説明

金属粒子の製造方法、これにより製造されたインク組成物及びペースト組成物

【課題】電極の形成と同時に選択的エミッタ層を形成することができ、インクジェット印刷方式を用いる場合、インク組成物を吐き出す金属ヘッドの腐食を防止することができる金属粒子の製造方法、これにより製造されたインク組成物及びペースト組成物を提供する。
【解決手段】銀(Ag)化合物及び溶剤を含む第1溶液を準備する段階(S101)と、前記第1溶液を加熱及び撹拌する段階(S103)と、前記第1溶液に有機リン化合物を添加して加熱する段階(S105)と、前記第1溶液からリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を形成する段階(S107)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子の製造方法、これにより製造されたインク組成物及びペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油や石炭のような既存のエネルギー資源の枯渇が予測されるにつれて、これらを取り替える代替エネルギーに対する関心が高くなっており、その中でも太陽電池はエネルギー資源が豊かで環境汚染に対する問題点がないため、特に注目されている。
【0003】
太陽電池は、太陽熱を用いてタービンを回転させるのに必要な蒸気を発生させる太陽熱電池と、半導体性質を用いて日光(photons)を電気エネルギーに変換させる太陽光電池とに分類される。太陽電池とは、一般的に、太陽光電池(以下、太陽電池と言う)を指す。
【0004】
太陽電池は、原料物質によって大きくシリコン太陽電池(silicon solar cell)、化合物半導体太陽電池(compound semiconductor solar cell)及び積層型太陽電池(tandem solar cell)に区分される。このような三種の太陽電池の中で安全性と高効率性の利点のためにシリコン太陽電池が主流をなしている。
【0005】
しかし、シリコン太陽電池は、シリコン表面と前面電極との接触抵抗が高いという問題点があるため、シリコン表面と前面電極の接触抵抗を低めるためのエミッタに対する研究が活発である。
【0006】
一方、特許文献1の図1に、従来技術によるエミッタ層の構造が変更された選択的エミッタを含む太陽電池の断面図が示されている。
【0007】
pn異種接合を形成するp型半導体基板101とn型半導体層102、その上に形成された前面電極104、及びp型半導体基板101の下面に形成された後面電極106で構成されている。
【0008】
前記n型半導体層102は、エミッタ層であり、前面電極104との接触抵抗を減少させるために電極と接する領域は厚く形成し、そうでない領域は、それより薄く形成する選択的エミッタ層で構成される。
【0009】
しかし、このような選択的エミッタ層は、電極とエミッタ層の間の接触抵抗を減少させて効率に寄与する程度が高いが、付加の製造工程が加えられて複雑で過多な生産コストがかかる問題があるので、このような選択的エミッタ層の製造工程に対する改善の研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2010−0078813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は前述した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、電極の形成と同時に選択的エミッタ層を形成することができる金属粒子の製造方法、これにより製造されたインク組成物及びペースト組成物を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、インクジェット印刷方式を用いる場合、インク組成物を吐き出す金属ヘッドの腐食を防止することができる金属粒子の製造方法、これにより製造されたインク組成物及びペースト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例による金属粒子の製造方法は、銀(Ag)化合物及び溶剤を含む第1溶液を準備する段階と、前記第1溶液を加熱及び撹拌する段階と、前記第1溶液に有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階と、前記第1溶液からリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を形成する段階とを含む。
【0014】
ここで、前記銀(Ag)化合物は、硝酸銀(AgNO)であってもよい。
【0015】
この際、前記第1溶液を準備する段階において、前記第1溶液にブチルアミン(butyl amine)をさらに含み、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階の前に、前記第1溶液にアミン(amine)を含む段階をさらに含むことが好ましい。
【0016】
また、前記金属粒子を形成する段階は、前記第1溶液に酸を添加してリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子パウダーを析出する段階、及び析出された前記パウダーを洗浄及び乾燥させる段階を含むことが好ましい。
【0017】
ここで、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、アルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)であってもよい。
【0018】
一方、前記銀(Ag)化合物は、銀(Ag)粉末であってもよい。この際、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、有機ホスフェート(organophosphate)または有機ホスホネート(organophosphonate)であってもよい。
