金属微粒子配列膜およびその製造方法
【課題】ポリマー中に金属微粒子が基板と平行方向に一定間隔で層状に配列された、金属粒子配列膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜する工程(A)と、前記ポリマー膜に、特定の波長の光を照射する工程(B)とを有することを特徴とする金属微粒子配列膜の製造方法。
【解決手段】反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜する工程(A)と、前記ポリマー膜に、特定の波長の光を照射する工程(B)とを有することを特徴とする金属微粒子配列膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子を秩序だって配列する方法に関し、詳しくはポリマー膜中に金属微粒子を膜と平行方向に層状に配列させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機/無機複合体に関しては、多くの研究例があり、高分子の機能特性を改変できることから、有機高分子に無機材料を複合化させた有機/無機複合材料も盛んに開発されている。その中でも、高分子中に金属微粒子を一定の規則性を持って分散させる方法については、活発に研究が行われている。例えば、金属微粒子の前駆体として金属錯体を用い、これを昇華させ、金属の還元能力が異なるブロック共重合ポリマーに窒素下で接触させると、錯体が一方の相でのみ選択的に還元され、金属微粒子のナノレベルでの配列が実現されている(例えば非特許文献1〜3参照)。
【非特許文献1】Langmuir、19号、2963頁(2003年)
【非特許文献2】Advanced Materials、12号、1507頁(2000年)
【非特許文献3】Nature、414号、735頁(2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、報告されている高分子中の金属微粒子の配列に関しては、共重合体の各ポリマーの分布(配列形態)は自己組織的に決定されており、金属微粒子の配列を完全に制御した例は報告されていない。特に、金属微粒子をポリマー膜中に膜と平行方向に層状に配列させる方法は知られていなかった。
【0004】
本発明は、金属微粒子の新規な配列膜を、簡便な方法により製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明の異なる態様の目的は、金属微粒子の新規な配列膜を提供することである。さらに本発明の異なる態様の目的は、波長選択性の反射膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の事項に関する。
【0006】
1. 反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜する工程(A)と、
前記ポリマー膜に、特定の波長の光を照射する工程(B)と
を有することを特徴とする金属微粒子配列膜の製造方法。
【0007】
2. 前記金属微粒子配列膜の構造が、金属微粒子が密集した層がポリマー膜の膜厚方向に周期的に多層として存在する構造である上記1または2記載の製造方法。
【0008】
3. 前記ポリマー膜の製膜工程(A)は、金属成分を含むポリマー溶液を反射基板上に製膜するサブ工程と、溶媒を留去するサブ工程とを有することを特徴とする上記1記載の製造方法。
【0009】
4. 前記工程(A)に先立ち、反射基板上に、後の工程(B)で照射する波長の光を透過する剥離層を設ける工程を有し、
工程(A)において、前記剥離層の上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、
さらに、前記工程(B)の後に、光が照射された後の前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程とを有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
5. 前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程が、前記剥離層を除去する工程を含むことを特徴とする上記4記載の方法。
【0011】
6. 前記剥離層の除去が、前記剥離層の溶解により行われることを特徴とする上記5記載の方法。
【0012】
7. 前記金属成分が、前記特定の波長の光によって還元されて金属微粒子を生成する金属化合物を含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
8. 前記金属成分が、金属微粒子を含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
9. 前記金属化合物が、過塩素酸銀、硝酸銀および塩化金酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記7記載の製造方法。
【0015】
10. 前記ポリマー膜を構成するポリマーが、少なくとも前記特定の波長において透明であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
11. 前記ポリマーが、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸モノマーユニットを含有する共重合体、およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
12. 前記工程(B)において、照射する光の波長を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
13. 前記工程(B)において、照射する光の前記反射基板に対する角度を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
14. ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有する金属微粒子配列膜。
【0020】
15. 上記1〜13のいずれかに記載の方法によって製造され、ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在している構造を有する金属微粒子配列膜。
【0021】
16. 上記1〜13のいずれかに記載の製造方法により金属微粒子配列膜を製造する工程と、得られた金属微粒子配列膜の複数枚を積層する工程とを有することを特徴とする金属微粒子配列膜の多層積層体の製造方法。
【0022】
17. ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有し、上記16記載の製造方法で製造されたことを特徴とする多層積層体。
【0023】
18. 上記14もしくは15に記載の金属微粒子配列膜、または上記17に記載の多層積層体を用いた波長選択性の反射膜。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金属微粒子の層が周期的に多層積層された構造を有する新規な金属微粒子配列膜を簡便な方法で作製することができる。得られる金属微粒子配列膜は、軽量で輸送性と耐衝撃性、および機械的な柔軟性に優れるため、種々の用途で利用可能である。また特定の波長の光を選択的に反射するために、反射膜として、種々の光学素子、光学部品等に広く応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の製造方法では、反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、特定の波長λの光を照射する。以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
<反射基板>
本発明で使用できる「反射基板」は、基板の表面が、特定の波長λの光を反射できるものであれば特に限定されない。例えば、基板の表面に、アルミニウム、銀等の種々の金属および金属酸化物等から選ばれる材料を用いて、単層膜または多層膜を形成した反射鏡(ミラー)が挙げられる。その中でもガラス基板上にアルミニウム、シリカを順に製膜したものが好適である。これは、アルミニウムが紫外から可視領域において安定して高い反射率を持つ膜を形成できるためである。シリカ層はアルミニウムが酸化するのを防止する効果がある。
【0027】
反射基板中のアルミニウムの厚み(膜厚)は、例えば、100〜2000nm、好ましくは150〜1000nm、さらに好ましくは200〜800nm程度である。また、シリカの厚み(膜厚)はアルミニウムの反射特性を低下させないため薄い方が良く、例えば、5〜100nm、好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜30nm程度である。
【0028】
<金属成分を含有するポリマー膜の製膜>
「金属成分を含有するポリマー膜」は、ポリマー中に金属成分を含有し、金属元素の種類は1種類であっても2種類以上であっても良い。金属成分は、好ましくは金属化合物(錯体および塩を含む。以下同じ。)および金属微粒子の少なくとも一方を含むことが好ましい。一般には、金属化合物および/または金属微粒子を含むポリマー溶液を反射基板に塗布する方法が好ましく、特に、金属化合物が溶解したポリマー溶液を反射基板に塗布する方法が好ましい。
【0029】
本発明で用いられる金属化合物は、特定の波長λの照射によって金属微粒子を生成するものである。このような材料としては、光のエネルギーを吸収し、還元によって金属微粒子(または金属微粒子を構成する金属)を生成する化合物(すなわち、金属原子の酸化数が正である金属化合物)が知られており、通常、金属塩である場合が多い。
【0030】
このような金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物(金属塩化物など)、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、塩酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]が挙げられる。金属塩の形態は、単塩、複塩、または錯塩(電解質錯体または非電解質錯体、通常、電解質錯体)であっても、多量体(例えば、2量体)などであってもよい。また、金属化合物(金属塩)は、例えば、酸成分[塩化水素(HCl)など]、塩基成分(アンモニアなど)、水(H2O)などを含有する化合物(例えば、含ハロゲン化水素化合物、含水物、水和物など)であってもよい。金属化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。
【0031】
また、金属化合物を構成する金属元素も特に限定されない。金属化合物を構成する金属元素としては、周期表第8〜11族金属(すなわち、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金など)が好ましく、特定の実施形態においては、貴金属(銀、金、白金、ルテニウムなど)が特に好ましい。金属化合物は、これらの金属元素を単独でまたは2種以上含んでいてもよい。
【0032】
具体的な金属化合物としては、周期表第8〜11族金属化合物(金属塩を含む)が挙げられる。例えば、周期表第8〜11族金属酸塩として、無機酸塩[例えば、過塩素酸銀(AgClO4)、硝酸銀(AgNO3)などの貴金属無機酸塩]、および有機酸塩[例えば、酢酸パラジウム(Pd(CH3CO2)2など)、酢酸ロジウム([Rh(CH3CO2)2]2など)などの貴金属酢酸塩などの貴金属有機酸塩]などが挙げられる。また、周期第8〜11族金属ハロゲン化物として、貴金属ハロゲン化物[例えば、塩化銀(AgCl)、塩化金(AuCl3)、塩化白金(PtCl2、PtCl4など)、塩化パラジウム(PdCl2など)などの貴金属塩化物など]、酸成分含有金属ハロゲン化物[例えば、塩化金酸(HAuCl4など)、塩化白金酸(H2PtCl6など)などの塩化貴金属酸などの塩化水素含有貴金属ハロゲン化物]、およびこれらの水和物などが挙げられる。
【0033】
以下に、周期表第11族金属のうち、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウムについて、代表的な金属化合物を例示する。
【0034】
金化合物としては、金ハロゲン化物(AuCl、AuCl3、AuBr3、AuI、AuI3、AuCl(PPh3),AuCl(SC4H8)など)、ハロゲン化金酸またはその塩(HAuCl4、HAuCl4・4H2O、NaAuCl4・4H2O、KAuCl4・4H2Oなど)、水酸化金(AuOH)、シアン化金(AuCN)、酸化金(Au2O3など)、硫化金(Au2S、Au2S3(III)など)などの無機塩、又は、トリメチル金(III)(Au2(CH3)6)、メチル(トリフェニルホスフィン)金(I)(Au2CH3(PPh3))、4−エチルベンゼンチオラト金(I)(Au{S(C6H4)C2H5})、{μ−1,8−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,6−ジオキサオクタン}ビス{クロロ金(I)}((AuCl)2(μ−{Ph2P(CH2)2O(CH2)2O(CH2)2PPh2})、(ペンタフルオロフェニル)(テトラヒドロチオフェン)金(I)([Au(C6F5)(SC4H8)])、トリス(ペンタフルオロフェニル)(テトラヒドロチオフェン)金(III)([Au(C6F5)3(SC4H8)])などの各種金錯体が挙げられる。
【0035】
銀化合物としては、無機塩[例えば、AgF、AgCl、AgI、AgBrなどの銀ハロゲン化物、Ag2Oなどの酸化銀、Ag2SO4、AgS、AgCN、AgClO4、Ag3PO4、AgSCN、AgNO3、Ag2SO3、Ag2CO3、Ag2CrO4、Ag2Se、AgReO4、AgBF4、AgW4O16、Ag3AsO4、AgSbF6、AgPF6、AgHF2、AgIO3、AgBrO3、AgOCN、AgMnO4、AgVO3などの無機酸塩など]、有機塩(または錯体)[例えば、C6H5CO2Ag、C6H11(CH2)3CO2Ag、CH3CH(OH)CO2Ag、トリフルオロ酢酸銀(CF3CO2Ag)、C2F5CO2Ag、C3F7CO2Ag、AgO2CCH2C(OH)(CO2Ag)CH2CO2Agなどのカルボン酸塩、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀(CF3SO3Ag)などのスルホン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Ag、(C2H5)2NCS2Ag、フェニル銀(I)、テトラメシチル四銀(I)、ブチルアセチリド銀(I)、クロロ(イソシアノシクロヘキサン)銀、(シクロペンタジエニル)トリフェニルホスフィン銀(I)、ビスピリジン銀(I)過塩素酸塩、(η4−1、5−シクロオクタジエン)(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)銀(I)、ブロモ(トリ−n−ブチルホスフィン)銀(I)、ビスイミダゾール銀(I)硝酸塩、ビス(1,10−フェナントロリン)銀(I)過塩素酸塩および硝酸塩、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン銀(II)過塩素酸塩、(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン)銀(I)など]などが挙げられる。
