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金属磁性粉末およびその製造方法、磁性塗料、磁気治療用磁性粉末、並びに磁気記録媒体
説明

金属磁性粉末およびその製造方法、磁性塗料、磁気治療用磁性粉末、並びに磁気記録媒体

【課題】金属磁性粉末を構成する各金属磁性粒子の一次粒子が、凝集体を形成することなく粉末となっている金属磁性粉末およびその製造方法を提供する。
【手段】FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相と、希土類元素(但し、イットリウムも希土類元素として扱う。)、AlおよびSiという非磁性成分の1種以上とを含有する、金属磁性粒子からなる金属磁性粉末を製造する工程と、水中において前記非磁性成分と錯体を形成する錯化剤を存在させながら、還元剤を作用させることにより、前記非磁性成分を金属磁性粒子から除去する工程と、前記非磁性成分を除去された金属磁性粒子を酸化する工程と、前記酸化した金属磁性粒子に付着している水分を有機溶媒に置換する工程と、前記有機溶媒が付着した金属磁性粒子の湿潤を保ったまま、前記金属磁性粒子の表面を、前記有機溶媒とは異なる有機物で被覆する工程とを、備える金属磁性粉末の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度磁気記録に用いる複合型金属磁性粉末およびその製造方法、磁性塗料、磁気治療用磁性粉末、並びに磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのデータバックアップ用途に代表される磁気記録媒体は、大容量化に伴い、より記録密度を高めることが求められている。高記録密度を達成する為には、粒子体積の小さい磁性粉が必要であると考えられる。本出願人においても、こうした要求に応えるべく金属磁性粉末の研究を行って、特許文献1〜3等の開示を行った。
【0003】
特許文献1は平均長軸長(X)が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなる磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末であって、酸素含有量が15wt%以上で、保磁力(Hc)が0.0036X−1.1X+110X−1390(Oe)以上である磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末を開示したものである。
【0004】
特許文献2は、金属磁性粉末の表面に存在する非磁性成分を、還元剤等を用いて溶解除去することで、単位体積当たりの磁気特性を向上させることを開示したものである。
【0005】
特許文献3では、特許文献2の発展として、金属磁性粒子表面に有機物を被覆させた上で再還元処理を施して、当該金属磁性粒子表面に炭素の膜を形成させることを開示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−263720号公報
【特許文献2】特開2007−294841号公報
【特許文献3】特開2009−084600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、微粒子であっても高い磁気特性を発揮する磁気記録媒体用の金属磁性粒子および金属磁性粉末の製造法を開示したものである。しかしながら、当該金属磁性粒子が超微粒子となると、当該超微粒子の安定性を確保する為に、当該超微粒子の表面に形成させている非磁性成分の酸化物膜が厚くなり、磁気特性の低下が見られるようになっていた。
【0008】
特許文献2は、上述の問題を解決するため、前記超微粒子の表面に形成させている非磁性成分を還元剤により除去することによる、金属磁性粒子のダウンサイジング化を開示したものである。しかしながら、当該金属磁性粒子を用いた塗料を対象物に塗布した際、金属磁性粒子の凝集体が形成されてしまう問題があった。
【0009】
特許文献3は、上述の問題を解決するため、ダウンサイジング化した金属磁性粒子の表面に有機物由来の炭素を付着させ、前記凝集体の形成を低減させることを開示した。しかしながら、炭素を付着した金属磁性粒子は塗料中において安定性が不十分であること、また表面に炭素が存在しているため、適用可能なバインダーの種類が限定されるという問題があった。
【0010】
以上のことから、本発明者らは、高密度磁気記録を達成するためには、粒子の凝集を抑制し、金属磁性粉末を構成する各金属磁性粒子に、金属磁性粒子の一次粒子の形態を維持させることが重要であることに想到した。そして、対象物に塗布された塗膜等において、金属磁性粒子の凝集を抑制出来れば、より高密度な磁気記録を達成することも可能になると考えた。
【0011】
本発明は、上述の状況のもとでなされたものであり、その解決しようとする課題は、金属磁性粉末を構成する各金属磁性粒子の一次粒子が、凝集体を形成することなく粉末となっている金属磁性粉末およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題に対し、鋭意検討を行ったところ、金属磁性粉末の非磁性成分を除去した後、湿潤を保った状態で、当該金属磁性粉体を構成する各粒子の表面に有機物を被覆させることで、金属磁性粉末を構成する各金属磁性粒子が、金属磁性粒子の一次粒子の形態を維持した金属磁性粉末を得ることが出来ることに想到し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相と、希土類元素(但し、本発明において、イットリウムも希土類元素として扱う。)、AlおよびSiという非磁性成分の1種以上とを含有する、金属磁性粒子からなる金属磁性粉末を製造する工程と、
水中において前記非磁性成分と錯体を形成する錯化剤を存在させながら、還元剤を作用させることにより、前記非磁性成分を金属磁性粒子から除去する工程と、
前記非磁性成分を除去された金属磁性粒子を酸化する工程と、
前記酸化した金属磁性粒子に付着している水分を、有機溶媒に置換する工程と、
前記有機溶媒が付着した金属磁性粒子の湿潤を保ったまま、前記金属磁性粒子の表面を、前記有機溶媒とは異なる有機物で被覆する工程とを、備える金属磁性粉末の製造方法である。
【0014】
第2の発明は、