【0019】
また、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、8〜22の炭素数を持つことが好ましい。
【0020】
また、本発明の一実施例によるインク組成物の製造方法は、銀(Ag)化合物及び溶剤を含む第1溶液を準備する段階と、前記第1溶液を加熱及び撹拌する段階と、前記第1溶液に有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階と、前記第1溶液からリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を形成する段階と、前記第1溶液に粘度調節剤及び分散剤を添加する段階とを含む。
【0021】
この際、前記銀(Ag)化合物は、硝酸銀(AgNO)であってもよい。
【0022】
この際、前記第1溶液を準備する段階において、前記第1溶液にブチルアミン(butyl amine)をさらに含み、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階の前に、前記第1溶液にアミン(amine)を含む段階をさらに含むことが好ましく、前記金属粒子を形成する段階は、前記第1溶液に酸を添加して行うことが好ましい。
【0023】
また、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)はアルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)であってもよい。
【0024】
一方、前記銀(Ag)化合物は、銀(Ag)粉末であってもよい。この際、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、有機ホスフェート(organophosphate)または有機ホスホネート(organophosphonate)であってもよい。
【0025】
また、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、8〜20の炭素数を持つことが好ましい。
【0026】
また、前記インク組成物に対し、前記粘度調節剤は、20重量%以下で添加されることが好ましく、前記分散剤は、20重量%以下で添加されることが好ましい。
【0027】
また、前記インク組成物に対し、前記金属粒子の含量は、60重量%以下であってもよい。
【0028】
また、本発明の一実施例によるインク組成物は、リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子と、前記金属粒子を分散させる溶剤と、インクの粘性を調節する粘度調節剤と、インクの分散性を向上させる分散剤とを含む。
【0029】
ここで、前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、前記リン(P)化合物のリン(P)が前記金属粒子の表面に吸着された形態であってもよい。
【0030】
また、前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、前記リン(P)化合物の機能基(functional group)が前記金属粒子の表面に吸着された形態であってもよい。
【0031】
前記金属粒子は、銀(Ag)であってもよい。
【0032】
また、前記インク組成物に対し、前記粘度調節剤は、20重量%以下で添加されることが好ましく、前記分散剤は、20重量%以下で添加されることが好ましく、前記金属粒子の含量は、60重量%以下であってもよい。
【0033】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以降の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0034】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子で電極形成組成物を製造することで、ドーパント(dopant)添加によるセルフ−ドーピング(self−doping)効果によって電極焼結の際に電極の形成と同時に選択的エミッタ層を形成することができる効果がある。
【0036】
また、本発明は、電極形成と同時に選択的エミッタ層を形成することで、工程時間を短縮することができ、太陽電池の生産コストを節減するコスト改善の効果がある。
【0037】
更に、本発明は、リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子で製造された組成物を使うことで、五酸化リン(P)を混合した組成物を使うときと比較し、インクジェット方式を用いるとき、組成物を吐き出すインクジェットヘッドで発生する腐食を防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例による金属粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】銀(Ag)化合物として硝酸銀(AgNO)を使った場合によるリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子の形状を示す模式図である。
【図3】銀(Ag)化合物として銀(Ag)粉末を使った場合によるリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子の形状を示す模式図である。
