替方式に関しては、例えば、所定の処理設備を有するパスライン部(p1)と、その処理設備をバイパスするためのパスライン部(p2)を有する連続ラインにおいて、2つのパスライン部(p1),(p2)の分岐部の上流側と合流部の下流側に、それぞれ鋼帯の切断装置と鋼帯接続用の溶接装置を設けるとともに、2つのパスライン部(p1),(p2)の分岐部と合流部に、鋼帯の方向転換用のデフレクター装置を設け、前記切断装置と溶接装置による鋼帯の切断・接合と、デフレクター装置による鋼帯の案内・方向転換により、両パスライン部(p1),(p2)の切替を行うようにしたものが、特許文献1において提案されている。
【特許文献1】特開平5−31518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の切替方式は、2つのパスライン部(p1),(p2)の分岐部側と合流部側の各々に、鋼帯の切断装置、溶接装置及びデフレクター装置を設ける必要があるため、設備コストが大きくなる問題がある。
また、処理設備を備えたパスライン部(p1)からバイパスであるパスライン部(p2)に切り替える場合、切替時点でパスライン部(p1)内にあった鋼帯部分は、次の切替時までそのままパスライン部(p1)内に残留させられるが、この残留中に処理設備内の処理液などによる汚染や錆の発生などがあった場合には、次の切替時に当該鋼帯部分がライン下流側の搬送された際に、パスラインを汚染してしまい、製品の品質に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
したがって本発明の目的は、金属帯の連続ラインにおいて2つのパスライン部を選択的に切り替えるための方法であって、少ない設備コストで且つライン内の汚染などの問題を生じることなく、効率的にライン切替を行うことができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下のとおりである。
[1]ライン内に、切替により金属帯(S)を選択的に通板させる2つのパスライン部(P1),(P2)を有する金属帯の連続ラインにおいて、金属帯(S)が通板するパスライン部(P1),(P2)を切り替えるための方法であって、
金属帯牽引用のロープ(R)を保持し、該ロープ(R)の繰り出し・巻き取りが可能なロープ巻取装置(1)を設置し、下記[イ]〜[ニ]の工程でパスライン部(P1),(P2)の切替を行うことを特徴とする、金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法(但し、切替により金属帯が通板しなくなるパスライン部を「旧使用のパスライン部」、切替により金属帯が通板することになるパスライン部を「新規使用のパスライン部」という。)。
[イ] 停止状態の金属帯(S)を、パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側の位置で切断し、先行金属帯(Sa)と後行金属帯(Sb)とに分離する。
[ロ] 先行金属帯(Sa)を移動させて旧使用のパスライン部(P1)又は(P2)を通過させ、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の合流部(f)近傍に位置させる。
[ハ] パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側の位置からパスライン内に導入され、新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に通されたロープ(R)の先端を先行金属帯(Sa)の尾端に連結した後、該ロープ(R)をロープ巻取装置(1)で巻き取ることにより、先行金属帯(Sa)を牽引して新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に引き込み、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側に位置させる。
[ニ] 先行金属帯(Sa)の尾端とロープ(R)との連結を解除した後、先行金属帯(Sa)の尾端と後行金属帯(Sb)の先端とを溶接により接合し、パスライン部(P1),(P2)の切替を完了する。
【0007】
[2]上記[1]のパスラインの切替方法において、下記[i]〜[vi]の工程でパスライン部(P1),(P2)の切替を行うことを特徴とする、金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法。
[i] 停止状態の金属帯(S)を、パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりも上流側の位置で切断し、先行金属帯(Sa)と後行金属帯(Sb)とに分離した後、ロープ巻取装置(1)が保持するロープ(R)の先端を先行金属帯(Sa)の尾端に連結する。
