説明

金属水酸化物、金属酸化物および/または金属炭酸塩を使用するニッケルおよびコバルトの製造方法

水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルト、混合炭酸ニッケル−コバルトおよびそれらの組合せから金属酸化物を製造する方法は、金属塩の混合物を用意すること、該金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合すること、該混合物を凝集物に形成すること、および該凝集物をか焼し、金属酸化物を製造することを含んでなる。金属ニッケルまたはコバルトを製造する方法は、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、該金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合して混合物を形成すること、所望により水を加えること、該混合物を凝集物に形成すること、該凝集物を乾燥させること、有効還元量のコークスおよび/または石炭を加えること、および該乾燥した凝集物を有効量の熱で直接還元し、金属ニッケルおよび/またはコバルトを製造することを含んでなる。凝集の前に、コークス粒子を混合物に加えることができる。凝集物は、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルト、混合炭酸ニッケル−コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩、および無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年2月6日に出願された米国特許出願第12/366,768号の一部継続出願であり、かつ、2008年2月8日に出願された米国特許仮出願第61/027,058号、2008年4月16日に出願された米国特許仮出願第61/045,309号、および2008年4月16日に出願された米国特許仮出願第61/045,311号に基づく優先権を主張するものであり、これらの各出願の内容はそれらの全文において参照により本書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
1.技術分野
金属ニッケルおよびコバルトの製造技術。
【0003】
2.関連技術の説明
ニッケルおよびコバルトは、伝統的に、硫化物および酸化物供給源から、乾式精錬および湿式精錬技術により回収されており、乾式精錬製法は、通常、供給源原料(鉱石または精鉱)に適用され、湿式精錬法は金属精製の最終工程に使用される。最近10〜15年間の傾向では、原料を含む供給源ニッケル/コバルトの直接処理への湿式精錬技術の使用が増加している。これらの製法は、典型的には酸浸出から始まり、続いて溶液精製工程により中間体(水酸化物、硫化物、炭酸塩)を製造し、これを必要に応じてさらに湿式精錬により精製するか、または電解採取により最終的な金属製品に製造する。
【0004】
より最近の開発では、乾式精錬製法を精製された湿式精錬溶液または中間体に適用し、最終製品を製造している。乾式精錬技術では、典型的には乾燥、か焼/還元および電気炉精錬によりフェロ−ニッケルまたはニッケル硫化物マットを製造し、これをさらに処理し、精製されたニッケルを製造することができる。乾式精錬技術は、通常サプロライトに適用される。湿式精錬技術は、より典型的には、リモナイト系ラテライトに適用される。これらの技術としては、Caron製法、高温、高圧で硫酸による高圧酸浸出(HPAL)、および大気圧浸出、例えば大気温度および圧力における硫酸によるヒープリーチング、がある。浸出に続いて、浸出液を適切に中和し、不純物、例えばFeおよびAl、を除去し、次いで混合Ni/Co中間体、例えば水酸化物、炭酸塩または硫化物、を沈殿させるか、または溶液を溶剤抽出またはイオン交換にかけ、不純物(例えばマンガン)を除去する、および/またはコバルトからニッケルを分離する。水酸化ニッケルは、溶剤抽出もしくはイオン交換処理から溶離液、ストリップ溶液、またはラフィネートとして製造される酸性硫酸ニッケル溶液から製造することができる。水酸化ニッケルは、さらに処理し、例えば酸化ニッケルに変換することができる。酸化ニッケル粉末は危険性であることが分かっているので、酸化ニッケルの取り扱いには注意する必要がある。
【0005】
WO2006/089358は、混合ニッケル鉄水酸化物材料からフェロニッケルを製造する方法を記載しているが、この方法は、混合ニッケル鉄水酸化物材料を用意すること、混合ニッケル鉄水酸化物材料をペレット化してニッケル鉄水酸化物ペレットを製造すること、ニッケル鉄水酸化物ペレットをか焼し、混合ニッケル鉄酸化物ペレットを製造すること、および一種以上の還元性ガスを使用してニッケル鉄酸化物ペレットを高温で還元し、フェロニッケルペレットを製造することを含んでなる。そこに記載されているように、混合ニッケル鉄水酸化物材料は、一般的に湿潤ケーキの形態にあり、混合ニッケル鉄水酸化物材料をペレット化するには、湿潤ケーキを乾燥させ、有機結合材料および水でペレット化する。そこで考察されている有機結合材料は、「温度が500℃を超える場合に分解されるセルロース溶液、デンプンまたは他の粘性有機炭化水素重合体」である。ペレット化されたニッケル鉄水酸化物材料を先ず温度約100℃〜120℃で乾燥させ、次いで温度約800℃〜1300℃で、酸化条件下でか焼し、ニッケル鉄水酸化物ペレットを、硫黄を実質的に含まないニッケル鉄酸化物ペレットに転化する。11頁に、炉から出る生成物中の金属は、主としてトレボライト、複合ニッケル鉄酸化物NiFeの形態にあり、この生成物は多孔質ペレットの形態にある。多孔質ペレットは、脆くなく、危険性粉末の形成を阻止するための特別な手段を必要としない。鉄の製造に関して、結合剤としてベントナイトを使用することは公知である。鉄含有量が低い金属ニッケの製造に関するWO2008/022381もを参照。この出願は、危険性酸化ニッケル粉末の可能性を抑制または排除するための技術を全く開示していない。
【発明の概要】
【0006】
