説明

金属残渣の処理方法及び処理装置

【課題】金属残渣中の六価クロムを適切に除去して処理コストを抑制し、且つ処理済みの金属残渣の価値を高める金属残渣の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】反応槽1には、六価クロムを含む金属残渣を投入し得る第一投入ライン2と、水、有機物、酸を投入し得る第二投入ライン3とを備えており、反応槽内部で金属残渣、水、有機物、酸を撹拌する撹拌手段4が備えら、Cr2−+14H+6e→2Cr3++7HOの反応により、六価クロムを三価クロムにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六価クロムを含む金属残渣を処理する金属残渣の処理方法及び処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、クロムを含む金属合金を電解加工する際には加工済スラッジ等の金属残渣を生じ、金属残渣中には、電解加工の高い電位により六価クロムが含まれるものとなる。
【0003】
このため電解加工により生じた金属残渣を廃棄物処理業者に引き取らせる際には、有害な六価クロムの存在によって廃棄物処理業者へ代金を払い、有償で引き取らせるようになっている。
【0004】
一方で金属残渣中の有害な六価クロムを除去できれば、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で引き取らせることが可能となるため、六価クロムを無害な三価クロムに還元する種々の方法が検討されている。
【0005】
第一例としては、六価クロムを含む溶液に、加熱したフッ化水素酸を加えて六価クロムを還元する方法があり(例えば、特許文献1参照)、第二例としては、六価クロムを含む還元廃棄物にカーボン粉末等の炭素質原料を加えて1700〜2200℃で加熱し、六価クロムを還元する方法があり(例えば、特許文献2参照)、第三例としては、鉄粉と砂とを混合した層に、六価クロムを含む水を通水して六価クロムを還元する方法があり(例えば、特許文献3参照)、第四例としては、六価クロムを含む廃材等に小麦フスマ、米糠等を混合して嫌気的発酵を行い、六価クロムを還元する方法があり(例えば、特許文献4参照)、第五例としては、処理物に対して鉄、硫酸鉄、亜硫酸塩等の還元剤と、硫酸とを混合し、六価クロムを還元する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−8491号公報
【特許文献2】特開平11−169814号公報
【特許文献3】特開2004−223472号公報
【特許文献4】特開2005−177740号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】公害防止の技術と法規編集委員会編「公害防止の技術と法規 水質編(5訂)」丸善出版、p248−253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第一例の処理方法では、加熱したフッ化水素酸を用いるため、処理を容易に行うことができず、危険も伴うという問題がある。又、第二例の処理方法では1700〜2200℃で加熱する必要があるため、非常に膨大なエネルギーを必要とし、処理コストがかかるという問題がある。更に第三例の処理方法では、還元後に砂等の異物が残るため、処理した残渣の品位や価値が低下するという問題がある。更に又、第四例の処理方法では、嫌気的発酵で処理するため、六価クロムの還元に長時間を有するという問題があった。又、第五例の処理方法では、処理物に硫酸を混合して処理するため、処理済みの残渣に硫黄分が残って品位が低下し、処理済みの残渣を廃棄物処理業者へ有償で引き取らせる際に残渣の価値が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、金属残渣中の六価クロムを適切に除去して処理コストを抑制し、且つ処理済みの金属残渣の価値を高める金属残渣の処理方法及び処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の金属残渣の処理方法は、六価クロムを含む金属残渣と、有機物及び酸とを混合し、
Cr2−+14H+6e→2Cr3++7H
の反応により、金属残渣中の六価クロムを三価クロムへ還元し、金属残渣から六価クロムを除去するものである。
【0011】
又、本発明の金属残渣の処理方法において、有機物は、揮発性有機物であることが好ましい。
【0012】
