説明

金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法およびそれによる曲面または平面体

【課題】金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法およびそれによる曲面または平面体を提供する。
【解決手段】金属製曲面または平面体の模様または文字の被作成表面の全面に印刷インキまたは塗料によりマスキングをする第1工程と、該マスキング面にレーザー照射により模様または文字を形成する第2工程と、該形成された模様または文字部に電解メッキまたは無電解メッキによる金属メッキを、前記マスキング面より盛り上がるように施す第3工程と、必要により、前記金属メッキされた模様または文字部以外の面に化粧コートをする第4工程よりなる金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法、およびそれによる曲面または平面体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法およびそれによる曲面または平面体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、携帯電話機をはじめ各種の機器類は、その機能、性能のアップは目覚ましいものがあり、また同時にそのファッション性に対しても、高級化志向や多様化の方向に著しいものがある。特に、昨今は有史以来の趣向として好まれる高級金属光沢を有するものに対する要求はきわめて高くなってきている。
特に曲面に対して金属模様乃至金属文字等を設けることは難しく、いろいろの手法が研究されている(例えば、特許文献1、および特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−119880号公報
【特許文献2】特開2007−130600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のごとく、昨今の要求の高い曲面に高級金属光沢を有する模様や金属文字を施す要求に対して比較的に安価で精度高くこれを作成することはかなり難しいものがある。
本発明は、これらに鑑み、安価で、美的感覚も高く、精度のよい金属模様や金属文字を有する曲面または平面体の製造方法およびそれによる曲面または平面体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の、金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法は、
1)金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法であって、金属製曲面または平面体の模様または金属文字の被作成表面の全面に印刷インキまたは塗料によりマスキングをする第1工程と、該マスキング面にレーザー照射により模様または金属文字を形成する第2工程と、該掲載された金属文字部に電解メッキまたは無電解メッキによる金属メッキを、前記マスキング面より盛り上がるように施す第3工程と、必要により、前記金属メッキされた模様または文字部以外の面に化粧コートをする第4工程よりなるものである。
2)上述の1)において、前記金属メッキをTi、Cu、Fe、Ni、Au、Ag、またはこれら金属の合金の群より選ばれた1種のメッキとしたものであり、
3)上述の1)または2)において、前記金属メッキの厚さを5〜200μmとしたものである。
【0006】
また、本発明の、金属模様または金属文字を有する曲面または平面体は、
4)上述の1)〜3)のいずれか1項により作成された金属模様または金属文字を有する曲面または平面体であって、金属製の曲面または平面体本体と、印刷インキまたは塗料によるマスキング面よりレーザー照射により形成され、金属メッキによる該マスキング面より突出した模様または文字とを有するものであり、
5)上述4)において、前記金属メッキをTi、Cu、Fe、Ni、Au、Ag、またはこれら金属の合金の群より選ばれた1種のメッキとしたものであり、
6)上述の4)または5)において、前記金属メッキの厚さを5〜200μmとしたものであり、
7)上述の4)〜6)における曲面または平面体を携帯電話機 、デジタルカメラ、ゲーム機、マウスのいずれかとしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法は、比較的複雑な曲面を有する曲面体であっても、レーザー照射を利用することにより容易、且つ安価に精度のよい模様または文字を形成でき、また、高級感のある曲面または平面体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法の工程流れ図である。
図2は、図1における各工程に対応する曲面または平面体の1例を模式的に示した断面図である。
1は金属製曲面または平面体、2はマスキング層、3は金属メッキ層、4は化粧コート層、Reはレーザー照射、hは金属メッキ厚さ、hmはマスキング層厚さである。
なお、化粧コート層4は省略される場合もある。
【0009】
図1により本発明の詳細を説明する。
金属製の曲面体又は平面体1、例えば携帯電話機の金属製ケーシングなどの表面(以下金属表面という)に美的な金属(例えば、金色メッキ)の模様または文字を工程に従い形成する。
先ず、第1工程において該金属表面を通常の清浄処理により活性化する。
活性化される表面は、後工程の金属メッキ層3の密着度、エンドエフェクト効果の点より表面の表面粗さは最大高さRmaxは0.1S〜3.2Sにすることが好ましい。3.2S以上ではエンドエフェクト効果等によりメッキ精度が悪化し、また0.1S以下ではその形成に工数がかかり思わしくない。
【0010】
第2工程として、前記金属表面に印刷インキまたは塗料によりベタ塗装のマスキング層2を被覆する。該マスキング層2の被覆は、電気的に絶縁性の被覆であり、その厚さは次のように決められる。すなわち、後工程で模様または文字の輪郭をレーザー照射による除去形成する場合の除去精度が良く、然も容易に行われる厚さである必要があり、また金属の電解メッキまたは無電解メッキ時にマスキング層2が薄過ぎることにより発生するピンホール等によって金属メッキ面の不具合が生じない厚さでもあり、且つ、本発明が該金属メッキ3の高さhを該マスキング層2の高さhmより大きくし盛り上げることにより美的感覚を与える目的に対して、金属メッキ時に金属メッキのエンドエフェクト効果による模様または文字の周辺へのはみ出しが生じない厚さでもある必要がある。
