説明

金属微粒子を含有する分散液及び金属薄膜

【課題】常温における安定性に優れ、銀を主金属とする薄膜を簡便に製造可能な金属微粒子分散液を提供する。
【解決手段】アミン類及びC1-4脂肪族カルボン酸で構成された保護コロイド被覆された銀微粒子と、保護コロイドで被覆され、かつ酸化処理された銅微粒子とを有機溶媒中に分散させる。前記銀微粒子を被覆する保護コロイドはC1-10脂肪族アミン及びC1-3脂肪族カルボン酸で構成され、かつ銅微粒子を被覆する保護コロイドはC1-10脂肪族アミン及びC1-20脂肪族カルボン酸で構成されていてもよい。前記銀微粒子及び銅微粒子は、いずれもナノ粒子であってもよい。銀微粒子と銅微粒子との割合(重量比)は、金属換算で、銀微粒子/銅微粒子=90/10〜99.95/0.05程度である。前記分散液を基板上に塗布し、200℃以下の温度で焼成すると、金属薄膜を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀微粒子を主要な金属微粒子として含有する分散液並びにこの分散液を用いた金属薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電極、回路、電界シールドなどに用いられる導電性膜や、平滑で光沢性が必要とされる光学部品用又は装飾用膜として、金属薄膜、特に銀薄膜が幅広く利用されている。銀薄膜の製造方法のうち、簡便な方法として、ペースト塗布法が知られている。ペースト法では、銀薄膜を強固に基板に密着させるために、高い温度で焼成する必要がある。
【0003】
例えば、特開2005−100980号公報(特許文献1)には、銀微粒子が分散したペースト又は銅−銀合金微粒子が分散したペーストを基板上に塗布して銀薄膜(又は銅−銀合金薄膜)を作製する方法において、保護剤を添加した銀微粒子(又は銀微粒子及び銅微粒子)を還元剤で還元したペーストを基板に塗布し、250℃〜300℃の比較的低温で焼成することにより、基板に対する優れた密着性及び表面平滑性を有する銀薄膜の製造方法が提案されている。
【0004】
しかし、この製造方法では、250℃以上の焼成温度を必要とするため、生産性が低下し、例えば、200℃以下の焼成温度が要求される樹脂基板に対して密着性の優れた銀薄膜は得られない。
【特許文献1】特開2005−100980号公報(請求項1、段落[0024]、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、常温(室温)における安定性に優れ、銀を主たる金属成分とする金属薄膜を簡便に製造可能な金属微粒子分散液、並びにこの分散液を用いた金属薄膜及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、200℃以下の低温で焼成しても、光沢及び表面平滑性に優れ、かつ基板に対して強固に密着した金属薄膜を形成可能な金属微粒子分散液、並びにこの分散液を用いた金属薄膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、アミン類と低級脂肪族カルボン酸とを組み合わせた第1の保護コロイドで被覆された銀微粒子に、第2の保護コロイドで被覆され、かつ酸化処理された銅微粒子を配合し、有機溶媒に分散させることにより、常温における安定性に優れる金属微粒子分散液を調製でき、銀を主たる金属成分とする薄膜を簡便に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の分散液は、アミン類及び炭素数1〜4の脂肪族カルボン酸で構成された第1の保護コロイドで被覆された銀微粒子と、第2の保護コロイドで被覆された銅微粒子とが有機溶媒中に分散した分散液であって、前記銅微粒子が酸化処理されている。前記第1の保護コロイドは、炭素数1〜10の脂肪族アミン及び炭素数1〜3の脂肪族カルボン酸で構成され、かつ前記第2の保護コロイドは、炭素数1〜10の脂肪族アミン及び炭素数1〜20の脂肪族カルボン酸で構成されていてもよい。前記銀微粒子及び銅微粒子は、いずれもナノ粒子であってもよい。銀微粒子と銅微粒子との割合(重量比)は、金属換算で、銀微粒子/銅微粒子=90/10〜99.95/0.05程度である。
【0009】
本発明には、前記分散液を基板上に塗布する塗布工程と、基板上に塗布した分散液を焼成する焼成工程とを含む金属薄膜の製造方法も含まれる。前記焼成工程において、200℃以下の温度で焼成してもよい。前記基板は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂基板であってもよい。
【0010】
本発明には、前記製造方法で得られる金属薄膜も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、特定の第1の保護コロイドで被覆された銀微粒子に、第2の保護コロイドで被覆され、かつ酸化処理された銅微粒子を配合し、有機溶媒に分散させることにより、常温における安定性に優れた金属微粒子分散液を調製でき、この分散液を用いると、銀を主金属とする薄膜を簡便に製造できる。さらに、この分散液を用いると、200℃以下の低温で焼成しても、光沢及び表面平滑性に優れ、かつ基板に対して強固に密着した金属薄膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の分散液は、特定の第1の保護コロイドで被覆された銀微粒子と、第2の保護コロイドで被覆され、かつ酸化処理された銅微粒子とが有機溶媒中に分散している。
