金属材の加工方法及び金属材の加工装置
【課題】従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる金属材の加工方法及び金属材の加工装置を提供する。
【解決手段】棒状の回転ツール10aの先端をステンレス鋼材101,102の加工部103に接触させつつ回転させることにより、ステンレス鋼材101,102を加工する加工方法において、回転ツール10aは、回転ツール10aの先端の中央部から突出したプローブ11を備え、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ11の回転ツールの先端から突出したプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、従来より簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつ金属材を加工することができる。
【解決手段】棒状の回転ツール10aの先端をステンレス鋼材101,102の加工部103に接触させつつ回転させることにより、ステンレス鋼材101,102を加工する加工方法において、回転ツール10aは、回転ツール10aの先端の中央部から突出したプローブ11を備え、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ11の回転ツールの先端から突出したプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、従来より簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつ金属材を加工することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の加工方法及び金属材の加工装置に関し、特に棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工方法及び金属材の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属材の接合方法においては、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)により金属材を接合する技術が知られている。この摩擦攪拌接合では、円柱状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する。回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備える。回転ツールの先端のプローブ以外の部位はショルダと呼ばれる。この摩擦攪拌接合においては、特にステンレス材等のプロセス温度における硬さが高い金属材を加工する際には、回転ツールの摩耗による変形が大きく、回転ツールの寿命が短いという欠点がある。特に、ショルダの摩耗が進行した場合、プローブの回転ツールの先端から突出した長さ(以下、プローブ突出長と呼ぶことがある)が相対的に大きくなり、最終的にはショルダが金属材の加工部と接触しない長さまでプローブが伸び、摩擦が発生しなくなる。すなわち接合が不可能となる。
【0003】
そのため、下記の特許文献1では、回転ツールの先端を砥石により研磨することにより、摩耗した回転ツールの形状を摩耗前の形状に復元し再生することで回転ツールの交換頻度を少なくする技術が開示されている。また、特許文献2では、プローブの直径が、その根元から先端に向かうほど縮径し、その先端は、そのプローブの先端における径以上の曲率の丸め加工を施すことにより、回転ツールの摩耗や折損を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−52039号公報
【特許文献2】特開2008−132524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、回転ツールの形状を整えるために回転ツールの先端を砥石で研磨する必要があり、大きな労力を要し、加工効率が低下する欠点がある。また、特許文献2の技術では、回転ツールの形状を特殊な形状とする必要があり、労力を要し、コスト高となる欠点があり、また実施例で粒子径は1μm程度としているが、具体的なCoや添加元素の配合量に関してはなんら言及されていない。またツールの耐久性としては3m程度とされており、耐久性としても満足な性能が得られていない。
【0006】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができ、また接合品質を維持し、低コストで回転ツールの寿命を向上させることができる金属材の加工方法及び金属材の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工方法であって、回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する金属材の加工方法である。
【0008】
この構成によれば、棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工方法において、回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0009】
なお、本発明の金属材の加工方法においては、(1)板状の金属材の端部同士を突き合わせて加工部とし、回転ツールをその加工部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(2)板状の金属材の端部同士を突き合わせて加工部とし、回転ツールをその加工部で移動させずに回転させて接合するスポット摩擦攪拌接合(スポットFSW)、(3)金属材同士を加工部において重ね合わせ、加工部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその箇所で移動させずに回転させて金属材同士を接合するスポット摩擦攪拌接合、(4)金属材同士を加工部において重ね合わせ、加工部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその加工部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(5)金属材の表面の加工部に回転ツールを接触させつつ回転させることにより、加工部の金属組織を改質する表面改質の(1)〜(5)の5つの態様およびこれらの組み合わせを含む。
【0010】
この場合、回転ツールの加工部に対する荷重を増大させること及び前記回転ツールの回転速度を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを短くすることが好適である。
【0011】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重を増大させること及び前記回転ツールの回転速度を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを短くする。これにより、極めて簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0012】
また、回転ツールの回転速度を増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを長くすることが好適である。
【0013】
この構成によれば、回転ツールの回転速度を増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを長くする。これにより、極めて簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0014】
また、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を断続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0015】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を断続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。このため、荷重又は回転速度の変更を少なくした簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0016】
あるいは、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を連続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0017】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を連続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長をより高精度に制御しつつ金属材を加工することができる。
【0018】
また、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを一定範囲内に制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0019】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを一定範囲内に制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長を一定範囲内に保ち、回転ツールの寿命を簡単な方法で向上させることができる。
【0020】
この場合、加工部における金属材の厚さよりもプローブの回転ツールの先端から突出した長さが短くなるように制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0021】
この構成によれば、加工部における金属材の厚さよりもプローブの回転ツールの先端から突出した長さが短くなるように制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長が長くなり過ぎて回転ツールのプローブ以外に部位(ショルダ)が加工部に接触しなくなる等して、加工に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0022】
また、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを検出しつつ金属材の加工を行い、検出されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0023】
この構成によれば、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを検出しつつ金属材の加工を行い、検出されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長をより高精度に制御しつつ金属材を加工することができる。
【0024】
あるいは、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを予測しつつ金属材の加工を行い、予測されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0025】