更に本発明の金属残渣の処理方法において、酸は、硫酸を除く他の酸からなることが好ましい。
【0013】
更に又、本発明の金属残渣の処理方法において、金属残渣は、クロム含有合金の電解加工から生じた金属残渣であることが好ましい。
【0014】
本発明の金属残渣の処理装置は、六価クロムを含む金属残渣と、有機物及び酸とを混合して
Cr2−+14H+6e→2Cr3++7H
の反応を行う反応処理部を備えるものである。
【0015】
又、本発明の金属残渣の処理装置において、反応処理部は、金属残渣と、有機物、酸、水とを混合して反応処理する反応槽であることが好ましい。
【0016】
更に本発明の金属残渣の処理装置において、六価クロムを除去した金属残渣を前記反応槽から取り出す取出ラインと、前記反応槽から取り出した有機物及び酸を前記反応槽に戻す戻しラインとを備えることが好ましい。
【0017】
更に又、本発明の金属残渣の処理装置において、反応処理部は、金属残渣と、有機物及び酸とを混合して混合物を搬送する搬送手段と、混合物を加熱する加熱手段とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の金属残渣の処理方法及び処理装置によれば、有機物及び酸により金属残渣中の六価クロムを三価クロムへ還元して金属残渣から有害な六価クロムを除去するので、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で引き取らせることができる。又、加熱したフッ化水素酸を用いることなく、有機物及び酸を用いるので、六価クロムを安全に還元して適切に処理することができる。更に1700〜2200℃で加熱するような処理を不要にするので、膨大なエネルギーを不要にし、低コストで処理することができる。更に又、有機物及び酸を用いるので、還元後に砂等の異物が残ることを抑制し、処理済みの金属残渣の品位や価値が低下することを防止できる。又、有機物及び酸により金属残渣中の六価クロムを処理するので、嫌気的発酵の場合に比べて、六価クロムの還元を短時間で行い、適切に処理することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の金属残渣の処理方法及び処理装置の第一例を示す全体概念図である。
【図2】本発明の金属残渣の処理方法及び処理装置の第二例を示す全体概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の第一例を図1を参照して説明する。
【0021】
実施の形態例である金属残渣の処理方法及び処理装置の第一例は、六価クロムを含む金属残渣を投入し得る反応処理部の反応槽1を備えている。
【0022】
反応槽1は、六価クロムを含む金属残渣を投入し得る第一投入ライン2と、水、有機物、酸を投入し得る第二投入ライン3とを備えており、反応槽1には、内部で金属残渣、水、有機物、酸を撹拌する撹拌翼等の撹拌手段4が備えられている。ここで反応槽1には、反応を早めるために内部を加熱するヒータ等の加熱手段(図示せず)を設けることが好ましい。
【0023】
又、反応槽1には、反応処理した後の処理済みの金属残渣を取り出す取出ライン5を備え、取出ライン5には、処理済みの金属残渣、有機物、酸を分離するフィルタプレス等の分離手段6が配置されている。ここで分離手段6は、処理済みの金属残渣、有機物、酸を分離し得るならばフィルタプレスに限定されるものではなく、他の方法や構成でも良い。
【0024】
更に分離手段6には、処理済みの金属残渣を搬送する搬送ライン7と、分離した有機物、酸等を反応槽1に戻す戻しライン8とが接続されている。
【0025】
ここで金属残渣は、六価クロムを含むものならば特に制限されるものではないが、クロム含有合金の電解加工から生じた金属残渣であることが好ましい。又、クロム含有金属は、クロムを含有するものならば特に制限されるものではないが、一例を提示すれば、ジェットエンジンの部品に用いられるインコネル718(登録商標)等であり、インコネル718(登録商標)は、ニッケル54%、クロム18%、鉄18.5%等の組成を有している。
【0026】
有機物は、無機化合物に該当しない有機化合物であって、鎖式化合物、環式化合物である。ここで有機物は、アルコール基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基等のどのような官能基を備えても良いが、チオールやスルホン酸等のように硫黄を含まないことが好ましい。又、有機物は、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン等の揮発性有機物が好ましい。