【0013】
[銀微粒子]
銀微粒子の平均粒子径(平均一次粒子径、保護コロイドは含まない粒子径)は、特に制限されず、0.001〜1μm程度の範囲から選択でき、通常、500nm以下(例えば、1〜300nm)である。銀微粒子はナノメータサイズであるのが好ましく、このような銀微粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、通常、250nm以下(例えば、1〜200nm)、好ましくは100nm以下(例えば、2〜80nm)、さらに好ましくは3〜50nm(例えば、4〜30nm)程度である。ナノメータサイズの銀微粒子の平均粒子径は、例えば、2〜20nm(例えば、3〜10nm)程度であってもよい。
【0014】
保護コロイドは、銀微粒子に作用して有機溶媒中で分散安定化させる成分、例えば、銀微粒子に対して物理的又は化学的に親和性を有するか又は結合(水素結合、イオン結合、配位結合などの化学結合など)して安定化させる成分であればよい。銀微粒子の有機溶媒中での分散安定性を高めるためには、保護コロイドが銀微粒子の表面に配位して結合するのが好ましい。そのため、好ましい保護コロイドは銀微粒子に配位する親和性化合物又は配位性化合物ということもできる。
【0015】
保護コロイドは、通常、無機微粒子(無機微粒子の金属原子)に配位可能な官能基(又は金属原子に対する親和性基)を有している。このような配位性官能基(又は配位子)としては、ハロゲン原子を有する基などであってもよいが、通常、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子など)、代表的には、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する基(官能基)である場合が多い。配位性官能基は、同種又は異種の複数のヘテロ原子を有していてもよい。配位性官能基は塩(ナトリウム塩などのアルカリ金属塩など)を形成していてもよい。
【0016】
なお、本明細書において、「配位可能」「配位性」とは、金属に対して電子供与可能であることを意味し、必ずしも実際に金属原子に配位しなくてもよい。そのため、「配位性化合物」は、電子供与可能な(又は電子供与可能な基を有する)化合物であればよく、金属に対して配位していなくてもよい。
【0017】
具体的な配位性官能基としては、窒素原子を有する基[アミノ基、置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、イミノ基(−NH−)、アミド基(−CON<)、シアノ基、ニトロ基、窒素環基(ピリジル基などの5〜8員窒素環基、カルバゾール基、モルホリニル基など)など]、酸素原子を有する基[ヒドロキシル基、エーテル基、カルボキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基)、ホルミル基、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、酸素環基(テトラヒドロピラニル基などの5〜8員酸素環基など)など]、硫黄原子を有する基[例えば、チオ基(−S−)、チオール基(−SH)、チオカルボニル基(−SO−)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1-4アルキルチオ基など)、スルホ基、スルファモイル基、スルフィニル基(−SO2−)など]、これらの塩を形成した基などが例示できる。
【0018】
このような配位性官能基を有する保護コロイド(配位性化合物)のうち、銀微粒子を被覆する第1の保護コロイドとしては、アミン類及び炭素数1〜4の脂肪族カルボン酸の組み合わせが使用される。
【0019】
アミン類には、モノアミン類、ポリアミン類、アミノカルボン酸類(グリシンなど)などが含まれる。モノアミン類としては、例えば、第1級アミン類[例えば、モノアルキルアミン類(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン(n−オクチルアミン、2−エチルへキシルアミンなど)、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ラウリルアミン(ドデシルアミン)、トリデシルアミン、ミリスチルアミン(テトラデシルアミン)、ペンタデシルアミン、パルミチルアミン(セチルアミン)、ステアリルアミン(オクタデシルアミン)、オレイルアミンなどのC1-20アルキルアミンなど)、シクロアルキルアミン類(例えば、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどのC4-10シクロアルキルアミン)、アリールアミン類(例えば、アニリン、トルイジン、アミノナフタレンなどのC6-10アリールアミン)、アラルキルアミン類(ベンジルアミンなど)、ヒドロキシルアミン類(例えば、エタノールアミンなどのアルカノールアミン類)など]、第2級アミン類[例えば、ジアルキルアミン類(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミンなどのジC1-20アルキルアミンなど)、ジシクロアルキルアミン類(例えば、ジシクロヘキシルアミンなどのジC4-10シクロアルキルアミン)、ジアリールアミン類(例えば、ジフェニルアミンなどのジC6-10アリールアミン)、ジアラルキルアミン類(ジベンジルアミンなど)、アルキルシクロアルキルアミン類(メチルシクロヘキシルアミンなど)、アルキルアリールアミン類(N−メチルアニリンなど)、複素環式アミン(例えば、ピロール、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、モルホリンなどの5〜8員環状第2級アミンなど)、ヒドロキシルアミン類(例えば、ジエタノールアミンなどのジアルカノールアミン類)など]、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミンなどのトリC1-20アルキルアミンなど;ジメチルデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミンなどのジC1-2アルキルC6-20アルキルアミンなど)、トリシクロアルキルアミン類(トリシクロへキシルアミンなど)、トリアリールアミン類(トリフェニルアミンなど)、トリアラルキルアミン類(トリベンジルアミンなど)、ジシクロアルキルアルキルアミン類(ジシクロヘキシルメチルアミンなど)、シクロアルキルジアルキルアミン類(シクロヘキシルジメチルアミンなど)、アリールジアルキルアミン類(N,N−ジメチルアニリンなど)、複素環式アミン(例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、N−フェニルモルホリンなどの5〜8員環状第3級アミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−1など)、ヒドロキシルアミン類(例えば、トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン類)など]などが挙げられる。
【0020】
ポリアミン類としては、前記モノアミン類に対応するポリアミン類、例えば、鎖状ポリアミン類{例えば、アルカンジアミン類(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2-20アルカンジアミン)などのジアミン類;ポリアルキレンポリアミン類(又はポリアルキレンイミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミンなどのポリC2-4アルキレンポリアミン)などの第1級ポリアミン類}、環状ポリアミン類[例えば、環状第2級ポリアミン(例えば、ピペラジン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、トリエチレンジアミンなど)、環状第3級ポリアミン(ピリミジンなど)など]などが挙げられる。
【0021】
これらのアミン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアミン類のうち、アルキルアミンなどの脂肪族アミン、特に、オクチルアミンなどのC1-10アルキルアミンが好ましい。
【0022】
炭素数1〜4の脂肪族カルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸などの飽和脂肪族カルボン酸、クロトン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸などが挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの脂肪族カルボン酸のうち、C1-4飽和脂肪族カルボン酸、特に、プロピオン酸などのC1-3飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。このような低級脂肪族カルボン酸を用いることにより、低温で焼成しても金属薄膜の基板に対する密着性を向上できるため、焼成温度を低下できる。
【0023】
1-4脂肪族カルボン酸の割合は、前記アミン類100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは20〜70重量部程度である。本発明では、このような低級脂肪族カルボン酸と前記アミン類とを組み合わせて第1の保護コロイドとして用いることにより、金属薄膜の製造における焼成温度の低下と、分散液の安定性とのバランスを向上できる。
【0024】
