説明

金属空気電池を備え、ゼロ点が維持された光ルミネセンス酸素センサ用校正カード

【課題】光ルミネセンス酸素プローブを読み取る分析機器を正確かつ確実に校正するための校正カードおよびその校正カードの使用方法を提供する。
【解決手段】校正カードは、少なくとも(a)色素が周囲環境の酸素から隔離されるように密閉閉鎖されたスペース内に保持され、活性化金属空気電池と流体連通状態にある酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体であって、密閉閉鎖されたスペース中に浸透する酸素が電池により急速に消費される第一集合体と、(b)周囲の環境と流体連通状態にある酸素感応性光ルミネセンス色素の第二集合体であって、その光ルミネセンス色素の第二集合体が環境濃度の酸素に曝露される第二集合体と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年12月8日出願の米国特許出願番号12/633,110の一部継続出願であり、この出願は2009年11月3日出願の国際特許出願PCT/US2009/063037の一部継続出願であり、またその出願は2008年11月7日出願の米国仮特許出願番号61/112,434の利益を主張している。
【背景技術】
【0002】
光ルミネセンスセンサまたはプローブは、包装もしくは容器などの閉鎖空間内での分析対象物の濃度、代表的には酸素濃度を測定するために広範囲に採用されている方法である。簡単に説明すると、包装もしくは容器内の分析対象物濃度は、分析対象物に感受性の光ルミネセンスプローブを該包装もしくは容器内に入れることで測定し得る。また、該プローブは包装もしくは容器内で平衡化させ、該プローブを放射エネルギーで励起して、励起プローブの発する放射エネルギーが目標とする分析対象物の存在によりどの程度まで消光されるかを測定する。かかる光センサは多くの供給業者から、例えば、プレゼンス・プレシジョン・センシング株式会社(レーゲンスブルク、ドイツ)、ダラス・オキシセンス(テキサス、米国)、およびルクセル・バイオサイエンス株式会社(コーク、アイルランド)などから入手し得る。
【0003】
かかる光ルミネセンスプローブの読み取りに使用される分析機器は、目標とする分析対象物の既知濃度を有する媒体に曝露したプローブを該機器に読み取らせ、該機器の校正を可能とする校正モードで一般にプログラムされる(例えば、機器を校正モードに設定し、分析対象物0%含有の認証タンク気体を流した容器内のプローブを読み取り、次いで、100%分析対象物などの既知濃度の分析対象物を含む認証タンク気体を流した容器内のプローブを読み取る)。
【0004】
この校正方法は、光センサを正確に校正するために有効ではあるが、時間が掛かり、かつ費用がかさむ。
【0005】
従って、光ルミネセンスセンサもしくはプローブの読み取りに使用される機器を正確に、また高い信頼度で校正するための低コストのシステムと方法が事実上、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一の側面は、プローブと連通状態にあるサンプル中の酸素濃度を定量することのできる酸素感応性光ルミネセンスプローブを読み取り得る分析機器の校正に使用する校正カードである。
【0007】
本発明第一側面の第一の実施態様は、少なくとも(a)色素が周囲環境の酸素から隔離されるように密閉閉鎖されたスペース内に保持され、かつ活性化金属空気電池と流体連通状態にある酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体であって、それによってその密閉閉鎖されたスペース中の酸素が電池により消費される第一の集合体と、(b)周囲の環境と流体連通状態にある酸素感応性光ルミネセンス色素の第二集合体であって、それにより当該光ルミネセンス色素の第二集合体が環境濃度の酸素に曝露した第二集合体と、を含む校正カードである。
【0008】
本発明第一側面の第二の実施態様は、少なくとも(a)第一プローブ、すなわち周囲の酸素から隔離されたプローブであって、そのプローブから酸素を捕捉するために有効な活性化金属空気電池と流体連通状態にあるプローブであり、それによって第一プローブと連通状態にある酸素の濃度を低下させ、ゼロ近傍に維持することができるプローブと、(b)第二プローブ、すなわち該プローブと環境濃度の酸素との連通を可能とするため、周囲の環境と流体連通状態にあるプローブと、を含む校正カードである。
【0009】
本発明の第二の側面は、プローブと連通状態にあるサンプル中の酸素濃度を定量し得る酸素感応性光ルミネセンスプローブを読み取ることの可能な校正モードをもつ光酸素センサの校正方法である。
【0010】
第二の側面の第一の実施態様は、(a)本発明の第一の側面の第一の実施態様により校正カードを得る段階と、(b)該光酸素センサを校正モードに設定する段階と、(c)酸素感応性光ルミネセンス色素の集合体が曝露される既知の酸素濃度と酸素濃度読み取り値が相関するように、酸素感応性光ルミネセンス色素の集合体それぞれから酸素濃度を順次読み取る段階と、からなる。
