説明

金属材用親水性皮膜、親水化処理剤、及び親水化処理方法

【課題】金属材の表面に、結露水の成長を抑制し、かつ、抗カビ性を付与する親水性皮膜及びそれを形成するための親水化処理剤を提供する。
【解決手段】水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有する親水化処理剤及びこれにより得られる親水性皮膜によって、上記課題を解決する。水難溶性のセリウム化合物(A)は、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。この親水性皮膜を金属材の表面に形成することで、結露水の成長を抑制し、かつ、抗カビ性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の表面に形成する親水性皮膜、親水性皮膜を得るための親水化処理剤、及び親水化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷房、暖房、除湿等の機能を備えた空調器(エアコン)は、その熱交換部に熱交換器用フィンを備えている。この熱交換器用フィンを形成するためのフィン材は、一般に軽量で加工性に優れ、しかも熱伝導性に優れていることが望まれることから、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの金属材で形成される。
【0003】
従来、熱伝導性に優れる金属材を部材として、各種組み付け方法により形成された熱交換器の多くは、放熱効果あるいは冷却効果を向上させるために、放熱部及び冷却部の表面積をできるだけ大きくとるように設計されている。これにより主たる放熱部及び冷却部であるフィンの間隔は極めて狭くなっている。そのため、エアコンを稼働(冷却)し大気中の水分がフィン表面で凝縮して結露が起こると、その結露水はフィン表面の疎水性が高いほど水滴になり易く、水滴の成長によりフィン間で目詰まりが発生する。目詰まりが発生すると、通風抵抗が増大することで熱交換効率が低下し機能が損なわれる。さらには、目詰まりした水滴が飛散するという問題を生じる。
【0004】
また、熱交換器の放熱部及び冷却部で発生した結露水は、熱交換器表面から速やかに除去されるものではなく、エアコンが停止すると徐々に乾燥し大気中へ放出されるために、熱交換器部では高湿度の状態が発生する。このような高湿度の状態により、熱交換器部ではバクテリアやカビが発育し易くなり、これらが発育するとエアコンを稼動した際に不快な臭気が感じられたり、熱交換器を形成する金属材が腐食したりするという問題を生じる。また、特に熱交換器部では、カビ類、特に好湿性のカビ類の発育があり、これらカビ類が不快な臭気に関与するとの報告がされている(非特許文献1、2、3)。
【0005】
そこで、結露水による目詰まりの発生、及びバクテリアやカビの発育などの問題を解決するために、熱交換器の部材表面に親水性及び抗菌性・抗カビ性を有する親水性皮膜を付与させる方法が提案され、実施されている。
【0006】
熱交換器の部材表面に親水性及び抗菌性・抗カビ性を付与させる方法としては、例えば、ポリビニルアルコールと特定の水溶性高分子及び架橋剤とを組み合わせた処理剤を用いる方法(特許文献1)、特定の水溶性高分子の組み合わせと抗菌・抗カビ成分としてジンクピリチオンとを組み合わせた処理剤を用いる方法(特許文献2、3)、抗菌性を有するキトサンを含有する処理剤を用いる方法(特許文献4)、ポリ(メタ)アクリル酸とCeなどの特定の金属水溶性化合物とを組み合わせた処理剤を用いる方法(特許文献5)等が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】防菌防黴Vol.21,No.7,p.385〜389,1993
【非特許文献2】防菌防黴Vol.22,No.5,p.277〜282,1994
【非特許文献3】防菌防黴Vol.36,No.6,p.359〜363,2008
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−302042号公報
【特許文献2】特開2000−171191号公報
【特許文献3】特開2006−78134号公報
【特許文献4】特開2002−105241号公報
【特許文献5】特開平5−222334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜3で提案された従来技術は、一般に抗菌剤と称される物質を別途添加することで、抗カビ性の効果が得られる技術であり、それら抗菌成分の添加量は、目的とする親水性を損なわないようにするために限りがある。また、上記特許文献4で提案された従来技術は、低接触角の皮膜が得られるものの、結露水の成長を防止することができないだけでなく、抗カビ性が得られない問題がある。上記特許文献5で提案された従来技術は、抗カビ性を得るために、金属水溶性化合物の他に抗菌成分を別途添加しており、その点では、上記した抗菌成分を別途添加する従来技術と同様の問題が懸念される。
【0010】
近年では、熱交換器の小型化によるフィン間隔の狭小化はさらに進んでおり、優れた親水性及び優れた抗カビ性が求められる方向にさらに進んでいくことが容易に想像できる。
【0011】
本発明は、前記従来技術の有する問題点を解決するためのものであり、その目的は、金属材の表面に、結露水の成長を抑制し、かつ抗カビ性を付与する親水性皮膜、そうした親水性皮膜を得るための親水化処理剤、及び親水化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来、親水性の評価方法として対水接触角の測定が行われてきたが、本発明者は、この評価方法が必ずしも適切ではないことを見出した。すなわち、低接触角となる皮膜であれば必ずしも結露水による目詰まりを防止できるものではなく、接触角の測定のみでは実用化された際に問題となることを見出した。
本発明者は、さらに、熱交換器に用いる金属材に必要な親水性とは、対水接触角が低いだけでは十分でなく、実使用環境において発生する結露水が均一にすばやく濡れ広がること、すなわち、結露濡れ性が重要となることを見出し、その評価方法を確立した。本発明者が確立した結露濡れ性の評価方法を用いることにより、結露水の成長を抑制しうる皮膜を適切に評価することができるようになった。
本発明者は、このような評価方法の確立に基づき、結露水の成長を抑制し、かつ、抗カビ性を付与する親水性皮膜について鋭意研究した結果、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係る親水化処理剤は、水と、該水の中に分散された水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする。
【0014】
この発明の親水化処理剤を用いて得ることができる親水性皮膜は、金属材に優れた結露濡れ性及び優れた抗カビ性を付与することができ、その結果、結露水の目詰まりが引き起こす熱交換効率の低下、水滴の飛散等の問題を解決するだけでなく、カビの発育による不快な臭気の発生や金属材の腐食等の問題を解決することができる。
【0015】
本発明に係る親水化処理剤の好ましい態様は、前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、0.01〜2.0μmの粒子径で前記水の中に分散されてなるように構成する。
【0016】
本発明に係る親水化処理剤の好ましい態様は、前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれる1種又は2種以上であるように構成する。
【0017】
本発明に係る親水化処理剤の好ましい態様は、さらに、前記水の中に、有機成分(B)から選ばれる1種又は2種以上を含有するように構成する。
【0018】
上記課題を解決するための本発明に係る親水性皮膜は、金属材の表面に形成された親水性皮膜であって、水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る親水性皮膜の好ましい態様は、前記水難溶性のセリウム化合物(A)の含有量が、固形分比率で5〜100質量%であるように構成する。
