説明

金属粒子の製造方法および製造装置、並びに製造された金属粒子

【課題】本来単一金属元素の加工性を利用して、加工して、前述したような前処理操作を省き、異種金属元素からなり、単一で均一な組成を有する球形粒子の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】容器1の中心軸の周囲に対称的に複数のプラズマトーチ2が配置されて、複数のプラズマトーチからそれぞれ噴射されるプラズマジェットが1つの交差域を形成し、容器の外部から容器の内部に供給される金属素材8を供給装置9とその制御装置10により交差域に連続して供給して溶融液滴を形成し、引き続いて該溶融液滴を実質的に球形である球状微粒子を形成する金属粒子の製造方法において、供給される二つ以上の異種の金属材の質量化制御を、供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比制御によって行うか、または、二つ以上の異種の粒状の金属材を混合して射出成形によって1つの連続した射出成形細長状金属材に形成して前記交差域に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属から形成する金属粒子の製造方法および製造装置、並びに製造された金属粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属、合金、または液相を有するセラッミクスからなる群から選択される少なくとも一つの物質を実質的に球形である粉末の製造方法において、複数の、好ましくは3個の、ジェットが一点に収斂する直流非移行型不活性ガスプラズマトーチが、中心軸に対して30°傾き、中心軸の周囲に120°離れて配置し、プラズマジェットの収斂点に少なくとも一つの物質が溶融して、或いは、引き伸ばされた形状として連続的に供給され、ジェットは溶融金属液滴を微粒化するために十分なエネルギーを有し、微粒子は約10K/sの速度で冷却する過程で粒径が10乃至300μmの球形粒子からなる粉末として固化させるプラズマ噴霧法を記載し、実施例として、プラズマ出力83kw、アルゴンガス流量100L/minにおいてAl、Cu、Cu−Ni、Ti等の直径が1.59〜2.38mmの素材について微粒化例を挙げ、Al微粒化のエネルギー消費量として19〜23g/kW−hであることを記載している。
【0003】
非特許文献1は、水冷壁からなる容器と容器の上端に設置した3組のプラズマトーチ、真空ポンプ、容器の上端で中心軸に沿ってワイヤ状の素材を供給する装置、プラズマ電源、及び製品粉末の捕集容器からなっており、その運転は、第一段階として金属が溶解して液滴を生じ、第二段階として液滴が分散して微粒化が行われること、分散の効率は、プラズマジェットのガス速度、溶融金属の粘度と表面張力などによって支配されること、この方法はチタンのように活性の金属について、不純物の含有量が少なく、充填密度と流動性が高い球状粉末を与えることを記載している。そして、粉末の典型的な粒径分布は半分量が45μm以下であったことを記載している。
【0004】
特許文献2は、混合/複合超微粒子を熱プラズマにより製造する混合/複合超微粒子の製造方法であって、複数のプラズマトーチにより複数のプラズマフレームを発生させ、該複数のプラズマフレームを重畳状態又は非接触状態に制御することにより、複数の材料物質が混合又は複合化した超微粒子を製造することを特徴とする混合/複合超微粒子の製造方法を記載する。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,707,419号公報
【特許文献2】特開平6−172820号
【非特許文献1】Smagorinskim M. F. et al.、Production of Spherical Titanium Powder by Plasma Atomization, Advances in Powder Metallurgy & Particulate Materials 2002, Part3、p.248-260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラズマ噴霧法で製造される、実質的に球形である金属の粉末は、比較的小さい粒径が与えられ、充填密度が高く、流動性が良好であるため、金属射出成型法による複雑な形状の焼結体の製造や、プラズマ溶射法による機能性被膜の加工などに応用される範囲が広い。最近では、異種の金属元素種からなる合金や金属間化合物の性質が成分金属元素種より特定の目的に適合していることから、異種の金属元素種からなり、球形である粉末の必要とする場合がある。
