説明

金属皮膜を積層した樹脂製品及びその製造方法

【課題】炎天下の車内環境等のような高温かつ直射日光に曝される状況であっても、優れた意匠性と視認性を保ち、且つ変形、変色等の変質を起こし難い耐候性を有する樹脂製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】軟質樹脂基材2上に金属皮膜が形成された樹脂製品1において、前記金属皮膜は、前記軟質樹脂基材2上に少なくとも上下二層に形成されており、下層である第1金属皮膜3はスズ、インジウム又は亜鉛のうち少なくともいずれか1つから形成され、上層である第2金属皮膜4はクロムから形成されてなる樹脂製品1と、前記第1金属皮膜3及び第2金属皮膜4を、スパッタリング法によって形成する樹脂製品1の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質樹脂基材上に金属皮膜を積層した樹脂製品、特に自動車等の内外装部品に好適な樹脂製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内外装部品、例えば車両用エンブレムには、金属皮膜を有する樹脂製品が多く使用されている。これらの車両用エンブレムには、優れた意匠性と視認性、及び耐候性が要求される。
さらに車両用エアバックが内蔵されているカバーに使用されるエンブレムは、優れた意匠性と視認性に加え、炎天下など高温かつ直射日光に曝されるような厳しい車内環境におかれるため、変形、変色等の変質を起こしにくいように、通常の車外に用いられるエンブレムに求められる耐候性よりも、さらに高い耐候性が要求されている。
【0003】
また、前記のエアバックのカバーに使用されるエンブレムは、エアバックが作動し急に膨らんだ際の衝撃で破損すると危険なため、その基材には主に軟質樹脂が採用されている。
このような軟質樹脂を基材とするエンブレムとしては、金属皮膜として真空蒸着法あるいはスパッタリング法により、アルミニウム皮膜が形成されたものが市場導入されている。さらには、軟質樹脂基材上に金属皮膜を形成する方法としては、軟質樹脂基材上にアンダーコートを施してから真空蒸着法等によってクロム皮膜を形成させるという方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−36968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の金属皮膜を有する樹脂製品では、軟質樹脂の成形品は柔らかいので、外力が加わり大きく変形した場合には、クロムからなる硬い金属皮膜に、肉眼で視認できる程度の比較的大きなクラックが多数生じるため、金属光沢が失われ易いという問題があった。
さらに炎天下の車内環境では変形、変色等の変質を起こし易く、求められる耐候性を得ることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の問題点を解決すべく、外力により大きく変形した場合でも金属光沢が維持されて、意匠性及び視認性に優れ、また炎天下の車内のような厳しい環境下でも、変形、変色等の変質を起こし難く、耐候性に極めて優れた樹脂製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、開発当初、前記先行技術の問題点を解決すべく、各種金属の単層皮膜の改良に着手した。しかし、単層皮膜ではいかに工夫しても、比較的大きなクラックの発生を抑制しつつ、かつ十分な耐候性を有する樹脂製品を得ることはできなかった。
そこで本発明者らは、軟質樹脂基材上に、硬く耐候性に寄与する半面、比較的大きなクラックが生じ易いクロム皮膜を形成しつつも、そのクロム皮膜を単独で使用するのではなく、軟質樹脂基材とクロム皮膜との間に、緩衝的機能を持つ他の金属層(皮膜)を設けるという新規な着想に至った。さらに、金属層の厚さの最適条件を見出すべく鋭意研究の結果、意匠性及び視認性に優れ、また炎天下の車内のような厳しい環境下でも、変形、変色等の変質を起こし難い本発明の樹脂製品とその製造方法を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、請求項1に記載の通り、軟質樹脂基材上に金属皮膜が形成された樹脂製品において、前記金属皮膜は前記軟質樹脂基材上に少なくとも上下二層に形成されており、下層である第1金属皮膜はスズ、インジウム又は亜鉛のうち少なくともいずれか1つから形成され、上層である第2金属皮膜はクロムから形成されなることを特徴とする樹脂製品である。
【0009】
