説明

金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法とその装置

【課題】金属混合プラスチック廃棄物を有姿のままガラス融解液で熱分解し、ガラス融解液に沈澱、溶解、熱分解ガスに揮散、冷却水に溶解する金属を回収する方法を提供する。
【解決手段】熱分解装置21での熱分解は、熱分解の吸収熱量をプラスチックの燃焼熱量および燃焼ガスとガラス融解液組成物質の反応熱量で補い、ガラス融解液の量による保有熱量で熱量を調整し安定した温度で熱分解する。ガラス融解液に沈澱する金属は沈澱金属回収装置10で、ガラス融解液に溶解する金属は直流電極に析出させ溶解金属水冷回収装置18でともにガラス融解液とともに回収。熱分解ガスに揮散する金属は熱分解ガスを冷却槽23から27で水冷し固化回収し、熱分解ガスに含まれる活性物質を酸化燃焼し安定性状のガスで排出する。冷却水に溶解した金属は中和槽32で中和処理し沈殿物で回収し、水を回収し再使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路や端末配線よりなる電子部品、もしくはこれらを装着した電気製品や自動車を裁断した金属とプラスチックの混合するシュレッダーダストなどの金属混合プラスチック廃棄物を、有姿のまま高温のガラス融解液で熱分解し、金属を回収する金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法とその装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
金属混合プラスチック廃棄物からの金属分離は、粉体化し比重選別、風力選別、磁気選別、静電選別が試みられるが、硬質プラスチックと金属からなる電子部品やシュレッダーダストの粉体化は難しく、また、粉体化しても形状、密度、磁性が様々であり有効な方法とはなっていない。一方、乾留熱分解ではこれらに使用されるプラスチックが耐熱性に富むものが多く、高温熱分解でも未分解部分が残りハロゲン系プラスチックを含む場合はPCB、ダイオキシンなどの有害ハロゲン化合物の二次合成を起こしやすい。なお、集積回路の一部は金属製錬炉で精錬回収されるが、工業用の目的であり高い金属含有率が要求され、金属含有率の低いシュレッダーダストの精錬回収はおこなわれない。
【0003】
一方、工業で使用されるガラスの融解温度は1400℃前後、この温度域で温度分布の安定したガラス融解液中での熱分解であれば金属混合プラスチック廃棄物の硬質で耐熱性に富むプラスチックも完全に分解され、熱分解で金属はその融点と沸点によりガラス融解液に沈澱し、溶解し、もしくは熱分解ガスに揮散することにより、その性状に応じて回収することができる。また、この方法によればプラスチックは完全に分解され有害ハロゲン化合物が合成されることもない。
【0004】
しかしながら、酸化珪素の純度の高い原料を外部加熱もしくは交流電極で融解する工業上のガラス製造方法と異なり、圧入酸素でプラスチックをガラス融解液の中で酸化燃焼させながら熱分解をおこなう内部加熱による方法は、ガラス融解液の組成物質である酸化ナトリウムや酸化カリウムが高温下で起す、2NaO→Na+Na→2NaOおよび2KO→K+K→2KOの可逆反応に、プラスチックの燃焼による水と一酸化炭素が反応し、Na+HO→NaOH+H、2Na+CO→NaO+C、NaOH+CO+O→NaCO+H、2NaCO→NaO+2CO+3O、K+HO→KOH+H、2K+CO→KO+C、KOH+CO+O→KCO+H、2KCO→KO+2CO+3Oの反応を発生させる。また、ガラス融解液の組成物質である酸化カルシュウムも高温下、酸化燃焼による水と一酸化炭素により、CaO+CO→CaC+O、2CaC+HO+O→C+2CaO+O→2CaO+HO+2Cの反応を起す。これらの反応はガラス融解液の随所で発生し、発泡をともない活性物質を発生させる。
【0005】