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、該金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合して混合物を形成すること、所望により水を加えること、該混合物を凝集物に形成すること、該凝集物を乾燥させること、および該乾燥した凝集物をか焼し、酸化ニッケルおよび/または酸化コバルトを製造することを含んでなる、金属酸化物の製造方法を提供する。幾つかの実施態様では、金属酸化物を、例えば気体状還元剤を使用して還元し、金属を製造する。
【0007】
また、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、該金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合して混合物を形成すること、所望により水を加えること、該混合物を凝集物に形成すること、該凝集物を乾燥させること、有効量の還元用コークスおよび/または石炭を加えること、および該乾燥した凝集物を有効量の熱で直接還元し、金属ニッケルおよび/またはコバルトを製造することを含んでなる、金属ニッケルまたはコバルトの製造方法を提供する。
【0008】
また、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、該金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合すること、該金属塩および結合剤をコークス粒子と混合して混合物を形成すること、所望により水を加えること、該混合物を凝集物に形成すること、該凝集物を乾燥させること、有効量の還元用コークスおよび/または石炭を該凝集物に加えること、および該乾燥した凝集物を有効量の熱で直接還元し、金属ニッケルおよび/またはコバルトを製造することを含んでなる、金属ニッケルまたはコバルトの製造方法も提供する。
【0009】
また、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルト、混合炭酸ニッケル−コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩、および無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤を含んでなる凝集物も提供する。幾つかの実施態様では、該凝集物は、所望によりコークスを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施態様に従って金属酸化物を形成し、使用することにより、金属製品を製造する方法のフローチャートである。
【図2】本開示の別の実施態様に従って金属水酸化物を直接還元することにより、金属を製造する方法のフローチャートである。
【図3】本開示のさらに別の実施態様に従って金属水酸化物を直接還元することにより、金属を製造する方法のフローチャートである。
【図4】本開示のさらに別の実施態様に従って金属酸化物を形成し、使用することにより、金属を製造する方法のフローチャートである。
【図5】本開示のさらに別の実施態様に従って金属酸化物およびフラックスを形成し、使用することにより、金属を製造する方法のフローチャートである。
【図6】乾式摩砕した水酸化ニッケル粉末の粒子径分布を示すグラフである。
【好ましい実施形態の具体的説明】
【0011】
幾つかの実施態様で、例えばステンレス鋼または超合金の製造に使用するための、ニッケルまたはコバルトにさらに処理するのに非常に好適な、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、酸化ニッケルまたは酸化コバルトのフラックスを使用しない凝集物を本開示に従って製造する。ここで製造する金属酸化物凝集物は、凝集性であり、比較的脆くないので、危険性であることが分かっている細かく分割された金属酸化物粉末を回避する。本開示により、広範囲で経費のかかる精製を行わずに半精製浸出溶液からニッケルまたはコバルト金属を製造することができ、有害不純物のスラグ/ガス中への混入およびニッケルおよび/またはコバルトの副生成物流中への混入(recovery)を阻止することができる。本発明の方法は、意図するニッケルまたはコバルトの使用に有害な不純物金属、例えばCu、Zn、Mn、が除去されている、ニッケルおよび/またはコバルトを含む全ての半精製浸出液、例えばラテライト浸出液、に応用することができる。幾つかの実施態様では、本発明の方法により、凝集段階で無機および/または有機結合剤を添加することにより、ニッケルまたはコバルトの製造に関連する操作効率が向上する。無機結合剤は、高温で蒸発しないので、か焼およびその後の処理における有害な粉塵発生の防止に貢献する。幾つかの実施態様では、凝集段階でコークスを加え、続いて金属水酸化物を直接還元することができるので、操作が簡単になり、還元精錬または融解炉の効率が高くなる。ここで使用する「ペレット」、「押出物」、「団鉱」、「顆粒状」および「顆粒」は、それぞれが異なった形状、密度および/またはサイズを有することがある可能性に関わらず、互換的に使用される。用語「凝集物」は、ペレット、押出物、団鉱、顆粒状および顆粒を包含するが、これらに限定するものではない。用語「押出物」は、押出工程から得られる全ての生成物を包含する。
【0012】
本開示による製法の実施態様を示すフローチャートを図1〜5に示す。一般的に、フィルターケーキの形態にある水酸化ニッケル生成物(NHP)、水酸化コバルト生成物(CHP)または両方(MHP)、炭酸ニッケル生成物(NCP)、炭酸コバルト生成物(CCP)、または両方(MCP)を少なくとも部分的に乾燥させ、結合剤と混合する。次いで、得られた混合物を凝集させ、所望により乾燥させる。幾つかの実施態様では、凝集物をか焼する。例えば図1、4および5を参照。幾つかの実施態様では、フラックス処理しない金属酸化物が得られ、この金属酸化物は、その後の精製、例えば還元(図1)および精錬、または精錬(例えばフラックス添加を含む図4および5参照)にかけることができる。これらの製法を以下により詳細に説明する。他に指示が無い限り、「金属塩」は、水酸化ニッケル、水酸化コバルトまたは両方(MHP)、炭酸ニッケル、炭酸コバルト、または両方(MCP)を意味するものする。
【0013】