また、本発明は、請求項2に記載の通り、前記第1金属皮膜及び前記第2金属皮膜はスパッタリング法により形成され、前記第1金属皮膜の厚さは10〜50nmであって、前記第2金属皮膜の厚さは10〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品である。
【0010】
また、本発明は、請求項3に記載の通り、前記軟質樹脂基材は軟質ポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製品である。
【0011】
また、本発明は、請求項4に記載の通り、前記軟質樹脂基材と前記第1金属皮膜との間にポリエステルウレタン樹脂を主成分とするアンダーコート層を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂製品である。
【0012】
また、本発明は、請求項5に記載の通り、前記第2金属皮膜の上にアクリルウレタン樹脂を主成分とするトップコート層を設けたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の樹脂製品である。
【0013】
また、本発明は、請求項6に記載の通り、軟質樹脂基材上に金属皮膜を形成する樹脂製品の製造方法において、前記軟質樹脂基材の上にスパッタリング法によってスズ、インジウム又は亜鉛のうち少なくともいずれか1つからなる第1金属皮膜を形成する工程と、該第1金属皮膜の上にスパッタリング法によってクロムからなる第2金属皮膜を形成する工程を含む樹脂製品の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、請求項7に記載の通り、前記軟質樹脂基材は軟質ポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項6に記載の樹脂製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂製品及びその製造方法によれば、軟質樹脂基材上に金属皮膜が形成された樹脂製品であって、外力が加わって大きく変形した場合でも金属光沢が維持されて、優れた意匠性と視認性を実現し、また、通常の車両用エンブレムなどに求められる耐候性はもちろんのこと、炎天下の車内のような厳しい環境下でも、変形、変色等の変質を起こし難く、耐候性に極めて優れた樹脂製品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に関する樹脂製品の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に関する樹脂製品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態の説明を行うが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
【0018】
本発明の樹脂製品の第1の実施形態を図1に示す。本発明の樹脂製品1は、軟質樹脂基材2、該軟質樹脂基材2上に、第1金属皮膜3と第2金属皮膜4がこの順番で形成されている樹脂製品である。
【0019】
軟質樹脂基材2に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、オレフィン系エラストマー樹脂、スチレン系エラストマー樹脂などあるが、本発明においては、軟質ポリエステル樹脂が好ましい。軟質ポリエステル樹脂は、成形後も柔軟性があり、かつ耐久性が高いので、自動車内外装部品、例えば車両用エンブレムの基材として適しているからである。なお、軟質樹脂基材2の形態としては、特に限定されないが、成形品、板材、シート材、フィルム材などが挙げられる。
【0020】
第1金属皮膜3に用いる金属は、スズ、インジウム、亜鉛のうち少なくともいずれか1つから選ばれる金属である。これらスズ、インジウム、亜鉛は、展延性に優れ、また、これらの金属は皮膜形成時に島状構造の不連続膜を形成し易く、第2金属皮膜4を積層した場合に、第1金属皮膜3が緩衝層の役割を果たすようになり、樹脂製品1に外力が加わり大きく変形した場合にも、第2金属皮膜4には、肉眼で視認できるような比較的大きなクラックが生じ難く、主には、微細なクラックしか生じないため、第2金属皮膜4は、金属光沢を失い難く高い意匠性と視認性を得ることができるものと推察される。
【0021】
また、第1金属皮膜3を形成するスズ、インジウム、亜鉛も光輝性を有することから、たとえ第2金属皮膜4に比較的大きなクラックが発生したとしても、クラックを目立たせないようにできるので、高い意匠性と視認性を保持することができるものと推察される。
【0022】
