説明

金属条、コネクタ、および金属条の製造方法

【課題】
基板へのはんだ付け性が良好で、保管時、リフロー時、およびFPCまたはFFCへのかん合時に、端子部にウィスカが発生しない、鉛フリーのコネクタに必要な金属条を提供しする。
【解決手段】
金属条の母材金属上にNiめっきを施し、その上にCuめっき、さらにその上にSnめっきを施す。前記Cuめっきの厚さは、(Cuめっき+Snめっき)に対するCuめっきの割合が3〜7mass%となるようにする。前記SnめっきにZn, Al, Si, Mg, Tiのうちの1種以上の金属を1mass%以下含有させる。前記の特徴を有するコネクタをSnの融点以上の温度で熱処理することにより、Niめっき層とSnめっき層との間にCu-Sn化合物層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気コネクタを構成する端子、特にフレキシブル・プリント基板等の別部材との電気的接続のために、かん合されるコネクタ端子、並びにこれを構成する金属条及びその製造方法に関する。特に無鉛めっきが施された無鉛めっきコネクタ端子、及びこれを構成する金属条に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタを構成する端子は、基板への取り付けの際にはんだ付けされるため、一般にこれを構成する金属条の全面めっき処理が施されている。鉛フリーのめっき処理としては、はんだ付け性の観点から、Ni下地層の上にSn系はんだ層を形成することが知られている。さらに狭ピッチ・コネクタの場合には、隣のコネクタ端子と接触し、短絡をおこすおそれのあるウィスカの発生も同時に防止する必要がある。
【0003】
母材金属上にNiめっきを施し、その上にSn-Cuめっきを施すことによって、はんだ濡れ性を確保する方法が提案されている(特許文献1)。また、母材金属上にNiもしくはCuの下地めっきを施し、その上にSn-Biめっきを施すことによって、接続時に接触部からウィスカが発生するのを防止する方法が提案されている(特許文献2)。さらに、母材金属上にNi層、Ni-Sn金属間化合物層、Ni-Sn金属間化合物およびSnからなる混在層、酸化Sn層を順次、有するめっき層を形成することにより、ウィスカ発生防止とはんだ濡れ性を両立する方法も提案されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−164106号公報
【特許文献2】特開2005−56605号公報
【特許文献3】特開2006−49083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Ni下地めっきの上に単にSn-Cuめっきを施して提供される金属条では、はんだ濡れ性は確保されるが、ウィスカ発生を完全に抑止することは困難である。2層めっきをするだけでは、Ni下地めっきとSn-Cuめっきの界面にCu-Sn化合物が形成されず、その後のリフロー処理において、Sn-CuめっきのSnとNiの化合物生成反応が十分に抑止されず、前記界面にNi-Sn化合物が多量に形成され、これにより、めっき内部に大きな内部圧縮応力が発生し、ひいては、ウィスカが発生してしまう。
【0006】
また、金属条のNiもしくはCuの下地めっきの上にSn-Biめっきを施すだけでは、ウィスカ発生の完全抑止は難しい。NiもしくはCuとSn-BiめっきのSnがリフロー時に反応し、界面にNi-Sn化合物もしくはCu-Sn化合物が形成され、反応のバリア層が無いために、これらの反応層の形成量は多い。これにより、めっき内部に大きな内部圧縮応力が発生し、ひいては、Ni下地めっき/Sn-Cuめっきより発生頻度は低いが、ウィスカが発生してしまう。
【0007】
さらに、Ni層、Ni-Sn金属間化合物層、Ni-Sn金属間化合物およびSnからなる混在層、酸化Sn層を順次、有するめっき層を形成する方法では、Ni-Sn化合物が表面のSn酸化物層まで到達するほど成長してしまっており、多量のNi-Sn化合物生成により、めっき内部に大きな内部圧縮応力が発生し、Ni-Sn化合物の支持柱効果をもってしても、ウィスカが発生してしまう。また、Ni-Sn化合物の一部が表面のSn酸化物層まで到達していることにより、そうでない場合と比べて、はんだ濡れ性も劣る。
