説明

金属添加大豆粉を基にした食用粉末及びその調整方法

【課題】金属が添加され、動物に給餌するための大豆粉を基にした食用粉末および粉末の調製方法を提供する。
【解決手段】大豆粉と、1種または複数のアミノ酸金属錯体を含有する少なくとも1つの化合物とをそれぞれが含む粒子から成る粉末であり、その調整方法は、a)少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属とを含む水溶液を調製するステップと、b)大豆粉粒子の流動床を作製するステップと、c)ステップa)で調製した溶液を大豆粉粒子の流動床上で粉末化するステップと、d)得られた粉末を回収するステップと、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属が添加され、動物に給餌するための大豆粉を基にした食用粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、1種または複数の金属を含む補助食品を動物に与えるにあたり、大豆粉粒子と、グリシン酸金属のような鉱物添加剤の粒子との混合物を食餌摂取量に加える。この混合物はウォーム歯車混合装置を使用して簡単に製造される。
【0003】
しかしながら、鉱物添加剤の粒度および密度は大豆粉のそれらとは異なっているため、最終製品の均質性は不十分であり、これは、特に、グリシン酸銅のような鉱物添加剤が大豆粉の色に対しコントラストを成すときには裸眼でも確認することができる。
【0004】
さらに、得られた混合物は安定性を欠き、一般的に粒子分離を生じさせる。
【0005】
また、大豆粉の統計的(statistique)混合物と金属含有化合物とで構成される市販の製品は通常きわめて粉末化しやすく、したがって取り扱いが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許第2833187号
【特許文献2】国際公開第03/049850号(特表2005−518372)
【特許文献3】仏国特許第2843752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は前出の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、大豆粉と、1種または複数のアミノ酸金属錯体を含有する少なくとも1種の化合物とをそれぞれが同時に含む粒子から成るという特徴を有する粉末によって達成される。
【0009】
そのような粉末は「非統計的」でありすなわち完全に均質であり、埃がなく(英語ではダストフリー)、安定であり、構成粒子がほぼ同じ特性(金属率、窒素率、色、多孔率等)を有していることから、既知の製品と比べ真に進化したものとなっている。
【0010】
本発明はまた、
a)少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属とを含む水溶液を調製するステップと、
b)大豆粉粒子の流動床を作製するステップと、
c)ステップa)で調製した溶液を大豆粉粒子の流動床上で粉末化するステップと、
d)得られた粉末を回収するステップと
を含む、本発明による粉末の調製方法にも関する。
【0011】
この方法により満足のゆく粉末が得られるだけでなく、この方法は実施が容易である。
【0012】
さらにこの方法により大豆粉粒子間の凝集がおき、驚くことに、この方法により粒度分布が変化し、粒度分布がより均質になり、より高い値に移動する。
【0013】
以下、本発明のその他の特徴および長所を、添付の図面を参照して行う以下の説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】最初の大豆粉の粒子のサイズの分布を示す図である。
【図2】銅を添加した本発明による粉末の粒子のサイズの分布を示す図である。
【図3】鉄を添加した本発明による粉末の粒子のサイズの分布を示す図である。
【図4】亜鉛を添加した本発明による粉末の粒子のサイズの分布を示す図である。
【図5】マンガンを添加した本発明による粉末の粒子のサイズの分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による粉末は、大豆粉と、少なくとも1種のアミノ酸金属錯体を含有する粒子を含む。
【0016】
「大豆粉」はここでは、通常または遺伝子組換えの任意の大豆粉を意味する。
【0017】
アミノ酸金属錯体は好ましくは、大豆粉の粒子間の凝集を可能にすること、および、好ましくは動物の体が吸収可能な形態の金属を供給することという2つの機能を有する。
【0018】
アミノ酸金属錯体の例としてはグリシン金属錯体を挙げることができる。ここで問題となっているグリシンは、公式には2アミノエタン酸と呼ばれているアミノ酸である。
【0019】
金属は通常、亜鉛、銅、鉄またはマンガンである。
【0020】