さらに、樹脂製品1は、第2金属皮膜4に比較的大きなクラックが生じ難いことから、軟質樹脂基材2が外部環境の影響を直接受け難くなり、変形、変色等の変質が生じ難いものと推察される。
【0023】
第1金属皮膜3を形成するために用いられる方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、対向加熱蒸着法、高周波誘導加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法などの一般的な蒸着法があるが、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法によれば、膜厚のコントロールが容易であり、均一かつ収率よく形成できるからである。なお、スパッタリング法には、2極スパッタ、多極スパッタ、高周波スパッタ、マグネトロンスパッタ等があるが、特にこれらの方法を限定するものではない。
【0024】
また、第1金属皮膜3の膜厚は、10〜50nmが好ましい。膜厚が10nm未満だと島状の不連続膜が形成され難いため、緩衝層としての役割を十分に果たすことができない場合があり、第2金属皮膜4に比較的大きなクラックが発生し易い傾向がある。他方、膜厚が50nmを越えると、第1金属皮膜3の展延性が発揮され難くなり、やはり第2金属皮膜4にクラックが発生し易い傾向がある。
【0025】
次に、第2金属皮膜4を形成する金属としてクロムを用いる。クロムは金属光沢が美しく、硬い皮膜を形成できるため傷付き難く、酸化し難く耐食性が高いことから、優れた意匠性と視認性の高さと耐候性を求められる樹脂製品への使用に適しているからである。
【0026】
第2金属皮膜4を形成するために用いられる方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、対向加熱蒸着法、高周波誘導加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法などの一般的な蒸着法があるが、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法によれば、第1金属皮膜3との密着性を高くでき、また膜厚のコントロールが容易であり、均一かつ収率よく形成できるからである。なお、スパッタリング法には、2極スパッタ、多極スパッタ、高周波スパッタ、マグネトロンスパッタ等があるが、特にこれらの方法を限定するものではない。
【0027】
また、第2金属皮膜4の膜厚は、10〜30nmが好ましい。膜厚が10nm未満だと膜厚が薄いため、炎天下などの厳しい条件での耐候性が低下する傾向がある。他方、膜厚が30nmを越えると、クロム本来の硬さによって比較的大きなクラックが発生し易くなる傾向がある。
【0028】
本発明の樹脂製品の第2の実施形態としては、図2に示すように、軟質樹脂基材2、該軟質樹脂基材2上に、アンダーコート層5を設け、該アンダーコート層5の上に、第1金属皮膜3と第2金属皮膜4をこの順番で形成し、該第2金属皮膜4の上にトップコート層6を設けることができる。
【0029】
アンダーコート層5に用いる樹脂としては、一般に塗料形態のものが扱い易く、ポリウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、ポリエステルウレタン樹脂塗料等を用いることができるが、すぐれた柔軟性と強靭性を有するポリエステルウレタン樹脂を主成分とする塗料を用いることが好ましい。
アンダーコート層5を設けると、軟質樹脂基材2の表面の凹凸を平滑化し、軟質樹脂基材2と第1金属皮膜3との密着性を高めることができ、さらに、第1金属皮膜3を効率よく形成できるようになる。
【0030】
前記ポリエステルウレタン樹脂塗料の例としては、主剤である水酸基を2つ以上有するポリエステルポリオールと、硬化剤であるジイソシアネート化合物を反応させて合成されたものを用いることができる。
本発明で用いるポリエステルウレタン樹脂塗料のポリエステルポリオールとしては、下記一般式(1)であらわされるシクロヘキサンジメタノールを両末端に有するものを用いることが好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
また、前記ポリエステルポリオールには、下記一般式(2)で示されるシリコン系からなるレベリング剤を配合することが好ましい。レべリング剤を配合することにより、塗膜表面の表面張力を均一化し、塗膜表面を滑らかにできるからである。また、塗膜の親水性が低下し、これによって樹脂製品の耐候性の向上が図られるからである。
【0033】
【化2】

