金属材料の腐食疲労寿命診断方法
【課題】直接腐食疲労試験により寿命評価できない使用環境における圧縮機等の機器に使用される金属材料の腐食疲労寿命を推定し、機器の設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供する。
【解決手段】想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する工程から構成され、一定時間経過毎に上記の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価する。
【解決手段】想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する工程から構成され、一定時間経過毎に上記の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ガスや空気等の気体搬送に用いられる遠心圧縮機,各種液体の搬送装置に用いられる軸流ポンプ等の羽根車に用いられる金属材料の腐食疲労寿命の診断方法に係り、特に腐食疲労試験が実施できない使用環境における寿命診断法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機や軸流ポンプに用いられる羽根車の中で、図13に示される心板2,側板3,羽根1から構成される羽根車100の製造では、通常それらの構成部材を溶接して接合し一体化する。この羽根車の溶接方法としては、図14に示されるように個別部材として加工された羽根1,心板2,側板3を、アーク溶接,MIG溶接,TIG溶接等のアーク溶接方法で肉盛溶接する方法がある。また、図15に示されるように、精密鋳造と機械加工による削り出し等で心板2と一体形成した羽根1を側板3と重ね合わせて、図16に示すように、開先をアーク溶接法で充填肉盛り溶接して羽根端部と側板を接合する方法が多く用いられている。
【0003】
遠心圧縮機や軸流ポンプが稼動する時には、羽根車100に大きな遠心力が掛かるため、仕様に合致した適切な材料を用い、かつ、適切な溶接方法により製作されなかった場合には、この溶接部分に過大な応力が加わり、疲労破断に懸念がある。特に、酸性環境や酸化性環境,高濃度塩化物環境など、金属材料に対する腐食性が高い使用環境で用いられる場合には、用いられる金属材料の腐食が起点となり疲労破断に至る腐食疲労により、遠心圧縮機や軸流ポンプの寿命が決まる。
【0004】
腐食疲労寿命を評価する方法として、例えば、非特許文献1に見られるように、使用環境を模擬した腐食環境中において疲労試験を実施し、大気中での疲労試験で得られた疲労強度と比較してその低下率から疲労寿命を推定する技術が公開されている。
【0005】
上記の公知技術を石油採掘プラントやその精製プラントなど高濃度の硫化水素を含有する環境で使用される遠心圧縮機の腐食疲労寿命評価に適用する場合、腐食性が高く、かつ、有害化学物質である硫化水素の使用に関わる安全技術面から、その腐食環境を模擬して疲労試験を実施することは現状不可能であり、直接実験的に腐食疲労寿命を推定できない課題がある。
【0006】
また、直接実験的に腐食疲労寿命を推定できる環境の場合でも、例えば、海水中で使用される軸流ポンプの腐食疲労寿命評価の場合は、腐食疲労試験には費用と時間を要するため、軸流ポンプの開発コストを削減し、開発時間を短縮することができない課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】江原隆一郎 他:材料、46(6)、316(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、直接腐食疲労試験により寿命評価できない使用環境における圧縮機等の機器に使用される金属材料の腐食疲労寿命を推定することにより、機器の設計寿命に適した高信頼性の機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属材料の腐食疲労寿命診断方法は、評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する第5の工程から構成され、一定時間経過毎に第3の工程から第5の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の腐食疲労寿命診断方法では、直接腐食疲労試験により寿命評価できない使用環境における圧縮機等の機器に使用される金属材料の腐食疲労寿命を推定することにより、設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】腐食疲労寿命を診断する手順を示した図。
【図2】CPTを測定した電解装置を示す図。
【図3】電流と温度との関係を示す図。
【図4】孔食深さと浸漬時間との関係を示す図。
【図5】応力拡大係数範囲を推定した結果を経時変化として示す図。
【図6】孔食深さと、曲げ応力振幅との関係を示す図。