【0027】
酸は、水溶液中で殆ど完全に解離する強酸であって、硫酸を除く硝酸、塩酸である。ここで酸が弱酸の場合には液中のプロトン濃度が薄いため、反応に長時間を要し、適切に用いることができない。
【0028】
以下本発明を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0029】
六価クロムを含む金属残渣を処理する際には、六価クロムを含む金属残渣を第一投入ライン2より反応槽1へ投入する。ここで六価クロムを含む金属残渣は、クロム含有合金の電解加工により六価クロムを生じる一方で、金属成分が高濃度に含まれている。
【0030】
次に有機物としてメタノール又は/及びエタノールを選択すると共に、酸として硝酸を選択し、メタノール又は/及びエタノール、硝酸を水と共に第二投入ライン3より反応槽1へ投入する。この時、水、メタノール、硝酸の投入する順序は、金属残渣の投入前、投入後、同時のように特に制限されるものではない。
【0031】
反応槽1では、撹拌手段4により、六価クロムを含む金属残渣、水、メタノール又は/及びエタノール、硝酸を撹拌し、
Cr2−+CHOH+8HNO→2Cr3++6HO+CO+8NO
の反応、又は/及び
Cr2−+0.5COH+8HNO→2Cr3++5.5HO+CO+8NO
の反応により、六価クロムを三価クロムにする。
【0032】
続いて反応を終えた後には、処理済みの金属残渣と共に、水、メタノール、硝酸を取出ライン5より反応槽1から取り出してフィルタプレス等の分離手段6へ送給し、分離手段6で処理済みの金属残渣と、水、メタノール、硝酸とに分離する。
【0033】
分離手段6で分離された処理済みの金属残渣は、搬送ライン7により所定箇所に搬送され、洗浄後の処理済み金属残渣となる。一方、分離手段6で分離された水、メタノール、硝酸は、戻しライン8により反応槽1へ戻される。ここで戻しライン8又は反応槽1では適宜pHや六価クロムを測定し、次に処理する際には硝酸等の量を調整して投入するようにしても良い。
【0034】
以下、六価クロムを含む金属残渣と、有機物及び酸とを混合して試験を行い、その結果を示す。
【0035】
[試験1]
処理対象物(金属残渣)は、処理対象物(金属残渣)中のCr(VI)21000mg/kg-dryであり、有機物は200g/Lのメタノールを用いると共に酸は10Mの硝酸を用いた。そして処理対象物にメタノール+硝酸を処理対象物/(メタノール+硝酸)=0.3で添加して混合した。
[結果1]
六価クロムの濃度が
20℃ 2hr加熱後 175mg/kg-dry
80℃ 2hr加熱後 0.2mg/kg-dry
となった。その結果、六価クロムが処理対象物から取り除かれていることが明らかである。
【0036】
[試験2]
処理対象物(金属残渣)は、処理対象物(金属残渣)中のCr(VI)21000mg/kg-dryであり、有機物は200g/Lのメタノールを用いると共に酸は10Mの硝酸を用いた。そして処理対象物にメタノール+硝酸を処理対象物/(メタノール+硝酸)=0.3で添加して混合し、常温で放置した。
[結果2]
六価クロムの濃度が
2hr放置 16mg/kg-dry
6hr放置 0.2mg/kg-dry
15hr放置 0.2mg/kg-dry
となった。その結果、六価クロムが処理対象物から取り除かれていることが明らかである。
【0037】
而して、このように実施の形態の第一例によれば、有機物及び酸により金属残渣中の六価クロムを三価クロムへ還元して金属残渣から有害な六価クロムを除去するので、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で引き取らせることができる。ここで金属残渣にニッケルを含む場合には逆有償で引き取らせることができ、又、金属残渣に、インジウム等のレアメタルや、金等の貴金属を含む場合には、逆有償で且つ高額な価格で引き取らせることができる。
【0038】
又、従来例と比較しても、加熱したフッ化水素酸を用いることなく、有機物及び酸を用いるので、六価クロムを安全に還元して適切に処理することができる。更に1700〜2200℃で加熱するような処理を不要にするので、膨大なエネルギーを不要にし、低コストで処理することができる。更に又、有機物及び酸を用いるので、還元後に砂等の異物が残ることを抑制し、処理済みの金属残渣の品位や価値が低下することを防止できる。又、有機物及び酸により金属残渣中の六価クロムを処理するので、嫌気的発酵の場合に比べて、六価クロムの還元を短時間で行い適切に処理することができる。
【0039】