一方、ガラス融解液から発生する熱分解ガスは、プラスチックの燃焼で発生する一酸化炭素が、800℃前後で2CO→C+CO、700℃〜400℃の温度域でCO+HO→CO+Hと反応し活性物質の炭素と水素を遊離する。また、ガスに含まれる金属は金属混合プラスチック廃棄物に含まれる物質で各々酸化物、硝化物、塩化物、硫化物、水酸化物の金属塩となり、一部が熱分解ガスの水冷により冷却水に溶解する。したがって、内部加熱により熱分解をおこなう場合は、発生するこれらの反応に対応することが必要となる。この状況下、金属混合プラスチック廃棄物に関する処理技術が公開されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、廃家電シュレッダーダストから含有量の多いオレフィン樹脂とスチレン樹脂を分別回収し、オレフィン樹脂は再生樹脂化し、スチレン樹脂は熱分解で油を生成しスチレンモノマーとして再利用しようとするものである。
【0007】
また、特許文献2には、廃棄物炭化炉の排ガスもしくは粉体廃棄物をガラス融解液に空気で圧入し、無害化しようとするものである。
【0008】
【特許文献1】特開2001―224652号公報
【特許文献2】特開2003―20360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1に開示された発明は、比重選別、風力選別、磁気選別、静電選別を組合わせ、シュレッダーダストからオレフィン樹脂とスチレン樹脂を分別回収、回収した樹脂を混練し、混練機に装着したメルトフィルターにより金属片を除去し再利用しようとするものである。特許文献1においてはシュレッダーダストの粒径を2cmとするが、この粒径では金属とプラスチックあるいは異種類のプラスチックが複合したシュレッダーダストから特定の樹脂を回収できる量は限られ、回収効率を上げるには手選別にするか、もしくは凍結粉砕または研摩削出でより細かな粒径とし、比重選別、風力選別、磁気選別、静電選別を組合せておこなわざるを得ない。
【0010】
また、上述の特許文献2に開示された発明においては、廃棄物炭化炉の排ガスを空気でガラス融解液に圧入し、排ガスに含まれる有害ハロゲン化合物を高温熱分解で無害化しようとするものであるが、空気で排ガスを圧入することにより排ガス中の不飽和炭化水素が爆燃するおそれがあり、また、この燃焼熱量と生成された一酸化炭素と水および排ガス中の水がガラス融解液の組成物質と起す反応で、ガラス融解液が耐熱材の対応し得ない高温になるおそれがある。さらに、圧入空気の酸素と窒素で高温下、窒素酸化物が生成され、排ガス中の金属が硝酸金属となり溶出性の有害金属となる。同じく特許文献2では、粉体廃棄物を空気でガラス融解液に圧入し含まれる有害ハロゲン化合物を無害化しようとするが、粉体廃棄物を組成する非ガス化物質の量でガラス融解液の量が増え、酸化珪素含有量の少ない廃棄物では冷却排出してもガラスにはならず、排出物から硝酸金属が溶出する有害廃棄物を再生する。
【0011】
本発明は、集積回路や端末配線よりなる電子部品、もしくはこれらを装着した電気製品や自動車を裁断した金属とプラスチックの混合するシュレッダーダストなどの金属混合プラスチック廃棄物を、有姿のまま高温のガラス融解液に圧入し、熱分解で金属を分離しその性状に応じて回収するものであり、熱分解で発生する反応に安定的に対応すること、および金属含有率の高いガラス融解液、固化物、沈殿物で金属を回収することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収する方法は、熱分解の工程で、金属混合プラスチック廃棄物を液温1400℃前後のガラス融解液に圧入し熱分解、プラスチックはガスとなり、金属はその融点と沸点に応じてガラス溶融液に沈澱し、溶解し、ガスに揮散する。ガラス融解液に沈澱、溶解した金属はこれを回収する工程でガラス融解液とともに回収し、ガスに揮散した金属はこれを回収する工程でガスを水冷し金属を固化させ回収する。水冷により冷却水に溶解した金属は、水処理の工程で冷却水を中和処理し金属を沈澱させ回収、中和処理した冷却水を回収し再利用することにより金属混合プラスチック廃棄物を熱分解して回収する金属をその性状に応じて安定的に回収する作用を有している。
