説明

金属箔付き反射シート

【課題】耐熱性・耐光性に優れ、熱や光による黄変を生じることなく、高い反射率を維持できるものであって、金属箔層と光反射性を有する弾性体層とが化学的に強固に結合されており、さらにその弾性体層と基材とが化学的に強固に結合して基板を形成することができる金属箔付き反射シートを提供する。
【解決手段】金属箔付き反射シートは、光反射剤11の粒子を分散しつつ含有している弾性ゴム製でありその被接着面側表面に水酸基を有する弾性体層12と、水酸基を被接着面側表面に有する金属箔層13とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具や発光装置の基板材料として用いられるものであり、光反射剤が含有されている非流動性弾性体と金属箔層とを化学的な結合により接着させた反射シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの発光素子を光源とした発光装置や照明器具は、配線パターンが形成されている基板上に発光素子が実装され、その発光素子から伸びたリード線とその基板上の配線とが繋がれており、数mm〜数cm程度のパッケージでその発光素子を取り巻くように一体化して構成された小型のものである。
【0003】
これらの基板は、非流動性である樹脂や弾性ゴムやセラミックスなどの基材と、配線パターンになる銅箔とが、接着剤を介して貼り合わされ、層状に重ねられて形成されているものである。
【0004】
接着剤で確実に密着させて、接着した基板を形成するには、接着剤と基材及び銅箔との濡れ性が最も重要な要因であるので、流動性の接着剤を介して基材及び銅箔を当接させた後、接着剤を硬化させることにより、行われる。
【0005】
このような流動性の接着剤を用いた化学的接着では、接着すべき基材及び銅箔の境界端部から接着剤がはみ出したり、接着剤層の厚さや十分な接着強度の厳密な制御が困難であったりするという問題があった。このような問題は、発光装置の発光効率の低下や発光装置自体の劣化や美観低下の原因となり、その品質を低下させてしまう。さらにその接着力は重合とその分子間力とによるものであるため、比較的弱い。しかも基材の材料が変われば適切な接着剤も変わるため、最適な接着剤の選定は、試行錯誤により行わなければならず、大変な手間がかかっていた。
【0006】
一方、粘着剤を付した両面テープで非流動性の基材及び銅箔を貼付すると、粘着剤のはみ出しや粘着剤層の厚さを制御し易い反面、粘着は極めて弱いファンデルワールス力に因るものであるから、高温又は高湿度雰囲気下でその力が一層弱まってしまう。そのため、接着剤を用いた場合よりも遥かに容易に、基材や銅箔と粘着剤とが剥離してしまう。
【0007】
接着剤も粘着剤も用いることなく、直接的な化学結合の生成による非流動性の弾性体と金属箔とを接着する試みは、ほとんどなされていない。
【0008】
特許文献1には、接着剤や粘着剤を用いることなく、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)からなる樹脂成形体と三次元化シリコーンゴムとの一体成形体を製造する方法として、ABS系樹脂成形体の接着すべき部分を予め紫外線処理しておき、次いで液状付加反応硬化型シリコーンゴムを成形体に付し、硬化させて接着一体化する方法が、開示されている。この方法は、予め成型された非流動性の基材同士を、直接、接着させるものでないから、接着剤を使用した場合と同様の課題が顕在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−183864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、耐熱性・耐光性に優れ、熱や光による黄変を生じることなく、高い反射率を維持できるものであって、金属箔層と光反射性を有する弾性体層とが化学的に強固に結合されており、さらにその弾性体層と基材とが化学的に強固に結合して基板を形成することができる金属箔付き反射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された金属箔付き反射シートは、光反射剤の粒子を分散しつつ含有している弾性ゴム製でありその被接着面側表面に水酸基を有する弾性体層と、水酸基を被接着面側表面に有する金属箔層とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着していることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記弾性体層及び/又は金属箔層の前記被接着面側表面が、コロナ放電処理、プラズマ処理及び/又は紫外線照射処理されることによって、そこに前記水酸基が生成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記共有結合が、直接に又はポリシロキサンを媒介して結合したエーテル結合であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記弾性ゴムが、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン−メチレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、及びスチレン−ブタジエン共重合ゴムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記光反射剤が、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、シリカ、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種のフィラーであることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記金属箔層が、銅箔、銀箔、金箔、又はアルミ箔であることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載された金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記光反射剤が、前記弾性体層中に、30〜75質量%含有されていることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載された金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、前記弾性体層の厚みが、3〜100μmであることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載された金属箔付き反射シートは、請求項1に記載されたものであって、フレキシブルシートであることを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載された基板は、請求項1に記載の金属箔付き反射シートの弾性体層の露出表面に有する水酸基と、基材の被接着面側表面に有する水酸基とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着していることを特徴とする。
【0021】
請求項11に記載された基板は、請求項10に記載されたものであって、前記金属箔層がエッチングされていることを特徴とする。
【0022】
請求項12に記載された基板は、請求項10又は11に記載されたものであって、前記金属箔層の露出表面に有する水酸基と、光反射剤の粒子を分散しつつ含有しつつ前記金属箔層を覆う別な弾性体層の被接着面側表面に有する水酸基とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の金属箔付き反射シートは、その弾性体層に光反射剤の粒子が均一に分散されて含有されており、そこに入射する光を高効率で反射させることができる。また、金属箔層と弾性体層とが密着して接着しているものであり、金属箔層をエッチングした時に、金属箔層からエッチングされた部位で露出している弾性体層に光が入射するとその光を反射させることができる。
