説明

金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法

【課題】本発明は、被測定金属板の幅が変化した際にも、被測定金属板の幅が変化した部分に対応する参照板の幅方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減され、被測定金属板の温度測定誤差を小さくすることが可能な金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】補助ヒータ13を参照板2に沿って、参照板2と対向する最小幅Wsminの鋼板3の両端部よりそれぞれ外側であり、かつ、最大幅Wsmaxの鋼板3の両端部よりそれぞれ内側の位置に対応するように設け、温度コントローラ12の指示に基づき鋼板3の幅Ws(最小幅Wsmin〜最大幅Wsmax)に応じた所定の電力を補助ヒータ13に供給し、参照板2の温度分布が所定の温度分布となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば連続焼鈍設備や合金化溶融亜鉛メッキ設備に使用され、非接触にて金属板の温度を測定するための金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板を連続熱処理する連続焼鈍設備や溶融メッキの後に合金化処理する合金化溶融亜鉛メッキ設備においては、多品種の鋼板は連続処理される。このため、品種ごとに異なる鋼板の機械的特性(強度や伸びなど)やメッキ特性(合金化度など)を安定化させるためには、加熱・冷却を伴う熱処理プロセス後の鋼板温度を目標温度に精度良く制御することが重要である。
【0003】
これらの設備において連続的に搬送される鋼板の温度測定は、非接触による放射温度計を用いた測定が一般的である(例えば、特許文献1参照)。放射温度計を用いる場合、被測定対象物である鋼板の放射率の設定が必要である。ところが、鋼板の放射率は鋼種、表面性状など鋼板自体の物理性状の他、鋼板温度など種々の要因によって変動するため、このような変動に対応して鋼板の放射率を設定することは非常に困難である。この結果、鋼板温度の測定に誤差が生じやすく、鋼板温度を目標温度に精度良く制御できない問題があった。
【0004】
そこで、上記のような鋼板の放射率変動の影響を極力排除した測定方法として、参照板と鋼板との間で交互に反射する回数がそれぞれで1または2回となる角度に鋼板に向けて放射温度計を設置することで、見かけ放射率が高くなるという知見に基づく測定方法が提案されている。
【0005】
例えば、図6(a)に示すように、炉壁110a、110b、110c、110dで囲まれた炉内に、温度コントローラ160を備えた幅Wの参照板120を幅Wの被測定鋼板130に対向させて設置してある。この温度コントローラ160には、被測定鋼板130の目標温度Tが入力され、温度コントローラ160の指示に従って電源150から参照板120の幅W方向の全面に渡って一様に配設されたヒータ140に電力が供給される。また、参照板120の温度Tは接触式温度計170で直接測定される。さらに、参照板120と被測定鋼板130との間で放射エネルギーが交互に反射する回数がそれぞれで1回または2回となる角度θに被測定鋼板130に向けて放射温度計180を設置する。このようにして、被測定鋼板130から放出される射度を放射温度計180で測定し、この射度と等価なエネルギーを放射する黒体の温度に換算して求めた温度を射度温度Tとする。前記参照板120の温度Tが被測定鋼板130の目標温度Tまたは被測定鋼板130の温度Tに近づくように温度コントローラ160にてヒータ140を制御するとともに、射度温度Tと参照板120の温度Tに基づき鋼板温度演算器190にて被測定鋼板130の温度Tを算出する鋼板の温度測定方法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−67137号公報
【特許文献2】特許第4217255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図6(a)に示すように、バーナなどが設置されていない空送帯において、被測定鋼板130に対向しない炉壁側面110cや110dからは放熱があり、かつ、被測定鋼板130からの形態係数も小さい。したがって、炉壁側面110cや110dは、受熱量が小さく、被測定鋼板130に対向する炉壁上面110aに比べて温度が低くなる。したがって、幅Wの参照板120を幅Wの被測定鋼板130に対向させて設置した場合、参照板120の幅W方向の全面に渡って一様に配設されたヒータ140で参照板120を加熱するだけでは、参照板120の幅W方向の両端部側の温度はどうしても低下してしまう。このような状態で、通板する被測定鋼板130の幅Wが変化すると、参照板120から被測定鋼板130以外(炉壁上面110a)を望む割合も変化し、参照板120の幅W方向の温度分布もさらに変化してしまう(図6(b)参照)。このように、通板する被測定鋼板130の幅Wが変化すると、特に被測定鋼板130の幅Wが変化した部分に対応する参照板120の幅W方向の部分の温度がどうしても大きく変化(温度偏差が増大)してしまい、被測定鋼板130の温度Tを算出する誤差(すなわち、被測定鋼板130の温度測定誤差)が大きくなってしまうという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、被測定金属板の幅が変化した際にも、被測定金属板の幅が変化した部分に対応する参照板の幅方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減され、被測定金属板の温度測定誤差を小さくすることが可能な金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