【0036】
銅化合物としては、無機塩[例えば、Cu2O、CuO、Cu(OH)2、CuF2、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuIなどの銅ハロゲン化物、CuCO3、CuCN、Cu(NO3)2、Cu(ClO4)2、Cu2P2O7、Cu2Se、CuSe、CuSeO3、CuSO4、Cu2S、CuS、Cu(BF4)2、Cu2HgI4、CuSCN、(CF3CO2)2Cu、(CF3SO3)2Cu、CuWO4、Cu2(OH)PO4などの無機酸塩など]、有機塩(または錯体)[例えば、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、[C6H11(CH2)3CO2]2Cu、[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2Cu、(HCO2)2Cu、[HOCH2[CH(OH)]4CO2]2Cuなどのカルボン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Cu、CH3(CH2)3SCu、(CH3O)2Cuなど]などが挙げられる。
【0037】
白金化合物としては、無機塩[例えば、PtO2、PtCl2、PtCl4、PtBr2、PtBr4、PtI2、PtI5などの白金ハロゲン化物、HPtCl6・2H2Oなどのハロゲン化白金酸、PtS2、Pt(CN)2など]、有機塩(または錯体)[例えば、(CH3COCH=C(O−)CH3)Pt、(C6H5CN)2PtCl2など]などが挙げられる。
【0038】
パラジウム化合物としては、無機塩[例えば、PdO、PdCl2、PdBr2、PdI2、などのハロゲン化パラジウム、PdCN2、Pd(NO3)2、PdS、PdSO4、K2Pd(S2O3)2・H2O、塩化パラジウム酸など]、有機塩(または錯体)[例えば、Pd(CH3CO2)、プロピオン酸パラジウム(II)、(CF3CO2)2Pdなどのカルボン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Pd、(C6H5CN)2PdCl2など]などが例示できる。
【0039】
ロジウム化合物としては、無機塩[例えば、Rh2O3、RhO3、RhCl3、RhBr3、RhI3などのロジウムハロゲン化物、RhPO4、Rh2SO4など]、有機塩(または錯体)[例えば、Rh(CH3CO2)2、(CF3CO2)2Rh、{[CH3(CH2)6CO2]2Rh}2、[(CF3CF2CF2CO2)2Rh]2、{[(CH3)3CCO2]2Rh}2などのカルボン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Rhなど]などが挙げられる。
【0040】
これらの金属化合物のうち、特に、銀塩は光感受性が高く、光によって還元されやすい金属化合物であり、過塩素酸銀や硝酸銀が好適に用いられる。
【0041】
また、金属微粒子(ここでは、工程(A)の時点でポリマー膜に含まれる金属微粒子を意味する。)としては、特定の波長λの照射によって膜中を移動できるようなものが好ましく、特にコロイド状粒子などの、10nm程度以下、特に好ましくは2nm以下の金属粒子が好ましい。例えば上記の金属化合物から金属微粒子が析出したものが挙げられる。例えば、銀の微粒子が好ましい。また、金属化合物と金属微粒子の混合物であってもよい。
【0042】
ポリマー中に含有させる金属成分の割合は、ポリマーの分子量などにもよるが、ポリマー100重量部に対して、例えば、0.5〜500重量部、好ましくは1〜400重量部、さらに好ましくは5〜200重量部程度である。
【0043】
ポリマーは、特定の波長λにおいて透明であり、金属成分を均一に溶解または分散して含有することができるもの(特に溶解するもの)が好ましく使用される。加えて、一実施形態においては、有機溶媒に均一に溶解するものが好ましく使用される。
【0044】
例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのようなポリエステル類、ポリメチルメタクリレートのようなアクリルポリマー類、メチルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂のようなスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン類、ポリオキセタンのようなポリエーテル類、ナイロン6、ナイロン66のような透明ポリアミド類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリレートおよび三酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、透明ポリイミド、透明ポリウレタン、透明フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸を始めとする各種の透明ポリマーなどを挙げることが出来る。さらに、これらポリマーの構成要素であるモノマーのコポリマー、および/またはこれらポリマーの混合物も使用することができる。この中でも、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸モノマーユニットを含有する共重合体、およびポリビニルアルコールから選ばれるポリマーが好適に用いられる。
【0045】
溶媒としては、通常、ポリマーおよび金属成分を溶解または分散可能(特に溶解可能)な溶媒を使用することができる。このような溶媒としては、ポリマーおよび金属成分の種類に応じて適宜選択でき、例えば、水(酸性でも中性でもアルカリ性でも良い)、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルキルアルコール類など)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトンなどのジアルキルケトン類など)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテート、ブトキシカルビトールアセテートなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(カルビトールなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、アセタール類(アセタール、メチラールなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
溶媒の割合は、反射基板上に製膜を意図する金属成分を含有するポリマー膜の厚み(膜厚)なども考慮して決められるが、前記ポリマー100重量部に対して、例えば、溶媒10〜10000重量部、好ましくは30〜5000重量部、さらに好ましくは50〜3000重量部程度である。
【0047】
さらに、金属成分含有ポリマー溶液の反射基板への製膜法は、膜形成が可能であれば特に限定されず、慣用の塗布法、例えば、スピンコーティング法(回転塗布法)、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスト法などが利用できる。塗布装置としては、上記塗布方法に対応する装置、例えば、スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター、バーコーターなどを使用できる。
【0048】
また、基板に製膜した金属成分含有ポリマー溶液の溶媒の留去方法も特に限定されず、慣用の溶媒留去法、例えば、加熱による蒸発や各種エボパレーターによる真空乾燥が挙げられる。
【0049】
このようにして、反射基板上に製膜された金属成分を含有するポリマー膜の厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、0.5〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜20μm程度の厚さに形成することができる。
【0050】
<光照射>
本発明の製造方法では、次に、反射基板上に製膜された金属成分を含有するポリマー膜に、特定の波長λの光を照射する。波長λは、所望の波長を選ぶことができるが、前述の金属成分がこの波長の光を受けたときに、金属微粒子の生成、金属微粒子の移動、および金属粒子の成長のいずれかが起こりうるような波長領域の中から設定する。通常、金属化合物を励起して金属微粒子へ還元するのに十分なエネルギーを有する波長領域から選ばれ、紫外から可視光領域が好ましい。具体的には、200〜600nm、好ましくは300〜500nm、より好ましくは350〜500nmの波長領域から1波長が選ばれることが好ましい。このような波長範囲では、各種金属化合物を効率良く金属微粒子へ光還元することができる。
【0051】
照射する光源としては、例えば、ハロゲンランプ、水銀ランプ(低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプなど)、重水素ランプ、UVランプ、レーザ(例えば、ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマーレーザーなど)等が使用できる。一実施形態においては、超高圧水銀ランプが好適である。また、なるべく半値幅の狭い1波長を照射することが好ましい。照射波長の半値幅は、好ましくは50nm、より好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下、最も好ましくは10nm以下である。半値幅を狭くするためには、市販の狭帯域バンドパスフィルターを組み合わせるのが好ましい。
【0052】
光照射時間は、照射光源の能力(照射強度)に大きく依存するが、反応速度と共に金属成分の移動を考慮し、生成する金属粒子の径等も考慮して決めることが好ましい。限定はされないが、1例として、500Wの超高圧水銀ランプ(照射強度;165W/cm2以上)を用いる場合、照射時間は20分〜6時間、好ましくは30分〜3時間、特に好ましくは30分〜2時間である。
【0053】
<金属微粒子配列膜>
前記光照射工程により、金属成分含有ポリマー膜中で、金属化合物から金属微粒子が生成し、あるいは金属微粒子が移動し、密集して膜面に平行な層を形成し、さらにこの層が、周期的な多層構造となる。即ち、膜の断面方向で見ると、金属が密集した金属微粒子層と、ポリマーのみの層とが交互に積層された多層構造となっている。
【0054】
図18に、このような多層構造が得られる推定機構の概念図を示す。この図に示すように、入射光と反射光が干渉して、周期的な光強度分布を持つ定在波が生じ、主に光強度の大きな部分で金属微粒子の生成が起こる。また、光は、電磁波であることから、光強度の強い部分では電場強度が大きく、電場の弱い部分から強い部分へ金属微粒子が移動し、その結果、多層構造が形成されたものと推定される。一方、金属微粒子を含有したポリマー内においても、定在的な電場の強度分布が生じ、同様な機構により、金属微粒子が移動し、多層構造が形成されたものと推定される。
【0055】
また、本発明の製造方法では、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を人為的に調節することができる。上記の理論に従い、ポリマー膜の厚み方向に生じる光強度の周期を変化させるように調節することで、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)が変化する。代表的には、照射光の波長λを変えることにより調節することができる。例えば、照射光の波長を長波長とすることで金属微粒子層の繰り返し距離を長くすることができる。さらに、照射光の角度を変化させることでも、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節することができる。例えば、照射光の入射角を、大きくすることで金属微粒子層の繰り返し距離を長くすることができる。入射角の変化は、基板を傾ける、もしくは照射光をある角度で入射させるだけで実現できることから、非常に簡便な方法である。さらにこの方法では、金属微粒子層の繰り返し距離を、照射光の波長から独立して調節することができるので、製造時にあっては、反応に適した波長の光を選択することができる。そして、照射光の波長とは異なる波長の光を選択的に反射する膜を作製することも容易である。本発明の金属微粒子膜では、このようにして人為的制御によって、金属微粒子層の配列を決定することができる。尚、光照射後の処理等により、膜厚の収縮または増加が生じることがあり、その場合には、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)も変化することがある。
【0056】
干渉は、1つの光源から発し、2つの異なる経路を通って伝播した光に起こりやすく、干渉による強めあい・弱めあいが観測される位置は2つの光の光路差によって決定されるため、より詳細には、以下のような理論的説明が可能である。
【0057】
例えば、本発明において、入射光を垂直に照射した場合、反射基板からの幾何学的距離がd’である1点Pにて光源からの波長λを持つ入射光と基板からの反射光が干渉すると考える。図19(A)に、この現象を理論的に説明する概念図を示す。本発明において、薄膜の屈折率は、反射基板よりも大きいため、屈折率の大きい物質から小さい物質への入射による反射となり、点Oでの反射によって光の位相が反転することはない。即ち、入射光と反射光がこの点で干渉するためには、入射光と反射光の光路差=2×OPが薄膜中の入射波長の整数倍になることが必要である。
【0058】
即ち、反射基板からの幾何学的距離をd’、λを照射光の波長、λ’を薄膜中の光の波長、nを金属成分含有ポリマーの屈折率とすると、
2d’=mλ’=mλ/n(m=0,1,2・・・)
を満たすd’において干渉が起きる。
【0059】
薄膜全体について考えると、干渉点は反射基板からの距離によって決定されることから、基板と平行方向に層状に干渉点が存在することになり、後述する本発明の実施例における結果を理論的に説明できる。
【0060】
同様にして、ある入射角θ1で薄膜に光照射した場合は以下のように考えられる。図19Bに、この現象を理論的に説明する概念図を示す。垂直照射の場合と同様、入射光と反射光がこの点で干渉するためには、入射光と反射光の光路差=OP+OQが薄膜中の入射波長の整数倍になることが必要である。入射角θ1で薄膜に入射した場合、薄膜中の入射角θ2は、図中で示したスネルの法則を満たす値となる。薄膜の屈折率を用いることで薄膜中の入射角θ2を算出することが可能である。
【0061】
また、光路差=OP+OQについて考えると、三角定理を利用することにより、光路差は2d’cosθ2と表すことが出来る。このため、反射基板からの幾何学的距離をd’、薄膜中の入射角をθ2、λを照射光の波長、λ’は薄膜中の光の波長、nを金属成分含有ポリマーの屈折率として、
2d’cosθ2=mλ’=mλ/n(m=0,1,2,・・・)
を満たすd’において干渉が起きる。
【0062】
薄膜全体について考えると、干渉点は垂直照射の場合と同様に、反射基板からの距離によって決定されることから、基板と平行方向に層状に干渉点が存在することになり、後述する本発明の実施例における結果を理論的に説明できる。
【0063】