【0034】
前記レベリング剤は、一般に、前記ポリエステルポリオール100重量部に対して0.01〜2重量部の範囲で配合される。配合量が0.01重量部未満だと塗膜表面を均一にする効果が現れ難く、2重量部を超えると塗膜表面にレベリング剤のブリードアウトが認められる場合がある。
【0035】
前記ポリエステルウレタン樹脂塗料の主剤である上記ポリエステルポリオールには、さらに塗料に一般的に用いられている種々の配合剤を、必要に応じて適宜、慣用量で加えることができる。配合剤の具体例としては、塗料粘度を調整するための稀釈剤ないし増粘剤、顔料ないしは染料等の着色剤、主剤と硬化剤の硬化反応を促進させるための硬化触媒、充填材等である。
【0036】
前記ポリエステルウレタン樹脂塗料の硬化剤であるイソシアネート化合物としては、3官能基以上のヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネート化合物を用いることができる。ここで3官能基以上のヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネート化合物とは、ヘキサメチレンジイソシアネートを出発原料として合成された3官能基以上のイソシアネート化合物である。該イソシアネート化合物が2官能基もしくはそれ以下の場合には、形成される塗膜の架橋密度が低下する傾向がある。
【0037】
前記硬化剤である3官能基以上を有するヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプもしくはイソシアヌレートタイプイソシアネート化合物が挙げられる。
また、一般には、キシリレンジイソシアネートもしくはトリレンジイソシアネートを出発原料とする同様の3官能基以上のイソシアネート化合物も使用可能であるが、これらのイソシアネート化合物を用いた塗膜よりも、前記ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネート化合物を用いた塗膜の方が、耐候性の面で優れている。
【0038】
前記ポリエステルウレタン樹脂塗料は、前記主剤に前記硬化剤を配合して調製されるが、その配合量は、主剤中の水酸基1モルに対して硬化剤中のイソシアネート基が0.8〜1.5モルの範囲とすることが好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、塗料に一般的に用いられている種々の添加剤、例えば、消泡剤、反応促進剤、粘着付与剤などを慣用量加えても良い。なお主剤及び硬化剤の安定性を保つためアルコール類、ケトン類、エステル類、炭化水素類、芳香族炭化水素類などの有機溶剤を適時、単独でも複数でも使用することができる。
【0040】
前記ポリエステルウレタン樹脂塗料によるアンダーコート層5の形成方法としては、該ポリエステルウレタン樹脂塗料を、一般的な種々の方法、例えば、スプレー塗り、浸漬塗り、ローラーコート、静電塗装等の塗布手段で塗布し、適宜の温度条件で硬化処理することによって塗膜を形成することができる。
アンダーコート層5の厚さは5〜30μmが好ましく、さらに10〜18μmが好ましい。5μm未満の場合塗膜が薄いため、第1金属皮膜を形成した際に軟質樹脂基材表面の凹凸が現れて、塗装表面が均一になり難い傾向がある。また、塗膜の厚さが30μmを越えると、金属皮膜の光沢が低下する傾向がある。
【0041】
次にトップコート層6に用いる樹脂としては、一般に塗料形態のものが扱い易く、ポリウレタン樹脂塗料、ポリエステルウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等を用いることができるが、透明性が高いアクリルウレタン樹脂塗料を用いることが好ましい。透明であるから意匠性と視認性を損なうことなく、第2金属皮膜4を外部環境から保護することができるからである。
【0042】
前記アクリルウレタン樹脂塗料の例としては、主剤である水酸基を2つ以上有するアクリルポリオールと、硬化剤であるジイソシアネート化合物を反応させて合成されたものを用いることができる。本発明で用いるアクリルウレタン樹脂塗料では、アクリルポリオールとしては脂肪族、脂環族もしくは芳香族ビニル系モノマーに、水酸基含有アクリル系モノマー、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等を共重合させた樹脂を用いることができる。
【0043】
また、前記アクリルポリオールには、樹脂製品の耐候性を向上させるため、紫外線吸収剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤の例として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0044】
前記紫外線吸収剤は、一般に、前記アクリルポリオール100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の範囲で配合される。配合量が1重量部未満であると耐紫外線の向上効果が十分ではなく、10重量部を超えると塗膜表面に紫外線吸収剤のブリードアウトが認められる場合がある。
【0045】
前記アクリルウレタン樹脂塗料の主剤である上記アクリルポリオールには、さらに塗料に一般的に用いられている種々の配合剤を、必要に応じて適宜、慣用量で主剤中に加えることができる。配合剤の具体例としては、塗料粘度を調整するための稀釈剤ないし増粘剤、顔料ないしは染料等の着色剤、主剤と硬化剤の硬化反応を促進させるための硬化触媒、充填材等である。
【0046】
次に、前記アクリルウレタン樹脂の硬化剤であるイソシアネート化合物としては、一般的なポリウレタン樹脂に用いられるジイソシアネート化合物で良く、例えば、イソシアネート型ポリイソシアネート、ビューレット型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。
【0047】
前記アクリルウレタン樹脂塗料は、前記主剤に対して前記硬化剤を配合して調製されるが、その配合量は、主剤中の水酸基1モルに対して硬化剤中のイソシアネート基が0.8〜1.5モルの範囲とするのが好ましい。
【0048】
また、必要に応じて、塗料に一般的に用いられている種々の添加剤、例えば、消泡剤、反応促進剤、粘着付与剤などを慣用量加えても良い。また、透明性が損なわれない範囲であれば、顔料、染料等の着色剤の添加もなんら差し支えない。なお、主剤及び硬化剤の安定性を保つためアルコール類、ケトン類、エステル類、炭化水素類、芳香族炭化水素類などの有機溶剤を適時、単独でも複数でも使用することができる。
【0049】
前記アクリルウレタン樹脂塗料によるトップコート層6の形成方法としては、該アクリルウレタン樹脂塗料を、一般的な種々の方法、例えば、スプレー塗り、浸漬塗り、ローラーコート、静電塗装等の塗布手段で塗布し、適宜の温度条件で硬化処理することによって塗膜を形成することができる。
トップコート層6の厚さは5〜30μmが好ましく、さらに10〜18μmが好ましい。5μm未満の場合、塗膜の厚さが薄いため、塗膜のムラによって金属光沢の平滑感が低下する傾向があり、他方、30μmを越えると、塗膜が厚いため金属皮膜の光沢感が低下する傾向があるからである。
【実施例】
【0050】
(サンプル1の作成)
第1工程(アンダーコート層5の形成)
軟質樹脂基材表面に塗布するアンダーコート層用のポリエステルウレタン樹脂塗料について、下記表1に示す処方で主剤を、下記表2に示す処方で硬化剤を、下記表3に示す処方で塗布助剤を調製した。
【0051】
【表1】