金属塩が、金属生成物の意図する最終用途に有害である不純物を含まない限り、どのような公知の浸出方法または浸出溶液でも使用し、本製法に使用するための金属塩を与えることができる。例えば、NHP沈殿物、CHP沈殿物、NCP沈殿物、CCP沈殿物を、ラテライト鉱石から、各種の湿式精錬浸出製法を使用して製造することができる。一例では、精製水酸化ニッケル沈殿物を製造する方法は、マンガン、銅、亜鉛、鉄およびコバルトの少なくとも一種を含む不純物を有するニッケル含有浸出溶液から出発する。ニッケル含有浸出溶液を、好ましくは酸素の侵入を制限した条件下で、大気圧で、少なくとも一種の塩基(例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられるが、これらに限定するものではない)で処理し、混合水酸化物沈殿物および低ニッケルバレン溶液(low-nickel barren solution)を含むスラリーを形成する。次いで、このスラリーを濃縮して混合水酸化物沈殿物フィルターケーキを形成し、このフィルターケーキを洗浄し、含まれるバレン溶液を除去する。次いで、洗浄した混合水酸化物沈殿物フィルターケーキを酸(例えば硫酸が挙げられるが、これに限定するものではない)と接触させ、フィルターケーキ中に含まれるニッケルおよび他の金属を溶解させ、ニッケル含有浸出溶液中の濃度より高いニッケル濃度の濃縮ニッケル含有溶液を製造する。次いで、この高ニッケル濃度溶液を、有機酸抽出液による溶剤抽出にかけ、ニッケル以外の金属をそのニッケル含有溶液から除去し、精製されたニッケル溶液の溶剤抽出ラフィネートを形成する。次いで、この精製されたニッケル溶液を好適な塩基(例えば酸化マグネシウムが挙げられるが、これに限定するものではない)で処理し、精製された水酸化ニッケル沈殿物スラリーを形成する。このスラリー中のニッケルは、典型的には水酸化ニッケルおよび塩基性硫酸ニッケルとして存在する。次いで、このスラリーを濃縮して水酸化ニッケル沈殿物フィルターケーキを形成し、このフィルターケーキを洗浄し、含まれるバレン溶液を除去する。無論、当業者には公知のいずれかの方法を使用し、本開示に関連して使用する金属塩を得ることができる。
【0014】
NHP、CHP、NCPまたはCCP沈殿物は、どのようにして製造されたかに関係なく、過度に流体にならずに液体結合剤を加えることができるレベルに乾燥させることができる。あるいは、金属塩沈殿物を乾燥添加剤と混合する場合、沈殿物は、乾燥粉末混合に好適な自由流動性粉末になるように十分に乾燥させるべきである。湿分レベルの選択は、使用する凝集方法によって異なる。沈殿物は、圧力濾過または真空濾過し、比較的低い湿分のケーキを形成し、自由流動性粉末になるように、例えば含水量約15〜約30重量%、約18〜約28重量%、約20〜約25重量%、または約20重量%に、乾燥させることができる。湿潤金属塩フィルターケーキの硬化は回避するのが好ましいが、これは、沈殿後に沈殿物を直ちに乾燥させることにより、達成することができる。好適な乾燥温度は、例えば約90℃〜約120℃でよい。乾燥後、沈殿物を粉砕または摩砕し、最大粒子径を例えば−10メッシュにすべきである。一実施態様では、沈殿物をハンマーミル中で約200メッシュ未満に摩砕することにより、ペレット化を容易にすることができる。他のサイズのメッシュも、同様に使用できる。
【0015】
この段階で、乾燥させた沈殿物に結合剤を加える。無機粉末結合剤の例は、ベントナイト、生石灰、およびケイ酸ナトリウムである。無機結合剤は、有機結合剤と異なり、高温で燃焼しないので、官能性を維持する。上記結合剤の一種以上を金属塩沈殿物と混合することができる。所望により使用する第二の無機または有機結合剤を加えることができるが、これは粉末または液体の形態でよい。粉末結合剤の例は、ベントナイト、リグニン、グアーガムおよび予備ゼラチン化されたデンプンである。粉末結合剤の濃度は、金属塩の約2〜約10重量%(乾燥ベース)でよい。例えば、各粉末結合剤単独で、または組合せで、約3%〜約6%である。有機結合剤としては、加水分解デンプン、リグニン、糖蜜、糖、カルボキシメチルセルロースまたはセルロースを沈殿物と混合することができる。これらは比較的低温の結合剤であり、NHP、CHP、NCPまたはCCPの重量に対して約2%〜約10%(乾燥ベース)の濃度で加えることができる。所望により使用する第二結合剤、例えばグアーガム、リグニン、または加水分解デンプン、を使用する製法を図4に示す。無論、所望により使用する第二結合剤の添加は、図4に示す製法に限定するものではない。中間温度結合剤の例は、グリセロールトリアセテートまたはポリエチレングリコールであり、金属塩の重量に対して約2%〜約5%(乾燥ベース)の濃度で加えることができる。低温結合剤は、単独で、または中間温度結合剤との組合せで、金属塩の重量に対して約15%、好ましくは10%(乾燥ベース)の総濃度に加えることができる。同様に、中間温度結合剤は、単独で、または低温結合剤との組合せで使用することができる。結合剤水溶液の濃度は、水中約5〜約80%乾燥結合剤でよい。別の実施態様では、上記の水溶液中にある結合剤の組合せを乾燥粉末結合剤と組み合わせ、金属塩沈殿物との混合物を形成する。結合剤は、凝集を促進し、これらの結合剤から形成された凝集物またはペレットに十分な生強度を与えるために使用する。
【0016】
金属塩/結合剤混合物を凝集物に形成し、所望によりこれを乾燥させ、十分な取扱強度を持たせることができる。幾つかの実施態様では、凝集物を乾燥させ、直接還元して金属生成物を製造する。凝集の前に、金属塩/結合剤混合物にコークスを加え、凝集物を還元し易くすることができる。コークス粒子径は、例えば200メッシュ〜約100メッシュが好適である。幾つかの実施態様では、200メッシュ未満のコークス粒子が好ましく、200メッシュ篩を使用して得ることができる。コークスの量は、約2重量%〜約10重量%である。約10重量%を超える量は、凝集物を形成する能力を損なうことがある。幾つかの実施態様では、低硫黄冶金学的コークス、例えば約0.9%硫黄、を使用し、凝集物中の硫黄の量を最小に抑えることができる。
【0017】