【図4】銀(Ag)化合物として銀(Ag)粉末を用いた場合に形成されたリン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子のTEMイメージの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の目的、特定の利点及び新規の特徴は、添付図面を参照する以下の詳細な説明及び好適な実施例から一層明らかに理解可能であろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるにあたり、同じ構成要素がたとえ他の図面に図示されていても、できるだけ同じ符号を付けることにする。本発明の説明において、関連の公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要にあいまいにすることができると判断される場合、その詳細な説明は省略する。本明細書において、“第1”、“第2”などの用語は、ある構成要素を他の構成要素と区別するために使用したもので、構成要素が前記用語に制限されるものではない。
【0040】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0041】
図1は、本発明の一実施例による金属粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0042】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による金属粒子の製造方法は、銀(Ag)化合物及び溶剤を含む第1溶液を準備する段階(S101)と、前記第1溶液を加熱及び撹拌する段階(S103)と、前記第1溶液に有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階(S105)と、前記第1溶液からリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を形成する段階(S107)とを含む。
【0043】
ここで、第1実施例として、前記銀(Ag)化合物は、硝酸銀(AgNO)であることが好ましい。
【0044】
この際、使用された前記溶剤は非水系溶剤で、ヘキサン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラデカン、オクタデセン、クロロ安息香酸、1−ヘキサデセン、1−テトラデセン及び1−オクタデセン及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0045】
また、前述した一実施例による金属粒子の製造方法の前記第1溶液を準備する段階において、前記第1溶液には、ブチルアミン(butyl amine)をさらに含むことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0046】
更に、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階の前に、前記第1溶液にアミン(amine)を添加する段階をさらに含むことが好ましい。
【0047】
前記アミン(amine)は、炭素数8〜22の直鎖形、分岐形及び環形の中で少なくとも一つの形態を持ち、飽和及び不飽和アミンの中で選択されることが好ましく、1次アミンまたは2次アミンであってもかまわない。
【0048】
前記アミン(amine)の具体的な例としては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミンなどをあげることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0049】
本実施例において、前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、アルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)を使うことが好ましい。
【0050】
ここで、アルキルホスフェート(alkyl phosphate)の具体的な例としては、化学式1のドデシルホスフェート(dodecyl phosphate)などをあげることができるが、特にこれに限定されるものではなく、8〜22の炭素数を持つアルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)がいずれも使用可能である。
【0051】
前記炭素数が8未満の場合には、溶剤での分散力が低下し、22を超える場合には、溶液内の有機物含量が高くなる問題が発生する。
【0052】
【化1】

【0053】
ついで、前述したアルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)を添加した第1溶液に、酸を添加してリン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子パウダーを析出する。
【0054】
本実施例において、前記酸は、銀(Ag)イオンを銀(Ag)粒子に還元させる還元剤の役目をするもので、ギ酸(formic acid)を使うことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0055】
ついで、析出された前記リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子パウダーを洗浄及び乾燥させる。
【0056】
この際、前記洗浄は、エタノール(ethanol)を用いた1次洗浄及びアセトン(acetone)を用いた2次洗浄を含むことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0057】
また、前記乾燥は、真空(vaccum)オーブンで行われることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0058】
一方、本発明のさらに他の実施例において、前記銀(Ag)化合物は、銀(Ag)粉末であることが好ましい。
【0059】