【0052】
【化3】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【化4】

【0056】
次に、下記表4に示す割合で、主剤、硬化剤及び塗布助剤を混合し、ポリエステルウレタン樹脂を主成分とするアンダーコート層用塗料を得た。
【0057】
【表4】

【0058】
(アンダーコート層5の塗布形成)
上記表4の処方で調整されたアンダーコート層用ポリエステルウレタン樹脂塗料を、スピンドル塗装ラインスプレー塗装装置(旭サナック社製)を用いて、軟質ポリエステル樹脂(曲げ弾性率120±6MPa、結晶融点215±3℃、メルトフローインデックス(2160g)17±1g/10分(230℃))の成形品上に、塗料の吐出量が100g/分、吐出圧0.20MPa、パターン圧0.07MPaの条件でスプレー塗布を行った。塗布後、110℃で30分間乾燥させた。乾燥後、得られた成形品断面の厚さを顕微鏡(キーエンス社製、レーザー顕微鏡VK8700)を用いて測定を行った。アンダーコート層5の厚さは15μmであった。
【0059】
第2工程(金属皮膜の形成)
第1工程で形成したアンダーコート層5を形成した軟質ポリエステル樹脂成形品に、スパッタリング法により、スズからなる第1金属皮膜3を、次にクロムからなる第2金属皮膜4をそれぞれ下記に示す条件にて形成した。なお、金属皮膜の形成にはバッチ式スパッタリング装置(アルバック社製SPV−9045)を用いた。
【0060】
(第1金属皮膜3の形成条件)
ターゲット金属 スズ純度99.99%以上
DC電力 1.5Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

(第2金属皮膜4の形成条件)
ターゲット金属 クロム純度99.8%以上
DC電力 6.0Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

【0061】
形成された第1及び第2金属皮膜の膜厚を蛍光X線分析装置(日本電子社製、JSX−3100R2)を用いて測定した。スズからなる第1金属皮膜の膜厚は20nm、クロムからなる第2金属皮膜層は20nmであった。
【0062】
第3工程(トップコート層6の形成)
第1工程及び第2工程を経た成形品の表面に塗布するトップコート層用アクリルウレタン樹脂塗料について、下記表5に示す処方で主剤を、下記表6で示す処方で硬化剤を、下記表7で示す処方で添加剤を調整した。
【0063】
【表5】

【0064】
前記アクリルポリオールAは、攪拌装置、温度計、コンデンサー、モノマー供給ポンプ、窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、窒素ガス気流下、キシレン100部を加え、90℃に昇温した後、メタクリル酸メチル54部、4−メタクリロイルオキシー1、2、2、6,6−ペンタメチルピペリジン2部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル15部、メタクリル酸2部、メタクリル酸nブチル27部及び、α、α‘−アゾビスイソブチロニトリル1.2部からなる溶液を3時間で等速滴下し、さらに90℃で1時間保持した後、α、α‘−アゾビスイソブチロニトリルを0.2部ずつ30分間隔で3回添加し、さらに90℃で1時間保持した後、酢酸ブチル50部を添加し重合を終了させることによって得られた。なお、アクリルポリオールAの数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで測定した結果、標準ポリエステル換算で11000相当であった。
【0065】
また、前記アクリルポリオールBは、攪拌装置、温度計、コンデンサー、モノマー供給ポンプ、窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、窒素ガス気流下、キシレン100部を加え、90℃に昇温した後、メタクリル酸メチル60部、4−メタクリロイルオキシー1、2、2、6,6−ペンタメチルピペリジン5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル15部、メタクリル酸2部、メタクリル酸nブチル18部及び、α、α‘−アゾビスイソブチロニトリル1.2部からなる溶液を3時間で等速滴下し、さらに90℃で1時間保持した後、α、α‘−アゾビスイソブチロニトリルを0.2部ずつ30分間隔で3回添加し、さらに90℃で1時間保持した後、酢酸ブチル50部を添加し重合を終了させることによって得られた。なお、アクリルポリオールBの数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで測定した結果、標準ポリエステル換算で13000相当であった。
【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