【0008】
また上記何れの例においても、最表面の酸化Sn層のフタ効果による内部圧縮応力の発生すなわちウィスカの発生を抑止可能な手段を提供していないことが問題となる。
【0009】
そこで、本発明は、はんだ濡れ性の確保、めっき膜内部の金属間化合物の大量成長によるウィスカ発生の抑止およびはんだ表面の酸化Sn膜のフタ効果によるウィスカ発生の抑止、を満足する金属条、及びこれにより形成されるコネクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
(1)母材金属と、前記母材金属上に形成されたNi層と、前記Ni層上に形成されたSnと第一の金属との共晶組成の層と、前記Ni層と前記共晶組成の層との間に形成されたSnと前記第一の金属との化合物層と、を有することを特徴とする金属条。
(2)母材金属と、前記母材金属上に形成されたNi層と、前記Ni層上に形成されたSn-Cu共晶組成の層と、前記Ni層と前記Sn-Cu共晶組成の層との間に形成されたCu-Sn化合物層と、を有することを特徴とする金属条。
(3)母材金属と、前記母材金属上に形成されたNi層と、前記Ni層上に形成されたSn層と、前記Ni層と前記Sn層との間に形成されたCu-Sn化合物層と、を有することを特徴とする金属条。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の金属条を加工して形成したことを特徴とするコネクタ。
(5)金属条の製造方法であって、母材金属上にNi層、Cu層、Sn層を順次積層させる工程と、前記積層された母材金属をSn-Cu合金の固相線以上の温度で熱処理し、前記Ni層上にCu-Sn化合物層、前記Cu-Sn化合物層上にSn-Cu共晶組成の層、を形成する工程と、を有することを特徴とする金属条の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、はんだ濡れ性の確保、めっき膜内部の金属間化合物の大量成長によるウィスカ発生の抑止およびはんだ表面の酸化Sn膜のフタ効果によるウィスカ発生の抑止、を満足しうる金属条、及びこれにより形成されるコネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明に係る金属条の第1の実施形態について、図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る金属条1の層構造の断面を示すものであり、母材金属2上には、Ni層3と、Ni層3上に形成されたCu-Sn化合物層4と、Cu-Sn化合物層4上に形成されたSn-Cu共晶組成であるSn-0.7Cu層5とによる積層構造が設けられている。
本構造では、母材金属2とSn-0.7Cu層5との間に2重の反応防止バリア層が形成されることが重要となる。すなわち、これによれば、Cu-Sn化合物層6により、Ni層3とSn-0.7Cu層5の間の反応を抑止でき、また、Ni層3により、母材金属2とCu-Sn化合物層4、Sn-0.7Cu層5の間の反応を抑止できるため、ウィスカ抑制を図ることができる。一般には母材金属2としてはリン青銅のようなCu合金が多く使用され、このCu合金からのCu供給による化合物化の促進がウィスカの原因となりうるが、上記の通り、Ni層3によりリン青銅からのCu供給は遮断され、母材金属とCu-Sn化合物層6との反応は抑止されるため、本発明の層構造を有する金属条によれば、母材金属を特殊な材料にすることなく、通常のリン青銅を用いることができる。
さらに、本発明によれば、最表面は酸化Snの比較的少ないSn-0.7Cu層5となるため、その後の接続時のはんだ濡れ性も良好な金属条を提供することができる。
【0014】
なお、本実施形態では、第1層としてNi層、第2層としてCu-Sn化合物層、第3層としてSn-Cu共晶組成の層を例にとって記載したが、これに限られるものではなく、上記の通り、2重の反応防止バリア層を形成して化合物化の進行を防ぐ構成を取り得る材料の組み合わせの範囲であれば種々変更可能である。
具体的には、第2層としてZn-Sn化合物層、第3層としてSnとZnとの共晶組成の層としても構わない。また、第1層としてはCo層、Fe層等であっても構わない。
