説明

金属棒把持具

【課題】溶接時のスパークから作業者を保護しながら、作業者の両手が自由に使え、且つ作業性の良好な金属棒把持具を提供する。
【解決手段】金属棒把持具1aは、金属棒を溶接のために挟んで把持する把持部材4と、把持部材4が一端に取り付けられた棒部材3と、棒部材3の長手方向に移動可能に設けられ、金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレート2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属棒を溶接のために挟んで把持する把持部材と、この把持部材が一端に取り付けられた棒部材とを備えた金属棒把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接のための金属棒把持具が知られている。この金属棒把持具は、金属棒を溶接のために挟んで把持する把持部材と、この把持部材が一端に取り付けられた棒部材とを備えている。
【0003】
そして、このような金属棒把持具により金属棒を保持して溶接する溶接作業において、溶接時のスパークから作業者を保護する安全保護具としての溶接面が知られている(特許文献1)。このような溶接面には、作業者が手に持つ形式の手持ち溶接面と、作業者が頭部に被る形式の被り溶接面とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−329179号公報(1993年12月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業者が手に持つ形式の手持ち溶接面では、片手で溶接面を持つため、当該片手が溶接面の保持に占有され、溶接作業において両手が自由に使えず不便であるという問題がある。
【0006】
また、作業者が頭部に被る形式の被り溶接面では、作業者の頭部に溶接面の重量が加わるので作業者の負担が増大するという問題がある。そして、作業者の頭部及び顔面が溶接面によって覆われてしまうため、通気性が悪く暑さによる作業者の不快感が増すという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、溶接時のスパークから作業者を保護しながら、作業者の両手が自由に使え、且つ作業性の良好な金属棒把持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属棒把持具は、金属棒を溶接のために挟んで把持する把持部材と、前記把持部材が一端に取り付けられた棒部材と、前記棒部材に設けられ、前記金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレートとを備えたことを特徴とする。
【0009】
この特徴により、金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレートを、把持部材が一端に取り付けられた棒部材に設けたので、この棒部材に設けたプレートが溶接面として機能し、溶接時のスパークから作業者を保護しながら、作業者の両手が自由に使え、且つ作業性の良好な金属棒把持具を提供することができる。
【0010】
本発明に係る金属棒把持具は、前記棒部材の長手方向に前記プレートとともにスライド可能に設けられた円筒状のゴム部材をさらに備えることが好ましい。
【0011】
上記構成により、円筒状のゴム部材が、棒部材の長手方向にプレートとともにスライド可能に設けられるので、プレートを棒部材の長手方向に沿って容易に移動させることができる。
【0012】
本発明に係る金属棒把持具は、前記金属棒の溶接による熱から前記ゴム部材を保護するために前記把持部材と前記ゴム部材との間に設けられた防熱部材をさらに備えることが好ましい。
【0013】
上記構成により、金属棒の溶接による熱からゴム部材を保護する防熱部材が、把持部材とゴム部材との間に設けられるので、金属棒の溶接による熱によるゴム部材への影響を防止して、ゴム部材を棒部材の長手方向に沿ってスムーズにスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る金属棒把持具は、金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレートを、把持部材が一端に取り付けられた棒部材に設けたので、この棒部材に設けたプレートが溶接面として機能し、溶接時のスパークから作業者を保護しながら、作業者の両手が自由に使え、且つ作業性の良好な金属棒把持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は実施の形態1に係る金属棒保持具の構成を示す側面断面図であり、(b)はその正面断面図である。
【図2】実施の形態2に係る金属棒保持具の構成を示す正面断面図である。
【図3】実施の形態3に係る金属棒保持具の構成を示す正面断面図である。
【図4】実施の形態4に係る金属棒保持具の構成を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の金属棒保持具に関する実施の一形態について図1〜図4に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0017】
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1に係る金属棒保持具1aの構成を示す側面断面図であり、(b)はその正面断面図である。図1(a)は図1(b)に示す断面AAに沿った断面図である。
【0018】
金属棒保持具1aは、断面円形状をした棒部材3を備えている。棒部材3の一端には、図示しない金属棒を溶接のために挟んで把持する一対の把持部材4が取り付けられている。一対の把持部材4は、それぞれ板状に構成され、棒部材3側では互いに平行に接して構成されている。先端側では一対の把持部材4は所定の間隔を空けて互いに平行に配置されるように、一対の把持部材4の一方は棒部材3から把持部材4の先端に向かう途中で外側に折り曲げられている。一対の把持部材4は、互いに外側に曲げ弾性変形することにより、その間に図示しない溶接のための金属棒を挟んで把持する。
【0019】
金属棒保持具1aには、棒部材3の長手方向に移動可能に設けられ、把持部材4により挟んで把持される図示しない金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレート2が設けられている。このプレート2は、棒部材3の長手方向に垂直な面に沿って配置されている。
