説明

金属測定用蛍光プローブ

【課題】試料中に微量に含まれる金属を、高価な装置を使用することなく、簡便かつ正確に測定を行うことが出来るようにするための金属測定用蛍光プローブを提供する。持に、複数の金属を同時に測定することが出来る金属測定用蛍光プローブを提供する。
【解決手段】本発明は、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなる金属測定用蛍光プローブであって、当該配位部位が非環状でありかつ8座以上の配位部位である金属測定用蛍光プローブである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の金属の測定に用いることができる金属測定用蛍光プローブに関するものである。
本発明は、分析化学などの化学分野、又は臨床検査などの生命科学分野において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中に微量に含まれる金属の測定には、原子吸光分析装置が繁用されてきたが、この原子吸光分析装置は大変高価であり、またその設置に広いスペースを必要とし、配管や換気装置が必要なものであった。
また、ICP発光分析装置は、試料中の複数の金属を同時に測定することができるものであるが、これは非常に高価なものであり、そしてやはりその設置に広いスペースを必要とし、配管や換気装置が必要なものであった。
【0003】
更に、キャピラリー電気泳動により複数の金属を分離して、紫外吸収を測定すること等により試料中に含まれていた複数の金属を同時に測定する方法が知られている。
この方法は高価な装置を使用せずに測定を行える方法であるが、しかしこのキャピラリー電気泳動による方法においては、試料中の多くの共存化学物質もまた紫外光を吸収するため、多くの場合、測定を妨害することが知られている。
また、上記吸光検出法では、蛍光検出法に比べ感度が著しく低いことが一般に知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、試料中に微量に含まれる金属を、高価な装置を使用することなく、簡便かつ正確に測定を行うことが出来るようにするための金属測定用蛍光プローブを提供することにあり、特に、複数の金属を同時に測定することが出来る金属測定用蛍光プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明よりなる。
(1) 「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなる金属測定用蛍光プローブであって、当該配位部位が非環状でありかつ8座以上の配位部位である金属測定用蛍光プローブ。
(2) 配位部位が非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位である、前記(1)記載の金属測定用蛍光プローブ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属測定用蛍光プローブにより、試料中に微量に含まれる金属を、高価な装置を使用することなく、簡便、正確かつ高感度に測定を行うことが出来るようになった。
そして、本発明の金属測定用蛍光プローブにより、試料中に含まれる複数の金属を同時に測定することも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
1.金属
本発明の金属測定用蛍光プローブを用いて測定を行う金属は、試料中における存在の有無又はその濃度を測定しようとする金属である。
この金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属又はその他の金属を挙げることができる。
【0008】
より具体的には、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はフランシウムを挙げることができる。
【0009】
また、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム又はラジウムを挙げることができる。
【0010】
そして、遷移金属としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルビジウム、ラドン、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金等を挙げることができる。
【0011】
更に、その他の金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、水銀、タリウム、鉛、ビスマス又はポロニウム等を挙げることができる。
【0012】
2.試料
本発明の金属測定用蛍光プローブを用いて金属の測定を行う試料は、前記の金属を含む可能性がある試料であって、これを測定しようとするものである。
金属は単体、イオン及び化合物等の種々の形態を取り、また遊離又はキャリアー(担体)に結合した状態等で存在し、そして様々な物に含まれて存在しているが、本発明の金属測定用蛍光プローブを用いて測定を行う試料中の金属は特に限定されるものではなく、直接又は処理を行うことにより測定することが可能なものであれば対象となる。
【0013】
本発明の金属測定用蛍光プローブは、金属を簡便、正確、かつ高感度に測定できることを特徴とするものであるので、生体試料、食肉、野菜、穀物、果物、水産物、加工食品、飲料、飲料水、井戸水、河川水、湖沼水、海水、土壌、空気、又は医薬品等の微量の金属が含まれる可能性がある試料に含まれる金属の測定に特に有効なものである。
【0014】
例えば、生体試料としては、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、大便、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水、脳等の臓器、毛髪や皮膚や爪や筋肉若しくは神経等の組織及び細胞等を挙げることができる。
【0015】
本発明の金属測定用蛍光プローブを用いて行う試料中の金属の測定においては、金属測定用蛍光プローブと混合し、接触させる試料は液体であることが好ましい。