【0011】
第二の側面の第二の実施態様は、(a)本発明の第一の側面の第二の実施態様により校正カードを得る段階と、(b)該校正カード上の第二プローブを既知酸素濃度の媒体に曝露する段階と、(c)分析機器を校正モードに設定する段階と、(d)該分析機器により第一プローブから示度を読み取る段階と、(e)該読み取り値をゼロ酸素濃度に相関させる段階と、(f)該分析機器により第二プローブから示度を読み取る段階と、(g)該読み取り値を該第二プローブが曝露された既知の酸素濃度と相関させる段階と、からなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施態様の分解斜視図である。
【図2】図1の線2−2に沿った本発明の分解断面側面図である。
【図3】図1に示した本発明の上面組立図である。
【図4】図3の線3−3に沿った本発明の断面側面図である。
【図5】図4に示した本発明の一部の拡大断面詳細側面図であり、光ルミネセンス組成物の第二すなわち0%集合体および関連する電池を包含している。
【図6】図4に示した本発明の一部の拡大上面図であり、光ルミネセンス組成物の第二すなわち0%集合体および関連する電池を包含している。
【図7】本発明光ルミネセンス組成物の第一および第二集合体としての使用に適する光ルミネセンス組成物の一実施態様の詳細な拡大断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書にて使用する場合、“金属空気電池”という成句は、カドミウム、鉛、リチウムまたは亜鉛などの金属を外界の酸素、典型的には空気で酸化することにより電力を供給する電気化学電池または燃料電池を意味する。
【0014】
特許請求の範囲を含め、本明細書にて使用する場合、“活性化金属空気電池”という成句は、周囲環境に開かれた、正極につながる空気のアクセスホールをもつ金属空気電池を意味する(すなわち、典型的には空気のアクセスホールを覆う酸素障壁膜を除去して、電池に空気を入れる)。
【0015】
本明細書にて使用する場合、“略ゼロ”という成句は、請求項を含め、サンプル中の酸素濃度を記載するために使用する場合には、酸素濃度が0.01%未満であることを意味する。
【0016】
本明細書にて使用する場合、“酸素不浸透性”という成句は、請求項を含め、1mil(25.4μm)の膜としたとき、酸素透過率がASTM・F1927により測定した場合、100c/m日未満となる物質を意味する。
【0017】
本明細書にて使用する場合、“酸素障壁”という成句は、請求項を含め、酸素不浸透性である(金属層など)か、またはASTM・F1927により測定した場合、20c・m日未満の酸素透過率を有する膜、例えば、被覆膜、金属溶射膜および多重層膜などを意味する。
【0018】
本明細書にて使用する場合、“酸素感度”または“酸素に対する感度”という成句は、請求項を含め、ルミネセンス消光により測定される感度を意味する。
【0019】
本明細書にて使用する場合、“薄膜”という成句は、厚さ10μm未満の膜を意味する。
【0020】
一般に図1〜4を参照すると、本発明の第一の側面は、光ルミネセンスセンサまたはプローブ(図示せず)を読み取るための分析機器(図示せず)の校正に使用する校正カード10である。校正カード10は、酸素感応性光ルミネセンス組成物50の第一集合体51および第二集合体52からなる。酸素感応性光ルミネセンス組成物の第一集合体51は、周囲の環境から隔離されており、密閉閉鎖された第一集合体51から酸素を捕捉するために、酸素消費亜鉛空気電池70との流体連通状態にある。酸素感応性光ルミネセンス組成物の第二集合体52は、環境濃度の酸素に第二集合体52を曝露するために周囲の環境と流体連通状態にある。
【0021】
図7を参照すると、第一集合体51(便宜上、0%集合体ともいう)および第二集合体52(便宜上、21%集合体ともいう)はそれぞれ、機器(図示せず)が読み取るプローブ(図示せず)にて採用される酸素感応性光ルミネセンス色素と同じ酸素感応性光ルミネセンス色素59を含んでなり、機器(図示せず)が読み取るプローブ(図示せず)にて採用される担体マトリックスと同じ酸素浸透性担体マトリックス58の内部に埋め込まれている。
【0022】
図1および2は、本発明による校正カード10の一実施態様の構成要素を図示するものである。図1および2に示した校正カード10は、中間スペーサー層20の第一主要面20v上に載置され、上部カバー層41と下部基板層42の間に挟まれた酸素感応性光ルミネセンス組成物の左右に離間された第一集合体51および第二集合体52(まとめて、光ルミネセンス集合体50という)を含んでいる。スペーサー層20、上部カバー層41、および下部基板層42はすべて酸素障壁として有効である。酸素感応性光ルミネセンス組成物の第一集合体51は、スペーサー層20内の保持ウエル29内に保持された活性化金属空気電池と流体連通状態にある。酸素感応性光ルミネセンス組成物の第二集合体52は、スペーサー層20と下部基板層42を貫通するチャンネル19を介して、周囲の環境と流体連通状態に置かれる。接着性層31と32は、それぞれ、スペーサー層20の上部主要面20vと下部主要面20wに、上部カバー層41と下部基板層42を固定し、それによって第一および第二光ルミネセンス集合体50を酸素障壁上部カバー層41と下部基板層42の間に挟み込む。