この際、使われる前記溶剤は、前記銀(Ag)粉末の特性によって変更可能であり、例えば、水系で合成された銀(Ag)粉末を使う場合には、エチレングリコール(ethylene glycol)系溶剤を使うことが好ましく、非水系で合成された銀(Ag)粉末を使う場合には、トルエン(toluene)またはシクロヘキサン(cyclohexane)系溶剤を使うことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0060】
また、本実施例において、前記第1溶液に添加される有機リン化合物(organophosphorus compound)は、有機ホスフェート(organophosphate)または有機ホスホネート(organophosphonate)であることが好ましい。
【0061】
ここで、前記有機ホスフェート(organophosphate)の具体的な例としては、化学式2のホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)、化学式3のトリフェニルホスフェート(triphenyl phosphate)などをあげることができる。
【0062】
また、前記有機ホスホネート(organophosphonate)の具体的な例としては、化学式4のゾレドロン酸(zoledronic acid)、化学式5のグリホセート(glyphosate)などをあげることができる。
【0063】
【化2】

【0064】
【化3】

【0065】
【化4】

【0066】
【化5】

【0067】
しかし、前述した化合物は、ただ例としてあげたものであり、本実施例に使われる有機ホスフェート(organophosphate)及び有機ホスホネート(organophosphonate)化合物が、特に前述した化合物にだけ限定されるものではなく、両性機能基を持つ、つまり一方は銀(Ag)に親しい機能基、例えばチオール(thiol)、アミン(amine)、カルボキシル(carboxyl)基、イミダゾール(imidazole)などを含み、連結される他方はリン(P)を含む化合物はいずれも使うことができる。
【0068】
ついで、一定時間のうちリン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子パウダーを沈澱させた後、沈澱されたパウダーを洗浄及び乾燥させる。
【0069】
この際、前記洗浄は、エタノール(ethanol)を用いた1次洗浄及びアセトン(acetone)を用いた2次洗浄を含むことが好ましく、前記乾燥は、真空(vaccum)オーブンで行われることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0070】
図2は、銀(Ag)化合物として硝酸銀(AgNO)を使った場合によるリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子の形状を示す模式図、図3は、銀(Ag)化合物として銀(Ag)粉末を使った場合によるリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子の形状を示す模式図、図4は、銀(Ag)化合物として銀(Ag)粉末を用いた場合に形成されたリン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子のTEMイメージの写真である。
【0071】
すなわち、前述した金属粒子の製造方法において、第1実施例によって製造される金属粒子は、図2に示すように、アルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)、つまり、リン(P)化合物のリン(P)が直接銀(Ag)粒子の表面に吸着されてキャッピングされた形態に形成することができる。
【0072】
このような方法で形成された金属粒子、つまりリン(P)がキャッピングされた銀(Ag)粒子を、図4にTEMイメージの写真で示す。
【0073】
一方、前述した金属粒子の製造方法において、銀(Ag)粉末と有機ホスフェート(organophosphate)または有機ホスホネート(organophosphonate)を用いて製造される金属粒子は、図3に示すように、銀(Ag)に親しいリン(P)化合物の機能基300が、銀(Ag)の表面に吸着されることによって、リン(P)が銀(Ag)粒子をキャッピングする形態に形成することができる。
【0074】
本発明の一実施例によるインク組成物の製造方法は、銀(Ag)化合物及び溶剤を含む第1溶液を準備する段階、前記第1溶液を加熱及び撹拌する段階、前記第1溶液に有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階、前記第1溶液からリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を形成する段階、及び前記第1溶液に粘度調節剤及び分散剤を添加する段階を含む。
【0075】
ここで、前記金属粒子を形成する段階までは、前述した金属粒子の製造方法の二つの実施例、つまり銀(Ag)化合物として硝酸銀(AgNO)を使う方法または銀(Ag)粉末を使う方法によって実施することが好ましい。
【0076】
この際、前記金属粒子は、銀(Ag)であることが好ましく、前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、図2に示すように、リン(P)化合物のリン(P)が銀(Ag)粒子の表面に吸着されてキャッピングされた形態であるか、あるいは、図3に示すように、リン(P)化合物の機能基300が銀(Ag)粒子の表面に吸着されることによってキャッピングされた形態であることが好ましい。
【0077】
この際、前記粘度調節剤は、インク組成物の粘性を調節するための物質で、全インク組成物に対して20重量%以下、具体的には1〜20重量%で前記第1溶液に添加することが好ましい。
【0078】
前記粘度調節剤が1重量%未満の場合には、添加効果が発現されない問題が発生し、前記粘度調節剤が20重量%を超えれば、焼結工程で有機物の除去が容易でない問題が発生する。