幅Wが最小幅Wminから最大幅Wmaxまで変化する被測定金属板に対向して設置された幅Wの参照板と、この参照板に沿って設けられた主ヒータと補助ヒータと、この主ヒータと補助ヒータをそれぞれ制御するための主温度制御装置と補助温度制御装置と、前記参照板の温度(以下、「参照板温度」という。)Tを直接測定する温度検出器と、前記被測定金属板と前記参照板のそれぞれから放射される放射エネルギーが前記参照板と前記被測定金属板との間で所定の回数反射される角度となるように前記被測定金属板に向けて設置され、この角度で前記被測定金属板から放出されるエネルギーが測定され、この測定されたエネルギーと等価なエネルギーを放射する黒体の温度に相当する等価温度Tに換算され出力するための放射温度計と、前記等価温度Tと前記参照板温度Tと前記被測定金属板の幅Wに基づいて前記被測定金属板の温度Tを算出する金属板温度補正演算回路と、を備えた金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法であって、前記主ヒータの幅は、前記参照板の幅Wに対応するように設定され、
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ外側の位置に対応するように設けられ、
前記被測定金属板の幅Wが変化した場合にも、前記参照板温度Tが前記被測定金属板の目標温度Tまたは前記被測定金属板の温度Tに近づくようにするために、
前記主温度制御装置の指示に基づき前記主ヒータに所定の電力を供給するとともに、
前記補助温度制御装置の指示に基づき前記被測定金属板の幅Wに応じた所定の電力を前記補助ヒータに供給し、前記参照板の温度分布が所定の温度分布となるように制御することを特徴とする金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ外側であり、かつ、最大幅Wmaxの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ内側の位置に対応するように設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記主ヒータと対向する最大幅Wmaxの前記被測定金属板の両端部より外側の位置に対応する前記主ヒータの部分の温度が、前記主ヒータと対向する最大幅Wmaxの前記被測定金属板の両端部より内側の位置に対応する前記主ヒータの部分の温度より高温となるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれαだけ外側に離れた位置からさらに外側の位置に対応するように設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記補助ヒータの温度は、前記参照板の幅W方向に対して外側の方が内側に比べて高温となるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記主ヒータの幅は、前記参照板の幅Wに対応するように設定され、
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ外側の位置に対応するように設けられ、
前記被測定金属板の幅Wが変化した場合にも、前記参照板温度Tが前記被測定金属板の目標温度Tまたは前記被測定金属板の温度Tに近づくようにするために、
前記主温度制御装置の指示に基づき前記主ヒータに所定の電力を供給するとともに、
前記補助温度制御装置の指示に基づき前記被測定金属板の幅Wに応じた所定の電力を前記補助ヒータに供給し、前記参照板の温度分布が所定の温度分布となるように制御しているため、
被測定金属板の幅が変化した際にも、被測定金属板の幅が変化した部分に対応する参照板の幅方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減され、被測定金属板の温度測定誤差を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。
【図2】実施形態2に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。
【図3】実施形態3に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。
【図4】実施形態3における補助ヒータ設置位置とその位置が参照板の温度に与える影響を説明するための説明図である。
【図5】実施形態4に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。
【図6】従来の鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)参照板温度を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。
【0018】