【0007】
従来の開示されている技術は、金属、合金、セラッミクスから選択した、少なくとも一つの物質の実質的に球形である粉末の製造を可能にしている。しかし、異種金属元素種からなり、単一で均質な組成を有する球形粒子の製造を可能にするためには、予め、異種金属元素種からなり、単一で均質な組成を有する物質を溶融相として、或いは、固体として調製して細長く加工し、しかる後に開示されている方法を適用しなければならない。この前処理操作は、不純物が混入する可能性が増加し、費用と手間を要するだけでなく、異種金属元素種からなり、単一で均質な組成を有する物質の物性が構成する金属元素種の物性と著しく相違する場合には適用することが困難になる場合がある。例えば、金属間化合物が生成して材料の靭性が低下し、脆化している場合には、細長く加工することは事実上不可能である。
【0008】
本発明は、本来単一金属元素として有する良好な機械加工性を利用して、加工して、前述したような前処理操作を省き、異種金属元素からなり、単一で均一な組成を有する球状粒子の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器の中心軸の周囲に対称的に複数のプラズマトーチが配置されて、複数のプラズマトーチからそれぞれ噴射されるプラズマジェットが1つの交差域を形成し、容器の外部から容器の内部に供給される金属素材を前記交差域に連続して供給して、供給された金属素材から溶融液滴を形成し、引き続いて該溶融液滴を実質的に球形である球状微粒子を形成する金属粒子の製造方法において、
各々の金属素材を機械加工して前記交差域に連続して供給できるまで細長状にまたは粒状の金属材に形成し、細長状の金属材で二つ以上の連続した異種の細長状金属材を形成して別個に前記交差域に供給し、そしてこの供給の時に、供給される二つ以上の異種の金属材の質量化制御を、供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比制御、または二つ以上の異種の粒状の金属材と混合して射出成形によって1つの連続した射出成形細長状金属材に形成して前記交差域に供給し、または前記射出成形する時の混合比を制御することによって行うようにしたこと
を特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、また、前記供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比制御が、二つ以上の異種の細長状金属材の単位長さ当たりの質量変化によって行うことを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記供給される二つ以上の異種の細長状の金属材の供給比制御が、二つ以上の異種の細長状金属材の前記容器への挿入速度制御によって行うことを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、二つ以上の異種の細長状の金属材は互いに寄り添った形で、または一方の金属材を他方の金属材が包むようにした包み込み形で形成され、前記容器に供給されることを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、二つ以上の異種の細長状の金属材は、それぞれワイヤ形状に形成され、前記容器に供給されることを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、容器の中心軸の周囲に対称的に複数のプラズマトーチが配置されて、複数のプラズマトーチからそれぞれ噴射されるプラズマジェットが1つの交差域を形成し、容器の外部から容器の内部に供給される金属素材を前記交差域に連続して供給して、供給された金属素材から溶融液滴を形成し、引き続いて該溶融液滴を実質的に球形である球状粒子を形成する金属粒子の製造装置において、