【0020】
本発明に係る親水性皮膜の好ましい態様は、前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれる1種又は2種以上を含有するように構成する。
【0021】
本発明に係る親水性皮膜の好ましい態様は、さらに、有機成分(B)から選ばれる1種又は2種以上を含有するように構成する。
【0022】
本発明に係る親水性皮膜は、(1)水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有する親水化処理剤を用いて得ることができる、(2)前記金属材の前記表面を、本水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有する親水化処理剤で処理した後、乾燥して得ることができる、(3)金属材の表面の一部又は全部を、水と該水の中に分散された水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上とを含有する親水化処理剤で処理した後、乾燥して親水性皮膜を形成する方法で得ることができる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明に係る親水化処理方法は、金属材の表面の一部又は全部を、水と該水の中に分散された水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上とを含有する親水化処理剤で処理した後、乾燥して親水性皮膜を形成することを特徴とする。この親水性皮膜は、水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有する皮膜である。
【0024】
上記課題を解決するための本発明に係る金属材は、金属材の表面に、上記本発明に係る親水性皮膜を設けてなるものである。
【0025】
本発明に係る金属材の好ましい態様は、前記金属材が、アルミニウム材、アルミニウム合金材、銅材、銅合金材の何れかであるように構成する。また、前記金属材が、熱交換器の部材であるように構成する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る親水性処理剤により得られる親水性皮膜は、優れた結露濡れ性及び優れた抗カビ性を有する。この親水性皮膜を、例えば熱交換器等を構成するアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金材に適用すれば、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下、及び水滴飛散等の問題を解決する優れた結露濡れ性を持たせることができる。また、カビの発育による不快な臭気の発生や金属材の腐食等を抑制することができる。さらに、長期の使用時においても優れた結露濡れ性、及びカビの発育による不快な臭気や金属材の腐食の抑制を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る親水性皮膜を設けた金属材の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】一般的な親水性評価方法である「接触角」の結果と、実施例で評価方法として用いた「結露濡れ性」の結果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る親水性皮膜、親水化処理剤及び親水化処理方法について、実施の形態を挙げてさらに詳しく説明する。
【0029】
[親水性皮膜]
本発明に係る親水性皮膜は、金属材の表面に形成された親水性皮膜であって、水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする。この親水性皮膜は、金属材に対して優れた結露濡れ性及び抗カビ性を与える。ここで、結露濡れ性とは、本発明者が確立した、熱交換器に供する金属材の親水性の評価方法である。具体的な評価手順は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0030】
熱交換器に供する金属材は、対水接触角が低いだけでは十分ではない。結露濡れ性の優れた金属材を用いると、実使用環境において発生する結露水の成長を抑制して、均一にすばやく濡れ広がらせることができる。
【0031】
以下、親水性皮膜の構成について説明する。
【0032】
(水難溶性のセリウム化合物)
本発明に係る親水性皮膜が含有する水難溶性のセリウム化合物(A)は、水に対して不溶又は難溶と分類されるセリウム化合物であれば特に限定されるものではなく、好適に用いることができる。
【0033】
例えば、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)、酸化セリウム(IV)、シュウ酸セリウム(III)、リン酸セリウム(III)及び硫化セリウム(III)が挙げられる。中でも、本発明の目的である結露濡れ性及び抗カビ性が優れる点で、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれることが好ましい。また、こうした水難溶性のセリウム化合物を2種以上含有させることもできる。さらに述べるならば、本発明の目的である結露濡れ性及び抗カビ性を高度に両立する点で、酸化セリウム(IV)を含有することがより好ましい。
【0034】
さらに、前記水難溶性のセリウム化合物には、熱等の外的エネルギーを受けると酸化セリウム(IV)に至る化合物もあるが、本発明の目的である結露濡れ性及び抗カビ性を得る点では、親水性皮膜に含有する水難溶性のセリウム化合物の一部又は全部が酸化セリウム(IV)の形態に至っても構わない。
【0035】
また、親水性皮膜が含有する水難溶性のセリウム化合物(A)の含有量は、親水性皮膜の皮膜量に対して、固形分比率として5〜100質量%であることが好ましい。含有量が5質量%以上であると、本発明の目的である結露濡れ性や抗カビ性が優れたものとなる。
【0036】
特に結露濡れ性の観点からは、水難溶性のセリウム化合物(A)の含有量は、親水性皮膜の皮膜量に対して、固形分比率として30〜100質量%であることがより好ましい。セリウム化合物(A)の含有量が100質量%に近い程、結露濡れ性を向上する効果があり、望ましいものとなる。なお、セリウム化合物(A)の含有量が「100質量%」という場合は、後述する有機成分(B)が全く含まれない場合を含むとともに、実質的に含まれない場合も含む。ここで、「実質的に含まれない」とは、有機成分(B)固有の作用を発揮しない程度の微量のことであり、例えば0.01〜1.0質量%程度である。
【0037】
親水性皮膜が含有する水難溶性のセリウム化合物(A)の含有量(固形分比率)は、親水性処理剤中の水その他の揮発成分を除いた総重量に対する、親水性処理剤中の水難溶性のセリウム化合物(A)の割合により求められる。
【0038】
金属材の表面に設ける本発明に係る親水性皮膜の皮膜量は、本発明の目的である結露濡れ性及び抗カビ性が得られれば特に限定されるものではなく好適に選択することができるが、0.1〜2.0g/mの範囲が好ましく、0.1〜1.0g/mの範囲がより好ましい。皮膜量が0.1g/m以上であると、金属材の被覆が十分になり、本発明の目的である結露濡れ性がより優れたものとなる。また、皮膜量が2.0g/m以下であると、本発明の目的である結露濡れ性や抗カビ性が得られ、かつ、適切な皮膜量となって経済的である。
【0039】
(有機成分)
本発明に係る親水性皮膜は、前記水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上含有することで、優れた結露濡れ性及び抗カビ性を金属材に付与できるが、水難溶性のセリウム化合物(A)の水に対する残存性(耐水性)の向上、本発明に係る親水性皮膜を得るための親水化処理剤中において水難溶性のセリウム化合物(A)を安定に水の中に分散する目的で、さらに、有機成分(B)から選ばれる1種又は2種以上を含有させることができる。