金属微粒子層中の金属微粒子は、その生成時においては、極めて小さいものであるが、金属微粒子において通常に観察される凝集・固結により、その粒径が大きくなり、また、実質的に金属膜と見なせる態様を取ることもある。一方、金属微粒子を含有したポリマーにおいても、光強度を大きくすることにより、定在波として生じる電場の強度の大きい部分と小さい部分の差が大きくなり、これにより、移動できる金属微粒子の大きさは大きくなる。
【0064】
このように条件にも依存するが、通常2〜100nmである。特定の態様においては、微粒子の大部分(例えば80%以上)が50nm以下のナノレベルの粒子径を有している。金属微粒子層の周期的な多層構造を利用して、金属微粒子配列膜は種々の応用が期待される。代表的には、後述するように反射膜として利用することができる。このように製造された金属微粒子配列膜は、反射基板に形成された状態で使用しても、また剥離して使用してもよい。
【0065】
{本発明の第2の実施形態}
以上説明した製造方法(第1の実施形態とする。)では、金属微粒子配列膜が反射基板上に形成されるため、材料などの選択によっては、金属微粒子配列膜を反射基板から剥離できない場合があり、用途が制限される。第2の実施形態では、金属微粒子配列膜を、自立膜として得る方法について説明する。尚、第2の実施形態の説明中で、特に言及していない事項に関しては、矛盾のない限り第1の実施形態で説明した事項(材料、条件、好ましい範囲等)が採用される。
【0066】
第2の実施形態では、反射基板上に、金属成分を含有するポリマー膜を直接製膜するのではなく、最初に反射基板上に剥離層を設ける。剥離層は、特定の波長λの照射を阻害しないような材料、即ち、その波長において透明な材料であって、後の工程で形成される金属微粒子配列膜を反射基板から剥離できるようなものであれば特に限定されない。例えば、剥離層自身が後の工程で除去されることにより、金属微粒子配列膜が剥離できる形態、反射基板と剥離層の接着強度が小さいために後の工程で金属微粒子配列膜と共に剥離できる形態、剥離層と金属微粒子配列膜との接着強度が小さいために後の工程で金属微粒子配列膜を剥離できる形態等が挙げられる。
【0067】
安定的な剥離を達成するためには、剥離層自身を後の工程で除去する形態が好ましく、特に剥離層が溶媒に溶解することで除去される形態が好ましい。このための剥離層としては、ポリマーにより形成されることが好ましく、例えば、金属成分含有ポリマー溶液の溶媒に溶けないポリマーが挙げられる。
【0068】
例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのようなポリエステル類、ポリメチルメタクリレートのようなアクリルポリマー類、メチルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂のようなスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン類、ポリオキセタンのようなポリエーテル類、ナイロン6、ナイロン66のような透明ポリアミド類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリレートおよび三酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、透明ポリイミド、透明ポリウレタン、透明フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸を始めとする各種の透明ポリマーなどを挙げることが出来る。さらに、これらポリマーの構成要素であるモノマーのコポリマー、および/またはこれらポリマーの混合物も使用することができる。この中でもスチレンが好適に用いられる。
【0069】
この剥離層の厚みは、光照射によるポリマー中の金属微粒子の配列を阻害しないようにするため、薄い方が良く、例えば、0.01〜50μm、好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.01〜5μm程度である。
【0070】
層の形成は、例えばこれらのポリマーの溶液を塗布後、溶媒を除去する方法、あるいはモノマーを必要により開始剤と共に塗布後、重合させてもよい。塗布法補は、慣用の塗布法、例えば、スピンコーティング法(回転塗布法)、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスト法などが利用できる。塗布装置としては、上記塗布方法に対応する装置、例えば、スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター、バーコーターなどを使用できる。
【0071】
このようにして、反射基板上に剥離層を形成した後、剥離層の上に、第1の実施形態と同様にして、金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、特定の波長λの光を照射する。ポリマー膜は、金属微粒子層が多層に配列した金属微粒子配列膜となる。
【0072】
次に、光が照射された後の前記ポリマー膜、即ち金属微粒子配列膜を反射基板から剥離する。剥離方法は、剥離層の材料に依存する。剥離層が界面での接着強度を小さくする物である場合には、機械的に引きはがすことができる。
【0073】
剥離層が除去可能な材料である場合、特に上述の溶解可能な材料である場合には、剥離層が溶解可能であって、金属微粒子配列膜が溶解しないような溶媒に、剥離層を浸漬することにより、剥離層を溶解除去する。その結果、金属微粒子配列膜を反射基板から剥離することができる。
【0074】
このようにして得られた、反射基板から剥離された金属微粒子配列膜は、そのまま使用してもよいし、また適当な基材に貼付して使用することもできる。例えば基材として透明または不透明のフィルムまたはシート、特に樹脂製(ポリマー製)フィルムまたはシートを使用し、これに金属微粒子配列膜を貼付または積層すると、本発明の金属微粒子配列膜の機械的柔軟性および軽量性が損なわれることなく、機械的強度および取り扱い性が向上するために、種々の用途に使用できる。
【0075】
<反射膜としての応用>
第1の実施形態および第2の実施形態として説明した本発明の金属微粒子配列膜は、種々の用途が考えられるが、特に反射膜として有用である。金属微粒子配列膜の反射特性を測定すると、後述する実施例で示されるように、この膜は、光照射した際の波長λとほぼ一致する波長位置に反射の極大値を有し、波長選択性の反射膜として機能することが明らかになった。
【0076】
そこで、シミュレーションにより、透明層中に、金属層(部分反射・部分透過性)が光学距離dの周期で多層が積層されている形態を計算すると、
d=λ/2
即ち、d’=λ’/2=λ/(2n)
(ここで、dは光学距離、d’は幾何学的距離、λは反射波長、λ’はポリマー中の波長、nはポリマーの屈折率)
を満たす波長λが選択的に反射されることが示された。
【0077】
本発明で得られる金属微粒子配列膜は、金属微粒子の層が、ほぼ等間隔のピッチで積層されているために、金属微粒子層が部分反射・部分透過性の層と類似の機能を果たしていると推定される。金属粒子層の周期(層の中央から中央までの距離)を光学距離d(幾何学的距離d’=d/n、nはポリマーの屈折率)で表すと、反射スペクトルの極大位置は、上記式を満たす波長λに対応していると考えられる。しかしながら、金属微粒子の分布、密度等により、ピークの半値幅、他波長の反射抑制等の選択性が影響を受けると考えられる。
【0078】
反射基板から剥離された本発明の金属微粒子配列膜は、撓みやすいため、石英板、樹脂製(ポリマー製)フィルムまたはシートなどのような透明な基材に挟む素子化により、散乱する光を抑制することで、波長選択性の反射膜としての特性を向上させることが可能である。
【0079】
また、反射基板から剥離された金属微粒子配列膜は、複数枚重ね合わせる、または薄膜を折りたたむなどの方法によって、互いに密接した形で積層することにより積層体とすることができる。積層体とすることで、その反射特性を向上させることが可能である。重ね合わせによる積層の反射特性の向上効果は飽和する傾向があるため、2μm程度の金属微粒子配列膜を重ね合わせて積層する場合には、例えば、2〜20枚、好ましくは2〜15枚、さらに好ましくは2〜10枚程度重ねて使用するのが良い。
【0080】
さらに、後述する実施例で示されるように、照射光の波長や入射角を変化することで金属微粒子層の繰り返し距離を制御し、照射光の波長とは異なる波長の光を選択的に反射する膜を作製できることが明らかとなった。このように、本発明によって、種々の波長の光を選択的に反射する膜を容易に作製することが出来る。
【0081】
本発明で製造される金属微粒子配列膜は、従来の、無機物や無機酸化物よりなる光学多層反射膜の代わりに使用することができる。そのため、軽量化、輸送性、耐衝撃性、機械的な柔軟性等が改良され、光学材料として光学部品等への幅広い応用が可能である。
【実施例】
【0082】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
ソーダライムガラス上に、直流スパッタ法により200nmのアルミニウムを成膜し、さらに、13.56MHzの交流スパッタ法により10nmのシリカを成膜し、反射基板とした。10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.01gに過塩素酸銀63.1mgを溶解させて得られた溶液を反射基板にスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に1時間照射した。
【0084】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図1に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ90nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0085】
(比較例1)
10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.01gに過塩素酸銀63.1mgを溶解させた。得られた溶液をソーダライムガラスにスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、ソーダライムガラス上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に照射した。
【0086】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図2に示す。ポリメタクリル酸中に析出した銀微粒子の粒径は不規則であり、反射基板を用いた際に観察された、銀粒子が基板と平行方向に層状に配列した構造は見られなかった。
【0087】
(実施例2)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリスチレンのトルエン溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。さらに、基板上の薄膜の上に、10wt%ポリアクリル酸のメタノール溶液2.51gに過塩素酸銀71.7mgのメタノール溶液2.44gを滴下して得た溶液をスピンコート(1500rpm、40秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に1時間照射した。得られた試料をキシレンに含浸させてスチレン層を溶解させ、反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した。
【0088】
得られた薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図3に示す。ポリアクリル酸中に銀が基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。さらに、この薄膜の反射スペクトルを図4に示す。照射波長である365nmに反射の極大値を持つことが分かった。
【0089】
(実施例3)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.02gに過塩素酸銀61.8mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)とg線透過フィルターを用いて、436nmの波長の紫外光を垂直に12時間照射した。
【0090】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ110nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列しており、365nmの波長を用いた場合と比較して金属微粒子層の繰り返し距離が長くなっていることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0091】
このように、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)は、照射光の波長λを変えることにより調節することができる。
【0092】
(参考例1)
60.5nm シリカ/3nm 銀/122.5nm シリカ/3nm 銀/・・・/122.5nm シリカ/3nm 銀/60.5nm シリカの構成を有する全41層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果は図6に示すとおり、365nmに最大反射波長を有することが予想される。ここで、金属層間の間隔d(光学長)は、d=λ/2 (λ=365nm)を満たしている。この結果から、実施例2の金属微粒子配列膜においても同様の原理により反射波長の選択性が起きていると推定される。
【0093】
(実施例4)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリ(メチルメタクリレート・メタクリル酸)75:25ランダムコポリマーのテトラヒドロフラン(THF)溶液4.99gに過塩素酸銀51.5mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に1時間照射した。
【0094】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図7に示す。ポリマー中に銀微粒子がおよそ108nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0095】
(実施例5)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリビニルアルコールの水溶液5.04gに硝酸銀98.0mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(3000rpm、30秒間)した後、室温で5時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に2時間照射した。
【0096】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図8に示す。ポリビニルアルコール中に銀微粒子がおよそ120nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0097】