第1の保護コロイドには、他の保護コロイドが含まれていてもよい。他の保護コロイドは、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物であってもよい。他の保護コロイドとしては、例えば、窒素原子含有有機化合物{例えば、アミド類[例えば、アルカン酸アミド(アセトアミドなど)、N−置換アルカン酸アミド、ラクタム類など]、ニトロ化合物、ニトリル類(カプロニトリル、ラウロニトリルなどのC6-22脂肪族ニトリルなど)など}、酸素原子含有有機化合物{例えば、アルコール類[例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC6-20アルカンモノオール)、シクロアルカノール類(シクロヘキサノールなど)、アルカンジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ポリアルキレングリコール類(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、アラルキルアルコール類、多価アルコール類など]、エーテル類(セロソルブ類、カルビトール類など)、カルボン酸類[例えば、ペンタン酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸などのC5-30飽和脂肪族カルボン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸などのC5-24不飽和脂肪族カルボン酸など]、ケトン類[例えば、アルカノン類、シクロアルカノン類、ジケトン類(アセチルアセトンなどのβ−ジケトン類)など]、エステル類(例えば、脂肪酸エステル類、グリコールエーテルエステル類など)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒド、ステアリルアルデヒドなどのC6-20脂肪族アルデヒド)など}、硫黄原子含有有機化合物[例えば、チオール類(例えば、ヘキサンチオール、オクタンチオールなどのアルカンチオールなど)、スルホキシド類、スルホン酸類(例えば、アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)など]などが挙げられる。
【0025】
これら他の保護コロイドは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の保護コロイドは、前記必須の保護コロイドの効果を損なわない範囲、例えば、全保護コロイドに対して50重量%以下(例えば、0.01〜50重量%)、好ましくは30重量%以下(例えば、0.1〜30重量%)、さらに好ましくは10重量%以下(1〜10重量%)程度である。
【0026】
第1の保護コロイドの割合(合計量)は、銀微粒子100重量部に対して、例えば、30〜500重量部(例えば、50〜400重量部)、好ましくは75〜350重量部(例えば、100〜300重量部)、さらに好ましくは150〜250重量部程度であってもよい。
【0027】
[銅微粒子]
銅微粒子の平均粒子径(保護コロイドを含まない粒子径)も特に制限されず、前記銀微粒子の平均粒子径と同様であり、ナノメータサイズであるのが好ましい。本発明では、前記銀微粒子に銅微粒子を組み合わせることにより、分散液の安定性を向上できるとともに、分散液を焼成して得られる金属薄膜の光沢及び表面平滑性を向上でき、得られた金属薄膜の基板に対する密着性も向上できる。
【0028】
本発明では、銅微粒子は酸化処理されており、例えば、銅微粒子の一部(特に全表面を含む大部分)が酸化されていてもよく、微粒子全体が酸化(酸化銅で構成)されていてもよい。銅微粒子を酸化処理すると、分散液中での銀微粒子の析出や沈殿を抑制でき、分散安定性(室温での安定性)を向上できる。銅微粒子は、予め酸化処理された銅(酸化銅)を用いて製造してもよいが、ナノ粒子の生産性などの点から、得られた銅微粒子を酸化処理するのが好ましい。銅微粒子の酸化処理としては、例えば、銅微粒子(ナノ粒子)を調製した後に、保護コロイドで被覆された状態の銅微粒子を常温(例えば、10〜40℃、好ましくは15〜35℃程度)で空気中に放置する方法などが好ましく利用できる。空気中における放置時間は、通常、1分間以上は必要であり、銅微粒子を充分に酸化するためには、例えば、30分間以上(例えば、30分間〜72時間)、好ましくは1時間以上(例えば、1〜48時間)、さらに好ましくは3時間以上(例えば、3〜36時間)、特に5時間以上(例えば、5〜24時間)程度である。
【0029】
銅微粒子を被覆する第2の保護コロイドは、特に限定されず、前記銀微粒子の項で例示された全ての保護コロイドが使用可能である。前記保護コロイドのうち、アミン類とカルボン酸類との組み合わせが好ましい。アミン類のうち、アルキルアミンなどの脂肪族アミン、特に、オクチルアミンなどのC1-10アルキルアミンが好ましい。カルボン酸類のうち、C1-20脂肪族カルボン酸、特に、分散液の室温における安定性の点から、ラウリン酸などのC5-20飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸(例えば、リノール酸などのC10-20不飽和脂肪族カルボン酸)が好ましい。
【0030】