前記金属磁性粒子を酸化する工程を、過酸化物を用いて行う、第1の発明に記載の金属磁性粉末の製造方法である。
【0015】
第3の発明は、
前記金属磁性粒子の表面を被覆する前記有機溶媒とは異なる有機物は、前記有機溶媒よりも分子量の大きな分子量100以上の有機物である、第1または第2の発明に記載の金属磁性粉末の製造方法である。
【0016】
第4の発明は、
前記金属磁性粒子の表面を被覆する前記有機溶媒とは異なる有機物は、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を含む構造を有するものである、第1から第3の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末の製造方法である。
【0017】
第5の発明は、
前記金属磁性粒子の表面を、前記有機溶媒とは異なる有機物で被覆する工程の後、前記金属磁性粉末を乾燥させる工程を備えた、第1から第4の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末の製造方法である。
【0018】
第6の発明は、
FeまたはFeとCoとを主成分とし、透過型電子顕微鏡像から確認される平均長軸長が10〜50nm、算出される粒子体積が2500nm以下である金属磁性粒子であって、且つ、湿式での粒度測定(DLS法)により算出されるピーク径の値が、10〜200nmの範囲にある金属磁性粒子からなる金属磁性粉末である。
【0019】
第7の発明は、
前記透過型電子顕微鏡像から得られる平均長軸長と、前記DLS法により算出されるピーク径との相対比(ピーク径/平均長軸長)の値が5以下である第6の発明に記載の金属磁性粉末である。
【0020】
第8の発明は、
FeまたはFeとCoとを主成分とする金属相を有し、前記金属相の表面に酸化物層を有し、前記酸化物層の表面が分子量100以上の有機物により被覆されている金属磁性粒子からなる金属磁性粉末である。
【0021】
第9の発明は、
前記有機物とは、多分散度1.05〜2.0の高分子である第8の発明に記載の金属磁性粉末である。
【0022】
第10の発明は、
前記有機物とは、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を含む構造を有するものである第8または第9の発明に記載の金属磁性粉末である。
【0023】
第11の発明は、
第6から第9の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末を含む磁性塗料である。
【0024】
第12の発明は、
第6から第10の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末を含む磁気治療用磁性粉末である。
【0025】
第13の発明は、
第6から第9の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末を用いて製造される磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る金属磁性粉末は、各粒子が一次粒子の形態を維持した金属磁性粉末であって、高密度磁気記録に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】金属磁性粒子の状態を示した模式図である。
【図2】実施例の凝集体におけるDLSで測定した粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施する為の形態としては、次のようなものが挙げられる。まず、金属磁性粒子および金属磁性粉末の製造方法について、金属磁性粉末製造工程、非磁性成分除去工程、湿式安定化工程、溶媒置換工程、および有機物被覆工程の順に説明し、次に、金属磁性粒子および金属磁性粉末の物理特性について、粒子形状及び体積、粒子の形態、粒子の比表面積、粉末の組成分析、粉末磁気特性評価、および単層磁気テープ評価の順に説明する。
【0029】
<金属磁性粉末製造工程>
本発明に係る金属磁性粉末の製造方法について説明する。金属磁性粉末は、公知の方法により製造することができる。
当該金属磁性粉末製造工程の具体的方法の一例について説明する。
【0030】
まず、前駆物質として原子割合でFeに対するCoの割合(以下「Co/Fe原子比」という。)が0〜50at%の範囲にあるオキシ水酸化鉄を製造する。オキシ水酸化鉄の製法としては、炭酸塩溶液に第一鉄塩水溶液を添加し、炭酸鉄を生成させ(適宜、苛性アルカリを添加しても良い)、酸素含有ガスを添加して核晶を発生させた後、粒子を成長させオキシ水酸化鉄を形成させる方法や、第一鉄塩水溶液に対して苛性アルカリを単独で添加してオキシ水酸化鉄を形成させる方法を採ることが出来る。
この時、原料であるオキシ水酸化鉄の成長を調整して、本願発明へ適用させる金属磁性粉末の前駆体を形成させる。具体的には、当該オキシ水酸化鉄の長軸長を10〜100nmの大きさとする。
【0031】
製造されたオキシ水酸化鉄を、公知の方法にて、ろ過、洗浄し、均一な熱処理を施し、さらに希土類元素(イットリウムを含む。)、アルミニウムおよび珪素の少なくとも1種以上を焼結防止剤として添加し、これを80〜300℃の条件にて6時間以上不活性ガスまたは空気中で乾燥させ、オキシ水酸化鉄乾燥固形物を得る。当該固形物を公知の方法により250〜700℃に加熱して脱水することによりα−Fe等の鉄系酸化物を得る。
【0032】
次いで、得られたこの鉄系酸化物を気相還元により還元する。還元性ガスとしては一酸化炭素、アセチレン、水素などが例示できる。当該還元操作は、一段目の還元と、二段目の還元とに分け、両段階の温度を違える多段還元によって行うこともできる。具体的には、一段目において比較的低温を維持しながら還元し、二段目において昇温工程を経て高温維持しながら還元するものである。
【0033】
還元後に得られる金属磁性粉末は活性が非常に高いので、そのまま大気中でハンドリングすると発火する恐れがある。そこで、徐酸化工程により金属磁性粒子表面に緻密な酸化物層を形成させ、当該金属磁性粒子が大気中でのハンドリングに耐えるようにすることが望ましい。金属磁性粒子表面に緻密な膜を形成する為には、上述した還元工程の後、当該金属磁性粒子を50〜200℃の範囲の温度まで冷却し、弱酸化性ガスを導入して、当該金属磁性粒子表面に安定な酸化物膜を形成すれば良い。所望により、当該酸化物膜を形成後、当該金属磁性粒子を還元雰囲気に曝し、表面酸化膜改質操作を行った後、再度、表面安定化処理を施しても良い。