(実施例6)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリスチレンのトルエン溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。さらに、基板上の薄膜の上に、5wt%ポリアクリル酸のメタノール溶液10.01gに17wt%塩化金酸の希塩酸水溶液704mgを滴下して得た溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に3時間照射した。得られた試料をキシレンに含浸させてスチレン層を溶解させ、反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した。
【0098】
得られた薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図9に示す。ポリアクリル酸中に金微粒子がおよそ130nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、金粒子の多くは10nm程度の粒径を持つことが観察された。
【0099】
(実施例7)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.02gに過塩素酸銀64.3mgを溶解させて得られた溶液を反射基板にスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を30°の入射角で1時間照射した。
【0100】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図10に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ105nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0101】
(実施例8)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.02gに過塩素酸銀64.3mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を45°の入射角で1時間照射した。
【0102】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図11に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ109nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0103】
(実施例9)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液4.00gに過塩素酸銀52.0mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を60°の入射角で1時間照射した。
【0104】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図12に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ122nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0105】
このように、照射光の入射角を大きくすることで金属微粒子層の繰り返し距離を長くすることができる。即ち、同一の波長λにて配列を行う場合、照射光の入射角を変化させることで、入射光と反射光の光路差を制御することが出来、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節することが可能である。
【0106】
(参考例2)
実施例7(入射角30°)でのTEM写真を基にして、100.0nm ポリメタクリル酸/10nm 銀/95.0nm ポリメタクリル酸/10nm 銀/・・・/100.0nm ポリメタクリル酸/10nm 銀の構成を有する全28層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果は図13に示すとおり、326nmに極大反射波長を有することが予想される。ここで、326nmにおけるポリマーの屈折率は、分光エリプソメトリーによる測定より、おおよそ1.55であるから、金属層間の間隔d(光学長)は、d=nd’=λ/2 (λ=326nm、幾何学的距離d’=105nm)を満たしている。同様に、実施例8(入射角45°)および9(入射角60°)でのTEM写真を基にして、反射特性を予想した結果を合わせて図13に示す。実施例8および9においても、上記の関係式は成り立っており、入射角を変化させることで極大反射波長を制御できることを確認した。即ち、照射光の角度を変化することで、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節し、反射波長の選択性を変化することが出来ると推定される。
【0107】
(参考例3)
一方、図19Aを用いて説明した干渉理論に基づいて、λ=365nmの光を垂直に照射した場合の金属微粒子配列膜の構成を推定することが可能であり、116.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/116.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/・・・/116.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀の構成を有する全38層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果を図14に示す。
【0108】
さらに、同様にしてλ=365nmの光を60°の角度で照射した場合の金属微粒子配列膜の構成を推定することが可能であり、141.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/141.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/・・・/141.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀の構成を有する全38層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果を図14に示す。
【0109】
(実施例10)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリ(メチルメタクリレート・メタクリル酸)75:25ランダムコポリマーのテトラヒドロフラン(THF)溶液5.00gに過塩素酸銀50.1mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に2時間照射した。得られた試料の反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した後、薄膜を2枚の石英板に挟んで光学素子を作製した。
【0110】
得られた光学素子の反射スペクトルを図15に示す。ほぼ参考例3で示した干渉理論に基づく予測通りに、照射波長のごく近傍である360nmにおいて、反射の極大値24.1%を持つことが分かった。
【0111】
さらに、同一の方法で金属微粒子配列膜を複数枚作製し、これを所定の枚数重ね合わせて石英板に挟んだ光学素子を作製した際の反射スペクトルを図16に示す。3枚及び9枚積層した場合においては、1枚よりもそれぞれ高い反射極大値(3枚;27.6、9枚;27.1%)を示すことが分かった。このように、金属微粒子配列膜を複数枚積層することで反射特性を向上させることが可能である。
【0112】
(実施例11)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリ(メチルメタクリレート・メタクリル酸)75:25ランダムコポリマーのテトラヒドロフラン(THF)溶液5.00gに過塩素酸銀50.1mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を60°の入射角で3時間照射した。得られた試料の反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した後、薄膜を2枚の石英板に挟んで光学素子を作製した。
【0113】
得られた光学素子の反射スペクトルを図17に示す。反射極大となる波長が430nmにシフトし、反射極大値30.5%を持つことが分かった。このように、照射光の角度を変化することで、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節し、ほぼ参考例3で示した干渉理論に基づく予測通りに反射波長の選択性を変化することが出来ることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施例1で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図2】比較例1の金属−ポリマー複合体のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、金属−ポリマー複合体層となっている。
【図3】実施例2の金属微粒子配列膜のTEM写真である。尚、下部と上部は試料作製のための包埋樹脂である。
【図4】実施例2の金属微粒子配列膜の反射特性を示す図である。
【図5】実施例3で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図6】参考例1の光学薄膜設計ソフトEssential Macleodでの光学特性予測を示す図である。
【図7】実施例4で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図8】実施例5で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図9】実施例6で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。なお下部より、試料作製のための包埋樹脂、金微粒子配列ポリマー層となっている。
【図10】実施例7で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図11】実施例8で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図12】実施例9で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図13】参考例2の光学薄膜設計ソフトEssential Macleodでの光学特性予測を示す図である。
【図14】参考例3の光学薄膜設計ソフトEssential Macleodでの光学特性予測を示す図である。
【図15】実施例10の金属微粒子配列膜1枚を石英板に挟んで光学素子を作製した際の反射特性を示す図である。
【図16】実施例10の金属微粒子配列膜を複数枚作製し、これを所定の枚数重ね合わせ、石英板に挟んで光学素子を作製した際の反射特性を示す図である。
【図17】実施例11の金属微粒子配列膜の反射特性を示す図である。
【図18】本発明の製造方法において、金属微粒子層とポリマーのみの層とが交互に積層された多層構造が得られる推定機構を示した概念図である。
【図19A】入射光を垂直に照射した場合において、入射光と基板からの反射光が干渉する条件を理論的に説明する概念図である。
【図19B】ある入射角θ1で薄膜に光照射した場合において、入射光と基板からの反射光が干渉する条件を理論的に説明する概念図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子を秩序だって配列する方法に関し、詳しくはポリマー膜中に金属微粒子を膜と平行方向に層状に配列させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機/無機複合体に関しては、多くの研究例があり、高分子の機能特性を改変できることから、有機高分子に無機材料を複合化させた有機/無機複合材料も盛んに開発されている。その中でも、高分子中に金属微粒子を一定の規則性を持って分散させる方法については、活発に研究が行われている。例えば、金属微粒子の前駆体として金属錯体を用い、これを昇華させ、金属の還元能力が異なるブロック共重合ポリマーに窒素下で接触させると、錯体が一方の相でのみ選択的に還元され、金属微粒子のナノレベルでの配列が実現されている(例えば非特許文献1〜3参照)。
【非特許文献1】Langmuir、19号、2963頁(2003年)
【非特許文献2】Advanced Materials、12号、1507頁(2000年)
【非特許文献3】Nature、414号、735頁(2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、報告されている高分子中の金属微粒子の配列に関しては、共重合体の各ポリマーの分布(配列形態)は自己組織的に決定されており、金属微粒子の配列を完全に制御した例は報告されていない。特に、金属微粒子をポリマー膜中に膜と平行方向に層状に配列させる方法は知られていなかった。
【0004】
本発明は、金属微粒子の新規な配列膜を、簡便な方法により製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明の異なる態様の目的は、金属微粒子の新規な配列膜を提供することである。さらに本発明の異なる態様の目的は、波長選択性の反射膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の事項に関する。
【0006】
1. 反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜する工程(A)と、
前記ポリマー膜に、特定の波長の光を照射する工程(B)と
を有することを特徴とする金属微粒子配列膜の製造方法。
【0007】
2. 前記金属微粒子配列膜の構造が、金属微粒子が密集した層がポリマー膜の膜厚方向に周期的に多層として存在する構造である上記1または2記載の製造方法。
【0008】
3. 前記ポリマー膜の製膜工程(A)は、金属成分を含むポリマー溶液を反射基板上に製膜するサブ工程と、溶媒を留去するサブ工程とを有することを特徴とする上記1記載の製造方法。
【0009】
4. 前記工程(A)に先立ち、反射基板上に、後の工程(B)で照射する波長の光を透過する剥離層を設ける工程を有し、
工程(A)において、前記剥離層の上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、
さらに、前記工程(B)の後に、光が照射された後の前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程とを有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
5. 前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程が、前記剥離層を除去する工程を含むことを特徴とする上記4記載の方法。
【0011】
6. 前記剥離層の除去が、前記剥離層の溶解により行われることを特徴とする上記5記載の方法。
【0012】