【0040】
親水性皮膜が含有する有機成分(B)は、本発明の目的である結露濡れ性及び抗カビ性を阻害しなければ特に限定されるものではなく、有機酸類、界面活性剤類、及び高分子ポリマー類等を好適に用いることができる。
【0041】
前記有機酸類の具体的な例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、酒石酸、フタル酸、イタコン酸、メリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、ナフタレンテトラカルボン酸、プロパンジカルボン酸、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘプタンジカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸(例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(BTC))、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)などが挙げられ、これら有機酸の塩であっても構わない。塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0042】
前記界面活性剤類の具体的な例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル、ソルビタン脂肪酸部分エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン酸脂肪部分エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性(ノニオン性)界面活性剤が挙げられる。
【0043】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィン・スルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分子鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などのアニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0044】
また、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルベンジルアンモニウムなど四級アミンを有するカチオン性界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
前記高分子ポリマーの具体的な例としては、アクリル酸重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−アクリル酸共重合体、アクリル酸を含有する共重合体、ホスホン基含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの誘導体、セルロース誘導体、澱粉誘導体、ゼラチン誘導体、4−スチレンスルホン酸及び/又は無水マレイン酸を含有する重合体及び共重合体、ポリスチレン−スルホン酸、ビニルスルホン酸重合体、イソプレンスルホン酸重合体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノ官能性アクリレート、メタクリレートなどの重合体及び共重合体、水溶性ナイロン、ポリエチレンイミン、ポリイミドなどが挙げられ、高分子ポリマーの有する官能基が塩であっても構わない。塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0046】
親水性皮膜中の有機成分(B)の含有量は、水難溶性のセリウム化合物(A)に対して、固形分比率(重量比)として(B):(A)が0:100〜95:5の範囲である。有機成分(B)を積極的に含有させて水難溶性のセリウム化合物(A)の水に対する残存性(耐水性)の向上、親水化処理剤中における水難溶性のセリウム化合物(A)の安定分散の観点からは、(B):(A)が10:90〜70:30の範囲内であることが好ましい。前記(B)の比率が10以上であると、耐水性、及び、水難溶性のセリウム化合物(A)の分散性が優れたものとなる。前記(B)の比率が70以下であると、結露濡れ性及び抗カビ性がより優れたものとなる。
【0047】
上述した有機成分(B)としては、一般にノニオン性、アニオン性に分類されるものが好ましい。上記有機酸類と上記界面活性剤類では、ノニオン性、及びアニオン性界面活性剤が好ましい。上記高分子ポリマーでは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの誘導体、N−ビニルピロリドンの重合体及び共重合体などのノニオン性高分子ポリマー、アクリル酸重合体、アクリル酸共重合体、ホスホン基含有ポリマーなどのアニオン性高分子ポリマーが好ましい。
【0048】
本発明に係る親水性皮膜は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記水難溶性のセリウム化合物(A)及び有機成分(B)以外の成分を含んでいてもよいが、水難溶性のセリウム化合物(A)のみを含有する態様、セリウム化合物(A)及び有機成分(B)のみを含有する態様が好ましい。
【0049】
本発明に係る親水性皮膜は、形成方法を特に限定されないが、例えば、前記金属材の前記表面に、本発明に係る親水化処理剤を塗布した後、乾燥して得ることができる。
【0050】
[親水化処理剤及び親水化処理方法]
以下、親水性皮膜を得るための親水化処理剤及び親水化処理方法について説明する。
【0051】
優れた結露濡れ性及び抗カビ性を有する親水性皮膜を形成するために用いる本発明に係る親水化処理剤は、水と、該水の中に分散された水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上とを含有する。
【0052】
水難溶性のセリウム化合物(A)としては、上述した本発明に係る親水性皮膜に用いられるものを用いることができる。中でも、前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましい。
また、さらに、前記水の中に、有機成分(B)から選ばれる1種又は2種以上を含有させることができる。有機成分(B)としては、上述した本発明に係る親水性皮膜に用いられるものを用いることができる。
本発明に係る親水化処理剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、水の中に、前記水難溶性のセリウム化合物(A)及び有機成分(B)以外の成分を含んでいてもよいが、水難溶性のセリウム化合物(A)のみを含有する態様、セリウム化合物(A)及び有機成分(B)のみを含有する態様が好ましい。
【0053】
さらに述べるならば、前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、所定範囲の粒子径で前記水の中に分散されてなるのが好ましい。具体的には、粒子径は、0.01μm以上であるのが好ましい。粒子径が0.01μm以上であると、金属材の表面に塗布したときに、粒子同士の結合力がそれほど強くないため、乾燥を経ても粒子同士の凝集が抑制され、均一な皮膜が得られるため、本発明の目的である優れた結露濡れ性が得られる。
【0054】
一方、粒子径は、2.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、親水性皮膜が金属材から脱落する問題が起こりにくく、延いては本発明の目的である優れた結露濡れ性が得られる。
【0055】