この構成によれば、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを予測しつつ金属材の加工を行い、予測されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0026】
また、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更するときは、回転ツールが加工部に対して移動する速度を変更することにより、加工部に対する入熱量の変化を一定範囲内に保つことが好適である。
【0027】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更するときは、回転ツールが加工部に対して移動する速度を変更することにより、加工部に対する入熱量の変化を一定範囲内に保つ。これにより、荷重や回転速度の変更に伴う加工部への入熱の変化が抑制されるため、荷重や回転速度の変更に伴う加工部の加工痕の変動を抑制することができる。
【0028】
また、プローブの材質は、回転ツールの先端のプローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いものとすることが好適である。
【0029】
この構成によれば、プローブの材質は、回転ツールの先端のプローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いものとする。これにより、回転ツールの一回転毎の加工部の金属材に対する摺動距離がプローブよりも長く、より摩耗しやすい傾向がある回転ツールの先端のプローブ以外の部位の摩耗を抑え、プローブとプローブ以外の部位とを同様に摩耗させることにより、プローブの突出長を一定範囲内に制御し易くなる。
【0030】
また、本発明は、棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工装置であって、回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを検出するプローブ突出長検出手段と、プローブ突出長検出手段により検出されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御するプローブ突出長制御手段とをさらに備えた金属材の加工装置である。
【0031】
この場合、プローブの材質は、回転ツールの先端のプローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いことが好適である。
【0032】
また、回転ツールの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上12μm以下であり、Co量が5wt%以上15wt%以下であることが好適である。
【0033】
この構成によれば、回転ツールの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上であるため、WC粒子径が小さ過ぎる微粒子系となりプローブが変形し過ぎることがなく、WC粒子径が12μm以下であるため、WC粒子径が大き過ぎて回転ツールの製作が困難となることがない。また、Co量が5wt%以上であるため、強度が弱く割れやすくなることがなく、Co量が15wt%以下であるため、変形し過ぎることがない。
【0034】
この場合、回転ツールの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなることが好適である。
【0035】
この構成によれば、回転ツールの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなるため、ショルダの対酸化性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の金属材の加工方法及び金属材の加工装置によれば、従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。また、接合品質を維持し、低コストで回転ツールの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置及び加工方法を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】(a)〜(c)は、回転ツールのプローブ突出長が長くなった場合のプローブ突出長の制御を示す図である。
【図4】(a)〜(c)は、回転ツールのプローブ突出長が短くなった場合のプローブ突出長の制御を示す図である。
【図5】回転速度及び荷重を断続的に変化させることによるプローブ突出長の制御を示すグラフである。
【図6】回転速度及び荷重を連続的に変化させることによるプローブ突出長の制御を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態に係るステンレス鋼材の加工方法を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るステンレス鋼材の加工方法を示す斜視図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置及び加工方法を示す斜視図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【図12】回転ツールの材料の例を示す表である。
【図13】図12の材料の特性を示す表である。
【図14】図12の材料による接合距離と回転ツールの全長との関係を示すグラフである。
【図15】図12の材料による接合距離と回転ツールのショルダ長との関係を示すグラフである。
【図16】本発明の実験例における総接合長とショルダ長、プローブ長及びプローブ突出長との関係を示すグラフである。
【図17】本発明の比較例における総接合長とショルダ長、プローブ長及びプローブ突出長との関係を示すグラフである。
【図18】本発明の実験例における試験片の引張試験結果を示す表である。
【図19】本発明の実験例における母材と継手との最大引張応力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0039】
図1に示すように、本発明の第1実施形態では、加工装置1は、板状の例えばステンレス鋼材101,102の端部同士を加工部103において突き合わせ、加工部103の表面側から回転ツール10aのプローブ11を挿入し、ショルダ12をステンレス鋼材101,102の表面に当接させて回転させつつステンレス鋼材101,102同士を摩擦攪拌接合により接合する。なお、加工部103の表面側では、回転ツール10aを囲繞するようにシールドカバーを配置し、シールドカバー内に不活性ガスを導入し、不活性雰囲気下でステンレス鋼材101,102同士を接合するようにしても良い。
【0040】
回転ツール10aは、図1に示すように略円筒状をなし、先端にショルダ12とショルダ12より小径であってショルダ12の中央部より突出した略円柱状のプローブ11を備えている。回転ツール10aの材質は、本実施形態のようにプローブ11及びショルダ12を単一の材料で製造する場合は、例えば、JISに規格されているSKD61鋼等の工具鋼や、タングステンカーバイト(WC)−コバルト(Co)系を代表とする超硬合金や、W、Mo、Co、Ir等の高融点金属からなるものとすることができる。
【0041】
加工装置1は回転ツール10aを把持するチャック20を備える。回転ツール10aを把持したチャック20は回転ツール駆動部30により回転速度Rにより回転させられ、加工部103に対して荷重Fを加える。また、回転ツール駆動部30は、回転ツール10aを加工部103に対して移動速度(接合速度)Sにより移動させる。
【0042】
加工装置1は、加工部103及び加工痕104を監視するモニタカメラ40を備える。モニタカメラ40は加工部103の回転ツール10aとの接触部において、例えば、回転ツール10aのショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がっているか否かを検出する。プローブ11の突出長がステンレス鋼材101,102以上に長くなると、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がるため、モニタカメラ40は加工部103の回転ツール10aとの接触部を監視することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。加工部103の回転ツール10aを挿入する側とは反対側に裏板を接触させ、裏板にSi3N4等の変形し難い回転ツール10aより硬質の材質の物を使用することで、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がる現象を顕著に観察することができる。あるいは、モニタカメラ40は、加工痕104の幅を検出することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。加工痕104の幅は、プローブ11の突出長がステンレス鋼材101,102以上に長くなり、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がると狭くなり、プローブ11の突出長が短くなると広くなる傾向があるため、モニタカメラ40は、加工痕104の幅を検出することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。
【0043】
加工装置1は、温度センサ50を備える。温度センサ50は加工部103の回転ツール10aとの接触部の温度を検出する。加工部103の温度は、プローブ11の突出長がステンレス鋼材101,102以上に長くなり、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がったり、逆にプローブ11の突出長が短くなると加工部103への入熱が減少して温度が低下するため、温度センサ50は、加工部103の回転ツール10aとの接触部の温度を検出することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。
【0044】
制御部60は、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果に基づいて、プローブ11の突出長を検出し、後述するように、荷重F、回転速度R及び移動速度Sを変更することにより、プローブ11の突出長を制御する。また、制御部60は、蓄積されたデータに基づいて、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果や、総接合距離からプローブ11の突出長を予測して、荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ11の突出長を制御する。例えば、これ以外にも、超音波探傷や透過X線等の非破壊検査技術を用いて、キッシングボンドの有無を調査したり、裏板中央部(加工部103直下)の負荷の変動や回転ツール10aを回転させるモータに加わる負荷を測定する等の手法も考えられる。
【0045】
なお、加工装置1の被加工物としては、SUS304、SUS301L、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼あるいは2相ステンレス鋼を適用することができる。あるいは、ステンレス鋼材101,102として、同種の材料ではなく、異種材料を適用することもできる。あるいは、加工装置1の被加工物としては、ステンレス鋼に限定されず、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、ニッケル合金、銅合金、炭素鋼、超硬合金等を加工することができる。