【0013】
請求項2に記載の金属混合プラスチック廃棄物を高温のガラス融解液に圧入し熱分解する工程では、圧入した酸素によるプラスチックの燃焼熱量とこの燃焼ガスでガラス融解液の組成物質が起こす反応熱量で熱分解で吸収された熱量を補給し、補給熱量の変動をガラス融解液の量による保有熱量で調整する。熱分解に際しガラス融解液の液温が下降する時は、金属混合プラスチック廃棄物に代え廃プラスチックを投入し、プラスチックの燃焼熱量と燃焼ガスに反応するガラス融解液の組成物質の反応熱量により液温を上昇させ、ガラス融解液の液温が上昇する時は、金属混合プラスチック廃棄物に代えガラス粉末を投入し、ガラス粉末の昇温吸収熱量で液温を下降させることにより、安定した液温のガラス融解液で熱分解をおこなう作用を有している。
【0014】
請求項3に記載のガラス融解液に沈澱もしくは溶解した金属を回収する工程では、ガラス融解液の底部に沈澱した金属をガラス融解液とともに排出し水冷回収し、ガラス融解液に溶解する金属はガラス融解液中に配備した直流電極に析出させ、陽極と陰極を切替え剥離しガラス融解液とともに排出し水冷回収することにより、金属含有量の多いガラス融解液で金属を回収する作用を有している。
【0015】
請求項4に記載の熱分解で発生したガスを水冷しガスに含まれる金属を回収する工程では、熱分解ガスを水冷し固化する金属を回収しながら、酸素を圧入し熱分解ガスに含まれる活性物質を酸化燃焼させ安定した性状のガスで排気する。水冷により冷却水に溶解した金属は冷却水を中和処理し沈澱させ回収、処理後の水を回収再利用することにより金属を固化物もしくは金属含有量の多い沈殿物で回収する作用を有している。
【0016】
請求項5に記載の金属混合プラスチック廃棄物の処理装置の熱分解装置は、金属混合プラスチック廃棄物の熱分解による吸収熱量を、プラスチックの燃焼熱量および燃焼ガスとガラス融解液組成物質の反応熱量で補給し、補給熱量の変動を保有熱量で調整できる量のガラス融解液を貯留し、液面上部に熱分解ガスの滞留空間を設けたガラス融解液貯留槽とする。ガラス融解液貯留槽は液面下部に隔壁を設け、投入側をプラスチックの酸化燃焼および燃焼ガスとガラス融解液の組成物質による反応区画とし、他方を反応の少ない区画とする。反応区画ではガラス融解液に沈澱した金属を側壁に設けた沈澱金属回収装置からガラス融解液とともに水冷回収し、反応の少ない区画では側壁に直流電極を配備した溶解金属回収装置を設け、直流電極にガラス融解液に溶解した金属を析出させ、直流電極の陽極と陰極を切換えることにより剥離した溶解金属をガラス融解液とともに水冷回収する。
【0017】
熱分解ガスは、ガラス融解液貯留槽の熱分解ガス滞留空間からガス処理装置へ吐出させる。ガス処理装置は、連結した温度域ごとに複数の冷却槽を設け、低い温度域ほどガスが低圧になるよう冷却槽の容積を大きくし、設定した温度にガスを水冷しながらガスに含まれる金属を固化し回収する。水冷で熱分解ガスの一酸化炭素から遊離する炭素もしくは水素、および燃焼ガスとガラス融解液組成物質との反応で発生した活性物質は、圧入した酸素で酸化燃焼し安定した性状とする。最終の冷却槽は連結した複数の冷却槽のガスを吸引し、且つ沈澱金属回収装置と溶解金属回収装置からの発生ガスの送気を受けることのできる圧力とするため、水で駆動するジェットポンプでガスを吸引し、駆動水で100℃以下に水冷、蒸気を水としガスを分離し排出する。水処理装置はガスと分離した水を中和処理し金属塩で水に溶解した金属を沈澱させ回収する。処理後の水は回収し再使用することにより、熱分解と熱分解ガスの水冷による反応に対応し、金属含有量の多いガラス融解液、固化物、沈殿物で金属を回収する作用を有している。
【0018】