一種の金属素材を構成加工して前記交差域に連続して供給できるように細長状にまたは粒状の金属材に形成する原金属材形成手段と、該金属材形成手段で形成した細長状の金属材で二つ以上の連続した異種の細長状金属材供給金属材形成手段と該供給金属形成手段で形成した連続した細長状金属材を前記容器に供給する金属材供給手段と、供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比供給、または前記射出成形する時の混合比の制御によって、前記容器への供給の際における二つ以上の異種の金属材の質量比制御を行う質量比制御手段と、あるいは二つ以上の異種の粒状の金属材を混合して射出成形によって1つの連続した射出成形細長状金属材を形成する供給金属材形成手段と、
を備えたことを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本来単一金属元素が有する機械加工性を利用して、異種金属元素素材を個別に加工することができ、質量比の制御を容易にし、前述したような前処理操作を省き、プラズマ法によって異種金属元素種からなり、単一で均一な組成を有する球形粒子の製造を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例の異種金属から形成する金属粒子の製造装置の構成を示す一部断面を含む図である。
【0018】
図1において、異種金属から形成する金属粒子の製造装置100は、水冷されたステンレス鋼製の容器1と、中心軸に対して30°傾斜し、中心軸の周囲に120°ずつ離れて配置される3組の非移行型プラズマトーチ2と、プラズマトーチを構成するタングステン棒製の陽極3と、環状で銅製の陰極4と、アルゴンガスの入口部5を有してプラズマジェットを構成するアルゴンガス投入部6と、細長く形成された挿入部7を有して異種金属で形成された細長状の金属材8を挿入口部14から挿入することのできる金属材供給装置9と、金属材供給装置9を操作制御して、挿入する金属材8の挿入速度を制御する制御装置10と容器1内の発生気体を排出する排出口部11と、製品である金属粒子を取り出す取り出し口部12と、から構成される。
【0019】
3組のプラズマトーチ2からそれぞれ噴射されるプラズマジェットによって交差点0付近にプラズマの交差域Pが形成される。プラズマトーチ2には電源調整設備(図示せず)が接続される。
【0020】
このような構成によって、容器の中心軸の周囲に対称的に複数のプラズマトーチ2が配置されて複数のプラズマトーチ2からそれぞれ噴射されるプラズマジェットが1つの交差域Pを形成し、容器1の外部から容器1の内部に供給される金属材8を交差域に連続して供給して、供給された金属材8から溶融液滴を形成し、引き続いて該溶融液滴を実質的に球形である球状微粒子を形成する金属粒子の製造装置100が構成される。
【0021】
この金属粒子の製造装置100を用いて、次のようにして容器1に供給される金属材8が形成される。図2にその金属材8の生成方法およびプラズマによる球状微粒子の形成方法を示す。
【0022】
図2において、各々の金属素材はその機械的加工性が良好である本来の性質を利用して、この金属素材を機械加工して細長状の金属材8を形成する。そして各種の細長状金属を形成する(S11)。この場合に、金属材8は挿入口部13から交差域Pに連続して供給できるまで細長状にする。
【0023】
このようにして各種の金属素材から機械加工によって複数の金属材8を形成する。これらの金属材は複数種の原金属材となる。
【0024】
二つ(二つ以上の場合を含むが以下二つを例にとって説明する。)原金属材、すなわち二つの異種の細長状金属材は機械的手段によって複合化される。機械的手段による複合化であるので各細長状金属材(体)はそれぞれの性質を保持している。複合化は、例えば二つ異種の細長状の金属材は互いに寄り添った形で、または一方の金属材を他方の金属材が包むようにした包み込み形で形成され得る。これらの形状に限定されない。このように二つの異種の細長状金属材は複合化されて一体として供給される。
【0025】
異種の細長状金属材の組み合わせを変えることによって両者の単位長さ当たりの質量を変えることができる。すなわち両金属材の質量比を制御することができる(S12)。