もし、金属を含む試料が液体でない場合には、抽出処理又は可溶化処理等の前処理を公知の方法に従って行ない、金属を液体中に含有させるようにしてもよい。
【0016】
3.金属測定用蛍光プローブ
本発明の金属測定用蛍光プローブは、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなる金属測定用蛍光プローブであって、当該配位部位が非環状でありかつ8座以上の配位部位であるものである。
なお、この金属測定用蛍光プローブにおける配位部位は、測定しようとする試料中の金属と接触することにより、この金属と配位結合し、錯体を形成することができるものであって、そして当該配位部位が非環状でありかつ8座以上の配位部位であれば、特に制限なく用いることができる。
【0017】
この配位部位は、8座以上であることにより、8座未満のものよりも、より広い範囲の金属の測定を行うことができたり、8座未満のものでは測定することが出来ない金属を測定することが出来る。
【0018】
例えば、配位部位が非環状でありかつ6座の配位部位である金属測定用蛍光プローブである、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン四酢酸〔FTC−ABEDTA〕(構造式を[化1]に示す)を、後述のようにゲル電気泳動法に適用して、銅、亜鉛、マンガン、ニッケル、コバルト、鉛、又はカドミウムの各イオンをそれぞれ含む各々の試料の中の金属を測定しようとした場合、これらの7種類のいずれの金属においても、この金属測定用蛍光プローブFTC−ABEDTAと前記金属イオンとの錯体のバンドは得られなかった。
【0019】
【化1】

【0020】
これは、6座の配位部位よりなるFTC−ABEDTAでは、金属との錯体の安定性が小さく安定ではなく、ゲル電気泳動法に適用した場合、前記錯体が解離してしまい、錯体のバンドが検出されなかったものと推測される。
【0021】
また、この配位部位は、その構造が非環状であることにより、環状のものよりも、やはり、より広い範囲の金属の測定を行うことができたり、環状のものでは測定することが出来ない金属を測定することが出来る。
【0022】
例えば、後述のように、配位部位が非環状でありかつ8座の配位部位である金属測定用蛍光プローブである、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)に適用して、種々の金属イオンを含む試料中の金属を測定しようとした場合、配位部位が環状でありかつ8座の配位部位である金属測定用蛍光プローブである、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕(構造式を[化2]に示す)では測定することが出来なかった、カドミウム、及び鉛を測定することが出来た。
【0023】
【化2】

【0024】
なお、本発明の金属測定用蛍光プローブの配位部位、すなわち配位部位が非環状でありかつ8座以上の配位部位であるものとしては、例えば、非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位よりなるもの等を挙げることができる。
【0025】
より具体的には、この非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位よりなるものとしては、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)、又はN−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′′,N′′′−五酢酸等を挙げることができる。
なお、これらの配位部位は、いずれも、5つのカルボキシル基の酸素原子及び3つの窒素原子により8座のものである。
【0026】
この配位部位としては、特に、ジエチレントリアミン五酢酸、又はN−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′′,N′′′−五酢酸が好ましい。
【0027】
本発明の金属測定用蛍光プローブは、その蛍光団により、蛍光を測定することができる。
なお、この金属測定用蛍光プローブにおける蛍光団は、可視部又は紫外部の励起光を照射することにより、蛍光を放出するものであれば、特に制限なく用いることができる。
この蛍光団としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナトなどのフルオレセイン類縁体、キニーネ、ローダミンB、アクリジンオレンジ、クマリン、又はPOPOP等を挙げることができる。
この蛍光団としては、特に、フルオレセイン、又はフルオレセイン類縁体が好ましい。
【0028】
従来、配位部位と蛍光団を結合させた「配位部位−蛍光団」は、この蛍光プローブが金属と錯体を形成しても、常磁性消光又は重原子効果等の理由により消光してしまうという問題があった。
【0029】
しかしながら、本発明の金属測定用蛍光プローブは、配位部位と蛍光団をスペーサーを介して結合させ、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造としたものであるが、このように配位部位と蛍光団との間にスペーサーを存在させることにより、この金属測定用蛍光プローブが試料中に含まれる金属と蛍光性金属錯体を形成したときに消光してしまうのを抑制することができ、高いレベルの蛍光を安定して得ることができる。
【0030】
このスペーサーとしては、例えば、「−NH−C(=S)−NH−C−CH−」、「−NH−C(=S)−NH−」、「−C(=O)−NH−」、アルキル基やフェニル基などの炭化水素基、又はこれらの誘導体等を挙げることができる。
このスペーサーとしては、特に、「−NH−C(=S)−NH−C−CH−」が好ましい。
【0031】
本発明の金属測定用蛍光プローブとしては、特に、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕(構造式を[化3]に示す)、又はN−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′′,N′′′−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕(構造式を[化4]に示す)が好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