実施の形態の第一例において、有機物は、揮発性有機物であると、六価クロムを含む金属残渣と、有機物、酸との反応を好適に為し得るので、六価クロムの還元を容易に且つ低コストに行い、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で引き取らせることができる。
【0040】
実施の形態の第一例において、酸は、硫酸を除く他の酸からなると、処理済みの金属残渣に硫黄分が入ることを抑制し、処理済みの金属残渣の品位や価値が低下することを防止し、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、逆有償で引き取らせることができる。
【0041】
実施の形態の第一例において、金属残渣は、クロム含有合金の電解加工から生じた残渣であると、六価クロムを含む金属残渣であっても他の金属には有用な金属が含まれる可能性が高いので、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で容易に引き取らせることができる。
【0042】
実施の形態の第一例において、反応処理部は、金属残渣と、有機物、酸、水とを混合して反応処理する反応槽1であると、六価クロムを含む金属残渣と、有機物、酸との反応を好適に為し得るので、六価クロムの還元を容易に且つ低コストに行い、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で好適に引き取らせることができる。
【0043】
実施の形態の第一例において、六価クロムを除去した金属残渣を反応槽1から取り出す取出ライン5と、反応槽1から取り出した有機物及び酸を反応槽1に戻す戻しライン8とを備えると、金属残渣を反応処理した後、取出ライン5により、処理済みの金属残渣を反応槽1から容易に取り出すと共に、戻しライン8により、有機物及び酸を反応槽1に戻して処理するので、六価クロムの還元を容易に且つ低コストに行い、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で好適に引き取らせることができる。
【0044】
以下、本発明の実施の形態の第二例を図2を参照して説明する。
【0045】
実施の形態例である金属残渣の処理方法及び処理装置の第二例は、六価クロムを含む金属残渣を投入し得る反応処理部を他の構造に変更したものである。
【0046】
反応処理部は、六価クロムを含む金属残渣を混練して搬送するスクリュフィーダの搬送手段11と、搬送手段11の搬送路の外周に設置されたヒータ等の加熱手段12とを備えている。
【0047】
スクリュフィーダの搬送手段11は、六価クロムを含む金属残渣を内部へ投入し得る投入口13を備え、搬送手段11の内部には、投入口13の直下に位置して金属残渣を混練(撹拌)し得る混練スクリュ14を配置していると共に、混練スクリュ14の下流側に位置して金属残渣を更に混練しつつ出口側へ搬送する搬送スクリュ15を備えている。又、搬送手段11の中途位置には、混練スクリュ14と搬送スクリュ15の間に有機物及び酸を投入する中途位置投入ライン16が接続されている。
【0048】
ヒータ等の加熱手段12は、搬送手段11の搬送スクリュ15の下流側周囲に位置するように設置されており、搬送スクリュ15の下流側を約100℃以下まで加熱するようになっている。
【0049】
ここで金属残渣は、第一例と同様に、六価クロムを含むものならば特に制限されるものではないが、クロム含有合金の電解加工から生じた金属残渣であることが好ましい。又、クロム含有金属は、クロムを含有するものならば特に制限されるものではないが、一例を提示すれば、ジェットエンジンの部品に用いられるインコネル718(登録商標)等であり、インコネル718(登録商標)は、ニッケル54%、クロム18%、鉄18.5%等の組成を有している。
【0050】
有機物は、無機化合物に該当しない有機化合物であって、鎖式化合物、環式化合物である。ここで有機物は、アルコール基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基等のどのような官能基を備えても良いが、チオールやスルホン酸等のように硫黄を含まないことが好ましい。又、有機物は、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン等の揮発性有機物が好ましい。
【0051】
酸は、水溶液中で殆ど完全に解離する強酸であって、硫酸を除く硝酸、塩酸である。ここで酸が弱酸の場合には液中のプロトン濃度が薄いため、反応に長時間を要し、適切に用いることができない。
