説明

金属界面上の金属のスカッフィングおよび焼付きを減らすための連続可変変速機用炭化水素組成物

CVT流体中の部分ストック代替物としてのPIBのような炭化水素組成物は、金属間界面におけるスカッフィングおよび焼付き性能を向上させる。本発明は、連続可変変速機を潤滑させるのに適切な調合物および方法を提供し、これは、以下を含有する:(a)潤滑粘性のあるオイル;(b)イソブチレン重合体であって、このイソブチレン重合体は、少なくとも0.5重量パーセントの量で存在している;および(c)アルキル化ナフタレンまたはアルキル化ベンゼンであって、このアルキル化ナフタレンまたはアルキル化ベンゼンは、少なくとも0.1重量パーセントの量で存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続可変変速機を潤滑させる方法およびそのための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
連続可変変速機(CVT)は、従来の自動変速機と全く懸け離れている。CVTの「プッシュベルト」型は、Hub Van Doorne博士が発明し、その導入以来、多くの自動車が、このプッシュベルトCVT系を備えている。CVTプッシュベルトは、オランダのTilburgにあるVan Doorne’Transmissie BVにより、製造されている。このような変速機およびその中で使用されるベルトおよび潤滑剤のさらに詳細な説明は、特許文献1(これは、1997年1月15日に公開された)だけでなく、本明細書中で引用した参考文献で見られる。要約すると、この種の変速機の操作では、ベルトおよび滑車系が重要である。この滑車系は、V形断面の一対の滑車を含み、各々は、可動綱車、固定綱車および油圧シリンダからなっている。これらの滑車間では、ベルトが延びており、これらは、金属バンドで共に保持された一組の金属要素からなっている。操作中、駆動車は、このベルトを従車に押し、それにより、動力が入力側から出力側へと移動する。その伝達駆動比は、このベルトが、その滑車面に低くまたは高く載るように、この可動綱車を開けるか閉めることにより、制御される。この操作様式により、その入力軸および出力軸との間のギア比の連続的に調整することが可能となる。
【0003】
CVTが商業的に使用されていることから、CVTで使用される流体は、うまく操作するために、その機械的な設計と同様に重要であることが明らかとなっている。その潤滑剤は、以下のいくつかの機能を満たさなければならない:その金属ベルトを、その滑車アセンブリ、遊星歯車および他の歯車、湿式板クラッチおよびベアリングとの接点で潤滑させること;この変速機を冷却すること;および油圧信号および動力を運ぶこと。その油圧は、ベルトの張力、伝達比およびクラッチ接合を制御する。この潤滑剤は、一方では、滑りの問題を避けるために、他方では、これらの金属面を、ピッチング、スカッフィング、スクラッチング、フレーキング、ポリッシングおよび他の摩耗形態から保護している間中ずっと、結合を避けるために、適当な程度の摩擦を与えなければならない。従って、この流体は、適当な程度の摩耗安定性を示すと同時に、金属間接触に対して、比較的に高い摩擦係数を維持するべきである。
【0004】
特許文献2(Tipton、1988年3月29日)は、自動変速機油に適当な潤滑剤混合物を開示しており、これは、非芳香族モノオレフィンの単独重合体、または該非芳香族モノオレフィンと芳香族モノオレフィンとの共重合体、窒素含有エステル、油溶性アクリレート重合生成物、および潤滑粘性のあるオイルを含有する。他の典型的な成分は、含有され得る。
【0005】
特許文献3(Sumiejski、1998年6月2日)は、潤滑剤および作動液(例えば、自動変速機油)用の耐摩耗性向上組成物を開示している。それは、ホウ素含有オーバーベース化物質、リン含有酸、エステルまたはそれらの誘導体、およびホウ酸塩化エポキシドまたはグリセロールのホウ酸塩化脂肪酸エステルを含有する。
【0006】
特許文献4(1988年12月20日、Schwindら)は、手動変速機油に適当な潤滑剤混合物を開示しており、これは、ボロン酸塩化オーバーベース化アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、摩擦調整剤または摩擦調整剤混合物(例えば、脂肪酸アミドおよびホウ酸塩誘導体)、および潤滑粘性のあるオイルを含有する。他の典型的な成分が、含有され得る。
【特許文献1】欧州特許出願第753,564号明細書
【特許文献2】米国特許第4,734,446号明細書
【特許文献3】米国特許第5,759,964号明細書