【0015】
次に、本発明に係る金属条の製造方法について説明する。
図2は、本発明に係る金属条を製造するために用いる第一の積層構造の断面図であり、母材金属2上にNi層3、Cu層6、Sn層7を順次めっきして形成した熱処理前の金属条を示すものである。Ni層3の厚さは1〜5μmの範囲とすることが好ましい。Ni層3の厚さが1μm未満であると、母材金属2とCu層6、Sn層7との間の反応抑止機能が十分に機能しなくなり、5μmを超えると、金属条の弾性が損なわれるからである。
【0016】
Ni層3の上にCu層6、Sn層7を形成したのは、後の熱処理によりNi層3の直上にCu-Sn化合物層6を形成するためである。Sn層7を最表面にしたのは、はんだ濡れ性を確保するためである。
なお、Cu層6とSn層7の合計の厚さは、1〜5μmの範囲とすることが好ましい。1μm未満であると、はんだ濡れ性が低下し、5μmを超えても、それ以上のはんだ濡れ性の向上が見られないからである。
また、Cu層6の厚さは、(Cu層6+Sn層7)に対するCu層6の割合が3〜7mass%となるようにするのが好ましい。Cu層6の割合が3mass%未満であると、後で熱処理した際、Ni層3の直上のCu-Sn化合物層4の形成がところどころ不十分となり、Cu-Sn化合物層4によるNi層3とSn-0.7Cu層5の間の反応抑止効果が不十分となってしまう。Cu層6の割合が7mass%を超えると、後の熱処理時に、Cu層6をSn層7と完全に反応させるのに時間がかかってしまう。
【0017】
さらに、Sn層7には、Zn, Al, Si, Mg, Tiのうちの1種以上の金属を1mass%以下含むのが好ましい。これらの酸化しやすい金属を微量含むことにより、後の熱処理時やリフロー時に、これらの金属が選択的に酸化される。これにより、最表面のSn層7の酸化を最小限に抑えることが可能となり、最表面の酸化Sn層のフタ効果によるめっき膜内部圧縮応力の発生を抑制でき、これによるウィスカ発生を抑止できる。Sn層5中のこれらの金属の含有量が1mass%を超えると、はんだ濡れ性の低下が生じる。
【0018】
以上の層形成処理(主にめっき処理)の後、金属条1をSnの融点以上、少なくともSn-Cu合金の固相線以上の温度で熱処理し、Cu層6とSn層7を完全に反応させることで、Ni層3の直上にはCu-Sn化合物4が形成され、表面層はCuとSnとの共晶組成層が形成される。
本製造方法によれば、形成されるCu-Sn化合物層4のCuは、最初のCu層6からのみ供給され、リン青銅等による母材金属2からのCuは供給されない。すなわち、Cu-Sn化合物層4の厚さは、最初のCu層6の厚さだけに依存するため、これをCu-Sn化合物層4の形成がところどころ不十分とならない程度に少なく形成することによって、Ni層3直上のCu-Sn化合物4が厚くなりすぎず、これに起因するめっき膜内部の圧縮応力発生を抑制でき、ウィスカ発生を抑制することができる。
【0019】
次に、本発明に係る金属条を製造するために用いる第二の積層構造の断面図として、図3は、母材金属2上にNi層3、Cu-Sn化合物が浮島状に存在するSn-Cu合金層8を順次めっきして形成した熱処理前の金属条を示すものである。Ni層3の厚さは1〜5μmの範囲とすることが好ましい。Ni層3の厚さが1μm未満であると、母材金属2とSn-Cu合金層8との間の反応抑止機能が十分に機能しなくなり、5μmを超えると、金属条1の弾性が損なわれるからである。
【0020】
ここで、Ni層3の上にCu-Sn化合物が浮島状に存在するSn-Cu合金層8を形成したのは、後の熱処理によりNi層3の直上にCu-Sn化合物層4を形成するためである。従って、Sn-Cu合金層8中のCuの割合は3〜7mass%となるようにするのが好ましい。Cuの割合が3mass%未満であると、後で熱処理した際、Ni層3の直上のCu-Sn化合物層4の形成がところどころ不十分となり、Cu-Sn化合物層4によるNi層3とSn-Cu共晶組成の層5との間の反応抑止効果が不十分となってしまうからである。また、Cuの割合が7mass%を超えると、Sn-Cu合金層8の融点が高くなってしまい、後で熱処理およびリフロー処理を行う際、他の部材の耐熱性、基板の耐熱性、後プロセス許容温度から、液相線温度より低い温度で熱処理およびリフロー処理を行わなければならなくなり、この場合には、熱処理前にSn-Cu合金層8中に浮島状に存在していたCu-Sn化合物が完全に融けきらず、Ni層3の直上のCu-Sn化合物層6の形成がところどころ不十分となり、Cu-Sn化合物層6によるNi層3とSn-Cu共晶組成の層5との間の反応抑止効果が不十分となってしまうからである。