【0024】
この金属箔付き反射シートは、耐熱性や、耐光性に優れており、高輝度LEDなどの光源から熱や様々な波長の光を受けても黄変することなく高反射率を保ち、長期使用することができる。
【0025】
金属箔付き反射シートは、金属箔層と弾性体層とが、互いの被接着面側表面の水酸基を介して化学的に結合しているものである。従来のような接着剤を介した部材間の接着の際における気泡の生成や、接着すべき部材の境界からの接着剤のはみ出しがないため、外観美的に優れ、高品質のものにすることができる。
【0026】
また、この金属箔付き反射シートは、金属箔層と弾性体層とが互いの被接着面側表面の水酸基を介して化学的に結合しており、接着力の弱い接着剤や粘着剤に比べて、強固に接着されているものである。金属箔付き反射シートを用いた基板の形成時、またその使用時において、それらの接着面で剥離することなく安定的に用いることができる。
【0027】
金属箔付き反射シートによれば、その弾性体層側の表面に水酸基を生成させることで、それと接着する基材を制限することなく化学的に接着し、基板を形成することができる。また、基板形成においてその基材の支持体を担う補助材となることができる。
【0028】
本発明の基板は、発光装置や照明器具などのリジッド基板やフレキシブル基板として用いることができる。その基板の製造工程において、接着面での剥離を生じることなく加工することができる。またこの基板は、それを実装した発光装置の発光素子から照射される光を光漏れすることなく、反射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用する金属箔付き反射シートの一実施例を示す模式断面図である。
【図2】本発明を適用する金属箔付き反射シートの別な実施例を示す模式断面図である。
【図3】本発明を適用する金属箔付き反射シートの別な実施例を示す模式断面図である。
【図4】本発明を適用する金属箔付き反射シートの弾性体層の加熱後における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【図5】本発明を適用外の基材の加熱後における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【図6】本発明を適用する金属箔付き反射シートの弾性体層の各紫外線照射時間における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【図7】本発明を適用外の基材の各紫外線照射時間における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【図8】本発明を適用する金属箔付き反射シートで形成した各基板における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【図9】本発明を適用する金属箔付き反射シートの弾性体層の厚み毎における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【図10】本発明を適用する金属箔付き反射シートの弾性体層の各酸化チタン含有量毎における波長と反射率との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明の金属箔付き反射シートの好ましい一実施例について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0032】
金属箔付き反射シート1は、光反射剤11の粒子を分散しつつ含有している弾性体層12と、金属箔層13とが、積層されて、化学結合を介して、接着しているものである。弾性体層12の被接着面側表面が予めコロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理され、金属箔層13の被接着面側表面が予めコロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理されることによって、それらの表面に水酸基が生成され露出したものであり、弾性体層12と金属箔層13とに接着体となる架橋性ポリシロキサンのような機能性シラン化合物を挟み積層しており、両層の被接着面側表面の水酸基を介して、脱水反応によるシリルエーテル基の結合を形成して、化学的に接着している。
【0033】
この水酸基を介した接着は、弾性体層12と金属箔層13とが当接して、両層の被接着面側表面の水酸基同士が直接結合し、エーテル結合を形成していてもよい。
【0034】
弾性体層12は、光反射剤11の粒子が均一に分散された弾性ゴムで成形されたシート状のものである。この弾性体層12は、光を反射させるものであり、紫外線や熱線に曝されてもその反射率は低下せず、耐久性・耐候性に優れているものである。
【0035】
弾性体層12は、その厚みが3〜100μmであると好ましく、10〜50μmであるとなお一層好ましく、その硬度がショアA硬度でA30〜A70であると好ましいものである。弾性体層12がその硬度範囲より低く、ゲル状であると、粘着性が高くなり扱いにくくなる。
【0036】
弾性体層12を形成する弾性ゴムは、主としてパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム等であるシリコーンゴム、ポリオール架橋型フッ素ゴム、パーオキサイド架橋型フッ素ゴム、ポリアミン架橋型フッ素ゴム等であるフッ素ゴムや、エチレン−プロピレン−ジエン−メチレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等であるオレフィン系ゴムが挙げられ、中でも好ましくは三次元化シリコーンゴムである。これらの弾性ゴムは1種であってもよく、また複数混合されたものであってもよい。
【0037】
弾性体層12を形成するパーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン(分子量:50万〜90万)、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0038】
パーオキサイド系架橋剤として、具体的に、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0039】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類や、そのシリコーンゴムで成形された弾性体層12に接着する金属箔層13の素材の性質や性能に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜2質量部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋度が高すぎてシリコーンゴムの弾性が低減してしまう。
【0040】
弾性体層12を形成する付加型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン(分子量:0.05万〜10万)、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーのようなH基含有ポリシロキサンの組成物、
アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンのようなアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンのような酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0041】
これらの組成物から付加型シリコーンゴムを調製する加工条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜200℃で、1分〜24時間加熱するというものである。これにより弾性ゴムとして付加型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0042】