【0026】
このようにして質量比が制御された複合化された二つの異種の細長状金属材を形成する(S13)。このようにして、複合材の容器1への供給準備がなされる。この複合化された二つの異種の細長状金属材は容器1に供給される(S14)。
【0027】
ステップS12−S14に代えてステップS15−S18を採用することができる。これらのステップは射出成形によって複合化された一つの細長状金属材を形成する方法である。(S15)。
【0028】
二つの異種の金属材を混合する。この混合は任意のものとすることができ、最終的に製作しようとする球状粒子の混合比に対応する混合になるように適宜行う。これによって両者の混合比によって質量比が制御された一つの混合金属材が形成されることになる(S16)。これらの一つの混合金属材に射出成形に必要な熱可塑性結合材を混ぜて射出成形機による射出成形を行う。熱可塑性結合材としては、例えば、比較的低温で完全にモノマーに熱分解する熱可塑性物質が好ましい。好適な選択は、チタン粉末の射出成型において実績がある、ポリメチルメタクリレート(軟化点125℃、分解点350−450℃、溶媒:ベンゼン、トルエン)又はポリプロピレンカーボネート(軟化点>40℃、分解点>300℃、溶媒:アセトン、メチルエチルケトン)であって、添加量は素材粉末嵩容積の10容積%以下である。この射出成形によって両者の質量比が制御された一つの細長状金属材が形成され、容器1への供給準備がなされる(S17)。質量比が制御された一つの細長状金属材は容器1に連続して供給される(S18)。
【0029】
このようにして質量比が制御された二つの異種の金属は、細長状金属材の形体で容器内のプラズマ交差域に形成されたプラズマによって溶融される(S19)。これによって、溶融液滴が形成される(S20)。この時に、溶融液滴の温度は高温の熱プラズマによって金属元素の沸点近くまで加熱されおり、金属間化合物の生成速度は著しく加速され、短時間に合成が完結する。
【0030】
容器に挿入される細長い金属材は、プラズマに触れるまえに先端が溶解し、プラズマに触れると溶融液滴となって空間に浮遊する状態となり、この間に金属間化合物の生成が完了する。
【0031】
形成された溶融液滴はプラズマを形成する高速のガス流に接すると霧状に分散され、急冷されて球状粒子となる(S21)。このように、金属間化合物の球状粒子が製作され、回収される。
【0032】
細長い金属材から溶融液滴へ物質の供給が行なわれると、溶融液滴の質量が増えて浮遊状態を保てなくなり、プラズマ内に吸収され、同時にプラズマで噴霧され、冷却するまえに実質的に球形の球状微粒子となって容器底に沈降し、回収される。
【0033】
細長く成形された異種金属の複合化された金属材(複合材)は、異種金属の質量比、すなわち構成比が、その長さ方向において目的とする最終の球状粒子の金属の組成比に等しく均一であることを必要とするが、複合素材の幅方向では不均一であることが許され、長さ当たりの金属質量絶対値の均一性は必ずしも必要ではない。
【0034】
この原則が守られる限りにおいて、複合化された金属材の製造方法は、金属の性質、特に加工特性に依存して以下の方法を選択して採用することができる。
異種金属が寄添っている複合体は、それぞれが異種金属の板を、靜加圧、高衝撃加圧、圧延、爆発成形等で接合した後、断面が四角形になるように剪断し、必要に応じて圧延処理によって断面を円形に加工する。この種の板状複合体は、加工し難い金属の板材の上に、加工しやすい金属の粉末を溶射して金属層を形成し、必要に応じて厚さを調節加工して製造することを行う。
【0035】
一つの金属が他の金属を包みこんでいる複合体は、加工しやすい金属でできた被覆管中に別の金属棒を嵌め合わせ、または、別の金属棒を挿入したのちに引抜き加工、ロール加工等で被覆管の断面を減少させて加工する。この種の棒状複合体は、被覆管に別の金属粉末を充填し、スウェージング等によって被覆管の断面を減少させて金属粉末充填カラムを高密度化して製造することが可能である。この種の棒状複合体は、被覆管と心棒の間で、必ずしも金属接合組織を必要としないが、被覆管と心棒が相対的に移動しないようにする。
【0036】
