説明

金属微粒子分散液、金属微粒子、金属微粒子分散液の製造法等

【課題】低い表面抵抗を有し、帯電防止性、反射防止性および電磁遮蔽性に優れるとともに、分散液のポットライフが長く、信頼性や耐久性に優れた透明導電性被膜の形成に好適に用いることができる金属微粒子分散液等を提供する。
【解決手段】金属微粒子と、分散媒とを含む金属微粒子分散液において、前記金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる金属群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含み、その一次粒子径が1〜30nmの範囲であり、二次粒子径が5〜100nmの範囲であり、当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化され、金属微粒子濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/gの範囲であり、電気伝導度が1〜15μS/cmの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることにより優れた導電性を有するとともに分散安定性に優れ、導電性被膜中でイオン化や粒子成長などが生じにくい金属微粒子分散液、この金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子、この金属微粒子の製造方法、前記金属部粒子分散液を含むポットライフの長い透明導電性被膜形成用塗布液、このような透明導電性被膜形成用塗布液を用いて得られる帯電防止性、電磁遮蔽性および信頼性や耐久性に優れた透明導電性被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラズマディスプレイ、液晶表示装置、陰極線管、蛍光表示管、などの表示パネルのような透明基材の表面の帯電防止および反射防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能および反射防止機能を有する透明被膜を形成することが行われていた。ところで、プラズマディスプレイや陰極線管などから放出される電磁波が人体に及ぼす影響が最近問題にされており、従来の帯電防止、反射防止に加えてこれらの電磁波および電磁波の放出に伴って形成される電磁場を遮蔽することが望まれている。
【0003】
これらの電磁波などを遮蔽する方法の一つとして、陰極線管などの表示パネルの表面に電磁波遮断用の導電性被膜を形成する方法がある。しかしながら、従来の帯電防止用導電性被膜であれば表面抵抗が少なくとも10Ω/□程度の表面抵抗を有していれば十分であるのに対し、電磁遮蔽用の導電性被膜では10〜10Ω/□のような低い表面抵抗を有すあああることが必要であった。
【0004】
このように表面抵抗の低い導電性被膜を、従来のSbドープ酸化錫またはSnドープ酸化インジウムのような導電性酸化物を含む塗布液を用いて形成しようとすると、従来の帯電防止性被膜の場合よりも膜厚を厚くする必要があった。しかしながら、導電性被膜の膜厚は、10〜200nm程度にしないと反射防止効果は発現しないため、従来のSbドープ酸化錫またはSnドープ酸化インジウムのような導電性酸化物では、表面抵抗が低く電磁波遮断性に優れるとともに反射防止性にも優れた導電性被膜を得ることが困難であるという問題があった。
【0005】
また、低表面抵抗の導電性被膜を形成する方法の一つとして、Agなどの金属微粒子を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて基材の表面に金属微粒子含有被膜を形成する方法がある。この方法では、金属微粒子含有被膜形成用塗布液として、コロイド状の金属微粒子が極性溶媒に分散したものが用いられている。このような塗布液では、コロイド状金属微粒子の分散性、安定性を向上させるために、金属微粒子表面がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの有機系安定化剤で表面処理されている。
【0006】
しかしながら、このような金属微粒子含有被膜形成用塗布液を用いて形成された導電性被膜は、被膜中で金属微粒子同士が安定化剤を介して接触するため、粒界抵抗が大きく、被膜の表面抵抗が低くならないことがあった。このため、製膜後、400℃程度の高温で焼成して安定化剤を分解除去する必要があるが、安定化剤の分解除去をするため高温で焼成すると、金属微粒子同士の融着や凝集が起こり、導電性被膜の透明性やヘーズが低下するという問題があった。また、陰極線管などの場合は、高温に晒すと劣化してしまうという問題もあった。
【0007】
さらに従来のAg等の金属微粒子を含む透明導電性被膜では、金属が酸化されたり、イオン化により粒子成長したり、また場合によっては腐食が発生することがあり、塗膜の導電性や光透過率が低下し、表示装置が信頼性を欠くという問題があった。また、本願出願人は、たとえば、特開平10−188681号公報で、2種以上の金属からなる平均粒子径が1〜200nmの複合金属微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液を提案しているが、このような、複合金属微粒子では、ポットライフの充分に長い塗布液を得ることは困難であった。
【0008】
たとえば、特開20002−294301号公報で、鉄と鉄以外の金属とを含む金属微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液を提供しているが、このような金属微粒子では、粒子の表面電荷量が高くポットライフの充分に長い塗布液を得ることは困難であった。
【0009】
しかしながら、特開平10−188681や特開20002−294301号公報の方式でもAg等の金属微粒子は、酸化は抑制できていない点も有り、薄膜を形成した際、空気中の酸素の影響で酸化されたり、透明被膜形成の際に透明被膜形成塗布液中の酸の影響で、金属酸化が促進されたり、イオン化により粒子成長したり、また場合によっては腐食が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−188681号公報
【特許文献2】特開2002−294301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、10〜10Ω/□程度の低い表面抵抗を有し、帯電防止性、反射防止性および電磁遮蔽性に優れるとともに、分散液のポットライフが長く、信頼性や耐久性に優れた透明導電性被膜の形成に好適に用いることができる金属微粒子分散液、金属微粒子、金属微粒子の製造方法、透明導電性被膜形成用塗布液及びを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、金属微粒子についてさらに検討した結果、金属微粒子の一次粒子の範囲を1〜30nmにしかつ二次粒子径を5〜100nmに制御し、この金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化され、金属微粒子分散液の微粒子の濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/gの範囲であり、電気伝導度が1〜15μS/cmの範囲であるときに金属微粒子分散液及び透明導電性被膜形成用塗布液の安定性が増大し、高温領域でも酸化が抑制されることを見出し、耐久性に優れた透明導電性被膜が得られることを見出して本願発明を完成するに至った。
【0013】
本発明に係る金属微粒子分散液は、金属微粒子と、分散媒とを含む金属微粒子分散液において、
前記金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる金属群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含み、その一次粒子径が1〜30nmの範囲であり、二次粒子径が5〜100nmの範囲であり、当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることと、
金属微粒子濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/gの範囲であり、電気伝導度が1〜15μS/cmの範囲であることと、を備えたことを特徴としている。
前記金属微粒子が、前記金属群に含まれる単独の金属、またはPd−Ag、Pd−Pt、Pd−Cu、Ag−Cu、Pd−Au、Pt−Rh、Pd−Pt−Rh、Pd−Rhであることが好ましい。
【0014】
前記金属微粒子分散液は、70℃の保管条件下で、前記金属微粒子分散液を調製してから30日間経過するまでの二次粒子径の変化率が1.5倍以内であることが好適である。また、前記金属微粒子濃度が0.5重量%のときのpHが2〜11の範囲であることが好ましい。そして前記金属微粒子はCl成分の含有量が金属微粒子に対して0.5〜3重量%の範囲であることが好ましい。また、前記分散媒は、水、クエン酸水溶液、モノエチレングリコールからなる分散媒群から選ばれる場合が挙げられる。
【0015】
次いで本発明の金属微粒子は、金属微粒子分散液から得られたことを特徴とする。この金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含む金属微粒子であって、一次粒子径が1〜30nmの範囲であることと、当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることと、を備えるという特徴を備える。
【0016】
また本発明の金属微粒子分散液の製造方法は(A)水または有機溶媒の少なくとも一方からなる溶媒中、還元剤の存在下で、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる金属群より選ばれる少なくとも1種以上の金属の塩を還元して、金属微粒子を生成する工程と、
(B)前記金属微粒子を分散媒中に分散させてなる金属微粒子分散液に含まれる不純物を低減する工程と、
(C)前記金属微粒子を酸と接触させる工程と、
(D)前記金属微粒子をアルカリと接触させる工程と、を含むことを特徴とする。
ここで前記分散媒は、金属微粒子の生成が行われる溶媒である場合が挙げられ、また前記工程(B)は、(A)、(C)、(D)の各工程の後に行う場合が例示できる。さらに前記不純物はイオンである場合などがある。