凝集方法は、材料の望ましいサイズによって異なり、ペレット化、押出、マイクロペレット化、ピンミキシング、ブリケット形成または噴霧乾燥から選択することができる。凝集させる前に水を加えて金属塩/結合剤(および所望により使用するコークス)混合物の粘度を下げ、取扱易くすることができる。当業者は、所望のコンシステンシーを有するペーストを形成するのに十分な水の量を日常的に決定することができる。ペーストを使用してあらゆるサイズの押出物を形成することができるが、厚さは、例えば約1mm〜約8mmである。凝集物は、厚い程、熱的スポーリングをより受け易く、より長い滞留時間を必要とすることがある。しかし、本開示により、厚い凝集物、例えば約7mm〜約20mmまでのペレット、を使用することもできる。選択した方法がペレット化である場合、混合物は、一般的にペレット化装置に供給するまで、自由流動性粉末のままでよい。ペレットサイズは、低温粉砕強度に影響を及ぼすことがある(ペレットは大きい程、典型的に強度を高くすることができる)が、他のファクター、例えばペレット形成ホイール上の滞留時間、によっても異なることがある。2種類のサイズが類似しているペレットでは、滞留時間の差により、密度が異なることがあるが、これは、滞留時間が短いペレットは、「より綿毛状に」またはより多孔質になるのに対し、滞留時間が長いペレットは、ディスクまたはホイール上でペレットの重量により、より緻密になり、圧縮されるためである。ピンミキサーの使用により、低粉塵発生率で取り扱うことができる不規則形状の顆粒を製造することができる。生凝集物中の含水量は、例えば約20〜約35重量%の範囲内で変えることができる。上記のように、凝集物を乾燥させ、その後の処理の前に、それらの強度を改良し、遊離水分を5%含水量未満に下げることができる。乾燥温度は、例えば約90℃〜約120℃でよい。
【0018】
乾燥した凝集物は、例えば図3および4に例示するように、コークスカバーの下で直接還元にかけることができる。商業的使用では、ロータリーハース炉または類似のハース炉が関与することができる。か焼に続いて還元を行う場合、所望によりシャフト型炉、例えばキュポラまたは高炉、を使用し、適切なフラックスを加えて、溶融金属およびスラグを製造することができる。ロータリーハース型炉では、還元温度は約800℃〜約1300℃、例えば約1200℃、でよい。コークスの量は、ペレットの約20〜約60重量%(乾燥ベース)でよい。例えば、約12.5重量%のコークスが化学量論的であると仮定すると、これは、約8〜48%過剰のコークス使用に相当する。コークス添加量は、コークス反応によって異なり、これはさらに使用方法(混合物または層)ならびに炉雰囲気中に存在する酸素の量によって異なる。当業者は、従来の計算に基づいて好適な配合量を決定することができる。完全なコークスカバーにより、完全還元を行い易くなる。約5%〜約10%のコークスを配合した凝集物は、コークスが凝集物中に分散しているために、より一様な還元特性を示すことができる。凝集物は、還元剤の選択、使用量および温度に応じて、炉中で約15分間〜約90分間還元させることができる。凝集物は、硫黄の含有量がより少なく、炭素の含有量がより高い程、典型的には、より均質に還元され、極めて硬い金属ニッケル生成物、例えば個別のペレット、が製造される。硫黄の含有量が高い供給源から製造された凝集物は、コークス配合により特に有益性を得ることができる。そのような凝集物の融解および焼結を回避するために、より低い温度、例えば約800℃〜約1100℃、も使用できる。
【0019】
幾つかの実施態様では、凝集物を酸化性環境、例えば空気、中でか焼し、硫黄を除去し、次いでコークスカバーの下で、および/または気体状還元剤により還元し、金属生成物を製造する。本開示により、金属酸化物の有害な過剰の粉塵発生無しに、十分な強度を有するか焼した凝集物が製造される。特定の実施態様では、低硫黄含有量を必要とする用途向けに、硫黄を凝集物から除去することができる。NHPまたはMHP沈殿物は、ある種の、800℃を超える温度、例えば約1250℃で熱的に分解され、酸化性条件下で除去される塩基性硫酸塩を含む。好ましいか焼温度は約1300℃を超え、約1500℃未満である。99.8%を超える硫黄除去効率が立証されており、約1380℃〜約1400℃でか焼の後、0.005%硫黄が最終的に検定されている。幾つかの実施態様では、温度は約1350℃〜約1400℃で、約30分間でよい。約1390℃〜約1400℃が好適であることもが分かっている。特定の特性を有するか焼された生成物を製造する特定の必要条件に応じて、他の温度と時間の組合せも使用できる。当業者は、これらの条件を達成する技術に精通している。例えば、生凝集物をロータリーハース炉(RHF)に、傾斜した供給シュートを経由して装填する。機械的ショックと熱的ショックの組み合わせにより、凝集物のハース層が幾分破壊される。従って、1メートルを超えない垂直落下が推奨されるが、これが必要という訳ではない。RHFを使用する一実施態様では、ハース層上にあるペレットの最低温度は約1300℃であり、床の上表面上における最高温度は約1450℃である。フリーボードで約1450℃の温度に到達するために、温度は、約100℃〜約150℃高く、すなわち、約1550℃〜約1600℃に設定することができる。か焼温度は、凝集物全体を通して、できるだけ一様に維持するのが有利である。他のどのような好適な反応器、例えばキルン、トラベリンググレート、シャフト炉、マルチハース炉、でも使用できる。酸化条件は、空気または他の酸化性ガスを反応器中に加えることにより、達成される。
【0020】
無論、乾燥は、か焼の前に別の乾燥機中で行い、続いて乾燥した凝集物をか焼容器中に送り、か焼することができる。あるいは、凝集物を同じ容器中で乾燥およびか焼することもできる。凝集物は、か焼の際に、主として水酸化物および硫酸塩の分解により、それらの質量の約35%を失うことがある。これによって、か焼の際に凝集物のサイズが大きく収縮する。
【0021】
本開示により製造される金属酸化物凝集物は、さらなる処理に適している。無機結合剤を含んでいても、か焼の際に凝集強度がかなり低下するので、か焼の後は、凝集物が砕けないように注意する必要がある。か焼した凝集物は、金属酸化物、すなわち酸化ニッケル、酸化コバルト、および/または混合酸化ニッケルおよびコバルトならびに無機結合剤からなる。金属ニッケルまたはコバルトを製造するには、金属酸化物を還元する。これは、電気炉中で、固体還元剤、例えばコークスおよび/または木炭、で還元精錬し、溶融ニッケルを製造することにより行うか、または2段階で、先ず固体または気体状還元剤を使用して固体状態で還元し、次いで還元された凝集物を融解させることにより行うことができる。還元性ガスを使用する固体状態還元を、凝集物中にある成分の融点より低い温度で行い、続いてフラックスを加え、単純な精錬を行い、スラグから金属を分離することができる。図4および5に示すように、還元後にフラックスを加え、融解後にスラグを形成し、特定の不純物を分離することができる。気体状還元剤の例は、水素、一酸化炭素、それらの混合物、および気化させた炭化水素燃料または気体状燃料、例えばメタン、である。還元は、か焼と同じ容器中で行い、凝集物の取扱を最小に抑え、金属酸化物粉末の発生を回避するのが有利である。