【0079】
また、前記分散剤は、前記金属粒子の分散性を向上させる物質で、全インク組成物に対して20重量%以下、具体的に1〜20重量%で前記第1溶液に添加されることが好ましい。
【0080】
この際、前記分散剤が1重量%未満の場合には、添加効果が発現されない問題が発生し、前記分散剤の含量が20重量%を超えれば、前述したように有機物の除去が容易でない問題が発生する。
【0081】
また、前記金属粒子は、60重量%以下、具体的に10〜60重量%で前記第1溶液に含まれることが好ましい。
【0082】
この際、前記金属粒子が10重量%未満で含まれる場合には、インク組成物の銀(Ag)の含量が低く、印刷後に電極の特性発現に問題があり得る。
【0083】
また、前記銀(Ag)粒子が60%重量%を超えて含まれる場合には、残りの溶剤、粘度調節剤及び分散剤の付加に問題が発生し、インク組成物が挙動できなくて印刷が容易でない問題があり得る。
【0084】
このように、前述した本実施例によるインク組成物の製造方法によれば、リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子、前記金属粒子を分散させる溶剤、前記インクの粘性を調節する粘度調節剤、及び前記インクの分散性を向上させる分散剤を含むインク組成物を提供することができる。
【0085】
この際、前記金属粒子、粘度調節剤及び分散剤の重量は、前述した範囲内で添加することが好ましく、バランスで前記溶剤を添加して総100重量%のインク組成物を製造することが好ましい。
【0086】
このように、リン(P)化合物が表面にキャッピングされた銀(Ag)粒子を含むインク組成物を使うことで、従来の五酸化リン(P)を混合したインク組成物に比べ、インクジェットヘッドによる吐き出しの際、インクジェットヘッドで腐食が発生することを防止することができる。
【0087】
つぎに、本発明の一実施例によるペースト組成物の製造方法は、溶剤に有機バインダーを溶解させた後、有機バインダーが溶解された溶液にリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を混合する。その後、金属粒子が混合された溶液にガラス粉末と可塑剤及びチキソトロープ剤を混合した後、ミリング(milling)する段階を含むことが好ましい。
【0088】
ここで、前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子であることが好ましい。
【0089】
この際、リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子は、前述した金属粒子の製造方法の二つの実施例、つまり銀(Ag)化合物として硝酸銀(AgNO)を使う方法または銀(Ag)粉末を使う方法によって収得することが好ましい。
【0090】
前記溶剤としては、スクリーン印刷の際に蒸発を防ぐために、比較的高沸点の蒸気圧の高い溶剤が使われる。例えば、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)、ブチルカルビトール(butyl carbitol)、α−テルピネオール(α−terpineol)、エチルカルビトール(ethyl carbitol)、メンタノール(menthanol=dihydroterpineol)を使うことができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0091】
また、前記ペースト組成物の総重量に対し、前記リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子は、95重量%以下、具体的に50〜95重量%以下で含むことが好ましい。
【0092】
前記銀(Ag)粒子が50重量%未満で含まれる場合には、ペースト組成物の銀(Ag)含量が非常に低くて印刷の後に電極の特性発現に問題があり得る。
【0093】
また、前記銀(Ag)粒子が95重量%を超えて含まれる場合には、残りの溶剤、バインダー及び添加剤の付加に問題が発生し、ペースト組成物が挙動できなくて印刷が容易でない問題があり得る。
【0094】
前記有機バインダーとしては、ポリエステル系、アクリル系、エチルセルロースなどのセルロース誘導体系、フェノール系、エポキシ系の樹脂を使うことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0095】
また、前記ペースト組成物の総重量に対し、前記有機バインダーは、10重量%以下、具体的には0.5〜10重量%以下で含まれることが好ましい。
【0096】
前記有機バインダーが0.5重量%未満で含まれる場合には、ペースト組成物の挙動具現ができない問題が発生し、10重量%を超えて含まれる場合には、印刷及び焼結の後に電気的特性の具現に問題が発生する。
【0097】
また、本実施例によるペースト組成物は、添加剤をさらに含むことが好ましい。前記添加剤としては、ペースト組成物のチクソ性(thixotropy)を調節するためのチキソトロープ剤(thixotropic agent)及びペースト組成物の加工性及び柔軟性を調節する可塑剤(plasticizer)を含むことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0098】
前記チキソトロープ剤としては、キャスターワックス(castor wax)、酸化ポリエチレンワックス(oxidaized polyethlene wax)、アミドワックス(amide wax)、乾式シリカ(fumed silicaまたはpyrogenic silica)などを使うことができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0099】