【0023】
校正カード10は、頂部端10a、底部端10b、右側端10r、左側端10s、上部主要面10vおよび下部主要面10wを有する。カード10は、約4ないし20cmの長さ、約4ないし20cmの幅、および1cm未満の厚さとすべきである。これよりも小さいカード10は、紛失したり、置き忘れたりする傾向があり、一方、これよりも大きいカード10は不必要に嵩張ることとなる。カード10は、好ましくは、約6ないし10cmの長さ、約4ないし8cmの幅、および約0.5ないし1cmの厚さを有し、最も好ましくは、標準的なクレジットカードの長さと幅(すなわち、約8.5cmの長さと5.5cmの幅)に近似する。
【0024】
カード10は耐久性であり、摩耗抵抗性であるべきである。
【0025】
中間スペーサー層20は、カード10に構造的に完璧な大きさを与え、金属空気電池70を収容するために必要な厚さを提供する。スペーサー層20は、所望により、透明、半透明または不透明であってもよい。該スペーサー層20は、Oがカード10の辺縁(10a、10b、10rおよび10s)を通って浸透し、酸素感応性光ルミネセンス組成物の第一集合体51と接触し得る割合を制限するために、相対的に酸素に対して非浸透性であるべきである。適切な材料は、具体的にはアクリル酸もしくはポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック、およびアルミニウム、銅もしくはスチールなどの金属であるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
カバー層41はカード10に対しある種のさらなる構造的完全性を与え、光ルミネセンス集合体50を保護する覆いとして役立つ。カバー層41は、少なくとも光ルミネセンス集合体50がエネルギーを吸収し放出する特定の波長で、少なくとも透明であるか、または半透明である必要がある。カバー層41は、酸素がカード10を通って浸透し、酸素感応性光ルミネセンス組成物の第一集合体51と接触する割合を低下させるための酸素障壁として役立つ。適切な材料は、具体的にはプラスチックであるが、これらに限定されるものではない。好ましいプラスチックは、マイラーおよびポリエチレンテレフタレートである。
【0027】
基板層42もまたカード10に対しある種のさらなる構造的完全性を与える。基板層42は、光ルミネセンス集合体50が基板層42を通して情報をとるものではないので、透明または半透明である必要はない。基板層42は、カバー層41でのように、酸素がカード10を通って浸透し、酸素感応性光ルミネセンス組成物51の第一集合体と接触する割合を低下させるための酸素障壁として役立つ。適切な材料は、具体的にはプラスチックであるが、これらに限定されるものではない。好ましいプラスチックは、マイラーおよびポリエチレンテレフタレートである。
【0028】
接着性層31および32は、金属とプラスチック層を積層するために使用するのに適する多様な接着剤から選択し得るが、例えば、種々の熱溶融および感圧性接着剤でもよい。また、カバー層41と基板層42が熱溶接によるなど、中間スペーサー層20に直接結合し得る場合、接着層の使用を割愛することができる。
【0029】
図7を参照すると、酸素感応性光ルミネセンス集合体50は、酸素浸透性担体マトリックス58内に埋め込まれた酸素感応性光ルミネセンス色素59である。
【0030】
同様の酸素感応性光ルミネセンス集合体50は、0%および21%集合体51および52の両方に使用されるが、校正された分析機器(図示せず)により読み取られるセンサもしくはプローブ(図示せず)に使用される光ルミネセンス集合体と調和する必要がある。最も好適なのは、酸素感応性光ルミネセンス集合体50および該機器(図示せず)により読み取らせる目的のプローブ(図示せず)を、同じ光ルミネセンス組成物のバッチから同じ段階で製造することである。
【0031】
酸素感応性光ルミネセンス色素59は、酸素感応性光ルミネセンスプローブ(図示せず)の構築に使用される周知の酸素感応性光ルミネセンス色素類のいずれからも選択し得る。かかる酸素感応性光ルミネセンス色素59のリストは、すべてを網羅するものではないが、具体的に、ルテニウム(II)ビピリジルおよびルテニウム(II)ジフェニルフェナノスロリン複合体、白金(II)オクタエチルポルフィン−ケトンなどのポルフィリン−ケトン、白金(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィンなどの白金(II)ポルフィリン、パラジウム(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィンなどのパラジウム(II)ポルフィリン、テトラベンゾポルフィリン類のリン光性金属複合体、クロリン類、アザポルフィリン、およびイリジウム(III)もしくはオスミウム(II)の長減衰ルミネセンス複合体などであるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