【特許文献4】米国特許第4,792,410号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、CVT潤滑剤に、アルキル化芳香族炭化水素、イソブチレン重合体、および必要に応じて、オレフィン共重合体の組み合わせを含有させることにより、金属間のスカッフィングまたは焼付きに対する耐性を向上させた適当なCVT流体を提供することによって、連続可変変速機における金属間のスカッフィングまたは焼付きの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の組成物は、工業用途において、また、自動車のエンジン、変速機および車軸において、潤滑油およびグリースとして、使用できる。これらの組成物は、種々の用途で有効であり、それらには、火花点火および圧縮点火内燃機関(自動車およびトラックのエンジン、2サイクルエンジン、航空機のピストンエンジン、船場区および低負荷ディーゼルエンジンなどを含めて)用のクランク室潤滑油が挙げられる。それらにはまた、トラクション油用の添加剤として、有用である。また、自動変速機油、手動変速機油、トランスアクスル潤滑剤、ギア潤滑剤、金属加工潤滑剤、油圧作動液、ならびに他の潤滑油およびグリース組成物は、本発明の組成物を組み入れることにより、恩恵を受け得る。本発明の作動液は、自動変速機油(特に、連続可変変速機(プッシュベルト型およびトロイダルトラクションドライブ変速機を含めて)用の流体)として、特に有効である。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、連続可変変速機を潤滑させるのに適当な調合物および方法を提供し、これは、以下を含有する:
(a)潤滑粘性のあるオイル;
(b)イソブチレン重合体であって、該イソブチレン重合体は、少なくとも0.5重量パーセントの量で存在している;および
(c)アルキル化ナフタレンまたはアルキル化ベンゼンであって、該アルキル化ナフタレンまたはアルキル化ベンゼンは、少なくとも0.1重量パーセントの量で存在している。
【0010】
本発明は、さらに、連続可変変速機を潤滑させる方法を提供し、該方法は、該変速機に、前記調合物を与える工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施態様は、非限定的な例示として、以下で記述する。
【0012】
(潤滑粘性のあるオイル)
本発明の第一成分は、潤滑粘性のあるオイルであり、これは、一般に、主要量(すなわち、50重量%より多い量)で存在している。一般に、この潤滑粘性のあるオイルは、この組成物の80重量%より多い量、典型的には、少なくとも85重量%、好ましくは、90〜95重量%で存在している。このようなオイルは、種々の原料から誘導でき、これには、天然および合成潤滑油およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0013】
本発明の潤滑剤および作動液を製造する際に有用な天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)だけでなく、鉱物性潤滑油(例えば、液状の石油オイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合したパラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油;これらは、水素化分解プロセスおよび水素化仕上げプロセスにより、さらに精製され、脱ろうされ得る)が挙げられる。有用な天然基油は、American Petroleum Institute(API)により第I族、第II族または第III族オイルとして指定されたものであり得る。第I族オイルは、90%未満の飽和物および/または0.03%より多いイオウを含有し、80以上の粘度指数(VI)を有する。第II族オイルは、90%以上の飽和物および0.03%以下のイオウを含有し、80以上のVIを有する。第III族は、120以上のVIを有すること以外は、第II族と類似している。
【0014】
時には、高度に精製した天然油または水素化分解した天然油は、「合成」油と呼ばれている。しかしながら、さらに一般的には、合成の潤滑油には、例えば、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびそれらの混合物);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化されたポリフェニルなど);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィドおよびその誘導体、それらの類似物および同族体などが挙げられることが分かっている。ポリアルファオレフィン油はまた、API第IV族オイルと呼ばれている。
【0015】