【0017】
また前記(C)の工程にて使用する酸が、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酢酸、蟻酸より選ばれる少なくとも1種以上の酸であること、及び前記(D)の工程にて使用するアルカリが、アンモニア、三級アミン、四級アミンより選ばれる少なくとも1種以上のアルカリであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、金属微粒子分散液と極性溶媒とを含むことを特徴としている。この透明導電性被膜形成用塗布液にはバインダー成分を含んでもよい。
【0019】
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、基材と、基材上の透明導電性微粒子層のみ若しくは、該透明導電性微粒子層上に設けられ、該透明導電性微粒子層よりも屈折率が低い透明被膜とからなる透明導電性被膜付基材において、前記透明導電性微粒子層が前記透明導電性被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、0.1〜30重量%と酸化物の含有量が少ない金属微粒子を用い、表面電荷量及び電気伝導度が予め設定された範囲に調整された金属微粒子分散液を用いることで、二次粒子径が変化しにくい、安定した金属微粒子を提供することができる。この結果、導電性が低く、造膜性の高い透明導電性被膜形成用塗布液及びこの塗布液を用いた透明導電性被膜付基材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
金属微粒子
まず、本発明の金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子について説明する。本発明に係る金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含む(複合)金属微粒子からなっている。
【0022】
このような金属微粒子の金属は、単体金属のほか、複合金属の場合には固溶状態にある合金であっても、固溶状態に無い共晶体であってもよく、合金と共晶体が共存していてもよい。なかでも、固溶状態にある合金の金属微粒子は導電性被膜に用いた場合、酸化やイオン化による金属微粒子の粒子成長が抑制され、塗膜の導電性や光透過率の低下が小さく、信頼性の高い透明導電性被膜付基材が得られる。
【0023】
本発明に係る金属微粒子の好ましい金属の組合せとしては、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、Pt、Auのみ、Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Pu、Ag−Rh、Ag−Pt、Ag−Au、Pd−Cu、Pd−Ru、Pd−Rh、Pd−Pt、Pd−Au、Cu−Ru、Cu−Rh、Cu−Pt、Cu−Au、Ru−Rh、Ru−Pt、Ru−Au、Rh−Pt、Rh−Au、Pt−Au、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Pt、Ag−Pd−Au、Pd−Cu−Ru、Pd−Cu−Rh、Pd−Cu−Pt、Pd−Cu−Au、Pd−Ru−Rh、Pd−Ru−Pt、Pd−Ru−Au、Pd−Rh−Pt、Pd−Rh−Auなどが挙げられる。
【0024】
本発明に係る金属微粒子の一次粒子径は1〜30nm、好ましくは2〜20nmの範囲にある。一次粒子径が1〜30nmの範囲にあると、透明性の高い導電性被膜を得ることができる。金属微粒子の一次粒径が30nmを越えると、光の散乱が大きくなり、粒子層の光透過率が低下するとともにへーズが大きくなる。また、金属微粒子の平均粒径が1nm未満の場合は得ることが困難である。
【0025】
本発明に係る金属微粒子の二次粒子径は5〜100nm、好ましくは5〜80nmの範囲にある。二次粒子径が5〜100nmの範囲にあると、被膜粒子のパッキングが良く、導電性が向上し、透明性の高い導電性被膜を得ることができる。金属微粒子の二次粒径が100nmを越えると、被膜粒子のパッキングが悪く、導電性が悪化する場合がある。また光の散乱が大きく透明性の低下、ヘーズの上昇を引き起こす場合がある。また、金属微粒子の二次粒径が1nm未満の場合は得ることが困難である。
【0026】
また前記二次粒子径は経時的に安定していることが好ましく、70℃保管の条件での金属微粒子分散液を調製してから30日後の二次粒子径の変化率が1.5倍以内であるとよい。上述のように金属微粒子の二次粒子径は、当該金属微粒子を利用して形成された透明導電性被膜の導電性に影響を及ぼすところ、二次粒子径の経時変化が少ない金属微粒子分散液は導電性の低い透明導電性被膜を形成可能な期間が長く、透明導電性被膜形成用塗布液の原料としてのポットライフが長いといえる。
【0027】
このようなポットライフの長い金属微粒子分散液として、金属微粒子分散液の微粒子濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/g、さらには1〜40μeq/gであることが好ましい。表面電荷量は金属微粒子表面の電荷と、金属微粒子分散液中に含まれる不純物の電荷の和として捉えることができる。したがってこのような範囲の金属微粒子分散液は、不純物の含有量が少ないことから、ポットライフが長いとともに導電性の高い導電性被膜を得ることができる。表面電荷量が45μeq/g超えると電荷が高く、透明導電膜形成塗布液にした際に液中で金属微粒子が凝集する場合がある。表面電荷量が1μeq/g未満の金属微粒子分散液は得ることが困難である。なお、表面電荷量は、表面電荷量測定装置(Mutec社製:PCD03PH)などで測定される。このような表面電荷量は、微粒子濃度が0.5重量%の分散液で測定される。
【0028】
またポットライフの長い金属微粒子分散液は、当該分散液の電気伝導度の観点からも規定できる。即ち、金属微粒子分散液の微粒子濃度が0.5重量%のときの電気伝導度が1〜15μS/cm、さらには2〜12μS/cmであることが好ましい。このような範囲の金属微粒子分散液についても、不純物の含有量が少ないことからポットライフが長いとともに導電性の高い導電性被膜を得ることができる。電気伝導度が15μS/cmを超えると分散液の安定性が低く(二次粒子が成長しやすく)、透明導電膜形成塗布液にした際に液中で金属微粒子が凝集する場合がある。電気伝導度が1μS/cm未満のものは得ることが困難である。
【0029】
さらに導電性の高い透明導電性被膜を形成することが可能な金属微粒子分散液として、当該分散液に含まれる金属微粒子は0.1〜30重量%酸化されていることが好ましい。さらに好ましい酸化の範囲は0.5〜25重量%である。酸化の状態は、部分酸化、単体と酸化物の混合のいずれであってもよい。後述の実施例に示すように酸化物の含有量がこの範囲にある金属微粒子は、基材への塗布後の焼成の際に酸化されにくく、透明導電性被膜の導電性が悪化しにくいことを把握している。ここで金属微粒子に含まれる酸化物が0.1重量%未満のものは、得ることが困難である。また30重量%を超えて酸化されたものは、透明導電性被膜の形成後に導電性が悪化したり、酸化が促進される場合があり、透明導電膜の耐久性が悪化する場合がある。
【0030】
これらに加え、ポットライフの長い金属微粒子分散液の指標として、当該分散液のpHに着目してもよい。即ち、金属微粒子分散液の微粒子濃度が0.5重量%のときのpHが2〜11、さらには2.5〜10であることが好ましい。金属微粒子のpHをこのような範囲に調整することにより、ポットライフが長いとともに導電性の高い導電性被膜を得ることができる。pHが11を超えると金属微粒子の酸化が促進したり、分散液の安定性が低く、透明導電膜形成塗布液にした際に液中で金属微粒子が凝集する場合がある。pHが2未満である場合も金属微粒子がイオン化し、導電膜形成後空気中の酸素の影響で酸化が促進される場合がある。また分散液の安定性も低く、透明導電膜形成塗布液にした際に液中で金属微粒子が凝集する場合がある。
【0031】
以上のような本発明に係る金属微粒子は、0.1〜30重量%が酸化され、pH、電気伝導度、表面電荷量が上記記載の範囲にあるため、金属微粒子が酸化を受けにくくなるとともに、高い導電性を保持し、合金的特性が強く、導電性被膜に用いた場合に金属の酸化やイオン化を抑制することができ、粒子成長が抑制されるので導電性や光透過率の低下を抑制することができる。さらに、このような金属微粒子分散液は二次粒子径が変化しにくく安定であるため、極性溶媒と混合した後もポットライフの長い透明導電性被膜形成用塗布液を得ることができる。
【0032】
本発明に係る金属微粒子の分散液は、得られる金属微粒子の0.1〜30%が酸化され、pH、電気伝導度、表面電荷量が上記記載の範囲となっている。このような金属微粒子分散液は、(A)水または有機溶媒の少なくとも一方からなる溶媒中、還元剤の存在下で、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる金属群より選ばれる少なくとも1種以上の金属の塩を還元して、金属微粒子を生成する工程と、
(B)前記金属微粒子を分散媒中に分散させてなる金属微粒子分散液に含まれる不純物を低減する工程と、
(C)前記金属微粒子を酸と接触させる工程と、
(D)前記金属微粒子をアルカリと接触させる工程と、を実行することにより製造することができる。
前記(C)の工程にて使用する酸が、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酢酸、蟻酸より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。さらに上記(D)の工程にて使用するアルカリが、アンモニア、三級アミン、四級アミンより選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0033】
上述の金属微粒子はたとえば以下の製造方法で製造することができる。
金属微粒子の製造方法
(A)1種以上の金属の塩を還元する工程
まず、1種以上の金属の塩を還元する工程に関して説明する。