該酸素感応性光ルミネセンス色素59は、適当な担体マトリックス58と化合させる。担体マトリックス58として使用される組成物は、酸素浸透性組成物、好ましくは高酸素浸透性組成物である。当業者はそのような酸素浸透性担体組成物58を選択することができる。該担体マトリックス58としての使用に適するポリマーのリストは、すべてを網羅するものではないが、具体的に、シリコーン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、およびある種の他のポリマー類ならびにコポリマー類であるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
典型的には、酸素感応性光ルミネセンス集合体50は、支持層(図示せず)に被覆される。支持層は、典型的には、該酸素感応性光ルミネセンス集合体50と適合性である材料から形成されるシートまたは膜である。当業者は適切な支持層を選択し得る。
【0034】
活性化金属空気電池70は、中間スペーサー層20の保持ウエル29内に保持されており、密閉閉鎖した0%酸素感応性光ルミネセンス集合体51の周囲から酸素を消費するために、0%酸素感応性光ルミネセンス集合体51と流体連通状態にある。
【0035】
亜鉛空気電池などの金属空気電池は、陰極反応物質として使用する空気から、それらが酸素を“呼吸する”という意味で殆どの他の電池とは異なるものである。電気化学システムとは、より正式には、亜鉛/水酸化カリウム/酸素と定義し得るが、“亜鉛−空気”は広く用いられている共通の名称である。金属空気電池は様々な供給源、例えば、ジレット・カンパニーから商標名デュラセル(Duracellは登録商標)として市場入手し得る。代表的な亜鉛−空気電池は、亜鉛陽極、水性アルカリ性電解質および空気陰極からなる。電力は正極での酸素の還元と負極での亜鉛の酸化に由来する。正味の反応を簡潔に示すと、以下の通りである。




【0036】
亜鉛空気電池の負極は一般に粉末化した亜鉛アマルガムである。該亜鉛粉末は一般に非常に低レベルの水銀を含み、電解液中の亜鉛の自己放電からの水素発生による内部圧の高まりを防止する。また、通常ゲル化剤を亜鉛アマルガムと混合して、放電に際しての亜鉛粉末−電解質混合物の均一性を維持する。
【0037】
電池の反応においては、負極の亜鉛が酸化されて、可溶性亜鉛酸塩[Zn(OH)2−]イオンの形状で水酸化亜鉛を形成する。陽極の半反応を以下に示す。




【0038】
水酸化亜鉛は亜鉛粒子の周囲に蓄積するが、亜鉛が完全に酸化されるまで、イオン性または粒子同士の伝導性を妨害することはない。放電が進むにつれて、亜鉛酸塩イオンは、結局は沈殿して酸化亜鉛(ZnO)を形成する。




【0039】
亜鉛−空気電池の空気正極は、一般に、炭素、テフロン(登録商標)、およびニッケルメッキスクリーン上に施された少量の二酸化マンガンからなる混合物である。この物質に次いでその一方の面にテフロン(登録商標)層を積層し、他方の面には分離膜を積層する。テフロン(登録商標)層は、気体、最も重要なのは酸素を電池内にまた電池から拡散させ、漏洩への抵抗性を与える。セパレーターは電極間のイオン伝導体として作用し、また絶縁体として作用して内部短絡を防止する。
【0040】
大気中の酸素は空気電極中の触媒および電解質と反応して、水酸化イオンを生成する。空気正極の半反応を以下に示す。




【0041】
亜鉛空気電池にて一般に採用されるアルカリ性電解質は、少量の酸化亜鉛を含む水酸化カリウムの水溶液であり、負極の自己放電を防止する。水酸化カリウムは負極と正極間の良好なイオン性伝導度を提供し、電池の効率的な放電を可能とする。
【0042】
負極サブアッセンブリーは、負極金属製容器と絶縁体を含む。例示としての負極容器は亜鉛負極を保持し、良好な化学的適合性のための銅による内張り、強化用の中間部のステンレス鋼層、および良好な電気接触のための外側のニッケル層から構成される三層物質である。ナイロン絶縁体はこの金属容器を取り囲み、負の末端を正の末端から絶縁する。シール材コーティングは、一般に、負極金属容器との構築に先立って絶縁体に塗布される。正極アッセンブリーは正極金属容器と空気電極からなる。例示としての正極金属容器は、ニッケルメッキスチールで作られ、正極に空気を接近させるために底部に穿たれた多数の空気孔を有する。これらの空気孔は酸素が電池に入る経路を提供する。
【0043】