【0022】
幾つかの実施態様では、フラックスを、金属塩沈殿物中に存在するスラグ形成酸化物、例えばMgO、CaO、とスラグを形成するのに十分な量で加える。例えば、フラックスは、スラグ形成酸化物と組み合わせて流体スラグを形成する、シリカおよび石灰の細かく粉末化した混合物、またはそれらの他の市販形態でよい。フラックス混合物は、スラグ組成が、液相線温度が例えば1400℃未満である区域に変化するように選択する。フラックス添加は、液相線温度が精錬操作と一致するスラグを形成するように調整すべきである。従って、一実施態様では、フラックスの添加により、存在する全てのMgOが溶解し、凝集物が融解する際に良好なスラグ結合が得られる低い固相線温度、好ましくは約1350℃未満、を与えるべきである。一実施態様では、フラックス添加は、沈殿物原料のMg含有量に比例し、約25重量%MgO、より好ましくは約20重量%MgOのスラグを形成するのに十分な量である。一実施態様では、フラックスは、SiO約1.9部に対してCaO1部の比で流体スラグを形成するような、粉砕したSiO/CaOである。例えば、約2:1質量比である。別の実施態様では、SiO約2〜約2.5部に対してAl1部の比にある粉砕したSiO/Alフラックスを使用し、例えばMgO−Al−SiO系で2.3:1にあるスラグを形成する。SiO−CaO−MgOスラグ系は、精錬炉の操作温度で流体スラグを形成する、液相線温度が約1350℃〜約1400℃である区域を含む。SiO−Al−MgO系は、スラグが1400〜1450℃で流体である類似の区域も含む。どちらのスラグ系も使用できる。無論、同じ機能を果たす他のフラックス、例えば既成の製鋼スラグまたは合成スラグ、もしくは所望の最終スラグに適したフラックスも使用できる。
【0023】
下記の例により、本開示の特定の態様を例示する。これらの例は、単なる例であって、本明細書におけるより広い、および/または他の開示を制限するものではない。
【実施例】
【0024】
混合水酸化物生成物(MHP)および水酸化ニッケル生成物(NHP)は、一般的に圧力または真空濾過から、遊離水分が50%を超えるフィルターケーキとして得た。ペレット化前の原料調製では、フィルターケーキを水分20%未満(15%未満の水分は過度の粉塵発生を引き起こすが)に乾燥させ、続いて沈殿物をハンマーミル中で200メッシュ(または74μm)未満に摩砕する。
【0025】
2種類の異なった沈殿物供給源、すなわちNHP試料およびMHP試料、を使用した。両者の検定を表1に示す。2供給源の主な違いは、NHPにおける不純物濃度が非常に高いことである。
【表1】

【0026】
NHPは、結合剤および/または圧力を使用せずに凝集させるのが困難な、平滑および球形の粒子からなる非常に細かい化学的沈殿物である。乾燥した、摩砕したNHPの典型的な粒度分布を図6に示す。結合剤混合物および添加量は、各3重量%のベントナイトおよびグアーガムである。約10重量%までのリグニンおよび約5重量%の変成デンプンを、グアーガムの代わりに使用することができる。ベントナイトは、室温で球になることができ、SiO、CaOおよびAl成分が1250℃のあたりで低融点相を形成し始めるので、高温では結合し易い。ペレットは、還元性を最適にするために、ペレット中に様々な量、すなわち、1、2、5および10重量%、のコークスを配合して製造した。200メッシュ未満のコークス粒子をペレット化に使用した。細かいコークス試料を200メッシュ篩を使用して選別した。大きすぎる粒子は排除したが、小さな粒子は凝集に使用した。
【0027】
凝集物は、直径1250mmのペレット化ホイール上で調製した。摩砕した沈殿物を必要な結合剤と混合し、ペレット化ディスク中で、遊離水分20〜35%を含む生ペレットを得るのに十分な水だけを加えて凝集させた。次いで、生ペレットを100℃で遊離水分5%未満に乾燥させた。低温粉砕ペレット強度は、Lloyd Universal Testerを使用し、圧縮速度0.5mm/分で試験し、平均サイズおよび強度結果を表2に報告する。
【表2】

【0028】
4.0〜5.6mmのペレットだけを選択し、大きすぎるペレットおよび小さすぎるペレットはペレット化ホイールに戻した。
【0029】
直接還元
寸法110mm×180mm×40mmの小型アルミナるつぼを使用した。フラックス処理していない生ペレットを、ペレットの上部に配分した約20〜約70%(重量)の様々な量の冶金学的コークスと共に、るつぼ中に、典型的には200g、秤量した。幾つかの供給源の、NHPおよびMHP沈殿物の両方を、不純物のレベルを変えて、ならびにコークスの量を高めたNHPペレット(高炭素ペレットとも呼ぶ)をこれらの試験に使用した。これらのるつぼを、様々な温度、すなわち1000、1050、1100、1200℃、に予め加熱したマッフル炉の内側に、酸化性雰囲気中で配置した。炉中で30分の滞留時間後、るつぼを取り出し、実験室台上に置き、冷却させた。得られたペレットを、収縮、強度、焼結または融解の程度および磁気特性に関して分析した。コークスおよびペレットの交互層配分も比較用に試験した、これには、コークス約25%(重量)をるつぼハース上に、続いてペレットの層、次いでその上により多くのコークスを散布した。最良の結果は、完全なコークスカバー下、1200℃におけるMHPペレットで得られた。るつぼ中の全てのペレットが一様に還元され、焼結または融解無しに、極めて硬いニッケルペレットが製造された。これに対して、1200℃を除く全ての温度で、NHPペレットは、同等の結果をもたらした。SEM分析により、MHPが非常に良く還元され、強い個別ペレットを形成したのに対し、NHPは、るつぼ中で大量の融解および焼結、ならびに明瞭なガラス質相の形成を引き起こしたことが分かった。理論に捕らわれたくはないが、MHPの成果は、硫黄含有量が低い(従って、低融点硫化物相が少ない)こと、およびこの特定試料中の炭素含有量が著しく高いことによるものと考えられる。類似の結果が、ペレット中に1050℃でコークス5%および10%を含むNHP試料で得られた。ペレットにコークスを加えなかった場合、還元にある程度の不均質性があった。上層のペレットの還元程度は典型的には低かった。全ての試料で、SEM分析は、明瞭な金属ニッケル、硫化ニッケルおよび耐火性酸化物相を示した。NHP試料と比較して、MHP試料中に少量の硫化ニッケル(Ni)相があることが確認された。