なお、本発明において、「粒子径」とは、一次粒子、二次粒子は問わず、動的光散乱法により測定した際の累積平均径(Median径)を指す。動的光散乱法による測定機器としては、例えば日機装株式会社製UPA−EX150などが挙げられる。動的散乱法による測定原理は、入射光(レーザー光)に対して、粒子からの微弱な散乱光と基準波とを混合(ヘテロダイン法)し、光検出器により電気信号として取り出し、周波数解析(FFT)することで粒度分布を得ることができる。
【0056】
次に、UPA−EX150を用いた具体的な測定手法を示す。UPA−EX150の装置仕様は、光源が半導体レーザー780nm、3mWで、光学プローブが内部プローブ方式となる。測定手法は、本発明に係る親水化処理剤を水難溶性のセリウム化合物(A)の濃度が0.01%程度になるよう、さらに脱イオン水で希釈した後、良く攪拌分散して測定部に投入し、測定する。測定条件は、測定時間180秒、循環なしとし、粒子条件としては、粒子透過性を透過、形状を非球形、屈折率を1.81(装置のデフォルト設定)とし、溶媒条件としては、溶媒を水、溶媒屈折率を1.333とした。
【0057】
水難溶性のセリウム化合物(A)の粒子径を制御する方法は、特に限定されるものではなく、例えばボールミル、ジェットミル、サンドミルなどにより粉砕するスケールダウン法、セリウムイオンを酸化還元し粒子化する凝集法又は酸化還元法、物理気相成長法、レーザー蒸発法、及び気相中で反応させる化学気相成長法などが挙げられる。
【0058】
水の中に、水難溶性のセリウム化合物(A)及び有機成分(B)を分散する方法は、特に限定されない。上述したボールミル、ジェットミル、サンドミルなどを用いて分散してもよく、攪拌機を用いて分散してもよい。
【0059】
[親水化処理方法]
前記親水化処理剤を用いて、金属材や金属材を部材とした熱交換器に親水性処理皮膜を形成する方法について説明する。本発明に係る親水化処理方法は、金属材の表面の一部又は全部を、上記本発明に係る親水化処理剤で処理した後、乾燥して上記本発明に係る親水性皮膜を形成する。
【0060】
金属材は、予めアルカリ性又は酸性の水系洗浄剤によって清浄化することが好ましいが、洗浄を必要としない場合には清浄化を省略してもよい。また、必要に応じて、無処理の状態で、又は清浄化処理した後、本発明に係る親水化処理剤を塗布する前に、金属材に防錆処理を施してもよい。防錆処理としては特に限定されないが、公知のクロメート、りん酸亜鉛、チタン系、ジルコン系、有機皮膜等の耐食皮膜(化成処理皮膜、耐食プライマー層)が挙げられる。
【0061】
このようにして無処理の又は清浄化処理、防錆処理等を適宜施した金属材の表面の一部又は全部を、必要な皮膜量が得られるよう、親水化処理剤で処理する。処理の方法は、特に限定されず、例えば、適当な塗布手段で塗布する方法が挙げられる。塗布手段としては、例えば、ロールコート法、スプレー法、浸漬法等が挙げられる。
【0062】
親水化処理剤で処理した後は、加熱乾燥等により乾燥させる。加熱乾燥は親水性皮膜が含有する水が揮散すれば特に限定されるものではなく、100〜250℃の範囲で5秒〜120分間乾燥することが好ましく、100℃〜200℃がより好ましい。乾燥温度が100℃以上であると、皮膜から十分に水が蒸発するまでの時間が短く、作業効率に優れる。また、乾燥温度が250℃以下であると、水難溶性のセリウム化合物(A)の結合がそれほど強固になることがなく、耐水性とともに、結露濡れ性も優れたものとなる。
【0063】
金属材としては、特に限定されるものではないが、特に親水性が要求される用途に用いられるアルミニウム材、アルミニウム合金材、銅材、銅合金材が好ましく、さらにはこれらを部材として形成した熱交換器が好ましい。
【0064】
[金属材]
本発明に係る金属材は、表面に上記親水性皮膜を設けた金属材である。金属材は、アルミニウム材、アルミニウム合金材、銅材、銅合金材の何れかであるのが好ましく、また、熱交換器の部材であるのが好ましい。
【0065】
図1は、本発明の金属材の一例を示す模式的な断面図である。図1の構成は一例であって、本発明は図示の構成のみに限定されない。図1の例では、被塗布材である金属材1の両面は、必要に応じて設けられる耐食皮膜2,2’を有している。そして、その耐食皮膜2,2’上に、親水性皮膜3,3’が設けられている。なお、耐食皮膜2,2’は無くてもよく、また、親水性皮膜3は必要とされる面(片面)のみに設けられていてもよい。
【0066】
以上のように、本発明に係る親水性皮膜、親水化処理剤、親水化処理方法、金属材について説明した。本発明に係る親水性皮膜は、優れた親水性及び抗カビ性を有し、例えば熱交換器等を構成するアルミニウム材、アルミニウム合金材、銅材、銅合金材に適用すれば、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下、水滴の飛散等の問題を解決する、優れた結露濡れ性を付与することができる。また、カビの発育による不快な臭気の発生や金属材の腐食等の問題を抑制することができる。さらに、本発明に係る親水性皮膜は、長期の使用時においても優れた結露濡れ性と抗カビ性を維持することができる。
【0067】
また、親水性皮膜がその一部又は全部に形成されてなる本発明の金属材によれば、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下や水滴の飛散等の問題を解決する、優れた結露濡れ性を有する親水性皮膜が形成されているので、熱交換器に適用した場合の実用的価値が極めて高く、さらにエアコン部品への適応性が高いだけでなくその他の広い用途にも適用することができる。
【実施例】
【0068】
本発明を、実施例と比較例とを挙げて具体的に説明する。実施例1〜48の親水性皮膜、及び比較例1〜8の親水性皮膜を得るための親水化処理方法を以下に示す。但し、これらの実施例は、本発明の範囲をこれらに限定するものではない。
【0069】
<実施例1>
炭酸セリウム(III)・8水和物(高純度試薬:関東化学株式会社)に、炭酸セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、炭酸セリウム(III)の粒子径が2.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。次いで、親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0070】
なお、粒子径の測定は、以下の方法により行った。他の実施例及び比較例においても同様である。測定装置にはUPA−EX150を用い、得られた親水化処理剤を水難溶性のセリウム化合物(A)の濃度が0.01%程度になるよう、さらに脱イオン水で希釈した後、良く攪拌分散して測定部に投入し測定した。その際の測定条件は、測定時間180秒、循環なしとし、粒子条件としては、粒子透過性を透過、形状を非球形、屈折率を1.81(装置のデフォルト設定)とし、溶媒条件としては、溶媒を水、溶媒屈折率を1.333とした。
【0071】
<実施例2>
炭酸セリウム(III)・8水和物(高純度試薬:関東化学株式会社)に、炭酸セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、炭酸セリウム(III)の粒子径が1.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0072】
<実施例3>
炭酸セリウム(III)・8水和物(高純度試薬:関東化学株式会社)に、炭酸セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、炭酸セリウム(III)の粒子径が0.5μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0073】
<実施例4>
炭酸セリウム(III)・8水和物(高純度試薬:関東化学株式会社)に、炭酸セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、炭酸セリウム(III)の粒子径が0.1μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0074】