水および/または有機溶媒からなる溶媒中、還元剤の存在下で、1種以上の金属の塩を還元する。具体的には、下記の方法が挙げられる。水および/または有機溶媒からなる溶媒中で、1種類、または複数種類の金属の塩を同時に、還元剤の存在下で還元する方法。還元剤は従来公知還元剤を使用してよい。溶媒の具体例としては、水、クエン酸水溶液、モノエチレングリコールなどを挙げることができる。生成した金属粒子をこの溶媒から分離せずに金属微粒子分散液を調製するときには、この溶媒が金属微粒子分散液の分散媒となる。また生成した金属粒子を溶媒から一旦分離して、再度液体に分散させる場合には、後者の液体が分散媒となる。
【0034】
金属塩としては、硫酸塩、酢酸塩および有機酸塩等の塩およびこれらの混合物塩等が挙げられる。具体的には、塩化金酸、塩化白金酸、硝酸銀、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化ルテニウム、硝酸ロジウム、塩化ロジウム、硝酸銅、塩化銅、クエン酸銅、硝酸銀、等およびこれらの混合物塩等が挙げられる。
【0035】
水および/または有機溶媒からなる溶媒中の金属の塩の濃度は、金属に換算した合計の濃度が0.01〜3.0重量%、さらには0.02〜2.0重量%の範囲にあることが好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングルコールなどのグリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類が使用される。
本発明では、溶媒は単独溶媒であってもよいし、2種以上の混合溶媒であってもよく、さらには有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。
【0036】
金属の塩の濃度が、生成する金属に換算した合計の濃度で0.01重量%未満の場合は、金属微粒子の生成速度が遅くなったり、得られる金属微粒子の粒子径が不均一になる傾向があり、また金属微粒子の収率が著しく低下することがある。金属の塩の濃度が、金属に換算した合計の濃度で3.0重量%を越えると、金属イオンの還元析出が早すぎて得られる金属微粒子の粒子径が不均一になったり凝集する傾向にある。
【0037】
つぎに、還元剤としては、硫酸第1鉄、硫酸アンモニウム第1鉄、蓚酸第1鉄、クエン酸3ナトリウム、酒石酸、L(+)−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
還元剤として水素化ホウ素ナトリウムや次亜リン酸ナトリウムを使用すると、金属微粒子中にB、Pが含まれてしまうが、硫酸第1鉄、硫酸アンモニウム第1鉄のような鉄塩を還元剤として用いると、B、Pを含まない導電性の高い金属微粒子を得ることができる。
【0038】
このとき用いる還元剤の量は、金属の塩との合計1モル当たりに0.1〜5.0モル、さらには1.0〜3.0モルの範囲にあることが好ましい。このような範囲にあれば金属微粒子の収率が高く、導電性が高い金属微粒子を得ることができる。還元剤の量が、合計の金属の塩1モル当たりに0.1モル未満の場合は、還元能力が不充分なために金属微粒子の収率が低下し、必要量の金属微粒子中が得られないことがある。還元剤の量が、金属塩の合計の1モル当たり5.0モルを越えてもさらに収率が向上することもなく、還元剤によってはBやPを多く含む金属微粒子が得られ、導電性が不充分となることがある。
【0039】
このような還元剤を用いた還元条件としては、金属塩を還元しうる条件であれば特に制限されるものではなく、前記した濃度に調製した金属塩に、還元剤を添加して、必要に応じて、加熱したり、撹拌すればよい。さらに、本発明では、必要に応じて有機安定化剤を用いることができる。有機安定化剤としては、たとえばゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、およびシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。安定化剤は金属塩を還元して得られる金属微粒子(コロイド)を安定化させる役割を果たす。
【0040】
このような有機安定化剤の使用量は、生成する金属微粒子1モルに対し有機系安定化剤を1〜10モル、好ましくは2〜8モル含まれていればよい。有機系安定化剤の量が1モル/モル金属未満の場合、得られる金属微粒子の分散性が不充分であり金属微粒子が凝集することがあり、10モル/モル金属を越えると残留する有機安定化剤により導電性が阻害されることがある。
また、本発明の方法では、上記還元して得られた金属微粒子の分散液を必要に応じて圧力容器中、約100℃以上の温度で加熱処理してもよい。
【0041】
上述の金属の塩の還元工程にて生成する金属微粒子の一次粒子径は、溶媒中の金属塩の濃度や安定化剤の添加量を変化させることにより調整することができる。金属塩の濃度を高くすると、金属微粒子の一次粒子径は大きくなり、安定化剤の添加量を増やすと金属微粒子の一次粒子径は小さくなる。これら金属塩の濃度や安定化剤の添加量を調整することなどにより、分散液中の金属微粒子の一次粒子径を1〜30nmの範囲に調整することができる。
【0042】
(B)金属の塩を還元して得られた金属微粒子を含む分散液から不純物を低減する工程
次に(A)で得られた金属微粒子を含む分散液から不純分を低減する工程に関して説明する。この工程は従来公知の方法を用いることができる。例えば、水やアルコールを用いてフィルターで濾過してイオン成分を低減する方法。限外膜を用いて低減する方法、デカンテーションで不純分を低減する方法、イオン交換膜やイオン交換樹脂でイオンを低減する方法、活性炭などで有機物を低減する方法などが挙げられる。低減する不純物としては、既述の二次粒子の粒径範囲よりも大きな粗大粒子や溶媒に含まれる高分子成分、イオンなどが挙げられる。これらの不純物は金属粒子分散液の表面電荷量や電気伝導度を上昇させる要因となり、分散液に含まれるイオンをイオン交換樹脂などで取り除く場合は勿論、限外濾過膜で帯電性の粗大粒子や高分子成分を取り除くことによっても金属粒子分散液の表面電荷量や電気伝導度を調整することができる。
【0043】
不純物の低減の完了の目安は電気伝導度を用いることができ、0.5重量%の金属微粒子分散液の状態で、電気伝導度が1μS/cm〜1mS/cmの範囲であることが好ましい。1mS/cm以上の場合は、不純物低減が不充分であるため、透明導電性被膜塗布液を調製した際に凝集を引き起こす場合があったり、ポットライフも短い場合がある。またこの工程で二次粒子径が大きくなった場合は、必要に応じて遠心分離機などを使用し粗大粒子低減を行うこともできる。
【0044】
(C)酸で処理する工程、
次に(B)で得られた金属微粒子を酸で処理する工程に関して説明する。この工程は、金属微粒子を酸で処理することで、不純分の低減や酸化状態の調整を行う。使用する酸は、従来公知の酸を使用することが可能である。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酢酸、蟻酸より選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。使用する酸は1種でもよく、2種類以上でもよく、不純物の低減や酸化状態の調整に好適な酸を金属微粒子によって適宜選択することができる。
【0045】
酸での処理は金属に対して0.01〜10重量%の範囲の量の酸で処理することが好ましく、さらには0.02〜5重量%の範囲であることがより好ましい。酸の量が0.01重量%未満の場合は、不純分の低減が不十分な場合がある。酸の量が5重量%を超える場合は、粒子が凝集する場合がある。酸による処理は、金属微粒子と適量の酸を混合し、10℃〜200℃の温度で1〜60分攪拌すればよい。温度が10℃未満であると不純物の低減効果が得られにくく、200℃を超えると金属微粒子が凝集する場合がある。
【0046】
攪拌後は(B)の工程と同様に従来公知の方法で不純分の低減を行うことができる。具体的には限外膜を用いて不純物を低減する方法、デカンテーションで沈殿しない不純分を低減する方法、イオン交換膜やイオン交換樹脂でイオンを低減する方法などが挙げられる。処理の完了の目安は電気伝導度を用いることができ、0.5重量%の金属微粒子分散液の状態で電気伝導度が1μS/cm〜100μS/cmの範囲であることが好ましい。
【0047】
(D)アルカリで処理する工程
次に(B)で得られた金属微粒子をアルカリで処理する工程に関して説明する。この工程は、金属微粒子をアルカリで処理することで、不純分の低減や酸化状態の調整を行う。使用するアルカリは、従来公知のアルカリを使用することが可能である。具体的には、アンモニア、三級アミン、四級アミンより選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。使用する酸は1種でもよく、2種類以上でもよく、不純物の低減や酸化状態の調整に好適なアルカリを金属微粒子によって適宜選択することができる。
【0048】
アルカリでの処理は金属に対して0.001〜10重量%の範囲の量のアルカリで処理することが好ましく、さらには0.002〜5重量%の範囲であることがより好ましい。アルカリの量が0.01重量%未満の場合は、不純分の低減が困難であり、金属微粒子分散液のpHが2以下になる場合がある。アルカリの量が10重量%を超える場合は、粒子が凝集する場合があるとともに、金属微粒子分散液のpHが11を超える場合がある。アルカリによる処理は、金属微粒子と適量のアルカリを混合し、10℃〜200℃の温度で1〜60分攪拌すればよい。温度が10℃未満であると不純物の低減効果が得られにくく、200℃を超えると金属微粒子が凝集する場合がある。
【0049】
攪拌後は(B)の工程と同様に従来公知の方法で不純分の低減を行うことができる。具体的には限外膜を用いて不純物を低減する方法、デカンテーションで沈殿した不純分を低減する方法、イオン交換膜やイオン交換樹脂でイオンを低減する方法などが挙げられる。処理の完了の目安は電気伝導度を用いることができ、0.5重量%の金属微粒子分散液の状態で電気伝導度が1μS/cm〜15μS/cmの範囲であることが好ましくpHが2〜11の範囲であることが好ましい。
【0050】