[ii] 先行金属帯(Sa)を移動させ、その尾端に連結されたロープ(R)を牽引しつつ、旧使用のパスライン部(P1)又は(P2)を通過させ、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の合流部(f)近傍に位置させる。
[iii] 先行金属帯(Sa)の尾端とロープ(R)との連結を解除するとともに、パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)近傍の位置でロープ(R)を分断することにより、旧使用のパスライン部(P1)又は(P2)内にロープ部分(RC1)を残留させる。
[iv] 前回の切替の際に、新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に残留させておいたロープ部分(RC2)の一端を、先行金属帯(Sa)の尾端に連結するとともに、ロープ部分(RC2)の他端をロープ巻取装置(1)が保持するロープ(R)の先端に接続する。
[v] ロープ巻取装置(1)によりロープ(R)(但し、工程(iv)においてロープ(R)に接続されたロープ部分(RC2)を含む。)を巻き取ることにより、先行金属帯(Sa)を牽引して新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に引き込み、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側に位置させる。
[vi] 先行金属帯(Sa)の尾端とロープ(R)との連結を解除した後、先行金属帯(Sa)の尾端と後行金属帯(Sb)の先端とを溶接により接合し、パスライン部(P1),(P2)の切替を完了する。
【0008】
[3]上記[1]又は[2]のパスラインの切替方法において、パスライン部(P1)が金属帯用の処理設備を有するパスライン部であり、パスライン部(P2)が前記処理設備をバイパスするためのパスライン部であることを特徴とする、金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法。
[4]上記[1]又は[2]のパスラインの切替方法において、パスライン部(P1),(P2)がそれぞれ金属帯の処理設備を有するパスライン部であることを特徴とする、金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、切替使用される2つのパスライン部を有する金属帯の連続ラインにおいて、パスラインの切替を効率的且つ迅速に行うことができるとともに、ロープ巻取装置と溶接機を1箇所に設置するだけでよいため、少ない設備コストで実施することができる。さらに、切替により使用しなくなるパスライン部には金属帯が残留しないので、従来技術のようにパスライン部に残留した金属帯が再通板する際にパスラインを汚染する、というような問題も生じるおそれがない。
また、請求項2の発明によれば、前回の切替時に一方のパスライン部に残しておいたロープ部分を、今回の切替において金属帯の牽引に用いるので、パスラインの切替をより効率的且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態を示すもので、本発明を鋼帯の連続処理ラインにおけるパスライン切替に適用した場合の実施形態を示している。
この連続処理ラインは、切替により鋼帯Sを選択的に通板させる2つのパスライン部P1,P2を有しており、この実施形態では、パスライン部P1が鋼帯用の処理設備2を有し、パスライン部P2が前記処理設備2をバイパスするためのパスライン部となっている。
【0011】
図において、eはパスライン部P1,P2の分岐部(各パスライン部の入側)、fはパスライン部P1,P2の合流部(各パスライン部の出側)である。また、1はロープ巻取装置、3は溶接機、4は通板ロール、5はロープガイドである。
前記ロープ巻取装置1は、鋼帯牽引用のロープRを保持し、このロープRの繰り出し・巻き取りが可能である。このロープ巻取装置1に保持されたロープRは、前記ロープガイド5に案内されて、パスライン部P1,P2の分岐部eの上流側の位置からパスライン内に導入される。ロープ巻取装置1の設置場所に特別な制約はないが、上記のようにロープRはパスライン部P1,P2の分岐部eの上流側の位置からパスライン内に導入されるため、パスライン部P1,P2の分岐部e近くに配置されることが好ましい。
前記ロープRは、処理設備の種類に応じてその材質を選択することが好ましい。例えば、酸洗設備を有するパスラインの場合、酸洗液に対して十分な耐食性を有する材質、例えば、ナイロンやポリプロピレンなどが好ましい。また、耐食性の観点からは、特にポリプロピレンが好ましい。
【0012】
