説明

金属箔積層板及びその製造方法並びに放熱基板

【課題】金属箔積層板の放熱機能と機械的物性を向上させる金属箔積層板及びその製造方法並びに放熱基板を提供する。
【解決手段】金属箔積層板10は、樹脂部材22にカーボンファイバー24が一方向に配列されて含浸されたプリプレグ20;該プリプレグ上側に形成された上部炭素ナノ粒子層32;該炭素ナノ粒子層上側に形成された上部金属箔42と、該プリプレグ下側に形成された下部炭素ナノ粒子層34;該下部炭素ナノ粒子層下側に形成された下部金属箔44とを含む。金属箔積層板10の製造方法は、カーボンファイバー24が含浸された樹脂部材22を含むプリプレグ20を形成する段階;金属箔42,44のプリプレグ20との接合面に炭素ナノ粒子溶液を塗布して炭素ナノ粒子層32,34を形成する段階;金属箔42,44を乾燥する段階;及びプリプレグ20の両面に炭素ナノ粒子層32,34が対向するように金属箔42,44を接合する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔積層板及びその製造方法並びに放熱基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な分野に応用されるパワー素子及びパワーモジュールの放熱問題を解決するために、熱伝導特性に優れた金属材料からさまざまな形態の放熱基板を製作しようと努力している。これは、近年電子部品が小型化、薄型化していることによって、放熱基板の局所面積に収容される発熱素子の密度が高くなり、発熱素子から放出する熱を短時間に基板の外部に放出しなければならない要求が高くなっているからである。
【0003】
金属箔積層板は、スタンピング加工性、ドリル加工性に優れ、価格が安価なので、放熱基板のベース基板として広く利用されている。放熱基板に使われる金属箔積層板の場合、熱伝導特性が何よりも重要であると言える。
【0004】
このような金属箔積層板は、絶縁層及び前記絶縁層の上下部に接合される金属箔を含む。上部金属箔の場合、回路パターンが形成され、上部に半導体チップなどの電子部品が実装され、下部金属箔の場合、外部に露出されて放熱に利用される。従来の場合、絶縁層としてセラミックを中央に位置させ、上下に銅箔を高温で加圧して接合した両面銅張積層板を主に使った。
【0005】
しかし、両面銅張積層板の場合、絶縁層に使われるセラミックは、発熱素子などの高性能化、高密度化の趨勢によって外部に熱を伝達しなければならないが、熱伝導特性が低いので、放熱機能を向上させるためには、放熱基板のサイズを大きくするか、あるいは外部に放熱器具を装着しなければならないなど、両面銅張積層板の放熱機能を高めるのに限界が存在した。
【0006】
また、セラミックの折れやすい性質によって、その適用分野が制限され、使用用途によって、放熱特性及び強度などの機械的物性を調節するとき、従来の両面銅張積層板の場合、困難さがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、カーボンファイバーが含浸されたプリプレグ、前記プリプレグの上下面に形成された炭素ナノ粒子層、及びこれに接合される金属箔を含んでなり、カーボンファイバーの高熱伝導度及び強度によって金属箔積層板の放熱機能と機械的物性を向上させる金属箔積層板及びその製造方法並びに放熱基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、樹脂部材にカーボンファイバーが一方向に配列されて含浸されたプリプレグ;前記プリプレグの上側に形成された上部炭素ナノ粒子層;及び前記炭素ナノ粒子層の上側に形成された上部金属箔;を含む金属箔積層板を提供する。
【0009】
前記金属箔積層板は、前記プリプレグの下側に形成された下部炭素ナノ粒子層;及び前記下部炭素ナノ粒子層の下側に形成された下部金属箔;をさらに含むことが好ましい。
【0010】
前記金属箔積層板は、前記プリプレグに金属層が複数挿入されることが好ましい。
【0011】
前記下部金属箔は、前記上部金属箔より厚いことが好ましい。
【0012】
前記上部金属箔、下部金属箔及び金属層は、同一金属であってもよい。
【0013】
前記樹脂部材は、熱硬化性樹脂でなることが好ましい。
【0014】
前記炭素ナノ粒子は、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン(Graphene)、及びカーボンブラック(Carbon−black)のいずれか1種であってもよい。
【0015】