【0034】
<非磁性成分除去工程>
非磁性成分除去工程は、上記の工程を経て製造された金属磁性粉末に含有されるアルミニウムや希土類元素という非磁性成分を除去して、粒子体積が軽減された金属磁性粉末を得る工程である。
【0035】
非磁性成分除去工程は、上記の工程を経て製造された金属磁性粉末に含有されるアルミニウムや希土類元素という非磁性成分除去して、粒子体積が軽減された金属磁性粉末を得る工程である。
【0036】
当該非磁性成分除去工程の具体的方法について説明する。
上記のように得られた金属磁性粉末に含まれる希土類元素、アルミニウムおよび珪素の少なくとも1種以上と錯体を形成し得る化合物(錯化剤)を、溶解した溶液を処理液として用意する。当該錯化剤としては、無電解めっきにおいて錯化剤として通常使用されている薬品、例えば、酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩などを使用することができる。錯化剤の濃度は、0.01〜10モル/L程度でよい。また、必要に応じて、pH緩衝効果がある物質、例えば、アンモニウム塩などを添加してもよい。
【0037】
次に、前記処理液へ金属磁性粉末を添加する。金属磁性粉末の添加量は、処理液1L当たり1〜100g程度であるのが好ましい。また、液中の反応の均一性を維持するため、撹拌または強制分散(例えば、超音波分散など)を行うのが好ましい。
【0038】
処理液中に金属磁性粉末が均一に分散させた後、還元剤を添加する。この還元剤としては、ヒドラジン(N)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH)、ナトリウムボロンハイドライド(NaBH)のような強還元剤を使用することができる。還元剤の濃度は0.01〜10モル/Lにするのが好ましい。
【0039】
この還元剤を添加した後、液温を10〜50℃に保持しながら10〜300分間浸出操作を行う。この浸出操作によって処理液中に非磁性成分が溶出し、金属磁性粉末の粒子中における磁性元素の量が相対的に上昇する。なお、この反応は、不活性ガス雰囲気において行うのが好ましい。
【0040】
こうしてFeまたはFeとCoとを主成分とし、透過型電子顕微鏡像から確認される平均長軸長が10〜50nm、算出される粒子体積が2500nm以下である金属磁性粒子を得ることが出来る。
【0041】
<湿式安定化工程>
【0042】
上記の非磁性成分除去工程の後、乾燥工程を経ることなく、非磁性成分を除去された金属磁性粒子の表面に湿潤状態下で、一旦、酸化膜を形成させる工程である。
【0043】
乾燥工程を経ることなく、非磁性成分を除去された金属磁性粉末へ湿式で、酸化膜を形成させることで、金属磁性粒子の凝集を抑制することが出来る。この湿式安定化操作では、金属磁性粉末の表面に酸化膜を形成させることができればよいが、金属磁性粉末の表面に、より好適な均一膜を形成させる為には、過酸化物等を使用することが好ましい。具体的には、無機過酸化物や、クロム酸カリウムといった酸化剤、有機過酸化物が挙げられるが、取扱の容易さを考慮すれば、無機過酸化物、なかでも過酸化水素水が好ましい。
【0044】
ここで金属磁性粉末と非磁性成分除去工程の処理液とを分離して、乾燥させた後に、酸化膜を形成して磁性粉を製造すると、金属磁性粒子体積が著しく減少しているにも拘わらず、媒体の特性が想定しているよりも改善しない場合がある。本発明者らが、当該現象について研究したところ、当該金属磁性粉末と処理液とを分離、乾燥させた後に、酸化膜を形成して金属磁性粉末を製造した場合では、当該操作により、金属磁性粒子表面において、分散性や樹脂に対する相溶性が悪化し、さらに、金属磁性粒子同士が当該乾燥の過程で再凝集することが知見された。その結果、当該金属磁性粉末を塗料化したときに、金属磁性粒子を十分に分散することができず、金属磁性粉末として振る舞う体積が個々の粒子よりも大きくなってしまい(いわゆる活性化体積の増加)、結果として、金属磁性粒子体積の低減効果により齎されると期待された改善効果が得られなかったものと考えられる。
【0045】
湿式安定化工程における酸化物の添加量は、処理すべき金属磁性粉末1gに対して、0.001mol以上、好ましくは0.005mol以上、一層好ましくは0.01mol以上の過酸化物を添加する。当該量の酸化物を添加することで適当な酸化膜の形成が可能となり、磁性粉末として安定なものとなり、保存安定性が向上するので好ましい。
【0046】
一方、過酸化物の添加の上限は、被処理金属磁性粉末1gに対して0.05mol以下とすることが好ましい。過酸化物の添加量を当該量以下とすることで、金属磁性粒子表面において酸化反応が一度に発生し、結果として適当な酸化膜の形成が出来なくなる事態や、金属磁性粒子が過度な酸化を受けて金属コアの体積が減少し、結果として高密度磁気記録材料には適さなくなる事態を回避することが出来る。
【0047】
湿式安定化工程における反応温度は0〜50℃、好ましくは10〜40℃が良い。適正な生産性を確保する観点、および、反応の不均一性の抑制により、均一な酸化膜の形成を確保し、磁気特性の向上を期する観点からである。
【0048】
<溶媒置換工程>
溶媒置換工程は、金属磁性粉末を乾燥粉末とする際、金属磁性粒子が凝集するのを抑制する為に、一旦、当該金属磁性粒子の表面を被覆している水分を有機溶媒で置換する工程である。
【0049】
溶媒置換工程の具体的方法を説明する。
上記の湿式安定化工程の後、得られた金属磁性粉末と処理液とを分離する。当該分離方法は、公知の一般的な方法で良い。ここで、金属磁性粒子の表面に残存する、上記非磁性成分除去工程の操作時に発生した成分を除去する為、当該分離された金属磁性粉末を、再度、清浄な純水中に分散させる。この時、当該純水を撹拌したり、超音波洗浄を用いたりするのも好ましい。
【0050】
当該純水への分散の後、再度分離操作を行って金属磁性粉末と洗浄液とを分離した後、当該分離された金属磁性粉末を有機溶媒に再分散させ、金属磁性粉末の有機溶媒分散液を得る。
【0051】
尚、得られた金属磁性粉末の有機溶媒分散液へ分離操作を行って、金属磁性粉末と有機溶媒とを分離した後、当該分離された金属磁性粉末を有機溶媒に再分散させる操作を繰り返すことで、金属磁性粒子の表面に残存する水分の有機物への置換をより進めることが出来、好ましい。