弾性体層12を形成する縮合型シリコーンゴムは、スズ系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン(分子量:0.05万〜20万)、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフルオロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt−ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ−n−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N−メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランのような架橋剤との組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンのような末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0043】
これらの組成物から縮合型シリコーンゴムを調製する加工条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜100℃で、10分〜24時間加熱するというものである。これにより弾性ゴムとして縮合型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0044】
フッ素ゴムは、耐熱性に優れており、熱により黄変しない樹脂であり、具体的に、フッ化ビニリデン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系が、挙げられる。
【0045】
光反射剤11は、その粒径が、0.1〜70μmであると好ましく、弾性体層12中で、均一に分散できるものであると好ましい。
【0046】
光反射剤11として、具体的に、酸化チタンやアルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶・立方晶)、シリカ(結晶性シリカ・溶融シリカ)、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、粉末アルミニウムのような無機白色顔料が挙げられる。中でも好ましくはアナターゼ型酸化チタンである。これらの光反射剤は、1種であってもよく、また複数混合されたものであってもよい。特に、アナターゼ型酸化チタンと共に、別な前記無機白色顔料が共存していると、光の漏出が無くなり反射率が高くなる。
【0047】
アナターゼ型酸化チタンは、形状に制限がなく任意の粒形状、例えばフレーク状、不定形状、又は球状の粒子が使用できるが、その粒径が0.1〜10μmであることが好ましく、Al、ZrO、SiOなどで表面処理したアナターゼ型酸化チタンであってもよい。
【0048】
白色のアナターゼ型酸化チタン粉末は、ルチル型酸化チタンのように触媒作用に乏しく化粧品等の外用薬に白色顔料として使用可能な低活性の粉末に比べ、遥かに分解触媒活性作用が大きい。アナターゼ型酸化チタン粉末は、無機物からなるタイルや外壁材のような建材などに添加されその建材表面に付着した塵埃等の付着異物を分解するほどの強力な光分解触媒として作用するものであるから、通常、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトンのような熱可塑性樹脂等の様々な高分子化合物に添加されるとそれを分解し黄変させたり、劣化してひび割れを生じさせたりしてしまう。しかし、特にシリコーンはアナターゼ型酸化チタンに対しても化学的に安定であるから、シリコーンで形成された弾性体層は長期間にわたり変質も変形もしない。
【0049】
これらの光反射剤11は、弾性体層12中に、30〜75質量%含まれていることが好ましく、更に好ましくは60〜70質量%である。例えば、光反射剤11が酸化チタンの場合、この範囲より少ないと白色にならないため十分な反射性が得られず、一方この範囲を超えると弾性体に均一に分散させることができず、成型することができないことに加え、物性値が著しく低下してしまう。さらに、酸化チタンの触媒活性により生成したOHラジカルあるいはOHラジカルによって有機質の酸化分解反応性が高くなり、それにともなう変色によって反射率が低下してしまう。
【0050】
金属箔付き反射シート1は、弾性体層12に、補強性、導電性、熱伝導性、耐摩耗性、耐紫外線性のような耐光性、耐放射線、耐熱性、耐候性、柔軟性などの機能を高めるために機能性添加剤を添加したり、増量させたりするために機能性充填剤が添加されていてもよい。
【0051】
機能性充填剤は、例えば、補強剤として、HAF、FEFなどの各種グレードのカーボンブラック、エアロジル、乾式シリカ、湿式シリカ、沈降シリカ、ニプシル、タルク、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維が、挙げられる。
【0052】
また、機能性添加剤は、例えば導電剤として、カーボンブラック、金粉、銀粉、銅粉、ニッケル粉、これらの金属で表面被覆された金属酸化物粉体、セラミックス粉体、有機粉体、有機繊維が、挙げられる。
【0053】
さらに、機能性添加剤は、例えば伝熱剤として、Al、AlN、Si、C、SiC、グラファイトなどの粉体や繊維が、挙げられる。
【0054】
これらの機能性添加剤や機能性充填剤は、弾性体層12を形成する弾性ゴムの種類・性質や金属箔付き反射シート1の使用目的・性能に応じ、弾性ゴム100質量部に対し、適宜、例えば1〜300質量部、好ましくは20〜200質量部添加される。添加量がこの範囲を下回ると、機能性添加剤や機能性充填剤の各機能が発揮されず、一方この範囲を上回ると、弾性体層12のゴム弾性が低下してしまう。
【0055】
金属箔層13は、その厚さが10〜70μmであると好ましい。
【0056】
金属箔層13として、具体的に、銅箔、銀箔、金箔、又はアルミ箔が挙げられる。中でも好ましくは導電性の高い銅箔である。
【0057】
金属箔付き反射シート1は、例えば以下のようにして製造される。
【0058】
ロール状に巻いた弾性ゴムをロールから供給し、その被接着面側表面にコロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理を施し、被接着面側表面に水酸基を生成させる。そこへ、接着体となる反応性基含有ポリシロキサン溶液を被接着面側表面に塗布して表面処理をする。同様に、ロール状に巻いた金属箔をロールから供給し、その被接着面側表面にコロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理を施し、被接着面側表面に水酸基を生成させる。このように処理された、弾性ゴムの被接着面側表面と金属箔の被接着面側表面とを貼り合わせて、ヒーターで加熱し、加圧ローラーで圧着して、カッターで所定の大きさに切断することで、弾性ゴム製の弾性体層12と金属箔層13とが積層されて接着されている金属箔付き反射シート1を得る。
【0059】
これらのコロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理は、弾性体層12と金属箔層11とが接着される直前に行われることが好ましい。
【0060】
また、これらの金属箔付き反射シート1の接着は、弾性体層12と金属箔層11とが、コロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理により生成した水酸基を介して化学的に強固に接着をしていればよく、接着体となる反応性基含有ポリシロキサン溶液で表面処理されていなくともよい。
【0061】
さらに、これらの接着は、弾性体層12と金属箔層11とが化学的に強固に接着をしていればよく、コロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理の後に、加熱処理だけであってもよく、加圧処理だけであってもよい。
【0062】