ここで(C)の酸による処理及び(D)のアルカリによる処理は、(B)の工程で得られた金属微粒子に対して、酸処理→アルカリ処理の順番で行う場合に限定されない。例えばこれらの処理を実行する順番を入れ替えて、アルカリ処理→酸処理の順に行ってもよい。この場合には、先に行われるアルカリ処理後の0.5重量%における金属微粒子分散液の電気伝導度が1μS/cm〜100μS/cmの範囲に調整され、酸処理後の同じく電気伝導度が1μS/cm〜15μS/cmの範囲、pHが2〜11の範囲に調整される。
【0051】
また、上述の例では、(A)、(C)、(D)の工程の後に、各々(B)の工程を実行する場合について説明したが、これら全ての工程の後で不純物の低減を行うことは必須ではない。最終的に得られる金属微粒子分散液の表面電荷量や電気伝導度を上述の範囲内に調整することができれば、工程(D)の後に一括して工程(B)を実施して不純物の低減を行ってもよい。
【0052】
これらの工程を経て調製された分散液に含まれている金属微粒子は、一次粒子が凝集して二次粒子を形成するが、この二次粒子径は5〜100nmの範囲に調整される。二次粒子径は、(A)の金属の塩の還元工程にて添加される還元剤の量が少ないほど小さくなり、またこのとき添加される安定化剤の添加量が多いほど小さくなる。また(C)の酸による処理にて使用する酸の量が少ないほど二次粒子径は小さくなり、(D)のアルカリによる処理にて使用するアルカリの量が多いほど二次粒子径は小さくなる。二次粒子の径は、これらの変数を適切に調節することにより調整される。
【0053】
また表面電荷量は、金属微粒子の一次粒子径(比表面積)や不純物の含有量に依存し、一次粒子径が小さいほど小さくなり、不純物の含有量が少ないほど小さくなる。(B)、(C)、(D)の各処理にて低減される不純物の例としては、原料となる金属塩を還元したときに生成される塩などが考えられこれらを脱塩することにより、既述の電気伝導度の調整などと並行して表面電荷量の調整が行われる。
【0054】
また金属微粒子の酸化状態は、(C)の酸による処理における酸の使用量、(D)のアルカリによる処理におけるアルカリの使用量に応じて変化する。これら酸やアルカリの使用量が多いと金属微粒子に含まれる酸化物の量は少なくなる。ここで既述のように金属微粒子の二次粒子は、酸の使用量が少ないほど、二次粒子径が小さくなることから、酸の使用量に対して酸化物の含有量と二次粒子径との間にはトレードオフの関係があることがわかっている。
【0055】
このような工程を経て得られた金属微粒子分散液は、金属塩や還元剤、安定化剤や酸、アルカリの添加量などを予め行った実験などにより所望の特性を備えた金属微粒子が得られる条件を適切に把握しておく。これにより、一次粒子径が1〜30nmの範囲であり、二次粒子径は5〜100nmの範囲となり、金属微粒子分散液の微粒子濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/g、pHが2〜11、電気伝導度が1〜15μS/cmの範囲であり、金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化された金属微粒子分散液を得ることができる。
【0056】
上述の特性を備えた金属微粒子分散液は、当該金属微粒子を原料として透明導電性被膜を形成しても高温下で酸化されにくく、優れた導電性を示し、耐久性の高いものが得られる。また前記金属微粒子分散液は、70℃の保管条件にて、当該金属微粒子分散液を調製してから30日後の二次粒子径の変化率が1.5倍以内であり、調製後、日数が経過しても表面抵抗の小さな透明導電性被膜を形成することができ、ポットライフが長い。
【0057】
ここで上述の金属微粒子分散液から得られた金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含む金属微粒子であって、一次粒子径が1〜30nmの範囲であることと、当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることと、を備えるという特徴を有する。このような特徴を備えた金属微粒子は、金属微粒子は、高温下でも酸化されにくく、透明導電膜以外でも種々の目的に利用が可能である。例えば、触媒用途、反射膜用途、センサー、金属顔料、イムノクロマト用途などが挙げられる。触媒用途に用いる場合には具体的には、この金属微粒子をアルミナや活性炭などの担体に担持させることにより、触媒としての利用が可能となる。例えばPdを含む金属微粒子を使用した触媒は、有機合成用触媒(水添反応、Heck反応など)や自動車触媒(DOC触媒)、硝酸分解触媒、ガスセンサーなどに用いられ、Ptを含むものは、燃料電池触媒、ガスセンサー、自動車三元触媒、などに用いることができる。
【0058】
透明導電性被膜形成用塗布液
つぎに、本発明の透明導電性被膜形成用塗布液について説明する。本発明の透明導電性被膜形成用塗布液は、前記した金属微粒子分散液と極性溶媒とを含んでいる。本発明で用いられる極性溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチル
エステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。ここで極性溶媒は基材へ透明導電性微粒子層を形成するときの造膜性を向上させる役割を果たしている。
【0059】
このような透明導電性被膜形成用塗布液には、上記金属微粒子以外の導電性微粒子が含まれていてもよい。金属微粒子以外の導電性微粒子としては、公知の透明導電性無機酸化物微粒子あるいは微粒子カーボンなどを用いることができる。透明導電性無機酸化物微粒子としては、たとえば酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングざれた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンなどが挙げられる。
【0060】
このような導電性微粒子を含有すると、金属微粒子のみで透明導電性微粒子層を形成した場合と比較して、より透明性に優れた透明導電性微粒子層を形成することができる。また導電性微粒子を含有することによって、安価に透明導電性被膜付基材を製造することができる。
【0061】
これらの導電性微粒子の平均粒径は、1〜200nm、好ましくは2〜150nmの範囲にあることが好ましい。このような導電性微粒子は、前記分散液に含まれる金属微粒子1重量部当たり、4重量部以下の量で含まれていればよい。導電性微粒子が4重量部を超える場合は、導電性が低下し電磁波遮蔽効果が低下することがあるので好ましくない。
【0062】
さらに本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、被膜形成後の金属微粒子のバインダーとして作用するマトリックス成分が含まれていてもよい。このようなマトリックス成分としては、シリカや有機樹脂からなるものが好ましく、具体的には、シリカではアルコキシシランなどの有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物、あるいは塗料用樹脂などが挙げられる。
【0063】
また有機樹脂としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。このマトリックスは、分散液に含まれる前記金属微粒子1重量部当たり、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.3重量部の量で含まれていればよい。
【0064】
また、本発明の金属微粒子は分散性、安定性(分散状態の経時的な安定性)に優れているので必ずしも必要はないが、金属微粒子の分散性をより向上させるため、透明導電性被膜形成用塗布液中に有機系安定化剤が含まれていてもよい。このような有機系安定化剤として具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、およびシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0065】
このような有機系安定化剤は、分散液に含まれる金属微粒子1重量部に対し、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部含まれていればよい。有機系安定化剤の量が0.005重量部未満の場合は充分な分散性と安定性が得られないことがあり、0.5重量部を超えてもさらに分散性や安定性が向上することもなく、残留する有機安定化剤が多くなりこれにより導電性が阻害されることがある。
【0066】
このような透明導電性被膜形成用塗布液を使用すれば、10〜10Ω/□の表面抵抗を有する透明導電性微粒子層を形成することができるので、電磁波、およびこの電磁波の放出に伴って生じる電磁場を効果的に遮蔽することができる。特に、金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されて、特定範囲の表面電荷量、電気伝導度を有しているの分散液は、分散性や安定性に優れることから、このような金属微粒子分散液を含む透明導電性被膜形成用塗布液についてもポットライフが長くなる。また、この透明導電性被膜形成用塗布液を用いると導電性、電磁遮蔽性に優れるとともに、信頼性が高い透明導電性被膜が形成された透明導電性被膜付基材を得ることができる。
【0067】
また、この金属微粒子分散液は、分散性や安定性に優れているので有機安定化剤の使用量を少なくでき、塗膜を形成した後に有機安定化剤を除去することが容易であり、また有機安定化剤が残存して導電性を阻害することを抑制することができる。また、従来のように有機安定化剤を除去するため被膜形成後の基材を400℃以上の高温で焼成する必要がなく、低温で除去することができるので高温焼成による金属微粒子の凝集、融着を防止できるとともに、得られる被膜のへーズの劣化を防止できる。
【0068】
透明導電性被膜付基材
次に、本発明に係る透明導電性被膜付基材について説明する。本発明に係る透明導電性被膜付基材では、前記した透明導電性被膜形成用塗布液から形成した透明導電性微粒子層が、ガラス、プラスチック、セラミックなどからなるフィルム、シートあるいはその他の成形体などの基材上に形成されている。
【0069】
[透明導電性微粒子層]