一般に多孔性膜をその孔に直接被せて置き、空気電極を全体に均一な空気分布を容易にする。一般に正極シールの形成を補助するためにテフロン(登録商標)のゆるい層をこの膜の頂部に設ける。空気電極それ自体(すなわち、正極)は、そのテフロン(登録商標)側を空気孔に向ける。正極の周長からはみ出しているニッケルスクリーンの末端と、陰極の金属容器の間には干渉があり、低い抵抗接触を形成する。亜鉛負極配合物と電解質は負極サブアッセンブリーに分配されるが、その上に正極サブアッセンブリーを置き、シールする。
【0044】
一旦組み上げた後、空気孔を覆うようにタブを置き、軽い接着剤で貼り付けて密閉し、周囲の酸素が電池に入り込んで正極と接触するのを防止する。電池は単にタブを引きはがすだけで活性化される。
【0045】
活性化された電池70は、周囲の空気から、光ルミネセンス組成物の第一集合体51を含む閉鎖スペースに、酸素が浸透する速度を超える酸素消費速度をもたなければならない。光ルミネセンス組成物の第一集合体51を含む閉鎖スペースに酸素が浸透する速度よりも低い速度で酸素を消費する活性化電池70は、光ルミネセンス組成物の第一集合体51が、0%を超過して十分な酸素濃度に曝されるため、結果として校正が不正確となる。他方、極端な場合、光ルミネセンス組成物の第一集合体51を含む閉鎖スペースへの酸素浸透速度よりも、その割合が有意に大きい酸素消費活性化電池70は、酸素欠乏状態の環境において連続的に長期間操作することにより、水素の発生に伴う内部圧の高まりのために、カード10の構造的変形を惹き起こす。従って、活性化電池70は、好ましくは、光ルミネセンス組成物の第一集合体51を含む閉鎖スペースに酸素が浸透する速度よりもほんの僅か大きい速度で酸素を消費するのがよく、一般にその許容範囲は、閉鎖スペース中への酸素の浸透速度の2倍ないし10倍の範囲である。中間のスペーサー層20、カバー層41および基板層42としての使用に良好な酸素障壁材料を選択することにより、自己放電から生じる活性化電池により達成される酸素消費速度が十分なものとなる。しかし、より高い割合の酸素消費が必要であるか、または望ましい場合、適切な負荷71を電池70に操作可能に接続するとよい。典型的には、少なくとも100kΩの抵抗、好ましくは少なくとも500kΩの抵抗、最も好ましくは1MΩの抵抗を有する負荷71が、酸素消費の必要かつ望ましい速度を提供する。
【0046】
カード10の上部主要面10vには、限定された酸素(例えば、0%、ゼロ、低、最少など)に曝露されるプローブ(図示せず)の代表的集合体として第一光ルミネセンス集合体51を識別するために、また環境濃度の酸素(例えば、21%、二十一、高度、最大、大気など)に曝露されるプローブ(図示せず)の代表的集合体として第二光ルミネセンス集合体52を識別するために、第一表示61および第二表示62(まとめて表示60)を刻印する。
【0047】
校正カード10の寿命は、カード10に使用される金属空気電池70の実行耐用期間により決定され、典型的には電池70の活性化から1年ないし3年である。
【0048】
校正カード10は、校正モードをもつ光酸素センサ(図示せず)を迅速かつ容易に校正するために使用することができる。校正カード10による光酸素センサ(図示せず)の校正は、単純に、(1)光センサを校正モードに設定する段階と、(2)酸素感応性光ルミネセンス組成物の集合体51および52が曝露される既知の酸素濃度と、酸素濃度の読みが相関するように、酸素感応性光ルミネセンス組成物の集合体51および52のそれぞれから酸素濃度を順次読み取る段階と、からなる。
【0049】
酸素濃度の読みと、読み取りを行う酸素感応性光ルミネセンス組成物51または52との相関は、様々な方法で実施し得る。一方法は、光酸素センサ(図示せず)に予め入力した既定の順序で酸素濃度を読み取ることである。第二の方法は、酸素感応性光ルミネセンス組成物の集合体51および52のどちらが感知したかを示すために有効なさらなるデータを、読み取りが行われる各時点で、光酸素センサ(図示せず)に自動的に提供することである(例えば、集合体50を読み取るごとに読み取られる各集合体50に隣接して設けられた特異なバーコード)。さらに、第三の方法は、酸素感応性光ルミネセンス組成物の感知集合体51および52が読み取り時点で曝露された酸素濃度を示すために有効なさらなるデータを、読み取りが行われる各時点で、光酸素センサ(図示せず)に提供することである(例えば、0%集合体51を読み取った後に使用者が0と入力し、また21%集合体52を読み取った後に使用者が21と入力する)。
【0050】
好ましくは、酸素プローブ(図示せず)および校正カード10の両方を光ルミネセンス存続期間モードで操作する。ルミネセンス存続期間の測定は、既知方法のいずれでも実施可能であり、具体的には、ルミネセンス減衰の直接測定、ルミネセンス位相のずれの測定、異方性、または当該プローブと第一および第二集合体51および52のルミネセンス存続期間に直接もしくは間接的に関係するいずれかの他のパラメータであるが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