【図7】腐食疲労寿命と曲げ応力振幅との関係を示す図。
【図8】腐食疲労寿命を診断する手順を示した図。
【図9】CPTを測定した装置を示す図。
【図10】電流と時間との関係を示す図。
【図11】孔食深さと浸漬時間との関係を示す図。
【図12】300MPa負荷した場合のΔKの経時変化を示した図。
【図13】羽根車の構成を示す図。
【図14】羽根車の構成を示す図。
【図15】羽根車の構成を示す図。
【図16】羽根車の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、腐食疲労寿命を診断する手順を示した図である。腐食疲労寿命の診断は、以下の7ステップで構成される。
(ステップ1):想定環境中における臨界孔食温度(CPT)の評価。
(ステップ2):CPTと想定使用温度との比較。
(ステップ3):腐食試験tにおける孔食深さの推定。
(ステップ4):腐食試験tで発生した孔食内部における応力拡大係数範囲(ΔK(t))
の推定。
(ステップ5):想定する使用環境中における疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)の設定。
(ステップ6):ΔK(t)とΔKthの比較。
(ステップ7):腐食疲労寿命の推定。
【0014】
ここで、腐食試験tの時間を変えて、3)から6)のステップを繰り返し、ΔK(t)とΔKthが等しくなる時間を推定することから、腐食疲労寿命を推定できる。
【0015】
先ず始めに、本発明の妥当性を検証するため、60℃の海水中で使用するポンプを想定して、ポンプに使用されるステンレス鋼の腐食疲労寿命を直径8mmの丸棒試験片を用いた回転曲げ腐食疲労試験の結果と比較評価することを試みた。
【0016】
(ステップ1)
想定環境が海水であるため、先ず始めに想定環境を模擬した人工海水中におけるCPTを図2に示す電解装置を用いて測定した。測定装置は、定電位電解装置4,温度調節器5,記録計6,反応槽7,ヒータ8から構成される。また反応槽7内には、人工海水を注入するとともに、評価対象となる金属材料9(ここではステンレス鋼)を基準電極10,対極11,熱電対12とともに人工海水中に浸漬した。ここでは、基準電極10として、塩化カリウム飽和水溶液銀/塩化銀電極を用いた。
【0017】
反応槽7内の人工海水の温度が室温で安定するまで待った後に、定電位電解装置4を用いて基準電極に対して0.74Vで一定になるように評価対象金属材料9と対極11の間に電位を印加し、その時に流れる電流を記録計6で記録した。
【0018】
次に、評価対象金属材料9と対極11の間に電位を印加するとともに熱電対12で人工海水の温度を監視しながら、温度調節器5とヒータ8を用いて1分当たり1℃の昇温速度で人工海水の温度を上昇させ、その時に流れる電流を記録計6で記録した。図3に示すように、今回の測定では約70℃を越えると電流値が急激に上昇する結果が得られたので、CPTを70℃と見積もった。
【0019】
(ステップ2)
今回60℃での使用を想定しているため、CPT(70℃)は使用温度(60℃)より高温であり、評価対象のステンレス鋼は使用できる可能性があることがわかった。
【0020】
(ステップ3)
評価対象となるステンレス鋼の孔食深さの経時変化を評価するため、60℃で使用環境と同一濃度の人工海水中に評価対象のステンレス鋼を浸漬し、所定時間ことに取り出して、発生した孔食の深さを計測した。図4は、測定された孔食深さの最大値を浸漬時間に対して示した図である。図中には、孔食深さの経時変化を最小二乗法で求めた推定曲線も示してあり、この測定結果から想定環境中における孔食の進展速度を推定できる。
【0021】
(ステップ4)
図4で孔食深さが測定できたので、この孔食深さにおける応力拡大係数範囲(ΔK)を推定した。今回丸棒の周方向に半円状の孔食が発生した場合を仮定し、ΔKの計算には、米国石油協会規格API RP579に掲載の計算式を適用し、曲げ応力が300MPa負荷した場合を想定してΔKを推定した。図5は図4の結果に基づき、応力拡大係数範囲を推定した結果を経時変化として示す。図中には、ΔKの経時変化を最小二乗法で求めた推定曲線も示してある。図5に示すように、孔食深さの進展に伴い、ΔKが増大することが推定できた。
【0022】
(ステップ5)
評価対象となる金属材料に所定の条件の人工海水を滴下し腐食させながら、回転曲げ疲労試験を実施し、その試験結果から疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)を設定した。図6は、疲労試験後に破断部を観察し、破断部に発生していた孔食の深さを負荷した曲げ応力振幅に対してプロットした図である。図中には、ステップ4で用いたΔKの計算式からΔKthを0.5,1.0,2.0MPa・m0.5に設定したときの孔食深さと曲げ応力振幅との関係を示す曲線も合わせて示している。腐食疲労試験結果のデータプロットは、全てΔKthが2.0MPa・m0.5の曲線より孔食深さが大きい方にあるため、ここでは、ΔKthの値として、2.0MPa・m0.5を設定した。