【0030】
直接燃焼天然ガス炉を使用して大規模試験を行い、RHFにおける熱移動条件を模擬した。火炎温度は、フリーボード温度が約1050℃に維持されるように、1200℃に設定した。炉の雰囲気は、酸化性になるように調節した(約110%通気)。ペレットは、大型鋳造アルミナるつぼ(寸法190mm×248mm×102mm)中に2種類の床深さ、13mmおよび25mmで供給した。様々な量のコークス、例えばペレットの50〜60重量%、をペレットの上に散布し、るつぼを高温炉中に入れた。るつぼを通して挿入し、ハース上に配置した熱電対を監視し、ペレットが所望の温度に達し、ペレットの反応性を確保するのに適切な滞留時間を決定した。炉中30〜60分後、るつぼを取り出し、冷却させた。幾つかの試験の際、炉から取り出した直後に、ハースから高温ペレットを掻き取り、ペレット強度および焼結特性を確認した。
【0031】
これらの試験は、天然ガス燃焼炉における直接還元が有効であることを立証している。フラックス処理していない、コークス5%を含むNiHPペレットを、RHF模擬炉中、コークスカバー下、13mmおよび25mm床深さで還元させ、良好な強度およびNiO還元結果を得ることができる。13mm床は、30分間の滞留時間しか必要としなかったのに対し、25mm床は60分間を超える時間を必要とした。還元後の検定は、ペレット中の50%に近いニッケルが還元され、酸化ニッケル(すなわちNiO)約15%および硫化ニッケル(すなわちNi)25%が残ることを示している。ペレットの圧縮強度は、取扱および輸送に必要な最小強度である3kgを超えている。まだ高温である間に装填しても、ペレットがハースに粘着する、および一つに焼結する問題は存在しなかった。さらに、空気中で冷却している間に、ペレットの再酸化は問題にならないことが分かった。
【0032】
か焼したペレットの固体状態還元
最初は水素ガスを還元剤として使用したが、後で比較用にコークスカバーを使用して幾つかの試験を行った。両方の実験手順は類似していた。生ペレットを小型の円筒形または長方形るつぼの内側に置き、空気中、1250℃で30分間か焼し、硫黄を排除した。次いで、るつぼを取り出さずに、水素流をペレット上に向け、床に効果的に浸透させ、か焼したペレットを1250℃で60分間還元させた。あるいは、か焼後、材料を細かいコークスの層で覆い(ペレット原料の約25〜45重量%)、ペレットの還元を引き起こした。
【0033】
これらの試験は、ペレットをかき乱さずに、同じ容器中で酸化し、続いて還元することにより、強い個別ペレットが得られることを良く立証している。表3は、上記のか焼試験に続いて水素ガスで還元する還元方法に対する生成物検定を示す。
【表3】

【0034】
か焼し、還元したペレットは、取扱および輸送に耐える十分な強度を有し、中程度の耐摩耗性を有する。ペレットは、スポンジ状構造にあるニッケル金属の十分に露出した焼結粒子からなり、所望によるその後の精製に好適である。SEM分析ならびに検定で、少量のスラグ相が見られる。酸化物の主要供給源は、NHP中の残留不純物ならびにベントナイトの添加である。この還元生成物は、既存の商業的操作に対して補足ニッケル単位を供給するのに、および製鋼操作に対する供給原料として直接市販するのに好適である。
【0035】
直接燃焼天然ガス炉を使用して大規模試験を行い、RHFにおける熱移動条件を模擬した。火炎温度は、フリーボード温度が約1250℃に維持されるように、1400℃に設定した。炉の雰囲気は、酸化性になるように調節した(約110%通気)。ペレットは、大型鋳造アルミナるつぼ(寸法190mm×248mm×102mm)中に2種類の床深さ、25mmおよび50mmで供給した。るつぼを中に30分間入れ、ペレットを先ず酸化させた。るつぼを通して挿入し、ハース上に配置した熱電対を監視し、ペレットが所望の温度に達し、ペレットの反応性を確保するのに適切な滞留時間を決定した。次いで、るつぼを取り出し、様々な量のコークス、例えば20〜30重量%、をペレットの上に散布し、るつぼを高温炉中に戻した。炉中でさらに30分後、るつぼを取り出し、冷却させた。幾つかの試験の際、炉から取り出した直後に、ハースから高温ペレットを掻き取り、ペレット強度および焼結特性を確認した。
【0036】
これらの直接燃焼天然ガス炉における固体状態還元試験は、非常に効果的であった。フラックス処理していないNiHPペレットをRHF様式炉中で30分間か焼し、続いてコークスカバー下で還元させることが可能であり、25mmおよび50mm床深さの両方で、良好な強度、硫黄除去およびNiO還元結果が得られることが立証された。前者は、フリーボード中、1250℃で30分間(合計60分間)の還元滞留時間しか必要としなかったのに対し、後者は、還元に少なくとも45分間(合計75分間)を必要とした。還元後の検定は、ペレット中の80%に近いニッケルが還元され、NiO9%および硫黄0.3%だけが残ることを示している。ペレットの圧縮強度は、取扱および輸送に必要な最小強度である3kgを超えている。まだ高温である間に排出しても、ペレットがハースに粘着する、または一つに焼結する問題は存在しなかった。さらに、空気中で冷却している間に、ペレットの再酸化は問題にならないことが分かった。
【0037】
炭酸コバルトおよびニッケルのか焼
一例では、ペレット化した炭酸コバルト、ベントナイト3重量%、グアーガム3重量%の、平均直径7mmの混合物、を1250℃で30分間か焼した。別の例では、ペレット化した炭酸ニッケル、ベントナイト3重量%、グアーガム3重量%の、平均直径7mmの混合物、を1250℃で30分間か焼した。試料に対する検定結果を下記の表4に示す。
【表4】

【0038】
本製法により、金属塩を金属生成物または電気炉精錬、または他の好適な精錬容器に好適な顆粒状の、フラックス処理していない金属酸化物に直接変換し、例えばステンレス鋼製造用のニッケル金属を製造することができる。金属塩を処理するための乾式精錬手法は、ステンレス鋼工業にニッケルを直接供給する伝統的な湿式精錬経路よりも、コスト的に効率的であり、著しく簡単である。