4.金属測定用蛍光プローブの調製方法
本発明の金属測定用蛍光プローブは、前記の「配位部位」、「スペーサー」及び「蛍光団」を、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造となるように結合させて調製すれば良い。
【0035】
この調製の方法は、特に制限はなく、公知の方法等により行えば良い。
例えば、前記のFTC−ABDTPAの調製方法としては、2−(4−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸溶液にマレイン酸、フルオレセインイソチオシアナート アイソマーI溶液、及び超純水を加え、暗所で放置した後、1−ブタノールで抽出し、さらに1−ペンタノールで抽出し、そして塩酸で再結晶し、乾燥することによりFTC−ABDTPAを取得する方法等を挙げることができる。
【0036】
また、前記のFTC−CHX−A”−DTPAの調製方法としては、[(R)−2−アミノ−3−(4−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−五酢酸溶液にマレイン酸、5−アミノフルオレセイン、及び超純水を加え、暗所で放置することによりFTC−CHX−A”−DTPAを取得する方法等を挙げることができる。
【0037】
5.金属測定用蛍光プローブを用いた試料中の金属の測定
本発明の金属測定用蛍光プローブを使用することにより、試料中に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定することができる。また、試料中に含まれる複数の金属を同時に測定することもできる。
【0038】
この試料中の金属の測定は、試料と本発明の金属測定用蛍光プローブを混合し、接触させることにより、試料に含まれる金属と金属測定用蛍光プローブとの蛍光性金属錯体を形成させ、そして、この蛍光性金属錯体と遊離の金属測定用蛍光プローブ、及び/又は複数種類の金属よりなる蛍光性金属錯体同士を区別できるようにするか又は分離等して、更に、この蛍光性金属錯体の蛍光を測定することによって、試料中の金属の有無、更にはそれらの濃度について測定を行うことができる。
【0039】
前記の蛍光性金属錯体と遊離の金属測定用蛍光プローブ、及び/又は複数種類の金属よりなる蛍光団金属錯体同士を区別できるようにするか又は分離等する方法は、特に制限はない。
【0040】
前記の区別できるようにするか又は分離等する方法としては、例えば、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、又はキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)等を挙げることができる。
【0041】
以下、ゲル電気泳動法を例に取り、前記の区別できるようにするか又は分離等する方法について、詳細に説明する。
このゲル電気泳動法としては、支持体としてゲルを使用する電気泳動法であれば、特に制限なく用いることができる。
このゲル電気泳動法におけるゲルとしては、例えば、ポリアクリルアミドゲル、又はアガロースゲル等を挙げることができるが、特に、ポリアクリルアミドゲルを用いることが好ましい。
また、このゲル電気泳動法としては、スラブ型(垂直型)、ディスク型、又は水平型等のいずれの種類のゲル電気泳動法をも用いることができる。
そして、このゲル電気泳動法としては、通常のゲル電気泳動法、又はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法のいずれをも用いることができる。
更に、このゲル電気泳動法としては、一次元電気泳動法、又は二次元電気泳動法のいずれをも用いることができる。
なお、このゲル電気泳動法は、濃縮ゲル及び分離ゲルよりなる非連続系ゲルを用いるゲル電気泳動法であっても良い。
【0042】
本発明の金属測定用蛍光プローブを用い、そしてゲル電気泳動法により、試料中の金属の測定を行う方法としては、例えば、下記の(a)〜(c)の工程よりなる方法を挙げることができる。
(a)試料と、本発明の金属測定用蛍光プローブとを混合し、接触させ、この混合液中において前記試料に含まれる金属と前記金属測定用蛍光プローブとの蛍光性金属錯体を形成させる工程。
(b)前記混合液をゲル電気泳動法に適用する工程。
(c)前記ゲル電気泳動法により泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する工程。
【0043】
ところで、前記の工程(b)においては、前記の工程(a)における試料と金属測定用蛍光プローブとの混合液をゲル電気泳動法に適用する。
これは、この混合液をゲルに添加、接触させ、次に通電して、前記の蛍光性金属錯体を泳動させることにより行う。
【0044】
また、前記の工程(c)においては、前記の工程(c)のゲル電気泳動法で泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する。
これは、前記のゲル電気泳動法のゲルに、用いた金属測定用蛍光プローブの蛍光団に適した波長の励起光を照射し、これに対して放出された蛍光を測定することにより行う。
この蛍光の測定は、目視によりゲルの泳動パターン(バンド)の確認を行い定性的に金属を測定しても良いし、又はデンシトメーター若しくは蛍光光度計等により各バンドの蛍光強度を測定して、定量的に金属を測定しても良い。
また、ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラやスキャナー等により取り込んで、コンピュータで解析しても良い。
【0045】
そして、既知の金属、又は既知の濃度の金属を前記の測定方法で測定した際のゲルの泳動パターン(バンド)、更にはその蛍光強度と比較することにより、試料中に含まれていた複数種類の金属について、その有無、更にはそれらの濃度についての測定結果を得ることができる。