【0023】
(ステップ6)
上記ΔKthが2.0MPa・m0.5の設定値を図5に当てはめると、浸漬時間8時間では、ΔK(8h)は2.0MPa・m0.5よりも小さな値になったが、浸漬時間24時間では、ΔK(24h)は2.0MPa・m0.5よりも大きな値となり、今回の設定条件では、腐食疲労寿命は、8時間と24時間との間に存在することがわかった。
【0024】
(ステップ7)
上記の計算方法により、ΔKthを2.0MPa・m0.5に設定したときの腐食疲労寿命と曲げ応力振幅との関係を図7に示す.今回評価対象なる金属材料の大気中における疲労限も合わせて示している。図7から、負荷された曲げ応力が疲労限よりも大きい場合には、その負荷応力の頻度により寿命が決定する。一方、疲労限よりも負荷された曲げ応力が小さい場合には、線図に従い負荷された応力に応じて、孔食の進展に伴い寿命が決まることを示している。図7と腐食疲労試験結果とを比較した結果、両者は良く一致することが確認できた。
【0025】
上記では、孔食深さの測定値から腐食疲労寿命を推定したが、図4に示した孔食深さの経時変化の推定曲線(孔食進展速度曲線)を用いて、同様に腐食疲労寿命を推定できる。
【0026】
上記実施例1が示すように、臨界孔食温度の測定、孔食深さと孔食内のΔK値の推定、ΔKthの設定から当該環境における腐食疲労寿命を推定できる。実施例1では、本発明の検証のために腐食疲労試験結果と比較したが、図7の線図が得られた後は、腐食疲労試験を実施せずに腐食疲労寿命を推定でき、設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供できる。
【0027】
また、直接腐食疲労試験を実施せずにポンプ等の機器に使用される金属材料の腐食寿命を推定することにより、機器の設計寿命に適した信頼性の高い機器を短期間かつ安価に提供できる。
【実施例2】
【0028】
図8は、腐食疲労寿命を診断する手順を示した本発明の他の実施例の図である。腐食疲労寿命の診断は、以下の7ステップで構成される。
(ステップ1):想定環境中における臨界孔食温度(CPT)の評価。
(ステップ2):CPTと想定使用温度との比較。
(ステップ3):想定環境中における孔食進展速度の評価。
(ステップ4):孔食内部における応力拡大係数範囲(ΔK)の推定。
(ステップ5):想定する使用環境中における疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)の設定。
(ステップ6):孔食内におけるΔKの経時変化の評価。
(ステップ7):腐食疲労寿命の推定。
【0029】
上記の腐食疲労寿命診断方法に従い、実施例1と同じ条件において、評価対象材料と白金とを短絡させた時のガルバニック電流の計測によりCPTおよび進展速度を評価する方法を以下に示す。
【0030】
(ステップ1)
想定環境を模擬した人工海水中におけるCPTを図9に示す装置を用いて測定した。測定装置は、無抵抗電流計13,温度調節器5,記録計6,反応槽7,ヒータ8から構成される。また反応槽7内には、人工海水を注入するとともに、評価対象となる金属材料9(ここではステンレス鋼)と、白金製の対極11′,熱電対12とともに人工海水中に浸漬した。
【0031】
反応槽7内の人工海水の温度が室温で安定するまで待った後に、無抵抗電流計13を介して評価対象金属材料9と対極11′を短絡させ、電極の電位差により発生するガルバニック電流を記録計6で記録した。
【0032】
次に、熱電対12で人工海水の温度を監視しながら、温度調節器5とヒータ8を用いて1分当たり1℃の昇温速度で人工海水の温度を上昇させ、その時に流れるガルバニック電流を記録計6で記録し、ガルバニック電流の急激な上昇からCPTを見積もった。今回の測定では、図3とほぼ同様に約70℃を越えると電流値が急激に上昇する結果が得られたので、CPTを70℃と見積もった。
【0033】
(ステップ2)
今回60℃での使用を想定しているため、CPT(70℃)は使用温度(60℃)より高温であり、評価対象のステンレス鋼は使用できる可能性があることがわかった。
【0034】
(ステップ3)
評価対象となるステンレス鋼の孔食深さの経時変化を評価するため、図9に示した装置を用いて、60℃で使用環境と同一濃度の人工海水中に評価対象のステンレス鋼と白金製の対極11′を短絡させ、電極の電位差により発生するガルバニック電流の経時変化を記録計6で記録した。測定の一例を図10に示す。図10に示されるように、一時的な電流の増大が繰り返されることがわかった。一時的な電流の増大は、一時的な孔食の発生・進展と消滅に対応する電流変化と考えられるので、電流値と浸漬時間から電気量を求め、この電気量から孔食深さを推定した。図11は、電気量から推定した孔食深さのを浸漬時間に対して示した図である。図は電気量の経時変化にスムージング処理を施した後に孔食深さの経時変化に換算した結果である。この電気量の測定結果から想定環境中における孔食の進展速度が評価できる。実施例1と同様の条件だったが、ガルバニック電流の測定に基づく孔食深さの方が、実施例1に示した直接孔食深さの測定結果よりもやや大きな値となった。