【0046】
以下、本実施形態の加工装置1の動作について説明する。図2に示すように、加工時には、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の増大を検出した場合は(S11)、回転ツール10aの母材であるステンレス鋼材101,102の加工部103への荷重Fを増大させ、回転速度Rを減少させる(S12)。図3(a)(b)に示すように、加工開始時のプローブ突出長13は、一般に、回転ツール10aの一回転毎の加工部103に対する摺動距離はプローブ11よりもショルダ12の方が長く、ショルダ12の方がより摩耗しやすい傾向がある。そのため、図3(b)に示すように、総接合距離の増大に伴い、プローブ突出長13’は加工開始時のプローブ突出長13よりも長くなる傾向がある。そこで、本実施形態では、加工装置1の制御部60は、回転ツール駆動部30に荷重Fを増大させて、図3(c)に示すようにプローブ11を荷重Fにより圧縮変形させるとともに、回転速度Rを減少させてショルダ12の磨耗を抑えて、プローブ突出長13を加工開始時の長さに戻す。
【0047】
図2に戻り、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の減少を検出した場合は(S13)、回転ツール10aの回転速度Rを増大させ、荷重Fを減少させる(S14)。図4(a)(b)に示すように、加工開始時のプローブ突出長13がプローブ突出長13’’に減少した場合は、図4(c)に示すように回転速度Rを増大させることにより、回転ツール10aの一回転毎の加工部103に対する摺動距離がプローブ11よりも長く、より磨耗し易いショルダ12の摩耗を促すとともに、荷重Fを減少させてプローブ11の圧縮変形を抑えて、プローブ11のショルダ12に対する相対的な突出長を長くすることにより、プローブ突出長13を加工開始時の長さに戻す。
【0048】
なお、上記のS11〜S14の動作において、制御部60は、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果に基づいて、逐次、荷重F及び回転速度Rを変更するようにしても良い。あるいは、総接合距離とプローブ突出長との関係を予めデータとして蓄積しておき、上記のS11〜S14の動作において、制御部60は、蓄積されたデータに基づいて、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果や、総接合距離からプローブ11の突出長を予測して、予め荷重F、回転速度R及び移動速度Sを変更することにより、プローブ11の突出長を制御するようにしても良い。
【0049】
例えば、図5に示すように、制御部60はプローブ突出長13について所定の許容最小値や許容最大値を設定し、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果に基づいてプローブ突出長13が許容最小値や許容最大値付近となったときは、逐次、断続的に荷重Fや回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を許容最小値より大きく、許容最大値未満とすることができる。
【0050】
図5に示すように、一般に、回転ツール10aによる総接合長がまだ短いときは、プローブ突出長13が減少する傾向にある。プローブ突出長13が許容最小値付近となったときは、制御部60は回転ツール駆動部30に回転速度Rを増大させるとともに、荷重Fを減少させてプローブ突出長13を接合初期の長さに戻す。
【0051】
一方、上述したように、一般に総接合長が長くなると、回転ツール10aの一回転毎の加工部103に対する摺動距離はプローブ11よりもショルダ12の方が長く、ショルダ12の方がより摩耗しやすいため、プローブ突出長13が長くなる傾向がある。上述したように、プローブ突出長13がステンレス鋼材101,102の板厚よりも厚くなると、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がり、接合に不具合が生じる。このため、例えば、プローブ突出長13の許容最大値をステンレス鋼材101,102の板厚に設定し、プローブ突出長13が許容最大値付近となったときは、制御部60は回転ツール駆動部30に荷重Fを増大させるとともに、回転速度Rを減少させてプローブ突出長13を接合初期の長さに戻す。
【0052】
あるいは、図6に示すように、制御部60は、蓄積されたデータに基づいて、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果や、総接合距離からプローブ11の突出長を予測し、回転ツール駆動部30に連続的に回転速度Rや荷重Fを変更させることにより、プローブ突出長13を一定に保つこともできる。
【0053】
本実施形態では、棒状の回転ツール10aの先端をステンレス鋼材101,102の加工部103に接触させつつ回転させることにより、ステンレス鋼材101,102を加工する加工方法において、回転ツール10aは、回転ツール10aの先端の中央部から突出したプローブ11を備え、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ11の回転ツールの先端から突出したプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、従来より簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0054】
また、本実施形態では、回転ツール10aの加工部103に対する荷重Fを増大させること及び回転ツール10aの回転速度Rを減少させることの少なくともいずれかにより、プローブ突出長13を短くする。あるいは、本実施形態では、回転ツール10aの回転速度Rを増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブ突出長13を長くする。これにより、極めて簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0055】
また、本実施形態では、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rの変更を断続的に行うことにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。このため、荷重F又は回転速度Rの変更を少なくした簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0056】
あるいは、本実施形態によれば、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rの変更を連続的に行うことにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13をより高精度に制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を一定範囲内に制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13を一定範囲内に保ち、回転ツール10aの寿命を簡単な方法で向上させることができる。
【0058】
特に本実施形態によれば、加工部103におけるステンレス鋼材101,102の厚さよりもプローブ突出長13が短くなるように制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13が長くなり過ぎてショルダ12が加工部103に接触しなくなる等して、加工に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、プローブ突出長13を検出しつつステンレス鋼材101,102の加工を行い、検出されたプローブ突出長13に基づいて、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13をより高精度に制御しつつ金属材を加工することができる。
【0060】
あるいは、本実施形態によれば、プローブ突出長13を予測しつつステンレス鋼材101,102の加工を行い、予測されたプローブ突出長13に基づいて、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0061】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態では、加工時には、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の増大を検出した場合は(S21)、回転ツール10aのステンレス鋼材101,102の加工部103への荷重Fを増大させ、回転速度Rを減少させるとともに、移動速度Sを変化させて、加工部103への入熱量を一定に保つ(S22)。入熱量を一定に保つことにより、荷重Fを増大させた場合でも、加工痕104の変化を抑制することができる。一方、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の減少を検出した場合は(S23)、回転ツール10aの回転速度Rを増大させ、荷重Fを減少させるとともに、移動速度Sを増大させて、加工部103への入熱量を一定に保つ(S24)。入熱量を一定に保つことにより、回転速度R及び荷重Fを変更した場合でも、加工痕104の変化を抑制することができる。なお、加工部103への入熱量Q(J/mm)については、荷重F(N/m2)、回転速度R(rad/sec)、移動速度S(mm/sec)、ショルダ12の直径(m)、摩擦係数μ及び所定の定数αに対して下式(1)が成り立つため、入熱量Qが一定となるように荷重F、回転速度Rの変更に応じて移動速度Sを変更することにより、加工痕104の変化を抑制することができる。
Q=(4/3)αμπ2FRr3/S (1)
【0062】
本実施形態では、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更するときは、移動速度Sを変更することにより、加工部103に対する入熱量の変化を一定に保つ。これにより、荷重Fや回転速度Rの変更に伴う加工部103への入熱の変化が抑制されるため、荷重Fや回転速度Rの変更に伴う加工部103の加工痕104の変動を抑制することができ、良好な接合等が得られる。
【0063】
本発明においては、上記第1及び第2実施形態のように回転ツール10aを加工部103で移動させる摩擦攪拌接合により2枚の板材を接合する態様に限定されず、回転ツール10aを加工部103で移動させずに接合を行なっても良い。
【0064】
あるいは図8に示す本発明の第3実施形態のように、ステンレス鋼材101,102を加工部103にて重ね合わせ、ステンレス鋼材101の表面から加工部103に回転ツール10aを挿入し、回転ツール10aを加工部103で移動させずに回転させることによりステンレス鋼材101,102を接合するスポット摩擦攪拌接合を行うことも可能である。この場合、プロセス時間の変更で加工部103の入熱量及び温度を制御する。あるいは、図9に示す本発明の第4実施形態のように、ステンレス鋼材101の表面から加工部103に回転ツール10aを挿入し、回転ツール10aを加工部103で移動させつつ回転させることによりステンレス鋼材101,102を接合する摩擦攪拌接合も可能である。