前記溶接機3は鋼帯接合用の溶接機であり、前記パスライン部P1,P2の分岐部eの上流側に設置されている。この溶接機3は、通常、鋼帯端部どうしのラップ部を溶接するスポット溶接機やシーム溶接機などの溶接機で構成される。なお、同じく分岐部eの上流側には、必要に応じて、鋼帯の切断装置が設けられる。
前記通板ロール4は、パスライン切替の際に鋼帯端部の位置調整を容易且つ迅速に行えるようにするため、正寸動・逆寸動機能(鋼帯をライン進行方向及び反ライン進行方向に寸動させる駆動機能)を有することが好ましい。また、同様の目的で、溶接機の入側と出側にそれぞれ、正寸動・逆寸動機能(鋼帯をライン進行方向及び反ライン進行方向に寸動させる駆動機能)を有するピンチロールを設置することが好ましい。
【0013】
図1(I)〜(V)は、鋼帯Sが通板するパスライン部をパスライン部P1からパスライン部P2に切り替える工程を順に示したものである。ここで、以下の説明において、切替により鋼帯Sが通板しなくなるパスライン部を「旧使用のパスライン部」、切替により金属帯Sが通板することになるパスライン部を「新規使用のパスライン部」という。
図1(I)は、鋼帯Sがパスライン部P1を通板している状態を示している。この状態からパスラインを切り替える場合、鋼帯Sの通板を停止させた後、図1(II)に示すように、パスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側の位置で鋼帯Sを切断(手作業又は切断装置による切断)し、先行鋼帯Saと後行鋼帯Sbとに分離する。次いで、図1(II),(III)に示すように、先行鋼帯Saを移動させて旧使用のパスライン部P1を通過させ、先行鋼帯Saの尾端xをパスライン部P1,P2の合流部fの近傍に位置させる。
【0014】
次いで、ロープ巻取装置1に保持され、パスライン部P1,P2の分岐部eの上流側の位置からパスライン内に導入され、且つ新規使用のパスライン部P2内に通されたロープRの先端を先行鋼帯Saの尾端xに連結する。この場合、ロープ巻取装置1から繰り出されるロープRを、人力でパスライン内に導入してパスライン部P2の全長に通し、その先端を先行鋼帯Saの尾端xに連結してもよいし、また、後述する図2〜図4の実施形態のように、前回の切替の際にパスライン部P2内の全長に残留させたロープを利用し、その一端を先行鋼帯Saの尾端xに連結し、他端をロープ巻取装置1から繰り出されるロープRの先端に接続するようにしてもよい。
【0015】
以上のようにしてロープRを先行鋼帯Saの尾端xに連結した後、図1(IV)に示すように、ロープRをロープ巻取装置1で巻き取ることにより、先行鋼帯Saを牽引して新規使用のパスライン部P2内に引き込み、先行鋼帯Saの尾端xをパスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側に位置させる。
そして、先行鋼帯Saの尾端xとロープRとの連結を解除した後、先行鋼帯Saの尾端xと後行鋼帯Sbの先端yとを溶接機3で溶接して接合wし、パスライン部P1からパスライン部P2への切替を完了する。
なお、鋼帯Sが通板するパスライン部をパスライン部P2からパスライン部P1に切り替える場合も、上記に準じた工程で行えばよい。
【0016】
図2〜図4は、本発明のより具体的且つ好ましい実施形態を示すもので、本発明を鋼帯の連続焼鈍ラインにおけるパスライン切替に適用した場合の一実施形態を示している。この連続焼鈍ラインは、冷延鋼帯とステンレス鋼帯の両方の焼鈍処理を行うラインであり、連続焼鈍設備の下流側に、ステンレス鋼帯用の酸洗設備20を備えたパスライン部P1と、この酸洗設備20をバイパスするための冷延鋼帯用のパスライン部P2を有し、処理する鋼帯(ステンレス鋼帯・冷延鋼帯)に応じてパスライン部が切り替えられる。
【0017】
図2は、パスライン部P1,P2とその上流側及び下流側パスラインの一部の設備構成を示すものであり、eはパスライン部P1,P2の分岐部(各パスライン部の入側)、fはパスライン部P1,P2の合流部(各パスライン部の出側)、1はロープ巻取装置、3は溶接機、4は通板ロールであり、これらの構成及び機能と配置は図1の実施形態と同様である。また、パスライン部P1,P2の分岐部eの上流側には、必要に応じて、鋼帯の切断装置が設けられる。
さらに、図2において、5はロープガイド、6Aは溶接機入側のピンチロール、6Bは溶接機出側のピンチロール、7は鋼帯クランプ装置である。
【0018】
前記溶接機入側・出側のピンチロール6A,6Bは、鋼帯の端部どうしを溶接接合する際などに、鋼帯端部の位置調整を容易且つ迅速に行えるようにするため、正寸動・逆寸動機能(鋼帯をライン進行方向及び反ライン進行方向に寸動させる駆動機能)を有している。