透明導電性微粒子層の膜厚は、約5〜200nm、さらには10〜150nmの範囲にあることがより好ましく、この範囲の膜厚であれば電磁遮蔽効果に優れた透明導電性被膜付基材を得ることができる。このような透明導電性微粒子層には、必要に応じて、上記金属微粒子以外の導電性微粒子、マトリックス成分、有機系安定化剤を含んでいてもよく、具体的には、透明導電性被膜形成用塗布液の説明にて列記したものと同様の有機系安定化剤が挙げられる。
【0070】
[透明被膜]
本発明に係る透明導電性被膜付基材では、前記透明導電性微粒子層の上に、前記透明導電性微粒子層よりも屈折率の低い透明被膜が形成されている。透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲にあることが好ましい。このような透明被膜は、たとえば、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、およびこれらの複合酸化物などから形成される。本発明では、透明被膜として、特に加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物からなるシリカ系被膜が好ましい。このような透明被膜が形成された透明導電性被膜付基材は、反射防止性能に優れている。
【0071】
また、上記透明被膜中には、必要に応じて、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料で構成された微粒子、染料、顔料などの添加剤や、特開平7−10522、特開2002−79616で挙げられている多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子を含んでもよい。
【0072】
透明導電性被膜付基材の製造方法
本発明に係る透明導電性被膜付基材は以下のようにして
製造することができる。
[透明導電性微粒子層の形成]
まず、前述の金属微粒子分散液と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液を基材上に塗布・乾燥して透明導電性微粒子層を形成する。透明導電性被膜形成用塗布液中の金属微粒子は、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%の量で含まれていることが望ましい。また、このような透明導電性被膜形成用塗布液には、金属微粒子以外の導電性微粒子が添加されていてもよい。このような導電性微粒子としては透明導電性被膜形成用塗布液の説明にて列記したものと同様のものと同様の導電性微粒子が挙げられる。
【0073】
透明導電性微粒子層を形成する方法としては、たとえば、前記透明導電性被膜形成用塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、グラビア印刷などの方法で、基材上に塗布したのち、常温〜約90℃の範囲の温度で乾燥する。透明導電性被膜形成用塗布液中に上記のようなマトリックス成分が含まれている場合には、マトリックス成分の硬化処理を行ってもよい。
【0074】
硬化処理としては、従来公知の加熱硬化、電磁波照射やアンモニアガスなどによるガス硬化などの方法やUV(Ultra Violet)光やEB(Electron Beam)での硬化が挙げられる。上記のような方法によって形成された透明導電性微粒子層の膜厚は、約50〜200nmの範囲が好ましく、この範囲の膜厚であれば電磁遮蔽効果に優れた透明導電性被膜付基材を得ることができる。
【0075】
[透明被膜の形成]
ついで該微粒子層上に透明被膜形成用塗布液を塗布して前記透明導電性微粒子層上に該微粒子層よりも屈折率の低い透明被膜を形成する。透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲であることが好ましく、このような範囲の膜厚であると優れた反射防止性を発揮する。透明被膜の形成方法としては、特に制限はなく、この透明被膜の材質に応じて、真空蒸発法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式薄膜形成方法、あるいは上述したようなディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、グラビア印刷などの湿式薄膜形成方法を採用することができる。
【0076】
上記透明被膜を湿式薄膜形成方法で形成する場合、従来公知の透明被膜形成用塗布液を用いることができる。このような透明被膜形成用塗布液としては、具体的に、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、またはこれらの複合酸化物を透明被膜形成成分として含む塗布液が用いられる。本発明では、透明被膜形成用塗布液として加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸液を含むシリカ系透明被膜形成用塗布液か有機樹脂と中空シリカを組み合わせた系が好ましく、特に下記一般式[1]で表されるアルコキシシランの加水分解重縮合物を含有していることが好ましい。このような塗布液から形成されるシリカ系被膜は、金属微粒子含有の導電性微粒子層よりも屈折率が小さく、得られる透明被膜付基材は反射防止性に優れている。
【0077】
アルコキシシランの一般式
RaSi(OR')4−a…[1]
(式中、Rはビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり、R'はビニル基、アリール基、アクリル基、炭系数1〜8のアルキル基、−COC2n+1(n=1〜4)または水素原子であり、aは0〜3の整数である。)このようなアルコキシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシランメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0078】
上記のアルコキシシランの1種または2種以上を、たとえば水−アルコール混合溶媒中で酸触媒の存在下、加水分解すると、アルコキシシランの加水分解重縮合物を含む透明被膜形成用塗布液が得られる。このような塗布液中に含まれる被膜形成成分の濃度は、酸化物換算で0.5〜2.0重量%であることが好ましい。本発明で使用される透明被膜形成用塗布液は、前記透明導電性被膜形成用塗布液の場合と同様に、脱イオン処理を行い、透明導電性塗布液のイオン濃度を前記透明導電性被膜形成用塗布液中の濃度と同じレベルまで低減させてもよい。
【0079】
さらにまた、本発明で使用される透明被膜形成用塗布液には、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料や多孔質シリカや中空シリカで構成された微粒子、透明被膜の透明度および反射防止性能を阻害しない程度に少量の導電性微粒子および/または染料または顔料などの添加剤が含まれていてもよい。本発明では、このような透明被膜形成用塗布液を塗布して形成した被膜を、乾燥時、または乾燥後に、50℃以上で加熱するか、未硬化の被膜に可視光線よりも波長の短い紫外線、電子線、X線、γ線などの電磁波を照射するか、あるいはアンモニアなどの活性ガス雰囲気中に晒してもよい。このようにすると、被膜形成成分の硬化が促進され、得られる透明被膜の硬度が高くなる。
【0080】
さらに、透明被膜形成用塗布液を塗布して被膜を形成する際に、透明導電性微粒子層を常温〜90℃に保持しながら透明被膜形成用塗布液を塗布して、前記のような処理を行うと、透明被膜の表面にリング状の凹凸が形成し、ギラツキの少ないアンチグレアの透明被膜付基材が得られる。
【0081】
表示装置
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、所定の特性を備えた金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子から透明導電性微粒子が形成されているので、電磁遮蔽に必要な10〜10Ω/□の範囲の表面抵抗を有し、かつ可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有しており、このような透明導電性被膜付基材は、表示装置の前面板として好適に用いられる。
【0082】
本発明に係る表示装置は、ブラウン管(CRT)、蛍光表示管(FIP)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶用ディスプレイ(LCD)などのような電気的に画像を表示する装置であり、上記のような透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備えている。従来の前面板を備えた表示装置を作動させると、前面板に画像が表示されると同時に電磁波が前面板から放出されることが知られている。本発明に係る表示装置では、前面板が10〜10Ω/□の表面抵抗を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、このような電磁波、およびこの電磁波の放出に伴って生じる電磁場を効果的に遮蔽することができる。
【0083】
また、表示装置の前面板で反射光が生じると、この反射光によって表示画像が見にくくなるが、本発明に係る表示装置では、前面板が可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、このような反射光を効果的に防止することができる。さらに、ブラウン管の前面板が、本発明に係る透明導電性被膜付基材で構成され、この透明導電性被膜のうち、透明導電性微粒子層、その上に形成された透明被膜の少なくとも一方に少量の染料または顔料が含まれている場合には、これらの染料または顔料がそれぞれ固有な波長の光を吸収し、これによりブラウン管から放映される表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0084】
本発明によれば以下の効果がある。金属微粒子と、分散媒とを含む金属微粒子分散液において、前記金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含み、その一次粒子径が1〜30nmの範囲であり、二次粒子径が5〜100nmの範囲であり、当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることと、金属微粒子分散液の微粒子濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/gの範囲であり、電気伝導度が1〜15μS/cmの範囲であることと、を備えている。これによって、当該分散液に含まれる金属微粒子は高い導電性を保持するとともに、高温下でも酸化が抑制され、合金的特性を有し、導電性被膜に用いた場合に金属の酸化やイオン化を抑制することができ、粒子成長が抑制されるので導電性や光透過率の低下を抑制することができる。さらに、粒子表面が酸化されているものは、表面電荷量が高く、分散性や安定性に優れている。