グリシン金属錯体はよく知られており、特に特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。
【0021】
グリシンと、硫酸銅五水和物、硫酸亜鉛一水和物、硫酸鉄七水和物または硫酸マンガン一水和物とから得られる錯体を特に挙げることができる。
【0022】
好ましくは、本発明による粉末は、
− 粉末の合計重量に対して9重量%から11重量%の間の金属と、
− 粉末の合計重量に対して5重量%から11重量%の間の窒素と
を含む。
【0023】
一般的に、本発明による粒子のうちの80%が40μmから510μmの間に含まれるサイズを有し、90%以上が510μm未満のサイズを有する。
【0024】
本発明による粉末は、上で主なステップa)からd)を説明した本発明による方法によって調製することができる。
【0025】
ステップa)では、水溶液を調製するために、水、少なくとも1種のアミノ酸、および少なくとも1種の硫酸金属塩を混合することができる。すると、適切なモル比にて溶解させたアミノ酸および硫酸金属塩は水溶性のアミノ酸金属錯体を形成する。
【0026】
ステップb)では、好ましくは、通常80度から200度の間に含まれる温度を有する空気流を使用して、例えば50m/hから200m/hの間に含まれる流量にて、既知の方法により流動床が作製される。
【0027】
ステップc)では、ステップa)において調製した水溶液を、40度から80度の温度で加熱してから粉末化するのが望ましい。
【0028】
この百分率は、金属の種類、金属が固定または結合される化合物の性質、最終製品の粒子が目標とする最終金属含有量、および溶液の温度に応じて決定される。
【0029】
粉末化溶液の流量は、例えば20g/minから100g/minの間である。
【0030】
粉末化ノズル内の水溶液の圧力は通常、1バールから4バールの間である。
【0031】
得られた粉末の粒子が小さ過ぎる場合、最終製品が求める粒度を有するように、これら粒子を機械に再投入することによりリサイクルすることができる。
【0032】
通常ハロゲンまたは赤外線乾燥により測定する、本発明による方法によって得られる粉末の水分率は、通常4%から15%の間、特に6%から12%の間である。
【0033】
本発明による方法は連続的または断続的に実施することができる。
【0034】
本方法は、連続的に実施される場合には、好ましくは
a’)少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属とを含む水溶液を調製するステップと、
b’)それに大豆粉粒子を加えるステップと、
c’)ガス流束、特に例えば80度から200度の間に含まれる温度および50m/hから200m/hの流量を有する空気流をつくるステップと、
d’)ステップb’)の終了時に得られた懸濁液をガス流束内で例えば20g/minから100g/minの間の流量にて粉末化するステップと、
e’)得られた粉末を回収するステップと
を含む。
【0035】
本発明による連続的または断続的な方法のステップa)またはa’)では、グリシンのような少なくとも1種のアミノ酸と、少なくとも1種の金属源を連続的に存在させることにより1種または複数のアミノ酸金属錯体を含む化合物を形成することができ、その結果、少なくとも1種のアミノ酸金属錯体が形成される。
【0036】
好ましくは、ステップa)またはa’)の水溶液において、アミノ酸の濃度と金属の濃度との合計は20重量%から60重量%の間に含まれる。
【0037】
例えば、少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の硫酸金属塩とを水中で混合させることができる。
【0038】
出発物質として、窒素含有率が8.5重量%の大豆粉を使用する。
【0039】
この粉末の粒子サイズの分布は2μmから300μmまでと比較的広い。この分布を図1に示し、その特徴的な値は以下の通りである:
− 粒子のうちの10%は7.4μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの50%は18.0μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの90%は74.4μm未満のサイズを有する
【0040】
その結果、粒子のうちの80%は7.4μmから74μmの間に含まれるサイズを有する。
【実施例1】
【0041】
銅の添加
58.5重量%の水、9.5重量%のグリシン、および32.0重量%の硫酸銅五水和物を含む水溶液を調製する。
【0042】
次に、この水溶液を45℃で加熱する。
【0043】
次に、Procell 5 Glatt(登録商標)という名称の機器を使用して、45℃の温度および60m/hの流量を有する空気により大豆粉粒子流動床を作製し、1200kgの大豆粉上で1960gの前記水溶液を粉末化する。
【0044】
水溶液の粉末化流量は33g/minであり、ノズルの圧力は1.5バールである。
【0045】