脂肪族カルボン酸の割合は、アミン類100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは20〜70重量部程度である。
【0031】
銅微粒子を被覆する第2の保護コロイドにも、前記アミン類及び脂肪族カルボン酸以外の他の保護コロイドが含まれていてもよく、その割合は、前記銀微粒子と同様である。
【0032】
第2の保護コロイドの割合(合計量)は、銅微粒子100重量部に対して、例えば、30〜500重量部(例えば、50〜400重量部)、好ましくは75〜350重量部(例えば、100〜300重量部)、さらに好ましくは150〜250重量部程度であってもよい。
【0033】
銀微粒子と銅微粒子との割合(重量比)は、金属換算で、銀微粒子/銅微粒子=50/50〜99.99/0.01程度の範囲から選択でき、例えば、90/10〜99.95/0.05、好ましくは92/8〜99.9/0.1、さらに好ましくは93/7〜99/1程度である。銀微粒子と銅微粒子とをこのような割合で組み合わせると、室温での分散液の安定性を向上でき、焼成して得られる金属薄膜の金属光沢及び表面平滑性を向上できる。
【0034】
さらに、本発明では、銅微粒子の他に、銀微粒子及び銅微粒子の効果を損なわない範囲で、他の金属微粒子、例えば、遷移金属(例えば、周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;周期表第7A族金属;鉄、コバルト、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属、周期表第3B族金属(例えば、インジウム、アルミニウム、ガリウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属などから選択された金属微粒子を含んでいてもよい。これら他の金属微粒子も、単体の他、合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などであってもよい。これら他の金属粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の金属微粒子の割合は、例えば、金属微粒子全体に対して、例えば、1重量%以下(例えば、0.001〜1重量%)、好ましくは0.1重量%以下(例えば、0.005〜0.1重量%)であってもよい。
【0035】
[銀微粒子及び銅微粒子の製造方法]
銀微粒子及び銅微粒子は、慣用の方法で製造できる。例えば、銀又は銅微粒子に対応する金属化合物を、保護コロイドの存在下、有機溶媒中で還元することにより調製できる。銀微粒子と銅微粒子の保護コロイド(第1及び第2の保護コロイド)が同じ場合は、両微粒子を同時に調製してもよいが、異なる場合は、別々に調製する。
【0036】
銀又は銅微粒子に対応する金属化合物は、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などであってもよい。なお、金属塩の形態は、単塩、複塩又は錯塩のいずれであってもよく、多量体(例えば、2量体)などであってもよい。これらの金属化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属化合物のうち、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]を使用する場合が多い。
【0037】
還元剤としては、慣用の成分、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウムなど)、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ボラン類(ジボラン、ジメチルアミンボランなど)、ヒドラジン、ホルマリンなどが例示できる。これらの還元剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
還元剤の使用量は、金属原子換算で前記金属化合物(銀化合物又は銅化合物)1当量(又は1モル)に対して、0.8〜5モル(例えば、0.9〜4モル)、好ましくは1〜3.5モル(例えば、1.1〜3モル)、さらに好ましくは1.2〜2.5モル程度であってもよい。
【0039】
還元反応は、分散安定剤、例えば、脂肪族カルボン酸[ペンタン酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸などのC6-20飽和脂肪族カルボン酸、リンデル酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸などのC8-24不飽和脂肪族カルボン酸(例えば、C10-24高級不飽和カルボン酸)など]の存在下で行ってもよい。
【0040】
還元反応は、慣用の方法、例えば、温度10〜75℃(例えば、15〜50℃、好ましくは20〜35℃)程度で撹拌することにより行うことができる。反応系の雰囲気は、空気、不活性ガス(窒素ガスなど)であってもよく、還元性ガス(水素ガスなど)を含む雰囲気であってもよい。なお、反応溶媒は前記有機溶媒で構成する場合が多く、必要により、前記有機溶媒と水溶性有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジメチルアセトアミドなどのアミド類など)との混合溶媒を用いてもよく、水溶性有機溶媒は反応系に添加される成分、例えば、還元剤などの溶媒に由来してもよい。