請求項6に記載の熱分解装置では、投入側の反応区画に高温による酸化損耗を避けるため外管と内管の二重管の内管に通気した酸素を外管の水で冷却しながら圧入し、プラスチックを燃焼させた燃焼熱量と燃焼ガスに反応するガラス融解液組成物質の反応熱量で熱分解による吸収熱量を補い、補給熱量の変動をガラス融解液の量による保有熱量で調整し金属混合プラスチック廃棄物を安定した温度で熱分解する。熱分解に際しガラス融解液の液温が下降する時は、投入口から廃プラスチックを投入し、プラスチックの燃焼熱量と燃焼ガスに反応するガラス融解液組成物質の反応熱により液温を上昇させ、ガラス融解液の液温が上昇する時は、投入口からガラス粉末を投入し、ガラス粉末の昇温吸収熱量で液温を下降させることにより、安定した液温のガラス融解液で熱分解をおこなう作用を有している。
【0019】
請求項7に記載の沈澱金属回収装置および溶解金属回収装置のうち、沈澱金属回収装置は投入側の反応区画の側壁に設け、金属混合プラスチック廃棄物に含まれる非ガス化物質の量に応じて変動するガラス融解液面位置により、沈澱金属回収装置底部の排出口からガラス融解液とともに沈澱金属を排出、水冷し回収する。溶解金属回収装置は一方の反応の少ない区画の側壁に電極区画を設け、区画内に陽極と陰極の直流電極の交互に配置し通電しながら直流電極に金属を析出させる。直流電極の通電状態とガラス融解液面位置により区画を閉鎖し、陽極と陰極を切換え電極から金属を剥離し、区画底部の排出口からガラス融解液とともに溶解金属を排出し、水冷し回収することにより金属の含有率の高いガラス融解液を回収する作用を有している。
【0020】
請求項8に記載のガス処理装置と水処理装置のうち、ガス処理装置では1400℃〜800℃、800℃〜400℃、400℃〜150℃の温度域ごとに冷却槽を設け、各冷却槽はガス量と水冷による蒸気発生量を槽容積で調整し低い温度域の冷却槽を低い圧力とし、設定した温度にガスを水冷する。800℃〜400℃の冷却槽では、熱分解ガスの一酸化炭素から炭素もしくは水素が遊離するため、酸素を圧入し酸化燃焼させ二酸化炭素もしくは蒸気にするとともに、燃焼ガスとガラス融解液組成物質との反応で発生した活性物質を圧入した酸素で酸化燃焼し安定した性状とする。150℃以下の冷却槽は最終冷却槽として、400℃〜150℃の冷却槽のガスを吸引し、且つ沈澱金属回収装置と溶解金属回収装置の発生ガスの送気を受けるため、水封した内水槽と底部で通水する上部を開放した外水槽の二重の水槽とし、水で駆動するジェットポンプで内水槽からガスを吸引し、内水槽の水位と連動する外水槽の溢水水位で内水槽のガスを設定した低い圧力に安定させる。ガスは水で駆動するジェットポンプによる水冷吸引で100℃以下とし、蒸気を水とし分離したガスを排出する。水処理装置にはガスを分離した水を導入し、水冷により水に溶解した金属を中和処理し沈澱させ回収、処理後の水は回収し再使用することにより、熱分解と熱分解ガスの水冷による反応に対応し、金属含有量の多い固化物もしくは沈殿物で金属を回収する作用を有している。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、金属混合プラスチック廃棄物を有姿のまま高温のガラス融解液に圧入し、熱分解で金属を分離、ガラス融解液に沈澱、溶解、熱分解ガスに揮散する個々の金属の性状に応じて回収する方法とその装置である。熱分解は、熱分解による吸収熱量をプラスチックの燃焼熱量および燃焼ガスとガラス融解液組成物質の反応熱量で補給し、補給熱量の変動をガラス融解液の量による保有熱量で調整することにより、装着部位を集約しておこなう少量の稀少金属回収から、量の多い電気製品や自動車のシュレッダーダストの回収まで、金属混合プラスチック廃棄物のプラスチックと金属の組成量でガラス融解液量を定め、処理する量に応じた規模の装置で金属を効率良く回収する方法と装置になる。
【0022】
本発明の実施例を図により説明する
【実施例1】
【0023】