【0068】
沈降防止剤Cは、攪拌装置、温度計、検水管及び窒素導入口を備えた1000mlのフラスコに、ダイマー酸340部とダイマージアミン160部(モル比2:1)を加え、180℃に加温して6時間反応させた。得られたポリアミド500部にジメチルアミノプロピルアミン52部(モル比1:1.7)を加え、180℃に加温して6時間反応を行なった。得られた反応性生物は赤褐色の高粘度液体であった。得られた反応生成物にメチルノルマルアミルケトンとノルマルブタノールの混合溶剤(1:1)を添加し、不揮発分が50%となる様に調整した。なお、反応生成物の数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで測定した結果、標準ポリスチレン換算で1700であった。
【0069】
次に、下記表8で示す処方で主剤、硬化剤及び添加剤を混合して、アクリルウレタン樹脂を主成分とするトップコート層用塗料を得た。
【0070】
【表8】

【0071】
(トップコート層6の塗布形成)
上記表8の処方で調整されたトップコート層用アクリルウレタン樹脂塗料を、スピンドル塗装ラインスプレー塗布装置(旭サナック社製)を用いて、第1工程及び第2工程を経た軟質樹脂基材上に、塗料の吐出量が145g/分、吐出圧0.30MPa、パターン圧0.07MPaの条件でスプレー塗布を行った。塗膜の厚さは15μmになるように調整した。塗布後、110℃で35分間乾燥させた。乾燥後、得られた基材断面の厚さをレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK8700)を用いて測定を行った。トップコート層6の厚さは15μmであった。
【0072】
以上の第1工程から第3工程を経てサンプル1を作成した。
得られたサンプル1の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0073】
(サンプル2の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、スズからなる第1金属皮膜3の膜厚が50nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル2を作成した。
得られたサンプル2の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0074】
(サンプル3の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、クロムからなる第2金属皮膜4の膜厚が30nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル3を作成した。
得られたサンプル3の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0075】
(サンプル4の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、スズからなる第1金属皮膜3の膜厚が10nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル4を作成した。
得られたサンプル4の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0076】
(サンプル5の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、クロムからなる第2金属皮膜4の膜厚が10nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル5を作成した。
得られたサンプル5の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0077】
(サンプル6の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、第1金属皮膜3を形成する金属をスズからインジウムに変え、その膜厚が20nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル6を作成した。その際、インジウムからなる第1金属皮膜3の形成条件は、下記の通りとした。
ターゲット金属 インジウム純度99.99%以上
DC電力 2.5Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

得られたサンプル6の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0078】
(サンプル7の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、第1金属皮膜3を形成する金属をスズから亜鉛に変え、その膜厚が20nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル7を作成した。その際、亜鉛からなる第1金属皮膜3の形成条件は、下記の通りとした。
ターゲット金属 亜鉛純度99.99%以上
DC電力 2.5Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

得られたサンプル7の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0079】
(サンプル8の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、スズからなる第1金属皮膜3の膜厚が55nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル8を作成した。
得られたサンプル8の外観を目視により観察したところ、金属光沢は極めて良好であったが、部分的に比較的大きなクラックの発生が認められた。
【0080】
(サンプル9の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、クロムからなる第2金属皮膜4の膜厚が35nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル9を作成した。
得られたサンプル9の外観を目視により観察したところ、金属光沢は極めて良好であったが、部分的に比較的大きなクラックの発生が認められた。
【0081】
(サンプル10の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、スズからなる第1金属皮膜3の膜厚が5nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル10を作成した。
得られたサンプル10の外観を目視により観察したところ、金属光沢は極めて良好であったが、部分的に比較的大きなクラックの発生が認められた。
【0082】
(サンプル11の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、クロムからなる第2金属皮膜4の膜厚が5nmになるように調整した以外には前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル11を作成した。
得られたサンプル11の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0083】
(サンプル12の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、第1金属皮膜3を形成する金属をスズから鉛に変え、その膜厚が20nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル12を作成した。その際、鉛からなる第1金属皮膜3の形成条件は、下記の通りとした。
ターゲット金属 鉛純度99.99%以上
DC電力 2.5Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

得られたサンプル12の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0084】
(サンプル13の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、第1金属皮膜3を形成する金属をスズからビスマスに変え、その膜厚が20nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル13を作成した。その際、ビスマスからなる第1金属皮膜3の形成条件は、下記の通りとした。
ターゲット金属 ビスマス純度99.99%以上
DC電力 2.5Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