【0052】
以下本発明を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0053】
六価クロムを含む金属残渣を処理する際には、六価クロムを含む金属残渣をスクリュフィーダの搬送手段11へ投入する。ここで六価クロムを含む金属残渣は、クロム含有合金の電解加工により六価クロムを生じる一方で、金属成分が高濃度に含まれている。
【0054】
次に有機物としてメタノール又は/及びエタノールを選択すると共に、酸として硝酸を選択し、メタノール又は/及びエタノール、硝酸を中途位置投入ライン16よりスクリュフィーダの搬送手段11へ投入する。
【0055】
スクリュフィーダの搬送手段11では、混練スクリュ14により金属残渣を裁断して混練した後、搬送スクリュ15より六価クロムを含む金属残渣、メタノール又は/及びエタノール、硝酸を混合物として混練し、
Cr2−+CHOH+8HNO→2Cr3++6HO+CO+8NO
の反応、又は/及び
Cr2−+0.5COH+8HNO→2Cr3++5.5HO+CO+8NO
の反応により、六価クロムを三価クロムにする。
【0056】
続いて反応を終えた後には、処理済みの金属残渣を取り出す。ここで第二例では、水を投入することなく、メタノール又は/及びエタノール、硝酸を必要最小量で加えた条件下で混練することにより、混合物からメタノール又は/及びエタノール、硝酸を更に分離する必要がない。
【0057】
而して、このように実施の形態の第二例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0058】
実施の形態の第二例において、反応処理部は、金属残渣と、有機物及び酸とを混合して混合物を搬送する搬送手段11と、混合物を加熱する加熱手段12とを備えると、六価クロムを含む金属残渣と、有機物、酸との反応を好適に為し得るので、六価クロムの還元を容易に且つ低コストに行い、処理済みの金属残渣を廃棄物処理業者へ引き取らせる際に、無償もしくは逆有償で好適に引き取らせることができる。又、スクリュフィーダの搬送手段11を用いてメタノール又は/及びエタノール、硝酸を反応を為し得る必要最小量にするので、六価クロムの還元を極めて低コストに行うことができる。
【0059】
尚、本発明の金属残渣の処理方法及び処理装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 反応槽
5 取出ライン
7 搬送ライン
8 戻しライン
11 搬送手段
12 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六価クロムを含む金属残渣と、有機物及び酸とを混合し、
Cr2−+14H+6e→2Cr3++7H
の反応により、金属残渣中の六価クロムを三価クロムへ還元し、金属残渣から六価クロムを除去することを特徴とする金属残渣の処理方法。
【請求項2】
有機物は、揮発性有機物であることを特徴とする請求項1に記載の金属残渣の処理方法。
【請求項3】
酸は、硫酸を除く他の酸からなる請求項1に記載の金属残渣の処理方法。
【請求項4】
金属残渣は、クロム含有合金の電解加工から生じた金属残渣であることを特徴とする請求項1に記載の金属残渣の処理方法。
【請求項5】
六価クロムを含む金属残渣と、有機物及び酸とを混合して
Cr2−+14H+6e→2Cr3++7H
の反応を行う反応処理部を備えたことを特徴とする金属残渣の処理装置。
【請求項6】
反応処理部は、金属残渣と、有機物、酸、水とを混合して反応処理する反応槽であることを特徴とする請求項5に記載の金属残渣の処理装置。
【請求項7】
六価クロムを除去した金属残渣を前記反応槽から取り出す取出ラインと、前記反応槽から取り出した有機物及び酸を前記反応槽に戻す戻しラインとを備えたことを特徴とする請求項6に記載の金属残渣の処理装置。
【請求項8】
反応処理部は、金属残渣と、有機物及び酸とを混合して混合物を搬送する搬送手段と、混合物を加熱する加熱手段とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の金属残渣の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−248573(P2010−248573A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99485(P2009−99485)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】