<実施例5>
フッ化セリウム(III)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(III)の粒子径2.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0075】
<実施例6>
フッ化セリウム(III)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(III)の粒子径1.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0076】
<実施例7>
フッ化セリウム(III)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(III)の粒子径0.5μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0077】
<実施例8>
フッ化セリウム(III)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(III)の粒子径0.1μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0078】
<実施例9>
フッ化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(IV)の粒子径2.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0079】
<実施例10>
フッ化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(IV)の粒子径1.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0080】
<実施例11>
フッ化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(IV)の粒子径0.5μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0081】
<実施例12>
フッ化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、フッ化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、フッ化セリウム(IV)の粒子径0.1μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0082】
<実施例13>
酸化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、酸化セリウム(IV)の粒子径2.5μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0083】
<実施例14>
酸化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、酸化セリウム(IV)の粒子径2.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0084】
<実施例15>
酸化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、酸化セリウム(IV)の粒子径1.0μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0085】
<実施例16>
酸化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、酸化セリウム(IV)の粒子径0.5μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0086】
<実施例17>
酸化セリウム(IV)(試薬:和光純薬工業株式会社)に、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、サンドミルにて粉砕し、酸化セリウム(IV)の粒子径0.1μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0087】
<実施例18>
Physical Vapor Synthesis(PVS)法により製造された一般に市販される酸化セリウム(IV)微粒子を、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加え、酸化セリウム(IV)の粒子径0.02μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に金属材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0088】
<実施例19>
Physical Vapor Synthesis(PVS)法により製造された一般に市販される酸化セリウム(IV)微粒子を、酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えた後、超音波を当て、酸化セリウム(IV)の粒子径0.01μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0089】
<実施例20>
実施例17と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液50gに、実施例8と同様の方法で作製したフッ化セリウム(III)/全量=3.0g/100gの水分散液50gを加えて親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0090】
<実施例21>
Physical Vapor Synthesis(PVS)法により製造された一般に市販される酸化セリウム(IV)微粒子を、酸化セリウム(IV)/全量=1.0g/100gとなるよう水を加え、酸化セリウム(IV)の粒子径0.02μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に金属材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.1g/mの親水性皮膜を形成した。
【0091】
<実施例22>
Physical Vapor Synthesis(PVS)法により製造された一般に市販される酸化セリウム(IV)微粒子を、酸化セリウム(IV)/全量=2.0g/100gとなるよう水を加え、酸化セリウム(IV)の粒子径0.02μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に金属材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.3g/mの親水性皮膜を形成した。
【0092】
<実施例23>
Physical Vapor Synthesis(PVS)法により製造された一般に市販される酸化セリウム(IV)微粒子を、酸化セリウム(IV)/全量=5.0g/100gとなるよう水を加え、酸化セリウム(IV)の粒子径0.02μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に金属材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として1.0g/mの親水性皮膜を形成した。
【0093】
<実施例24>
Physical Vapor Synthesis(PVS)法により製造された一般に市販される酸化セリウム(IV)微粒子を、酸化セリウム(IV)/全量=10.0g/100gとなるよう水を加え、酸化セリウム(IV)の粒子径0.02μmの水分散液を得て、親水化処理剤とした。親水化処理剤に金属材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として2.0g/mの親水性皮膜を形成した。