【0041】
還元反応の終了後、反応混合液を濃縮し、メンブレンフィルタなどで精製することにより、有機溶媒に対して分散性を有する銀微粒子及び銅微粒子を調製することができる。なお、銅微粒子は、前述のように、空気中に放置して酸化してもよい。
【0042】
[分散液]
前記銀微粒子及び銅微粒子は、有機溶媒に対して高い分散性を有し、かつ室温で保存しても析出や沈殿などを起こさずに、長期間に亘り(例えば、一週間以上放置しても)、高い分散安定性を示す。従って、塗布などの施工性が高く、金属薄膜の生産性を向上できるとともに、金属微粒子を均一に分散できるため、得られた金属薄膜の表面平滑性や金属光沢も向上できる。
【0043】
有機溶媒は、通常、非水溶性溶媒(又は疎水性溶媒)である場合が多く、例えば、炭化水素類(ヘキサン、トリメチルペンタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなど)などが例示できる。これらの有機溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、炭化水素類、特に、トルエンやベンゼンなどの芳香族炭化水素類が汎用される。
【0044】
本発明では、銀微粒子及び銅微粒子で構成された金属微粒子は、有機溶媒に対して高い分散性を示すため、有機溶媒中の金属微粒子(銀微粒子及び銅微粒子の合計量)の濃度は、特に制限されず、例えば、金属換算で、1〜50重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜15重量%)程度であってもよい。
【0045】
本発明の分散液には、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、界面活性剤又は分散剤、分散安定化剤、増粘剤又は粘度調整剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、消泡剤、光沢付与剤、金属腐食防止剤、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、殺菌剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
本発明の分散液は、前記製造方法で得られた銀微粒子及び銅微粒子を、有機溶媒中で混合して分散させることにより調製できる。
【0047】
本発明の分散液において、金属微粒子の構造は断定できないものの、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した金属微粒子の金属部分の平均粒子径は、動的光散乱粒径測定(DLS)により測定した金属微粒子全体(保護コロイドを含む)の平均粒子径よりも小さい。従って、金属微粒子がコアを形成し、保護コロイドが金属微粒子の表面を被覆するか又は表面に配向しているようである。
【0048】
[金属薄膜及びその製造方法]
本発明では、前記分散液を基板上に塗布する塗布工程と、基板上に塗布した分散液を焼成する焼成工程とを経て金属薄膜が得られる。
【0049】
塗布工程において、塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法、フォトリソグラフィ法、インクジェット記録方式やペン方式による描画装置などを挙げることができる。これらの塗布方法のうち、導電性膜に適した微細なパターンを簡便に形成できる点から、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法などが好ましい。
【0050】
分散液の塗布厚み(スピンコート直後の厚み)は、例えば、50〜500nm、好ましくは60〜300nm、さらに好ましくは70〜250nm(特に80〜200nm)程度である。
【0051】
基板としては、特に限定されず、無機材料であってもよく、有機材料であってもよい。無機材料としては、例えば、ガラス類(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウムなどが挙げられる。有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性ポリフェニレンオキサイドなど)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど)、ポリアセタール系樹脂(ポリアセタールなど)、セルロース誘導体、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0052】
さらに、後述するように、本発明では、低い焼成温度で基板に金属薄膜を強固に密着できるため、有機材料などの耐熱性の低い基板であっても使用できる。なかでも、汎用性などの点から、樹脂基板、例えば、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリイミド系樹脂(ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂など)などで構成された基板が好ましい。