【0039】
法律の規定により、本開示の特別な実施態様を例示し、説明したが、当業者には明らかなように、請求項に包含される開示形態の中で変形が可能であり、本開示の特定の特徴は、他の特徴を対応して使用せずに有利に使用することができる。例えば、当業者は、従来の知識に従って、濃度、温度、時間、流量を変えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルト、混合炭酸ニッケル−コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、前記金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合して混合物を形成すること、前記混合物を凝集物に形成すること、前記凝集物を乾燥させること、および前記乾燥した凝集物をか焼して、酸化ニッケル、酸化コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属酸化物を製造することを含んでなる、金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記混合物に水を加えることをさらに含んでなる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記無機結合剤が、ベントナイト、生石灰、ケイ酸ナトリウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記有機結合剤が、リグニン、グアーガム、糖蜜、糖、カルボキシメチルセルロース、セルロース、グリセロールトリアセテート、ポリエチレングリコール、加水分解デンプン、予備ゼラチン化されたデンプンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記結合剤が、約2〜約10重量%の量で存在する、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記混合物にコークスを加えることをさらに含んでなる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物を還元し、ニッケル、コバルトおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属を製造することをさらに含んでなる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物が、気体状還元剤により還元される、請求項7に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物が、コークスまたは木炭により還元される、請求項7に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項10】
前記金属にフラックスを加えること、融解または精錬すること、およびスラグを前記金属から分離することをさらに含んでなる、請求項7に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項11】
前記凝集物を温度約90℃〜約110℃で乾燥させる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項12】
前記凝集物を温度約1300℃〜約1500℃でか焼する、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項13】
前記凝集物が、ペレット、団鉱、顆粒および押出物からなる群から選択される、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項14】
前記金属塩を前記無機結合剤と混合する前に、前記金属塩を少なくとも部分的に乾燥させることをさらに含んでなる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項15】
前記凝集物を、1つの容器中で乾燥およびか焼する、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
【請求項16】
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、前記金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合して混合物を形成すること、所望により水を加えること、前記混合物を凝集物に形成すること、前記凝集物を乾燥させること、有効還元量の、気体状還元剤、コークス、木炭およびそれらの組合せからなる群から選択される還元剤を加えること、および前記乾燥した凝集物を有効量の熱で直接還元して、ニッケル、コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属を製造することを含んでなる、金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項17】
前記無機結合剤が、ベントナイト、生石灰、ケイ酸ナトリウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項18】
前記有機結合剤が、リグニン、グアーガム、糖蜜、糖、カルボキシメチルセルロース、セルロース、グリセロールトリアセテート、ポリエチレングリコール、加水分解デンプン、予備ゼラチン化されたデンプンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項19】
前記結合剤が、約2〜約10重量%の量で存在する、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項20】
前記混合物にコークスを加えることをさらに含んでなる、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項21】
前記乾燥した凝集物が、気体状還元剤により還元される、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項22】
前記乾燥した凝集物が、コークスまたは木炭により還元される、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項23】