【0035】
(ステップ4)
孔食内における応力拡大係数範囲(ΔK)は、丸棒の周方向に半円状の孔食が発生した場合を仮定し、計算には米国石油協会規格API RP579に掲載の計算式を適用し、曲げ応力が300MPa負荷した場合を想定してΔKを推定することとした。
【0036】
(ステップ5)
前記の通り、回転曲げ腐食疲労試験の結果から疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)を設定した。ここでは、ΔKthの値として、2.0MPa・m0.5を設定した。
【0037】
(ステップ6)
図11に示した孔食深さの経時変化の評価結果に基づき、(ステップ4)の計算条件によりΔKthの経時変化を推定した。図12は、曲げ応力として300MPa負荷した場合におけるΔKの経時変化を示した図である。
【0038】
(ステップ7)
図12の曲線に基づき、応力拡大係数範囲が2.0MPa・m0.5に達する、すなわち、ΔKthに達する時間を見積もるとおおよそ8時間となる。このことから、今回の評価条件における腐食疲労寿命は、約8時間であることがわかった。
【0039】
上記実施例2が示すように、臨界孔食温度の測定、孔食深さとΔK値の経時変化の評価、ΔKthの設定から当該環境における腐食疲労寿命を推定でき、設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供できる。
【0040】
また、直接腐食疲労試験を実施せずにポンプ等の機器に使用される金属材料の腐食寿命を推定することにより、機器の設計寿命に適した信頼性の高い機器を短期間かつ安価に提供できる。
【符号の説明】
【0041】
1 羽根
2 心板
3 側板
4 定電位電解装置
5 温度調節器
6 記録計
7 反応槽
8 ヒータ
9 評価対象金属材料
10 基準電極
11,11′ 対極
12 熱電対
13 無抵抗電流計
100 羽根車
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ガスや空気等の気体搬送に用いられる遠心圧縮機,各種液体の搬送装置に用いられる軸流ポンプ等の羽根車に用いられる金属材料の腐食疲労寿命の診断方法に係り、特に腐食疲労試験が実施できない使用環境における寿命診断法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機や軸流ポンプに用いられる羽根車の中で、図13に示される心板2,側板3,羽根1から構成される羽根車100の製造では、通常それらの構成部材を溶接して接合し一体化する。この羽根車の溶接方法としては、図14に示されるように個別部材として加工された羽根1,心板2,側板3を、アーク溶接,MIG溶接,TIG溶接等のアーク溶接方法で肉盛溶接する方法がある。また、図15に示されるように、精密鋳造と機械加工による削り出し等で心板2と一体形成した羽根1を側板3と重ね合わせて、図16に示すように、開先をアーク溶接法で充填肉盛り溶接して羽根端部と側板を接合する方法が多く用いられている。
【0003】
遠心圧縮機や軸流ポンプが稼動する時には、羽根車100に大きな遠心力が掛かるため、仕様に合致した適切な材料を用い、かつ、適切な溶接方法により製作されなかった場合には、この溶接部分に過大な応力が加わり、疲労破断に懸念がある。特に、酸性環境や酸化性環境,高濃度塩化物環境など、金属材料に対する腐食性が高い使用環境で用いられる場合には、用いられる金属材料の腐食が起点となり疲労破断に至る腐食疲労により、遠心圧縮機や軸流ポンプの寿命が決まる。
【0004】
腐食疲労寿命を評価する方法として、例えば、非特許文献1に見られるように、使用環境を模擬した腐食環境中において疲労試験を実施し、大気中での疲労試験で得られた疲労強度と比較してその低下率から疲労寿命を推定する技術が公開されている。
【0005】
上記の公知技術を石油採掘プラントやその精製プラントなど高濃度の硫化水素を含有する環境で使用される遠心圧縮機の腐食疲労寿命評価に適用する場合、腐食性が高く、かつ、有害化学物質である硫化水素の使用に関わる安全技術面から、その腐食環境を模擬して疲労試験を実施することは現状不可能であり、直接実験的に腐食疲労寿命を推定できない課題がある。
【0006】