【0065】
さらに、図10に示す本発明の第5実施形態のように、ステンレス鋼材101の表面の加工部103に回転ツール10aの先端を当接させつつ回転させることにより、ステンレス鋼材101の加工部103の金属組織を改質することも可能である。以上のいずれの態様においても、上記第1及び第2実施形態と同様に制御部60は回転ツール10aの荷重F、回転速度R及び移動速度Sを変更することにより、プローブ突出長13を制御することができる。
【0066】
以下、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態においては、図11に示すように、回転ツール10bは、別材質のプローブ11とショルダ12を有する。プローブ11はWC−Co合金からなり、ショルダ12はSi3N4といったプローブ11よりも高い硬さのセラミックス等からなる。このように、プローブ11の硬さをショルダ12よりも低くすることにより、上述したようにプローブ11よりも磨耗し易いショルダ12の磨耗を抑えるとともに、プローブ11を荷重Fにより圧縮変形させ易くすることができる。
【0067】
本実施形態では、プローブ11の硬さをショルダ12よりも低くすれば、ショルダ12はSi3N4等のセラミックスとすることができる。あるいは、プローブ11とショルダ12とを同じWC−Co合金等で形成し、それぞれの組成を異なるものとすることにより、プローブ11とショルダ12との硬さを異なるものとすることもできる。例えば、図12に示すように、材料No.1〜No.4においては、WC−Co合金におけるWC粒子径やCo量がそれぞれ異なっている。そのため、これらの材料の特性は図13に示すように異なるものとなる。なお、材料No.3の硬さは、88.5HrAである。材料No.1〜No.3は、WC−Co系の材料でCoの残部はWCである。また、材料No.4は、WC−Co系の材料にVC(0.4wt%)とCr3C2(0.2wt%)が添加された物である。
【0068】
ここで、材料No.1〜No.3で作られた回転ツール10aにより同じ移動速度S=600mm/min、回転速度R=900rpm及び荷重F=2000kgとして摩擦攪拌接合をそれぞれ行うと、図14に示すように、接合距離に対する回転ツール10aの全長すなわちプローブ突出長13は、WC粒子径が小さい材料No.1が最も変化が大きいことが判る。すなわち、材料No.1の回転ツール10aではプローブ11の短縮が大きい。これはWC粒子径が小さい材料ほど、プローブ11の磨耗が大きいか、あるいは組織のすべりが発生し易く高温での塑性変形が生じやすいと考えられる。一方、図15に示すように、接合距離に対するショルダ12の長さは各材料No.1〜No.3においてほとんど相違がないことが判る。これより、例えば、材料No.1のように、WC粒子径がショルダ12よりも小さいWC−Co合金によりプローブ11を形成することにより、プローブ11よりも磨耗し易いショルダ12の磨耗を抑えるとともに、プローブ11の磨耗を促し、さらにプローブ11を荷重Fにより圧縮変形させ易くすることができる。
【0069】
本実施形態によれば、プローブ11の材質は、回転ツール10bのショルダ12の材質よりもプロセス温度での硬さが低いものとする。これにより、回転ツール10bの一回転毎の加工部103に対する摺動距離がプローブ11よりも長く、より摩耗しやすい傾向があるショルダ12の摩耗を抑え、プローブ11とショルダ12とを同様に摩耗させることにより、プローブ突出長13を一定範囲内に制御し易くなる。
【0070】
また、本実施形態では、回転ツール10bの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上であるため、WC粒子径が小さ過ぎる微粒子系となりプローブ12が変形し過ぎることがなく、WC粒子径が12μm以下であるため、WC粒子径が大き過ぎて回転ツール10bの製作が困難となることがない。また、Co量が5wt%以上であるため、強度が弱く割れやすくなることがなく、Co量が15wt%以下であるため、変形し過ぎることがない。
【0071】
また、本実施形態によれば、回転ツール10bの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなるため、ショルダの対酸化性を向上させることができる。なお、これらの回転ツール10bの材質は、上記第1〜5実施形態のように、回転ツール10aを単一の材料で製造する場合にも適用することができる。
【0072】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0073】
(実験例)
以下、本発明の実験例について説明する。図1に示す加工装置1によってステンレス鋼材101,102の摩擦攪拌接合を行った。回転ツール10aの材質はWC−Co系の超硬合金製で、ショルダ12の径は12.0mmとし、プローブ11の径は6.0mmとし、プローブ突出長13は1.5mmとした。接合条件は、移動速度S=600mm、回転速度R=900rpm及び荷重F=2000kgとした。ステンレス鋼材101,102としては厚さ2.0mmのSUS304鋼を用い、接合長400mmの摩擦攪拌接合後にショルダ12の長さ、プローブ長(回転ツール10aの全長)及びプローブ突出長13の測定を行った。
【0074】
実験例においては、総接合長が4000mmとなった時点で荷重Fを2000kgから3000kgに瞬時的に増加させた。一方、比較例として、実験例と同じ条件で摩擦攪拌接合を行ない、接合条件を変化させずに接合を行なった。
【0075】
図16に示すように、実験例の回転ツール10aでは、総接合長4000mmの時点で荷重Fを増加させたため、1.55mm以上に増大していたプローブ突出長13は1.45mm以下に減少し、その後の接合により増加したものの、1.5mm以下に留まっている。一方、図17に示すように、同じ条件により接合を継続した比較例の回転ツール10aは、総接合長が7000mm近くになった時点で、プローブ突出長13が1.6mm近くまで増大していた。また、総接合長4000mmの時点で形状を制御した回転ツール10aは、磨耗により回転ツール10aの成分が加工部103に混入したことが予想されたが、接合後の加工部103には外観に欠陥は無かった。さらに、実験例における試験片に対して引張試験を行ったところ、加工部103以外の母材が破断し、図18及び図19に示すように高い引張強度の良好な継手が得られた。
【符号の説明】
【0076】
1…加工装置、10a,10b…回転ツール、11…プローブ、12…ショルダ、20…チャック、30…回転ツール駆動部、40…モニタカメラ、50…温度センサ、60…制御部、101,102…ステンレス材、103…加工部、104…加工痕、R…回転速度、F…荷重、S…移動速度(接合速度)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の加工方法及び金属材の加工装置に関し、特に棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工方法及び金属材の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属材の接合方法においては、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)により金属材を接合する技術が知られている。この摩擦攪拌接合では、円柱状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する。回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備える。回転ツールの先端のプローブ以外の部位はショルダと呼ばれる。この摩擦攪拌接合においては、特にステンレス材等のプロセス温度における硬さが高い金属材を加工する際には、回転ツールの摩耗による変形が大きく、回転ツールの寿命が短いという欠点がある。特に、ショルダの摩耗が進行した場合、プローブの回転ツールの先端から突出した長さ(以下、プローブ突出長と呼ぶことがある)が相対的に大きくなり、最終的にはショルダが金属材の加工部と接触しない長さまでプローブが伸び、摩擦が発生しなくなる。すなわち接合が不可能となる。
【0003】
そのため、下記の特許文献1では、回転ツールの先端を砥石により研磨することにより、摩耗した回転ツールの形状を摩耗前の形状に復元し再生することで回転ツールの交換頻度を少なくする技術が開示されている。また、特許文献2では、プローブの直径が、その根元から先端に向かうほど縮径し、その先端は、そのプローブの先端における径以上の曲率の丸め加工を施すことにより、回転ツールの摩耗や折損を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−52039号公報
【特許文献2】特開2008−132524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、回転ツールの形状を整えるために回転ツールの先端を砥石で研磨する必要があり、大きな労力を要し、加工効率が低下する欠点がある。また、特許文献2の技術では、回転ツールの形状を特殊な形状とする必要があり、労力を要し、コスト高となる欠点があり、また実施例で粒子径は1μm程度としているが、具体的なCoや添加元素の配合量に関してはなんら言及されていない。またツールの耐久性としては3m程度とされており、耐久性としても満足な性能が得られていない。
【0006】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができ、また接合品質を維持し、低コストで回転ツールの寿命を向上させることができる金属材の加工方法及び金属材の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工方法であって、回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する金属材の加工方法である。
【0008】
この構成によれば、棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工方法において、回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0009】
なお、本発明の金属材の加工方法においては、(1)板状の金属材の端部同士を突き合わせて加工部とし、回転ツールをその加工部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(2)板状の金属材の端部同士を突き合わせて加工部とし、回転ツールをその加工部で移動させずに回転させて接合するスポット摩擦攪拌接合(スポットFSW)、(3)金属材同士を加工部において重ね合わせ、加工部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその箇所で移動させずに回転させて金属材同士を接合するスポット摩擦攪拌接合、(4)金属材同士を加工部において重ね合わせ、加工部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその加工部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(5)金属材の表面の加工部に回転ツールを接触させつつ回転させることにより、加工部の金属組織を改質する表面改質の(1)〜(5)の5つの態様およびこれらの組み合わせを含む。