【0085】
このような金属微粒子分散液を含む透明導電性被膜形成用塗布液はポットライフが長く、この透明導電性被膜形成用塗布液を用いると導電性、電磁遮蔽性に優れるとともに、信頼性が高い透明導電性被膜が形成された透明導電性被膜付基材を得ることができる。また、この金属微粒子分散液は、分散性や安定性に優れているので有機安定化剤の使用量を少なくでき、塗膜を形成した後に有機安定化剤を除去することが容易であり、また有機安定化剤が残存して導電性を阻害することを抑制することができる。また、従来のように有機安定化剤を除去するため被膜形成後の基材を400℃以上の高温で焼成する必要がなく、低温で除去することができるので高温焼成による金属微粒子の凝集、融着を防止できるとともに、得られる被膜のへーズの劣化を防止できる。
【0086】
また本発明に係る金属微粒子の製造方法によれば、上記した金属微粒子を効率よく得ることができる。本発明によれば、導電性、電磁遮蔽性に優れるとともに信頼性が高い透明導電性被膜を形成しうるポットライフの長い透明導電性被膜形成用塗布液を得ることができる。
【0087】
そして本発明によれば、導電性、電磁遮蔽性に優れるとともに、信頼性が高い透明導電性被膜が形成された透明導電性被膜付基材を得ることができる。このような透明導電性被膜付基材を表示装置の前面板として用いれば、電磁遮蔽性に優れるとともに反射防止性にも優れた表示装置を得ることができる。
【0088】
このほか本発明で得られた金属微粒子は、高温での酸化が抑制されているため、導電材料以外での用途での利用が可能である。例えば、金属微粒子を各種担体に担持させることによって、高温で使用する触媒用途やガスセンサーなどの用途での利用も可能である。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[測定方法]
本願で採用した測定方法について以下に記す。
[1]金属微粒子の一次粒子径の測定
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−5500)により、試料(金属微粒子)を倍率30万倍で写真撮影して確認した。
[2]金属微粒子二次粒子径の測定
微粒子の分散液を0.5%に純水を用いて希釈し、マイクロトラックUPA型(日機装(株)性)を用いて測定した。
[3]金属微粒子のpH・電気伝導度の測定
微粒子の分散液を0.5%に純水を用いて希釈し、pHメーター及び電気伝導度計を用いて25℃の条件で測定した。
【0090】
[4]金属微粒子の組成分析及び不純物量の分析
試料(金属微粒子分散液・金属微粒子担持触媒)を600℃にて焼成し、残渣をアルカリ溶融剤にて溶融した後、28質量%塩酸若しくは硝酸水溶液にて溶解し、溶解液を純水で希釈した後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS1200A(セイコー電子株式会社製)にて測定した。また、陰イオン成分(Cl成分を含む)に関しては液体クロマトグラフィーを用いて測定した。この測定法で測定したハロゲン(Cl成分)以外の陰イオン及び金属微粒子以外の陽イオン成分を不純物量と定義し算出した。
【0091】
[5]表面電荷量の測定
表面電位滴定装置(Mutek(株)pcd−03)を用いて、微粒子の分散液を0.5%に希釈し、0.001Nのpoly−ジフェニルアンモニウムクロライドで滴定し表面電荷量(μeq/g)を求めた。
[6]金属微粒子の酸化状態の測定
微粒子分散液を105℃の条件で真空乾燥を行い得られた固形物、及び大気中で200℃で乾燥させて得られた固形物をX線光電子分光分析装置を用いて測定し、酸化物量を算出するとともに、大気中200℃乾燥と105℃真空乾燥の酸化物量の差を比較することによって酸化のされ易さを測定した。
[7]透明導電性被膜付基材膜特性の測定
表面抵抗、ヘーズ、ボトム反射率、視感反射率等の測定は、下記に記載した方法で製膜した、透明導電性被膜付基材を用い、表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、ヘーズをヘーズコンピューター(日本電色(株)製:3000A)で測定した。反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD−3000)を用いて測定し、波長400〜700nmの範囲で反射率が最も低い反射率としこれをボトム反射率とした。
【0092】
[8]透明導電性被膜付基材膜信頼性評価
(i)耐過酸化水素性
透明導電性被膜付基材を10%の過酸化水素に72時間浸漬させ、浸漬前後の抵抗値の変化率を算出し下記の序列で判定した。
○:抵抗変化率1.2倍未満
△:抵抗変化率1.2倍以上〜1.5倍未満
×:抵抗変化率1.5倍以上
(ii)耐塩酸性
透明導電性被膜付基材を10%の塩酸に72時間浸漬させ、浸漬前後の抵抗値の変化率を算出し下記の序列で判定した。
○:抵抗変化率1.2倍未満
△:抵抗変化率1.2倍以上〜1.5倍未満
×:抵抗変化率1.5倍以上
【0093】
[合成例1]
Pd微粒子分散液(Pdコロイド溶液)の合成
クエン酸水溶液(濃度30質量%)219gに還元剤として硫酸第一鉄122gを溶解させた溶液を調製した。そして、この溶液341gを、硝酸パラジウム水溶液(濃度20質量%)39gに室温で添加し、充分に混合することによりPd粒子の分散液を調製した。限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて粗大不純物を除去し、濃縮しPd換算濃度2.5%のPdコロイド溶液(1)を得た。得られたPdコロイド溶液の粒子径は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−5500)で測定したところ平均粒子径は2nmであった。
【0094】
この得られたPdコロイド溶液(1)、100gに1%塩酸を1g添加し、1時間攪拌後、1%アンモニア水を1g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いPdコロイド溶液(1−2)を得た。このPdコロイド溶液(1−2)を(実施例1)とし、Pdコロイド溶液(1)を(比較例1)とする。(実施例1)、(比較例1)に係るコロイドの物性を(表1)に示した。
【0095】
[合成例2]
Pd−Pt微粒子分散液(Pd−Ptコロイド溶液)の合成
硝酸パラジウム(II)水和物22.5g(パラジウム金属換算で9g)と塩化白金酸6水和物25g(白金金属換算で9g)を純水16,000gに溶解して得た金属塩水溶液に、錯化安定化剤として濃度5.0重量%のクエン酸3ナトリウム水溶液1,660gと還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液140gとを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌混合して、水に白金微粒子が分散してなる白金コロイド溶液を得た。ついで、白金コロイド溶液を限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて粗大不純物を除去し、濃縮し、金属換算で濃度2.5重量%のPd−Ptコロイド溶液(2)とした。
【0096】
この得られたPd−Ptコロイド溶液(2)、100gに1%塩酸を5g添加し、1時間攪拌後、1%アンモニア水を1g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いPd−Ptコロイド溶液(2−2)を得た。このPd−Ptコロイド溶液(2−2)を(実施例2)とし、Pd−Ptコロイド溶液(2)を(比較例2)とする。(実施例2)、(比較例2)に係るコロイドの物性を(表1)に示した。
【0097】
[合成例3]
Ru粒子分散液(Ruコロイド溶液)の合成
塩化ルテニウム(III)3水和物、23.3g(ルテニウム金属換算で9g)を純水16,000gに溶解して得た金属塩水溶液に、錯化安定化剤として濃度5.0重量%のクエン酸3ナトリウム水溶液1,660gと還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液140gとを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌混合して、水にルテニウム微粒子が分散してなるルテニウムコロイド溶液を得た。ついで、ルテニウムコロイド溶液を限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて粗大不純物を除去し、濃縮し、ルテニウム金属換算で濃度2.5重量%のルテニウムコロイド溶液(3)とした。
【0098】
この得られたRuコロイド溶液(3)、100gに1%硝酸を5g添加し、1時間攪拌後、1%アンモニア水を5g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いRuコロイド溶液(3−2)を得た。このRuコロイド溶液(3−2)を(実施例3)とし、Ruコロイド溶液(3)を(比較例3)とする。(実施例3)、(比較例3)に係るコロイドの物性を表−1に示した。
【0099】
[合成例4]
Rh粒子分散液(Rhコロイド溶液)の合成
塩化ロジウム(III)3水和物、23.3g(ロジウム金属換算で9g)を純水100gに溶解して得た金属塩水溶液に、錯化安定化剤として濃度5.0重量%のポリビニルピロリドン(関東化学製 K−30 分子量40000)水溶液50gと溶剤としてモノエチレングリコール900gを加え、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌混合して、ロジウム微粒子が分散してなるロジウムコロイド溶液を得た。次いでロジウムコロイド溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)10g入れ脱塩を行った。ロジウム金属換算で濃度2.5重量%のロジウムコロイド溶液(4)を得た。