得られた粒子は、Mettler Toledo社(スイス)のHR73型ハロゲン乾燥器内で乾燥され、ホリバ社(フランス)の「レーザ回析/散乱式粒子径分布測定装置(LSPSD)LA950」と呼ばれる機器を使用して粒子の粒度分布を測定する。
【0046】
図2に示す粒度分布が得られる。その特徴的な値は以下の通りである:
− 粒子のうちの10%は49.4μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの50%は112.5μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの90%は214.7μm未満のサイズを有する
【0047】
その結果、粒子のうちの80%は49.4μmから214.7μmの間に含まれるサイズを有する。
【0048】
したがって、得られた粉末の粒子サイズの分布は出発時の大豆粉のそれよりも均質である。分布の頂点はより大きなサイズの側に移動している。
【0049】
その結果、出発時の大豆粉の粒子と比較し、
− 最小粒子のうちの10%はそのサイズが500%以上増加したこと
− 最小粒子のうちの50%はそのサイズが500%以上増加したこと
− 最小粒子のうちの90%はそのサイズが200%程度増加したこと
が確認された。
【0050】
UFAG研究所(スルセー、スイス)によって測定された銅の比率および窒素の比率は、それぞれ8.9重量%、7.2重量%である。
【0051】
同じくハロゲン乾燥で測定した粉末の水分率は6.6重量%である。
【実施例2】
【0052】
鉄の添加
53.4重量%の水、9.7重量%のグリシン、および36.9重量%の硫酸鉄七水和物を含む水溶液を調製する。次に、実施例1と同様に、1000kgの大豆粉上で、2500gの調製済水溶液を粉末化する。
【0053】
図3に示す粒度分布が得られる。その特徴的な値は以下の通りである:
− 粒子のうちの10%は120.8μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの50%は269.0μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの90%は503.7μm未満のサイズを有する
【0054】
その結果、粒子のうちの80%は120.8μmから503.7μmの間に含まれるサイズを有する。
【0055】
したがって、得られた粉末の粒子サイズの分布は出発時の大豆粉のそれよりも均質である。分布の頂点はより大きなサイズの側に移動している。
【0056】
その結果、出発時の大豆粉の粒子と比較し、
− 最小粒子のうちの10%はそのサイズが1500%以上増加したこと
− 最小粒子のうちの50%はそのサイズが1400%程度増加したこと
− 最小粒子のうちの90%はそのサイズが600%程度増加したこと
が確認された。
【0057】
実施例1のようにして測定された鉄および窒素の比率は、それぞれ10.6重量%、6.5重量%である。
【0058】
実施例1のようにして測定された水分率は10.4重量%である。
【実施例3】
【0059】
Znの添加
68.0重量%の水、9.5重量%のグリシン、および22.5重量%の硫酸亜鉛一水和物を含む水溶液を調製する。
【0060】
次に、実施例1と同様に、1000kgの大豆粉上で、2000gの調製済水溶液を粉末化する。
【0061】
図4に示す粒度分布が得られる。その特徴的な値は以下の通りである:
− 粒子のうちの10%は114.0μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの50%は240.5μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの90%は468.3μm未満のサイズを有する
【0062】
その結果、粒子のうちの80%は114.8μmから468.3μmの間に含まれるサイズを有する。
【0063】
したがって、得られた粉末の粒子サイズの分布は出発時の大豆粉のそれよりも均質である。分布の頂点はより大きなサイズの側に移動している。
【0064】
その結果、出発時の大豆粉の粒子と比較し、
− 最小粒子のうちの10%はそのサイズが1400%以上増加したこと
− 最小粒子のうちの50%はそのサイズが1200%程度増加したこと
− 最小粒子のうちの90%はそのサイズが500%以上増加したこと
が確認された。
【0065】
実施例1のようにして測定された亜鉛および窒素の比率は、それぞれ11.8重量%、6.8重量%である。
【0066】
実施例1のようにして測定された粉末の水分率は6.4重量%である。
【実施例4】
【0067】
Mnの添加
68.0重量%の水、9.6重量%のグリシン、および22.4重量%の硫酸亜鉛一水和物を含む水溶液を調製する。
【0068】
次に、実施例1と同様に、1000kgの大豆粉上で、2500gの調製済水溶液を粉末化する。
【0069】