【0010】
この場合、回転ツールの加工部に対する荷重を増大させること及び前記回転ツールの回転速度を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを短くすることが好適である。
【0011】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重を増大させること及び前記回転ツールの回転速度を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを短くする。これにより、極めて簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0012】
また、回転ツールの回転速度を増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを長くすることが好適である。
【0013】
この構成によれば、回転ツールの回転速度を増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを長くする。これにより、極めて簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0014】
また、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を断続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0015】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を断続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。このため、荷重又は回転速度の変更を少なくした簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0016】
あるいは、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を連続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0017】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を連続的に行うことにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長をより高精度に制御しつつ金属材を加工することができる。
【0018】
また、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを一定範囲内に制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0019】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを一定範囲内に制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長を一定範囲内に保ち、回転ツールの寿命を簡単な方法で向上させることができる。
【0020】
この場合、加工部における金属材の厚さよりもプローブの回転ツールの先端から突出した長さが短くなるように制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0021】
この構成によれば、加工部における金属材の厚さよりもプローブの回転ツールの先端から突出した長さが短くなるように制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長が長くなり過ぎて回転ツールのプローブ以外に部位(ショルダ)が加工部に接触しなくなる等して、加工に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0022】
また、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを検出しつつ金属材の加工を行い、検出されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0023】
この構成によれば、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを検出しつつ金属材の加工を行い、検出されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、プローブの突出長をより高精度に制御しつつ金属材を加工することができる。
【0024】
あるいは、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを予測しつつ金属材の加工を行い、予測されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工することが好適である。
【0025】
この構成によれば、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを予測しつつ金属材の加工を行い、予測されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ金属材を加工する。これにより、簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0026】
また、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更するときは、回転ツールが加工部に対して移動する速度を変更することにより、加工部に対する入熱量の変化を一定範囲内に保つことが好適である。
【0027】
この構成によれば、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更するときは、回転ツールが加工部に対して移動する速度を変更することにより、加工部に対する入熱量の変化を一定範囲内に保つ。これにより、荷重や回転速度の変更に伴う加工部への入熱の変化が抑制されるため、荷重や回転速度の変更に伴う加工部の加工痕の変動を抑制することができる。
【0028】
また、プローブの材質は、回転ツールの先端のプローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いものとすることが好適である。
【0029】
この構成によれば、プローブの材質は、回転ツールの先端のプローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いものとする。これにより、回転ツールの一回転毎の加工部の金属材に対する摺動距離がプローブよりも長く、より摩耗しやすい傾向がある回転ツールの先端のプローブ以外の部位の摩耗を抑え、プローブとプローブ以外の部位とを同様に摩耗させることにより、プローブの突出長を一定範囲内に制御し易くなる。
【0030】
また、本発明は、棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、金属材を加工する金属材の加工装置であって、回転ツールは、回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを検出するプローブ突出長検出手段と、プローブ突出長検出手段により検出されたプローブの回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、回転ツールの加工部に対する荷重及び回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、プローブの回転ツールの先端から突出した長さを制御するプローブ突出長制御手段とをさらに備えた金属材の加工装置である。
【0031】
この場合、プローブの材質は、回転ツールの先端のプローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いことが好適である。
【0032】
また、回転ツールの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上12μm以下であり、Co量が5wt%以上15wt%以下であることが好適である。
【0033】
この構成によれば、回転ツールの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上であるため、WC粒子径が小さ過ぎる微粒子系となりプローブが変形し過ぎることがなく、WC粒子径が12μm以下であるため、WC粒子径が大き過ぎて回転ツールの製作が困難となることがない。また、Co量が5wt%以上であるため、強度が弱く割れやすくなることがなく、Co量が15wt%以下であるため、変形し過ぎることがない。
【0034】
この場合、回転ツールの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなることが好適である。
【0035】
この構成によれば、回転ツールの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなるため、ショルダの対酸化性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の金属材の加工方法及び金属材の加工装置によれば、従来より簡単な方法でプローブの突出長を制御しつつ金属材を加工することができる。また、接合品質を維持し、低コストで回転ツールの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置及び加工方法を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】(a)〜(c)は、回転ツールのプローブ突出長が長くなった場合のプローブ突出長の制御を示す図である。
【図4】(a)〜(c)は、回転ツールのプローブ突出長が短くなった場合のプローブ突出長の制御を示す図である。
【図5】回転速度及び荷重を断続的に変化させることによるプローブ突出長の制御を示すグラフである。
【図6】回転速度及び荷重を連続的に変化させることによるプローブ突出長の制御を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態に係るステンレス鋼材の加工方法を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るステンレス鋼材の加工方法を示す斜視図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係るステンレス鋼材の加工装置及び加工方法を示す斜視図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【図12】回転ツールの材料の例を示す表である。
【図13】図12の材料の特性を示す表である。
【図14】図12の材料による接合距離と回転ツールの全長との関係を示すグラフである。
【図15】図12の材料による接合距離と回転ツールのショルダ長との関係を示すグラフである。
【図16】本発明の実験例における総接合長とショルダ長、プローブ長及びプローブ突出長との関係を示すグラフである。
【図17】本発明の比較例における総接合長とショルダ長、プローブ長及びプローブ突出長との関係を示すグラフである。