ロール・ツー・ロール方式で形成する例を示したが、金属箔付き反射シート1の製造方法は特に限定されず、予め任意の大きさにカットした弾性体層12と金属箔層13との被接着面側表面にコロナ放電処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理を施し、水酸基を生成させ、それらを反応性基含有ポリシロキサン溶液に浸漬させ表面処理をし、両層の被接着面側表面同士を貼り合わせて、接着してもよい。さらに、任意の形状をした金属箔層12に弾性ゴムを流し入れ金型で型押しして弾性体層12を成形する金型成形であってもよい。
【0063】
これらの形状は、特に限定されず、平面形状であってもよく、立体形状であってもよい。また、平面形状に形成した金属箔付き反射シート1を型押しして、カップ状等の立体形状に成型してもよい。
【0064】
また、金属箔付き反射シート1を形成する工程において、金属箔付き反射シート1の表面加工であるエッチングは、特に限定されない。例えば、立体形状の金属箔付き反射シート1を形成する場合、平面形状の金属箔付き反射シート1にエッチングした後、型押しで立体形状の金属箔付き反射シート1を形成してもよく、金属箔付き反射シート1を型押しで立体形状に形成した後、その金属箔付き反射シート1にエッチングしてもよい。
【0065】
このように得られた金属箔付き反射シート1は、380〜400nmの波長域のみならずそれ以上の可視光領域の光とそれより長波長の赤外線のような1000nm以下の波長域の熱線とを、高い反射率で、光漏れすることなく、十分に反射できる。
【0066】
この金属箔付き反射シート1は、その厚さが13〜120μmであると好ましく、13〜80μmであるとなお一層好ましい。厚さがこの範囲を上回ると、金属箔付き反射シート1にドリルで穴開けをする際に隆起して加工性が悪くなる。
【0067】
また、金属箔付き反射シート1は、金属箔付き反射シート1の金属箔層13の露出表面と弾性体層12の露出表面とがポリエチレンテレフタラート等の剥離シートであるカバー材(不図示)で被覆され、接着されていてもよい。また、金属箔層13の露出表面及び弾性体層12の露出表面がカバー材で覆われている例を示したが、どちらか一方の露出表面のみが覆われているものでもよい。
【0068】
さらに、本発明の金属箔付き反射シート1における別な実施例を図2に示す。
【0069】
金属箔付き反射シート1は、金属箔付き反射シート1の弾性体層12の露出表面に、基材14が積層され接着されて、基板2を形成している。金属箔付き反射シート1と基材14との接着は、弾性体層12と金属箔層13との接着と同様な方法で、互いの水酸基を介して、化学的に結合することができる。また、その金属箔付き反射シート1と基材14との接着において、互いの水酸基が、前記のような接着体を介して結合していてもよく、直接接合していてもよい。
【0070】
基板2は、金属箔付き反射シート1をケミカルエッチングしてから基材14に貼り付けられて形成されていてもよく、金属箔付き反射シート1を基材14に貼り付けてからエッチングして形成されていてもよい。
【0071】
基板2を形成する基材14は、金属材料及びその金属材料加工製品、樹脂及び樹脂加工製品、セラミックス及びセラミックス加工製品、架橋ゴム及び架橋ゴム加工製品が挙げられる。
【0072】
金属箔付き反射シート1と基材14とを化学的に接着させた基板2は、発光装置や照明器具等に用いることができる。発光装置や照明器具の発光素子から放出される光のうち、基板表面に照射される光を、光漏れなく反射させ、有効に活用することができる。
【0073】
また、さらに別な実施例を図3に示す。この金属箔付き反射シート1は、金属箔付き反射シート1の弾性体層12の露出表面に、基材14が積層され接着されて、基板2を形成しており、エッチングされた金属箔層13a・13bの露出表面に発光素子16から伸びた配線15a・15bが接着され、その接着面以外の露出表面に別な弾性体層12a・12bが接着されているものである。
【0074】
この金属箔付き反射シート1の弾性体層12と金属箔層13との強固な接着は、その被接着面表面に水酸基を生成させるために、予めコロナ放電処理やプラズマ処理や紫外線処理が行われることが重要である。また、金属箔付き反射シート1と基材14との接着も、同様に、その被接着面表面に水酸基を生成させるために、予めコロナ放電処理やプラズマ処理や紫外線処理が行われることが重要である。
【0075】
有機材料に、紫外線照射処理、コロナ放電処理又はプラズマ処理を施すと、有機材料の表面に、OH基、COOH基及びC=O基のような反応性基が新たに生成することは良く知られている。しかし、弾性体層12は、紫外線照射に耐える素材のため、紫外線照射をする場合、その表面のOH基等の反応性基は、多少生成する程度である。一方、弾性体層12に、コロナ放電処理やプラズマ処理を施すと、その表面にOH基が、非常に多く生成することが、X線誘起光電子分光(XPS)分析で確かめられた。XPS分析の結果、弾性体層の表面にSiOH成分(Si+3)の増加が高濃度で観察された。従って、コロナ放電処理又はプラズマ処理を施すことが好ましい。
【0076】
弾性体層12や金属箔層13の表面に予め施すコロナ放電処理は、例えば大気圧コロナ表面改質装置であるコロナマスター(信光電気計測株式会社製、商品名)を用いて、電源:AC100V、ギャップ長:1〜4mm、出力電圧:5〜40kV(表面電圧)、電力:5〜40W、発振周波数:0〜40kHzで0.1秒〜60秒、温度0〜60℃、移動速度:0.1〜10m/min、移動回数:1〜20回の条件で行われる。
【0077】
別なコロナ放電処理であるコロナ炎噴射方コロナ放電処理は、例えばコロナ表面改質装置であるコロナフィット(信光電気計測株式会社製、商品名)を用いて、電源:AC100V、ギャップ長:1〜10cm、出力電圧:5〜40kV(表面電圧)、電力:5〜40W、発振周波数:0〜40kHzで、0.1分〜60分、温度0〜60℃の条件で行われる。
【0078】
このようなコロナ放電処理は、一般に30〜90%相対湿度の空気(窒素:酸素=75.0:23.5(重量比))、100%窒素、100%酸素、空気混合アルゴン、空気混合二酸化炭素のような雰囲気下で、行われる。
【0079】
コロナ放電処理は、水、アルコール類、アセトン類、エステル類などで濡れている状態で、行われてもよい。
【0080】
弾性体層12や金属箔層13の表面に予め施す大気圧プラズマ処理は、例えば、大気圧プラズマ発生装置であるAiplasuma(松下電工株式会社製、商品名)を用いて、プラズマ処理速度10〜100mm/s、電源:200又は220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1秒〜60秒の条件で行われる。
【0081】
これらの弾性体層12や金属箔層13の表面に、紫外灯で、直接、紫外線照射処理を行ってもよい。
【0082】
弾性体層12や金属箔層13への大気圧コロナ放電処理やプラズマ処理や必要に応じ紫外線照射処理によって、それらの基材表面にOH基が生成するが、このOH基は、金属原子に直接結合した無機原子結合性OH基と、炭素原子に直接結合した有機基結合性OH基とに区別される。
【0083】
弾性体層12や金属箔層13が当接したとき、無機原子結合性OH基同士、又は無機原子結合性OH基と有機基結合性OH基とは、比較的容易に脱水反応を起こして直接、エーテル結合(−O−)を形成し比較的強い接着をするが、有機基結合性OH基同士は、脱水反応を起こし難く、限定された条件でなければ、直接、エーテル結合を形成できず、しかも比較的弱い接着をするに過ぎない。
【0084】
例えば、弾性体層12を形成する弾性ゴムであるシリコーンゴムは、コロナ放電処理やプラズマ処理によって十分に高濃度のOH基を表面に生成させるが、非シリコーンゴムで形成された弾性体層12や金属箔層13や基材14は、コロナ放電処理やプラズマ処理で十分な濃度のOH基が得られない場合が多い。
【0085】
