説明

金属積層形ガスケット

【課題】金属積層形ガスケットにおけるビード部分の面圧をシム等の金属プレートを用いることなく高め、ビード部分のシール性を改善する。
【解決手段】シールすべき位置にビード5を設けた第1の金属プレート1、及びそれに積層する第2の金属プレート2を含む複数の金属プレートからなる。上記第2の金属プレートにおける第1の金属プレートのビード5の裾野部5aに対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための上記ビード5よりも剛性を有する凹凸6を設け、該凹凸によって板厚が高められた平坦部6a上に上記ビードの裾野部を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属プレートを積層してなり、それらのうちの任意金属プレートにおけるシールすべき位置に設けたビードの面厚を高めるようにした金属積層形ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層した金属プレートのシールすべき位置にビードを設けた金属積層形ガスケットは、極めて一般的に知られている。上記ビードは、その部分の面圧を高めてシール性を発揮させるために有効なものであるが、その面圧をさらに高めてシール性を改善するためには、該ビードの高さや幅、湾曲部分の曲率等に改変を加えるにしても限度があり、結果的には、シム等によりビード部分の板厚を高める必要があるが、シム等の金属プレートを用いるとなると、所要厚さの金属プレートを準備する必要があるばかりでなく、組み付けに際してそれを所要位置に積層する必要もあり、コストを高める原因になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的課題は、このような金属積層形ガスケットにおけるビード部分の面圧をシム等の金属プレートを用いることなく高め、ビード部分のシール性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の金属積層形ガスケットは、シールすべき位置にビードを設けた第1の金属プレート、及びそれに積層する第2の金属プレートを含む複数の金属プレートからなり、上記第2の金属プレートにおける第1の金属プレートのビードの裾野部または頂部に対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸を設け、上記凹凸は、上記ビードよりも高さ及び幅が小さく、面圧による変形が該ビードよりも小さいものであり、該凹凸によって板厚が高められた平坦部上に上記ビードの裾野部または頂部を配置していることを特徴とするものである。
【0005】
本発明にかかる金属積層形ガスケットの好ましい実施形態においては、上記第1の金属プレートに設けたビードを、フルビードまたはハーフビードとすることができる。また、上記凹凸における金属プレートの立ち上がり部分は、上記ビードにおける立ち上がり部分よりも立ち上がり角度が直角に近く、上記凹凸の頂部の湾曲部分は、上記ビードにおける湾曲部分よりも大きい曲率を有しているものとすることが望まれる。更に、上記凹凸を設けた第2の金属プレートの両面側における該凹凸に対応する位置に、第1及び第3の金属プレートにおけるビードの裾野部または頂部を配置することもできる。
【0006】
上記構成を有する金属積層形ガスケットにおいては、第2の金属プレートにおける第1の金属プレートのビードの裾野部または頂部に対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸を設け、その凹凸をビードよりも高さ及び幅が小さく、結果的にビードよりも剛性が高いものとし、該凹凸によって板厚が高められた平坦部上に上記ビードの裾野部または頂部を配置しているので、ビード部分の全体的な板厚を高めてシール性を改善することが可能になる。
【発明の効果】
【0007】
以上に詳述した本発明によれば、金属積層形ガスケットにおけるビード部分の面圧を、シム等の金属プレートを用いることなく高め、ビード部分のシール性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る金属積層形ガスケットの第1実施例の要部断面図である。
【図2】本発明に係る金属積層形ガスケットの第2実施例の要部断面図である。
【図3】本発明に係る金属積層形ガスケットの第3実施例の要部断面図である。
【図4】本発明に係る金属積層形ガスケットの第4実施例の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る金属積層形ガスケットの実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係る金属積層形ガスケットを内燃機関のシリンダヘッドガスケットに適用した場合の異なる実施例を示すもので、これらの各図は、いずれも、シリンダボアに対応する孔10の周りのシール部分11を、該孔10の径方向の部分的な断面図として示し、他の構成は周知のシリンダヘッドガスケットと同一であるため、それらの図示を省略している。
【0010】
上記各実施例の金属積層形ガスケットは、基本的には積層した複数枚(2〜3枚)の金属プレートからなり、それらの金属プレートの少なくとも1枚を除く他の金属プレートにおけるシールすべき位置に、ビード(ハーフビードまたはフルビード)5を設け、残る金属プレートにおけるそれらのビードの裾野部5aまたは頂部5bに対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸6を設けたものである。
【0011】
すなわち、図1及び図2に示す金属積層形ガスケットは、第1金属プレート1に設けたビード5がハーフビードの場合を、図3及び図4に示す金属積層形ガスケットは第1金属プレート1に設けたビード5がフルビードの場合を示している。また、図1〜図3は、上記第1の金属プレート1のビード5の裾野部5aに対応させて第2の金属プレート2に凹凸6を設けた場合を、図4は上記第1の金属プレート1のビード5の頂部5bに対応させて第2の金属プレート2に凹凸6を設けた場合を示している。
【0012】
更に具体的に説明すると、上記図1に示す第1実施例の金属積層形ガスケットは、第1〜第3の金属プレート1〜3を備え、第1の金属プレート1及び第3の金属プレート3におけるシールすべき位置にそれぞれビード(ハーフビード)5を設け、それらを積層する第2の金属プレート2において、第1及び第3の金属プレート1,3のビード5の裾野部5aに対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸6を設けている。