アルキレンオキシド重合体およびインターポリマーおよびそれらの誘導体(この誘導体では、その末端水酸基は、エステル化、エーテル化などにより修飾されている)は、公知の種類の合成潤滑油を構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により調製されるオイル、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、500〜1,000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、1,000〜1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、またはそれらのモノ−およびポリカルボン酸エステル(例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合したC3〜8脂肪酸エステルまたはC13オキソ酸ジエステル)により例示される。
【0016】
他の適当な種類の合成潤滑油には、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルが挙げられる。これらエステルの特定の例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルとの反応により形成される複合エステルが挙げられる。
【0017】
合成油として有用なエステルには、C〜C12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエーテル(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)とから製造されるエステルも挙げられる。
【0018】
シリコンベースのオイル(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサンオイルおよびシリケートオイル)は、合成潤滑剤の他の有用なクラスを構成する(例えば、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−第三級ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサンなど)。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液状エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、デカンホスホン酸のジエチルエステルなど)、および重合したテトラヒドロフランが挙げられる。
【0019】
他の種類のオイルは、トラクション油として公知であり、これらは、典型的には、大部分が高度に分枝した構造または環状脂肪族構造(すなわち、シクロヘキシル環)を含む合成流体である。トラクション油またはトラクション流体は、例えば、米国特許第3,411,369号および第4,704,490号で、詳細に記載されている。
【0020】
未精製油、精製油および再精製油(これは、上で開示のタイプの天然油または合成油のいずれか、およびこれらのいずれかの2種またはそれ以上の混合物である)は、本発明の潤滑剤中で用いられ得る。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるオイルである。例えば、レトルト操作から直接得られるけつ岩油、第1段の蒸留から直接得られる石油オイル、またはエステル化工程から直接得られ、かつさらに処理せずに用いられるエステル油は、未精製油である。精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。このような精製方法の多くは、当業者には周知である。この方法には、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などがある。再精製油は、すでに使用された精製油に、精製油を得るのに用いた工程と類似の工程を適用することにより、得られる。このような再精製油もまた、再生された油または再生加工された油として周知であり、そして消費された添加剤および油の分解生成物を除去するべく指示された方法により、しばしばさらに処理される。
【0021】
1実施態様では、この潤滑粘性のあるオイルは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。典型的には、このポリアルファオレフィンは、約4個〜約40個の炭素原子、または約4個〜約20個の炭素原子、または約6個〜約16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例には、デセンから誘導したものが挙げられる。これらのPAOは、2〜150の粘度を有し得る。ポリ−α−オレフィンの例には、1−デセンのオリゴマーが挙げられる。これらの合成基油は、水素化されて、酸化に対して安定なオイルが得られる。これらの合成油は、単一粘度範囲または高粘度範囲と低粘度範囲との混合物(この混合物が以下で述べた要件に一致した粘度を生じる限り)を含み得る。また、好ましい基油としては、高度に水素化分解または脱ろうしたオイルがある。これらの石油オイルは、一般に、高い低温粘度および抗酸化性能を与えるために、精製される。精製した鉱油との合成油の混合物もまた、使用され得る。