10 校正カード
10a 校正カード先端
10b 校正カード末端
10r 校正カード右側
10s 校正カード左側
10v 校正カード上部主要面
10w 校正カード下部主要面
19 スペーサーと下層を貫通する曝露チャンネル
20 中間スペーサー層
20v スペーサー層の上部主要面
20w スペーサー層の下部主要面
29 スペーサー層の保持ウエル
31 上部接着性層
32 下部接着性層
41 上部カバー層
42 下部基板層
50 光ルミネセンス組成物集合体
51 固体状態の光ルミネセンス組成物の第一もしくは0%集合体
52 固体状態の光ルミネセンス組成物の第二もしくは21%集合体
58 担体マトリックス
59 酸素感応性光ルミネセンス色素
60 表示
61 固体状態の光ルミネセンス組成物の第一もしくは21%集合体を示す第一表示
62 固体状態の光ルミネセンス組成物の第二もしくは0%集合体を示す第二表示
70 電池
71 電池により電力を供給される負荷


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学酸素センサの校正に使用する校正カードであって、
(i)色素が周囲環境の酸素から隔離されるように密閉閉鎖されたスペース内に保持され、活性化金属空気電池と流体連通状態にある酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体であって、それにより当該密閉閉鎖されたスペース中の酸素が当該電池により消費される第一の集合体と、
(ii)周囲の環境と流体連通状態にある酸素感応性光ルミネセンス色素の第二集合体であって、それにより当該光ルミネセンス色素の第二集合体が環境濃度の酸素に曝露される第二集合体と、
を有する校正カード。
【請求項2】
前記カードが、4cmから20cmの長さ、4cmから20cmの幅、および1cm未満の厚さを有する請求項1に記載の校正カード。
【請求項3】
前記第一集合体および第二集合体両方において酸素感応性光ルミネセンス色素が同一である請求項1に記載の校正カード。
【請求項4】
酸素障壁支持層と酸素障壁カバー層との間に前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体を挟み込むことにより、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体を環境酸素から隔離する請求項2に記載の校正カード。
【請求項5】
前記カバー層がポリエチレンテレフタレートの透明な層である請求項4に記載の校正カード。
【請求項6】
自己放電による活性化電池の酸素消費速度が、周辺空気から前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む閉鎖スペースへの酸素の浸透速度を超える請求項1に記載の校正カード。
【請求項7】
前記電池が少なくとも500kΩの抵抗を有する負荷に連続的に電力を供給し、それによって前記電池が、前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む密閉閉鎖スペースからの酸素の連続的消費に有効である請求項1に記載の校正カード。
【請求項8】
前記電池が少なくとも1MΩの抵抗を有する負荷に連続的に電力を供給し、それによって前記電池が、前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む密閉閉鎖スペースからの酸素の連続的捕捉に有効である請求項1に記載の校正カード。
【請求項9】
周囲の空気から前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む閉鎖スペースへ酸素が浸透する速度と、その速度の10倍との間になるように、電池が消費し得る酸素の消費速度を限定するように選択された抵抗を有する負荷に、前記電池が連続的に電力を供給する請求項1に記載の校正カード。
【請求項10】
周囲の空気から前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む閉鎖スペースへ酸素が浸透する速度と、その速度の2倍との間になるように、電池が消費し得る酸素の消費速度を限定するように選択された抵抗を有する負荷に、前記電池が連続的に電力を供給する請求項1に記載の校正カード。
【請求項11】
前記金属空気電池が亜鉛空気ボタン電池である請求項1に記載の校正カード。
【請求項12】
前記カードが、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体に、制限された酸素に曝露される酸素感応性光ルミネセンス色素としての名称を付す第一表示と、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第二集合体に、周囲環境濃度の酸素に曝露される酸素感応性光ルミネセンス色素としての名称を付す第二表示とを有する請求項1に記載の校正カード。