また、直接実験的に腐食疲労寿命を推定できる環境の場合でも、例えば、海水中で使用される軸流ポンプの腐食疲労寿命評価の場合は、腐食疲労試験には費用と時間を要するため、軸流ポンプの開発コストを削減し、開発時間を短縮することができない課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】江原隆一郎 他:材料、46(6)、316(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、直接腐食疲労試験により寿命評価できない使用環境における圧縮機等の機器に使用される金属材料の腐食疲労寿命を推定することにより、機器の設計寿命に適した高信頼性の機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属材料の腐食疲労寿命診断方法は、評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する第5の工程から構成され、一定時間経過毎に第3の工程から第5の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の腐食疲労寿命診断方法では、直接腐食疲労試験により寿命評価できない使用環境における圧縮機等の機器に使用される金属材料の腐食疲労寿命を推定することにより、設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】腐食疲労寿命を診断する手順を示した図。
【図2】CPTを測定した電解装置を示す図。
【図3】電流と温度との関係を示す図。
【図4】孔食深さと浸漬時間との関係を示す図。
【図5】応力拡大係数範囲を推定した結果を経時変化として示す図。
【図6】孔食深さと、曲げ応力振幅との関係を示す図。
【図7】腐食疲労寿命と曲げ応力振幅との関係を示す図。
【図8】腐食疲労寿命を診断する手順を示した図。
【図9】CPTを測定した装置を示す図。
【図10】電流と時間との関係を示す図。
【図11】孔食深さと浸漬時間との関係を示す図。
【図12】300MPa負荷した場合のΔKの経時変化を示した図。
【図13】羽根車の構成を示す図。
【図14】羽根車の構成を示す図。
【図15】羽根車の構成を示す図。
【図16】羽根車の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、腐食疲労寿命を診断する手順を示した図である。腐食疲労寿命の診断は、以下の7ステップで構成される。
(ステップ1):想定環境中における臨界孔食温度(CPT)の評価。
(ステップ2):CPTと想定使用温度との比較。
(ステップ3):腐食試験tにおける孔食深さの推定。
(ステップ4):腐食試験tで発生した孔食内部における応力拡大係数範囲(ΔK(t))
の推定。
(ステップ5):想定する使用環境中における疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)の設定。
(ステップ6):ΔK(t)とΔKthの比較。
(ステップ7):腐食疲労寿命の推定。
【0014】
ここで、腐食試験tの時間を変えて、3)から6)のステップを繰り返し、ΔK(t)とΔKthが等しくなる時間を推定することから、腐食疲労寿命を推定できる。
【0015】
先ず始めに、本発明の妥当性を検証するため、60℃の海水中で使用するポンプを想定して、ポンプに使用されるステンレス鋼の腐食疲労寿命を直径8mmの丸棒試験片を用いた回転曲げ腐食疲労試験の結果と比較評価することを試みた。
【0016】
(ステップ1)
想定環境が海水であるため、先ず始めに想定環境を模擬した人工海水中におけるCPTを図2に示す電解装置を用いて測定した。測定装置は、定電位電解装置4,温度調節器5,記録計6,反応槽7,ヒータ8から構成される。また反応槽7内には、人工海水を注入するとともに、評価対象となる金属材料9(ここではステンレス鋼)を基準電極10,対極11,熱電対12とともに人工海水中に浸漬した。ここでは、基準電極10として、塩化カリウム飽和水溶液銀/塩化銀電極を用いた。
【0017】
反応槽7内の人工海水の温度が室温で安定するまで待った後に、定電位電解装置4を用いて基準電極に対して0.74Vで一定になるように評価対象金属材料9と対極11の間に電位を印加し、その時に流れる電流を記録計6で記録した。
【0018】
次に、評価対象金属材料9と対極11の間に電位を印加するとともに熱電対12で人工海水の温度を監視しながら、温度調節器5とヒータ8を用いて1分当たり1℃の昇温速度で人工海水の温度を上昇させ、その時に流れる電流を記録計6で記録した。図3に示すように、今回の測定では約70℃を越えると電流値が急激に上昇する結果が得られたので、CPTを70℃と見積もった。
【0019】
(ステップ2)
今回60℃での使用を想定しているため、CPT(70℃)は使用温度(60℃)より高温であり、評価対象のステンレス鋼は使用できる可能性があることがわかった。
【0020】
(ステップ3)
評価対象となるステンレス鋼の孔食深さの経時変化を評価するため、60℃で使用環境と同一濃度の人工海水中に評価対象のステンレス鋼を浸漬し、所定時間ことに取り出して、発生した孔食の深さを計測した。図4は、測定された孔食深さの最大値を浸漬時間に対して示した図である。図中には、孔食深さの経時変化を最小二乗法で求めた推定曲線も示してあり、この測定結果から想定環境中における孔食の進展速度を推定できる。