【図18】本発明の実験例における試験片の引張試験結果を示す表である。
【図19】本発明の実験例における母材と継手との最大引張応力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0039】
図1に示すように、本発明の第1実施形態では、加工装置1は、板状の例えばステンレス鋼材101,102の端部同士を加工部103において突き合わせ、加工部103の表面側から回転ツール10aのプローブ11を挿入し、ショルダ12をステンレス鋼材101,102の表面に当接させて回転させつつステンレス鋼材101,102同士を摩擦攪拌接合により接合する。なお、加工部103の表面側では、回転ツール10aを囲繞するようにシールドカバーを配置し、シールドカバー内に不活性ガスを導入し、不活性雰囲気下でステンレス鋼材101,102同士を接合するようにしても良い。
【0040】
回転ツール10aは、図1に示すように略円筒状をなし、先端にショルダ12とショルダ12より小径であってショルダ12の中央部より突出した略円柱状のプローブ11を備えている。回転ツール10aの材質は、本実施形態のようにプローブ11及びショルダ12を単一の材料で製造する場合は、例えば、JISに規格されているSKD61鋼等の工具鋼や、タングステンカーバイト(WC)−コバルト(Co)系を代表とする超硬合金や、W、Mo、Co、Ir等の高融点金属からなるものとすることができる。
【0041】
加工装置1は回転ツール10aを把持するチャック20を備える。回転ツール10aを把持したチャック20は回転ツール駆動部30により回転速度Rにより回転させられ、加工部103に対して荷重Fを加える。また、回転ツール駆動部30は、回転ツール10aを加工部103に対して移動速度(接合速度)Sにより移動させる。
【0042】
加工装置1は、加工部103及び加工痕104を監視するモニタカメラ40を備える。モニタカメラ40は加工部103の回転ツール10aとの接触部において、例えば、回転ツール10aのショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がっているか否かを検出する。プローブ11の突出長がステンレス鋼材101,102以上に長くなると、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がるため、モニタカメラ40は加工部103の回転ツール10aとの接触部を監視することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。加工部103の回転ツール10aを挿入する側とは反対側に裏板を接触させ、裏板にSi3N4等の変形し難い回転ツール10aより硬質の材質の物を使用することで、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がる現象を顕著に観察することができる。あるいは、モニタカメラ40は、加工痕104の幅を検出することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。加工痕104の幅は、プローブ11の突出長がステンレス鋼材101,102以上に長くなり、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がると狭くなり、プローブ11の突出長が短くなると広くなる傾向があるため、モニタカメラ40は、加工痕104の幅を検出することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。
【0043】
加工装置1は、温度センサ50を備える。温度センサ50は加工部103の回転ツール10aとの接触部の温度を検出する。加工部103の温度は、プローブ11の突出長がステンレス鋼材101,102以上に長くなり、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がったり、逆にプローブ11の突出長が短くなると加工部103への入熱が減少して温度が低下するため、温度センサ50は、加工部103の回転ツール10aとの接触部の温度を検出することにより、プローブ11の突出長を検出することができる。
【0044】
制御部60は、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果に基づいて、プローブ11の突出長を検出し、後述するように、荷重F、回転速度R及び移動速度Sを変更することにより、プローブ11の突出長を制御する。また、制御部60は、蓄積されたデータに基づいて、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果や、総接合距離からプローブ11の突出長を予測して、荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ11の突出長を制御する。例えば、これ以外にも、超音波探傷や透過X線等の非破壊検査技術を用いて、キッシングボンドの有無を調査したり、裏板中央部(加工部103直下)の負荷の変動や回転ツール10aを回転させるモータに加わる負荷を測定する等の手法も考えられる。
【0045】
なお、加工装置1の被加工物としては、SUS304、SUS301L、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼あるいは2相ステンレス鋼を適用することができる。あるいは、ステンレス鋼材101,102として、同種の材料ではなく、異種材料を適用することもできる。あるいは、加工装置1の被加工物としては、ステンレス鋼に限定されず、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、ニッケル合金、銅合金、炭素鋼、超硬合金等を加工することができる。
【0046】
以下、本実施形態の加工装置1の動作について説明する。図2に示すように、加工時には、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の増大を検出した場合は(S11)、回転ツール10aの母材であるステンレス鋼材101,102の加工部103への荷重Fを増大させ、回転速度Rを減少させる(S12)。図3(a)(b)に示すように、加工開始時のプローブ突出長13は、一般に、回転ツール10aの一回転毎の加工部103に対する摺動距離はプローブ11よりもショルダ12の方が長く、ショルダ12の方がより摩耗しやすい傾向がある。そのため、図3(b)に示すように、総接合距離の増大に伴い、プローブ突出長13’は加工開始時のプローブ突出長13よりも長くなる傾向がある。そこで、本実施形態では、加工装置1の制御部60は、回転ツール駆動部30に荷重Fを増大させて、図3(c)に示すようにプローブ11を荷重Fにより圧縮変形させるとともに、回転速度Rを減少させてショルダ12の磨耗を抑えて、プローブ突出長13を加工開始時の長さに戻す。
【0047】
図2に戻り、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の減少を検出した場合は(S13)、回転ツール10aの回転速度Rを増大させ、荷重Fを減少させる(S14)。図4(a)(b)に示すように、加工開始時のプローブ突出長13がプローブ突出長13’’に減少した場合は、図4(c)に示すように回転速度Rを増大させることにより、回転ツール10aの一回転毎の加工部103に対する摺動距離がプローブ11よりも長く、より磨耗し易いショルダ12の摩耗を促すとともに、荷重Fを減少させてプローブ11の圧縮変形を抑えて、プローブ11のショルダ12に対する相対的な突出長を長くすることにより、プローブ突出長13を加工開始時の長さに戻す。
【0048】
なお、上記のS11〜S14の動作において、制御部60は、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果に基づいて、逐次、荷重F及び回転速度Rを変更するようにしても良い。あるいは、総接合距離とプローブ突出長との関係を予めデータとして蓄積しておき、上記のS11〜S14の動作において、制御部60は、蓄積されたデータに基づいて、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果や、総接合距離からプローブ11の突出長を予測して、予め荷重F、回転速度R及び移動速度Sを変更することにより、プローブ11の突出長を制御するようにしても良い。
【0049】
例えば、図5に示すように、制御部60はプローブ突出長13について所定の許容最小値や許容最大値を設定し、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果に基づいてプローブ突出長13が許容最小値や許容最大値付近となったときは、逐次、断続的に荷重Fや回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を許容最小値より大きく、許容最大値未満とすることができる。
【0050】
図5に示すように、一般に、回転ツール10aによる総接合長がまだ短いときは、プローブ突出長13が減少する傾向にある。プローブ突出長13が許容最小値付近となったときは、制御部60は回転ツール駆動部30に回転速度Rを増大させるとともに、荷重Fを減少させてプローブ突出長13を接合初期の長さに戻す。
【0051】
一方、上述したように、一般に総接合長が長くなると、回転ツール10aの一回転毎の加工部103に対する摺動距離はプローブ11よりもショルダ12の方が長く、ショルダ12の方がより摩耗しやすいため、プローブ突出長13が長くなる傾向がある。上述したように、プローブ突出長13がステンレス鋼材101,102の板厚よりも厚くなると、ショルダ12がステンレス鋼材101,102の表面に接触せずに浮き上がり、接合に不具合が生じる。このため、例えば、プローブ突出長13の許容最大値をステンレス鋼材101,102の板厚に設定し、プローブ突出長13が許容最大値付近となったときは、制御部60は回転ツール駆動部30に荷重Fを増大させるとともに、回転速度Rを減少させてプローブ突出長13を接合初期の長さに戻す。
【0052】
あるいは、図6に示すように、制御部60は、蓄積されたデータに基づいて、モニタカメラ40や温度センサ50による検出結果や、総接合距離からプローブ11の突出長を予測し、回転ツール駆動部30に連続的に回転速度Rや荷重Fを変更させることにより、プローブ突出長13を一定に保つこともできる。
【0053】
本実施形態では、棒状の回転ツール10aの先端をステンレス鋼材101,102の加工部103に接触させつつ回転させることにより、ステンレス鋼材101,102を加工する加工方法において、回転ツール10aは、回転ツール10aの先端の中央部から突出したプローブ11を備え、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ11の回転ツールの先端から突出したプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、従来より簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつ金属材を加工することができる。
【0054】