【0094】
<実施例25>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液を親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を100℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0095】
<実施例26>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液を親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉200℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0096】
<実施例27>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液を親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉250℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0097】
<実施例28>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液を親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0098】
<実施例29>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液5gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液95gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0099】
<実施例30>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液20gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液80gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0100】
<実施例31>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液30gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液70gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0101】
<実施例32>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0102】
<実施例33>
実施例14と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液30gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液70gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0103】
<実施例34>
実施例15と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液30gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液70gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0104】
<実施例35>
実施例19と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液30gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液70gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0105】
<実施例36>
実施例31と同様の方法で作製した親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を100℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0106】
<実施例37>
実施例31と同様の方法で作製した親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉200℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0107】
<実施例38>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、ポリアクリル酸(ジュリマーAC−10L:東亞合成株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0108】
<実施例39>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液30gに、ポリアクリル酸(ジュリマーAC−10L:東亞合成株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液70gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0109】
<実施例40>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液20gに、ポリアクリル酸(ジュリマーAC−10L:東亞合成株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液80gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0110】
<実施例41>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液30gに、ポリアクリル酸(ジュリマーAC−10L:東亞合成株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液35gと、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液35gとを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0111】
<実施例42>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(キレストPH−430:キレスト株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0112】
<実施例43>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(リカシッドBT−W:新日本理化株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0113】
<実施例44>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、アニオン性界面活性剤であるアルキルフェニルエーテルジスルホン酸Na(ペレックスSS−H:花王株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0114】
<実施例45>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、ノニオン性界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ノイゲンET−116C:第一工業製薬株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0115】