異種金属粉末の射出成型体である複合体は、ほぼ同一の粒径分布を有する異種金属の粉末を混合し、熱可塑性成形剤を加えて熱間で捏練して均一な混合物とし、熱間で射出成型した後に、取扱いに十分な機械的な強度を与えるために焼結して、細長く成形された複合材とする。
【0037】
本実施例は、チタン、アルミニウム及びバナジウムを素材として、一般的にTi-6Al-4V合金として表記される高張力チタン構造材料の球状粒子の製造について行われた。図3(1)に示すように、この合金におけるチタン、アルミニウムの及びバナジウム重量比率は90%:6%:4%であり、容積比率は、87.364%:9.720%:2.916%である。
【0038】
異種金属が寄添っている複合体とするには、厚さ2.621mmのチタン板の片面に厚さ0.282mmのアルミニウム板を接合し、さらに裏面に厚さ0.088mmのバナジウム板を接合して、厚さ3.000mmの複合板を製作し、続いて幅約3mm或いは任意の幅に剪断すればよい。
【0039】
別の実施例は、ニッケルとアルミニウムを素材として、Ni3Alの分子式を有する金属間化合物で、高温において高強度・高剛性、及び優れた耐食性を有する耐熱構造材料の球状粒子の製造について行われた。図3(1)に示すように、Ni3Alにおけるニッケルとアルミニウムの元素重量比率は86.713%:13.287%であり、元素容積比率は66.421%:33.579%である。
【0040】
異種金属が寄添っている複合体とするには、厚さ1.993mmのニッケル板の片面に厚さ1.007mmのアルミニウム板を接合して、厚さ3.000mmの複合板を製作し、続いて幅約3mm或いは任意の幅に剪断すればよい。また、一つの金属が他の金属を包みこんでいる複合体は、直径2.445mmのニッケル線を肉厚0.278mm外径3.000mmのアルミニウム被覆管で覆い、又は、直径1.738mmのアルミニウム線を肉厚0.631mm外径3.000mmのニッケル被覆管で覆えばよい。
【0041】
さらに別の実施例は、ベリリウムとチタン或いはベリリウムとバナジウムを素材として、Be12Ti或いはBe12Vの分子式を有する金属間化合物の球状粒子の製造が行われた。図5に示すように、Be12Tiにおけるベリリウムとチタンの重量比率は69.319%:30.681%であり、容積比率は84.622%:15.373%であり、Be12Vにおけるベリリウムとバナジウムの重量比率は67.979%:32.021%であり、容積比率は87.318%:12.682%である。
【0042】
異種金属が寄添っている複合体とするには、厚さ2.539mmのベリリウム板に厚さ0.461mmのチタン板を接合して厚さ3,000mmの複合板材を製作し、続いて幅約3mmに剪断し、又は、厚さ2.620mmのベリリウム板に厚さ0.380mmのバナジウム板を接合して厚さ3.000mmの複合板材を製作し、続いて幅約3mmに剪断すればよい。また、一つの金属が他の金属を包みこんでいる複合体は、直径2.759mmのベリリウム線を肉厚0.120mm外径3.000mmのチタン被覆管で覆い、又は、直径2.803mmのベリリウム線を肉厚0.098mm外径3.000mmのバナジウム被覆管で覆えばよい。
【0043】
プラズマジェット中では、素材は熱を吸収し、比熱に依存して温度が上昇し、まず融点が低い素材が溶融するが、溶融潜熱が必要であるため融点が低い素材の溶融が終了するまでは融点が高い素材の溶融は起こらないと考えられる。同じように、融点の高い素材の溶融が進行している間は融点の低い素材の溶融物温度が融点の高い素材の融点以上にはならないと考えられる。融点の高い素材の融点を超えて溶融物の温度が高くなっても、沸点の低い素材の沸点に到達すると沸騰潜熱が必要になるためそれ以上温度が上昇することはないと想定する。
【0044】