また、本実施形態では、回転ツール10aの加工部103に対する荷重Fを増大させること及び回転ツール10aの回転速度Rを減少させることの少なくともいずれかにより、プローブ突出長13を短くする。あるいは、本実施形態では、回転ツール10aの回転速度Rを増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、プローブ突出長13を長くする。これにより、極めて簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0055】
また、本実施形態では、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rの変更を断続的に行うことにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。このため、荷重F又は回転速度Rの変更を少なくした簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0056】
あるいは、本実施形態によれば、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rの変更を連続的に行うことにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13をより高精度に制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を一定範囲内に制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13を一定範囲内に保ち、回転ツール10aの寿命を簡単な方法で向上させることができる。
【0058】
特に本実施形態によれば、加工部103におけるステンレス鋼材101,102の厚さよりもプローブ突出長13が短くなるように制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13が長くなり過ぎてショルダ12が加工部103に接触しなくなる等して、加工に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、プローブ突出長13を検出しつつステンレス鋼材101,102の加工を行い、検出されたプローブ突出長13に基づいて、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、プローブ突出長13をより高精度に制御しつつ金属材を加工することができる。
【0060】
あるいは、本実施形態によれば、プローブ突出長13を予測しつつステンレス鋼材101,102の加工を行い、予測されたプローブ突出長13に基づいて、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更することにより、プローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工する。これにより、簡単な方法でプローブ突出長13を制御しつつステンレス鋼材101,102を加工することができる。
【0061】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態では、加工時には、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の増大を検出した場合は(S21)、回転ツール10aのステンレス鋼材101,102の加工部103への荷重Fを増大させ、回転速度Rを減少させるとともに、移動速度Sを変化させて、加工部103への入熱量を一定に保つ(S22)。入熱量を一定に保つことにより、荷重Fを増大させた場合でも、加工痕104の変化を抑制することができる。一方、加工装置1の制御部60は、プローブ11の突出長の減少を検出した場合は(S23)、回転ツール10aの回転速度Rを増大させ、荷重Fを減少させるとともに、移動速度Sを増大させて、加工部103への入熱量を一定に保つ(S24)。入熱量を一定に保つことにより、回転速度R及び荷重Fを変更した場合でも、加工痕104の変化を抑制することができる。なお、加工部103への入熱量Q(J/mm)については、荷重F(N/m2)、回転速度R(rad/sec)、移動速度S(mm/sec)、ショルダ12の直径(m)、摩擦係数μ及び所定の定数αに対して下式(1)が成り立つため、入熱量Qが一定となるように荷重F、回転速度Rの変更に応じて移動速度Sを変更することにより、加工痕104の変化を抑制することができる。
Q=(4/3)αμπ2FRr3/S (1)
【0062】
本実施形態では、回転ツール10aの加工部103に対する荷重F及び回転速度Rを変更するときは、移動速度Sを変更することにより、加工部103に対する入熱量の変化を一定に保つ。これにより、荷重Fや回転速度Rの変更に伴う加工部103への入熱の変化が抑制されるため、荷重Fや回転速度Rの変更に伴う加工部103の加工痕104の変動を抑制することができ、良好な接合等が得られる。
【0063】
本発明においては、上記第1及び第2実施形態のように回転ツール10aを加工部103で移動させる摩擦攪拌接合により2枚の板材を接合する態様に限定されず、回転ツール10aを加工部103で移動させずに接合を行なっても良い。
【0064】
あるいは図8に示す本発明の第3実施形態のように、ステンレス鋼材101,102を加工部103にて重ね合わせ、ステンレス鋼材101の表面から加工部103に回転ツール10aを挿入し、回転ツール10aを加工部103で移動させずに回転させることによりステンレス鋼材101,102を接合するスポット摩擦攪拌接合を行うことも可能である。この場合、プロセス時間の変更で加工部103の入熱量及び温度を制御する。あるいは、図9に示す本発明の第4実施形態のように、ステンレス鋼材101の表面から加工部103に回転ツール10aを挿入し、回転ツール10aを加工部103で移動させつつ回転させることによりステンレス鋼材101,102を接合する摩擦攪拌接合も可能である。
【0065】
さらに、図10に示す本発明の第5実施形態のように、ステンレス鋼材101の表面の加工部103に回転ツール10aの先端を当接させつつ回転させることにより、ステンレス鋼材101の加工部103の金属組織を改質することも可能である。以上のいずれの態様においても、上記第1及び第2実施形態と同様に制御部60は回転ツール10aの荷重F、回転速度R及び移動速度Sを変更することにより、プローブ突出長13を制御することができる。
【0066】
以下、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態においては、図11に示すように、回転ツール10bは、別材質のプローブ11とショルダ12を有する。プローブ11はWC−Co合金からなり、ショルダ12はSi3N4といったプローブ11よりも高い硬さのセラミックス等からなる。このように、プローブ11の硬さをショルダ12よりも低くすることにより、上述したようにプローブ11よりも磨耗し易いショルダ12の磨耗を抑えるとともに、プローブ11を荷重Fにより圧縮変形させ易くすることができる。
【0067】
本実施形態では、プローブ11の硬さをショルダ12よりも低くすれば、ショルダ12はSi3N4等のセラミックスとすることができる。あるいは、プローブ11とショルダ12とを同じWC−Co合金等で形成し、それぞれの組成を異なるものとすることにより、プローブ11とショルダ12との硬さを異なるものとすることもできる。例えば、図12に示すように、材料No.1〜No.4においては、WC−Co合金におけるWC粒子径やCo量がそれぞれ異なっている。そのため、これらの材料の特性は図13に示すように異なるものとなる。なお、材料No.3の硬さは、88.5HrAである。材料No.1〜No.3は、WC−Co系の材料でCoの残部はWCである。また、材料No.4は、WC−Co系の材料にVC(0.4wt%)とCr3C2(0.2wt%)が添加された物である。
【0068】
ここで、材料No.1〜No.3で作られた回転ツール10aにより同じ移動速度S=600mm/min、回転速度R=900rpm及び荷重F=2000kgとして摩擦攪拌接合をそれぞれ行うと、図14に示すように、接合距離に対する回転ツール10aの全長すなわちプローブ突出長13は、WC粒子径が小さい材料No.1が最も変化が大きいことが判る。すなわち、材料No.1の回転ツール10aではプローブ11の短縮が大きい。これはWC粒子径が小さい材料ほど、プローブ11の磨耗が大きいか、あるいは組織のすべりが発生し易く高温での塑性変形が生じやすいと考えられる。一方、図15に示すように、接合距離に対するショルダ12の長さは各材料No.1〜No.3においてほとんど相違がないことが判る。これより、例えば、材料No.1のように、WC粒子径がショルダ12よりも小さいWC−Co合金によりプローブ11を形成することにより、プローブ11よりも磨耗し易いショルダ12の磨耗を抑えるとともに、プローブ11の磨耗を促し、さらにプローブ11を荷重Fにより圧縮変形させ易くすることができる。
【0069】
本実施形態によれば、プローブ11の材質は、回転ツール10bのショルダ12の材質よりもプロセス温度での硬さが低いものとする。これにより、回転ツール10bの一回転毎の加工部103に対する摺動距離がプローブ11よりも長く、より摩耗しやすい傾向があるショルダ12の摩耗を抑え、プローブ11とショルダ12とを同様に摩耗させることにより、プローブ突出長13を一定範囲内に制御し易くなる。
【0070】
また、本実施形態では、回転ツール10bの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上であるため、WC粒子径が小さ過ぎる微粒子系となりプローブ12が変形し過ぎることがなく、WC粒子径が12μm以下であるため、WC粒子径が大き過ぎて回転ツール10bの製作が困難となることがない。また、Co量が5wt%以上であるため、強度が弱く割れやすくなることがなく、Co量が15wt%以下であるため、変形し過ぎることがない。
【0071】
また、本実施形態によれば、回転ツール10bの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなるため、ショルダの対酸化性を向上させることができる。なお、これらの回転ツール10bの材質は、上記第1〜5実施形態のように、回転ツール10aを単一の材料で製造する場合にも適用することができる。
【0072】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0073】
(実験例)
以下、本発明の実験例について説明する。図1に示す加工装置1によってステンレス鋼材101,102の摩擦攪拌接合を行った。回転ツール10aの材質はWC−Co系の超硬合金製で、ショルダ12の径は12.0mmとし、プローブ11の径は6.0mmとし、プローブ突出長13は1.5mmとした。接合条件は、移動速度S=600mm、回転速度R=900rpm及び荷重F=2000kgとした。ステンレス鋼材101,102としては厚さ2.0mmのSUS304鋼を用い、接合長400mmの摩擦攪拌接合後にショルダ12の長さ、プローブ長(回転ツール10aの全長)及びプローブ突出長13の測定を行った。
【0074】
実験例においては、総接合長が4000mmとなった時点で荷重Fを2000kgから3000kgに瞬時的に増加させた。一方、比較例として、実験例と同じ条件で摩擦攪拌接合を行ない、接合条件を変化させずに接合を行なった。
【0075】