前記ロープガイド5は、ロープ巻取装置1が保持するロープRを案内し、パスライン部P1,P2の分岐部eと溶接機3との間の位置(溶接機出側のピンチロール6Bの位置)又は溶接機3とピンチロール6Aとの間の位置からパスライン内に導入する。
前記鋼帯クランプ装置は、パスライン部P1,P2の合流部fの下流側に設置され、先行鋼帯Saの尾端xに対するロープRの脱着の際などに、鋼帯を固定するのに用いられる。
また、前記酸洗設備20は、入側から酸洗タンク20a、リンスタンク20b及びドライヤー20cを備えている。
【0019】
図3(I)〜(VI)は、鋼帯Sが通板するパスライン部をパスライン部P1からパスライン部P2に切り替える工程を順に示したものである。ここで、以下の説明において、切替により鋼帯Sが通板しなくなるパスライン部を「旧使用のパスライン部」、切替により金属帯Sが通板することになるパスライン部を「新規使用のパスライン部」という。
パスラインを切り替える場合、鋼帯Sの通板を停止させた後、図3(I)に示すように、パスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側の位置で鋼帯Sを切断(手作業又は切断装置による切断)し、先行鋼帯Saと後行鋼帯Sbとに分離する。その後、先行鋼帯Saの尾端xは、ロープRを連結するために、例えば、図5(A)に示すように加工(幅狭に加工し、且つロープ通し穴を設ける)される。
【0020】
次いで、ロープ巻取装置1が保持するロープRを、ロープガイド5を経由させてパスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側の位置からパスライン内に引き込み、ロープRの先端を先行鋼帯Saの尾端xに連結する。しかる後、図3(II)に示すように先行鋼帯Saを移動させ、その尾端xに連結されたロープRを牽引しつつ、旧使用のパスライン部P1を通過させ、先行鋼帯Saの尾端xをパスライン部P1,P2の合流部f近傍に位置させる。ここで、先行鋼帯Saを移動させる際、ロープ巻取装置1及びライン内駆動ロールを制御することでロープR及び先行鋼帯Saに張力を与えることにより、先行鋼帯Saの尾端側を円滑に移動させることができる。
【0021】
次いで、図3(III)に示すように、先行鋼帯Saの尾端xとロープRとの連結を解除するとともに、パスライン部P1,P2の分岐部e近傍の位置でロープRを分断(ロープ切断またはロープ途中に予め設けられた継手部の切離し)することにより、旧使用のパスライン部P1内にロープ部分RC1を残留させる。この残留したロープ部分RC1は、次回の切替(パスライン部P2からパスライン部P1への切替)の際に、鋼帯を牽引するために用いられる。一方、前回の切替の際に、新規使用のパスライン部P2内に残留させておいたロープ部分RC2の一端を、先行鋼帯Saの尾端xに連結するとともに、当該ロープ部分RC2の他端をロープ巻取装置1が保持するロープRの先端に接続する。
【0022】
次いで、図3(IV),(V)に示すように、ロープ巻取装置1によりロープR(上記のようにロープRに接続されたロープ部分RC2を含む。)を巻き取ることにより、先行鋼帯Saを牽引して新規使用のパスライン部P2内に引き込み、先行鋼帯Saの尾端xをパスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側に位置させる。次いで、先行鋼帯Saの尾端xとロープRとの連結を解除した後、図5(B)に示すように先行鋼帯Saの尾端xの加工箇所を切断除去する。
次いで、通板ロール4やピンチロール6A,6Bにより先行鋼帯Saと後行鋼帯Sbとを適宜正寸動・逆寸動させることにより、先行鋼帯Saの尾端xと後行鋼帯Sbの先端yとを溶接機3に位置合わせし、図3(VI)に示すように両端部を溶接(通常、両端部のラップ部のスポット溶接)により接合wし、パスライン部P1,P2の切替を完了する。
【0023】
図4(I)〜(VI)は、図3(I)〜(VI)において切替がなされたパスライン部を再度切替する場合、すなわち、鋼帯Sが通板するパスライン部をパスライン部P2からパスライン部P1に切り替える工程を順に示したものである。
パスラインを切り替える場合、鋼帯Sの通板を停止させた後、図4(I)に示すように、パスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側の位置で鋼帯Sを切断(手作業又は切断装置による切断)し、先行鋼帯Saと後行鋼帯Sbとに分離する。その後、先行鋼帯Saの尾端xは、ロープRを連結するために、例えば、図5(A)に示すように加工(幅狭に加工し、且つロープ通し穴を設ける)される。
【0024】