【実施例】
【実施例1】
【0046】
〔金属測定用蛍光プローブ(2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕)の調製〕
【0047】
本発明の金属測定用蛍光プローブとして、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を調製した。
【0048】
合成法)
10−1mol dm−3の2−(4−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸溶液25mlに10−1mol dm−3のマレイン酸(pH6.0)を5ml、10−2mol dm−3のフルオレセインイソチオシアナート アイソマーI溶液を2.5ml、さらに超純水を17.5ml加えた。
その後、暗所で6時間放置し、その後、1−ブタノールで抽出し、さらに1−ペンタノールで抽出し、塩酸で再結晶し、乾燥し、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕の粉末を得た。
【0049】
元素分析値)
測定値:C,53.30;H,5.25;N,7.05%.
計算値:C,53.31;H,4.54;N,7.40%(測定値と計算値の誤差0.71%)
【参考例1】
【0050】
〔本発明の金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)を用いてのゲル電気泳動法による試料中の金属イオンの測定〕
本発明の金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)を用いて、ゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った。
【0051】
1.試料
下記の13種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0052】
2.蛍光プローブ含有溶液
実施例1にて調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を、金属測定用蛍光プローブとして用いた。
【0053】
1mMのFTC−ABDTPAを含む水溶液を調製し、蛍光プローブ含有溶液とした。
【0054】
3.ゲル電気泳動用のゲル及び泳動液
(1)濃縮ゲル
ゲル濃度が16.5%T(1.46%C)であり、0.0938Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.8)を含むポリアクリルアミドゲルを調製し、濃縮ゲルとした。
【0055】
(2)分離ゲル
ゲル濃度が30%T(0.8%C)であり、0.166Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH9.3)、0.0853Mグリシンを含むポリアクリルアミドゲルを、分離ゲルとした。
【0056】
(3)泳動液
48mMグリシンを含む6.25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.3)を調製し、これを泳動液とした。
【0057】
4.試料中の金属の測定
(1) 前記1の13種類の試料各々と、前記2の蛍光プローブ含有溶液と、50wt%グリセロール水溶液と、75mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.8)と、純水とを、それぞれ1:1:0.5:1:6.5で混合し、これにより試料と金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0058】
(2) 前記(1)の計13種類の混合液のそれぞれをポリアクリルアミドゲル電気泳動法に適用して、泳動を行った。
なお、このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、一次元・スラブ型であり、濃縮ゲルの下に分離ゲルを配置した非連続系のものである。
この濃縮ゲルとしては前記3の(1)の濃縮ゲルを用い、また、分離ゲルとしては前記3の(2)の分離ゲルを用い、そして、泳動液としては前記3の(3)の泳動液を用いた。
【0059】
具体的には、まず前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽にセットした。
次に、計13種類の前記(1)の混合液のそれぞれの0.5μLを、前記の濃縮ゲルに添加し、接触させた。
そして、電流20mA(一定)、電圧680−1150Vで、180分間通電した。
この通電により、前記の蛍光性金属錯体は濃縮ゲル中で濃縮され、その後分離ゲルに移動し、分離ゲル中を泳動した。
【0060】
(3) 前記(2)の通電を終了した後、前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽から取り外した。
次に、この濃縮ゲル及び分離ゲルを乾燥させた。
【0061】
乾燥後、この濃縮ゲル及び分離ゲルを、紫外線照射装置の上に置き、波長470nmの励起光を照射した。
これにより放出された蛍光による濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラで撮影した。
この濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、図1に示した。
なお、この図1の泳動パターン(バンド)において、「Blank」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Ca」は前記のカルシウム含有試料のバンドを示し、同様に、「Mg」は前記のマグネシウム含有試料の、「Al」は前記のアルミニウム含有試料の、「Fe」は前記の鉄含有試料の、「Cu」は前記の銅含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「Co」は前記のコバルト含有試料の、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Cd」は前記のカドミウム含有試料の、「Hg」は前記の水銀含有試料の、そして「Pb」は前記の鉛含有試料のバンドを示す。