上述のように、チタンとアルミニウム及びバナジウムを素材としてTi−6Al−4Vと表記される合金、或いはニッケルとアルミニウムを素材としてNi3Alの分子式を有する金属間化合物、ならびにベリリウムとチタン或いはベリリウムとバナジウムを素材として、Be12Ti或いはBe12Vの分子式を有する金属間化合物の球状粒子の製造が行われた。プラズマジェット中では、素材は熱を吸収し、比熱に依存して温度が上昇し、まず融点が低い素材が溶融するが、溶融潜熱が必要であるため融点が低い素材の溶有が終了するまでは融点が高い素材の溶融は起こらないと考えられる。同じように、融点の高い素材の溶融が進行している間は融点の低い素材の溶融物温度が融点の高い素材の融点以上にはならないと考えられる。融点の高い素材の融点を超えて溶融物の温度が高くなっても、沸点の低い素材の沸点に到達すると沸騰潜熱が必要になるためそれ以上温度が上昇することはないと想定する。素材であるチタン、アルミニウム、バナジウム、ニッケル及びベリリウムについて関連する物性値を図3(2)に示し、Ti−6Al−4V、Ni3Al、Be12Ti或いはBe12V等の球形粒子を製造するために必要な最低限度の熱量を計算して結果を図3(3)に示す。
【0045】
アルミニウムの溶融物温度はその沸点を超えず、チタン、バナジウム及びニッケルの溶融物の温度もアルミニウムの沸点を超えないものとした結果、Ti−6Al−4Vを溶融するために最低限度必要なエネルギー量は0.967kW-hr/kgであり、NiAl を溶融するために最低限度必要なエネルギー量は0.436kW-hr/kgである。また、ベリリウム溶融物温度はその沸点を超えず、チタン又はバナジウム溶融物の温度もベリリウムの沸点を超えないものとした。この結果、Be12Tiを溶融するために最低限度必要なエネルギー量は1.162kW−hr/kgであり、Be12Vを溶融するために最低限度必要なエネルギー量は1.152kW−hr/kgである。
【0046】
アルゴンの熱容量は20.78J−mol−1−Kであり、アルゴンの流量が100L/min(4.46mol−min−1)である場合に、室温から10,000Kのプラズマ温度まで高めるためには、900kJ−min(15kW−hr)のエネルギーが必要である。高いアルゴン流量は溶融された液滴を微粒化するために必要である。従って、大部分のエネルギーは溶融よりも、微粒化に消費されることになる。
【0047】
本発明に係わる金属粒子の製造方法の制御は、溶融素材の供給量と主としてプラズマジェットガス(アルゴン)の流量に依存するプラズマトーチ出力について行われる。
【実施例2】
【0048】
図2は、本発明の第2の実施例の異種金属から形成する金属粒子の製造装置100の構成を示す一部断面を含む図である。
【0049】
先の実施例の構成と同一の構成については同一番号が付してあり、その説明は先の実施例についての説明を援用するものとし、主に先の実施例と異なる部分について説明する。
【0050】
この実施例にあっては、挿入部13Aは挿入部13とほぼ同一の構成であるが、中央を通る中心線に対して対称にして上方に向けてやや外方に傾いて二つの挿入口部14A,14Bが形成されている。これらの二つの挿入口部14A,14Bにはそれぞれ1つの金属で構成される金属材としてのワイヤ8A,8Bが挿入され、容器1への供給がなされる。
【0051】
ワイヤ8A,8Bに対してそれぞれ金属材供給装置としてのワイヤ供給装置9A,9Bが設けられ、挿入するワイヤ8A,8Bの挿入速度を制御する制御装置10が設けられる。
【0052】
この金属粒子の製造装置100を用いて、次のように容器1に供給されるワイヤ8A,8Bが形成される。図4にワイヤ8A,8Bの生成方法およびプラズマによる球形粒子の形成方法を示す。
【0053】
図4において、一種の金属素材はその機械加工性が良好である性質を利用して、この金属素材を機械加工してワイヤ8A,8Bを形成する。そして多種のワイヤを形成する(S31)。最終的に形成する目的の球形粒子の組成に対応して二つの(二つ以上の)異種のワイヤ8A,8Bを準備する(S32)。これらの二つのワイヤ8A,8Bを容器1に供給するに当って、最終的に形成する目的の球形粒子の構成比に対応して各ワイヤ8A,8Bの挿入速度の制御を行う。この挿入速度の制御は制御装置10の指令信号に基づいて供給装置9A,9Bを制御することによって行う。指令信号はコンピュ−タのプログラムによって生成される。このようにして、ワイヤ8A間間8Bの質量比制御を行う(S33)。
質量比が制御されたワイヤ8A,8Bは容器1に連続して供給される(S34)。
【0054】