以下に本発明の実施の形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法について図1を参照しながら説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収する方法のフロー図である。図1においてステップS―1は金属混合プラスチック廃棄物を熱分解する工程である。熱分解は、金属混合プラスチック廃棄物と酸素をガラス融解液に圧入し、プラスチックの燃焼熱量および燃焼ガスとガラス融解液組成物質の反応熱で、熱分解による吸収熱量を補充し、補充熱量の変動をガラス融解液の量による保有熱量で調整しおこなう。熱分解に際しプラスチックの量が不足しガラス融解液の液温が低下するときは廃プラスチックを投入し液温を上昇させ、プラスチックの量が過剰で液温が上昇するときはガラス粉末を投入し液温を下降させることにより、安定した液温のガラス融解液で熱分解をおこなう。
【0025】
S―2は金属回収およびガスと水処理の工程である。熱分解により金属混合プラスチック廃棄物のプラスチックはガスとなり、金属はその融点と沸点によりガラス融解液に沈澱し、溶解し、熱分解ガスに飛散する揮散金属となる。ガラス融解液に沈澱した金属はガラス融解液の底部からガラス融解液とともに水冷し回収、溶解した金属は直流電極に析出させ剥離しガラス融解液とともに水冷し回収、揮散金属は熱分解ガスの水冷で固化し回収する。熱分解ガスは設定温度域で段階的に水冷し、800〜400℃の温度域で酸素を圧入し熱分解ガスに含まれる活性物質を酸化燃焼させ安定した性状のガスとし、さらに水冷し、水で駆動するジェットポンプで100℃以下とし水とガスを分離する。分離したガスは排気し、水冷により金属が金属塩で溶解している水は、中和処理により沈澱させ金属を回収、処理後の水を回収し再利用する。
【0026】
以上の説明において、本実施形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法においては、金属混合プラスチック廃棄物をガラス融解液中で熱分解することにより、金属をその性状に応じて金属含有量の多いガラス融解液、固化物、沈殿物とし効率良く回収する方法となる。
【実施例2】
【0027】
以下に本発明の実施の形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置について図2を参照しながら説明する。図2は本発明の実施形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置のうちの熱分解装置の構成図である。図2において金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置のうちの熱分解装置は、スライドゲート1、圧入装置2、投入口3、送り装置4、圧入筒5、酸素水冷供給用二重管6、反応区画7、隔壁8、反応の少ない区画9、沈澱金属回収装置10、溶解金属回収装置11、沈澱金属回収口12、直流電極13、スライドゲート14、隔壁15、電極区画16、溶解金属回収口17、溶解金属水冷回収装置18、密閉区画19、水封隔壁20で構成する。
【0028】
金属混合プラスチック廃棄物は、熱分解ガスを遮断するスライドゲート1を閉めて圧入装置2を上げた状態で、投入口3から投入し、送り装置4でスライドゲート1まで送り、スライドゲート1を開け送り装置4で熱分解ガスの漏洩を防止しながら圧入筒5に送り、送り装置4を引きスライドゲート1を閉じ熱分解ガスを遮断し、圧入装置2を下げガラス融解液に圧入する。圧入した金属混合プラスチック廃棄物は酸素水冷供給用二重管6で圧入した酸素で酸化燃焼させ、燃焼ガスでガラス融解液組成物質を反応させながら発生するガスの圧力で反応区画7へ送り込む。反応区画7では燃焼とガラス融解液組成物質の反応を継続させながら隔壁8からガラス融解液の上層部分を反応の少ない区画9に越流させる。なお、酸素水冷供給用二重管6は維持補修のため複数個を配備する。
【0029】