次いで、ロープ巻取装置1が保持するロープRを、ロープガイド5を経由させてパスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側の位置からパスライン内に引き込み、ロープRの先端を先行鋼帯Saの尾端xに連結する。しかる後、図4(II)に示すように先行鋼帯Saを移動させ、その尾端xに連結されたロープRを牽引しつつ、旧使用のパスライン部P2を通過させ、先行鋼帯Saの尾端xをパスライン部P1,P2の合流部f近傍に位置させる。ここで、先行鋼帯Saを移動させる際、ロープ巻取装置1及びライン内駆動ロールを制御することでロープR及び先行鋼帯Saに張力を与えることにより、先行鋼帯Saの尾端側を円滑に移動させることができる。
【0025】
次いで、図4(III)に示すように、先行鋼帯Saの尾端xとロープRとの連結を解除するとともに、パスライン部P1,P2の分岐部e近傍の位置でロープRを分断(ロープ切断またはロープ途中に予め設けられた継手部の切離し)することにより、旧使用のパスライン部P2内にロープ部分RC1を残留させる。この残留したロープ部分RC1は、次回の切替(パスライン部P1からパスライン部P2への切替)の際に、鋼帯を牽引するために用いられる。一方、前回の切替(図3(I)〜(VI)の切替)の際に、新規使用のパスライン部P1内に残留させておいたロープ部分RC2の一端を、先行鋼帯Saの尾端xに連結するとともに、当該ロープ部分RC2の他端をロープ巻取装置1が保持するロープRの先端に接続する。
【0026】
次いで、図4(IV),(V)に示すように、ロープ巻取装置1によりロープR(上記のようにロープRに接続されたロープ部分RC2を含む。)を巻き取ることにより、先行鋼帯Saを牽引して新規使用のパスライン部P1内に引き込み、先行鋼帯Saの尾端xをパスライン部P1,P2の分岐部eよりもライン上流側に位置させる。次いで、先行鋼帯Saの尾端xとロープRとの連結を解除した後、図5(B)に示すように先行鋼帯Saの尾端xの加工箇所を切断除去する。
次いで、通板ロール4やピンチロール6A,6Bにより先行鋼帯Saと後行鋼帯Sbとを適宜正寸動・逆寸動させることにより、先行鋼帯Saの尾端xと後行鋼帯Sbの先端yとを溶接機3に位置合わせし、図4(VI)に示すように両端部を溶接(通常、両端部のラップ部のスポット溶接)により接合wし、パスライン部P1,P2の切替を完了する。
【0027】
なお、以上述べた実施形態の連続ラインは、パスライン部P1が鋼帯用の処理設備を有するパスライン部であり、パスライン部P2が前記処理設備をバイパスするためのパスライン部であるが、パスライン部P1,P2がそれぞれ鋼帯の処理設備を有するパスライン部であるような連続ラインであってもよい。
本発明のパスラインの切替方法は、金属帯用のあらゆる種類の連続ラインに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を鋼帯の連続処理ラインにおけるパスライン切替に適用した場合の一実施形態を示すもので、鋼帯が通板するパスライン部をパスライン部P1からパスライン部P2に切り替える工程を順に示した説明図
【図2】本発明を鋼帯の連続焼鈍ラインにおけるパスライン切替に適用した場合の一実施形態を示すもので、パスライン部P1,P2とその上流側及び下流側パスラインの一部の設備構成を示す説明図
【図3】図2の実施形態において、鋼帯Sが通板するパスライン部をパスライン部P1からパスライン部P2に切り替える工程を順に示した説明図
【図4】図2の実施形態において、鋼帯Sが通板するパスライン部をパスライン部P2からパスライン部P1に切り替える工程を順に示した説明図
【図5】図3及び図4の工程において、先行鋼帯Saの尾端の加工形態を示す説明図
【符号の説明】
【0029】
1 ロープ巻取装置
2 処理設備
3 溶接機
4 通板ロール
5 ロープガイド
6A,6B ピンチロール
7 鋼帯クランプ装置
20 酸洗設備
20a 酸洗タンク
20b リンスタンク
20c ドライヤー
P1,P2パスライン部
e 分岐部
f 合流部
S 鋼帯
Sa 先行鋼帯
Sb 後行鋼帯
x 尾端
y 先端
w 接合部
R ロープ
C1,RC2 ロープ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン内に、切替により金属帯(S)を選択的に通板させる2つのパスライン部(P1),(P2)を有する金属帯の連続ラインにおいて、金属帯(S)が通板するパスライン部(P1),(P2)を切り替えるための方法であって、
金属帯牽引用のロープ(R)を保持し、該ロープ(R)の繰り出し・巻き取りが可能なロープ巻取装置(1)を設置し、下記[イ]〜[ニ]の工程でパスライン部(P1),(P2)の切替を行うことを特徴とする、金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法(但し、切替により金属帯が通板しなくなるパスライン部を「旧使用のパスライン部」、切替により金属帯が通板することになるパスライン部を「新規使用のパスライン部」という。)。