【0062】
5.測定結果
図1の濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)から、本発明の金属測定用蛍光プローブを用いることにより、試料中に含まれる金属に応じたバンドが得られることが分かる。
このことより、本発明の金属測定用蛍光プローブを用いることによって、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
【実施例2】
【0063】
〔金属測定用蛍光プローブ(N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′′,N′′′−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕)の調製〕
【0064】
本発明の金属測定用蛍光プローブとして、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′′,N′′′−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を調製した。
【0065】
合成法)
10−1mol dm−3の[(R)−2−アミノ−3−(4−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−五酢酸溶液25mlに10−1mol dm−3のマレイン酸(pH6.0)を5ml、10−2mol dm−3の5−アミノフルオレセイン溶液を2.5ml、さらに超純水を17.5ml加えた。
その後、暗所で6時間放置し、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′′,N′′′−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を得た。
【参考例2】
【0066】
〔本発明の金属測定用蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)を用いてのゲル電気泳動法による試料中の金属イオンの測定〕
本発明の金属測定用蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)を用いて、ゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った。
【0067】
1.試料
下記の14種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)12種類の金属含有試料
0.1mMの鉛イオン、0.1mMの水銀イオン、0.1mMのカドミウムイオン、0.1mMのマンガンイオン、0.1mMのコバルトイオン、0.1mMのニッケルイオン、0.1mMの亜鉛イオン、0.1mMの銅イオン、0.1mMの鉄イオン、0.1mMのアルミニウムイオン、0.1mMのマグネシウムイオン、及び0.1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(14)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0068】
2.蛍光プローブ含有溶液
実施例2にて調製したN−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′′,N′′′−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を、金属測定用蛍光プローブとして用いた。
【0069】
1mMのFTC−CHX−A”−DTPAを含む水溶液を調製し、蛍光プローブ含有溶液とした。
【0070】
3.ゲル電気泳動用のゲル及び泳動液
(1)濃縮ゲル
ゲル濃度が16.5%T(1.46%C)であり、0.0938Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.8)を含むポリアクリルアミドゲルを調製し、濃縮ゲルとした。
【0071】
(2)分離ゲル
ゲル濃度が30%T(0.8%C)であり、0.166Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH9.3)、0.0853Mグリシンを含むポリアクリルアミドゲルを、分離ゲルとした。
【0072】
(3)泳動液
48mMグリシンを含む6.25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.3)を調製し、これを泳動液とした。
【0073】
4.試料中の金属の測定
(1) 前記1の14種類の試料各々と、前記2の蛍光プローブ含有溶液と、50wt%グリセロール水溶液と、75mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.8)と、純水とを、それぞれ1:1:0.5:1:6.5で混合し、これにより試料と金属測定用蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と金属測定用蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0074】
(2) 前記(1)の計14種類の混合液のそれぞれをポリアクリルアミドゲル電気泳動法に適用して、泳動を行った。
なお、このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、一次元・スラブ型であり、濃縮ゲルの下に分離ゲルを配置した非連続系のものである。
この濃縮ゲルとしては前記3の(1)の濃縮ゲルを用い、また、分離ゲルとしては前記3の(2)の分離ゲルを用い、そして、泳動液としては前記3の(3)の泳動液を用いた。
【0075】
具体的には、まず前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽にセットした。
次に、計14種類の前記(1)の混合液のそれぞれの0.5μLを、前記の濃縮ゲルに添加し、接触させた。