沈澱金属回収装置10は反応区画7の両側壁に設け、溶解金属回収装置11は反応の少ない区画9の両側壁に設ける。沈澱金属回収装置10はガラス融解液の液面が設定液面位置より上昇し、且つ溶解金属回収装置11から溶解金属を含有するガラス融解液を排出する必要のない時点で、沈澱金属回収口12から沈澱金属を含有したガラス溶解液を排出し水冷回収する。溶解金属回収装置11の直流電極13は、反応の少ない区画9の側壁部にスライドゲート14を配備した隔壁15で区画した電極区画16を設け、通常はスライドゲート14を開け直流電極に通電し反応の少ない区画9のガラス融解液に溶解した金属を直流電極13に析出させる。直流電極13の通電状況により溶解金属回収が必要な時にはスライドゲート14を閉め、直流電極13の陽極と陰極を切換えることにより電極から剥離した析出金属をガラス融解液とともに溶解金属回収口17から溶解金属水冷回収装置18に排出し水冷し回収する。溶解金属回収装置11はスライドゲート開閉時、もしくは電極取替時に熱分解ガスが漏出するため、密閉区画19を設けガスの漏出を防止し、密閉区画19のガスは温度調整後、ガス処理装置に圧送し換気する。なお、沈澱金属回収装置10と溶解金属水冷回収装置18は水封隔壁20を設け、金属含有ガラス溶解液の冷却にともなう発生水蒸気圧が所定の圧力を越える時点でガス処理装置に圧送する。なお、熱分解槽を起動する時は、反応区画7に敷設したガラス粉末に炭素電極を配備し通電、抵抗熱でガラス粉末を融解し、酸素を圧入が可能になってからガラスと廃プラスチックと酸素を圧入し、所定の液面までガラス融解液を満たし起動する。
【実施例3】
【0030】
以下に本発明の実施の形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収する装置について図3を参照しながら説明する。図3は本発明の実施形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収する装置のうちのガス処理装置と水処理装置の構成図である。図3において金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収する装置のうちのガス処理装置と水処理装置は、熱分解装置21、熱分解ガス滞留空間22、冷却槽23、冷却槽24、酸素水冷供給用二重管25、酸素供給装置26、冷却槽27、冷却槽28、内水槽29、外水槽30、ジェットポンプ31、排気槽32、中和槽33、集水槽34、用水冷却槽35で構成する。
【0031】
熱分解槽21の熱分解ガス滞留空間22よりガスの圧力が低くなる空間容積とした冷却槽23へ吐出させる。冷却槽23では800℃前後まで水冷し、この1400〜800℃の温度域で固化する金属を冷却槽下部の集塵槽に集塵する。冷却槽23で水冷されたガスは冷却槽23よりもガスの圧力が低くなる空間容積とした冷却槽24へ吐出させる。冷却槽24では酸素水冷供給用二重管25からの水で400℃前後まで水冷し、この800〜400℃の温度域で固化する金属を冷却槽下部の集塵槽に集塵するとともに、酸素供給装置26から酸素水冷供給用二重管25で水冷した酸素を圧入し、熱分解ガスに含まれる活性物質を酸化燃焼し安定した性状のガスとする。冷却槽24で水冷されたガスは冷却槽24よりもガスの圧力が低くなる空間容積を持つ冷却槽27へ吐出させる。冷却槽27では150℃前後まで水冷し、この400〜150℃の温度域で固化する金属を冷却槽下部の集塵槽に集塵する。冷却槽27で水冷されたガスは冷却槽27よりもガスの圧力が低くなる空間容積とした冷却槽28へ吐出させる。
【0032】
冷却槽28は、最終の冷却槽として、冷却槽27のガスを安定的に吸引し、且つ密閉区画19と沈澱金属回収装置10と溶解金属水冷回収装置18の発生ガスの送気を受けるため、水封した内水槽29と底部で通水する上部を開放した外水槽30の二重の水槽とし、水で駆動するジェットポンプ31で内水槽29のガスを吸引し、内水槽29の水位と連動する外水槽30の溢水水位で内水槽のガスを低い圧力に安定させる。水で駆動するジェットポンプ31で吸引されたガスは駆動水で100℃以下とし、冷却槽28と同じ機能をもつ二重水槽の排気槽32で水蒸気を水に戻し、分離したガスを安定した圧力で排気する。排気槽32の溢水は外水槽30に受け外水槽30からの溢水として中和槽33に送水し、水冷により水に溶解した金属を中和処理し沈殿物で回収する。処理後の水は集水槽34に回収貯留し、ジェットポンプ31の駆動水は用水冷却槽35で所定の温度とし、これ以外の水は用水必要箇所へ給水する。なお、冷却槽23から用水冷却槽35までの装置は維持補修のため複数個を配備する。