非流動体である弾性体層12と金属箔層13と、また弾性体層12と基材14とを接触によって接着させるには、両者の接着面の表面上に十分な濃度のOH基を生成させたり、僅かに生成したOH基を利用して他方のOH基との反応性基濃度を増幅させたりする必要がある。特に、有機基結合性OH基同士を反応させるためには、一方の有機基結合性OH基を無機原子結合性OH基に変換したり、両方の有機基結合性OH基と反応する官能基を導入したりする必要がある。そのために、接着体となるシランカップリング剤のような機能性シラン化合物を用いてもよい。
【0086】
このような機能性シラン化合物は、OH基との反応性が高い反応性基を含有するポリシロキサンが挙げられる。
【0087】
このような反応性基含有ポリシロキサンとして、下記化学式(1)
【化1】

(式(1)中、nは3〜4の数であって、反応性基である−OCHの少なくとも何れかが、弾性体層12及び金属箔層13の表面のOH基と反応するものである)で示される化合物が挙げられる。この化合物は、繰返単位が、ブロック共重合、又はランダム共重合したものであってもよい。このビニルメトキシシロキサンホモポリマーのようなビニルアルコキシシロキサンホモポリマーの溶液に浸漬したりその溶液を塗布したり、反応性を向上させるために、それを白金触媒懸濁液に浸し、活性シリル基中のビニル基に白金触媒を保持させてもよい。
【0088】
また、別の反応性基含有ポリシロキサンとして、下記化学式(2)
【化2】

(式(2)中、p及びqは0又は2〜200の数でrは0又は2〜100の数であってp+q+r>2である。-A,-A及び-Aは、-CH、-C、-CH=CH、-CH(CH)2、-CHCH(CH)、-C(CH)、-C又は-C12と、-OCH、-OC、-OCH=CH、-OCH(CH)、-OCHCH(CH)、-OC(CH)、-OC及び-OC12から選ばれOH基と反応し得る反応性基との何れかである。-B及び-Bは、-N(CH)COCH又は-N(C)COCHと、-OCH、-OC、-OCH=CH、-OCH(CH)、-OCHCH(CH)、-OC(CH)、-OC、-OC12、-OCOCH、-OCOCH(C)C、-OCOC、-ON=C(CH)及び-OC(CH)=CHから選ばれOH基と反応し得る反応性基との何れかである。p,q及びrを正数とする-{O-Si(-A)(-B)}p-と-{O-Ti(-A)(-B)}-と-{O-Al(-A)}-との繰返単位中の-A,-A,-A,-B及び-Bの少なくとも何れかが前記反応性基であり、三次元化シリコーンゴム弾性基材及び被接着基材の表面のOH基と反応するものである)
で模式的に示される化合物が挙げられる。この化合物は、繰返単位が、ブロック共重合、又はランダム共重合したものであってもよい。
【0089】
このようなOH基と反応する反応性基含有ポリシロキサンの溶液に弾性体層12や金属箔層13、とりわけ非シリコーンゴムで形成された弾性体層12や金属箔層13を、浸漬し、その後、熱処理すると、その基材表面のOH基に、反応性基含有ポリシロキサンが結合し、単層の分子膜を形成する結果、他方のOH基との反応性基が増幅される。弾性体層12と金属箔層13とを当接させると、他方の被接着面側表面上のOH基が、反応性基含有ポリシロキサンに化学的結合する結果、両者の被接着面側表面のOH基が反応性基含有ポリシロキサンを介して間接的に結合して、弾性体層12と金属箔層13とが接着される。
【0090】
反応性基含有ポリシロキサンの溶液に用いられる溶媒は、そのポリシロキサンに反応しないものであることが必要である。そのような溶媒として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、カルビトール、セルソルブ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、アニソールのようなエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルのようなエステル類、ヘキサン、ガソリンのような炭化水素類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いられてもよく、複数混合して用いられてもよい。
【0091】
反応性基含有ポリシロキサンの溶液は、これら溶媒100mlに対して、反応性基含有ポリシロキサンを0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%と、必要に応じ添加剤とを、溶解させて調製する。反応性基含有ポリシロキサンが0.001質量%未満であると、OH基の反応性増幅効果が不十分となってしまい、一方10質量%を超えても反応性増幅効果が増強しないので、反応性基含有ポリシロキサンが無駄になってしまう。
【0092】
反応性基含有ポリシロキサンの溶液に添加される添加剤として、樹脂や加硫ゴムの表面の有機基結合性OH基と、反応性基含有ポリシロキサンとの反応を促進する第三級アミンや有機酸、弾性体層上や金属箔層上でその溶液中の溶剤が揮発することに起因して斑が生じるのを防止する界面活性剤が、挙げられる。
【0093】
反応性基含有ポリシロキサン溶液への浸漬処理は、この溶液に、弾性体層12、金属箔層13、及び基材14を、0〜100℃、好ましくは20℃〜80℃で、1秒〜120分間、好ましくは1分〜30分間浸漬させて、反応させるというものである。この温度範囲を下回ると、反応時間がかかり過ぎて生産性が低下し、この温度範囲を上回ると、これらの弾性体層12、金属箔層13、及び基材14に溶剤が染込んでしまい、溶媒除去などの面倒な後処理が必要になってしまう。この反応時間を下回ると反応が不十分になって十分なOH基反応性増幅効果が得られず、一方この反応時間を越えると、生産性が悪化してしまう。
【0094】
反応性基含有ポリシロキサン溶液への浸漬処理だけでは、OH基の反応性増幅効果が不十分な場合、加熱処理を施してもよい。好ましい加熱処理条件は、弾性体層12の素材の種類・材質や、金属箔付き反射シート1の製品としての特性によって異なるので、一概に限定できないが、高温で熱変形するなどの製品の機能上に高温での加熱を避けるべきである場合には、比較的低温で長時間をかけて加熱処理する必要があり、一方、高温でも熱変形せず製品の機能上問題がない場合には、生産性を重視し比較的高温条件で、加熱が行われる。
【0095】
反応性基含有ポリシロキサン溶液へ室温程度で浸漬し、弾性体層12、金属箔層13及び基材14へこの溶液が吸着された後、加熱すると、溶剤が揮発して固体状態の反応性基含有ポリシロキサンが付着したことになり、反応性が向上する。加熱温度は、0〜300℃、好ましくは80℃〜200℃である。この範囲を下回ると反応時間がかかり過ぎ生産性が低下してしまい、一方、この範囲を上回るとこれら弾性体層12、金属箔層13及び基材14が分解してしまう。加熱時間は、1秒〜120分間、好ましくは1分〜30分間である。この加熱時間範囲を下回ると、反応が不十分となり十分なOH基反応性増幅効果が得られず、一方、この加熱時間範囲を上回ると、生産性が低下してしまう。20〜160℃で1分〜60分間加熱すると、なお一層好ましい。
【0096】
反応性基含有ポリシロキサン溶液への浸漬処理に代えて、反応性基含有ポリシロキサン溶液の噴霧処理、引続き乾燥処理、及び必要に応じて加熱処理するものであってもよい。
【0097】
このような噴霧、乾燥、加熱処理は、反応性基含有ポリシロキサン溶液を噴霧器に入れ、弾性体層12、金属箔層13、及び基材14の表面に、噴霧器を用いた反応性基含有ポリシロキサン溶液の噴霧と、乾燥とを繰り返して、反応性基含有ポリシロキサンを、これら基板に、効率よく付着させた後、これを0〜300℃、好ましくは80℃〜200℃で、1秒〜120分間、好ましくは1分〜30分間、加熱して、反応させるというものである。この温度範囲を下回ると、反応時間がかかり過ぎて生産性が低下してしまい、一方この温度範囲を上回るとこれら基材が分解してしまう。この加熱時間範囲を下回ると、反応が不十分となり十分なOH基反応性増幅効果が得られず、一方、この加熱温度時間を上回ると、生産性が低下してしまう。
【0098】
