金属疲労試験機及び該金属疲労試験機を用いた金属疲労試験方法


【課題】低速度で金属疲労試験を行い、かつ、制御応答性を向上した金属疲労試験機及び該金属疲労試験機を用いた金属疲労試験方法を提供する。
【解決手段】ステッピングモータ4が固着され、金属疲労試験用試験片1の一端を把持する第1カップリング2Bが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸4aの軸線S−Sに一致させて該回転軸4aに設置され、該金属疲労試験用試験片1の他端を把持する第2カップリング2Aが、その軸線を該ステッピングモータ4に備えられた回転軸4aの軸線S−Sに一致させて設置された金属疲労試験機及び該金属疲労試験機を用いた金属疲労試験方法である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属疲労試験機及び該金属疲労試験機を用いた金属疲労試験方法であって、例えば、材料の金属疲労試験に関するものである。
【背景技術】
【0002】
はんだは、可塑性(あるいは、熱可塑性)を有する導電性接着材料として、一般的に認知されている。また、近年では、鉛フリーはんだ材料として、各種の合金成分が検討されている。例えば、引っ張り強さ及びクリープ特性に優れた鉛フリーはんだ材料が開発されている。
【0003】
実際に使用する際に鉛フリーはんだ材料に必要な強度は、その鉛フリーはんだ材料の使用中に発生する歪み範囲(即ち、振幅)と亀裂発生までの歪み繰り返し数(即ち、疲労寿命)の関係で表される。
【0004】
前記の歪み範囲と歪み繰り返し数の関係に関する規定は、JIS(Japanese Industrial Standard)規格に存在しない。そのため、材料メーカでは、前記の歪み範囲と歪み繰り返し数の関係に関するデータを採取しておらず、ユーザが該データを測定する必要がある。
【0005】
また、ユーザ側では、市販の金属疲労試験機(例えば、電気式曲げ・ねじり疲労試験機,電気制御の油圧式引張・圧縮疲労試験機)を鉛フリーはんだ材料の金属疲労試験に関して適応することが考えられる。
【0006】
しかし、これらの市販の金属疲労試験機は、金属材料(主に構造用金属材料)がターゲットとなっているため、はんだ材料のような低い強度の合金に対する金属疲労試験(例えば、低速度で実施される金属疲労試験)には適していない。そのため、ユーザは、はんだ材料に関する金属疲労試験に、既存の金属疲労試験機を改造したものを使用して、金属疲労試験を行っていた。
【0007】
なお、前記の金属疲労試験に使用される金属疲労試験機には、ステッピングモータを備えた金属疲労試験機も、採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−17093(段落[0024]〜[0026]等)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のような金属疲労試験機は、鉄鋼材料の試験を前提として設計されている。その鉄鋼材料は、室温で実施される試験では試験速度の影響を受け難い、という特徴を有する。その特徴に基いて、前述の金属疲労試験機は、試験時間を短縮するために、高速で試験できるように設計される。
【0009】
しかし、はんだ材料に関する金属疲労試験機は、低速度(例えば、1サイクルが1時間から1日間に相当する速度)で金属疲労試験を行う必要があるため、前述の金属疲労試験機の設計では、はんだ材料に関する金属疲労試験には適さない。
【0010】
また、前述の金属疲労試験機に備えられた荷重検出器の精度は、鉄鋼材料の強度に応じた精度に設計されている。そのため、はんだ材料の強度(例えば、鉄鋼材料より1桁程度弱い強度)に応じた精度で試験を行うことができない。即ち、はんだ材料に関する金属疲労試験では、荷重の検出精度と制御応答性を高めた金属疲労試験機を必要とする。
【0011】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであり、低速度で金属疲労試験を行い、かつ、制御応答性を向上した金属疲労試験機及び該金属疲労試験機を用いた金属疲労試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、試験片の金属疲労を試験する金属疲労試験機であって、ステッピングモータが固着され、前記の試験片の一端を把持する第1カップリングが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸の軸線に一致させて該回転軸に設置され、該試験片の他端を把持する第2カップリングが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸の軸線に一致させて設置された、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、金属疲労試験方法であって、請求項1記載の金属疲労試験機の第1カップリングに試験片の一端を把持させ、さらに、該金属疲労試験機の第2カップリングに該試験片の他端を把持させ、ねじり角を模擬した正弦波に応じたステップ信号を該金属疲労試験機のステッピングモータに与え、該ステッピングモータの回転軸の該ステップ信号に応じた回転によって、ねじり変形を該試験片に対して負荷し、該試験片と該金属疲労試験機間おけるねじりトルクを検出する、ことを特徴とする。
【0014】
前記の請求項1記載の発明によれば、ステッピングモータで金属疲労試験を実施できる。カップリングに対して、ステッピングモータからのねじりを直接伝達できる。