【0052】
当該溶媒置換操作の温度条件に、特に制限はない。もっとも、作業性の観点から用いられる有機媒体の揮発温度より低い温度で行うことが好ましい。
【0053】
当該溶媒置換操作に使用される有機溶媒の好ましい例としては、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0054】
溶媒置換工程の効果について、図1を参照しながら説明する。
図1は、金属磁性粒子の状態を示した模式図であり、(a)は溶媒置換工程を実施した場合、(b)は溶媒置換工程を実施しなかった場合である。
【0055】
溶媒置換工程を実施した場合は、図1(a)に示すように、金属磁性粒子1が凝集することなく「有機物被覆工程」にて後述する有機物2に被覆される。この結果、当該有機物2に被覆された金属磁性粒子1は、以降の所定の工程を経て最終製品に至るまで再凝集することがなく、磁気特性を十分に発揮する。
【0056】
これに対し、溶媒置換工程を実施しなかった場合は、図1(b)に示すように、金属磁性粒子1が凝集した状態で有機物2に被覆される。一旦、このような状態になってしまうと、以降の所定の工程を経て最終製品に至るまで、当該凝集が解けることがなく、磁気特性を十分に発揮することが出来なくなる。
【0057】
<有機物被覆工程>
有機物被覆工程は、上記溶媒置換工程で得られた金属磁性粉末の有機溶媒分散液へ、さらに有機物を添加して金属磁性粒子の表面に被覆する工程である。
【0058】
この時に使用する有機物は、上記有機溶媒とは異なる物質であって、上記有機溶媒よりも分子量が大きい物質とするのが良い。当該有機物を添加することによって金属磁性粒子表面に有機物が吸着し、その有機物の作用によって上記有機溶媒中において好適に分散するようになる。
【0059】
ここで当該有機物として、ホモポリマー、共重合体、ランダム重合体、ブロック共重合体、デンドリマー、スタクティック重合体、直鎖あるいは分岐した重合体、星形重合体、部分重合体、および、グラフト型共重合体を例示出来る。ここで「重合体」とは2つ以上の単量体が重合したものであり、単量体であるホモポリマーおよび共重合体を含む。また、用途により様々な形態を取ることができる。
【0060】
特に、本発明において好ましい重合体として、エチレン基のような不飽和構造を有するものであるのが良い。例えば、N−機能化重合体、(メタンフェミン)アクリル酸、ビニル重合体、ポリチオフェンなどの共役高分子、スチレン重合体、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン類、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチル(メタンフェミン)アクリル酸、ジメチルアミノエチル(メタンフェミン)アクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリピロール類、タンパク質、ペプチド、直鎖あるいは分岐しているアルキル基を有した蛍光ポリマー、また比較的低分子のものとしてオレイルアミン、オレイン酸、TOPOといったものが例示できる。
【0061】
さらに、当該構造を有する重合体の中でも、炭素数1〜24のものが好ましい。また、これらの重合体は単独で用いても良いし、併用して使用しても良い。また、1個、好ましくは2個以上の不飽和基を有する高分子と、アルコキシシランをエチレン化した単量体とを重合化することで得られる重合体も使用することが出来る。
【0062】
以上の構造を有する物質の中でも、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ビニル基を含む重合体、および、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンからの重合体を使用することが好ましい。
【0063】
上述の有機物の中でも、ホスホン酸基またはスルホン酸基が、その構造中に存在しているものが好ましい。当該官能基が金属磁性粒子の表面に吸着することで、当該有機物における当該官能基部以外の部分の作用により、後述する製品である磁性塗料中における金属磁性粒子の分散性を確保することが出来るからである。
【0064】
金属磁性粒子の表面に吸着させる有機物の分子量は100以上、100000以下、好ましくは1000以上、50000以下である。分子量は100以上あれば、金属磁性粒子の分散性を確保する効果が得られ、100000以下であれば、金属磁性粒子の単位体積当たりの有機物の存在量を確保出来、当該金属磁性粒子の分散性を確保する効果が得られるからである。
【0065】
後述する製品である磁性塗料に添加する有機物、いわゆるバインダー成分を予め金属磁性粒子の表面に吸着させることも好ましい構成である。当該構成を採ることで、磁性塗料製造の際、改めてバインダーを添加することなく磁性塗料を製造出来、工程低減の観点から好ましい。
【0066】
本発明に用いる高分子の多分散度の値は1〜2の範囲、より好ましくは1.05〜1.20の範囲である。多分散度の値が1に近いことは、理想的なポリマーであることを示すので好ましい。尤も、多分散度の値が2よりも小さい値を示す場合には均一な粒子被覆が得られるので、本発明に係る有機物として適用出来る。
【0067】
本発明に係る金属磁性粒子における[金属]/[被覆物(有機物)]の構成比(重量比)は、10/90〜90/10であることが好ましい。特に、高い磁気特性を要求される磁気記録用途に向けては金属部分の割合を高くし、それほど高い磁気特性を要求されない用途、例えば、後述するDDS(ドラックデリバリーシステム)等に向けては、被覆物(有機物)部分の割合を高くすればよい。
【0068】
本発明に係る金属磁性粒子を用いた後述する製品である磁性塗料以外の用途としては、磁気治療(DDS)用途が考えられる。当該磁気治療用途においては、被覆物にポリマーを用い、当該ポリマー部分に薬剤を含有させ、外部から磁気により誘導することで効果的に疾患部分に到達させて治療することが考えられる。このとき、金属部分が少なければ、生体から異物として認識され難くなり、拒絶反応も生じ難くなることが期待される為、好ましい構成である。即ち、被覆物である重合体構成部分に、薬剤成分を混入させることも本発明の好ましい実施形態の一つである。