このようにして、質量比が制御された二つの異種の金属は、ワイヤの形体で容器内のプラズマ交差域に形成されたプラズマによって溶融される(S35)。これによって、溶融液滴が形成される(S36)。この時に、熱プラズマによって複合微粒子が形成され、熱プラズマの状態によって金属間化合物が形成される。形成された溶融液滴は急冷されて球形粒子となる(S37)。このように、球形粒子としての共融微粒子、金属間化合物が製作され、回収される。
【0055】
細長く成形された複数の金属素材について、複数のプラズマジェットが形成する交差域に挿入する単位時間当たりの複数の金属材の構成比が、目的とする金属の組成比に等しくする必要があり、このため、複数の金属材は長さ当たりに断面積が一様な(直径が一様な)ワイヤ8A,8Bが好適である。
【0056】
この原則が守られる限りにおいて、金属素材の挿入方法は、以下の方法から選択される。
異種金属ワイヤの単位長さ当たりの質量比が、目的とする金属の組成比に等しい構成となっていれば、異種金属ワイヤはそれぞれ同じ速度で金属粒子製造装置に挿入すればよい。
異種金属の単位質量当たりの挿入速度の比率を、目的とする金属組成比に比例するようにすれば、異種金属ワイヤの直径は等しくすることができる。
異種金属ワイヤの単位長さ当たりの挿入速度を制御すれば、異種金属ワイヤの直径は自由に選択できる。
【0057】
チタンとアルミニウム及びバナジウムを素材としてTi−6Al−4Vと表記される合金の球状微粒子を製造する場合、異種金属ワイヤの単位長さ当たりの質量比が、目的とする金属の組成比に等しい構成となるためには、チタン線直径が3.000mmである場合に、アルミニウム線直径は1.000mm、バナジウム線直径は0.548mmであり、チタン線の挿入速度が100.000mm/minである場合に同一直径のアルミニウム線の挿入速度は11.126mm/minであり、同一直径のバナジウム線の挿入速度は3.338 mm/minである。
【0058】
ニッケルとアルミニウムを素材としてNi3Alの分子式を有する金属間化合物の球状微粒子を製造する場合、異種金属ワイヤの単位長さ当たりの質量比が、目的とする金属の組成比に等しい構成となるためには、ニッケル線直径が3.00mmである場合に、アルミニウム線直径は2.13mmであり、ニッケル線の挿入速度が100.000mm/minである場合に同一直径のアルミニウム線の挿入速度は50.555mm/minである。
【0059】
ベリリウムとチタン或いはベリリウムとバナジウムを素材として、Be12Ti或いはBe12Vの分子式を有する金属間化合物の球状微粒子を製造する場合、異種金属ワイヤの単位長さ当たりの質量比が、目的とする金属の組成比に等しい構成となるためには、ベリリウム線直径が3mmである場合に、チタン線直径は1.280mm、バナジウム線直径は1.162mmであり、ベリリウム線の挿入速度が10.000mm/minである場合に同一直径のチタン線の挿入速度は1.821mm/minであり、同一直径のバナジウム線の挿入速度は1.452mm/minである。
【0060】
一種の金属素材を機械加工して前記交差域に連続して供給できるまで細長状にまたは粒状の金属材に形成し、細長状の金属材または粒状の金属材で二つ以上の連続した異種の細長状金属材を形成して別個に前記交差域に供給し、または二つ以上の異種の粒状の金属材と混合して射出成形によって1つの連続した射出成形細長状金属材に形成して前記交差域に供給し、そしてこの供給の時に、供給される二つ以上の異種の金属材の質量化制御を、供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比制御、または前記射出成形する時の混合比を制御することによって行うようにしたこと
を特徴とする異種金属から形成する金属粒子の製造方法、製造装置が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例の構成の概略を示す一部断面を含む図。
【図2】本発明の実施例を説明するためのフローチャート図。
【図3】Ti−6Al−4V、NiAl、Be12Ti及びBe12Vの球状粒子製造に係わる金属元素の物性と必要最低限度の熱量を示す図。
【図4】他の実施例の構成の概略を示す一部断面を含む図。
【図5】他の実施例を説明するためのフローチャート図。
【符号の説明】
【0062】