そして、電流20mA(一定)、電圧680−1150Vで、180分間通電した。
この通電により、前記の蛍光性金属錯体は濃縮ゲル中で濃縮され、その後分離ゲルに移動し、分離ゲル中を泳動した。
【0076】
(3) 前記(2)の通電を終了した後、前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽から取り外した。
次に、この濃縮ゲル及び分離ゲルを乾燥させた。
【0077】
乾燥後、この濃縮ゲル及び分離ゲルを、紫外線照射装置の上に置き、波長470nmの励起光を照射した。
これにより放出された蛍光による濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラで撮影した。
この濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、図2に示した。
なお、この図2の泳動パターン(バンド)において、「L」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Metal*12」は前記の12種類の金属含有試料のバンドを示す。
そして、「Pb」は前記の鉛含有試料のバンドを示し、同様に、「Hg」は前記の水銀含有試料の、「Cd」は前記のカドミウム含有試料の、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Co」は前記のコバルト含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Cu」は前記の銅含有試料の、「Fe」は前記の鉄含有試料の、「Al」は前記のアルミニウム含有試料の、「Mg」は前記のマグネシウム含有試料の、そして「Ca」は前記のカルシウム含有試料のバンドを示す。
【0078】
5.測定結果
図2の濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)から、本発明の金属測定用蛍光プローブを用いることにより、試料中に含まれる金属に応じたバンドが得られることが分かる。
このことからも、本発明の金属測定用蛍光プローブを用いることによって、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
【参考例3】
【0079】
〔本発明の金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)、従来の金属測定用蛍光フローブ(FTC−ABDOTA)を用いてのキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法による試料中の金属イオンの測定〕
本発明の金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)、又は従来の金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDOTA)を用いて、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属の測定を行った。
【0080】
1.試料
下記の13種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0081】
2.蛍光プローブ含有溶液
(1)FTC−ABDTPA含有溶液
実施例1にて調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を、金属測定用蛍光プローブとして用いた。
【0082】
1mMのFTC−ABDTPAを含む水溶液を調製し、FTC−ABDTPA含有溶液とした。
【0083】
(2)FTC−ABDOTA含有溶液
2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕を、金属測定用蛍光プローブとして用いた。
【0084】
1mMのFTC−ABDOTAを含む水溶液を調製し、FTC−ABDOTA含有溶液とした。
【0085】
3.キャピラリー電気泳動用の泳動液
0.05wt%のポリブレン、及び1mMの1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)を含む50mMリン酸−ホウ酸緩衝液(pH10.09)を調製し、これを泳動液とした。
【0086】
4.試料中の金属の測定
(1) 前記1の13種類の試料各々と、前記2の(1)のFTC−ABDTPA含有溶液と、100mMホウ酸緩衝液(pH10.0)と、純水とを、それぞれ0.001:0.05:2:8で混合し、これにより試料と金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と金属測定用蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0087】
(2) 前記(1)の計13種類の混合液のそれぞれを、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)に適用して、泳動及び測定を行った。
なお、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)における高電圧電源は松定プレシジョンのHCZE−30Pを、レーザー装置はSpectra−Physics社製ArレーザーシステムModel263Dを、レーザー誘起蛍光検出器はPicometrics社製ZETALIFを使用した。
Arレーザー(励起波長488nm)の出力は8.0mWとした。
また、キャピラリー電気泳動の印加電圧は20kV一定とした。
キャピラリーチューブは、ジーエルサイエンス社製の内径0.05mm、全長60cm、及び有効長47cmの溶融シリカキャピラリーを使用した。
【0088】
(3) このFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した結果を、図3に示した。