図1(a)において、1a、1b、1c、1dは炉壁、2は幅Wの参照板、3は幅が最小幅Wsminから最大幅Wsmaxまで変化する被測定金属板としての鋼板、4は参照板2に内蔵され、幅が参照板2の幅Wに対応するように設定された主ヒータ、5は主電源、6は主温度制御装置としての温度コントローラ、7は参照板2の温度Tを直接測定する温度検出器としての熱電対、8は参照板2と鋼板3との間(間隔h)で放射エネルギーが交互に反射する回数がそれぞれで1回または2回となる角度θになるように鋼板3に向けて設置された放射温度計、10は金属板温度補正演算回路としての鋼板温度補正演算回路、11は補助電源、12は補助温度制御装置としての温度コントローラ、13は参照板2に沿って設けられた補助ヒータである。最小幅Wsminの鋼板3と最大幅Wsmaxの鋼板3ともに参照板2に対向し、その間隔はともにhであるが、図示の都合上、位置をずらして表示している。なお、参照板2の温度を測定する熱電対7は、参照板2に複数個設置し、各熱電対7の測定値を平均して参照板温度Tとすることが望ましい。なお、本実施形態においては、被測定金属板として鋼板を例に説明するため、最小幅Wminと最大幅Wmaxの表記にあたって、鋼(Steel)であることを示すための「s」を添え字として付与している。
【0019】
炉壁1a、1b、1c、1dで囲まれた炉内に、温度コントローラ6を備えた幅Wの参照板2を幅が最小幅Wsminから最大幅Wsmaxまで変化する鋼板3に対向させて設置してある。
【0020】
補助ヒータ13は、参照板2に沿って、参照板2と対向する最小幅Wsminの鋼板3の両端部よりそれぞれ外側であり、かつ、最大幅Wsmaxの鋼板3の両端部よりそれぞれ内側の位置に対応するように設けられている。
【0021】
温度コントローラ6には、鋼板3の目標温度Tが入力され、温度コントローラ6の指示に従って主電源5から参照板2の幅W方向の全面に渡って一様に配設された主ヒータ4に電力が供給される。さらに、鋼板3の幅Wsに応じた所定の電力を温度コントローラ12の指示に従って補助電源11から補助ヒータ13に供給するように構成されている。
【0022】
また、鋼板3から放出される射度を放射温度計8で測定し、この射度と等価なエネルギーを放射する黒体の温度に換算して求めた温度を射度温度Tとする。
【0023】
そして、鋼板3の幅Wsが変化した場合にも、上記参照板温度Tが上記鋼板3の目標温度Tまたは後述する鋼板3の温度T(図1参照)に近づくようにするために、温度コントローラ6の指示に基づき主ヒータ4に所定の電力を供給するとともに、温度コントローラ12の指示に基づき鋼板3の幅Ws(最小幅Wsmin〜最大幅Wsmax)に応じた所定の電力を補助ヒータ13に供給し、参照板2の温度分布が所定の温度分布となるように制御する。
【0024】
より詳細には、例えば、最小幅Wsmin=600mm、最大幅Wsmax=1200mm、W=2000mm、鋼板3の目標温度T=800℃、補助ヒータ13を上述したような位置に設置した場合に、主ヒータ4と補助ヒータ13の合成温度を鋼板3の幅Wsに応じて図1(b)の左半分側に発明例1(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したように制御すると、同じく図1(b)の左半分側に発明例1(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したようにWsmaxの鋼板3の場合の参照板2の細部温度とWsminの鋼板3の場合の参照板2の細部温度の各位置で比較した時の温度偏差は、図1(b)の右半分側に示した従来例(図6参照に同じ)に比べて小さくなる(すなわち、参照板2の温度分布が所定の温度分布となるように制御される)。
【0025】
このように、鋼板3の幅Wsが変化した際にも、鋼板3の幅Wsが変化した部分{(Wsmax―Wsmin)/2}に対応する参照板2の幅W方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減されるため、上記射度温度Tと上記参照板温度Tと鋼板3の幅Wsに基づいて、鋼板温度補正演算回路10内で下記式(1)により、鋼板3の温度Tの温度測定誤差が小さくなるように算出することができる。

≒F[T+K(T−T)] ・・・式(1)

ここで、Fは鋼板3と参照板2との幾何学的関係により変動する形態係数であるが、鋼板3の幅Wsに基づいて、1に近づくように補正されている。また、Kは、鋼板3および参照板2の放射率ε、εのみの関数からなる補正係数である。このため、補正係数K自体は、鋼板3および参照板2の放射率変動の影響を受けることになるが、参照板2の温度を射度温度Tに近づくように(すなわち、参照板2の温度を鋼板3の目標温度Tまたは上述した鋼板3の温度Tに近づくように)制御するので、補正係数Kによる誤差が除外され高精度の鋼板温度の測定が可能となる。
【0026】
〔実施形態2〕
図2は、実施形態2に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。図2において、図1と同一の構成要素については、同一の番号を付与して詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0027】
図2(a)において、24は参照板2に内蔵され、幅が参照板2の幅Wに対応するように設定された主ヒータである。主ヒータ24と対向する最大幅Wsmaxの鋼板3の両端部より外側の位置に対応する主ヒータ24の部分の温度が、主ヒータ24と対向する最大幅Wsmaxの鋼板3の両端部より内側の位置に対応する主ヒータ24の部分の温度より高温となるように、主ヒータ24の両端側はコイルが密に構成されている。
【0028】