また、前記目的を達成するために、本発明は、樹脂部材にカーボンファイバーが一方向に配列されて含浸されたプリプレグ、前記プリプレグの上側に形成された上部炭素ナノ粒子層、前記プリプレグの下側に形成された下部炭素ナノ粒子層、前記上部炭素ナノ粒子層の上側に形成された回路層、及び前記下部炭素ナノ粒子層の下側に形成された下部金属箔を含む金属箔積層板;及び前記回路層に電気的に連結される電子素子;を含む放熱基板を提供する。
【0016】
前記放熱基板は、前記プリプレグに金属層が複数挿入されることが好ましい。
【0017】
前記下部金属箔は、前記回路層より厚いことが好ましい。
【0018】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(A)カーボンファイバーが含浸された樹脂部材を含むプリプレグを形成する段階;(B)金属箔の前記プリプレグとの接合面に炭素ナノ粒子溶液を塗布して炭素ナノ粒子層を形成する段階;(C)前記金属箔を乾燥する段階;及び(D)前記プリプレグの片面または両面に前記炭素ナノ粒子層が対向するように前記金属箔を接合する段階;を含む金属箔積層板の製造方法を提供する。
【0019】
前記(A)段階は、カーボンファイバーが含浸された複数の前記樹脂部材と交互に繰り返し積層された複数の金属層を含むプリプレグを形成することが好ましい。
【0020】
前記(A)段階において、樹脂溶液を、前記カーボンファイバーに塗布して乾燥及び圧延させることで、前記カーボンファイバーが含浸された前記樹脂部材を形成することが好ましい。
【0021】
前記(B)段階において、前記炭素ナノ粒子溶液は、炭素ナノ粒子を揮発性溶媒に混合して製造することが好ましい。
【0022】
前記(D)段階において、プレスで圧着して前記金属箔を接合することが好ましい。
【0023】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は、通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0024】
本発明による金属箔積層板は、炭素ナノ粒子層が上下部金属箔のプリプレグとの接合面の間に形成されて接着性を高め、前記プリプレグにはカーボンファイバーが含浸されて熱伝導特性及び機械的物性を向上させる。
【0025】
また、カーボンファイバーが含浸された樹脂部材と金属層が交互に多層で積層されて金属層が複数挿入されたプリプレグにすることもできる。プリプレグの間に金属層が挿入されて熱伝導特性が向上され、用途によって積層数を異にして金属箔積層板の熱伝導特性及び機械的物性を調節することができる。
【0026】
更に、プリプレグの下部に形成される下部金属箔が上部金属箔より厚く形成することができる。外部に露出される下部金属箔をより厚くすることで、外部への熱伝逹量を増加させることができる。
【0027】
本発明による金属箔積層板の製造方法は、金属箔の前記プリプレグとの接合面に炭素ナノ粒子溶液を塗布して、金属箔とプリプレグとの接着力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の断面図(1)である。
【図2a】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の断面図(2−1)である。
【図2b】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の断面図(2−2)である。
【図3】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の断面図(3)である。
【図4】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の断面図(4)である。
【図5】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の断面図(5)である。
【図6】本発明に好適な実施例による放熱基板の断面図である。
【図7】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の製造工程を順に示す断面図(1)である。
【図8】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の製造工程を順に示す断面図(2)である。
【図9】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の製造工程を順に示す断面図(3)である。