【0069】
上記の有機物被覆工程に係る操作を経た後に、金属磁性粉末を乾燥して乾燥粉とするのも好ましい構成である。当該構成によれば、上記有機物で金属磁性粒子の表面が被覆されている効果により、水で被覆されている場合とは異なり、凝集が生じ難いものとなっているからである。つまり、乾燥工程を経ても、金属磁性粉末の凝集は起こり難く、乾燥粉末は相対的に柔らかいものが得られ、取扱に好適なものになり好ましいからである。
【0070】
尚、当該乾燥工程は、低温で長時間行うことが好ましい。具体的には100℃以下、好ましくは80℃以下とする。
【0071】
(金属磁性粒子および金属磁性粉末の物理特性)
本発明に係る金属磁性粒子および金属磁性粉末の物理特性について説明する。
【0072】
<粒子形状及び体積>
本発明に係る金属磁性粒子の形状は、針状、紡錘状、平針状である。ここで平針状粒子とは、針状粒子の一形態であって、当該粒子を短軸で切断した際の形状が円ではなく、楕円状を呈しているようなものをいう。判別はTEM像により行うことが出来る。具体的には、当該粒子を傾斜させて、断面がどの程度円から乖離しているか確認する方法、シャドウイングを用いて断面比を確認する方法がある。尚、当該方法により、断面が円と判定される粒子が紡錘状の粒子である。
【0073】
本発明に係る金属磁性粒子の大きさは、針状もしくは、それに類する粒子の場合には長軸長で10〜50nm、好ましくは10〜45nm、一層好ましくは10〜30nmである。金属磁性粒子の大きさを当該範囲とすることで、高密度磁気記録に資することが出来る。
【0074】
長軸長が50nm以下であると、粒子自体のサイズが大き過ぎるということが無く、高密度磁気記録に適用可能な金属磁性粉末となり好ましい。また、長軸長が10nm以上あれば、磁性のスーパーパラの問題を回避出来るので好ましい。また、高密度磁気記録において、形状磁気異方性を用いて磁気を発現する金属磁性粒子の場合には軸比も重要なファクターであるが、この場合、軸比は2以上であれば良い。
【0075】
さらに、本発明に係る金属磁性粒子において、円柱近似(すなわち、(平均短軸長/2)×円周率×平均長軸長)で算出される値)で算出される粒子体積は、2500nm以下、より細かいものは2250nm以下、一層細かいものは2000nm以下の粒子である。当該円柱近似の粒子体積は、細かい方が粒子性ノイズの低減に寄与する。従って、当該円柱近似の粒子体積は、より細かいことが好ましい。もっとも、上述したように、スーパーパラ化による磁気特性の劣化を回避する観点からは、500nm以上であることが好ましい。
【0076】
本発明に係る金属磁性粉末においては、アルミニウム、硅素、希土類元素といった成分が低減されたものである。具体的には[非磁性成分(R+Si+Al)])/[磁性成分(Fe+Co)]の原子数比の割合が20%以下、より削減させた場合には15%以下、一層削減させた場合には12%以下にしたものである。
尚、本発明において、イットリウムを含む希土類元素を「R」と記載する場合がある。
【0077】
当該非磁性成分は、金属磁性粉末製造の際、金属磁性粒子の焼結防止を図る為、金属コアの外側に存在させているものである。従って、当該非磁性成分を除去することにより、金属磁性粒子の体積を低減する効果がある。また、当該非磁性成分が除去されることによって、金属磁性粒子体積当たりの磁気特性が高いものを得ることが出来る。
【0078】
<粒子の形態>
本発明に係る金属磁性粒子の平均長軸長は、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM−100CXMark−II型)を使用し、100kVの加速電圧で、明視野で磁性粉末を観察した像を写真撮影して測定した。当該測定の際には約300個の粒子を測定した。
【0079】
本発明に係る金属磁性粒子の凝集径は、DLS法による粒径測定によって算出した。具体的には、大塚電子株式会社製のDLS装置を用いて測定した。
【0080】
<粒子の比表面積>
本発明に係る金属磁性粒子の比表面積は、BET一点法を用いて測定した。具体的には、測定装置としてユアサイオニクス株式会社製の4ソープUSを使用して測定した。
【0081】
<粉末の組成分析>
本発明に係る金属磁性粉末の組成は、金属磁性相と酸化膜とを含んだ金属磁性粒子全体の質量分析を行うことによって求めた。具体的には、Co,Alおよび希土類元素の定量は日本ジャーレルアッシュ株式会社製高周波誘導プラズマ発光分析装置ICP(IRIS/AP)を用い、Feの定量は平沼産業株式会社製平沼自動滴定装置(COMTIME−980型)を用いて行った。これらの定量結果は質量%として与えられるので、適宜原子%(at%)へ換算することにより、Co/Fe原子比、Al/(Fe+Co)原子比、Y/(Fe+Co)原子比、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比を求めた。なお、各比較例、実施例において、Si/(Fe+Co)は測定限界以下であるため、これらの例では(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比は(R+Al)/(Fe+Co)原子比に等しい。
【0082】
<粉末磁気特性評価>
本発明に係る金属磁性粉末をφ6mmのプラスチック製容器に充填し、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して、外部磁場10kOe(795.8kA/m)で、保磁力Hc(Oe、kA/m)、飽和磁化σs(Am/kg)、角形比SQ、粉体のBSFD(バルク状態におけるSFD値)を測定した。
【0083】
<粒子の分散性評価>
本発明に係る金属磁性粒子の分散性は、得られた金属磁性粒子を有機溶媒(例えばシクロヘキサノン)に添加して沈降状況を観察することで行うことが出来る。
【0084】
さらに、当該の分散性は、金属磁性粒子の粒度分布をDLS(動的光散乱)法により測定することでも評価することが出来る。当該測定方法は、金属磁性粒子のブラウン運動の状態を利用して、粒子径を測定するものである。従って、当該方法により粒子径が正確に測定できるということは、金属磁性粒子の独立性が確保されているものと見做すことが出来る。