より詳細には、例えば、補助ヒータ13を図1(a)と同じ位置に設置した場合に、主ヒータ24と補助ヒータ13の合成温度を鋼板3の幅Wsに応じて図2(b)の左半分側に発明例2(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したように制御すると、同じく図2(b)の左半分側に発明例2(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したようにWsmaxの鋼板3の場合の参照板2の細部温度とWsminの鋼板3の場合の参照板2の細部温度の各位置で比較した時の温度偏差は、図2(b)の右半分側に示した従来例(図1(b)に同じ)に比べて小さくなる(すなわち、参照板2の温度分布が所定の温度分布となるように制御される)。
【0029】
したがって、実施形態1の場合と同様に、鋼板3の幅Wsが変化した際にも、鋼板3の幅Wsが変化した部分{(Wsmax―Wsmin)/2}に対応する参照板2の幅W方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減されるため、上記射度温度Tと上記参照板温度Tと鋼板3の幅Wsに基づいて、鋼板温度補正演算回路10内で上記式(1)により、鋼板3の温度Tの温度測定誤差が小さくなるように算出することができる。
【0030】
〔実施形態3〕
図3は、実施形態3に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。図3において、図1と同一の構成要素については、同一の番号を付与して詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0031】
図3(a)において、23は参照板2に沿って、参照板2と対向する最小幅Wsminの鋼板3の両端部よりそれぞれαだけ外側に離れた位置からさらに外側の位置(参照板2の幅W方向の両端部)に対応するように設けられた補助ヒータである。
【0032】
主ヒータ4と上記補助ヒータ23の合成温度を鋼板3の幅Wsに応じて図3(b)の左半分側に発明例3(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したように制御すると、同じく図3(b)の左半分側に発明例3(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したようにWsmaxの鋼板3の場合の参照板2の細部温度とWsminの鋼板3の場合の参照板2の細部温度の各位置で比較した時の温度偏差は、図3(b)の右半分側に示した従来例(図1(b)に同じ)に比べて小さくなる(すなわち、参照板2の温度分布が所定の温度分布となるように制御される)。
【0033】
したがって、実施形態1、2の場合と同様に、鋼板3の幅Wsが変化した際にも、鋼板3の幅Wsが変化した部分{(Wsmax―Wsmin)/2}に対応する参照板2の幅W方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減されるため、上記射度温度Tと上記参照板温度Tと鋼板3の幅Wsに基づいて、鋼板温度補正演算回路10内で上記式(1)により、鋼板3の温度Tの温度測定誤差が小さくなるように算出することができる。
【0034】
また、本実施形態において、補助ヒータ23の設置位置とその位置が参照板2の温度に与える影響を考察した結果が図4である。図4において、横軸はC=(α/(鋼板3と参照板2との距離h))、縦軸は参照板2への温度影響(比率)である。縦軸の参照板2への温度影響は、α=0の場合の参照板2の温度を基準にした比率である。図4より、鋼板3の端部の直下の参照板2の面は、鋼板3の影響があるため、Wsminの鋼板3の端部から距離α離した位置から補助ヒータ23を設置することが可能である。また、補助ヒータ23をWsminの鋼板3の端部から離しすぎて設置すると、参照板2に温度低下部分が発生するが、Cが4(すなわち、αがhに対して4倍)以下であれば、参照板2の温度は基準に対して0.01(すなわち、1%)以下の変化に収まる。したがって、補助ヒータ23の設置位置は、Cが4以下となるαの位置に設置するのが好ましい。
【0035】
〔実施形態4〕
図5は、実施形態4に係る鋼板の温度測定装置の概略構成を説明するためのものであり、(a)は通板方向断面および制御フロー図、(b)ヒータ温度と参照板温度を説明するための説明図である。図5において、図1と同一の構成要素については、同一の番号を付与して詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0036】
図5(a)において、33は参照板2に沿って、参照板2と対向する最小幅Wsminの鋼板3の両端部よりそれぞれ外側の位置に対応するように設けられた補助ヒータである。この補助ヒータ33の温度は、参照板2の幅W方向に対して外側の方が内側に比べて高温となるように、補助ヒータ33の両端側はコイルが密に構成されている。
【0037】
主ヒータ4と上記補助ヒータ33の合成温度を鋼板3の幅Wsに応じて図5(b)の左半分側に発明例4(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したように制御すると、同じく図5(b)の左半分側に発明例4(左右対称であるため左半分側のみを表示する)として示したようにWsmaxの鋼板3の場合の参照板2の細部温度とWsminの鋼板3の場合の参照板2の細部温度の各位置で比較した時の温度偏差は、図5(b)の右半分側に示した従来例(図1(b)に同じ)に比べて小さくなる(すなわち、参照板2の温度分布が所定の温度分布となるように制御される)。