【0053】
基板の厚みは、用途に応じて、適宜選択すればよく、例えば、0.001〜10mm、好ましくは0.01〜5mm、さらに好ましくは0.05〜3mm(特に0.1〜1mm)程度である。基板はフィルム又はシート状であってもよい。
【0054】
前記焼成工程における焼成温度は、特に限定されず、80〜400℃程度の範囲から選択できるが、本発明では、200℃以下の焼成温度であっても、金属薄膜を基板の上に強固に密着できる。焼成温度は、例えば、80〜200℃、好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜150℃程度であってもよい。従って、耐熱性の低い基板であっても焼成が可能であり、低温での焼成が可能であるため、金属薄膜の生産性も向上できる。焼成雰囲気は、酸素、空気、窒素、不活性ガス(アルゴン、ネオンガスなど)下であってもよく、真空下であってもよく、簡便性などの点から、通常、空気下である。焼成時間は、例えば、1〜240分間、好ましくは5〜180分間、さらに好ましくは10〜120分間程度である。
【0055】
基板上に得られた金属薄膜の厚みは、例えば、50〜500nm、好ましくは50〜300nm、さらに好ましくは50〜200nm程度である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の分散液は、有機溶媒中に金属微粒子が安定に分散しているため、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機及び無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)などの表示装置、シリコン半導体系やグレッツェル式などの太陽電池、タッチパネル式表示装置などの電極、RFIDタグ、電磁波シールド、家庭又は学習用配線キットなどに使用される導電性膜や導電性又は金属光沢性印刷のための塗布液などに利用できる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、実施例における導電膜の導電性の評価方法及び実施例で用いた光沢紙を以下に示す。
【0058】
実施例1
硝酸銀2.5g、保護剤としてオクチルアミン4.9g、プロピオン酸2gをトリメチルペンタン1リットルに加え、攪拌混合し溶解した。この混合溶液に、0.03モル/リットルの水素化ホウ素ナトリウムを含むプロパノール溶液1リットルを1時間かけて滴下し銀を還元した。さらに、3時間攪拌して黒色の液体を得た。得られた黒色の液体をエバポレータによって濃縮した後、これにメタノール2リットルを加えて褐色の沈殿物を生成させた後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。生成した沈殿物をトリメチルペンタンに再分散させ、ろ過した後、乾燥させて、銀ナノ粒子を黒色の固体として得た。動的光散乱粒径測定(DLS)によれば、保護コロイドを含む銀ナノ粒子全体の個数平均粒子径は5nmであった。この固体中の金属濃度は85重量%であった。
【0059】
硝酸銅5.6g、保護剤としてオクチルアミン9.2g、リノール酸2.1gをトリメチルペンタン1リットルに加え、攪拌混合し溶解した。この混合溶液に、0.01モル/リットルの水素化ホウ素ナトリウムを含むプロパノール溶液1リットルを1時間かけて滴下し銅を還元した。さらに、3時間攪拌して黒色の液体を得た。得られた黒色の液体をエバポレータによって濃縮した後、これにメタノール2リットルを加えて褐色の沈殿物を生成させた後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。生成した沈殿物をトリメチルペンタンに再分散させ、ろ過した後、乾燥させて、銅ナノ粒子を黒色の固体として得た。得られた銅ナノ粒子は、空気中に16時間放置して酸化処理した。透過型電子顕微鏡(TEM)によれば、得られた銅ナノ粒子のコア部の個数平均粒子径は6nm、動的光散乱粒径測定(DLS)によれば、保護コロイドを含む銅ナノ粒子全体の個数平均粒子径は9nmであった。
【0060】
前記銀ナノ粒子と前記銅ナノ粒子とを、銀に対して銅が重量で5%になるようにトルエンに分散させ、全体で金属の重量濃度が10%になるようにした。この分散液をガラス製のサンプル瓶に入れ、室温で3週間放置したが、サンプル瓶壁面への銀の析出及び沈殿物の発生はなかった。次に、この分散液をアクリル板(キャストアクリルシート、商品名「カナセライド」、厚み2mm)上にスピンコーターで厚み100nmで塗布した後に、空気雰囲気下、120℃で約1時間焼成した。得られた膜は黒味を帯びた銀色であり、鏡と同様の光沢が得られた。また、セロハンテープによる剥離もなく、濾紙等で表面を擦ってもほとんど銀膜の剥離がなかった。
【0061】
実施例2