【0021】
(ステップ4)
図4で孔食深さが測定できたので、この孔食深さにおける応力拡大係数範囲(ΔK)を推定した。今回丸棒の周方向に半円状の孔食が発生した場合を仮定し、ΔKの計算には、米国石油協会規格API RP579に掲載の計算式を適用し、曲げ応力が300MPa負荷した場合を想定してΔKを推定した。図5は図4の結果に基づき、応力拡大係数範囲を推定した結果を経時変化として示す。図中には、ΔKの経時変化を最小二乗法で求めた推定曲線も示してある。図5に示すように、孔食深さの進展に伴い、ΔKが増大することが推定できた。
【0022】
(ステップ5)
評価対象となる金属材料に所定の条件の人工海水を滴下し腐食させながら、回転曲げ疲労試験を実施し、その試験結果から疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)を設定した。図6は、疲労試験後に破断部を観察し、破断部に発生していた孔食の深さを負荷した曲げ応力振幅に対してプロットした図である。図中には、ステップ4で用いたΔKの計算式からΔKthを0.5,1.0,2.0MPa・m0.5に設定したときの孔食深さと曲げ応力振幅との関係を示す曲線も合わせて示している。腐食疲労試験結果のデータプロットは、全てΔKthが2.0MPa・m0.5の曲線より孔食深さが大きい方にあるため、ここでは、ΔKthの値として、2.0MPa・m0.5を設定した。
【0023】
(ステップ6)
上記ΔKthが2.0MPa・m0.5の設定値を図5に当てはめると、浸漬時間8時間では、ΔK(8h)は2.0MPa・m0.5よりも小さな値になったが、浸漬時間24時間では、ΔK(24h)は2.0MPa・m0.5よりも大きな値となり、今回の設定条件では、腐食疲労寿命は、8時間と24時間との間に存在することがわかった。
【0024】
(ステップ7)
上記の計算方法により、ΔKthを2.0MPa・m0.5に設定したときの腐食疲労寿命と曲げ応力振幅との関係を図7に示す.今回評価対象なる金属材料の大気中における疲労限も合わせて示している。図7から、負荷された曲げ応力が疲労限よりも大きい場合には、その負荷応力の頻度により寿命が決定する。一方、疲労限よりも負荷された曲げ応力が小さい場合には、線図に従い負荷された応力に応じて、孔食の進展に伴い寿命が決まることを示している。図7と腐食疲労試験結果とを比較した結果、両者は良く一致することが確認できた。
【0025】
上記では、孔食深さの測定値から腐食疲労寿命を推定したが、図4に示した孔食深さの経時変化の推定曲線(孔食進展速度曲線)を用いて、同様に腐食疲労寿命を推定できる。
【0026】
上記実施例1が示すように、臨界孔食温度の測定、孔食深さと孔食内のΔK値の推定、ΔKthの設定から当該環境における腐食疲労寿命を推定できる。実施例1では、本発明の検証のために腐食疲労試験結果と比較したが、図7の線図が得られた後は、腐食疲労試験を実施せずに腐食疲労寿命を推定でき、設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供できる。
【0027】
また、直接腐食疲労試験を実施せずにポンプ等の機器に使用される金属材料の腐食寿命を推定することにより、機器の設計寿命に適した信頼性の高い機器を短期間かつ安価に提供できる。
【実施例2】
【0028】
図8は、腐食疲労寿命を診断する手順を示した本発明の他の実施例の図である。腐食疲労寿命の診断は、以下の7ステップで構成される。
(ステップ1):想定環境中における臨界孔食温度(CPT)の評価。
(ステップ2):CPTと想定使用温度との比較。
(ステップ3):想定環境中における孔食進展速度の評価。
(ステップ4):孔食内部における応力拡大係数範囲(ΔK)の推定。
(ステップ5):想定する使用環境中における疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)の設定。
(ステップ6):孔食内におけるΔKの経時変化の評価。
(ステップ7):腐食疲労寿命の推定。
【0029】
上記の腐食疲労寿命診断方法に従い、実施例1と同じ条件において、評価対象材料と白金とを短絡させた時のガルバニック電流の計測によりCPTおよび進展速度を評価する方法を以下に示す。
【0030】
(ステップ1)
想定環境を模擬した人工海水中におけるCPTを図9に示す装置を用いて測定した。測定装置は、無抵抗電流計13,温度調節器5,記録計6,反応槽7,ヒータ8から構成される。また反応槽7内には、人工海水を注入するとともに、評価対象となる金属材料9(ここではステンレス鋼)と、白金製の対極11′,熱電対12とともに人工海水中に浸漬した。
【0031】