7. 前記金属成分が、前記特定の波長の光によって還元されて金属微粒子を生成する金属化合物を含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
8. 前記金属成分が、金属微粒子を含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
9. 前記金属化合物が、過塩素酸銀、硝酸銀および塩化金酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記7記載の製造方法。
【0015】
10. 前記ポリマー膜を構成するポリマーが、少なくとも前記特定の波長において透明であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
11. 前記ポリマーが、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸モノマーユニットを含有する共重合体、およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
12. 前記工程(B)において、照射する光の波長を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
13. 前記工程(B)において、照射する光の前記反射基板に対する角度を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
14. ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有する金属微粒子配列膜。
【0020】
15. 上記1〜13のいずれかに記載の方法によって製造され、ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在している構造を有する金属微粒子配列膜。
【0021】
16. 上記1〜13のいずれかに記載の製造方法により金属微粒子配列膜を製造する工程と、得られた金属微粒子配列膜の複数枚を積層する工程とを有することを特徴とする金属微粒子配列膜の多層積層体の製造方法。
【0022】
17. ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有し、上記16記載の製造方法で製造されたことを特徴とする多層積層体。
【0023】
18. 上記14もしくは15に記載の金属微粒子配列膜、または上記17に記載の多層積層体を用いた波長選択性の反射膜。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金属微粒子の層が周期的に多層積層された構造を有する新規な金属微粒子配列膜を簡便な方法で作製することができる。得られる金属微粒子配列膜は、軽量で輸送性と耐衝撃性、および機械的な柔軟性に優れるため、種々の用途で利用可能である。また特定の波長の光を選択的に反射するために、反射膜として、種々の光学素子、光学部品等に広く応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の製造方法では、反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、特定の波長λの光を照射する。以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
<反射基板>
本発明で使用できる「反射基板」は、基板の表面が、特定の波長λの光を反射できるものであれば特に限定されない。例えば、基板の表面に、アルミニウム、銀等の種々の金属および金属酸化物等から選ばれる材料を用いて、単層膜または多層膜を形成した反射鏡(ミラー)が挙げられる。その中でもガラス基板上にアルミニウム、シリカを順に製膜したものが好適である。これは、アルミニウムが紫外から可視領域において安定して高い反射率を持つ膜を形成できるためである。シリカ層はアルミニウムが酸化するのを防止する効果がある。
【0027】
反射基板中のアルミニウムの厚み(膜厚)は、例えば、100〜2000nm、好ましくは150〜1000nm、さらに好ましくは200〜800nm程度である。また、シリカの厚み(膜厚)はアルミニウムの反射特性を低下させないため薄い方が良く、例えば、5〜100nm、好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜30nm程度である。
【0028】
<金属成分を含有するポリマー膜の製膜>
「金属成分を含有するポリマー膜」は、ポリマー中に金属成分を含有し、金属元素の種類は1種類であっても2種類以上であっても良い。金属成分は、好ましくは金属化合物(錯体および塩を含む。以下同じ。)および金属微粒子の少なくとも一方を含むことが好ましい。一般には、金属化合物および/または金属微粒子を含むポリマー溶液を反射基板に塗布する方法が好ましく、特に、金属化合物が溶解したポリマー溶液を反射基板に塗布する方法が好ましい。
【0029】
本発明で用いられる金属化合物は、特定の波長λの照射によって金属微粒子を生成するものである。このような材料としては、光のエネルギーを吸収し、還元によって金属微粒子(または金属微粒子を構成する金属)を生成する化合物(すなわち、金属原子の酸化数が正である金属化合物)が知られており、通常、金属塩である場合が多い。
【0030】
このような金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物(金属塩化物など)、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、塩酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]が挙げられる。金属塩の形態は、単塩、複塩、または錯塩(電解質錯体または非電解質錯体、通常、電解質錯体)であっても、多量体(例えば、2量体)などであってもよい。また、金属化合物(金属塩)は、例えば、酸成分[塩化水素(HCl)など]、塩基成分(アンモニアなど)、水(H2O)などを含有する化合物(例えば、含ハロゲン化水素化合物、含水物、水和物など)であってもよい。金属化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。
【0031】
また、金属化合物を構成する金属元素も特に限定されない。金属化合物を構成する金属元素としては、周期表第8〜11族金属(すなわち、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金など)が好ましく、特定の実施形態においては、貴金属(銀、金、白金、ルテニウムなど)が特に好ましい。金属化合物は、これらの金属元素を単独でまたは2種以上含んでいてもよい。
【0032】
具体的な金属化合物としては、周期表第8〜11族金属化合物(金属塩を含む)が挙げられる。例えば、周期表第8〜11族金属酸塩として、無機酸塩[例えば、過塩素酸銀(AgClO4)、硝酸銀(AgNO3)などの貴金属無機酸塩]、および有機酸塩[例えば、酢酸パラジウム(Pd(CH3CO2)2など)、酢酸ロジウム([Rh(CH3CO2)2]2など)などの貴金属酢酸塩などの貴金属有機酸塩]などが挙げられる。また、周期第8〜11族金属ハロゲン化物として、貴金属ハロゲン化物[例えば、塩化銀(AgCl)、塩化金(AuCl3)、塩化白金(PtCl2、PtCl4など)、塩化パラジウム(PdCl2など)などの貴金属塩化物など]、酸成分含有金属ハロゲン化物[例えば、塩化金酸(HAuCl4など)、塩化白金酸(H2PtCl6など)などの塩化貴金属酸などの塩化水素含有貴金属ハロゲン化物]、およびこれらの水和物などが挙げられる。
【0033】
以下に、周期表第11族金属のうち、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウムについて、代表的な金属化合物を例示する。
【0034】
金化合物としては、金ハロゲン化物(AuCl、AuCl3、AuBr3、AuI、AuI3、AuCl(PPh3),AuCl(SC4H8)など)、ハロゲン化金酸またはその塩(HAuCl4、HAuCl4・4H2O、NaAuCl4・4H2O、KAuCl4・4H2Oなど)、水酸化金(AuOH)、シアン化金(AuCN)、酸化金(Au2O3など)、硫化金(Au2S、Au2S3(III)など)などの無機塩、又は、トリメチル金(III)(Au2(CH3)6)、メチル(トリフェニルホスフィン)金(I)(Au2CH3(PPh3))、4−エチルベンゼンチオラト金(I)(Au{S(C6H4)C2H5})、{μ−1,8−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,6−ジオキサオクタン}ビス{クロロ金(I)}((AuCl)2(μ−{Ph2P(CH2)2O(CH2)2O(CH2)2PPh2})、(ペンタフルオロフェニル)(テトラヒドロチオフェン)金(I)([Au(C6F5)(SC4H8)])、トリス(ペンタフルオロフェニル)(テトラヒドロチオフェン)金(III)([Au(C6F5)3(SC4H8)])などの各種金錯体が挙げられる。
【0035】
銀化合物としては、無機塩[例えば、AgF、AgCl、AgI、AgBrなどの銀ハロゲン化物、Ag2Oなどの酸化銀、Ag2SO4、AgS、AgCN、AgClO4、Ag3PO4、AgSCN、AgNO3、Ag2SO3、Ag2CO3、Ag2CrO4、Ag2Se、AgReO4、AgBF4、AgW4O16、Ag3AsO4、AgSbF6、AgPF6、AgHF2、AgIO3、AgBrO3、AgOCN、AgMnO4、AgVO3などの無機酸塩など]、有機塩(または錯体)[例えば、C6H5CO2Ag、C6H11(CH2)3CO2Ag、CH3CH(OH)CO2Ag、トリフルオロ酢酸銀(CF3CO2Ag)、C2F5CO2Ag、C3F7CO2Ag、AgO2CCH2C(OH)(CO2Ag)CH2CO2Agなどのカルボン酸塩、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀(CF3SO3Ag)などのスルホン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Ag、(C2H5)2NCS2Ag、フェニル銀(I)、テトラメシチル四銀(I)、ブチルアセチリド銀(I)、クロロ(イソシアノシクロヘキサン)銀、(シクロペンタジエニル)トリフェニルホスフィン銀(I)、ビスピリジン銀(I)過塩素酸塩、(η4−1、5−シクロオクタジエン)(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)銀(I)、ブロモ(トリ−n−ブチルホスフィン)銀(I)、ビスイミダゾール銀(I)硝酸塩、ビス(1,10−フェナントロリン)銀(I)過塩素酸塩および硝酸塩、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン銀(II)過塩素酸塩、(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン)銀(I)など]などが挙げられる。
【0036】
銅化合物としては、無機塩[例えば、Cu2O、CuO、Cu(OH)2、CuF2、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuIなどの銅ハロゲン化物、CuCO3、CuCN、Cu(NO3)2、Cu(ClO4)2、Cu2P2O7、Cu2Se、CuSe、CuSeO3、CuSO4、Cu2S、CuS、Cu(BF4)2、Cu2HgI4、CuSCN、(CF3CO2)2Cu、(CF3SO3)2Cu、CuWO4、Cu2(OH)PO4などの無機酸塩など]、有機塩(または錯体)[例えば、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、[C6H11(CH2)3CO2]2Cu、[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2Cu、(HCO2)2Cu、[HOCH2[CH(OH)]4CO2]2Cuなどのカルボン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Cu、CH3(CH2)3SCu、(CH3O)2Cuなど]などが挙げられる。
【0037】
白金化合物としては、無機塩[例えば、PtO2、PtCl2、PtCl4、PtBr2、PtBr4、PtI2、PtI5などの白金ハロゲン化物、HPtCl6・2H2Oなどのハロゲン化白金酸、PtS2、Pt(CN)2など]、有機塩(または錯体)[例えば、(CH3COCH=C(O−)CH3)Pt、(C6H5CN)2PtCl2など]などが挙げられる。
【0038】
パラジウム化合物としては、無機塩[例えば、PdO、PdCl2、PdBr2、PdI2、などのハロゲン化パラジウム、PdCN2、Pd(NO3)2、PdS、PdSO4、K2Pd(S2O3)2・H2O、塩化パラジウム酸など]、有機塩(または錯体)[例えば、Pd(CH3CO2)、プロピオン酸パラジウム(II)、(CF3CO2)2Pdなどのカルボン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Pd、(C6H5CN)2PdCl2など]などが例示できる。
【0039】
ロジウム化合物としては、無機塩[例えば、Rh2O3、RhO3、RhCl3、RhBr3、RhI3などのロジウムハロゲン化物、RhPO4、Rh2SO4など]、有機塩(または錯体)[例えば、Rh(CH3CO2)2、(CF3CO2)2Rh、{[CH3(CH2)6CO2]2Rh}2、[(CF3CF2CF2CO2)2Rh]2、{[(CH3)3CCO2]2Rh}2などのカルボン酸塩、(CH3COCH=C(O−)CH3)Rhなど]などが挙げられる。
【0040】
これらの金属化合物のうち、特に、銀塩は光感受性が高く、光によって還元されやすい金属化合物であり、過塩素酸銀や硝酸銀が好適に用いられる。
【0041】
また、金属微粒子(ここでは、工程(A)の時点でポリマー膜に含まれる金属微粒子を意味する。)としては、特定の波長λの照射によって膜中を移動できるようなものが好ましく、特にコロイド状粒子などの、10nm程度以下、特に好ましくは2nm以下の金属粒子が好ましい。例えば上記の金属化合物から金属微粒子が析出したものが挙げられる。例えば、銀の微粒子が好ましい。また、金属化合物と金属微粒子の混合物であってもよい。
【0042】
ポリマー中に含有させる金属成分の割合は、ポリマーの分子量などにもよるが、ポリマー100重量部に対して、例えば、0.5〜500重量部、好ましくは1〜400重量部、さらに好ましくは5〜200重量部程度である。
【0043】
ポリマーは、特定の波長λにおいて透明であり、金属成分を均一に溶解または分散して含有することができるもの(特に溶解するもの)が好ましく使用される。加えて、一実施形態においては、有機溶媒に均一に溶解するものが好ましく使用される。
【0044】