<実施例46>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、スルホン酸基含有ポリアクリル酸(アロン−A6021:東亞合成株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0116】
<実施例47>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、ポリアクリルアミド(シャロールAM−253P:第一工業製薬株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0117】
<実施例48>
実施例18と同様の方法で作製した酸化セリウム(IV)/全量=3.0g/100gの水分散液90gに、ポリビニルピロリドン(PVP K30:アイエスピー・ジャパン株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液10gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0118】
<比較例1>
硝酸セリウム(III)・6水和物(高純度試薬:関東化学株式会社)に、硝酸セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えて溶解し親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0119】
<比較例2>
塩化セリウム(III)(高純度試薬:関東化学株式会社)に、塩化セリウム(III)/全量=3.0g/100gとなるよう水を加えて溶解し親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0120】
<比較例3>
ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液を親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0121】
<比較例4>
比較例1と同様の方法で作製した硝酸セリウム(III)/全量=3.0g/100gの水溶液30gに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100となるよう水に溶解した水溶液70gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0122】
<比較例5>
ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液95gに、2−ピリジンギオール−1−オキサイド亜鉛塩(ホクサイドZPT:北興産業株式会社)の固形分濃度が3.0g/100gとなるよう水に分散した水分散液5gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0123】
<比較例6>
ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−11:日本合成化学工業株式会社)を固形分濃度として3.0g/100gとなるよう水に溶解した水溶液95gに、酸化亜鉛(NANOBYK−3820:ビックケミージャパン)の固形分濃度が3.0g/100gとなるよう水に分散した水分散液5gを加え、親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0124】
<比較例7>
キトサン(キトサンVL:大日精化工業株式会社)1.5gと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(リカシッドBT−W:新日本理化株式会社)1.5gを水に溶解し全量を100gとした水溶液を親水化処理剤とした。親水化処理剤に試験材を浸漬して塗布した後、電気炉を160℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量が乾燥固形分として0.5g/mの親水性皮膜を形成した。
【0125】
<比較例8>
塩化セリウム(III)(高純度試薬:関東化学株式会社)10.0g、過酸化水素(35%試薬:和光純薬工業株式会社)5gを水に加え総量1Lとした水溶液を化成処理液とした。化成処理液を45℃に加温し、試験材を30分間浸漬した後、水洗し、電気炉を100℃に調整した送風乾燥機内で吊るして10分間加熱乾燥し、試験材上に皮膜量がCe付着量として0.1g/mの化成皮膜を形成した。
【0126】
表1と表2に実施例1〜48の条件を示し、表3に比較例1〜8の条件を示す。なお、表1〜表3中の「wt%」は「質量%」と同義である。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
<試験材>
実施例1〜27、29〜48、比較例1〜8に用いた試験材は、市販品のJIS A 1000相当の、厚さ0.8mm、幅70mm、長さ150mmのアルミニウム合金材であった。実施例28に用いた試験材は、市販のJIS C 1000相当の厚さ0.8mm、幅70mm、長さ150mmの銅合金材であった。
【0131】
<試験材の洗浄方法>
前記実施例、比較例の皮膜を設けるに当たり、前記の試験材を、アルカリ系脱脂剤「ファインクリーナー315」(日本パーカライジング株式会社製)を薬剤濃度:20g/L、浴温度60℃に調整した処理浴に2分間浸漬処理し、表面に付着しているゴミや油を除去した後、表面に残存しているアルカリ分を水道水により洗浄し用いた。
【0132】
実施例、比較例で得られた皮膜を設けた試験材を評価材として、下記の評価方法により皮膜性能の評価を行った。
【0133】
<結露濡れ性評価>
評価材を脱イオン水に480時間浸漬させた後、50℃に調整した送風乾燥器内で1時間加熱乾燥し室温まで放冷したものから、40mm×40mmサイズの試験片を切り出し、評価に用いた。温度25℃、湿度60%RHに調整した雰囲気の中で、試験片を5℃に冷却し5分間冷却した後の試験片表面の結露水の状態を目視にて観察し、表4に示すレイティングナンバーにて評価した。
【0134】
<結露濡れ性評価基準>
【0135】
【表4】

【0136】
<抗カビ性評価>
評価材を脱イオン水に480時間浸漬させた後、50℃に調整した送風乾燥器内で1時間加熱乾燥し室温まで放冷したものから、40mm×40mmサイズの試験片を切り出し、評価に用いた。試験片に対して試験菌として下記の4菌種の混合胞子懸濁液を噴霧し、蓋をして27℃で7日間培養した後のカビの繁殖状態を、試験片面積におけるカビの占有面積により測定し、下記に示すレイティングナンバーにて評価した(JIS−Z−2911−2000に準拠)。
【0137】
[試験菌]
・Aspergillus niger(IFO6341)
・Penicillium funiclosum(IFO6345)
・Cladosporium cladosporioides(IFO6348)
・Aureobasidium pullulans(IFO6353)
【0138】
<抗カビ性評価基準>
5:占有面積1%未満
4:占有面積1%以上10%未満
3:占有面積10%以上30%未満
2:占有面積30%以上60%未満
1:占有面積60%以上
【0139】
<対水接触角>
評価材を脱イオン水に480時間浸漬させた後、50℃に調整した送風乾燥器内で1時間加熱乾燥し室温まで放冷したものを評価に用いた。評価材上に2μlの脱イオン水を滴下し、形成された水滴の接触角を接触角計(商品名:CA−X型、協和界面科学株式会社製)により測定し、下記に示すレイティングナンバーにて評価した。
【0140】
<耐水接触角評価基準>
5:接触角が10°未満
4:接触角が10°以上20°未満
3:接触角が20°以上30°未満
2:接触角が30°以上40°未満
1:接触角が40°以上