前記金属にフラックスを加えること、融解または精錬すること、およびスラグを前記金属から分離することをさらに含んでなる、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項24】
前記凝集物を温度約90℃〜約110℃で乾燥させる、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項25】
前記凝集物が、ペレット、団鉱、顆粒および押出物からなる群から選択される、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項26】
前記金属塩を前記無機結合剤と混合する前に、前記金属塩を少なくとも部分的に乾燥させることをさらに含んでなる、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項27】
前記凝集物を、1つの容器中で乾燥および還元する、請求項16に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項28】
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩を用意すること、前記金属塩を、無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤と混合すること、前記金属塩および結合剤をコークス粒子と混合して混合物を形成すること、所望により水を加えること、前記混合物を凝集物に形成すること、前記凝集物を乾燥させること、および前記乾燥した凝集物を有効量の熱で直接還元して、ニッケル、コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属を製造することを含んでなる、金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項29】
有効還元量のコークスおよび/または石炭を前記乾燥した凝集物に加え、次いで前記乾燥した凝集物を有効量の熱で直接還元することをさらに含んでなる、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項30】
前記無機結合剤が、ベントナイト、生石灰、ケイ酸ナトリウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項31】
前記有機結合剤が、リグニン、グアーガム、糖蜜、糖、カルボキシメチルセルロース、セルロース、グリセロールトリアセテート、ポリエチレングリコール、加水分解デンプン、予備ゼラチン化されたデンプンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項32】
前記結合剤が、約2〜約10重量%の量で存在する、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項33】
前記乾燥した凝集物を気体状還元剤にさらすことをさらに含んでなる、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項34】
前記金属にフラックスを加えること、融解または精錬すること、およびスラグを前記金属から分離することをさらに含んでなる、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項35】
前記凝集物を温度約90℃〜約110℃で乾燥させる、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項36】
前記凝集物が、ペレット、団鉱、顆粒および押出物からなる群から選択される、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項37】
前記金属塩を前記無機結合剤と混合する前に、前記金属塩を少なくとも部分的に乾燥させることをさらに含んでなる、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項38】
前記凝集物を、1つの容器中で乾燥および還元する、請求項28に記載の金属ニッケルまたはコバルトの製造方法。
【請求項39】
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、混合水酸化ニッケル−コバルト、炭酸ニッケル、炭酸コバルト、混合炭酸ニッケル−コバルトおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属塩、および無機結合剤、有機結合剤およびそれらの組合せからなる群から選択される結合剤を含んでなる凝集物。
【請求項40】
前記無機結合剤が、ベントナイト、生石灰、ケイ酸ナトリウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の凝集物。
【請求項41】
前記有機結合剤が、リグニン、グアーガム、糖蜜、糖、カルボキシメチルセルロース、セルロース、グリセロールトリアセテート、ポリエチレングリコール、加水分解デンプン、予備ゼラチン化されたデンプンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の凝集物。
【請求項42】
コークス粒子をさらに含んでなる、請求項39に記載の凝集物。
【請求項43】
前記凝集物が、ペレット、顆粒、団鉱および押出物からなる群から選択される、請求項39に記載の凝集物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518948(P2011−518948A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504291(P2011−504291)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000489
【国際公開番号】WO2009/127053
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508071412)ヴァーレ、インコ、リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】VALE INCO LIMITED
【Fターム(参考)】