例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのようなポリエステル類、ポリメチルメタクリレートのようなアクリルポリマー類、メチルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂のようなスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン類、ポリオキセタンのようなポリエーテル類、ナイロン6、ナイロン66のような透明ポリアミド類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリレートおよび三酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、透明ポリイミド、透明ポリウレタン、透明フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸を始めとする各種の透明ポリマーなどを挙げることが出来る。さらに、これらポリマーの構成要素であるモノマーのコポリマー、および/またはこれらポリマーの混合物も使用することができる。この中でも、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸モノマーユニットを含有する共重合体、およびポリビニルアルコールから選ばれるポリマーが好適に用いられる。
【0045】
溶媒としては、通常、ポリマーおよび金属成分を溶解または分散可能(特に溶解可能)な溶媒を使用することができる。このような溶媒としては、ポリマーおよび金属成分の種類に応じて適宜選択でき、例えば、水(酸性でも中性でもアルカリ性でも良い)、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルキルアルコール類など)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトンなどのジアルキルケトン類など)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテート、ブトキシカルビトールアセテートなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(カルビトールなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、アセタール類(アセタール、メチラールなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
溶媒の割合は、反射基板上に製膜を意図する金属成分を含有するポリマー膜の厚み(膜厚)なども考慮して決められるが、前記ポリマー100重量部に対して、例えば、溶媒10〜10000重量部、好ましくは30〜5000重量部、さらに好ましくは50〜3000重量部程度である。
【0047】
さらに、金属成分含有ポリマー溶液の反射基板への製膜法は、膜形成が可能であれば特に限定されず、慣用の塗布法、例えば、スピンコーティング法(回転塗布法)、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスト法などが利用できる。塗布装置としては、上記塗布方法に対応する装置、例えば、スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター、バーコーターなどを使用できる。
【0048】
また、基板に製膜した金属成分含有ポリマー溶液の溶媒の留去方法も特に限定されず、慣用の溶媒留去法、例えば、加熱による蒸発や各種エボパレーターによる真空乾燥が挙げられる。
【0049】
このようにして、反射基板上に製膜された金属成分を含有するポリマー膜の厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、0.5〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜20μm程度の厚さに形成することができる。
【0050】
<光照射>
本発明の製造方法では、次に、反射基板上に製膜された金属成分を含有するポリマー膜に、特定の波長λの光を照射する。波長λは、所望の波長を選ぶことができるが、前述の金属成分がこの波長の光を受けたときに、金属微粒子の生成、金属微粒子の移動、および金属粒子の成長のいずれかが起こりうるような波長領域の中から設定する。通常、金属化合物を励起して金属微粒子へ還元するのに十分なエネルギーを有する波長領域から選ばれ、紫外から可視光領域が好ましい。具体的には、200〜600nm、好ましくは300〜500nm、より好ましくは350〜500nmの波長領域から1波長が選ばれることが好ましい。このような波長範囲では、各種金属化合物を効率良く金属微粒子へ光還元することができる。
【0051】
照射する光源としては、例えば、ハロゲンランプ、水銀ランプ(低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプなど)、重水素ランプ、UVランプ、レーザ(例えば、ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマーレーザーなど)等が使用できる。一実施形態においては、超高圧水銀ランプが好適である。また、なるべく半値幅の狭い1波長を照射することが好ましい。照射波長の半値幅は、好ましくは50nm、より好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下、最も好ましくは10nm以下である。半値幅を狭くするためには、市販の狭帯域バンドパスフィルターを組み合わせるのが好ましい。
【0052】
光照射時間は、照射光源の能力(照射強度)に大きく依存するが、反応速度と共に金属成分の移動を考慮し、生成する金属粒子の径等も考慮して決めることが好ましい。限定はされないが、1例として、500Wの超高圧水銀ランプ(照射強度;165W/cm2以上)を用いる場合、照射時間は20分〜6時間、好ましくは30分〜3時間、特に好ましくは30分〜2時間である。
【0053】
<金属微粒子配列膜>
前記光照射工程により、金属成分含有ポリマー膜中で、金属化合物から金属微粒子が生成し、あるいは金属微粒子が移動し、密集して膜面に平行な層を形成し、さらにこの層が、周期的な多層構造となる。即ち、膜の断面方向で見ると、金属が密集した金属微粒子層と、ポリマーのみの層とが交互に積層された多層構造となっている。
【0054】
図18に、このような多層構造が得られる推定機構の概念図を示す。この図に示すように、入射光と反射光が干渉して、周期的な光強度分布を持つ定在波が生じ、主に光強度の大きな部分で金属微粒子の生成が起こる。また、光は、電磁波であることから、光強度の強い部分では電場強度が大きく、電場の弱い部分から強い部分へ金属微粒子が移動し、その結果、多層構造が形成されたものと推定される。一方、金属微粒子を含有したポリマー内においても、定在的な電場の強度分布が生じ、同様な機構により、金属微粒子が移動し、多層構造が形成されたものと推定される。
【0055】
また、本発明の製造方法では、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を人為的に調節することができる。上記の理論に従い、ポリマー膜の厚み方向に生じる光強度の周期を変化させるように調節することで、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)が変化する。代表的には、照射光の波長λを変えることにより調節することができる。例えば、照射光の波長を長波長とすることで金属微粒子層の繰り返し距離を長くすることができる。さらに、照射光の角度を変化させることでも、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節することができる。例えば、照射光の入射角を、大きくすることで金属微粒子層の繰り返し距離を長くすることができる。入射角の変化は、基板を傾ける、もしくは照射光をある角度で入射させるだけで実現できることから、非常に簡便な方法である。さらにこの方法では、金属微粒子層の繰り返し距離を、照射光の波長から独立して調節することができるので、製造時にあっては、反応に適した波長の光を選択することができる。そして、照射光の波長とは異なる波長の光を選択的に反射する膜を作製することも容易である。本発明の金属微粒子膜では、このようにして人為的制御によって、金属微粒子層の配列を決定することができる。尚、光照射後の処理等により、膜厚の収縮または増加が生じることがあり、その場合には、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)も変化することがある。
【0056】
干渉は、1つの光源から発し、2つの異なる経路を通って伝播した光に起こりやすく、干渉による強めあい・弱めあいが観測される位置は2つの光の光路差によって決定されるため、より詳細には、以下のような理論的説明が可能である。
【0057】
例えば、本発明において、入射光を垂直に照射した場合、反射基板からの幾何学的距離がd’である1点Pにて光源からの波長λを持つ入射光と基板からの反射光が干渉すると考える。図19(A)に、この現象を理論的に説明する概念図を示す。本発明において、薄膜の屈折率は、反射基板よりも大きいため、屈折率の大きい物質から小さい物質への入射による反射となり、点Oでの反射によって光の位相が反転することはない。即ち、入射光と反射光がこの点で干渉するためには、入射光と反射光の光路差=2×OPが薄膜中の入射波長の整数倍になることが必要である。
【0058】
即ち、反射基板からの幾何学的距離をd’、λを照射光の波長、λ’を薄膜中の光の波長、nを金属成分含有ポリマーの屈折率とすると、
2d’=mλ’=mλ/n(m=0,1,2・・・)
を満たすd’において干渉が起きる。
【0059】
薄膜全体について考えると、干渉点は反射基板からの距離によって決定されることから、基板と平行方向に層状に干渉点が存在することになり、後述する本発明の実施例における結果を理論的に説明できる。
【0060】
同様にして、ある入射角θ1で薄膜に光照射した場合は以下のように考えられる。図19Bに、この現象を理論的に説明する概念図を示す。垂直照射の場合と同様、入射光と反射光がこの点で干渉するためには、入射光と反射光の光路差=OP+OQが薄膜中の入射波長の整数倍になることが必要である。入射角θ1で薄膜に入射した場合、薄膜中の入射角θ2は、図中で示したスネルの法則を満たす値となる。薄膜の屈折率を用いることで薄膜中の入射角θ2を算出することが可能である。
【0061】
また、光路差=OP+OQについて考えると、三角定理を利用することにより、光路差は2d’cosθ2と表すことが出来る。このため、反射基板からの幾何学的距離をd’、薄膜中の入射角をθ2、λを照射光の波長、λ’は薄膜中の光の波長、nを金属成分含有ポリマーの屈折率として、
2d’cosθ2=mλ’=mλ/n(m=0,1,2,・・・)
を満たすd’において干渉が起きる。
【0062】
薄膜全体について考えると、干渉点は垂直照射の場合と同様に、反射基板からの距離によって決定されることから、基板と平行方向に層状に干渉点が存在することになり、後述する本発明の実施例における結果を理論的に説明できる。
【0063】
金属微粒子層中の金属微粒子は、その生成時においては、極めて小さいものであるが、金属微粒子において通常に観察される凝集・固結により、その粒径が大きくなり、また、実質的に金属膜と見なせる態様を取ることもある。一方、金属微粒子を含有したポリマーにおいても、光強度を大きくすることにより、定在波として生じる電場の強度の大きい部分と小さい部分の差が大きくなり、これにより、移動できる金属微粒子の大きさは大きくなる。
【0064】
このように条件にも依存するが、通常2〜100nmである。特定の態様においては、微粒子の大部分(例えば80%以上)が50nm以下のナノレベルの粒子径を有している。金属微粒子層の周期的な多層構造を利用して、金属微粒子配列膜は種々の応用が期待される。代表的には、後述するように反射膜として利用することができる。このように製造された金属微粒子配列膜は、反射基板に形成された状態で使用しても、また剥離して使用してもよい。
【0065】
{本発明の第2の実施形態}
以上説明した製造方法(第1の実施形態とする。)では、金属微粒子配列膜が反射基板上に形成されるため、材料などの選択によっては、金属微粒子配列膜を反射基板から剥離できない場合があり、用途が制限される。第2の実施形態では、金属微粒子配列膜を、自立膜として得る方法について説明する。尚、第2の実施形態の説明中で、特に言及していない事項に関しては、矛盾のない限り第1の実施形態で説明した事項(材料、条件、好ましい範囲等)が採用される。
【0066】
第2の実施形態では、反射基板上に、金属成分を含有するポリマー膜を直接製膜するのではなく、最初に反射基板上に剥離層を設ける。剥離層は、特定の波長λの照射を阻害しないような材料、即ち、その波長において透明な材料であって、後の工程で形成される金属微粒子配列膜を反射基板から剥離できるようなものであれば特に限定されない。例えば、剥離層自身が後の工程で除去されることにより、金属微粒子配列膜が剥離できる形態、反射基板と剥離層の接着強度が小さいために後の工程で金属微粒子配列膜と共に剥離できる形態、剥離層と金属微粒子配列膜との接着強度が小さいために後の工程で金属微粒子配列膜を剥離できる形態等が挙げられる。
【0067】
安定的な剥離を達成するためには、剥離層自身を後の工程で除去する形態が好ましく、特に剥離層が溶媒に溶解することで除去される形態が好ましい。このための剥離層としては、ポリマーにより形成されることが好ましく、例えば、金属成分含有ポリマー溶液の溶媒に溶けないポリマーが挙げられる。
【0068】
例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのようなポリエステル類、ポリメチルメタクリレートのようなアクリルポリマー類、メチルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂のようなスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン類、ポリオキセタンのようなポリエーテル類、ナイロン6、ナイロン66のような透明ポリアミド類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリレートおよび三酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、透明ポリイミド、透明ポリウレタン、透明フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸を始めとする各種の透明ポリマーなどを挙げることが出来る。さらに、これらポリマーの構成要素であるモノマーのコポリマー、および/またはこれらポリマーの混合物も使用することができる。この中でもスチレンが好適に用いられる。
【0069】
この剥離層の厚みは、光照射によるポリマー中の金属微粒子の配列を阻害しないようにするため、薄い方が良く、例えば、0.01〜50μm、好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.01〜5μm程度である。
【0070】
層の形成は、例えばこれらのポリマーの溶液を塗布後、溶媒を除去する方法、あるいはモノマーを必要により開始剤と共に塗布後、重合させてもよい。塗布法補は、慣用の塗布法、例えば、スピンコーティング法(回転塗布法)、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスト法などが利用できる。塗布装置としては、上記塗布方法に対応する装置、例えば、スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター、バーコーターなどを使用できる。