得られたサンプル13の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0085】
(サンプル14の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、スズのみからなる単一の金属皮膜を形成するものとし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル14を作成した。その際、スズ単一の金属皮膜の形成条件は、前記サンプル1の作成方法の第2工程のスズからなる第1金属皮膜3を形成する条件と同様とした。
得られたサンプル14の外観を目視により観察したところ、金属光沢が良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0086】
(サンプル15の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、クロムのみからなる単一の金属皮膜を形成するものとし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には、前記サンプル作成方法と同様の方法でサンプル15を作成した。その際、クロム単一の金属皮膜の形成条件は、前記サンプル1の作成方法の第2工程のクロムからなる第2金属皮膜4を形成する条件と同様とした。
得られたサンプル15の外観を目視により観察したところ、金属光沢は極めて良好であったが、部分的に比較的大きなクラックの発生が認められた。
【0087】
(サンプル16の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、アルミニウムのみからなる単一の金属皮膜を形成するものとし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル16を得た。その際、アルミニウム単一の金属皮膜の形成条件は、下記の通りとした。
ターゲット金属 アルミニウム純度99.99%以上
DC電力 1.3Kw
スパッタリングガス アルゴン
スパッタリングガス圧 2.75×10−3Pa

得られたサンプル16の外観を目視により観察したところ、金属光沢が良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0088】
(サンプル17の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、インジウムのみからなる単一の金属皮膜を形成するものし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル17を作成した。その際、インジウム単一の金属皮膜の形成条件は、前記サンプル6の作成方法の第2工程のインジウムからなる第1金属皮膜3を形成する条件と同様とした。
得られたサンプル17の外観を目視により観察したところ、金属光沢が良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0089】
(サンプル18の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、亜鉛のみからなる単一の金属皮膜を形成するものとし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル18を得た。その際、亜鉛単一の金属皮膜の形成条件は、前記サンプル7の作成方法の第2工程の亜鉛からなる第1金属皮膜3を形成する条件と同様とした。
得られたサンプル18の外観を目視により観察したところ、金属光沢が良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0090】
(サンプル19の作成)
前記サンプル1の作成方法の第2工程に対して、スズからなる第1金属皮膜3とクロムからなる第2金属皮膜4を、それぞれ下記に示す条件による真空蒸着法によって形成するものとし、それぞれの金属皮膜の膜厚が20nmになるように調整した。これ以外は、前記サンプル1の作成方法と同様の方法でサンプル19を作成した。その際、真空蒸着装置はアルバック社製EBA−2000を用いた。
(第1金属皮膜3の形成条件)
ターゲット金属 スズ純度99.99%以上
真空度 0.03Pa以下
アルゴンガス流量 90sccm

(第2金属皮膜の形成条件)
ターゲット金属 クロム純度99.99%以上
真空度 0.03Pa以下
アルゴンガス流量 90sccm

得られたサンプル19の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0091】
(サンプル20の作成)
前記サンプル19の作成方法の第2工程に対して、金属皮膜に対して、クロムのみからなる単一の金属皮膜を形成するものし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には前記サンプル19の作成方法と同様にサンプル20を作成した。その際、クロム単一の金属皮膜の形成条件は、前記サンプル19の作成方法の第2工程のクロムからなる第2金属皮膜4を形成する条件と同様とした。
得られたサンプル20の外観を目視により観察したところ、金属光沢が極めて良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0092】
(サンプル21の作成)
前記サンプル19の作成方法の第2工程に対して、アルミニウムのみからなる単一の金属皮膜を形成するものとし、その膜厚が40nmになるように調整した以外には、前記サンプル19の作成方法と同様の方法でサンプル21を作成した。その際、アルミニウム単一金属皮膜の形成条件は、下記の通りとした。
ターゲット金属 アルミニウム純度99.99%以上
真空度 0.03Pa以下
アルゴンガス流量 90sccm

得られたサンプル21の外観を目視により観察したところ、金属光沢が良好であり、また、比較的大きなクラックの発生は認められなかった。
【0093】
(耐候性試験1)
前記サンプル1〜21のうち、サンプル8、9、10及び15を除く各サンプルについて、下記の要領にて耐候性試験を行った。
(a)試験方法
各サンプルを、温度50℃及び相対湿度95%に調整した恒温恒湿機(ESPEC社製、SH241)に500時間収容することにより、加負荷処理を行なった。
各サンプルの加負荷処理の前後のものについて、それらの外観を目視により観察した。
(b)評価方法
各サンプルの加負荷処理の前後における外観変化の状態を、表9に示す評価基準に基づき5段階に評価した。評価結果を表10に示す。
【0094】
【表9】