【請求項13】
前記第一表示が少なくとも“0%”又は“ゼロ”の表示を有し、かつ前記第二表示が“21%”又は“空気”の表示を有する請求項12に記載の校正カード。
【請求項14】
前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第一および第二集合体が、前記酸素障壁支持層と前記酸素障壁カバー層との間に挟まれており、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第二集合体が前記支持層とカバー層の少なくとも一方を貫通する少なくとも1個の穿孔を介してその周囲環境と流体連通状態にある請求項4に記載の校正カード。
【請求項15】
校正モードを有する光酸素センサを校正する方法であって、
(a)請求項1に記載の校正カードを取得する段階と、
(b)前記光酸素センサを校正モードに設定する段階と、
(c)酸素感応性光ルミネセンス色素の集合体が曝露される既知の酸素濃度と酸素濃度示度が相関するように、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の集合体それぞれから酸素濃度示度を順次読み取る段階と、
を有する方法。
【請求項16】
段階(c)が、少なくとも、予め決められた順序で前記酸素感応性光ルミネセンス色素の集合体のそれぞれから酸素濃度を読み取る段階を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
段階(c)が、少なくとも、
(1)酸素感応性光ルミネセンス色素集合体の一方が曝露される酸素濃度を校正モードにおいて光センサを用いて感知する段階と、
(2)前記校正カード上の酸素感応性光ルミネセンス色素の集合体のどちらが感知されたかを示すデータを光センサに提供する段階と、
(3)酸素感応性光ルミネセンス色素の他方の集合体が曝露される酸素濃度を校正モードにおいて光センサを用いて感知する段階と、
を有する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
段階(c)が、少なくとも、
(1)酸素感応性光ルミネセンス色素集合体の一方が曝露される酸素濃度を校正モードにおいて光センサを用いて感知する段階と、
(2)酸素感応性光ルミネセンス色素の一方の集合体が曝露される既知の酸素濃度を示すデータを前記光センサに提供する段階と、
(3)酸素感応性光ルミネセンス色素の他方の集合体が曝露される酸素濃度を校正モードにおいて光センサを用いて感知する段階と、
(4)酸素感応性光ルミネセンス色素の他方の集合体が曝露される既知の酸素濃度を示すデータを前記光センサに提供する段階と、
を有する請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体が、酸素障壁支持層と酸素障壁透明カバー層との間に挟まれている請求項15に記載の方法。
【請求項20】
自己放電による活性化電池の酸素消費速度が、周辺空気から前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む閉鎖スペースへの酸素の浸透速度を超えている請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記電池が少なくとも100kΩの抵抗を有する負荷に連続的に電力を供給し、それによって前記電池が、前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む密閉閉鎖スペースからの酸素の連続的消費に有効である請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記電池が少なくとも500kΩの抵抗を有する負荷に連続的に電力を供給し、それによって前記電池が、前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む密閉閉鎖スペースからの酸素の連続的捕捉に有効である請求項15に記載の方法。
【請求項23】
周囲の空気から前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む閉鎖スペースへ酸素が浸透する速度と、その速度の10倍との間になるように、電池が消費し得る酸素の消費速度を限定するように選択された抵抗を有する負荷に、前記電池が連続的に電力を供給する請求項15に記載の方法。
【請求項24】
周囲の空気から前記光ルミネセンス色素の第一集合体を含む閉鎖スペースへ酸素が浸透する速度と、その速度の2倍との間になるように、電池が消費し得る酸素の消費速度を限定するように選択された抵抗を有する負荷に、前記電池が連続的に電力を供給する請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記校正カードが、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第一集合体に、制限された酸素に曝露される酸素感応性光ルミネセンス色素としての名称を付す第一表示と、前記酸素感応性光ルミネセンス色素の第二集合体に、周囲環境濃度の酸素に曝露される酸素感応性光ルミネセンス色素としての名称を付す第二表示と、を有する請求項15に記載の方法。