[イ] 停止状態の金属帯(S)を、パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側の位置で切断し、先行金属帯(Sa)と後行金属帯(Sb)とに分離する。
[ロ] 先行金属帯(Sa)を移動させて旧使用のパスライン部(P1)又は(P2)を通過させ、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の合流部(f)近傍に位置させる。
[ハ] パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側の位置からパスライン内に導入され、新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に通されたロープ(R)の先端を先行金属帯(Sa)の尾端に連結した後、該ロープ(R)をロープ巻取装置(1)で巻き取ることにより、先行金属帯(Sa)を牽引して新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に引き込み、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側に位置させる。
[ニ] 先行金属帯(Sa)の尾端とロープ(R)との連結を解除した後、先行金属帯(Sa)の尾端と後行金属帯(Sb)の先端とを溶接により接合し、パスライン部(P1),(P2)の切替を完了する。
【請求項2】
下記[i]〜[vi]の工程でパスライン部(P1),(P2)の切替を行うことを特徴とする、請求項1に記載の金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法。
[i] 停止状態の金属帯(S)を、パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりも上流側の位置で切断し、先行金属帯(Sa)と後行金属帯(Sb)とに分離した後、ロープ巻取装置(1)が保持するロープ(R)の先端を先行金属帯(Sa)の尾端に連結する。
[ii] 先行金属帯(Sa)を移動させ、その尾端に連結されたロープ(R)を牽引しつつ、旧使用のパスライン部(P1)又は(P2)を通過させ、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の合流部(f)近傍に位置させる。
[iii] 先行金属帯(Sa)の尾端とロープ(R)との連結を解除するとともに、パスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)近傍の位置でロープ(R)を分断することにより、旧使用のパスライン部(P1)又は(P2)内にロープ部分(RC1)を残留させる。
[iv] 前回の切替の際に、新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に残留させておいたロープ部分(RC2)の一端を、先行金属帯(Sa)の尾端に連結するとともに、ロープ部分(RC2)の他端をロープ巻取装置(1)が保持するロープ(R)の先端に接続する。
[v] ロープ巻取装置(1)によりロープ(R)(但し、工程(iv)においてロープ(R)に接続されたロープ部分(RC2)を含む。)を巻き取ることにより、先行金属帯(Sa)を牽引して新規使用のパスライン部(P1)又は(P2)内に引き込み、先行金属帯(Sa)の尾端をパスライン部(P1),(P2)の分岐部(e)よりもライン上流側に位置させる。
[vi] 先行金属帯(Sa)の尾端とロープ(R)との連結を解除した後、先行金属帯(Sa)の尾端と後行金属帯(Sb)の先端とを溶接により接合し、パスライン部(P1),(P2)の切替を完了する。
【請求項3】
パスライン部(P1)が金属帯用の処理設備を有するパスライン部であり、パスライン部(P2)が前記処理設備をバイパスするためのパスライン部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法。
【請求項4】
パスライン部(P1),(P2)がそれぞれ金属帯の処理設備を有するパスライン部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属帯の連続ラインにおけるパスラインの切替方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−178900(P2008−178900A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15680(P2007−15680)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】