そして、計測されるピーク径(DLS測定で得られる重量換算粒子存在割合(%)の極大点)の値は、10nm〜200nmの範囲にあった。
一方、平均長軸長と、ピーク径との相対比(ピーク径/平均長軸長)の値は、5以下であった。
【0085】
<単層磁気テープ評価>
本発明に係る金属磁性粒子の媒体への適用可能性を確認するため、単層磁性層を形成させ評価した。概略は次の方式による。
【0086】
得られた金属磁性粉末と、所定のバインダーと、所定の溶剤とに分散操作を行って磁性塗料母液を得る。
その後、得られた磁性塗料母液へ、当該塗料母液を希釈する為のレットダウン溶液を添加し、再度、分散操作を行って磁性塗料を製造した。
【0087】
得られた磁性塗料を、ポリエチレンフィルム上に塗布するが、金属磁性粒子が無配向のテープを製造する場合はそのまま、配向したテープを製造する場合は磁場中にて、乾燥させて磁気テープ試料を得た。
【0088】
以上説明した磁気テープ試料について、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して磁気測定を行い、保磁力Hcx(Oe、kA/m)、磁性層表面に平行な方向の保磁力分布SFDx、最大エネルギー積BHmax、磁性層表面に平行な方向の角形比SQx、磁性層表面に垂直な方向の角形比SQz、配向比ORを求めた。
【実施例】
【0089】
<実施例1>
5000mLのビーカーに純水3000mLを入れた後、温調機で30℃に維持した。一方、0.03モル/Lの硫酸コバルト(特級試薬)溶液と0.15モル/Lの硫酸第一鉄(特級試薬)水溶液とを、Co:Fe=1:4(モル比)の混合割合になるように混合し混合溶液を調製した。当該混合溶液500mLを、前記純水3000mLへ添加し混合した後、前記添加された混合溶液中のFeとCoの合計モル数に対して、炭酸が5倍モルになる量の顆粒状の炭酸ナトリウムを直接添加し混合して、液温が35±5℃の範囲を超えないように調整しながら、炭酸鉄を主体とする懸濁液を作製した。
【0090】
この懸濁液を90分間熟成させた後、核晶を形成させ、60℃まで昇温させ、純酸素を30mL/分の流量で通気して90分間酸化を継続した。その後、純酸素を窒素に切り替えて、45分間程度熟成した。
【0091】
次に、液温を40℃まで降温させ液の温度が安定した後、1.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液を5.0g/分の添加速度で25分間添加し続けてオキシ水酸化鉄を成長させた。その後、当該懸濁液へ、純酸素を50mL/分の流量で流し続け、酸化を完結させた。なお、当該酸化の終点の確認は、当該懸濁液の上澄み液を少量分取し、ここへ、ヘキサシアノ酸鉄カリウム溶液を添加して、液色が変化しないことを確認することによって行った。
【0092】
懸濁液の酸化が終了した後、当該懸濁液へ、酸化イットリウムの硫酸水溶液(イットリウムとして2.0質量%含有する。)300gを添加して、イットリウムを固溶させ、イットリウムが表面に被着したオキシ水酸化鉄の粉末(ケーキ)を得た。
【0093】
このオキシ水酸化鉄のケーキを濾過して採集し、水洗した後、130℃で6時間乾燥させ、オキシ水酸化鉄の乾燥固形物を得た。当該乾燥固形物10gをバケットに入れ、水分量として1.0g/分の水蒸気を添加しながら大気中において450℃で、30分間焼成し、α−酸化鉄(ヘマタイト)を主成分とする鉄系酸化物を得た。
【0094】
当該α−酸化鉄を主成分とする鉄系酸化物を、通気可能なバケット内に投入した後、当該バケットを貫通型還元炉内に装入し、水素ガスを40L/分の流量で通気するとともに、水分量として1.0g/分で水蒸気を添加しながら、400℃、30分間焼成して還元処理を行った。
【0095】
この還元処理が終了した後、水蒸気の供給を停止し、水素雰囲気下において昇温速度15℃/分で600℃まで昇温した。その後、水分量として1.0g/分で水蒸気を添加しながら60分間高温還元処理を行い、実施例1に係る鉄系合金粉末(中間製品としての金属磁性粉末)を得た。
【0096】
次に、当該鉄系合金粉末から非磁性成分除去を行う為、使用する処理液を調製した。具体的には、純水900mLへ、錯化剤である酒石酸ナトリウムが0.05モル/L、緩衝剤である硫酸アンモニウムが0.1モル/Lになるように混合し、NHでpH9に調整した処理液を用意した。
【0097】
そして当該処理液へ、上述した還元処理後の鉄系合金粉末10gを投入して30℃に保持した後、還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを0.3モル/Lとなるように添加し、30℃で30分間撹拌しながら熟成させ、スラリーを得た。
【0098】
得られたスラリーに、35%過酸化水素水4.0gを17.8gの純水に希釈した過酸化水素水溶液を添加し、撹拌しながら30分間熟成した。そして、当該スラリーから自然沈降により粒子を沈降させ、上澄みをデカンテーションにて除去し、純水1000mLを添加し、再度30分間撹拌して、鉄系合金粉末を水洗した。そして、再び自然沈降により粒子を沈降させ、さらに当該水を主体とする上澄みをデカンテーションにより除去した。
【0099】
上述した上澄みを除去した後、エタノール500mLを添加し、上述した水洗と同様に、常温で撹拌を行いエタノールと沈降した粒子とをなじませた。その後、再度、粒子を自然沈降させて、当該エタノールを主体とする上澄みをデカンテーションで除いた。そして、当該エタノールを加え、エタノールを主体とする上澄みを除く操作(本発明において、「溶媒置換操作(1)」と記載する場合がある。)を5回繰り返した。
【0100】
5回の溶媒置換操作(1)の後、沈降した粒子へトルエン500mLを添加した。そして、上述した溶媒置換操作(1)と同様に常温で撹拌を行い、トルエンと磁性粉末をなじませた。その後、再度、粒子を自然沈降させて、当該トルエンを主体とする上澄みをデカンテーションで除いた。そして、当該トルエンを加え、トルエンを主体とする上澄みを除く操作(本発明において、「溶媒置換操作(2)」と記載する場合がある。)を4回繰り返した。但し、4回目の溶媒置換操作(2)においては上澄みを除去せず、金属磁性粒子のトルエン分散スラリーを得た。
【0101】
得られた金属磁性粒子のトルエン分散スラリーを、遠心分離機を用いて4000rpmにて10分間処理し、金属磁性粒子を強制沈降させた。そして、トルエンを主体とする上澄みを除いて、金属磁性粒子を分離して得た。