【請求項26】
光ルミネセンス酸素プローブと流体連通状態にあるサンプル中の酸素濃度を定量し得るプローブの読み取りが可能な分析機器の校正に使用する校正カードであって、前記プローブが酸素浸透性担体マトリックス内に埋め込まれた酸素感応性光ルミネセンス色素を有しており、前記校正カードが、
(a)第一プローブ、すなわち周囲の酸素から隔離されたプローブであって、そのプローブから酸素を捕捉するために有効な活性化金属空気電池と流体連通状態にあるプローブであり、それによって第一プローブと連通状態にある酸素の濃度を低下させ、ゼロ近傍に維持することのできるプローブと、
(b)第二プローブ、すなわち前記プローブと環境濃度の酸素との連通を可能とするため、周囲の環境と流体連通状態にあるプローブと、
を有する校正カード。
【請求項27】
前記酸素感応性光ルミネセンス色素が、ルテニウムビピリジル、ルテニウムジフェニルフェナノトロリン、白金ポルフィリン、パラジウムポルフィリン、テトラベンゾポルフィリンのリン光性複合体、クロリン、ポルフィリン−ケトン、アザポルフィリン、およびイリジウム(III)もしくはオスミウム(II)の長減衰ルミネセンス複合体からなるグループより選択される遷移金属複合体である請求項26に記載の校正カード。
【請求項28】
前記酸素浸透性担体マトリックスが、シリコーン、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびポリスルホンからなるグループより選択される請求項26に記載の校正カード。
【請求項29】
前記第一および第二プローブが酸素障壁支持層上のコーティングとして塗布される請求項26に記載の校正カード。
【請求項30】
前記酸素障壁支持層が、ポリエチレンテレフタレート、塩化ポリビニル、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなるグループより選択される請求項29に記載の校正カード。
【請求項31】
前記酸素障壁支持層が二軸配向性ポリエチレンテレフタレートである請求項29に記載の校正カード。
【請求項32】
前記第一および第二プローブが透明なカバー層で覆われている請求項26に記載の校正カード。
【請求項33】
前記校正カードが、(i)第一プローブに、略ゼロ濃度の酸素に曝露されたプローブの校正値としての名称を付す第一表示と、(ii)第二プローブに、周囲環境濃度の酸素に曝露されたプローブの校正値としての名称を付す第二表示と、を有する請求項26に記載の校正カード。
【請求項34】
校正モードを有し、かつ光ルミネセンス酸素プローブと流体連通状態にあるサンプルもしくはサンプルのセット中の酸素濃度を定量し得る一個もしくは複数個の光ルミネセンス酸素プローブの読み取りが可能な分析機器を校正する方法であって、
(a)請求項26に記載の校正カードを取得する段階と、
(b)前記第二プローブを既知酸素濃度を有する媒体に曝露する段階と、
(c)分析機器を校正モードに設定する段階と、
(d)前記分析機器により第一プローブから示度を読み取る段階と、
(e)前記読み取り値をゼロ酸素濃度に相関させる段階と、
(f)前記分析機器により第二プローブから示度を読み取る段階と、
(g)前記読み取り値を前記第二プローブが曝露された既知の酸素濃度と相関させる段階と、
を有する方法。
【請求項35】
前記第一および第二プローブから示度を読み取る段階を予め決められた順序で実施する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記校正カード上のどのプローブが最初に読み取られたかを示すデータを前記分析機器に提供する段階をさらに有する請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第二プローブが曝露されたサンプルの酸素濃度を示すデータを前記分析機器に提供する段階をさらに有する請求項34に記載の方法。
【請求項38】
示度と相関が、光ルミネセンスの存続期間に基づく請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−112966(P2012−112966A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−269433(P2011−269433)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(592014182)モコン・インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】