【0033】
以上に説明において、本実施形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収する装置においては、金属混合プラスチック投入装置と熱分解ガス処理装置を複数個配備することにより、一時停止のできないガラス融解液を貯留した熱分解装置を、その装備する耐熱材損耗時点まで連続して稼動する装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を 回収する方法のフロー図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回 収する装置のうちの熱分解装置の構成図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回 収する装置のうちのガス処理装置と水処理装置の構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1:スライドゲート
2:圧入装置
3:投入口
4:送り装置
5:圧入筒
6:酸素水冷供給用二重管
7:反応区画
8:隔壁
9:反応の少ない区画
10:沈澱金属回収装置
11:溶解金属回収装置
12:沈澱金属回収口
13:直流電極
14:スライドゲート
15:隔壁
16:電極区画
17:溶解金属回収口
18:溶解金属水冷回収装置
19:密閉区画
20:水封隔壁
21:熱分解装置
22:熱分解ガス滞留空間
23:冷却槽
24:冷却槽
25:酸素水冷供給用二重管
26:酸素供給装置
27:冷却槽
28:冷却槽
29:内水槽
30:外水槽
31:ジェットポンプ
32:排気槽
33:中和槽
34:集水槽
35:用水冷却槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属混合プラスチック廃棄物を高温のガラス融解液に圧入し熱分解する工程と、ガラス融解液に沈澱もしくは溶解した金属を回収する工程と、熱分解で発生したガスを水冷しガスに含まれる金属を固化し回収する工程と、水冷により冷却水に溶解した金属を中和処理により沈澱させ回収し、金属回収後の冷却水を回収再利用する水処理の工程とにより、金属混合プラスチック廃棄物から金属を回収し、使用した水を回収再利用することを特徴とする金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法。
【請求項2】
前記金属混合プラスチック廃棄物を高温のガラス融解液で熱分解する工程では、熱分解による吸収熱量を金属混合プラスチック廃棄物の中のプラスチックを圧入した酸素で酸化燃焼させた熱量と、ガラス融解液の組成物質が燃焼ガスに反応し発生する熱量で補給し、補給熱量の変動をガラス融解液の量による保有熱量で調整し熱分解をおこなう。熱分解に際しガラス融解液の液温が下降する時は廃プラスチックを投入し、プラスチックの燃焼熱量と燃焼ガスに反応するガラス融解液の組成物質の反応熱量により液温を上昇させ、ガラス融解液の液温が上昇する時はガラス粉末を投入し、ガラス粉末の昇温吸収熱量で液温を下降させることにより、安定した液温のガラス融解液で熱分解することを特徴とする請求項1記載の金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法。
【請求項3】