【0102】
上記得られた金属磁性粉末46.0g(固形分濃度11.2質量%)をシクロヘキサノン1400gに添加し、攪拌を行い分散させた。そして、当該分散物を、液温が50℃を超えないよう調整しながら、窒素雰囲気中で超音波分散させてスラリーを得た。
一方、金属磁性粒子を被覆する有機物として、東洋紡株式会社製のバイロンUR−8200(登録商標)2.0gを、シクロヘキサノン140gで希釈した処理液を準備した。
【0103】
ここで、当該処理液をスラリー中に添加し、10分間超音波分散させながら熟成し、UR−8200が金属磁性粒子表面に吸着した本発明にかかる金属磁性粉末を得た。
【0104】
得られた金属磁性粉末の分散性を評価するため、シクロヘキサノン100mL中に当該金属磁性粉末0.5gを添加した。そして、超音波分散器を使用して10分間の分散処理を行ってスラリーを得た。当該スラリーには、粒子沈降が見られず、均一な黒色を呈していた。
【0105】
当該スラリーに対し、DLS法により分散性の評価を行った。
具体的には、金属磁性粉末をシクロヘキサノンへ添加してスラリー濃度を0.5mg/ccとした後、超音波分散器を使用して10分間分散処理を行った。そして、濃厚系プローブを用い、Photal FPAR−1000型機を使用して粒度分布を測定した。当該測定された粒度分布を、図2に□をもってプロットした。尚、図2は縦軸に金属磁性粒子の重量換算存在割合をとり、横軸に粒子径をとったグラフである。
当該図2の結果から、分散性の高い金属磁性粒子が得られていることが判明した。
【0106】
即ち、図2の結果から、DLS法によるスラリー中における金属磁性粒子のピーク径は38.7nmであった。一方、TEM像から求めた金属磁性粉末の平均長軸長は、32.1nmなので、ピーク径/平均長軸長の値は、1.21となった。この結果から解るように、TEM像から求めた平均長軸長と、DLS法により測定されるピーク径とが、ほぼ同様の値を示しており、スラリー中において、実施例1に係る金属磁性粒子は、ほぼ単分散の状態となっているといえる。
【0107】
得られた金属磁性粉末1.36gと、バインダーとしてUR−8200を0.33gと、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノンが33:33:34(質量比)で混合されている溶剤3.3gとを内径45mm、深さ13mmのポットに装填した。さらにメディアとして、ジルコニアボール(0.5φ)23gを当該ポットに加え、当該ポットの蓋を閉じた状態で10分間静置した。
そして、当該ポットを遊星ボールミルに設置し、回転数300rpmにて300分間の分散操作を行って塗料母液を得た。
一方、塗料母液に添加するレットダウン溶液として、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノンが44.3:44.3:11.3(質量比)で混合されている混合溶液を準備した。
前記ポットへ、当該レットダウン溶液1.4gを添加し、再び、遊星ボールミルに設置して、回転数300rpmにて20分間の分散操作を行って、磁性塗料を製造した。
【0108】
前記ポットの内容物を、PTFEフィルタ(目開き:3.0μm)により濾過して磁性塗料のみを分離して得た。
【0109】
得られた磁性塗料を、クリアランス55μmのアプリケータを使用してベースフィルム(東レ株式会社製のポリエチレンフィルム15C−B500、膜厚15μm)上に塗布した。
【0110】
ここで、当該ベースフィルム上の磁性塗料をそのまま乾燥して、無配向の磁気テープ試料を得、一方、当該ベースフィルム上の磁性塗料を塗布後、速やかに磁場強度0.5Tの磁場中に15分間挿入し、乾燥させて配向した磁気テープ試料を得た。
【0111】
無配向の磁気テープ試料について、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して磁気測定を行い、保磁力Hcx(Oe、kA/m)、磁性層表面に平行な方向の保磁力分布SFDx、磁性層表面に平行な方向の角形比SQx、配向比ORを求めた。
【0112】
一方、配向した磁気テープ試料について、同様に、保磁力Hcx(Oe、kA/m)、磁性層表面に平行な方向の保磁力分布SFDx、磁性層表面に平行な方向の角形比SQx、磁性層表面に垂直な方向の角形比SQz、配向比ORを求めた。
当該測定結果を表3に示す。
【0113】
<実施例2、3>
金属磁性粒子表面を被覆する有機物量、バインダー量、溶剤組成、金属磁性粉末と溶剤との混合比率を変化させた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2、3に係る金属磁性粉末のスラリーおよび磁気テープ試料を得た。
【0114】
ここで、実施例2、3に係る有機物量を表1に、溶剤組成、金属磁性粉末と溶剤との混合比率、バインダー量を表2に記載する。
【0115】
得られた実施例2、3に係る属磁性粉末のスラリーは、粒子が沈降せず、分散状態を長期間にわたって維持していた。さらに、DLS法により粒度分布を測定した。当該粒度分布測定結果を実施例2は△、実施例3は○をもって図2にプロットした。
【0116】
図2の結果より、DLS法によるピーク径は、実施例2に係る金属磁性粉末は54.0nm、実施例3に係る金属磁性粉末は55.9nmであった。一方、TEM像から求めた金属磁性粉末の平均長軸長は32.1nmなので、ピーク径/平均長軸長の値は、実施例2に係る金属磁性粉末が1.68、実施例3に係る金属磁性粉末が1.74となった。
【0117】
さらに実施例2、3に係る磁気テープ試料に対し、実施例1と同様の測定を行った。当該測定結果を表3に示す。
【0118】
<実施例4>
実施例1において、金属磁性粒子表面を被覆する有機物を、UR−8200からポリスチレン−アクリロニトリル共重合体(但し、分子量は約20000であり、スチレン/アクリロニトリル比は、1/1.5で、アクリロニトリルの構成が多くなるよう調製したものである。)に変更し、さらに、金属磁性粒子表面を被覆する有機物量、バインダー量、溶剤組成、金属磁性粉末と溶剤との混合比率を変化させた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る金属磁性粉末のスラリーおよび磁気テープ試料を得た。