【0020】
プレート2の表面の右下には孔が形成されており、この孔には、円筒形状をしたゴム部材5が固定されている。このゴム部材5は、棒部材3の長手方向に沿ってスライド可能に棒部材3に嵌めこまれている。このゴム部材5を棒部材3に対してスライドさせることにより、プレート2を棒部材3の長手方向にスライドさせることができる。ゴム部材5は、耐熱性を有するゴムによって構成すればよい。
【0021】
プレート2の表面は、図1(a)に示すように、略正方形をしている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、プレート2の表面は円形状でもよく、他の形状でもよい。
【0022】
プレート2の材質は、アクリルを採用することができる。また、ポリ塩化ビニル、黒色、緑色等の半透明ガラスによってプレート2を構成してもよい。
【0023】
棒部材3は、図1(a)に示すように、プレート2の右下隅部を通るように構成されている。棒部材3は、プレート2の中心以外の位置を通るように構成する。特に、四隅のいずれかを通るように構成することが好ましい。棒部材3を回転することによりプレート2を棒部材3の周りに回転移動させて、把持部材4に把持された溶接のための金属棒をプレート2を介さずに直接視認することと、金属棒と作業者の眼との間にプレート2を移動させてプレート2を介して金属棒を視認することとを選択することができるからである。
【0024】
プレート2の棒部材3が通る側と反対側には、長方形状の切り欠き8が形成されている。切り欠き8には、溶接作業用の棒を通すことができる。
【0025】
以上のように実施の形態1によれば、金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレート2を、把持部材4が一端に取り付けられた棒部材3の長手方向に移動可能に設けたので、この棒部材3に設けたプレート2が溶接面として機能し、溶接時のスパークから作業者を保護しながら、作業者の両手が自由に使え、且つ作業性の良好な金属棒把持具1aを提供することができる。
【0026】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に係る金属棒保持具1bの構成を示す正面断面図である。前述した構成要素と同一、類似の構成要素には同一、類似の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0027】
図1を参照して前述したように、円筒状のゴム部材5をプレート2に嵌めこみ、ゴム部材5を棒部材3に対してスライドさせる代わりに、図2に示すように、プレート2bの両側から円筒状の一対のゴム部材6により挟んで位置決めするように構成してもよい。プレート2bには、棒部材3に対応する孔が形成されており、プレート2bは、棒部材3の長手方向にスライド可能に、棒部材3に直接嵌めこまれている。一対のゴム部材6には、棒部材3に対応する孔が形成されており、一対のゴム部材6は、両側からプレート2bを挟んで位置決めする。
【0028】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に係る金属棒保持具1cの構成を示す正面断面図である。前述した構成要素と同一、類似の構成要素には同一、類似の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0029】
金属棒保持具1cには、把持部材4に把持された図示しない金属棒の溶接による熱からゴム部材5を保護するために、把持部材4とゴム部材5との間に設けられた防熱部材7がさらに設けられている。防熱部材7は、板状をしており、鉄またはステンレスにより構成する。把持部材4に把持された図示しない金属棒の溶接による熱は、防熱部材7によって吸収され、ゴム部材5が溶接の熱によって溶けることが防止される。
【0030】
(実施の形態4)
図4は、実施の形態4に係る金属棒保持具1dの構成を示す正面断面図である。前述した構成要素と同一、類似の構成要素には同一、類似の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
金属棒保持具1dの棒部材3dの把持部材4側の周面には図示しない雄ネジが形成されている。プレート2dの表面の隅部には、棒部材3dに対応する孔が形成されており、その孔の内周には、棒部材3dの雄ネジに対応する雌ネジが形成されている。棒部材3dに形成された雄ネジとプレート2dに形成された雌ネジとを係合させ、プレート2dを棒部材3dの周りに回転させることにより、プレート2dを棒部材3dの長手方向に移動させるように構成してもよい。
【0032】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、金属棒を溶接のために挟んで把持する把持部材と、把持部材が一端に取り付けられた棒部材とを備えた金属棒把持具に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 金属棒保持具
2 プレート
3 棒部材
4 把持部材
5 ゴム部材
6 ゴム部材
7 防熱部材
8 切り欠き


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属棒を溶接のために挟んで把持する把持部材と、
前記把持部材が一端に取り付けられた棒部材と、
前記棒部材に設けられ、前記金属棒の溶接による光から使用者の目を保護するプレートとを備えたことを特徴とする金属棒把持具。
【請求項2】
前記棒部材の長手方向に前記プレートとともにスライド可能に設けられた円筒状のゴム部材をさらに備える請求項1記載の金属棒把持具。
【請求項3】
前記金属棒の溶接による熱から前記ゴム部材を保護するために前記把持部材と前記ゴム部材との間に設けられた防熱部材をさらに備える請求項2記載の金属棒把持具。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−13913(P2013−13913A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147714(P2011−147714)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(303035536)株式会社フジワ商会 (1)