【0038】
したがって、実施形態1、2、3の場合と同様に、鋼板3の幅Wsが変化した際にも、鋼板3の幅Wsが変化した部分{(Wsmax―Wsmin)/2}に対応する参照板2の幅W方向の部分の温度の変化(温度偏差)が軽減されるため、上記射度温度Tと上記参照板温度Tと鋼板3の幅Wsに基づいて、鋼板温度補正演算回路10内で上記式(1)により、鋼板3の温度Tの温度測定誤差が小さくなるように算出することができる。
【0039】
なお、実施形態1〜4においては、被測定金属板として、鋼板を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、広く金属板にて適応可能である。
【0040】
また、実施形態1〜4においては、被測定金属板から放出されるエネルギーが測定され、この測定されたエネルギーと等価なエネルギーを放射する黒体の温度に相当する等価温度Tとして射度温度Tを例に説明したが、これに限定されるものではなく、多重反射エネルギーと等価なエネルギーを放射する黒体の温度に相当する等価温度を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1a、1b、1c、1d:炉壁
2:参照板
3:鋼板
4、24:主ヒータ
5:主電源
6、12:温度コントローラ
7:熱電対
8:放射温度計
10:鋼板温度補正演算回路
11:補助電源
13、23、33:補助ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅Wが最小幅Wminから最大幅Wmaxまで変化する被測定金属板に対向して設置された幅Wの参照板と、この参照板に沿って設けられた主ヒータと補助ヒータと、この主ヒータと補助ヒータをそれぞれ制御するための主温度制御装置と補助温度制御装置と、前記参照板の温度(以下、「参照板温度」という。)Tを直接測定する温度検出器と、前記被測定金属板と前記参照板のそれぞれから放射される放射エネルギーが前記参照板と前記被測定金属板との間で所定の回数反射される角度となるように前記被測定金属板に向けて設置され、この角度で前記被測定金属板から放出されるエネルギーが測定され、この測定されたエネルギーと等価なエネルギーを放射する黒体の温度に相当する等価温度Tに換算され出力するための放射温度計と、前記等価温度Tと前記参照板温度Tと前記被測定金属板の幅Wに基づいて前記被測定金属板の温度Tを算出する金属板温度補正演算回路と、を備えた金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法であって、前記主ヒータの幅は、前記参照板の幅Wに対応するように設定され、
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ外側の位置に対応するように設けられ、
前記被測定金属板の幅Wが変化した場合にも、前記参照板温度Tが前記被測定金属板の目標温度Tまたは前記被測定金属板の温度Tに近づくようにするために、
前記主温度制御装置の指示に基づき前記主ヒータに所定の電力を供給するとともに、
前記補助温度制御装置の指示に基づき前記被測定金属板の幅Wに応じた所定の電力を前記補助ヒータに供給し、前記参照板の温度分布が所定の温度分布となるように制御することを特徴とする金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法。
【請求項2】
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ外側であり、かつ、最大幅Wmaxの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれ内側の位置に対応するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法。
【請求項3】
前記主ヒータと対向する最大幅Wmaxの前記被測定金属板の両端部より外側の位置に対応する前記主ヒータの部分の温度が、前記主ヒータと対向する最大幅Wmaxの前記被測定金属板の両端部より内側の位置に対応する前記主ヒータの部分の温度より高温となるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法。
【請求項4】
前記補助ヒータは、前記参照板に沿って、前記参照板と対向する最小幅Wminの前記被測定金属板の両端部よりそれぞれαだけ外側に離れた位置からさらに外側の位置に対応するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法。
【請求項5】
前記補助ヒータの温度は、前記参照板の幅W方向に対して外側の方が内側に比べて高温となるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の金属板の温度測定装置における参照板の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−214979(P2011−214979A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82995(P2010−82995)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】