なお、この図において、「L2」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Cd」は前記のカドミウム含有試料のピークを示し、同様に、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Pb」は前記の鉛含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「Co」は前記のコバルト含有試料のピークを示す。
そして、この図において、横軸は移動時間(分)を表し、縦軸は測定により得られた蛍光強度を表す。
【0089】
(4) また、蛍光プローブ含有溶液として前記2の(1)のFTC−ABDTPAに代えて、前記2の(2)のFTC−ABDOTA含有溶液を用いる他は、前記(1)及び(2)の通りに泳動及び測定を行った。
このFTC−ABDOTAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した結果を、図4に示した。
なお、この図において、「L3」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Ca2+」は前記のカルシウム含有試料のピークを示し、同様に、「Mn2+」は前記のマンガン含有試料の、「Mg2+」は前記のマグネシウム含有試料の、「Zn2+」は前記の亜鉛含有試料の、「Co2+」は前記のコバルト含有試料の、「Cu2+」は前記の銅含有試料の、「Ni2+」は前記のニッケル含有試料のピークを示す。
そして、「■」は未確定なピークを示す。
なお、この図において、横軸は移動時間(分)を表し、縦軸は測定により得られた蛍光強度を表す。
【0090】
5.測定結果
図3より、金属測定用蛍光プローブとして、本発明の金属測定用蛍光プローブであるFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した場合には、試料中のカドミウム、鉛、マンガン、亜鉛、ニッケル及びコバルトの各イオンを測定することが出来たことが分かる。
【0091】
このことより、本発明の金属測定用蛍光プローブを用いることによって、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)においても、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
【0092】
なお、図4より金属測定用蛍光プローブとして、従来の金属測定用蛍光プローブであるFTC−ABDOTAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した場合には、試料中のカルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルの各イオンを測定することが出来たことが分かる。
【0093】
このことから、本発明の金属測定用蛍光プローブであるFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した場合には、従来の金属測定用蛍光プローブであるFTC−ABDOTAを用いた場合には測定することが出来なかった、試料中のカドミウムイオン、及び鉛イオンをそれぞれ測定できることが確かめられた。
【0094】
なお、カドミウムイオン、及び鉛イオンそれぞれの測定は、生体における中毒等の診断や治療のために重要であり、このことからも本発明の金属測定用蛍光プローブの有用性が確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の金属測定用蛍光プローブとしてFTC−ABDTPAを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った際の泳動を行った濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を示した図である。
【図2】本発明の金属測定用蛍光プローブとしてFTC−CHX−A”−DTPAを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った際の泳動を行った濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を示した図である。
【図3】本発明の金属測定用蛍光プローブとしてFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属の測定を行った際の結果を示した図である。
【図4】
金属測定用蛍光プローブとして従来のFTC−ABDOTAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属の測定を行った際の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなる金属測定用蛍光プローブであって、当該配位部位が非環状でありかつ8座以上の配位部位である金属測定用蛍光プローブ。
【請求項2】
配位部位が非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位である、請求項1記載の金属測定用蛍光プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−150650(P2009−150650A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212480(P2007−212480)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:北海道支部2007年冬季研究発表会実行委員会、刊行物名:北海道支部2007年冬季研究発表会講演要旨集、発行年月日:2007年1月20日 研究集会名:北海道支部2007年冬季研究発表会、主催者名:日本分析化学会北海道支部、日本化学会北海道支部、日本エネルギー学会北海道支部及び触媒学会北海道地区、開催日:2007年2月6日及び7日 研究集会名:国立大学法人北見工業大学 平成18年度 化学システム工学科・卒業論文発表会、主催者名:国立大学法人北見工業大学、開催日:平成19年2月9日
【出願人】(000131474)株式会社シノテスト (28)
【Fターム(参考)】