【0015】
前記の請求項2記載の発明によれば、任意のねじり角に対応したねじり変形を試験片に負荷できる。
【発明の効果】
【0016】
以上示したように請求項1記載の発明によれば、金属疲労試験の結果を取得できる。また、金属疲労試験に係る制御応答性を向上できる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、試験片に係るねじりトルクを検出できる。
【0018】
これらを以って金属疲労試験技術の分野に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態における金属疲労試験機及び金属疲労試験方法を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態は、ステッピングモータが固着され、金属疲労試験用試験片の一端を把持する第1カップリングが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸の軸線に一致させて該回転軸に設置され、該金属疲労試験用試験片の他端を把持する第2カップリングが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸の軸線に一致させて設置された金属疲労試験機及び該金属疲労試験機を用いた金属疲労試験方法である。
【0021】
本実施の形態における金属疲労試験用試験片(以下、試験片と称する)の形状を図2に基づいて以下に説明する。なお、図2Aは試験片の正面図である。図2Bは試験片の側面図である。また、図2A及び図2Bにおいて、試験片の重心を通る水平線がH−H線である。
【0022】
一般的な試験片の形状は円柱形状であって、例えば、図2中の試験片1のように、胴が端面から重心に向かって緩やかに細くなるように形成された円柱形状(即ち、中細の円柱形状)である。前記の試験片1の胴(例えば、図2A中のC−C線と試験片1が交差する部)が、金属疲労試験の対象部(即ち、試験部)1cである。
【0023】
前記試験片1の両端には、該試験片1を把持するために、チャック部1a及び1bが形成されている。さらに、チャック部1a及び1bには、より確実に把持できるように滑り止め防止用溝部1dを形成してある。
【0024】
なお、前記の試験片1は、可塑性を有する材料(例えば、はんだ材料)で構成されているものとする。
【0025】
前記の試験片1を用いて金属疲労試験を行う金属疲労試験機の構成を図1に基づいて以下に説明する。なお、図1は、前記の金属疲労試験機の軸方向断面図(S−S線を軸線とする軸方向断面図)である。また、図1中の符号で図2中の符号と同じものの説明は省略する。
【0026】
図1中の金属疲労試験機100は、試験片1に係る金属疲労を負荷するためのステッピングモータ4が金属疲労試験機100の本体(例えば、筐体,フレーム)に固着されている。
【0027】
なお、前記のステッピングモータ4は、減速機を備えている(例えば、内蔵している)ものとする。また、前記の減速機は、次のような特徴を有する。
【0028】
前記の減速機は1ステップ当りの角度を1/1000°以下に設定できる。即ち、試験片1に対して任意のねじり変形を負荷できる。
【0029】
前記の減速機はバックラッシュが極めて小さいため、ねじり角が試験片の剛性によってねじり角設定値より小さくならない。即ち、高精度な歪み制御を行うことができる。
【0030】
また、前記の金属疲労試験機100には、試験片1を把持するカップリング2A及び2Bが、それらの軸線を前記のステッピングモータ4の回転軸4aの軸線S−Sに合わせて配置されている。即ち、この配置で前記の試験片1が前記のカップリング2A及び2Bに各々把持されることによって、ダイレクト・ドライブ構造が形成される。
【0031】
なお、図1中の回転軸4aとカップリング2Bは、固定ねじ5Cによって直結されている。また、図1中のカップリング2Aは、前記の金属疲労試験機100の本体の一部(例えば、図1中の固定部3)に固着されている。
【0032】
より具体的には、前記の試験片1は次のように把持される。
【0033】
前記の試験片1の一端に形成されたチャック部1aは、前記ステッピングモータ4に備えられた回転軸4aに直結されているカップリング2Bの取り付け穴2Baに挿入される。
【0034】
さらに、固定ねじ5Bをカップリング2Bの滑り止め防止用溝部(図2中の符号1dで示される部)にねじ込み、前記の試験片1を締め付けることによって、該試験片1の一端が把持されることになる。なお、図1中では、前記の滑り止め防止用溝部は図示省略されている。
【0035】
また、前記の試験片1の他端に形成されたチャック部1bは、固定部3に固着されたカップリング2Aの取り付け穴2Aaに挿入される。
【0036】
さらに、固定ねじ5Aを該カップリング2Aの滑り止め防止用溝部にねじ込み、前記の試験片1を締め付けることによって、該試験片1の他端が把持されることになる。
【0037】
なお、前記のカップリング2A及び2Bは、例えば、試験片の両端の形状に合わせて交換可能な交換式カップリングとしても良い。例えば、図1における固定ねじ5Cを緩めて、カップリング2Bを回転軸4aから取り外し、他のカップリングの取り付け穴に回転軸4bを挿入し、固定ねじ5cを締めて、他のカップリングを回転軸4aに直結する方式である。
【0038】
本実施の形態における金属疲労試験方法を以下に説明する。なお、以下の説明における図1中の符号で示すものの詳細な説明は省略する。
【0039】
まず、図1中の金属疲労試験機100のカップリング2A及び2Bによって試験片1を把持する。