【0011】
ベタ塗装のマスキング層2は、1層により形成することもできるが、薄い複数層を積層することにより、前記のピンホールの発生を十分に防止することができて好ましい。またマスキング層2の厚さhmは、hm≦50μm、好ましくは5〜15μmである。
また、マスキング層2の厚さhmは、金属メッキ層3の厚さhに対して、20〜50%程度の厚さであることが前述のエンドエフェクト効果をカバーするために好ましい。
また、マスキング層2に使用する印刷インキまたは塗料の色彩は、後工程にて作成される金属メッキ層3の色彩、例えば、金色とのコントラストの良い色彩、たとえば黒色の色彩とすることが好ましい。
【0012】
第3工程において、前記マスキング層2にレーザー照射により所定の模様または文字を形成する。レーザー照射は、マスキング層2を精度良く除去するものであって、金属表面へのアタックが大きくならない条件範囲に設定されなければならない。
電子制御された気体レーザー(波長0.1〜0.35μm エキシマ)によりレーザー出力50w程度により行う。マスキング層2を精度良く除去し模様または文字の輪郭が乱れることを防止するために照射時間は成る可く短くする。
【0013】
模様または文字の形成された金属表面に電解メッキ(電気メッキ)または無電解メッキにより金属メッキ層3を施す(第4工程)。
金属メッキ層3は、美的感覚的にある程度の厚みを有していることが好ましく、厚さhは5〜500μm、好ましくは5〜200μm程度が望まれる。
また、金属メッキ層3は、電解メッキ(電気メッキ)または無電解メッキの何れにて形成しても良く、また、安価材料による無電解メッキや電解メッキの上に、極く薄い高級電解金属メッキ(電気メッキ)を積層して施しても良い。
金属メッキ層3の材質は、Ti、Cu、Fe、Ni、Au、Ag、またはこれら金属の合金の群より選ばれた1種を用いる。前記積層にて金属メッキ層3を形成する場合は、その第1層としてCu、Niまたはそれらの合金を用いることが好ましい。
【0014】
第5工程は、第4工程で多少美的に劣化の可能性のある、少なくとも金属メッキ層3以外のマスキング層2の表面に必要により極く薄い化粧コート層4の被覆を行う。
なお、この極く薄い化粧コート層4の被覆は、省略することもできる。
【0015】
上記のごとく、第1工程より第5工程により形成された金属模様または金属文字を有する携帯電話機 、デジタルカメラ、ゲーム機、マウスを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、携帯電話機、デジタルカメラ、ゲーム機、マウスを対象とした金属模様または金属文字を有する曲面または平面体について記載したが、TV、PC、医療機器等の電子機器や、美術家具などに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法の工程流れ図。
【図2】図1における各工程に対応する曲面または平面体の1例を模式的に示した断面図。
【符号の説明】
【0018】
1 金属製曲面または平面体
2 マスキング層
3 金属メッキ層
4 化粧コート層
Re レーザー照射
h 金属メッキ厚さ
hm マスキング層厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法であって、金属製曲面または平面体の模様または文字の被作成表面の全面に印刷インキまたは塗料によりマスキングをする第1工程と、該マスキング面にレーザー照射により模様または文字を形成する第2工程と、該形成された模様または文字部に電解メッキまたは無電解メッキによる金属メッキを、前記マスキング面より盛り上がるように施す第3工程と、必要により、前記金属メッキされた模様または文字部以外の面に化粧コートをする第4工程よりなることを特徴とする金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法。
【請求項2】
前記金属メッキがTi、Cu、Fe、Ni、Au、Ag、またはこれらの合金の群より選ばれた1種のメッキであることを特徴とする請求項1に記載の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法。
【請求項3】
前記金属メッキの厚さが5〜200μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1項により作成された金属模様または金属文字を有する曲面または平面体であって、金属製の曲面または平面体本体と、印刷インキまたは塗料によるマスキング面よりレーザー照射により形成され、且つ金属メッキによる該マスキング面より突出した模様または文字とを有することを特徴とする金属模様または金属文字を有する曲面または平面体。
【請求項5】
前記金属メッキがTi、Cu、Fe、Ni、Au、Ag、またはこれらの合金の群より選ばれた1種のメッキであることを特徴とする請求項4に記載の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体。
【請求項6】
前記金属メッキの厚さが5〜200μmであることを特徴とする請求項4または5に記載の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体。
【請求項7】
前記曲面または平面体が携帯電話機、デジタルカメラ、ゲーム機、マウスのいずれかであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の金属模様または金属文字を有する曲面または平面体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−127124(P2009−127124A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307339(P2007−307339)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000145378)株式会社秀峰 (32)
【Fターム(参考)】