【0119】
ここで、実施例4に係る有機物量を表1、溶剤組成、金属磁性粉末と溶剤との混合比率、バインダー量を表2に記載する。
【0120】
得られた実施例4に係る属磁性粉末のスラリーは、粒子が沈降せず、分散状態を長期間にわたって維持していた。
【0121】
さらに実施例4に係る磁気テープ試料に対し、実施例1と同様の測定を行った。当該測定結果を表3に示す。
【0122】
<比較例1>
実施例1において、有機物による金属磁性粒子表面の被覆を行わず、バインダー量、溶剤組成、金属磁性粉末と溶剤との混合比率を変化させた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る金属磁性粉末のスラリーおよび磁気テープ試料を得た。
【0123】
ここで、比較例1に係る溶剤組成、金属磁性粉末と溶剤との混合比率、バインダー量を表2に記載する。
【0124】
得られた比較例1に係る属磁性粉末のスラリーは、金属磁性粒子の凝集体が沈降した。この為、DLS法による粒度分布は測定出来なかった。
【0125】
さらに比較例1に係る磁気テープ試料に対し、実施例1と同様の測定を行った。当該測定結果を表3に示す。
【0126】
表3に示した結果より、本発明にかかる金属磁性粒子を用いた磁気テープ試料は、配向比が高く、かつ保磁力分布の小さな磁気テープが得られることが判明した。当該効果は、実施例1〜4に係る磁気テープの保磁力分布値(SFDx)の値と、比較例1に係る磁気テープの保磁力分布値とが、磁気テープ(無配向)の場合は、ほぼ同値を示すにもかかわらず、磁気テープ(配向)の場合は、実施例1〜4に係る磁気テープの保磁力分布値が、比較例1に係る磁気テープの保磁力分布値より小さい値を示すようになることから理解することが出来る。
【0127】
【表1】

【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る金属磁性粉末を用いれば、高密度磁気記録に適した磁気記録媒体を提供出来る。さらに、金属磁性粒子表面を被覆する有機物の構成を調整することによって、DDS(ドラックデリバリーシステム)用途にも利用できるとともに、そのものが薬剤として作用することすらも可能になると考えられる。
【符号の説明】
【0129】
1 金属磁性粒子
2 有機物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相と、希土類元素(但し、イットリウムも希土類元素として扱う。)、AlおよびSiという非磁性成分の1種以上とを含有する、金属磁性粒子からなる金属磁性粉末を製造する工程と、
水中において前記非磁性成分と錯体を形成する錯化剤を存在させながら、還元剤を作用させることにより、前記非磁性成分を金属磁性粒子から除去する工程と、
前記非磁性成分を除去された金属磁性粒子を、酸化する工程と、
前記酸化した金属磁性粒子に付着している水分を、有機溶媒に置換する工程と、
前記有機溶媒が付着した金属磁性粒子の湿潤を保ったまま、前記金属磁性粒子の表面を、前記有機溶媒とは異なる有機物で被覆する工程とを、備える金属磁性粉末の製造方法。
【請求項2】
前記金属磁性粒子を酸化する工程を、過酸化物を用いて行う、請求項1に記載の金属磁性粉末の製造方法。
【請求項3】
前記金属磁性粒子の表面を被覆する前記有機溶媒とは異なる有機物は、前記有機溶媒よりも分子量の大きな分子量100以上の有機物である、請求項1または2に記載の金属磁性粉末の製造方法。
【請求項4】
前記金属磁性粒子の表面を被覆する前記有機溶媒とは異なる有機物は、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を含む構造を有するものである、請求項1から3のいずれかに記載の金属磁性粉末の製造方法。
【請求項5】
前記金属磁性粒子の表面を、前記有機溶媒とは異なる有機物で被覆する工程の後、前記金属磁性粉末を乾燥させる工程を備えた、請求項1から4のいずれかに記載の金属磁性粉末の製造方法。
【請求項6】
FeまたはFeとCoとを主成分とし、透過型電子顕微鏡像から確認される平均長軸長が10〜50nm、算出される粒子体積が2500nm以下である金属磁性粒子であって、且つ、湿式での粒度測定(DLS法)により算出されるピーク径の値が、10〜200nmの範囲にある金属磁性粒子からなる金属磁性粉末。
【請求項7】
前記透過型電子顕微鏡像から得られる平均長軸長と、前記DLS法により算出されるピーク径との相対比(ピーク径/平均長軸長)の値が5以下である請求項6に記載の金属磁性粉末。
【請求項8】
FeまたはFeとCoとを主成分とする金属相を有し、前記金属相の表面に酸化物層を有し、前記酸化物層の表面が分子量100以上の有機物により被覆されている金属磁性粒子からなる金属磁性粉末。
【請求項9】
前記有機物とは、多分散度1.05〜2.0の高分子である請求項8に記載の金属磁性粉末。
【請求項10】
前記有機物とは、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を含む構造を有するものである請求項8または9に記載の金属磁性粉末。
【請求項11】
請求項6から9のいずれか一項に記載の金属磁性粉末を含む磁性塗料。
【請求項12】
請求項6から10のいずれか一項に記載の金属磁性粉末を含む磁気治療用磁性粉末。
【請求項13】
請求項6から9のいずれか一項に記載の金属磁性粉末を用いて製造される磁気記録媒体。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−238845(P2011−238845A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110360(P2010−110360)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(508131152)ジ・アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アリゾナ (5)
【氏名又は名称原語表記】THE ARIZONA BOARD OF REGENTS ON BEHALF OF THE UNIVERSITY OF ARIZONA
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】