説明

金属帯コイル載置用スキッドおよびそのスキッドを備えた搬送台車

【課題】金属帯コイルを、金属帯コイル載置用スキッドおよびスキッドを備えた搬送台車に載置する際に生じる、いわゆる金属帯コイルの押疵や巻ズレを効果的に抑制する、金属帯コイル載置用スキッドおよび搬送台車を提供する。
【解決手段】金属帯コイル搬送台車がV字形状の金属帯コイル載置面を有し、載置面の表面に金属帯コイルの押疵防止層を具え、かつその上面に、短冊形状になる金属帯コイルの巻ズレ防止層を具えるスキッドおよびそのスキッドを備えた搬送台車とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼所等の金属帯を製造する場所内において用いられる、金属帯コイルを載置するスキッドおよびスキッド付きの搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼所等の金属帯を製造する工場では、熱間圧延や冷間圧延等が終わった帯状の鋼板等の金属帯をコイル状に巻きとり、載置している。また、次工程に向けてコイルの状態で工場内を運搬することが必要になる。その時の金属帯コイルの重量は10トン以上にもなるため、専用の搬送台車を必要とする。
【0003】
通常、金属帯コイルの搬送台車は、台車上に金属帯コイルの載置面、いわゆるスキッド(台座)面があり、台車と一体型で出来ている。このようなスキッドは、通常、V型の台座となっており、スキッドの表面には、例えば、特許文献1に示されるように、繊維強化合成樹脂の板材や、木材、ゴム材等の保護材が貼付され、コイル外周に疵がつかないように保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58-170111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなスキッドでは、金属帯コイルを載置する際に、金属帯コイルがスキッドの切れ目(図1および2のAの部分)に当たり、金属帯コイルの重みが加わることで、いわゆる押疵欠陥が発生してしまうことが多い。また、金属帯コイルを載置する際、金属帯コイルを持ち上げているクレーンのゆれによって、金属帯コイルに巻ズレによる疵(図3のBの部分)が生じてしまうといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、金属帯コイルを載置する際に生じる、押疵や巻ズレを効果的に防止する金属帯コイル載置用スキッドおよびスキッド付き搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.金属帯コイルを載置するスキッドであって、
前記スキッドがV字形状の金属帯コイル載置面を有し、該載置面の表面に金属帯コイルの押疵防止層を具え、かつその上面に、短冊形状になる金属帯コイルの巻ズレ防止層を具えることを特徴とする金属帯コイル載置用スキッド。
【0008】
2.前記押疵防止層がフェルトであることを特徴とする前記1に記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【0009】
3.前記巻ズレ防止層がゴムであることを特徴とする前記1または2に記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【0010】
4.前記V字形状の金属帯コイル載置面の両側に、前記巻ズレ防止層の可動範囲を限定するストッパーを具えることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【0011】
5.前記押疵防止層と前記巻ズレ防止層を一体化し、2層の短冊形状としたことを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【0012】
6.前記1〜5のいずれかに記載の金属帯コイル載置用スキッドを備えた搬送台車。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属帯コイルをスキッドに載置する際に生じる、いわゆる押疵や巻ズレを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の搬送台車のスキッド面(コイル載置面)を示す図である。
【図2】従来のスキッド付き搬送台車を正面から見た図である。
【図3】金属帯コイルの巻ズレに伴う傷を示す図である。