1…容器、2…3組の非移行型プラズマトーチ、3…陽極、4…陰極、5…アルゴンガスの入口部、6…アルゴンガス投入部、7…挿入部、8…細長状の金属材、8A,8B…ワイヤ、9…金属材供給装置、9A,9B…ワイヤ供給装置、10…制御装置、14,14A,14B…挿入口部、100…金属粒子の製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の中心軸の周囲に対称的に複数のプラズマトーチが配置されて、複数のプラズマトーチからそれぞれ噴射されるプラズマジェットが1つの交差域を形成し、容器の外部から容器の内部に供給される金属素材を前記交差域に連続して供給して、供給された金属素材から溶融液滴を形成し、引き続いて該溶融液滴を実質的に球形である球状微粒子を形成する金属粒子の製造方法において、
各々の金属素材を機械加工して前記交差域に連続して供給できるまで細長状にまたは粒状の金属材に形成し、
細長状の金属材で二つ以上の連続した異種の細長状金属材を形成して別個に前記交差域に供給し、
この供給の時に、供給される二つ以上の異種の金属材の質量化制御を、供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比制御、または前記射出成形する時の混合比を制御することによって行うようにしたこと、
または二つ以上の異種の粒状の金属材を混合して射出成形によって1つの連続した射出成形細長状金属材に形成して前記交差域に供給すること、
を特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比制御が、二つ以上の異種の細長状金属材の単位長さ当たりの質量制御によって行うことを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、前記供給される二つ以上の異種の細長状の金属材の供給比制御が、二つ以上の異種の細長状金属材の前記容器への挿入速度制御によって行うことを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、二つ以上の異種の細長状の金属材は互いに寄り添った形で、または一方の金属材を他方の金属材が包むようにした包み込み形で形成され、前記容器に一体として供給されることを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、二つ以上の異種の細長状の金属材は、それぞれワイヤ形状に形成され、前記容器に供給されることを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造方法。
【請求項6】
容器の中心軸の周囲に対称的に複数のプラズマトーチが配置されて、複数のプラズマトーチからそれぞれ噴射されるプラズマジェットが1つの交差域を形成し、容器の外部から容器の内部に供給される金属素材を前記交差域に連続して供給して、供給された金属素材から溶融液滴を形成し、引き続いて該溶融液滴を実質的に球形である球形粒子を形成する金属粒子の製造装置において、
一種の金属素材を構成加工して前記交差域に連続して供給できるように細長状にまたは粒状の金属材に形成する原金属材形成手段と、
該金属材形成手段で形成した細長状の金属材で二つ以上の連続した異種の細長状金属材を前記容器に供給する金属供給手段、あるいは
供給される二つ以上の異種の細長状金属材の供給比供給、または前記射出成形する時の混合比の制御によって、前記容器への供給の際における二つ以上の異種の金属材の質量比制御を行う質量比制御手段と、
または二つ以上の異種の粒状の金属材を混合して射出成形によって1つの連続した射出成形細長状金属材を形成する供給金属材形成手段と、
を備えたことを特徴とする異種金属からなる金属粒子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−18825(P2010−18825A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178352(P2008−178352)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000140627)株式会社化研 (27)
【Fターム(参考)】