前記ガラス融解液に沈澱もしくは溶解した金属を回収する工程では、ガラス融解液に沈澱した金属をガラス融解液とともに、また、ガラス融解液に溶解した金属をガラス融解液に配備した直流電極に析出させ、ガラス融解液とともに回収することを特徴とする請求項1記載の金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法。
【請求項4】
前記熱分解で発生したガスを水冷しガスに含まれる金属を固化し回収する工程では、ガスの水冷により固化した金属を回収しながら、酸素を圧入しガスに含まれる活性物質を酸化燃焼させ安定した性状のガスとして排気する。水冷により冷却水に溶解した金属は、冷却水の中和処理により沈澱させ回収、処理後の水を回収し再利用することを特徴とする請求項1記載の金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する方法。
【請求項5】
貯留したガラス融解液に圧入した金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し、発生する熱分解ガスの滞留空間を設けた熱分解装置と、ガラス融解液の底部に沈澱する金属を回収する沈澱金属回収装置と、ガラス融解液に溶解する金属を回収する溶解金属回収装置と、熱分解ガスを水冷し固化した金属を回収しながら、熱分解ガスに含まれる活性物質を圧入した酸素で酸化燃焼し安定した性状のガスで排気するガス処理装置と、水冷により冷却水に溶解した金属を冷却水の中和処理で沈澱させ回収、中和処理後の水を回収し再利用する水処理装置とにより、金属を回収し使用した水を回収再利用する手段を設けたことを特徴とする金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置。
【請求項6】
前記熱分解装置では、熱分解による吸収熱量を金属混合プラスチック廃棄物の中のプラスチックを圧入した酸素で酸化燃焼させた熱量とガラス融解液の組成物質が燃焼ガスに反応し発生する熱量で補給し、この補給熱量の変動をガラス融解液の量による保有熱量で調整しながら熱分解をおこない、熱分解に際しガラス融解液の液温が下降する時は廃プラスチックを投入し、プラスチックの燃焼熱量と燃焼ガスに反応するガラス融解液の組成物質の反応熱により液温を上昇させ、ガラス融解液の液温が上昇する時はガラス粉末を投入し、ガラス粉末の昇温吸収熱量で液温を下降させることにより、安定した液温のガラス融解液で熱分解することを特徴とする請求項5記載の金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置。
【請求項7】
前記沈澱金属回収装置および溶解金属回収装置のうち、沈澱金属回収装置では熱分解装置のガラス融解液底部に沈澱する金属をガラス融解液とともに熱分解装置の底部から排出し回収、溶解金属回収装置ではガラス融解液に溶解する金属を直流電極に析出させ電極の陽極と陰極を切換え電極から剥離し、熱分解装置底部からガラス融解液ととも排出し回収する手段を設けたことを特徴とする請求項5記載の金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置。
【請求項8】
前記ガス処理装置と水処理装置のうち、ガス処理装置では熱分解ガスを連結した複数の冷却槽で水冷し固化した金属を回収しながら、熱分解ガスに含まれる活性物質を圧入した酸素で酸化燃焼させ安定した性状のガスで排気する。水処理装置では水冷により冷却水に溶解した金属を冷却水の中和処理で沈澱させ回収、中和処理後の水を回収し再利用することを特徴とする請求項5記載の金属混合プラスチック廃棄物を熱分解し金属を回収する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189700(P2010−189700A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34733(P2009−34733)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(308038174)
【Fターム(参考)】