【図10】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の製造工程を順に示す断面図(4)である。
【図11】本発明の好適な実施例による金属箔積層板の製造工程を順に示す断面図(5)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的、特定の利点及び新規の特徴は、添付図面を参照する以下の詳細な説明及び好適な実施例から一層明らかに理解可能であろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるにあたり、同じ構成要素がたとえ他の図面に図示されていても、できるだけ同じ符号を付けることにする。本発明の説明において、本発明の要旨を不要にあいまいにすることができると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0030】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の好適な実施例による金属箔積層板10の断面図である。
【0032】
金属箔積層板10は、樹脂部材22にカーボンファイバー24が一方向に配列されて含浸されたプリプレグ20、前記プリプレグ20の上側形成された上部炭素ナノ粒子層32、及び上部炭素ナノ粒子層32に接着される上部金属箔42からなる。本発明による金属箔積層板10は、カーボンファイバー24が含浸されたプリプレグ20を含むことで、従来に比べて熱伝導特性及び強度などの機械的物性が優秀である。
【0033】
以下、図面に基づいて、金属箔積層板10の構成要素をそれぞれ説明する。
【0034】
まず、プリプレグ20は、半硬化状態の樹脂部材22にカーボンファイバー24が含浸された構造を持つ。樹脂部材22は、絶縁物質からなり、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂または熱可塑性樹脂または液晶高分子などを使用できる。プリプレグ20の規格によって、樹脂部材22は、全重量の40〜70%を占めるように含有される。
【0035】
樹脂部材22は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂は、熱によって硬化する性質を持つので、後続の工程においてプレス80で加温及び加圧するとき、容易に金属箔40を接合することができ、放熱基板100などに使用時、変形のおそれが少なく、製造単価のチープな利点がある。熱硬化性樹脂としては、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ベンゾオキサジン環を持つ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールSとビスフェノールFの共重合エポキシ樹脂などが金属との接着性の面で優秀である。
【0036】
カーボンファイバー24は、有機纎維前駆体を加熱して得た炭素を含む纎維を言う。鋼鉄に比べ1/5と軽く、強度は10倍であって航空宇宙産業、方衛産業などの材料として広く使われる。製造方法によって、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系のカーボンファイバー24などがある。図2に示すように、カーボンファイバー24は、樹脂部材22の面に対して水平方向(図1)、垂直方向(図2a)、対角線方向(図2b)などのように多様な方向に配列させることができる。プリプレグ20内に含浸されたカーボンファイバー24は、配列方向によって特定方向への熱伝逹効果を高めることができる。プリプレグ20内に含浸されたカーボンファイバー24が多いほど熱伝導特性に優れ、金属箔積層板10の強度が高くなる。その外のガラス纎維、有機纎維などの織布または不織布などの纎維基材をさらに含浸させることもできる。
【0037】
炭素ナノ粒子層30は、前記プリプレグ20の片面または両面に形成され、数ナノメートル(nm)の微細なサイズの炭素粒子であり、金属箔40とプリプレグ20の間の接着力を向上させる機能をする。このような炭素ナノ粒子は、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン(Graphene)、カーボンブラック(Carbon−black)などであることが好ましい。
【0038】