本実施例によるペースト組成物に、このようなチキソトロープ剤を添加することで、印刷の際にペーストが所望のパターンから拡散することを抑制することが好ましい。
【0100】
また、前記可塑剤(plasticizer)としては、例として、最も一般的に使われるものがフタレート(phthalate)系の化合物であり、ジメチルフタレート(dimethyl phthalate)、ジエチルフタレート(diethyl phthalate)、ブチルデシルフタレート(butyl decyl phthalate)などを使うことができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0101】
また、本実施例によるペースト組成物は、ガラス粉末をさらに含むことが好ましい。前記ガラス粉末は、当該分野で使われるガラス粉末であれば制限なしに使うことができる。
【0102】
このようなガラス粉末の例をあげれば、鉛酸化物及び/またはビスマス酸化物を含むことが好ましい。具体的には、SiO−PbO系、SiO−PbO−B系、またはPbO−Bi−B−SiO系粉末がそれぞれ単独であるいは2種以上混合して使うことができるが、特にこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を下記実施例に基づいて説明するが、本発明の保護範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0104】
<実施例1>
硝酸銀(AgNO)30g、トルエン(toluene)1L及びブチルアミン(butyl amine)5mlが混合された第1溶液を準備し、前記第1溶液を40℃で撹拌して硝酸銀(AgNO)を溶解した。
【0105】
ついで、硝酸銀(AgNO)が溶解された第1溶液にドデシルホスフェート(dodecyl phosphate)20mlを添加し、40℃から80℃に加熱した。
【0106】
ついで、第1溶液を撹拌しながらギ酸(formicacid)2mlで還元することで、リン(P)がキャッピングされた銀(Ag)粒子パウダーを析出した。
【0107】
ついで、析出された銀(Ag)粒子パウダーをエタノール(EtoH)で1次洗浄し、アセトン(acetone)で2次洗浄した後、真空オーブンで乾燥させることで、リン(P)がキャッピングされた銀(Ag)粒子を収得した。
【0108】
<実施例2>
銀(Ag)粉末100g及びトルエン(toluene)1Lが混合された第1溶液を準備して撹拌し、80℃で撹拌しながらドデシルホスフェート(dodecyl phosphate)50mlを添加した。
【0109】
ついで、1時間経過の後、沈澱したリン(P)がキャッピングされた銀(Ag)粒子パウダーをエタノール(EtoH)で1次洗浄し、アセトン(acetone)で2次洗浄した後、真空オーブンで乾燥させることで、リン(P)がキャッピングされた銀(Ag)粒子を収得した。
【0110】
<実施例3>
60gのテトラデカン(tetradecane)を約40℃で加熱及び撹拌した後、40gのリン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子を添加して撹拌した。
全て溶解されるまで撹拌して底の沈殿物が全てなくなった後、ネオデカン酸(neo−decanoic acid)0.5gを添加して約30分間撹拌した。この際、温度は40℃を維持した。
【0111】
その後、3000rpmで10分間遠心分離して未溶解物質を除去した後、フィルタリング(0.5μmの微細孔フィルター使用)を行った。
【0112】
<実施例4>
ECバインダー(EC10)12gをブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)に溶解させた。
【0113】
ECバインダーが溶解された後、リン(P)化合物がキャッピングされた銀(Ag)粒子を混合した(D50=2.5μm、D50=300nm、D50=30nmを620g、25g、5g)。
【0114】
ガラス粉末(40g)と可塑剤(dioctyl phtalate)(5g)、チキソトロープ剤(3g)を混合して3ロールのミルによるミリングを実施して製造した。
【0115】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのもので、本発明による金属粒子の製造方法、これにより製造されたインク組成物及びペースト組成物は、これに限定されず、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を持つ者によって多様な変形及び改良が可能であろう。本発明の単純な変形ないし変更は、いずれも本発明の範疇内に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は、特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、電極の形成と同時に選択的エミッタ層を形成することができ、インクジェット印刷方式を用いる場合、インク組成物を吐き出す金属ヘッドの腐食を防止することができる金属粒子組成物に適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
300 機能基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀(Ag)化合物及び溶剤を含む第1溶液を準備する段階;
前記第1溶液を加熱及び撹拌する段階;
前記第1溶液に有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階;及び
前記第1溶液からリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子を形成する段階;
を含むことを特徴とする金属粒子の製造方法。
【請求項2】
前記銀(Ag)化合物は硝酸銀(AgNO)であり、