【図4】本発明に従う搬送台車のスキッド面(コイル載置面)を示す図である。
【図5】本発明に従うストッパー部を示す図である。
【図6】本発明に従う金属帯コイルの搬送台車を正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、金属帯コイルを載置するスキッドおよびスキッド付きの搬送台車であって、このスキッドがV字形状の金属帯コイル載置面を有し、この載置面の表面に金属帯コイルの押疵防止層を具えると共に、その上面には、短冊形状になる金属帯コイルの巻ズレ防止層を具えていることが特徴である。
【0016】
図4〜6に、本発明に従う金属帯コイルのスキッド付き搬送台車を示す。ここで、図4は、搬送台車のスキッド面部のイメージ図である。図5は、本発明に従うストッパー部の拡大図である。また、図6は、本発明に従う金属帯コイルのスキッド付き搬送台車を正面から見た図である。なお、図中、1はV字形状の金属帯コイル載置面、2は巻ズレ防止層、3は押疵防止層である。
本発明では、スキッドがV字形状の金属帯コイル載置面1を有している。この載置面は、従来から金属帯コイル載置用スキッドおよびスキッドを備えた搬送台車に備えられているもので、図2または6に示したように、緩やかなV字の断面形状を有している。
【0017】
従来のスキッド付き搬送台車に金属帯コイルを載置する場合、金属帯コイルがスキッドの切れ目(図1および2のAの部分)に当たり、さらに金属帯コイルの自重により押圧が掛かるため、金属帯コイルに疵、すなわち押疵が発生してしまう。その際、本発明のように、載置面1の表面に金属帯コイルの押疵防止層3を具えると、スキッドの切れ目が無くなると共に、金属帯コイルの自重による押圧を緩和し、上記した押疵の発生を効果的に防止することができるのである。
【0018】
ここに、上記の押疵防止層を構成する材料は、以下に述べる巻ズレ防止層やスキッド表面と滑り摩擦が生じること、並びに金属帯コイルをスキッドに載置する際の衝撃を吸収できることの2つの性質を有していれば、特段の限定はないが、プレスフェルトや、羊毛ニードルフェルトなどの天然素材系フェルト、またナイロン糸コーネック、ポリエステル、レーヨン、耐熱性カーボンファイバーポリプロピレン等合成繊維系のフェルトなどが好適である。
【0019】
また、前述したように、金属帯コイルを載置する際に、金属帯コイルを持ち上げているクレーンのゆれは、いわば不可避的に発生してしまう。このクレーンのゆれが発生すると、金属帯コイルに巻ズレによる疵(図3のBの部分)が生じてしまう。しかしながら、本発明は、上記押疵防止層3の上面に、短冊形状になる金属帯コイルの巻ズレ防止層2を具えているため、金属帯コイルと巻ズレ防止層が接触した際の衝撃を、巻ズレ防止層がズレる(移動する)ことによって、上記クレーンのゆれの衝撃を効果的に吸収し、巻ズレによる疵を防止しているのである。
【0020】
ここに、上記巻ズレ防止層2は、図4に示したような細長い短冊形状であることに特徴がある。かかる形状とすることにより、上記クレーンのゆれが発生する中で、金属帯コイルを載置する際にあっても、金属帯コイルに接触した巻ズレ防止層は、図4中の矢印方向に、押疵防止層上をスムーズに移動できるため、金属帯コイルのクレーンのゆれにより発生する衝撃を効果的に吸収して、巻ズレによる疵を防止することができるのである。
【0021】
また、上記の巻ズレ防止層を構成する材料は、金属帯コイルをグリップすることができ、クレーンのゆれが発生した場合に、接触した金属帯コイルと共に動くことができる材質であれば、特段の限定はないが、天然ゴム材やポリブタジエン系、ニトリル系およびクロロプレン系などの合成ゴム材が、金属帯コイルとの摩擦係数が大きくて特に好ましい。
【0022】
本発明において、短冊形状とは、図4に示したように、細長い形状をしていることを意味するが、上記巻ズレ防止層の長さ(図6の矢印方向)は、スキッドの大きさ(幅)で決められる。
一方、上記巻ズレ防止層の幅方向の長さ(スキッド表面上であって、図6の矢印に垂直な方向)は、例えば、100〜300mm程度の長さとし、1〜6本程度具えることが、効果的に金属帯コイルをグリップし、さらにクレーンのゆれにより発生する衝撃を吸収することができるために望ましく、2〜6本とすることがさらに好ましい。
または、コイルの幅に対して、10〜80%程度の幅のものを、それぞれの幅に応じて1〜6本程度具えるのが好ましく、2〜6本がさらに好ましい。