【0095】
(耐候性試験2)
前記サンプル1〜21のうち、サンプル8、9、10及び15を除く各サンプルについて、下記の要領にて、前記耐候性試験1よりも厳しい条件の耐候性試験を行った。
(a)試験方法
各サンプルを、温度90℃及び相対湿度95%に調整した恒温恒湿機(ESPEC社製、SH241)に120時間収容することにより、加負荷処理を行なった。
各サンプルの加負荷処理の前後のものについて、それらの外観を目視により観察した。
(b)評価方法
前記耐候性試験1の評価方法と同じく、各サンプルの加負荷処理の前後における外観変化の状態を、表9に示す評価基準に基づき5段階に評価した。評価結果を表10に示す。
【0096】
【表10】

【0097】
表10に示す耐候性試験1の結果より、第1金属皮膜3がスパッタリング法によりスズで10〜50nmの膜厚に形成され、かつ第2金属皮膜4がスパッタリング法によりクロムで5〜30nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル1〜5、11)が、耐候性試験後においても外観が極めて良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
【0098】
同じく耐候性試験1の結果より、第1金属皮膜3がスパッタリング法によりインジウム、亜鉛、鉛又はビスマスのいずれかで20nmの膜厚に形成され、かつ第2金属皮膜4がスパッタリング法によりクロムで20nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル6、7、12、13)が、耐候性試験後においても外観が極めて良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
【0099】
同じく耐候性試験1の結果より、第1金属皮膜3が真空蒸着法によりスズで20nmの膜厚に形成され、かつ第2金属皮膜4が真空蒸着法によりクロムで20nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル19)が、耐候性試験後においても外観が極めて良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
【0100】
同じく耐候性試験1の結果より、金属皮膜が単一層であり、その金属皮膜がスパッタリング法により、スズ、アルミニウム、インジウム又は亜鉛のいずれかで40nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル14、16、17、18)が、耐候性試験後においても外観が極めて良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
【0101】
同じく耐候性試験1の結果より、金属皮膜が単一層であり、その金属皮膜が真空蒸着法により、アルミニウムで40nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル21)が、耐候性試験後においても外観が極めて良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
【0102】
次に、表10に示す耐候性試験2の結果より、第1金属皮膜3がスパッタリング法によりスズで10〜50nmの膜厚に形成され、かつ第2金属皮膜4がスパッタリング法によりクロムで10〜30nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル2〜5)が、耐候性試験後においても外観が良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
特に、第1金属皮膜3及び第2金属皮膜4の膜厚が、ともに20nmの場合には(サンプル1)、耐候性試験後においても外観が極めて良好に維持されており、耐候性に非常に優れていることが理解される。
【0103】
同じく耐候性試験2の結果より、第1金属皮膜3がスパッタリング法によりインジウム又は亜鉛のいずれかで20nmの膜厚に形成され、かつ第2金属皮膜4がスパッタリング法によりクロムで20nmの膜厚に形成された樹脂製品1(サンプル6、7)が、耐候性試験後においても外観が良好に維持されており、耐候性に優れていることが理解される。
【符号の説明】
【0104】
1 樹脂製品
2 軟質樹脂基材
3 第1金属皮膜
4 第2金属皮膜
5 アンダーコート層
6 トップコート層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂基材上に金属皮膜が形成された樹脂製品において、前記金属皮膜は前記軟質樹脂基材上に少なくとも上下二層に形成されており、下層である第1金属皮膜はスズ、インジウム又は亜鉛のうち少なくともいずれか1つから形成され、上層である第2金属皮膜はクロムから形成されてなることを特徴とする樹脂製品。
【請求項2】
前記第1金属皮膜及び前記第2金属皮膜はスパッタリング法により形成され、前記第1金属皮膜の厚さは10〜50nmであって、前記第2金属皮膜の厚さは10〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品。
【請求項3】
前記軟質樹脂基材は軟質ポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製品。
【請求項4】
前記軟質樹脂基材と前記第1金属皮膜との間にポリエステルウレタン樹脂を主成分とするアンダーコート層を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂製品。
【請求項5】
前記第2金属皮膜の上にアクリルウレタン樹脂を主成分とするトップコート層を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂製品。
【請求項6】
軟質樹脂基材上に金属皮膜を形成する樹脂製品の製造方法において、前記軟質樹脂基材の上にスパッタリング法によってスズ、インジウム又は亜鉛のうち少なくともいずれか1つからなる第1金属皮膜を形成する工程と、該第1金属皮膜の上にスパッタリング法によってクロムからなる第2金属皮膜を形成する工程を含む樹脂製品の製造方法。
【請求項7】
前記軟質樹脂基材は軟質ポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項6に記載の樹脂製品の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−245762(P2012−245762A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121607(P2011−121607)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(392000958)上原ネームプレート工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】