【0013】
上記凹凸6は、弾性的に変形することを前提とするビードとは異なり、例えばコイニング加工等により形成され、上記ビード5よりも高さ及び幅が十分に小さく、面圧による変形がビード5よりも非常に小さいものとし、必要に応じて図示のように複数の凹部及び凸部を並べることにより形成し、該凹凸6によって板厚が高められた平坦部6aを形成したものである。上記凹凸6における金属プレートの立ち上がり部分は、上記ビード5における立ち上がり部分よりも立ち上がり角度が直角に近く、上記凹凸の平坦部6aを形成する頂部の湾曲部分は、上記ビード5における湾曲部分よりも大きい曲率を有している。そして、この第1実施例では、その平坦部6a上にビード5の裾野部5aを配置している。
上記第1及び第3の金属プレート1,3に設けたビード5は、フルビードとすることができ、その場合には他方の裾野部も第2の金属プレート2に形成した凹凸上に配置することになる。
【0014】
図2に示す第2実施例の金属積層形ガスケットでは、シールすべき位置にビード5を設けた第1の金属プレート1、及びそれに第3の金属プレート3を介して積層する第2の金属プレート2を備え、上記第2の金属プレート2における第1の金属プレート1のビード5の裾野部5aに対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸6を設けている。上記凹凸6は、第1実施例に関連して説明したものと変わるところがない。
この第2実施例においては、凹凸6によって板厚が高められた平坦部6a上に、第3の金属プレート3を介して上記ビード5の裾野部5aを配置しているが、凹凸6上に直接的にビード5の裾野部5aを配置する場合と比べて、ビード部分のシール性の改善効果に格別の差異が生じるものではない。
【0015】
図3に示す第3実施例の金属積層形ガスケットは、シールすべき位置にビード(フルビード)5を設けた第1の金属プレート1、及びそのビード5の突出面側と反対面側に積層する第2の金属プレート2からなり、上記第2の金属プレート2における第1の金属プレート1のビード5の両裾野部5aに対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸6を設け、該凹凸6によって板厚が高められた平坦部6a上に上記ビード5の両裾野部5aを配置している。
その他の構成及び作用は、第1実施例の場合と変わるところがない。
【0016】
図4に示す第4実施例の金属積層形ガスケットは、シールすべき位置にビード(フルビード)5を設けた第1の金属プレート1、及びそのビード5の突出面側に積層する第2の金属プレート2からなり、該第2の金属プレート2における第1の金属プレート1のビード5の頂部5bが当接する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸6を設け、該凹凸6によって板厚が高められた平坦部6a上に上記ビード5の頂部5bを配置している。
その他の構成及び作用は、第1実施例の場合と変わるところがない。また、上記第3実施例及び本実施例の場合に、第1及び第2金属プレート1,2の間または外面に、他の第3金属プレートを積層することもできる。
【0017】
上記構成を有する各実施例の金属積層形ガスケットにおいては、第2の金属プレート2における第1(及び第3)の金属プレート1のビード5の裾野部5aまたは頂部5bに対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸6を設け、その凹凸6をビード5よりも高さ及び幅が小さく、結果的にビードよりも剛性が高いものとし、該凹凸6によって板厚が高められた平坦部6a上に上記ビード5の裾野部5aまたは頂部5bを配置しているので、シムその他の金属プレートを用いることなく、ビード部分の板厚を高めて効果的にシール性を改善することが可能になる。
【0018】
また、このような構成を有する第1〜第4実施例の金属積層形カスケットにおいては、ビード5の裾野部5aまたは頂部5bを、他の金属板に設けた凹凸6上に配置するので、ビード部分のシール性を改善するためにビードの幅を拡大するなど、ビードの両側に何らかの付帯的な構造を付設することがないので、上記凹凸6をできるだけビード幅内に収まるように構成することにより、ボア間などの寸法が制約される部位のシールに有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 第1の金属プレート
2 第2の金属プレート
3 第3の金属プレート
5 ビード
5a 裾野部
5b 頂部
6 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールすべき位置にビードを設けた第1の金属プレート、及びそれに積層する第2の金属プレートを含む複数の金属プレートからなり、
上記第2の金属プレートにおける第1の金属プレートのビードの裾野部または頂部に対応する位置に、見かけ上の板厚を高めるための凹凸を設け、
上記凹凸は、上記ビードよりも高さ及び幅が小さく、面圧による変形が該ビードよりも小さいものであり、
該凹凸によって板厚が高められた平坦部上に上記ビードの裾野部または頂部を配置している、
ことを特徴とする金属積層形ガスケット。
【請求項2】
上記第1の金属プレートに設けたビードが、フルビードまたはハーフビードである、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属積層形ガスケット。
【請求項3】
上記凹凸における金属プレートの立ち上がり部分は、上記ビードにおける立ち上がり部分よりも立ち上がり角度が直角に近く、上記凹凸の頂部の湾曲部分は、上記ビードにおける湾曲部分よりも大きい曲率を有している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の金属積層形ガスケット。
【請求項4】
上記凹凸を設けた第2の金属プレートの両面側における該凹凸に対応する位置に、第1及び第3の金属プレートにおけるビードの裾野部または頂部を配置した、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属積層形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203510(P2010−203510A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48995(P2009−48995)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】