【0022】
(イソブチレン重合体)
本発明の第二成分は、イソブチレン重合体であり、これは、典型的には、この潤滑剤組成物に溶解性である。このイソブチレン重合体は、主として、イソブチレンに由来の繰り返し単位を含み、そして完全に調合した潤滑剤中にて、少なくとも0.5重量パーセント、典型的には、1〜10重量パーセントの量で存在しており、典型的には、500〜3000の数平均分子量を有する。1実施態様では、このイソブチレン重合体は、この潤滑剤組成物中にて、2つの成分画分として、存在している。第一画分は、1.0〜6.0重量パーセントの量で存在しており、そして250〜1600の数平均分子量を有し、第二画分は、0.5〜2.0重量パーセントの量で存在しており、そして1600〜3000の数平均分子量を有する。別の実施態様では、第一画分は、2.0〜5.0重量パーセントの量で存在しており、そして750〜1200の数平均分子量を有し、第二画分は、1.0〜1.25重量パーセントの量で存在しており、そして1750〜2500の数平均分子量を有する。
【0023】
このイソブチレン重合体は、この潤滑剤組成物中にて、全体として、また、特に、溶媒(下記)中にて、溶解されて使用される特定の濃度で溶液中に残るために、十分な溶解性を示すべきである。本明細書全体を通じて呼ばれる「可溶な」、「溶解性」、「溶液」などの用語は、理論的な概念ではなく、実用的な概念を意味すると解釈される。一定の条件下にて、重合体または他の物質の見かけの溶液が真の溶液であるか非常に細かい安定な乳濁液または分散液であるかは、議論の余地があり得る。このような状態の全ては、本明細書中では、溶解性の概念に包含されると解釈される。それゆえ、当該の溶液とは、商業的に合理的な時間(例えば、数ヶ月)にわたって、通常、成分の著しい分離または沈降が起こらない状態である。
【0024】
(アルキル化芳香族炭化水素)
本発明の第三成分は、アルキル化芳香族炭化水素であり、これは、アルキルベンゼンまたはアルキル化ナフタレンまたはそれらの組み合わせを含む。1実施態様では、アルキル化芳香族炭化水素の量は、この潤滑剤組成物中にて、少なくとも0.1重量パーセント、好ましくは、0.25〜10重量パーセント、さらに好ましくは、0.5〜4重量パーセントの量で存在している。
【0025】
(アルキル化ナフタレン)
1実施態様では、このアルキル化芳香族炭化水素は、アルキル化ナフタレンを含み、これには、アルキル化ナフタレン、カップリングおよび架橋ナフタレン、オリゴマーおよび脱ハロゲン化水素化ワックスのような生成物の混合物を挙げることができる。その重量平均分子量(M)は、最終生成物の有効な特徴である。適当なM範囲は、300〜20,000、または300〜10,000である。1実施態様では,Mは、300〜6,000、または400〜2000である。1実施態様では,アルキル化ナフタレンの量は、この潤滑剤組成物中にて、4重量パーセント;別の実施態様では、0.5〜2.5重量パーセント、または1.0〜2.0重量パーセントの量で存在している。
【0026】
このアルキル化ナフタレンは、次式であり得る:
【0027】
【化1】

ここで、R、R、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ、水素原子、または1個〜20個の炭素原子を有する脂肪族基であるが、但し、R、R、RおよびRの炭素原子の全数は、6個〜60個、好ましくは、15個〜50個の範囲内である。好ましくは、R、R、RおよびRの炭素原子の全数は、40個以下、最も好ましくは、30個以下である。
【0028】
、R、RおよびRで表わされる好ましい脂肪族基には、アルキル基およびアルケニル基が挙げられる。1個〜20個の炭素原子を含有するアルキル基には、メチル、エチル、プロピルの異性体、ブチルの異性体、ペンチルの異性体、ヘキシルの異性体、オクチルの異性体、ノニルの異性体、デシルの異性体、ウンデシルの異性体、ドデシルの異性体、トリデシルの異性体、テトラデシルの異性体、ペンタデシルの異性体、ヘキサデシルの異性体、ヘプタデシルの異性体、オクタデシルの異性体、ノナデシル、およびエイコシルの異性体がある。
【0029】
