説明

金属箔

次の化学組成(質量%で)C 0.001〜0.5%、S 最大0.008%、N 0.1〜0.3%、Cr 24〜28%、Ni 30〜33%、Mn 1.0〜2.0%、Si 0.005〜0.2%、Mo 6.0〜7.5%、Ti 最大0.05%、Nb 最大0.05%、Cu 0.8〜2.0%、P 最大0.025%、Al 最大0.2%、Cer MM 0.01〜0.1%、W 最大0.5%、Co 最大0.5%、B 0.001〜0.05%、Fe 残分および製造に不可避の不純物を有する、触媒により水素を製造するための金属箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒による水素製造のための金属箔に関する。
【0002】
電流を発生させるソーラーセルと、この電流により水を水素と酸素に分解する電解質セルとの組合せによって、水素と酸素を製造し、これらを次に貯蔵し、必要な場合に燃料電池中で改めて電気エネルギーに変換しうることは、一般的に公知である。水素と酸素からなる前記混合物、いわゆる爆鳴気は、高い爆発性を有している。前記混合物の取扱は、高度な安全技術的要件が課されている。その上、工業的費用は、多大なものである。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許第3535395号明細書の記載は、水素ガスの製造に関し、この場合微粒状の金属触媒は、キレート形成剤を含有する水と60〜150℃の温度で接触される。この微粒状の金属触媒は、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム、白金、銅、マグネシウム、マンガンの群から選択される。好ましくは、金属触媒は、主にニッケルまたはこれからの合金からなる。
【0004】
本発明の目的は、規定可能な合金から触媒により水素を製造するための金属箔を準備することである。
【0005】
その上、この種の金属箔を製造するための方法も提案される。
【0006】
最後に、金属箔それ自体は、特殊な使用目的に適している。
【0007】
この目的は、次の化学組成(質量%で):
C 0.001〜0.5%
S 最大0.008%
N 0.1〜0.3%
Cr 24〜28%
Ni 30〜33%
Mn 1.0〜2.0%
Si 0.005〜0.2%
Mo 6.0〜7.5%
Ti 最大0.05%、
Nb 最大0.05%
Cu 0.8〜2.0%
P 最大0.025%
Al 最大0.2%
Cer MM 0.01〜0.1%
W 最大0.5%
Co 最大0.5%
B 0.001〜0.05%
Fe 残分および製造に不可避の不純物を有する、触媒により水素を製造するための金属箔によって達成される。
【0008】
本発明の金属箔の好ましいさらなる実施態様は、属する従属請求項から確認することができる。
【0009】
また、この目的は、半製品の機械的な冷間成形および/または熱間成形によって、場合により少なくとも1回の熱処理/灼熱処理で1.0mm未満の最終厚さにもたらされる、前記の化学組成からの金属箔を製造するための方法によって達成される。
【0010】
本発明のもう1つの思想によれば、機械的成形は、圧延によって、必要に応じて1回または数回の灼熱を伴って実施される。殊に圧延工程の終了頃に0.5μmの最大荒さを備えた硬質金属ローラーが使用される。
【0011】
更に、前記金属箔をそれぞれの灼熱工程前に電解質酸洗液で脱脂することは、好ましい。
【0012】
1.0mm未満の最終厚さでの圧延工程の経過中に一定の化学組成の圧延油を使用することは、好ましく、この場合には、さらに最終圧延工程の終了時に箔表面上に規定可能な膜厚の圧延油膜が残存する。
【0013】
更に、こうして準備された、前記の箔状半製品は、箔表面上での規定可能な層厚の酸化物層の形成ために、次に記載された特殊な熱処理に掛けられる。この方法によって、定義されたスピネル構造が箔表面上に発生されうる。
【0014】
この金属箔は、機械的な成形に引き続いて500〜1000℃の温度で5〜60分間酸素含有雰囲気下で熱処理される。
【0015】
金属箔をマッフル炉中で550〜950℃の温度で5〜40分間、酸素含有雰囲気下で熱処理することは、特に有利である。
【0016】
この種の金属箔は、有利に非担持金属触媒として光源と有効に関連する水溶液からの水素の製造のために使用されてよい。
【0017】
この場合、有効で安価な光源として太陽光が使用される。
【0018】
水は、水溶液として公知である、最も普及した溶剤である。この場合には、飲料水と共に塩水も挙げられる。
【0019】
しかし、さらに酸および塩基は、水溶液とも見なされ、水素の発生のために使用可能である。
【0020】
金属箔は、有利に0.01〜1.0mmの最終厚さで機械的に変形され、この場合には、前記の熱処理および/または灼熱処理が実施されてよい。
【0021】
次表中には、2つの本発明による合金組成が記載されている。
【0022】
【表1】