【0040】
次に、ねじり角を模擬した正弦波に応じたステップ信号を該金属疲労試験機100のステッピングモータ4に与えて、該ステッピングモータ4の回転軸4aの該ステップ信号に応じた回転によって、ねじり変形を該試験片1に対して負荷する。
【0041】
即ち、任意の正弦波を選択することによって、試験片1に対して任意のねじり変形を時間に関係なく負荷できる。
【0042】
そして、ねじりトルクを検出するために、図1中の金属疲労試験機100と試験片1間(例えば、前記のステッピングモータ4と試験片1間、または、前記の固定部3と試験片1間)におけるカップリングのねじり変形をトルク測定用歪みゲージで測定する。
【0043】
例えば、図1中のステッピングモータ4と試験片1間におけるカップリングのねじり変形を測定する場合には、回転軸4a上にトルク測定用ゲージ6を図1で示すように設置し、該ねじり変形を測定する。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、任意の正弦波形で極低速度(例えば、1時間から1日間で、歪みの1サイクルが繰り返される速度)の金属疲労試験を実施することができる。
【0045】
また、試験片のねじり変形量を極めて高い精度で測定できる。
【0046】
さらに、前記の金属疲労試験機を構成する装置(例えば、ステッピングモータや減速機)は一般的な装置であるため、該金属疲労試験機を低コストで製作できる。
【0047】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0048】
例えば、本実施の形態における変形例としては、カップリングと回転軸を一体成形してカップリング付き回転軸を備え、または、カップリングと金属疲労試験機の固定部を一体成形してカップリング付き固定部を備えた金属疲労試験機であっても良い。即ち、異なる径のチャック部を有する試験片を金属疲労試験する際に、カップリング付き回転軸、または、カップリング付き固定部を交換して金属疲労試験を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施の形態における金属疲労試験機の構成図
【図2】金属疲労試験用試験片の概略図
【符号の説明】
【0050】
1…金属疲労試験用試験片
1a,1b…チャック部
1c…試験部
1d…滑り止め防止用溝部
2A,2B…カップリング
2Aa,2Ba…取り付け穴
3…固定部
4…ステッピングモータ
4a…回転軸
5A,5B,5C…固定ねじ
6…トルク測定用ゲージ
100…金属疲労試験機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の金属疲労を試験する金属疲労試験機であって、
ステッピングモータが固着され、
前記の試験片の一端を把持する第1カップリングが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸の軸線に一致させて該回転軸に設置され、
該試験片の他端を把持する第2カップリングが、その軸線を該ステッピングモータに備えられた回転軸の軸線に一致させて設置された、
ことを特徴とする金属疲労試験機。
【請求項2】
請求項1記載の金属疲労試験機の第1カップリングに試験片の一端を把持させ、さらに、該金属疲労試験機の第2カップリングに該試験片の他端を把持させ、
ねじり角を模擬した正弦波に応じたステップ信号を該金属疲労試験機のステッピングモータに与え、該ステッピングモータの回転軸の該ステップ信号に応じた回転によって、ねじり変形を該試験片に対して負荷し、
該試験片と該金属疲労試験機間おけるねじりトルクを検出する、
ことを特徴とする金属疲労試験方法。


【図1】

【図2】


【公開番号】特開2008−139259(P2008−139259A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | ねじりまたは渦巻き特性の試験
【出願番号】特願2006−328325(P2006−328325)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎
【Fターム(参考)】
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 捩り試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 繰返し応力による試験(疲労試験)
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査対象項目 | 強度 | 破壊強度
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査対象項目 | 耐久性、寿命
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、材料 | 金属材料 | 合金
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、形状、構造及び部分、部品 | 柱状、棒状
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 応力
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 歪み
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象の検出手段 | 電気的 | ストレーンゲージ