金属箔40は、炭素ナノ粒子層30に形成される。金属箔40は、金属からなるので、熱伝逹性能に優れ、強度が高く、これにより、反り(warpage)に対する抵抗が高いという利点がある。金属箔40として、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、タンタル(Ta)またはこれらの合金を使用することができる。特に、金属箔40は、銅(Cu)であることが好ましい。銅(Cu)は、397W/mKの高い熱伝導度を持ち、回路パターンの形成の際、加工が容易な利点がある。
【0039】
図3に示すように、前記金属箔積層板10は、下側に形成された下部炭素ナノ粒子層34及び前記下部炭素ナノ粒子層30に接着される下部金属箔44をさらに含むことができる。下部金属箔44が下側に形成されることにより、下部金属箔44に接した外部への熱伝逹効果が向上され、金属箔積層板10の外部応力に対する抵抗力が均衡を取ることになるので、金属箔積層板10の衝撃に対する変形が減少する。下部金属箔44は、熱伝導度の高い銅(Cu)、アルミニウム(Al)を使うことが好ましい。
【0040】
この際、図4に示すように、下部金属箔44は、上部金属箔42より厚いものであってもよい。上部金属箔42上には、電子素子70などの発熱素子が実装されるので、発熱素子から発生した熱が上部金属箔42に伝達されて外部に放出されるように、下部金属箔44をより厚く形成することで、外部に露出された下部金属箔44が熱を早く吸収するようにすることができる。下部金属箔44には、ヒートシンク(Heat sink)のような放熱装置を付着することができる。
【0041】
図5に示すように、金属箔積層板10は、プリプレグ20に金属層50が複数挿入された構造のものであることが好ましい。カーボンファイバー24が含浸されたプリプレグ20を金属層50と交互に繰り返し積層された構造であって、電子素子70の発熱量が高い場合、多層で積層して熱伝導度を高め、発熱量が高くない場合、積層数を減らすことで金属箔積層板10を軽量化することができる。また、金属層50を挿入することにより、金属箔積層板10の熱伝導度を向上させ、強度を高めることができ、金属層50の種類によって、反りに対する性質を変化させることができる。金属層50は、プリプレグ20との接着性を高めるために、金属層50の上下側に炭素ナノ粒子層30を形成することができる。
【0042】
この際、上部金属箔42、下部金属箔44及び金属層50は、同一金属であることが好ましい。上部金属箔42、下部金属箔44及び金属層50を同一金属にすることで、熱膨張係数の差が減少し、高温への加熱の際、熱応力が減少する。また、反りに対する性質が同一であって工程での取扱いが容易であり、外部の衝撃に対する損傷が発生するおそれが低い。上部金属箔42、下部金属箔44及び金属層50は、同種の金属からなり、銅(Cu)、またはアルミニウム(Al)であることが好ましい。
【0043】
図6に示すように、本発明による放熱基板100は、樹脂部材22にカーボンファイバー24が一方向に配列されて含浸されたプリプレグ20、前記プリプレグ20の上側に形成された上部炭素ナノ粒子層32、前記プリプレグ20の下側に形成された下部炭素ナノ粒子層34、前記上部炭素ナノ粒子層32の上側に形成された回路層60、及び前記下部炭素ナノ粒子層30の下側に形成された下部金属箔44を含む金属箔積層板10と、金属箔積層板10の回路層60の上部に電気的に連結された電子素子70とを含む。
【0044】
まず、回路層60は、金属箔積層板10の上部金属箔42をエッチングでパターニングすることで形成される。回路層60を形成するにあたり、セミアディティブ(Semi−additive)、アディティブ(Additive)、サブトラクティブ(Subtractive)などの工法を使うことができる。図6には、単一回路層60のみが示されているが、これに限定されなく、上部に絶縁層、回路層60、ビアホールなどを含むビルドアップ層をさらに形成することができる。
【0045】
電子素子70は、下部に接続端子を含んで回路層60の上部に電気的に連結されることにより、放熱基板100に実装される。電子素子70は、半導体素子、受動素子、能動素子などを含み、発熱量が高い素子であってもかまわない。例えば、絶縁ゲート両極性トランジスタ(IGBT;Insulated gate bipolar transistor)またはダイオードであってもよく、LEDパッケージであってもよい。電子素子70から発生した熱は、順に回路層60、プリプレグ20、下部金属箔44を通じて外部に放出される。
【0046】
放熱基板100の金属箔積層板10は、カーボンファイバー24が含浸されたプリプレグ20を金属層50と交互に積層することで、上下側に炭素ナノ粒子層30が形成され、金属箔40が片面または両面に形成された構造を持つことができる。