【0100】
この得られたRhコロイド溶液(4)、100gに1%酢酸を5g添加し、1時間攪拌後、1%テトラメチルアンモニウム水を5g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、次いで限外濾器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて高分子成分を除去し、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いRhコロイド溶液(4−2)を得た。このRhコロイド溶液(4−2)を(実施例4)とし、Rhコロイド溶液(4)を(比較例4)とする。(実施例4)、(比較例4)に係るココロイドの物性を(表1)に示した。
【0101】
[合成例5]
Ag−Pd粒子分散液(Ag−Pdコロイド溶液)の合成
クエン酸水溶液(濃度30質量%)219gに還元剤として硫酸第一鉄122gを溶解させた溶液を調製した。そして、この溶液341gを、硝酸銀水溶液(濃度10質量%)80gに室温で添加し、ついで硝酸パラジウム水溶液(濃度20質量%)39gに室温で添加し、充分に混合することによりAg−Pd粒子の分散液を調製した。限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて粗大不純物を除去し、濃縮しAg換算濃度2.5%のAg−Pdコロイド溶液(5)を得た。
【0102】
得られたAg−Pdコロイド溶液(5)100gに1%塩酸を0.5g添加し、1%テトラメチルアンモニウム水を5g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いAg−Pdコロイド溶液(5−2)を得た。このAg−Pdコロイド溶液(5−2)を(実施例5)とし、Ag−Pdコロイド溶液(5)を(比較例5)とする。(実施例5)、(比較例5)に係るコロイドの物性を表−1に示した。
【0103】
[合成例6]
Pt−Rh粒子分散液(Pt−Rhコロイド溶液)の合成
塩化ロジウム(III)3水和物、23.3g(ロジウム金属換算で9g)と塩化白金酸6水和物25g(白金金属換算で9g)を純水100gに溶解して得た金属塩水溶液に、錯化安定化剤として濃度5.0重量%のポリビニルピロリドン(関東化学製 K−30 分子量40000)水溶液100gと溶剤としてモノエチレングリコール1800gを加え、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌混合して、白金−ロジウム複合微粒子が分散してなる白金−ロジウムコロイド溶液を得た。次いで白金−ロジウムコロイド溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。金属換算で濃度2.5重量%のPt−Rhコロイド溶液(6)を得た。
【0104】
この得られたPt−Rhコロイド溶液(6)、100gに1%蟻酸を5g添加し、1時間攪拌後、1%テトラメチルアンモニウム水を5g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、次いで限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて高分子成分を除去し、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いPt−Rhコロイド溶液(6−2)を得た。このPt−Rhコロイド溶液(6−2)を(実施例6)とし、Pt−Rhコロイド溶液(6)を(比較例6)とする。(実施例6)、(比較例6)に係るコロイドの物性を表−1に示した。
【0105】
[合成例7]
Pd−Au粒子分散液(Pd−Auコロイド溶液)の合成
硝酸パラジウム(II)水和物22.5g(パラジウム金属換算で9g)と塩化金(III)酸4水和物18.8g(金金属換算で9g)をそれぞれ純水100gに溶解して得た金属塩水溶液に、錯化安定化剤として濃度5.0重量%のポリビニルピロリドン(関東化学製 K−30 分子量40000)水溶液をそれぞれ50gずつ混合した。溶剤としてモノエチレングリコール1800g中に加え、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌混合して、パラジウム−金複合微粒子が分散してなるパラジウム−金コロイド溶液を得た。次いでパラジウム−金コロイド溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。パラジウム−金金属換算で濃度3.0重量%のパラジウム−金コロイド溶液(7)を得た。
【0106】
得られた白金−ロジウムコロイド溶液の粒子径は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−5500)で測定したところ平均粒子径は2nmであった。この得られたPd−Auコロイド溶液(7)100gに1%蟻酸5gを添加し、1時間攪拌後、1%テトラメチルアンモニウム水を5g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、次いで限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて高分子成分を除去し、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いPd−Auコロイド溶液(7−2)を得た。このPd−Auコロイド溶液(7−2)を(実施例7)とし、Pd−Auコロイド溶液(7)を(比較例7)とする。(実施例7)、(比較例7)に係るコロイドの物性を(表1)に示した。
【0107】
[合成例8]
Pd−Cu粒子分散液(Pd−Cuコロイド溶液)の合成
クエン酸水溶液(濃度30質量%)219gに還元剤として硫酸第一鉄122gを溶解させた溶液を調製した。そして、この溶液341gを、硝酸パラジウム水溶液(濃度20質量%)39gに室温で添加し、次いで硝酸銅水溶液(濃度20%)を10g充分に混合することによりPd粒子の分散液を調製した。限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて粗大不純物を除去し、濃縮しPd−Cu換算濃度3%のPd−Cuコロイド溶液(8)を得た。
【0108】
この得られたPd−Cuコロイド溶液(7)、100gに1%塩酸を0.1g添加し、1時間攪拌後、1%テトラメチルアンモニウム水を5g添加しさらに1時間攪拌した。陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いPd−Cuコロイド溶液(8−2)を得た。このPd−Cuコロイド溶液(8−2)を(実施例8)とし、Pdコロイド溶液(8)を(比較例8)とする。(実施例8)、(比較例8)に係るコロイドの物性を(表1)に示した。
【0109】
[合成例9]
Ag粒子分散液(Agコロイド溶液)の合成
クエン酸水溶液(濃度30質量%)219gに還元剤として硫酸第一鉄122gを溶解させた溶液を調製した。そして、この溶液341gを、硝酸銀水溶液(濃度10質量%)160gに室温で添加し、充分に混合することによりAg粒子の分散液を調製した。限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて粗大不純物を除去し、濃縮しAg換算濃度3%のAgコロイド溶液(9)を得た。
【0110】
得られたAg−Pdコロイド溶液(5)100gに1%蟻酸を0.5g添加し、1%テトラメチルアンモニウム水を5g添加しさらに1時間攪拌した。その後陰イオン交換樹脂(三菱化学SANUPC)を10g入れて脱塩を行った。脱塩後粗大粒子カットを遠心分離機(G=8000)で行い、ICPで濃度測定後2.5%に濃度調整を行いAgコロイド溶液(9−2)を得た。このPdコロイド溶液(9−2)を(実施例9)とし、Pdコロイド溶液(9)を(比較例9)とする。(実施例9)、(比較例9)に係るコロイドの物性を(表1)に示した。
【0111】
[合成例10](比較例用 特開2002−294301に相当)
Ag−Pd粒子分散液(Ag−Pdコロイド溶液)の合成
純水100gに、硝酸銀水溶液6.12gおよびクエン酸鉄水溶液0.1gを添加して混合金属塩水溶液を調製した。ついで、この混合金属塩水溶液に安定化剤として濃度30重量%のクエン酸3ナトリウム200gを加え、ついで還元剤として濃度25重量%の硫酸第1鉄水溶液76.5gを加え、窒素雰囲気下で20時間撹拌して、金属微粒子の分散液を調製した。得られた分散液から金属微粒子を遠心分離機により分離回収し、濃度1重量%の塩酸水溶液で洗浄した後純水に分散させ、金属換算で濃度が2.5重量%の金属微粒子の水分散液を調製した。ついで、金属微粒子の水分散液をナノマイザーシステムで処理して金属微粒子の水単分散液を調製し、3.0重量%に調製してAgコロイド溶液(10)を得た。このAgコロイド溶液(10)を(比較例10)とし、その物性を(表1)に示す。
【0112】
透明導電性被膜形成用塗布液の調製
(実施例1〜9)、(比較例1〜10)に係る調製直後の金属微粒子分散液と、この金属微粒子分散液を70℃の保管条件にて30日間保管したものと、をエタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール(5:4:1重量混合比)の混合溶媒とを混合して、各々の金属微粒子分散液から透明導電性被膜形成用塗布液を調製した。各例に係る透明導電性被膜形成用塗布液に含まれる金属微粒子の濃度を(表1)に示す。
【0113】
透明被膜形成用塗布液の調製
正珪酸エチル(SiO:28重量%)50g、エタノール194.6g、濃硝酸1.4gおよび純水34gの混合溶液を室温で5時間攪拌してSiO濃度5重量%のマトリックス形成成分を含む液を調製した。これに、エタノール/ブタノール/ジアセトンアルコール/イソプロパノール(2:1:1:5重量混合比)の混合溶媒を加え、1.3重量%の透明被膜形成用塗布液を調製した。
【0114】
透明導電性被膜付基材の製造