銀に対して銅が重量で2.5%になるようにした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。この分散液をサンプル瓶で室温で3週間保存したが、サンプル瓶壁面への銀の析出及び沈殿の発生はなかった。また、この分散液を用いて実施例1と同様に焼成膜を作成した。得られた膜は銀色であり、鏡と同様の光沢が得られた。また、セロハンテープによる剥離もなく、濾紙で表面を擦ってもほとんど銀膜の剥離がなかった。
【0062】
実施例3
実施例1で得られた銅ナノ粒子と銀ナノ粒子とを、銀に対して銅が重量で5%になるようにベンゼンに分散させ、全体で金属の重量濃度が20%になるようにした。この分散液をガラス製のサンプル瓶に入れ、室温で3週間放置したが、サンプル瓶壁面への銀の析出及び沈殿物の発生はなかった。次に、この分散液をPETフィルム(OHPシート、厚み0.1mm)上にスピンコーターで厚み160nmで塗布した後に、空気雰囲気下、120℃で約30分焼成した。得られた膜は黒味を帯びた銀色であり、鏡と同様の光沢が得られた。また、セロハンテープによる剥離もなく、濾紙で表面を擦ってもほとんど銀膜の剥離がなかった。
【0063】
実施例4
銀に対して銅が重量で2.5%になるようにした以外は実施例3と同様にして、分散液を調製した。この分散液をサンプル瓶で室温で3週間保存したが、サンプル瓶壁面への銀の析出及び沈殿の発生はなかった。また、この分散液を用いて、実施例3と同様に焼成膜を作成した。得られた膜は銀色であり、鏡と同様の光沢が得られた。また、セロハンテープによる剥離もなく、濾紙で表面を擦ってもほとんど銀膜の剥離がなかった。
【0064】
比較例1
銅ナノ粒子を加えなかった以外は実施例1と同様に分散液を作成した。この分散液をサンプル瓶に入れ、室温で放置すると数分でサンプル瓶壁面に銀が析出した。また、この分散液を用いて実施例1と同様に焼成膜を作成した。得られた膜は表面が曇っており、鏡のような光沢は得られなかった。また、セロハンテープによる剥離はなかったものの、濾紙で表面を擦ると簡単に銀膜が剥離した。
【0065】
比較例2
銅ナノ粒子を加えなかった以外は実施例3と同様に分散液を作成した。この分散液をサンプル瓶に入れ、室温で放置すると数分でサンプル瓶壁面に銀が析出した。また、この分散液を用いて実施例3と同様に焼成膜を作成した。得られた膜は表面が曇っており、鏡のような光沢は得られなかった。また、セロハンテープによる剥離はなかったものの、濾紙で表面を擦ると簡単に銀膜が剥離した。
【0066】
比較例3
銅ナノ粒子を酸化処理せずに、銅ナノ粒子の製造直後に分散液を調製する以外は実施例1と同様に分散液を作成した。この分散液をサンプル瓶に入れ、室温で放置すると数分でサンプル瓶壁面に銀が析出した。また、この分散液を用いて実施例1と同様に焼成膜を作成した。得られた膜は表面光沢があり、セロハンテープによる剥離はなかったものの、濾紙で表面を擦ると簡単に銀膜が剥離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン類及び炭素数1〜4の脂肪族カルボン酸で構成された第1の保護コロイドで被覆された銀微粒子と、第2の保護コロイドで被覆された銅微粒子とが有機溶媒中に分散した分散液であって、前記銅微粒子が酸化処理されている分散液。
【請求項2】
第1の保護コロイドが、炭素数1〜10の脂肪族アミン及び炭素数1〜3の脂肪族カルボン酸で構成され、かつ第2の保護コロイドが、炭素数1〜10の脂肪族アミン及び炭素数1〜20の脂肪族カルボン酸で構成されている請求項1記載の分散液。
【請求項3】
銀微粒子及び銅微粒子が、いずれもナノ粒子である請求項1又は2記載の分散液。
【請求項4】
銀微粒子と銅微粒子との割合(重量比)が、金属換算で、銀微粒子/銅微粒子=90/10〜99.95/0.05である請求項1〜3のいずれかに記載の分散液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の分散液を基板上に塗布する塗布工程と、基板上に塗布した分散液を焼成する焼成工程とを含む金属薄膜の製造方法。
【請求項6】
焼成工程において、200℃以下の温度で焼成する請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
基板が樹脂基板である請求項5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
基板が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリイミド系樹脂からなる群から選択された少なくとも一種で構成された基板である請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法で得られる金属薄膜。

【公開番号】特開2009−1883(P2009−1883A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165577(P2007−165577)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】