【0021】
なお、Sn-Cu合金層8の厚さは、1〜5μmの範囲とすることが好ましい。1μm未満であると、はんだ濡れ性が低下し、5μmを超えても、それ以上のはんだ濡れ性の向上が見られないからである。
【0022】
また、Sn-Cu合金層8には、Zn, Al, Si, Mg, Tiのうちの1種以上の金属を1mass%以下含むのが好ましい。これらの酸化しやすい金属を微量含むことにより、後の熱処理時やリフロー時に、これらの金属が選択的に酸化される。これにより、最表面のSn-Cu合金層8の酸化を最小限に抑えることが可能となり、最表面の酸化Sn層のフタ効果によるめっき膜内部圧縮応力の発生を抑制でき、これによるウィスカ発生を抑止できる。Sn-Cu合金層8中のこれらの金属の含有量が1mass%を超えると、はんだ濡れ性の低下が生じる。
【0023】
以上の層形成処理(主にめっき処理)の後、金属条1をSn-Cu合金層8の融点以上の温度で熱処理することで、Sn-Cu合金層8中に浮島状に存在していたCu-Sn化合物が一旦溶け、これがNi層3の直上に再析出し、Cu-Sn化合物層4が形成され、表面層はCuとSnとの共晶組成の層となる。
本製造方法によれば、形成されるCu-Sn化合物層4のCuは、最初のSn-Cu化合物層8のみから供給され、リン青銅等による母材金属2からのCuは供給されない。すなわち、Cu-Sn化合物層4の厚さは、最初のSn-Cu合金層8中のCu量だけに依存するため、これをCu-Sn化合物層4の形成がところどころ不十分とならない程度に少ない含有量とすることによって、Ni層3直上のCu-Sn化合物層4が厚くなりすぎず、これに起因するめっき膜内部の圧縮応力発生を抑制でき、ウィスカ発生を抑止できる。
【0024】
以上、各実施形態では、第1層としてNi層、第2層としてCu-Sn化合物層、第3層としてSn-Cu共晶組成の層となるような層構造の製造方法について示したが、これに限られず、第2層としてZn-Sn化合物、第3層としてSnとZnとの共晶組成の層となるような層構造の製造方法についても同様であり、Cuの代わりにZnを用いるだけでよい。
【0025】
また、上記いずれの実施形態においても、表面層としては、最も安定した状態であるSn-Cu共晶組成の層となる例を示したが、表面層が極めて薄くなる場合、例えば、2μm程度以下となる場合には、表面層はSn層となっても構わない。これは層厚が2μm以下の場合には、Sn-Cu共晶組成の層として存在するよりも、全てのCu成分が表面層の下層にあるCu-Sn化合物層側に用いられ、表面層がSn層となった方が安定状態となるためである。
【0026】
ここで、上記した金属条の利用形態としては主としてコネクタがある。基板同士を接続する場合にフレキシブルプリント基板(FPC)またはフレキシブルフラットケーブル(FFC)が使用される場合があり、この両方の基板にコネクタを設け、両方のコネクタをFPCまたはFFCを介して接続する必要があるが、このコネクタのうち、特に、端子ピッチが0.5mm以下の狭ピッチで、鉛フリーのコネクタに対して本発明の金属条を用いることができる。
【0027】
以下、具体的な実験の結果を示す。
[実験例]
本発明の熱処理前の金属条のサンプル(実験例1〜10)、従来の金属条のサンプル(比較例1〜3)について、はんだ濡れ性、ウィスカ発生の有無を確認した結果を図4に示す。サンプルには、リン青銅製の母材金属を使用し、表面にめっき層を通常の電気めっき法により逐次、形成した。その後、N2中、250℃で10秒間、熱処理を行った。
【0028】