【0023】
特許請求の範囲に記載された他の元素は、微少量でのみ存在するか、または製造の経過中に得られる不純物に算入される。
【0024】
1つの試験のために、本発明による冷間成形法および熱間成形法により、殊に圧延によって製造される、上記合金からの厚さ0.02mmの金属箔を使用した。この金属箔を8分間マッフル炉中で800℃で酸素含有雰囲気下で熱処理に掛けた。前記方法によって、前記箔をさらに水溶液ならびに光源との有効な関連で水素の製造のために使用可能にする、箔表面上の定義された層厚の酸化物層を製造することができた。
【0025】
引続き、触媒として使用可能な前記金属箔4cm2または0.282gを100mlのビーカー中に装入した。このために、飲料水65gを溶剤として供給し、非担持金属触媒を含むビーカーを太陽光に晒した。触媒箔上に小さな気泡の目視可能な形成が開始した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学組成(質量%で)
C 0.001〜0.5%
S 最大0.008%
N 0.1〜0.3%
Cr 24〜28%
Ni 30〜33%
Mn 1.0〜2.0%
Si 0.005〜0.2%
Mo 6.0〜7.5%
Ti 最大0.05%、
Nb 最大0.05%
Cu 0.8〜2.0%
P 最大0.025%
Al 最大0.2%
Cer MM 0.01〜0.1%
W 最大0.5%
Co 最大0.5%
B 0.001〜0.05%
Fe 残分および製造に不可避の不純物を有する、触媒により水素を製造するための金属箔。
【請求項2】
次の化学組成(質量%で)
C 0.001〜0.02%
S 最大0.005%
N 0.15〜0.25%
Cr 26〜27.5%
Ni 31〜32%
Mn 1.2〜2.0%未満
Si 0.01〜0.1%未満
Mo 6.0〜7.0%
Ti 最大0.05%、
Nb 最大0.05%
Cu 1.0〜2.0%未満
P 最大0.02%
Al 最大0.15%
Cer MM 0.02〜0.1%未満
W 最大0.3%
Co 最大0.5%
B 0.001〜0.01%
Fe 残分および製造に不可避の不純物を有する、請求項1記載の金属箔。
【請求項3】
請求項1または2記載の金属箔を製造する方法であって、この金属箔を半製品の機械的な冷間成形および/または熱間成形によって、場合により少なくとも1回の熱処理/灼熱処理で1.0mm未満の最終厚さにもたらす、請求項1または2記載の金属箔を製造する方法。
【請求項4】
1.0mm未満の箔を製造するための機械的成形に対してロール、殊に硬質金属ロールを使用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
1.0mm未満の最終厚さに箔を圧延するために0.5μm未満の荒さRaを有する硬質金属ロールを使用する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
箔を灼熱工程前に電解質酸洗液で脱脂する、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1.0mm未満の最終厚さでの圧延工程の経過中に圧延油を使用し、この場合には、圧延の終了時に箔表面上に規定可能な厚さの圧延油膜が残存する、請求項3から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
金属箔を、機械的な成形に引き続いて500〜1000℃の温度で5〜60分間酸素含有雰囲気下で熱処理する、請求項3から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
金属箔をマッフル炉中で550〜950℃の温度で5〜40分間、酸素含有雰囲気下で熱処理する、請求項3から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
箔の厚さおよび熱処理の種類に依存して、定義された層厚の酸化物層を箔表面上で調節しうる、請求項3から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
光源と有効に関連する水溶液から水素を製造するための非担持金属触媒としての請求項1から10までのいずれか1項に記載の金属箔の使用。
【請求項12】
太陽光と有効に関連する水溶液から水素を製造するための非担持金属触媒としての請求項1から11までのいずれか1項に記載の金属箔の使用。

【公表番号】特表2012−527391(P2012−527391A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511142(P2012−511142)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000490
【国際公開番号】WO2010/133197
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(399009918)ティッセンクルップ ファオ デー エム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (20)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp VDM GmbH
【住所又は居所原語表記】Plettenberger Strasse 2 D−58791 Werdohl Germany
【Fターム(参考)】