100mm角ガラスの表面を40℃で保持しながら、スピナー法で150rpm、90秒の条件で透明導電性被膜形成用塗布液を塗布し乾燥した。次いで、このようにして形成された透明導電性被膜上に、同じように、スピナー法でボトム反射の波長が550nmになる条件の回転数100〜300rpm、90秒の条件で透明被膜形成用塗布液を塗布・乾燥し、160℃で30分間焼成して透明導電性被膜付基材を得た。そしてこれらの透明導電性被膜付基材の膜特性を確認した。その結果を(表2)に示す。
【0115】

【0116】

【0117】
(表1)に示すように、酸処理及びアルカリ処理、並びにイオン交換樹脂による脱塩を行っている(実施例−1〜9)に係る金属微粒子分散液では、金属微粒子に対する不純物量は0.02〜0.1重量%であった。これに対してこれらの処理を行っていない(比較例−1〜10)では不純物量が0.4〜0.8重量%であり、各実施例の4〜40倍の不純物が含まれている。
【0118】
そしてこれら酸処理、アルカリ処理や脱塩が行われ、不純物の含有量が低減されたことにより、(実施例-1〜9)の金属微粒子分散液の表面電荷量は5.8〜25(μeq/g)となり、本発明の規格0.5〜45(μeq/g)の範囲内の値となった。また伝導度についても4〜13(μS/m)となって、本発明の規格1〜15(μS/m)の範囲内の値となった。そして表面電荷量、伝導度がこれらの範囲内の値となっていることにより、70℃の条件で保管した30日後の二次粒子径の変化率が0.4〜1.2倍の範囲内(規格:1.5倍以内)となり、長期間良好な分散状態が維持される触媒微粒子分散液であることが確認できた。
【0119】
これに対して酸、アルカリによる処理及び脱塩を行っていない(比較例-1〜10)では、表面電荷、伝導度共に本発明の規格を超えており、その結果、70℃の温度条件下で30日保管した後の二次粒子径の変化率が1.9〜13.1倍となり、実施例に比べて不安定な金属微粒子分散液となっている。
【0120】
また発明者らは、酸処理の際に塩酸を用いたり、原料の金属塩中に含まれたりしている場合のCl成分(塩素原子)が金属微粒子表面に吸着することによっても金属微粒子の酸化を抑制することができるのではないかと考えている。Cl成分は洗浄やイオン交換でも低減できないことから、酸処理の際に塩酸を選択することなどによって金属微粒子の酸化の抑制効果を高めることができる可能性がある。金属微粒子分散液中のCl成分の含有量は、金属微粒子に対して0.5〜3重量%程度が好ましい。
【0121】
次に酸化物の形成量について(表1)を見ると、105℃真空乾燥品、200℃大気乾燥品のいずれにおいても、酸、アルカリ処理を行った(実施例-1〜9)の酸化物量は、金属微粒子の6〜30重量%の範囲に収まっている(規格:0.1〜30重量%)。そして105℃真空乾燥品と200℃大気乾燥品との間の酸化物量の差も1〜5重量%程度であり、高温、含酸素雰囲気中でも酸化されにくい金属微粒子であるといえる。
【0122】
一方で、酸、アルカリ処理を行っていない(比較例-1〜10)(但し、比較例10では酸処理のみ実施)では、酸化物量が規格の範囲を超え、32〜95重量%となった。また、105℃真空乾燥品と200℃大気乾燥品とでは、酸化物量が10〜33重量%異なり、各実施例に比べて酸化されやすい金属微粒子であることが分かる。
【0123】
ついで各実施例、比較例に係る金属微粒子分散液から透明導電性被膜形成用塗布液を調製し、当該塗布液にて透明導電性被膜付基材を製造したときの膜特性の評価について(表2)を参照しながら検討する。
(表2)に示した(実施例-1〜9)に係る膜特性の評価結果によれば、製造直後の金属微粒子分散液を使用したもの(製造直後品)と、70℃の温度条件下で30日保管した後の金属微粒子分散液を使用したもの(30日保管品)との間で表面抵抗値、透過率、ヘーズ、反射率、ボトム波長の各特性について、各特性値が2倍を超えて変化するといった大きな特性の変化は見られなかった。また、耐過酸化水素性、耐塩酸性についても(実施例-1〜8)の評価結果が「○」で、(実施例9)のみが「△」であった。
【0124】
これに対して(比較例-1〜10)の場合には、(比較例-1〜7、9〜10)の9例において、30日保管品の表面抵抗値が製造直後品の2.1〜1900倍まで上昇し、ヘーズの値についても4〜19倍まで上昇している。そして表面抵抗値については(実施例-1〜9)が16〜8300(Ω/□)であるに対し、(比較例-1〜10)では35〜19000(Ω/□)と、その絶対値も相対的に高くなっている。
【0125】
これらの結果について、表面抵抗値やヘーズの値には金属微粒子分散液の表面電荷量や電気伝導度、二次粒子径などが影響を与えることが分かっており、表面電荷量や電気伝導度が低い各実施例では、比較例に比べて相対的に表面抵抗値が低い膜特性が得られている。そして各実施例に係る金属微粒子分散液は、生産直後品と30日保管品との間で二次粒子径の変化率が小さいことから、膜特性においても表面抵抗値やヘーズの変化が小さく、ポットライフの長い金属微粒子分散液であると評価できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子と、分散媒とを含む金属微粒子分散液において、
前記金属微粒子は、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる金属群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含み、その一次粒子径が1〜30nmの範囲であり、二次粒子径が5〜100nmの範囲であり、当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることと、
金属微粒子濃度が0.5重量%のときの表面電荷量が0.5〜45μeq/gの範囲であり、電気伝導度が1〜15μS/cmの範囲であることと、を備えたことを特徴とする金属微粒子分散液。
【請求項2】
前記金属微粒子が、前記金属群に含まれる単独の金属、またはPd−Ag、Pd−Pt、Pd−Cu、Ag−Cu、Pd−Au、Pt−Rh、Pd−Pt−Rh、Pd−Rhであることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子分散液。
【請求項3】
70℃の保管条件下で、前記金属微粒子分散液を調製してから30日間経過するまでの二次粒子径の変化率が1.5倍以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属微粒子分散液。
【請求項4】
前記金属微粒子濃度が0.5重量%のときのpHが2〜11の範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液。
【請求項5】
Cl成分の含有量が金属微粒子に対して0.5〜3重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液。
【請求項6】
前記分散媒は、水、クエン酸水溶液、モノエチレングリコールからなる分散媒群から選ばれることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液から得られたことを特徴とする金属微粒子。
【請求項8】
Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含む金属微粒子であって、
一次粒子径が1〜30nmの範囲であることと、
当該金属微粒子の0.1〜30重量%が酸化されていることと、を備えることを特徴とする金属微粒子。
【請求項9】
(A)水または有機溶媒の少なくとも一方からなる溶媒中、還元剤の存在下で、Ag、Pd、Cu、Ru、Rh、PtおよびAuからなる金属群より選ばれる少なくとも1種以上の金属の塩を還元して、金属微粒子を生成する工程と、
(B)前記金属微粒子を分散媒中に分散させてなる金属微粒子分散液に含まれる不純物を低減する工程と、
(C)前記金属微粒子を酸と接触させる工程と、
(D)前記金属微粒子をアルカリと接触させる工程と、を含むことを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項10】
前記分散媒は、金属微粒子の生成が行われる溶媒であることを特徴とする請求項9に記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項11】
前記工程(B)は、(A)、(C)、(D)の各工程の後に行われることを特徴とする請求項9または10に記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項12】
前記不純物はイオンであることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項13】
前記(C)の工程にて使用する酸が、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酢酸、蟻酸より選ばれる少なくとも1種以上の酸であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項14】
前記(D)の工程にて使用するアルカリが、アンモニア、三級アミン、四級アミンより選ばれる少なくとも1種以上のアルカリであることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の金属微粒子分散液と極性溶媒とを含むことを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項16】
さらにバインダー成分を含むことを特徴とする請求項15に記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項17】
基材と、基材上の透明導電性微粒子層のみ若しくは、該透明導電性微粒子層上に設けられ、該透明導電性微粒子層よりも屈折率が低い透明被膜とからなる透明導電性被膜付基材において、前記透明導電性微粒子層が請求項15または16に記載の透明導電性被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴とする透明導電性被膜付基材。



【公開番号】特開2012−67333(P2012−67333A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211155(P2010−211155)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】