2個〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基には、ビニル、プロペニルの異性体、ブテニルの異性体、ペンテニルの異性体、ヘキセニルの異性体、へプテニルの異性体、オクテニルの異性体、ノネニルの異性体、デセニルの異性体、ウンデセニルの異性体、ドデセニルの異性体、トリデセニルの異性体、テトラデセニルの異性体、ペンタデセニルの異性体、ヘキサデセニルの異性体、ヘプタデセニルの異性体、オクタデセニルの異性体、ノナデセニルおよびエイコセニルの異性体。
【0030】
アルキル基およびアルケニル基のうちでは、アルキル基が好ましい。R、R、RおよびRの炭素原子の全数は、好ましくは、8個〜60個、特に、12個〜20個、特に、16個〜18個である。アルキル基はまた、塩素化長鎖パラフィンから誘導されたアルキル鎖を含み得る。R、R、RおよびRの全ては、脂肪族基であり得、あるいは、R、R、RおよびRの少なくとも1個は、脂肪族基であり得るのに対して、それらの残りは、水素原子であり得る。R、R、RおよびRの1個〜3個は、脂肪族基であるのに対して、それらの残りは、水素であるのが好ましい。
【0031】
、R、RおよびRのうちの2個が脂肪族基であるとき、R、R、RおよびRの組み合わせは、任意に選択され得る。両方の脂肪族基は、RおよびRがそれぞれ脂肪族基である場合と同じ環に結合され得る。あるいは、単一の脂肪族基は、RおよびRがそれぞれ脂肪族基である場合とは異なる環の各々に結合され得る。
【0032】
この脂肪族置換ナフタレンは、任意の通常の方法により、製造できる。例えば、この脂肪族置換ナフタレンは、1個〜20個の炭素原子を有するアルキル基および2個〜20個の炭素原子を有するオレフィンからなる群から選択されるナフタレン核化合物に結合(または付加反応)させることにより、得ることができる。特に好ましい脂肪族置換ナフタレンは、MCP−917(商標)であり、これは、C14基でアルキル化されたアルキルナフタレンであり、Mobil Chemicalから入手できる。
【0033】
(アルキルベンゼン)
別の実施態様では、このアルキル化芳香族炭化水素は、1種またはそれ以上のアルキルベンゼンを含有できる。このアルキルベンゼンのアルキル基は、典型的には、全体で、8個〜40個の炭素原子、好ましくは、12個〜36個の炭素原子を含有する。このアルキル基は、直鎖または分枝であり得る。アルキルベンゼンは、周知の手順により調製され、その1つには、ルイス酸を利用するフリーデル・クラフツアルキル化がある。1実施態様では、このアルキル化ベンゼンは、この潤滑剤組成物中にて、0〜4重量パーセント、別の実施態様では、0.5〜3.5重量パーセント、または1.0〜2.5または〜2.0重量パーセントの量で存在している。
【0034】
このアルキルベンゼンは、望ましくは、100〜500、さらに望ましくは、200〜350、好ましくは、200〜300の分子量を有する。望ましくは、このアルキルベンゼンは、40℃で、1〜15mm/s(cSt)、さらに望ましくは、40℃で、3〜10、好ましくは、3〜7mm/s(cSt)の粘度を有する。望ましくは、このアルキルベンゼンの少なくとも50mole%、さらに望ましくは、少なくとも75、好ましくは、少なくとも85mole%は、モノアルキル置換されている。望ましくは、該アルキルベンゼンのアルキル基の少なくとも50mole%、さらに望ましくは、少なくとも75、好ましくは、少なくとも85mole%は、アルキル骨格から伸長している2個またはそれ以上のメチルおよび/またはエチル分枝を有する。これらのアルキルベンゼンは、アルキル化反応からの反応生成物であるので、望ましくは、このアルキルベンゼンの少なくとも50または60%、さらに望ましくは、少なくとも75%、好ましくは、少なくとも85%は、ベンゼンに結合されたアルキル基において、5個〜40個、さらに望ましくは、7個〜30個、好ましくは、8個〜16個の全炭素原子を有する。
【0035】
ある種の物質としてのアルキルベンゼンはまた、広く変わり、これらには、非常に低い粘度から比較的に高い粘度までのモノおよびポリアルキル官能化ベンゼンが挙げられる。
【0036】
(共重合体)
この潤滑剤組成物1実施態様では、このイソブチレン共重合体以外のオレフィン共重合体が存在しており、これは、典型的には、エチレン/プロピレン共重合体である。1実施態様では、このエチレン/プロピレン共重合体は、0.25〜2.0重量パーセント;別の実施態様では、0.5〜1.25重量パーセント、および1.0〜1.20重量パーセントの量で存在している。
【0037】