図16に示すように、実験例の回転ツール10aでは、総接合長4000mmの時点で荷重Fを増加させたため、1.55mm以上に増大していたプローブ突出長13は1.45mm以下に減少し、その後の接合により増加したものの、1.5mm以下に留まっている。一方、図17に示すように、同じ条件により接合を継続した比較例の回転ツール10aは、総接合長が7000mm近くになった時点で、プローブ突出長13が1.6mm近くまで増大していた。また、総接合長4000mmの時点で形状を制御した回転ツール10aは、磨耗により回転ツール10aの成分が加工部103に混入したことが予想されたが、接合後の加工部103には外観に欠陥は無かった。さらに、実験例における試験片に対して引張試験を行ったところ、加工部103以外の母材が破断し、図18及び図19に示すように高い引張強度の良好な継手が得られた。
【符号の説明】
【0076】
1…加工装置、10a,10b…回転ツール、11…プローブ、12…ショルダ、20…チャック、30…回転ツール駆動部、40…モニタカメラ、50…温度センサ、60…制御部、101,102…ステンレス材、103…加工部、104…加工痕、R…回転速度、F…荷重、S…移動速度(接合速度)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、前記金属材を加工する金属材の加工方法であって、
前記回転ツールは、前記回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する金属材の加工方法。
【請求項2】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を増大させること及び前記回転ツールの回転速度を減少させることの少なくともいずれかにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを短くする、請求項1に記載の金属材の加工方法。
【請求項3】
前記回転ツールの回転速度を増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを長くする、請求項1に記載の金属材の加工方法。
【請求項4】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を断続的に行うことにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項5】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を連続的に行うことにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項6】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを一定範囲内に制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項7】
前記加工部における前記金属材の厚さよりも前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さが短くなるように制御しつつ前記金属材を加工する、請求項6に記載の金属材の加工方法。
【請求項8】
前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを検出しつつ前記金属材の加工を行い、検出された前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項9】
前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを予測しつつ前記金属材の加工を行い、予測された前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項10】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更するときは、前記回転ツールが前記加工部に対して移動する速度を変更することにより、前記加工部に対する入熱量の変化を一定範囲内に保つ、請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項11】
前記プローブの材質は、前記回転ツールの先端の前記プローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いものとする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項12】
棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、前記金属材を加工する金属材の加工装置であって、
前記回転ツールは、前記回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、
前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを検出するプローブ突出長検出手段と、
前記プローブ突出長検出手段により検出された前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御するプローブ突出長制御手段と、をさらに備えた金属材の加工装置。
【請求項13】
前記プローブの材質は、前記回転ツールの先端の前記プローブ以外の部位の材質よりも硬さが低い、請求項12に記載の金属材の加工装置。
【請求項14】
前記回転ツールの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上12μm以下であり、Co量が5wt%以上15wt%以下である、請求項12又は13に記載の金属材の加工装置。
【請求項15】
前記回転ツールの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなる、請求項14に記載の金属材の加工装置。
【請求項1】
棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、前記金属材を加工する金属材の加工方法であって、
前記回転ツールは、前記回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する金属材の加工方法。
【請求項2】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を増大させること及び前記回転ツールの回転速度を減少させることの少なくともいずれかにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを短くする、請求項1に記載の金属材の加工方法。
【請求項3】
前記回転ツールの回転速度を増大させること及び前記回転ツールの前記加工部に対する荷重を減少させることの少なくともいずれかにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを長くする、請求項1に記載の金属材の加工方法。
【請求項4】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を断続的に行うことにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項5】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかの変更を連続的に行うことにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項6】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを一定範囲内に制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項7】
前記加工部における前記金属材の厚さよりも前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さが短くなるように制御しつつ前記金属材を加工する、請求項6に記載の金属材の加工方法。
【請求項8】
前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを検出しつつ前記金属材の加工を行い、検出された前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項9】
前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを予測しつつ前記金属材の加工を行い、予測された前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御しつつ前記金属材を加工する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項10】
前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更するときは、前記回転ツールが前記加工部に対して移動する速度を変更することにより、前記加工部に対する入熱量の変化を一定範囲内に保つ、請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項11】
前記プローブの材質は、前記回転ツールの先端の前記プローブ以外の部位の材質よりも硬さが低いものとする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項12】
棒状の回転ツールの先端を金属材の加工部に接触させつつ回転させることにより、前記金属材を加工する金属材の加工装置であって、
前記回転ツールは、前記回転ツールの先端の中央部から突出したプローブを備え、
前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを検出するプローブ突出長検出手段と、
前記プローブ突出長検出手段により検出された前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さに基づいて、前記回転ツールの前記加工部に対する荷重及び前記回転ツールの回転速度の少なくともいずれかを変更することにより、前記プローブの前記回転ツールの先端から突出した長さを制御するプローブ突出長制御手段と、をさらに備えた金属材の加工装置。
【請求項13】
前記プローブの材質は、前記回転ツールの先端の前記プローブ以外の部位の材質よりも硬さが低い、請求項12に記載の金属材の加工装置。
【請求項14】
前記回転ツールの材質は、WC−Co系合金からなり、WC粒子径が2μm以上12μm以下であり、Co量が5wt%以上15wt%以下である、請求項12又は13に記載の金属材の加工装置。
【請求項15】
前記回転ツールの材質は、Cr3C2を0.01wt%以上2wt%以下含むWC−Co合金からなる、請求項14に記載の金属材の加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【図19】
【公開番号】特開2013−39601(P2013−39601A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178593(P2011−178593)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】
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