前記第1溶液を準備する段階において、前記第1溶液にブチルアミン(butyl amine)をさらに含み、
前記有機リン化合物(organophosphorus compound)を添加して加熱する段階の前に、前記第1溶液にアミン(amine)を含む段階をさらに含み、
前記金属粒子を形成する段階は、
前記第1溶液に酸を添加してリン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子パウダーを析出する段階;及び
析出された前記パウダーを洗浄及び乾燥させる段階;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属粒子の製造方法。
【請求項3】
前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、アルキルホスフェート(alkyl phosphate)またはアルキルホスホネート(alkyl phosphonate)であることを特徴とする請求項2に記載の金属粒子の製造方法。
【請求項4】
前記銀(Ag)化合物は、銀(Ag)粉末であり、
前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は有機ホスフェート(organophosphate)または有機ホスホネート(organophosphonate)であることを特徴とする請求項1に記載の金属粒子の製造方法。
【請求項5】
前記有機リン化合物(organophosphorus compound)は、8〜22の炭素数を持つことを特徴とする請求項1に記載の金属粒子の製造方法。
【請求項6】
リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子;
前記金属粒子を分散させる溶剤;
インクの粘性を調節する粘度調節剤;及び
インクの分散性を向上させる分散剤;
を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項7】
前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、前記リン(P)化合物のリン(P)が前記金属粒子の表面に吸着された形態であることを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、前記リン(P)化合物の機能基(functional group)が前記金属粒子の表面に吸着された形態であることを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記金属粒子は、銀(Ag)であることを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記インク組成物に対し、前記粘度調節剤は、20重量%以下で添加されたことを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記インク組成物に対し、前記分散剤は、20重量%以下で添加されたことを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記インク組成物に対し、前記金属粒子の含量は、60重量%以下であることを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項13】
リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子;
前記金属粒子を分散させる溶剤;及び
有機バインダー;
を含むことを特徴とするペースト組成物。
【請求項14】
前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、前記リン(P)化合物のリン(P)が前記金属粒子の表面に吸着された形態であることを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。
【請求項15】
前記リン(P)化合物がキャッピングされた金属粒子は、前記リン(P)化合物の機能基(functional group)が前記金属粒子の表面に吸着された形態であることを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。
【請求項16】
前記金属粒子は、銀(Ag)であることを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。
【請求項17】
前記ペースト組成物に対し、前記金属粒子の含量は、95重量%以下であることを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。
【請求項18】
前記ペースト組成物に対し、前記有機バインダーは、10重量%以下で添加されたことを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。
【請求項19】
前記ペースト組成物のチクソ性(thixotropy)を調節するためのチキソトロープ剤(thixotropic agent)をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。
【請求項20】
前記ペースト組成物の可塑性を調節するための可塑剤をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のペースト組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76154(P2013−76154A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251006(P2011−251006)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】