図5に示す粒度分布が得られる。その特徴的な値は以下の通りである:
− 粒子のうちの10%は110.5μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの50%は217.9μm未満のサイズを有する
− 粒子のうちの90%は390.3μm未満のサイズを有する
【0070】
その結果、粒子のうちの80%は110.5μmから390.3μmの間に含まれるサイズを有する。
【0071】
したがって、得られた粉末の粒子サイズの分布は出発時の大豆粉のそれよりも均質である。分布の頂点はより大きなサイズの側に移動している。
【0072】
その結果、出発時の大豆粉の粒子と比較し、
− 最小粒子のうちの10%はそのサイズが1400%程度増加したこと
− 最小粒子のうちの50%はそのサイズが1100%以上増加したこと
− 最小粒子のうちの90%はそのサイズが400%以上増加したこと
が確認された。
【0073】
実施例1のようにして測定されたマンガンおよび窒素の比率は、それぞれ10.1重量%、7.1重量%である。
【0074】
実施例1のようにして測定された粉末の水分率は7.5重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆粉と、1種または複数のアミノ酸金属錯体を含有する少なくとも1つの化合物とをそれぞれが含む粒子から成る粉末。
【請求項2】
アミノ酸がグリシンであり、金属が金属硫酸塩に由来する請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
金属が、亜鉛、銅、鉄、マンガンで構成される群の中から選択される請求項1から2のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項4】
粉末の合計質量に対して9重量%から11重量%の間の金属を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
粉末の合計質量に対して5重量%から11重量%の間の窒素を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
粒子のうちの少なくとも80%が40μmから510μmの間に含まれるサイズを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
a)少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属とを含む水溶液を調製するステップと、
b)大豆粉粒子の流動床を作製するステップと、
c)ステップa)で調製した溶液を大豆粉粒子の流動床上で粉末化するステップと、
d)得られた粉末を回収するステップと
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の粉末の調製方法。
【請求項8】
a’)少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属とを含む水溶液を調製するステップと、
b’)それに大豆粉粒子を加えるステップと、
c’)ガス流束を作製するステップと、
d’)ステップb’)の終了時に得られた懸濁液をガス流束内で粉末化するステップと、
e’)得られた粉末を回収するステップと
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の粉末の調製方法。
【請求項9】
ステップa)またはa’)において、少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属とを含む水溶液の調製が、少なくとも1種のアミノ酸と少なくとも1種の金属硫酸とを水中に混合することにより行われる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)またはa’)の水溶液において、アミノ酸の濃度と金属の濃度との合計は20重量%から60重量%の間に含まれる、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップc)またはd’)において、ステップa)またはa’)において調製した水溶液を、40度から80度の温度で加熱してから粉末化する、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)において、大豆粉粒子の流動床が80度から200度の間に含まれる温度を有する空気流を用いて作製される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
ステップc’)において、ガス流束が80度から200度の間に含まれる温度を有する空気流である、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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