【0071】
このようにして、反射基板上に剥離層を形成した後、剥離層の上に、第1の実施形態と同様にして、金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、特定の波長λの光を照射する。ポリマー膜は、金属微粒子層が多層に配列した金属微粒子配列膜となる。
【0072】
次に、光が照射された後の前記ポリマー膜、即ち金属微粒子配列膜を反射基板から剥離する。剥離方法は、剥離層の材料に依存する。剥離層が界面での接着強度を小さくする物である場合には、機械的に引きはがすことができる。
【0073】
剥離層が除去可能な材料である場合、特に上述の溶解可能な材料である場合には、剥離層が溶解可能であって、金属微粒子配列膜が溶解しないような溶媒に、剥離層を浸漬することにより、剥離層を溶解除去する。その結果、金属微粒子配列膜を反射基板から剥離することができる。
【0074】
このようにして得られた、反射基板から剥離された金属微粒子配列膜は、そのまま使用してもよいし、また適当な基材に貼付して使用することもできる。例えば基材として透明または不透明のフィルムまたはシート、特に樹脂製(ポリマー製)フィルムまたはシートを使用し、これに金属微粒子配列膜を貼付または積層すると、本発明の金属微粒子配列膜の機械的柔軟性および軽量性が損なわれることなく、機械的強度および取り扱い性が向上するために、種々の用途に使用できる。
【0075】
<反射膜としての応用>
第1の実施形態および第2の実施形態として説明した本発明の金属微粒子配列膜は、種々の用途が考えられるが、特に反射膜として有用である。金属微粒子配列膜の反射特性を測定すると、後述する実施例で示されるように、この膜は、光照射した際の波長λとほぼ一致する波長位置に反射の極大値を有し、波長選択性の反射膜として機能することが明らかになった。
【0076】
そこで、シミュレーションにより、透明層中に、金属層(部分反射・部分透過性)が光学距離dの周期で多層が積層されている形態を計算すると、
d=λ/2
即ち、d’=λ’/2=λ/(2n)
(ここで、dは光学距離、d’は幾何学的距離、λは反射波長、λ’はポリマー中の波長、nはポリマーの屈折率)
を満たす波長λが選択的に反射されることが示された。
【0077】
本発明で得られる金属微粒子配列膜は、金属微粒子の層が、ほぼ等間隔のピッチで積層されているために、金属微粒子層が部分反射・部分透過性の層と類似の機能を果たしていると推定される。金属粒子層の周期(層の中央から中央までの距離)を光学距離d(幾何学的距離d’=d/n、nはポリマーの屈折率)で表すと、反射スペクトルの極大位置は、上記式を満たす波長λに対応していると考えられる。しかしながら、金属微粒子の分布、密度等により、ピークの半値幅、他波長の反射抑制等の選択性が影響を受けると考えられる。
【0078】
反射基板から剥離された本発明の金属微粒子配列膜は、撓みやすいため、石英板、樹脂製(ポリマー製)フィルムまたはシートなどのような透明な基材に挟む素子化により、散乱する光を抑制することで、波長選択性の反射膜としての特性を向上させることが可能である。
【0079】
また、反射基板から剥離された金属微粒子配列膜は、複数枚重ね合わせる、または薄膜を折りたたむなどの方法によって、互いに密接した形で積層することにより積層体とすることができる。積層体とすることで、その反射特性を向上させることが可能である。重ね合わせによる積層の反射特性の向上効果は飽和する傾向があるため、2μm程度の金属微粒子配列膜を重ね合わせて積層する場合には、例えば、2〜20枚、好ましくは2〜15枚、さらに好ましくは2〜10枚程度重ねて使用するのが良い。
【0080】
さらに、後述する実施例で示されるように、照射光の波長や入射角を変化することで金属微粒子層の繰り返し距離を制御し、照射光の波長とは異なる波長の光を選択的に反射する膜を作製できることが明らかとなった。このように、本発明によって、種々の波長の光を選択的に反射する膜を容易に作製することが出来る。
【0081】
本発明で製造される金属微粒子配列膜は、従来の、無機物や無機酸化物よりなる光学多層反射膜の代わりに使用することができる。そのため、軽量化、輸送性、耐衝撃性、機械的な柔軟性等が改良され、光学材料として光学部品等への幅広い応用が可能である。
【実施例】
【0082】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
ソーダライムガラス上に、直流スパッタ法により200nmのアルミニウムを成膜し、さらに、13.56MHzの交流スパッタ法により10nmのシリカを成膜し、反射基板とした。10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.01gに過塩素酸銀63.1mgを溶解させて得られた溶液を反射基板にスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に1時間照射した。
【0084】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図1に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ90nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0085】
(比較例1)
10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.01gに過塩素酸銀63.1mgを溶解させた。得られた溶液をソーダライムガラスにスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、ソーダライムガラス上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に照射した。
【0086】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図2に示す。ポリメタクリル酸中に析出した銀微粒子の粒径は不規則であり、反射基板を用いた際に観察された、銀粒子が基板と平行方向に層状に配列した構造は見られなかった。
【0087】
(実施例2)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリスチレンのトルエン溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。さらに、基板上の薄膜の上に、10wt%ポリアクリル酸のメタノール溶液2.51gに過塩素酸銀71.7mgのメタノール溶液2.44gを滴下して得た溶液をスピンコート(1500rpm、40秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に1時間照射した。得られた試料をキシレンに含浸させてスチレン層を溶解させ、反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した。
【0088】
得られた薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図3に示す。ポリアクリル酸中に銀が基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。さらに、この薄膜の反射スペクトルを図4に示す。照射波長である365nmに反射の極大値を持つことが分かった。
【0089】
(実施例3)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.02gに過塩素酸銀61.8mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)とg線透過フィルターを用いて、436nmの波長の紫外光を垂直に12時間照射した。
【0090】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ110nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列しており、365nmの波長を用いた場合と比較して金属微粒子層の繰り返し距離が長くなっていることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0091】
このように、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)は、照射光の波長λを変えることにより調節することができる。
【0092】
(参考例1)
60.5nm シリカ/3nm 銀/122.5nm シリカ/3nm 銀/・・・/122.5nm シリカ/3nm 銀/60.5nm シリカの構成を有する全41層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果は図6に示すとおり、365nmに最大反射波長を有することが予想される。ここで、金属層間の間隔d(光学長)は、d=λ/2 (λ=365nm)を満たしている。この結果から、実施例2の金属微粒子配列膜においても同様の原理により反射波長の選択性が起きていると推定される。
【0093】
(実施例4)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリ(メチルメタクリレート・メタクリル酸)75:25ランダムコポリマーのテトラヒドロフラン(THF)溶液4.99gに過塩素酸銀51.5mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に1時間照射した。
【0094】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図7に示す。ポリマー中に銀微粒子がおよそ108nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0095】
(実施例5)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリビニルアルコールの水溶液5.04gに硝酸銀98.0mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(3000rpm、30秒間)した後、室温で5時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に2時間照射した。
【0096】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図8に示す。ポリビニルアルコール中に銀微粒子がおよそ120nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0097】
(実施例6)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリスチレンのトルエン溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。さらに、基板上の薄膜の上に、5wt%ポリアクリル酸のメタノール溶液10.01gに17wt%塩化金酸の希塩酸水溶液704mgを滴下して得た溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に3時間照射した。得られた試料をキシレンに含浸させてスチレン層を溶解させ、反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した。
【0098】
得られた薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図9に示す。ポリアクリル酸中に金微粒子がおよそ130nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、金粒子の多くは10nm程度の粒径を持つことが観察された。
【0099】
(実施例7)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.02gに過塩素酸銀64.3mgを溶解させて得られた溶液を反射基板にスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を30°の入射角で1時間照射した。
【0100】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図10に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ105nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0101】
(実施例8)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液5.02gに過塩素酸銀64.3mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を45°の入射角で1時間照射した。
【0102】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図11に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ109nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0103】
(実施例9)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリメタクリル酸のメタノール溶液4.00gに過塩素酸銀52.0mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を60°の入射角で1時間照射した。
【0104】
得られた反射基板上の薄膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図12に示す。ポリメタクリル酸中に銀微粒子がおよそ122nm(幾何学的距離)の間隔で基板と平行方向に層状に配列していることを確認した。また、銀粒子の多くは10nm以下の粒径を持つことが観察された。
【0105】
このように、照射光の入射角を大きくすることで金属微粒子層の繰り返し距離を長くすることができる。即ち、同一の波長λにて配列を行う場合、照射光の入射角を変化させることで、入射光と反射光の光路差を制御することが出来、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節することが可能である。
【0106】
(参考例2)
実施例7(入射角30°)でのTEM写真を基にして、100.0nm ポリメタクリル酸/10nm 銀/95.0nm ポリメタクリル酸/10nm 銀/・・・/100.0nm ポリメタクリル酸/10nm 銀の構成を有する全28層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果は図13に示すとおり、326nmに極大反射波長を有することが予想される。ここで、326nmにおけるポリマーの屈折率は、分光エリプソメトリーによる測定より、おおよそ1.55であるから、金属層間の間隔d(光学長)は、d=nd’=λ/2 (λ=326nm、幾何学的距離d’=105nm)を満たしている。同様に、実施例8(入射角45°)および9(入射角60°)でのTEM写真を基にして、反射特性を予想した結果を合わせて図13に示す。実施例8および9においても、上記の関係式は成り立っており、入射角を変化させることで極大反射波長を制御できることを確認した。即ち、照射光の角度を変化することで、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節し、反射波長の選択性を変化することが出来ると推定される。