はんだ濡れ性試験は、上記各サンプルの最表面メタライズ層の上に、ロジン系フラックス11mass%を含有したSn-3Ag-0.5Cu鉛フリーはんだを塗布し、その濡れ拡がりの度合いにより、はんだ濡れ性を評価した。鉛フリーはんだ槽温度は250℃とした。図4において、はんだ濡れ性が良好なサンプルを○、濡れがやや劣るサンプルを△、濡れ不良のサンプルを×とした。
【0029】
ウィスカ発生の有無の確認は以下のように行った。コネクタをFPCにかん合し、室温、相対湿度50%で、1000時間放置後、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察することにより行った。ウィスカ発生の無かったサンプルもしくはウィスカの発生が見られたが、最大長さが50μm以下であったサンプルを○、最大長さ50μm以上のウィスカの発生が見られたサンプルを×とした。
【0030】
実験例1〜10では、良好なはんだ濡れ性が得られ、ウィスカ発生も見られなかった。また、これら何れのサンプルでも、熱処理後のめっき層の構成は下地層から表面層の順で、Ni層/Cu-Sn合金化合物層/Sn-Cu共晶組成の層(微量のZn, Al, Si, Mg, Tiの酸化物含有)となっていた。
また背景技術である比較例1〜3では、はんだ濡れ性、ウィスカ発生の何れかに問題が見られた。
【0031】
以上の実験結果から、本発明に係る金属条であれば、はんだ濡れ性、耐ウィスカ発生においていずれも良好であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る金属条の第1の実施形態の層構造の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る金属条の熱処理前の第一の層構造の模式的断面図である。
【図3】本発明に係る金属条の熱処理前の第二の層構造の模式的断面図である。
【図4】本発明の金属条と従来の金属条のはんだ濡れ性およびウィスカ発生状況を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 金属条
2 母材金属
3 Ni層
4 Cu-Sn化合物層
5 Sn-Cu共晶組成の層
6 Cu層
7 Sn層
8 Sn-Cu合金層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材金属と、
前記母材金属上に形成されたNi層と、
前記Ni層上に形成されたSnと第一の金属との共晶組成の層と、
前記Ni層と前記共晶組成の層との間に形成されたSnと前記第一の金属との化合物層と、
を有することを特徴とする金属条。
【請求項2】
母材金属と、
前記母材金属上に形成されたNi層と、
前記Ni層上に形成されたSn-Cu共晶組成の層と、
前記Ni層と前記Sn-Cu共晶組成の層との間に形成されたCu-Sn化合物層と、
を有することを特徴とする金属条。
【請求項3】
請求項2記載の金属条であって、
前記Ni層と前記Sn-Cu共晶組成の層とは、これらの間に形成された前記Cu-Sn化合物層により互いに接していないことを特徴とする金属条。
【請求項4】
請求項2又は3記載の金属条であって、
前記Cu-Sn化合物層は、前記Ni層に接して形成されており、
前記Sn-Cu共晶組成の層は、前記Ni層には接することなく、前記Cu-Sn化合物層に接して形成されていることを特徴とする金属条。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の金属条であって、
前記Sn-Cu共晶組成の層および前記Cu-Sn化合物層は、
前記Ni層上に順次積層されたCu層、Sn層を熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする金属条。
【請求項6】
母材金属と、
前記母材金属上に形成されたNi層と、
前記Ni層上に形成されたSn-Zn共晶組成の層と、
前記Ni層と前記Sn-Zn共晶組成の層との間に形成されたZn-Sn化合物層と、
を有することを特徴とする金属条。
【請求項7】
請求項6記載の金属板条であって、
前記Ni層と前記Sn-Zn共晶組成の層とは、これらの間に形成された前記Zn-Sn化合物層により互いに接していないことを特徴とする金属板条。
【請求項8】
請求項6又は7記載の金属板条であって、
前記Zn-Sn化合物層は、前記Ni層に接して形成されており、