【0047】
また、放熱基板100は、下部金属箔44が回路層60より厚く形成されたものであることが好ましい。
【0048】
図7〜図11は、本発明の好適な実施例による金属箔積層板10の製造工程を順に示す断面図である。
【0049】
本発明による金属箔積層板10の製造工程は、(A)カーボンファイバー24が含浸された樹脂部材22を含むプリプレグ20を形成する段階、(B)金属箔40の前記プリプレグ20との接合面に炭素ナノ粒子溶液を塗布して炭素ナノ粒子層30を形成する段階、(C)前記金属箔40を乾燥する段階、及び(D)前記プリプレグ20の片面または両面に前記炭素ナノ粒子層30が対向するように前記金属箔40を接合する段階を含む。
【0050】
以下、図面に基づいて、各工程を順に説明する。
【0051】
まず、図7に示すように、カーボンファイバー24が含浸された樹脂部材22を含むプリプレグ20を形成する。プリプレグ20は、樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液にカーボンファイバー24を浸漬するか(Dipping)あるいは樹脂溶液をカーボンファイバー24に塗布した後、乾燥及び圧延(Rolling)を行うことで形成することができる。前記樹脂溶液には、誘電率及び熱膨脹率を調節するために、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムの無機フィラー、架橋アクリルなどの有機フィラーを添加することもできる。乾燥及び圧延の過程は、順次実施することも、同時に実施することもできる。乾燥過程によって、プリプレグ20に含まれていた溶剤が除去され、圧延過程によって、プリプレグ20が所望の厚さを持つことになる。
【0052】
この際、カーボンファイバー24が含浸された複数の樹脂部材22と交互に繰り返し積層された金属層50を含むプリプレグ20を形成することもできる。金属層50とカーボンファイバー24が含浸された樹脂部材22を多層で積層することで、使用用途によって、金属箔積層板10の熱伝導特性及び強度などの機械的物性を調節することができる。
【0053】
ついで、図8に示すように、金属箔40の前記プリプレグ20との接合面に、炭素ナノ粒子溶液を塗布して炭素ナノ粒子層30を形成する。炭素ナノ粒子溶液は、数ナノメートル(nm)またはミクロン(um)のサイズを持つ炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン(Graphene)、カーボンブラック(Carbon−black)などの炭素からなる微細粒子を揮発性溶媒に分散させることで製造する。揮発性溶媒は、アセトン、メタノールなどであることが好ましい。
【0054】
図9に示すように、炭素ナノ粒子溶液が塗布された金属箔40を乾燥させる。金属箔40を熱風乾燥するにつれて、揮発性溶媒が揮発して炭素ナノ粒子層30が金属箔40に形成される。炭素ナノ粒子層30が金属箔40の接着面に形成されることにより、プリプレグ20との接着力を高める。
【0055】
炭素ナノ粒子層30が形成された金属箔40を、プリプレグ20の片面または両面に炭素ナノ粒子層30が対向するように接合する。この際、プレス80によって、高温、高圧で圧着することで金属箔40をプリプレグ20に接合することができる。図10に示すように、炭素ナノ粒子層30の両面に金属箔40を積層した後、図11に示すように、プレス80で圧着することになる。温度は、150〜180℃、圧力は、9〜20MPa程度が適切であるが、プリプレグ20の特性、プレス80の性能及び目的とする金属箔積層板10の厚さなどを考慮して適宜決めることができるので、特に限定されない。
【0056】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのもので、本発明による金属箔積層板及びその製造方法並びに放熱基板は、これに限定されなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を持つ者によって多様な変形及び改良が可能であろう。本発明の単純な変形ないし変更は、いずれも本発明の範疇内に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は、特許請求の範囲によって明らかに決まるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、カーボンファイバーが含浸されたプリプレグ、前記プリプレグの上下面に形成された炭素ナノ粒子層、及びこれに接合される金属箔を含んでなり、カーボンファイバーの高熱伝導度及び強度によって金属箔積層板の放熱機能と機械的物性を向上させる金属箔積層板に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 金属箔積層板