【0107】
(参考例3)
一方、図19Aを用いて説明した干渉理論に基づいて、λ=365nmの光を垂直に照射した場合の金属微粒子配列膜の構成を推定することが可能であり、116.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/116.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/・・・/116.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀の構成を有する全38層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果を図14に示す。
【0108】
さらに、同様にしてλ=365nmの光を60°の角度で照射した場合の金属微粒子配列膜の構成を推定することが可能であり、141.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/141.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀/・・・/141.0nm ポリメタクリル酸/3nm 銀の構成を有する全38層の多層膜に相当する物性値を採用して、光学薄膜設計ソフトEssential Macleodにて、反射特性を予想した。結果を図14に示す。
【0109】
(実施例10)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリ(メチルメタクリレート・メタクリル酸)75:25ランダムコポリマーのテトラヒドロフラン(THF)溶液5.00gに過塩素酸銀50.1mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を垂直に2時間照射した。得られた試料の反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した後、薄膜を2枚の石英板に挟んで光学素子を作製した。
【0110】
得られた光学素子の反射スペクトルを図15に示す。ほぼ参考例3で示した干渉理論に基づく予測通りに、照射波長のごく近傍である360nmにおいて、反射の極大値24.1%を持つことが分かった。
【0111】
さらに、同一の方法で金属微粒子配列膜を複数枚作製し、これを所定の枚数重ね合わせて石英板に挟んだ光学素子を作製した際の反射スペクトルを図16に示す。3枚及び9枚積層した場合においては、1枚よりもそれぞれ高い反射極大値(3枚;27.6、9枚;27.1%)を示すことが分かった。このように、金属微粒子配列膜を複数枚積層することで反射特性を向上させることが可能である。
【0112】
(実施例11)
実施例1で作製した反射基板上に10wt%ポリ(メチルメタクリレート・メタクリル酸)75:25ランダムコポリマーのテトラヒドロフラン(THF)溶液5.00gに過塩素酸銀50.1mgを溶解させて得られた溶液をスピンコート(1500rpm、10秒間)した後、室温で3時間乾燥した。その後、反射基板上の薄膜に対して、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機(株)製、「マルチライト」)と狭帯域バンドパスフィルターを用いて、365nmの波長の紫外光を60°の入射角で3時間照射した。得られた試料の反射基板から金属微粒子配列膜を剥離した後、薄膜を2枚の石英板に挟んで光学素子を作製した。
【0113】
得られた光学素子の反射スペクトルを図17に示す。反射極大となる波長が430nmにシフトし、反射極大値30.5%を持つことが分かった。このように、照射光の角度を変化することで、金属微粒子層の繰り返し距離(ピッチ)を調節し、ほぼ参考例3で示した干渉理論に基づく予測通りに反射波長の選択性を変化することが出来ることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施例1で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図2】比較例1の金属−ポリマー複合体のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、金属−ポリマー複合体層となっている。
【図3】実施例2の金属微粒子配列膜のTEM写真である。尚、下部と上部は試料作製のための包埋樹脂である。
【図4】実施例2の金属微粒子配列膜の反射特性を示す図である。
【図5】実施例3で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図6】参考例1の光学薄膜設計ソフトEssential Macleodでの光学特性予測を示す図である。
【図7】実施例4で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図8】実施例5で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図9】実施例6で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。なお下部より、試料作製のための包埋樹脂、金微粒子配列ポリマー層となっている。
【図10】実施例7で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図11】実施例8で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図12】実施例9で作製された金属微粒子配列膜のTEM写真である。下部より、ガラス基板、アルミニウム層、シリカ層、銀微粒子配列ポリマー層となっている。
【図13】参考例2の光学薄膜設計ソフトEssential Macleodでの光学特性予測を示す図である。
【図14】参考例3の光学薄膜設計ソフトEssential Macleodでの光学特性予測を示す図である。
【図15】実施例10の金属微粒子配列膜1枚を石英板に挟んで光学素子を作製した際の反射特性を示す図である。
【図16】実施例10の金属微粒子配列膜を複数枚作製し、これを所定の枚数重ね合わせ、石英板に挟んで光学素子を作製した際の反射特性を示す図である。
【図17】実施例11の金属微粒子配列膜の反射特性を示す図である。
【図18】本発明の製造方法において、金属微粒子層とポリマーのみの層とが交互に積層された多層構造が得られる推定機構を示した概念図である。
【図19A】入射光を垂直に照射した場合において、入射光と基板からの反射光が干渉する条件を理論的に説明する概念図である。
【図19B】ある入射角θ1で薄膜に光照射した場合において、入射光と基板からの反射光が干渉する条件を理論的に説明する概念図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜する工程(A)と、
前記ポリマー膜に、特定の波長の光を照射する工程(B)と
を有することを特徴とする金属微粒子配列膜の製造方法。
【請求項2】
前記金属微粒子配列膜の構造が、金属微粒子が密集した層がポリマー膜の膜厚方向に周期的に多層として存在する構造である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー膜の製膜工程(A)は、金属成分を含むポリマー溶液を反射基板上に製膜するサブ工程と、溶媒を留去するサブ工程とを有することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)に先立ち、反射基板上に、後の工程(B)で照射する波長の光を透過する剥離層を設ける工程を有し、
工程(A)において、前記剥離層の上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、
さらに、前記工程(B)の後に、光が照射された後の前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程が、前記剥離層を除去する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記剥離層の除去が、前記剥離層の溶解により行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記金属成分が、前記特定の波長の光によって還元されて金属微粒子を生成する金属化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属成分が、金属微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記金属化合物が、過塩素酸銀、硝酸銀および塩化金酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
前記ポリマー膜を構成するポリマーが、少なくとも前記特定の波長において透明であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸モノマーユニットを含有する共重合体、およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程(B)において、照射する光の波長を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程(B)において、照射する光の前記反射基板に対する角度を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有する金属微粒子配列膜。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって製造され、ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在している構造を有する金属微粒子配列膜。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法により金属微粒子配列膜を製造する工程と、得られた金属微粒子配列膜の複数枚を積層する工程とを有することを特徴とする金属微粒子配列膜の多層積層体の製造方法。
【請求項17】
ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有し、請求項16記載の製造方法で製造されたことを特徴とする多層積層体。
【請求項18】
請求項14もしくは15に記載の金属微粒子配列膜、または請求項17に記載の多層積層体を用いた波長選択性の反射膜。
【請求項1】
反射基板上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜する工程(A)と、
前記ポリマー膜に、特定の波長の光を照射する工程(B)と
を有することを特徴とする金属微粒子配列膜の製造方法。
【請求項2】
前記金属微粒子配列膜の構造が、金属微粒子が密集した層がポリマー膜の膜厚方向に周期的に多層として存在する構造である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー膜の製膜工程(A)は、金属成分を含むポリマー溶液を反射基板上に製膜するサブ工程と、溶媒を留去するサブ工程とを有することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)に先立ち、反射基板上に、後の工程(B)で照射する波長の光を透過する剥離層を設ける工程を有し、
工程(A)において、前記剥離層の上に金属成分を含有するポリマー膜を製膜し、
さらに、前記工程(B)の後に、光が照射された後の前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリマー膜を前記反射基板から剥離する工程が、前記剥離層を除去する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記剥離層の除去が、前記剥離層の溶解により行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記金属成分が、前記特定の波長の光によって還元されて金属微粒子を生成する金属化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属成分が、金属微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記金属化合物が、過塩素酸銀、硝酸銀および塩化金酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
前記ポリマー膜を構成するポリマーが、少なくとも前記特定の波長において透明であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸モノマーユニットを含有する共重合体、およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程(B)において、照射する光の波長を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程(B)において、照射する光の前記反射基板に対する角度を変えることにより、金属微粒子配列膜中の金属微粒子層の繰り返し距離を調節することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有する金属微粒子配列膜。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって製造され、ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在している構造を有する金属微粒子配列膜。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法により金属微粒子配列膜を製造する工程と、得られた金属微粒子配列膜の複数枚を積層する工程とを有することを特徴とする金属微粒子配列膜の多層積層体の製造方法。
【請求項17】
ポリマー膜中に、金属微粒子が密集した層が、膜厚方向に周期的に多層として存在する構造を有し、請求項16記載の製造方法で製造されたことを特徴とする多層積層体。
【請求項18】
請求項14もしくは15に記載の金属微粒子配列膜、または請求項17に記載の多層積層体を用いた波長選択性の反射膜。
【図4】
【図6】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−163288(P2008−163288A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89793(P2007−89793)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
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