前記Sn-Zn共晶組成の層は、前記Ni層に接することなく、前記Zn-Sn化合物に接して形成されていることを特徴とする金属板条。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の金属条であって、
前記Sn-Zn共晶組成の層および前記Zn-Sn化合物層は、
前記Ni層上に順次積層されたZn層、Sn層を熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする金属条。
【請求項10】
母材金属と、
前記母材金属上に形成されたNi層と、
前記Ni層上に形成されたSn層と、
前記Ni層と前記Sn層との間に形成されたCu-Sn化合物層と、
を有することを特徴とする金属条。
【請求項11】
請求項10記載の金属条であって、
前記Ni層と前記Sn層とは、これらの間に形成された前記Cu-Sn化合物層により互いに接していないことを特徴とする金属条。
【請求項12】
請求項10又は11記載の金属条であって、
前記前記Sn層の厚さは2μm以下であることを特徴とする金属条。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の金属条であって、
前記Ni層に代えてCo層又はFe層が形成されていることを特徴とする金属条。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の金属条であって、
前記母材金属は、Cu合金であることを特徴とする金属条。
【請求項15】
請求項14記載の金属条であって、
前記母材金属は、リン青銅であることを特徴とする金属条。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の金属条を加工して形成したことを特徴とするコネクタ。
【請求項17】
金属条の製造方法であって、
母材金属上にNi層、Cu層、Sn層を順次積層させる工程と、
前記積層された母材金属をSn-Cu合金の固相線以上の温度で熱処理し、前記Ni層上にCu-Sn化合物層、前記Cu-Sn化合物層上にSn-Cu共晶組成の層、を形成する工程と、
を有することを特徴とする金属条の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の金属条の製造方法であって、
前記熱処理は、Sn-Cu合金の液相線以上の温度で処理されることを特徴とする金属条の製造方法。
【請求項19】
請求項17又は18記載の金属条の製造方法であって、
前記Sn層と前記Cu層との合計質量に対する前記Cu層の割合は3〜7mass%であることを特徴とする金属条の製造方法。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれかに記載の金属条の製造方法であって、
前記Sn層には、Zn、Al、Si、Mg、Tiのうち1種以上の金属が1mass%以下含まれていることを特徴とする金属条の製造方法。
【請求項21】
金属条の製造方法であって、
母材金属上にNi層、Sn-Cu合金層を順次積層させる工程と、
前記積層された母材金属をSn-Cu合金の固相線以上の温度で熱処理し、前記Ni層上にCu-Sn化合物層、前記Cu-Sn化合物層上にSn-Cu共晶組成の層、を形成する工程と、
を有することを特徴とする金属条の製造方法。
【請求項22】
請求項21記載の金属条の製造方法であって、
前記Sn-Cu合金層中のCuの割合は、3〜7mass%であることを特徴とする金属条の製造方法。
【請求項23】
請求項21又は22記載の金属条の製造方法であって、
前記Sn-Cu合金層には、Zn、Al、Si、Mg、Tiのうち1種以上の金属が1mass%以下含まれていることを特徴とする金属条の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−150690(P2008−150690A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342073(P2006−342073)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】