有機基結合性OH基を無機原子結合性OH基との反応性を促進する目的で、接着速度を向上させたり低い反応温度で反応させたりエーテル結合の縮合反応を促進させたりできるビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(2−エチルヘキシルマレート)スズ、ジブチルジアセトキシスズ、ジオクチルジラウリル酸スズのようなスズ系触媒、チタンジブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジプロポキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタン−2−エチルヘキシオキシドのようなチタン系触媒が、用いられる。これらの触媒は、例えば反応性基含有ポリシロキサン溶液に混合して用いられる。
【0099】
反応性基含有ポリシロキサンで処理した後、基材を不活性溶媒中で超音波洗浄すると、基材表面に残存する未反応の反応性基含有ポリシロキサンや未結合残渣が除去され、基材表面のOH基が一層活性化される。
【0100】
弾性体層12と金属箔層13との接着は、非流動性で表面にOH基や反応性官能基を有する弾性体層12と、非流動性で表面に弾性基材の反応性官能基へ反応するOH基を有する金属箔層13とを接触させることにより、両者間の接触界面で化学反応が起こり、共有結合が生成して接着するというものである。その共有結合は、弾性体層12の被接着面側表面上のOH基や反応性官能基と、金属箔層13の被接着面側表面上のOH基とが、直接、エーテル結合し、又は反応性基含有ポリシロキサンを介してエーテル結合して、共有結合したものである。
【0101】
このような接着は、高分子が低分子モノマー同士の重合により生じる化学結合の連結と同様に、高分子物質同士、又は高分子物質と非高分子物質との共有結合、特にエーテル結合の形成により、なされたものである。
【0102】
このような共有結合は、弾性体層12の表面水酸基と、金属箔層13の表面水酸基とが、脱水してエーテル結合したものであることが好ましい。それらの表面水酸基は、予め分解性官能基でブロック化されて保護されており、用時に、紫外線のような光照射、加熱、加水分解等により脱ブロック化されて再生されたものであってもよい。
【0103】
このような官能基は、弾性体層12の表面水酸基や金属箔層13の表面水酸基へ反応する分解性官能基、例えば、−SiA1(OB1)3−m(但し、A1はシリコーンポリマーの一般的な官能基、例えばCH−、CH=CH−、C−、F−であり、B1はアルキル基、mは1〜3の数)、−SiA2[OSi(OB2)]OB(但し、A2はシリコーンポリマーの一般的な官能基、例えばCH−、CH=CH−、C−、F−であり、B2はアルキル基)、−NCO、−CH(O)CH、−CHO、−(CH(+H)CO)O、−SOCl、−COCl、−NHCOOC(CH、−NHCOOCH(CH、−NHCOOCH、−NHCOOC、−NHCOOCNO、−NHCOOCCN、−SO10Oなどが挙げられる。
【0104】
弾性体層12の表面水酸基や金属箔層13の表面水酸基が反応するためには弾性体層12と金属箔層13との両者が接触したとき、反応が起こる範囲まで接近する必要がある。反応が起こる範囲とは、例えば分子間力が及ぶ範囲である0.5nm以下である。
【0105】
弾性体層12と金属箔層13との両者の接近を阻む因子は、弾性体層12と金属箔層13との材料の表面粗さであり、両者の接近を促進する因子は、分子鎖の運動性である。一般に、表面粗さの高い材料は、反応が起こる範囲まで到達できない場合がある。しかし、弾性体層12を形成する弾性ゴムは、分子鎖の運動性を有するので、弾性体層12と金属箔層13がある程度の表面粗さを有していても、OH基と、それに反応する反応性官能基とが、十分に接近することができる。
【0106】
したがって、弾性体層12は、非流動性であっても表面粗さを相殺する機能を有するため、金属箔層13や金属、樹脂、セラミックス、ガラス及び加硫ゴムのような種々の素材で成形された基材14と接着することができるようになる。
【0107】
OH基と、それに反応する反応性官能基との接近は、減圧条件下、好ましくは真空条件下で、その接触界面の気体媒体を除去することによって、又はその接触界面に応力(荷重)を加えることによって、さらに接触界面を加熱することによって、促進される。
【0108】
基材14の素材の金属材料は、例えば、金、銀、銅、鉄、コバルト、シリコーン、鉛、マンガン、タングステン、タンタル、白金、カドミウム、スズ、パラジウム、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムのような金属、これら金属の二元、三元及び多元合金が挙げられる。金属材料で形成された基材は、粉体、繊維、線、棒、網、板、フィルムとこれらを組合せた加工製品であってもよい。
【0109】
基材14の素材の樹脂は、フェノール樹脂(ベークライト)、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、セルロース及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロース、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i−ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s‐ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテレンテレフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイドとトリアリルイソシアヌルブレンド物、(ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイド、トリアリルイソシアヌル、パーオキサイド)ブレンド物、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶樹脂、ケブラー繊維、炭素繊維とこれら複数材料のブレンド物のような高分子材料、その架橋物が挙げられる。三次元化シリコーンゴムであってもよく、未架橋性のシリコーンゴムであってもよい。また、樹脂で成形された基材14は、フィルム、板、曲面形状体のような立体成形体、これらの加工製品であってもよい。加工製品として、例えば、ガラス繊維含有エポキシ樹脂、紙フェノール樹脂が挙げられる。
【0110】
基材14の素材のセラミックスは、銀、銅、鉄、コバルト、シリコーン、鉛、マンガン、タングステン、タンタル、白金、カドミウム、スズ、パラジウム、ニッケル、クロム、インジウム、チタン、亜鉛、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの金属の酸化物、窒化物、及び炭化物、それらの単体又は複合体が挙げられる。セラミックスで形成された基材14は、粉体、繊維、線、棒、網、板、フィルムとこれらを組合せた加工製品であってもよい。
【0111】
基材14の素材の加硫ゴムは、例えば、天然ゴム、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン−プロピレン‐ジエンゴム、エチレンオキサイド−エピクロロヒドリン共重合体ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプピレン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロロエチレンなどの単独重合体ゴム及びこれらの二元及び三元共重合体ゴム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、エチレンアクリルゴム、パーオキサイド型シリコーンゴム、付加型シリコーンゴム、縮合型シリコーンゴム、エポキシゴム、ウレタンゴム、両末端不飽和基エラストマー等の線状重合体のような原料ゴム状物質の配合物を架橋させたものである。加硫ゴム製の被接着剤は、これらの配合物を架橋させ、形成したものである。
【0112】
加硫ゴム製の基材14は、これらのゴム状物質に対して、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、金属活性剤、軟化剤、安定剤などを添加して成型加工、加硫、又は接着して得られるものであることが好ましい。