反応槽7内の人工海水の温度が室温で安定するまで待った後に、無抵抗電流計13を介して評価対象金属材料9と対極11′を短絡させ、電極の電位差により発生するガルバニック電流を記録計6で記録した。
【0032】
次に、熱電対12で人工海水の温度を監視しながら、温度調節器5とヒータ8を用いて1分当たり1℃の昇温速度で人工海水の温度を上昇させ、その時に流れるガルバニック電流を記録計6で記録し、ガルバニック電流の急激な上昇からCPTを見積もった。今回の測定では、図3とほぼ同様に約70℃を越えると電流値が急激に上昇する結果が得られたので、CPTを70℃と見積もった。
【0033】
(ステップ2)
今回60℃での使用を想定しているため、CPT(70℃)は使用温度(60℃)より高温であり、評価対象のステンレス鋼は使用できる可能性があることがわかった。
【0034】
(ステップ3)
評価対象となるステンレス鋼の孔食深さの経時変化を評価するため、図9に示した装置を用いて、60℃で使用環境と同一濃度の人工海水中に評価対象のステンレス鋼と白金製の対極11′を短絡させ、電極の電位差により発生するガルバニック電流の経時変化を記録計6で記録した。測定の一例を図10に示す。図10に示されるように、一時的な電流の増大が繰り返されることがわかった。一時的な電流の増大は、一時的な孔食の発生・進展と消滅に対応する電流変化と考えられるので、電流値と浸漬時間から電気量を求め、この電気量から孔食深さを推定した。図11は、電気量から推定した孔食深さのを浸漬時間に対して示した図である。図は電気量の経時変化にスムージング処理を施した後に孔食深さの経時変化に換算した結果である。この電気量の測定結果から想定環境中における孔食の進展速度が評価できる。実施例1と同様の条件だったが、ガルバニック電流の測定に基づく孔食深さの方が、実施例1に示した直接孔食深さの測定結果よりもやや大きな値となった。
【0035】
(ステップ4)
孔食内における応力拡大係数範囲(ΔK)は、丸棒の周方向に半円状の孔食が発生した場合を仮定し、計算には米国石油協会規格API RP579に掲載の計算式を適用し、曲げ応力が300MPa負荷した場合を想定してΔKを推定することとした。
【0036】
(ステップ5)
前記の通り、回転曲げ腐食疲労試験の結果から疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)を設定した。ここでは、ΔKthの値として、2.0MPa・m0.5を設定した。
【0037】
(ステップ6)
図11に示した孔食深さの経時変化の評価結果に基づき、(ステップ4)の計算条件によりΔKthの経時変化を推定した。図12は、曲げ応力として300MPa負荷した場合におけるΔKの経時変化を示した図である。
【0038】
(ステップ7)
図12の曲線に基づき、応力拡大係数範囲が2.0MPa・m0.5に達する、すなわち、ΔKthに達する時間を見積もるとおおよそ8時間となる。このことから、今回の評価条件における腐食疲労寿命は、約8時間であることがわかった。
【0039】
上記実施例2が示すように、臨界孔食温度の測定、孔食深さとΔK値の経時変化の評価、ΔKthの設定から当該環境における腐食疲労寿命を推定でき、設計寿命に適した信頼性の高い機器を提供できる。
【0040】
また、直接腐食疲労試験を実施せずにポンプ等の機器に使用される金属材料の腐食寿命を推定することにより、機器の設計寿命に適した信頼性の高い機器を短期間かつ安価に提供できる。
【符号の説明】
【0041】
1 羽根
2 心板
3 側板
4 定電位電解装置
5 温度調節器
6 記録計
7 反応槽
8 ヒータ
9 評価対象金属材料
10 基準電極
11,11′ 対極
12 熱電対
13 無抵抗電流計
100 羽根車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する第5の工程から構成され、一定時間経過毎に第3の工程から第5の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項2】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定する使用環境中における孔食進展速度を評価する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、孔食進展速度の評価結果に基づき、孔食内の応力拡大係数範囲の経時変化を推定する第5の工程から構成され、推定した応力拡大係数範囲が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる期間から評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項3】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料を浸漬した後、一定時間毎に金属材料を取り出して孔食深さを測定し、孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