エチレン−プロピレン共重合体(これは、一般に、OCP’sと呼ばれる)は、一般に、溶媒中にて、公知の触媒(例えば、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒)を使用して、エチレンとプロピレンとを共重合することにより、調製できる。この重合体中のエチレンとプロピレンとの比は、生成物の油溶性、油増粘性能、低温粘度、流動点低下能、および性能に影響を影響を与える。エチレン含量の一般的な範囲は、40〜60重量%、典型的には、45〜55重量%である。いくつかの市販のOCP’sには、エチレン、プロピレンおよび少量の非共役ジエン(例えば、1,4−ヘキサジエンまたはエチリデンノルボルネン(ENB))の三元共重合体がある。ゴム工業において、このような三元共重合体は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンモノマー)と呼ばれている。
【0038】
(種々雑多な事柄)
本発明の組成物には、前記の必要な成分または仕様と適合するという条件で、他の物質が含有できる。このような任意の物質には、分散剤(時には、「無灰分散剤」と呼ばれる)が挙げられ、これは、オイルを含まない基準で、10重量パーセントまでの量で、含有され得る。分散剤の例には、カルボン酸分散剤(これは、カルボン酸アシル化剤と、窒素含有またはヒドロキシ含有化合物との反応生成物であり得る)、アミン分散剤、マンニッヒ分散剤、後処理分散剤、および重合体分散剤が挙げられる。他の任意の物質には、酸化防止剤が挙げられ、これには、ヒンダードフェノール酸化防止剤、第二級芳香族アミン酸化防止剤、硫化フェノール酸化防止剤、油溶性銅化合物、リン含有酸化防止剤、有機スルフィド、ジスルフィド、およびポリスルフィドが挙げられる。他の任意の成分には、シール膨潤組成物(例えば、イソデシルスルホラン)が挙げられ、これらは、シールを柔軟に保つように設計されている。また、流動点降下剤(例えば、ポリメタクリレート、酢酸ビニル/フマレートまたは/マレエート共重合体、およびスチレン/マレエート共重合体)も、許容できる。これらの任意の物質は、当業者に公知であり、一般に、市販されており、そして公開されたヨーロッパ特許出願761,805で、さらに詳細に記載されている。また、腐食防止剤、染料、流動化剤および消泡剤も、含有できる。
【0039】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、通常の意味で同義に使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、これらの用語のいずれかは、分子の残部に直接結合した炭素原子を有しそして炭化水素的性質または主として炭化水素的な性質を有する基を意味する。このような基には、以下が挙げられる:炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、および芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基。ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(例えば、2個の置換基は、一緒になって、環を形成する);置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基。この非炭化水素基は、本発明の文脈では、主として、置換基の炭化水素滴性質を変化させない(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈内では、主として炭化水素的性質を有しながら、環または鎖の中に存在する炭素以外の原子を有するが、その他は炭素原子で構成されている基。ヘテロ原子には、イオウ、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、2個以下の非炭化水素置換基、好ましくは、1個以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的には、このヒドロカルビル基には、このような非炭化水素置換基は存在しない。
【0040】
上記物質のいくつかは、最終調合物と相互作用し得、その結果、この最終調合物の成分は、最初に添加したものとは異なり得ることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤のもの)は、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動できる。それにより形成された生成物は、本発明の組成物をその目的用途で使用すると形成される生成物を含めて、簡単には記述し得ない。それにもかかわらず、このような変性および反応生成物の全ては、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記成分を混合することにより調製される組成物を包含する。
【実施例】
【0041】
API第2族水素化処理基油中にて、以下の添加剤成分を含有するベース調合物を調製するが、量は、重量パーセントで表わしている:
7.5%の粘度調整剤(約28%の希釈油を含めて)、0.1%の流動点降下剤、3.5%のスクシンイミド分散剤(約42%の希釈油を含めて)、1.14%の酸化防止剤、0.88%の清浄剤(約45%の希釈油を含めて)、0.6%のシール膨潤剤、0.3%の耐摩耗剤、0.24%の摩擦調整剤、および少量の他の通常の成分。
【0042】
このベース調合物に、以下の表で示した量の成分を加える。
【0043】
【表1】

表1は、100℃での動粘度および焼付きまでの分間を報告している。焼付きまでの分間は、the Element on Ring Seizure試験(これは、the Lubrizol Corporationにより、開発された)により、測定する。標準的なFalex Block−on−Ring Test Apparatusを使用する。その試験設備は、標準的な試験ブロックに組み込まれたCVT部品からなる。このブロックの2つの半分を、ブロックの別のボルトで共に保持する。この試験の構成は、標準的なF−25061−V Timkenリングの表面に接して装填された試験設備からなる。この試験は、これらの部品を試験潤滑剤で潤滑させつつ、1200rpmの速度で、225ポンドの負荷と共に、100℃で、2時間実行する。この試験の主要な測定値は、焼付きまでの分間である。
【0044】
これらの結果から、本発明の範囲内の調合物が、この試験により、良好な結果を示すことが明らかとなる。
【0045】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用できる。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続可変変速機を潤滑させる方法であって、該方法は、該連続可変変速機に、以下を含有する潤滑剤を供給する工程を包含する:
(a)潤滑粘性のあるオイル;
(b)イソブチレン重合体であって、該イソブチレン重合体は、少なくとも0.5重量パーセントの量で存在している;および
(c)アルキル化ナフタレンまたはアルキル化ベンゼンまたはそれらの組み合わせであって、該アルキル化ナフタレンまたはアルキル化ベンゼンまたはそれらの組み合わせは、少なくとも0.1重量パーセントの量で存在している、
方法。
【請求項2】
前記アルキル化ベンゼンが、0〜約4重量パーセントの量で存在している、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキル化ナフタレンが、約0.5〜約4重量パーセントの量で存在している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑剤が、さらに、(b)の前記イソブチレン共重合体以外のオレフィン共重合体を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィン共重合体が、エチレン/プロピレン共重合体である、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィン共重合体が、約0.25〜約2重量パーセントの量で存在している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イソブチレン重合体が、ポリイソブチレンであり、該ポリイソブチレンが、約1〜約10重量パーセントの量で存在しており、そして約500〜約3000の数平均分子量のポリイソブチレンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記イソブチレン重合体が、以下のポリイソブチレンの混合物を含有する、請求項7に記載の方法:
約1.0〜6.0重量パーセントの約250〜約1600の数平均分子量の重合体、および
約0.5〜2.0重量パーセントの約1600〜約3000の数平均分子量の重合体。
【請求項9】
連続可変変速機を潤滑させるのに適切な組成物であって、該組成物は、以下を含有する:
(a)潤滑粘性のあるオイル;
(b)約0.5〜約4重量パーセントのアルキル化ナフタレン;
(c)0〜約4.0重量パーセントのアルキルベンゼン;
(d)約0.25〜約2.0重量パーセントのオレフィン共重合体;
(e)約1〜約10重量パーセントの約500〜約3000の数平均分子量のイソブチレン重合体。

【公表番号】特表2008−502787(P2008−502787A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527377(P2007−527377)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/017258
【国際公開番号】WO2006/001941
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】