【0113】
このような線状重合体ゴムを架橋させるためには架橋促進剤が添加される。例えば、硫黄加硫、トリアジンジチオール系架橋剤、樹脂架橋剤、ポリオール架橋剤、パーオキサイド架橋剤、塩化白金酸を、単独又は複数組合せた架橋剤として、添加する必要がある。
【0114】
架橋剤として、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、アミン系架橋促進剤、多官能性モノマーが挙げられる。これらの架橋剤は、ゴムの架橋速度を調整し、強度を高めるためのものである。パーオキサイド系架橋剤として、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスブチロニトリル、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが、挙げられる。
【0115】
架橋剤の添加量は、加硫ゴムの種類・性質やシリコーンゴム接着体の使用目的・性能に応じ、適宜定められるが、加硫ゴム100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。0.1質量部未満であると、架橋度が低すぎて加硫ゴムとして使用できず、一方10質量部を超えると、架橋度が高すぎて加硫ゴムが弾性を示さなくなってしまう。
【0116】
加硫ゴムには、強度を高めたり増量したりするために充填剤を添加してもよい。充填剤として、例えば、HAF、FEFなどの各種グレードのカーボンブラック、シリカ、ニプシル、タルク、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維が、挙げられる。
【0117】
充填剤の添加量は、シリコーンゴム接着体の使用目的・性能に応じ、適宜定められるが、加硫ゴム100質量部に対し、1〜400質量部、好ましくは20〜300質量部である。20質量部未満であると増量の効果が低下し、一方100質量部を超えると加硫ゴムのゴム弾性が低下してしまう。
【0118】
加硫ゴムを架橋により調製する際に架橋反応を促進するために、原料ゴム状物質に、金属化合物が添加されていてもよい。金属化合物として、例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、酸化鈴、酸化鉄、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム、オクチル酸カルシウム、イソオクチル酸カリウム、カリウムブトキサイド、オクチル酸セシウム、イソステアリン酸カリウムが、挙げられる。
【0119】
このような金属化合物は、架橋速度を調節するだけでなく、副生するハロゲン化合物を中和して、加硫ゴムの成形加工機器の損傷を防ぐためにも、有効である。この目的を達成するために、金属化合物の添加量は、加硫ゴム100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。0.1質量部未満では、架橋速度調節効果が殆んどなく、一方20質量部を超えても架橋速度調節機能の向上は見られない。
【0120】
加硫ゴム製の基材14の硬度や耐寒性を向上させるために、軟化剤が添加されていてもよい。軟化剤として、例えば、プロセスオイル、ナフテンオイル、高級脂肪酸エステル、フタル酸ジアルキルエステルが挙げられる。
【0121】
軟化剤の添加量は、加硫ゴム100質量部に対し、1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部である。1部未満では軟化効果が低すぎ、100質量部を超えると軟化材が析出してしまう。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
シリコーンゴム(商品名 KE−1935A/B:信越化学工業株式会社)100質量部に対し、酸化チタン(商品名 CR−58:石原産業株式会社)を100質量部添加し、120℃で5分間の硬化条件によって、厚さ0.7mmの弾性体層12となるシリコーンゴム試験片を作製した。
【0124】
(耐熱性試験)
作製した弾性体層12を、150℃で24時間までの耐熱試験を行い、経過時間ごとの反射率を分光光度計(型番 UV−3150:株式会社島津製作所)を用いて測定した。
なお、シリコーンゴム試験片である弾性体層12との比較試料として市販の白色ビスマレイミド・トリアジン樹脂で形成された基材を用いて、同様に耐熱試験を行い、反射率を測定した。
【0125】
これらの測定結果について、金属箔付き反射シートの弾性体層の加熱後における波長と反射率との相関を示すグラフを図4、本発明を適用外の市販の白色ビスマレイミド・トリアジン樹脂で形成された基材の加熱後における波長と反射率との相関を示すグラフを図5に示す。
【0126】
本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12は、目視において加熱処理前後での変色は見られなかった。一方、比較例であるビスマレイミド・トリアジン樹脂で形成された基材では、3時間加熱処理をした基材から黄変が確認された。
【0127】
図4及び図5に示されるように、本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12は加熱処理前後において大きな違いは見られなかった。一方、比較例では、目視での黄変が見られた3時間から反射率の低下がみられ、加熱時間が長くなるごとに反射率が低下し、24時間では、400〜600nmにおいて約8%の低下が確認された。
【0128】
(耐紫外線性試験)
実施例1のようにして作製した弾性体層12を、紫外線(UV)照射機 EXECUR 4000(HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION製)にて24時間までのUV照射を行い、経過時間ごとの反射率を分光光度計(型番 UV-3150:株式会社島津製作所)を用いて測定した。UV照射は245、313、405、436nmの混合された波長で行った。
また、シリコーンゴム試験片である弾性体層12との比較試料として市販の白色ビスマレイミド・トリアジン樹脂で形成された基材を用いて、同様にUV照射を行い、反射率を測定した。
【0129】
これらの測定結果について、金属箔付き反射シートの弾性体層の各紫外線照射時間における波長と反射率との相関を示すグラフを図6、本発明を適用外の基材の各紫外線照射時間における波長と反射率との相関を示すグラフを図7に示す。
【0130】
本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12は、目視においてUV照射前後での変色は見られなかった。一方、比較例であるビスマレイミド・トリアジン樹脂で形成された基材では、UV照射15分から黄変が見られた。
【0131】
図6及び図7に示されるように、本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12はUV照射前後において大きな違いは見られなかった。一方、比較例では、UV照射15分から黄変が見られ、UV照射5分から反射率の低下が見られ、24時間では、400〜600nmにおいて約18%の低下が確認された。
【0132】
(実施例2)
箔厚12μmの電解銅箔をエタノールによる超音波洗浄後、接着面にCH2=CHSi(OCH3)2O[SiOCH3(CH=CH2)O]nSi(OCH3)2CH=CH2のエタノール溶液(1質量%)を塗布、120℃で10分間加熱乾燥を行い、その後、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のエタノール溶液(0.5質量%)を塗布し、室温乾燥した。シリコーンゴム(商品名 KE−1935A/B:信越化学工業株式会社)100質量部に対し、酸化チタン(商品名 CR−58:石原産業株式会社)を100質量部添加し、表面処理を行った銅箔である金属箔層13に弾性体層12の厚みが50μmになるように塗工し、120℃で15分間硬化させ、金属箔付き反射シート1を作製した。