項4】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料を浸漬した後に電気化学的に定電位に保持して電気量の経時変化を計測し、計測値に基づいて孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項5】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料と白金とを無抵抗電流計を介して接続して電気量の経時変化を計測し、計測値に基づいて孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき、羽根車の腐食疲労寿命を推定することを特徴とする遠心圧縮機の寿命診断方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき、羽根車の腐食疲労寿命を推定することを特徴とする軸流ポンプの寿命診断方法。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき選定された羽根車材料を用いて製作されたことを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項9】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき選定された羽根車材料を用いて製作されたことを特徴とする軸流ポンプ。
【請求項1】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する第5の工程から構成され、一定時間経過毎に第3の工程から第5の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項2】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定する使用環境中における孔食進展速度を評価する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、孔食進展速度の評価結果に基づき、孔食内の応力拡大係数範囲の経時変化を推定する第5の工程から構成され、推定した応力拡大係数範囲が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる期間から評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項3】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料を浸漬した後、一定時間毎に金属材料を取り出して孔食深さを測定し、孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項4】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料を浸漬した後に電気化学的に定電位に保持して電気量の経時変化を計測し、計測値に基づいて孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項5】
評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料と白金とを無抵抗電流計を介して接続して電気量の経時変化を計測し、計測値に基づいて孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき、羽根車の腐食疲労寿命を推定することを特徴とする遠心圧縮機の寿命診断方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき、羽根車の腐食疲労寿命を推定することを特徴とする軸流ポンプの寿命診断方法。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき選定された羽根車材料を用いて製作されたことを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項9】
請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき選定された羽根車材料を用いて製作されたことを特徴とする軸流ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−232114(P2011−232114A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101594(P2010−101594)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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