【0141】
<親水性皮膜の耐水性評価試験>
評価材を脱イオン水に480時間浸漬する前後の重量測定を行い、下記に示す式により皮膜残存率を求め、下記に示すレイティングナンバーにて耐水性を評価した。
【0142】
皮膜残存率=(C−A)/(B−A)×100(%)
A:皮膜を設ける前の試験材重量(g)
B:皮膜を設けた後の評価材重量(g)
C:評価材を脱イオン水中に480時間浸漬した後、乾燥した評価材重量(g)
なお、乾燥した評価材とは、50℃に調整した送風乾燥器内で1時間加熱乾燥し室温まで放冷したものを指す。
【0143】
<耐水性評価基準>
5:皮膜残存率が90%以上
4:皮膜残存率が70%以上90%未満
3:皮膜残存率が60%以上80%未満
2:皮膜残存率が0%を超え60%未満
1:皮膜残存率が0%
【0144】
<水難溶性のセリウム化合物の耐水性評価試験>
評価材を脱イオン水に480時間浸漬する前後のCe量を、蛍光X線分析装置(商品名ZSX−100:リガク製)を用いて測定を行い、下記に示す式によりCe残存率を求め、下記に示すレイティングナンバーにて耐水性を評価した。なお、比較例5、6については、同様の方法により、Zn残存率を求めて耐水性を評価した。比較例3、7については、この評価試験は行わなかった。
【0145】
Ce残存率=(B)/(A)×100(%)
A:脱イオン水浸漬前のCe量(mg/m
B:脱イオン水に480時間浸漬した後のCe量(mg/m
【0146】
<Ce残存性の評価基準>
5:Ce残存率が90%以上
4:Ce残存率が80%以上90%未満
3:Ce残存率が60%以上80%未満
2:Ce残存率が0%を超え60%未満
1:Ce残存率が0%
【0147】
前記した皮膜性能の各評価において、レイティングナンバーが3以上であれば合格レベルとした。評価結果を表5及び表6に示す。
【0148】
【表5】

【0149】
【表6】

【0150】
表5及び表6に示した結果から明らかなように、実施例1〜48の親水性皮膜は、いずれも結露濡れ性及び抗カビ性に優れていた。
【0151】
一方、比較例1、2は、水溶性のセリウム化合物を水に溶解した親水化処理剤から得た皮膜であるが、耐水性が得られなかった。これにより、水難溶性のセリウム化合物を用いることが重要であることがわかる。比較例3は、ポリビニルアルコールのみの皮膜であり、対水接触角は一般に親水性とされるレベルではあるものの、本発明の目的である結露濡れ性や抗カビ性が得られないことが分かる。比較例4は、水溶性のセリウム化合物に有機成分を組み合わせた場合を示し、比較例1、2に比較して耐水性(皮膜残存性)及びCe残存性が向上するものの、結露濡れ性や抗カビ性が得られないことがわかる。比較例5、6は、一般に抗カビ性を有することが知られるZPT及びZnOをPVAに組み合わせた場合を示し、これらの皮膜では結露濡れ性が得られないことに加え、何れも脱イオン水浸漬後のZn残存性が低く、抗カビ性が得られないことがわかる。比較例7は、一般に抗菌性を有することが知られるキトサンを用いた場合を示し、この皮膜では結露濡れ性が得られないことに加え、良好な耐水性にもかかわらず抗カビ性が見られない。すなわちキトサンに抗カビ性がないことがわかる。比較例8は、Ce化合物の化成処理により化成皮膜を得た場合であり、この皮膜は高いCe残存性が得られるものの、本発明の目的である結露濡れ性や抗カビ性が得られないことがわかる。
【0152】
<接触角と結露濡れ性>
次に、接触角と結露濡れ性について説明する。図2は、一般的な親水性評価方法である「接触角(脱イオン水浸漬後)」の結果と、実施例で評価方法として用いた「結露濡れ性」の結果との関係を示すグラフである。図2中のプロットは、実施例1〜48及び比較例3〜8を含む各種皮膜の接触角(横軸、生データ)と結露濡れ性(縦軸、レイティングナンバー)との相関を示す。
【0153】
図2に示すように、接触角が小さくなるほど結露濡れ性は向上する一般的な傾向が見られたが、一般的に親水性があるとみなせる接触角が40°未満の領域でも、結露濡れ性に差が見られた。すなわち、10°未満の低接触角でも結露濡れ性が十分でないケースもあれば、30°〜40°前後でも結露濡れ性を満たすケースもあった。このことは、接触角により親水性と定義される皮膜あっても、表4中のレイティングナンバー「2」「1」に示すように結露水が粒子状に成長し、フィン間の目詰まりを起こす場合があり得ることを示している。
【0154】
以上のことから、結露水によるフィンの目詰まりを防止する皮膜の評価方法として、接触角の評価のみでは十分でなく、本発明者が確立した結露濡れ性の評価結果を加えて判断することが望ましい。特に、実施例で用いたような、早い結露段階(5分間冷却させた際の表面の結露状態)での濡れ広がりに着目して評価することが実態に即した評価方法と言うことができ、この評価基準を満たす親水性皮膜が本発明の課題を解決することができる。
【符号の説明】
【0155】
1 金属材(被塗布材)
2,2’ 耐食皮膜(耐食皮膜は無くても良い)
3,3’ 親水性皮膜
10 親水性皮膜が設けられた金属材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、該水の中に分散された水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする親水化処理剤。
【請求項2】
前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、0.01〜2.0μmの粒子径で前記水の中に分散されてなる、請求項1に記載の親水化処理剤。
【請求項3】
前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の親水化処理剤。
【請求項4】
さらに、前記水の中に、有機成分(B)から選ばれる1種又は2種以上を含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の親水化処理剤。
【請求項5】
金属材の表面に形成された親水性皮膜であって、水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする親水性皮膜。
【請求項6】
前記水難溶性のセリウム化合物(A)の含有量が、固形分比率で5〜100質量%である、請求項5に記載の親水性皮膜。
【請求項7】
前記水難溶性のセリウム化合物(A)が、炭酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、フッ化セリウム(IV)及び酸化セリウム(IV)から選ばれる1種又は2種以上である、請求項5又は6に記載の親水性皮膜。
【請求項8】
さらに、有機成分(B)から選ばれる1種又は2種以上を含有する、請求項5〜7の何れか1項に記載の親水性皮膜。
【請求項9】
前記金属材の前記表面を、請求項1〜4の何れか1項に記載の親水化処理剤で処理した後、乾燥して得られる、請求項5〜8の何れか1項に記載の親水性皮膜。
【請求項10】
金属材の表面の一部又は全部を、請求項1〜4の何れか1項に記載の親水化処理剤で処理した後、乾燥して請求項5〜9の何れか1項に記載の親水性皮膜を形成することを特徴とする親水化処理方法。
【請求項11】
表面に請求項5〜9の何れか1項に記載の親水性皮膜を設けた金属材。
【請求項12】
前記金属材が、アルミニウム材、アルミニウム合金材、銅材、銅合金材の何れかである、請求項11に記載の金属材。
【請求項13】
熱交換器の部材である、請求項11又は12に記載の金属材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−87213(P2012−87213A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234993(P2010−234993)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【出願人】(510278221)株式会社パルテック (1)
【Fターム(参考)】