つぎに、透明のガラス繊維含有エポキシ樹脂基材(品番 R−1661:パナソニック電工株式会社)、シリコーンレジン基材(商品名 SR−7010:東レ・ダウコーニング株式会社)、シリコーンレジン(商品名 SR−7010:東レ・ダウコーニング株式会社)に酸化チタン(商品名 CR−58:石原産業株式会社)を配合した白色シリコーンレジン基材14を用いて、金属箔付き反射シート1と基材14とが接着している基板2を作製した。その接着方法は各基材14及び金属箔付き反射シート1の弾性体層12にコロナ放電処理(コロナマスター)後、ガラス繊維含有エポキシ樹脂基材は130℃で10分間、シリコーンレジン基材及び酸化チタンを配合した白色シリコーンレジン基材は100℃で5分間の熱圧着を行い、基板2を作製した。その熱圧着時の圧力は120MPaで行った。
【0133】
(基板の反射率)
各基板2においてエッチング処理によって完全に銅箔を除去し、弾性体層12が表面に現れた状態を測定サンプルとし、分光光度計(型番 UV-3150:株式会社島津製作所)を用いて反射率を測定した。その測定結果を図8に示す。
【0134】
透明である基材を用いた基板であっても十分な反射率が得られることが分かった。
【0135】
(実施例3)
シリコーンゴム(商品名 KE−1935A/B:信越化学工業株式会社)100質量部に対し、酸化チタン(商品名 CR−58:石原産業株式会社)を100質量部添加し、厚みが1、3、10、100μmとなるように白色シート状の弾性体層12を作製した。硬化条件は120℃で5分間であり、120℃で90分のアニール処理を行ったものを測定サンプルとした。
【0136】
(白色シート状の弾性体層の反射率)
各白色シート状の弾性体層12を分光光度計(型番 UV−3150:株式会社島津製作所)を用いて反射率の測定を行った。その測定結果を図9に示す。
【0137】
本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12は、図9に示されるように厚みが1μmでは十分な反射率を得ることはできないが、厚みが3μm以上であれば十分な反射率を得られることが確認された。
【0138】
本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12の厚みは、3μm以上で十分な反射率が得られることがわかった。
【0139】
(実施例4)
シリコーンゴム(商品名 KE−1935A/B:信越化学工業株式会社)100質量部に対し、酸化チタン(商品名 CR−58:石原産業株式会社)をそれぞれ50、100、200、300質量部添加し、厚みが50μmとなるように白色シート状の弾性体層12を作製した。硬化条件は120℃で5分間であり、120℃で90分のアニール処理を行ったものを測定サンプルとした。
【0140】
(白色シート状の弾性体層の反射率)
各白色シート状の弾性体層12を分光光度計(型番 UV-3150:株式会社島津製作所)を用いて反射率の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
【0141】
本発明の金属箔付き反射シートの弾性体層12は、図10に示されるように酸化チタンの添加部数(phr)が少ない50質量部及び添加部数の多い300質量部ではその反射率に低下が見られたが、低下していても十分な反射率であり、金属箔付き反射シートの弾性体層12への酸化チタン添加部数は50質量部以上であれば十分な反射率を得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の金属箔付き反射シートは、発光ダイオードなどの発光素子、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯を発光光源とした発光装置や照明器具の基板、例えば配線基板として用いられる。また、太陽電池素子のような光電変換素子に装着するもので、入射する光を反射して、光電変換素子へ集光させるための基板として用いられる。
【符号の説明】
【0143】
1は金属箔付き反射シート、2は基板、11は光反射剤、12・12a・12bは弾性体層、13・13a・13bは金属箔層、14は基材、15a・15bは配線、16は発光素子である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射剤の粒子を分散しつつ含有している弾性ゴム製でありその被接着面側表面に水酸基を有する弾性体層と、水酸基を被接着面側表面に有する金属箔層とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着していることを特徴とする金属箔付き反射シート。
【請求項2】
前記弾性体層及び/又は金属箔層の前記被接着面側表面が、コロナ放電処理、プラズマ処理、及び/又は紫外線照射処理されることによって、そこに前記水酸基が生成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項3】
前記共有結合が、直接に又はポリシロキサンを媒介して結合したエーテル結合であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項4】
前記弾性ゴムが、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン−メチレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、及びスチレン−ブタジエン共重合ゴムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項5】
前記光反射剤が、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、シリカ、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種のフィラーであることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項6】
前記金属箔層が、銅箔、銀箔、金箔、又はアルミ箔であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項7】
前記光反射剤が、前記弾性体層中に、30〜75質量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項8】
前記弾性体層の厚みが、3〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項9】
フレキシブルシートであることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付き反射シート。
【請求項10】
請求項1に記載の金属箔付き反射シートの弾性体層の露出表面に有する水酸基と、基材の被接着面側表面に有する水酸基とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着していることを特徴とする基板。
【請求項11】
前記金属箔層がエッチングされていることを特徴とする請求項10に記載の基板。
【請求項12】
前記金属箔層の露出表面に有する水酸基と、光反射剤の粒子を分散しつつ含有しつつ前記金属箔層を覆う別な弾性体層の被接着面側表面に有する水酸基とが、互いのそれら水酸基を介して共有結合しつつ、積層して接着していることを特徴とする請求項10又は11に記載の基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−148263(P2011−148263A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13229(P2010−13229)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(595015890)株式会社ファインラバー研究所 (15)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】