20 プリプレグ
22 樹脂部材
24 カーボンファイバー
30 炭素ナノ粒子層
32 上部炭素ナノ粒子層(炭素ナノ粒子層)
34 下部炭素ナノ粒子層(炭素ナノ粒子層)
40 金属箔
42 上部金属箔(金属箔)
44 下部金属箔(金属箔)
50 金属層
60 回路層
70 電子素子
80 プレス
100 放熱基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材にカーボンファイバーが一方向に配列されて含浸されたプリプレグ;
前記プリプレグの上側に形成された上部炭素ナノ粒子層;及び
前記炭素ナノ粒子層の上側に形成された上部金属箔;
を含むことを特徴とする金属箔積層板。
【請求項2】
前記プリプレグの下側に形成された下部炭素ナノ粒子層;及び
前記下部炭素ナノ粒子層の下側に形成された下部金属箔;
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の金属箔積層板。
【請求項3】
前記プリプレグに金属層が複数挿入されたことを特徴とする請求項1に記載の金属箔積層板。
【請求項4】
前記下部金属箔は、前記上部金属箔より厚いことを特徴とする請求項2に記載の金属箔積層板。
【請求項5】
前記上部金属箔、下部金属箔及び金属層は、同一金属であることを特徴とする請求項2に記載の金属箔積層板。
【請求項6】
前記樹脂部材は、熱硬化性樹脂でなることを特徴とする請求項1に記載の金属箔積層板。
【請求項7】
前記炭素ナノ粒子は、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン(Graphene)、及びカーボンブラック(Carbon−black)のいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔積層板。
【請求項8】
樹脂部材にカーボンファイバーが一方向に配列されて含浸されたプリプレグ、前記プリプレグの上側に形成された上部炭素ナノ粒子層、前記プリプレグの下側に形成された下部炭素ナノ粒子層、前記上部炭素ナノ粒子層の上側に形成された回路層、及び前記下部炭素ナノ粒子層の下側に形成された下部金属箔を含む金属箔積層板;及び
前記回路層に電気的に連結される電子素子;
を含むことを特徴とする放熱基板。
【請求項9】
前記プリプレグに金属層が複数挿入されたことを特徴とする請求項8に記載の放熱基板。
【請求項10】
前記下部金属箔は、前記回路層より厚いことを特徴とする請求項8に記載の放熱基板。
【請求項11】
(A)カーボンファイバーが含浸された樹脂部材を含むプリプレグを形成する段階;
(B)金属箔の前記プリプレグとの接合面に炭素ナノ粒子溶液を塗布して炭素ナノ粒子層を形成する段階;
(C)前記金属箔を乾燥する段階;及び
(D)前記プリプレグの片面または両面に前記炭素ナノ粒子層が対向するように前記金属箔を接合する段階;
を含むことを特徴とする金属箔積層板の製造方法。
【請求項12】
前記(A)段階は、カーボンファイバーが含浸された複数の前記樹脂部材と交互に繰り返し積層された複数の金属層を含むプリプレグを形成することを特徴とする請求項11に記載の金属箔積層板の製造方法。
【請求項13】
前記(A)段階において、樹脂溶液を前記カーボンファイバーに塗布して乾燥及び圧延させることで、前記カーボンファイバーが含浸された前記樹脂部材を形成することを特徴とする請求項11に記載の金属箔積層板の製造方法。
【請求項14】
前記(B)段階において、前記炭素ナノ粒子溶液は、炭素ナノ粒子を揮発性溶媒に混合して製造することを特徴とする請求項11に記載の金属箔積層板の製造方法。
【請求項15】
前記(D)段階において、プレスで圧着して前記金属箔を接合することを特徴とする請求項11に記載の金属箔積層板の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−101530(P2012−101530A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85463(P2011−85463)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】