1本よりも2本以上が好ましい理由は、コイルを載置したときの位置のずれを吸収しやすいからである。6本超でも問題はないが、効果が飽和するので、6本以下が好ましい。
【0023】
図5に、本発明に従う巻ズレ防止層のストッパーを示す。
本発明では、V字形状の金属帯コイル載置面の両側に、前記巻ズレ防止層の可動範囲を限定するストッパーを具えることが、巻ズレ防止層の安定的な移動に対して効果がある。
【0024】
図6に示したように、巻ズレ防止層は、ストッパー内を移動することができる(図6の矢印方向)。そのため、前述したように、クレーンのゆれの衝撃は、巻ズレ防止層が動くことにより効果的に吸収されるが、上記のストッパーにより、巻ズレ防止層は、その可動範囲が限定されるため、位置調整が必要なほどズレることがない。また、上記のストッパーにより、図6の手前または奥行き方向へのズレが抑えられる。さらに、繰返し使用される状況下では、上記のストッパーを用いることで、巻ズレ防止層を、仕様都度、適正な位置に戻して使用することができる。
【0025】
ここに、上記移動可能な範囲は、50〜150mm程度(図6の矢印方向)とすることが好ましい。というのは、150mmを超えると、巻ズレ防止層のズレ幅が大きくなるため、巻ズレ防止の効果が減ってしまう。一方、50mmに満たないと、充分な移動距離が確保できないため、かえって巻ズレ防止層による擦り疵が発生してしまうおそれがある。
【0026】
本発明では、上記した押疵防止層3と巻ズレ防止層2を一体化し、2層の短冊形状として用いることもできる。
この場合は、スキッド面と押疵防止層3がズレることになるため、この両者の摩擦係数を考慮して、スキッド面上にプラスチック板等を貼ることも好ましい。
なお、押疵防止層と巻ズレ防止層の一体化に伴い、上記巻ズレ防止層のストッパーは、巻ズレ防止層と共に、押疵防止層もその可動範囲を限定する役目を果たすことになる。
【実施例1】
【0027】
図1〜2に示したスキッド付き搬送台車を比較例とし、図4〜6に示したスキッド付き搬送台車を発明例として、直径:1.46m、長さ:1.85m、質量:2トンの金属帯コイルをそれぞれの台車に載置した。
金属帯コイルを載置するたびに、図1のA部および図3のB部の箇所について、疵の有無を目視によって確認した。
【0028】
その結果、発明例では、金属帯コイルをスキッド付き搬送台車に400回載置しても、押疵および巻ズレからの疵は認められなかった。
一方、比較例では、350回の載置で、A部に押し疵が発生し、180回の載置で、B部に巻ズレからの疵が認められた。
【符号の説明】
【0029】
1 V字形状の金属帯コイル載置面
2 巻ズレ防止層
3 押疵防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯コイルを載置するスキッドであって、
前記スキッドがV字形状の金属帯コイル載置面を有し、該載置面の表面に金属帯コイルの押疵防止層を具え、かつその上面に、短冊形状になる金属帯コイルの巻ズレ防止層を具えることを特徴とする金属帯コイル載置用スキッド。
【請求項2】
前記押疵防止層がフェルトであることを特徴とする請求項1に記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【請求項3】
前記巻ズレ防止層がゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【請求項4】
前記V字形状の金属帯コイル載置面の両側に、前記巻ズレ防止層の可動範囲を限定するストッパーを具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【請求項5】
前記押疵防止層と前記巻ズレ防止層を一体化し、2層の短冊形状としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属帯コイル載置用スキッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の金属帯コイル載置用スキッドを備えた搬送台車。

【図2】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111620(P2013−111620A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261037(P2011−261037)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】