説明

金属粒子を含む少なくとも一つの防食性液体コーティング剤を加工品に塗布するための方法及び装置。

本発明は、少なくとも一つの防食性、液体、金属粒子含有コーティング剤を加工品(2)に塗布するための方法に関し、次の工程、コーティング剤の第1層を加工品(2)に塗布すること、第1層にコーティング剤の第2層を塗布すること、を有する。防食性、液体、金属粒子含有コーティング剤から構成される二つの層のコーティングの時間効率的塗布を可能とする方策を示唆するために、第2層は、第1層がまだ乾燥を必要としている間に塗布されることが提示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子を含む少なくとも一つの防食性液体コーティング剤を加工品に塗布するための方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工品の金属表面に対する効果的防食性保護は、同加工品の長期使用にとってもっとも重要な要件の一つを代表するものである。そのような加工品の典型的な例としては、ネジ、ボルト、ナット、ワッシャー、蝶番部分、バネがあるが、それだけではなく、住居建設部品及びスチール梁のような大きな部品もある。この場合、表面が金属又はその合金で製造される場合、該表面は金属性と考えられる。その場合、可能な金属は、特に、鉄、亜鉛、マンガン、銅、クロム、及びチタンであり、これらは、単独で存在することも可能であるし、合金の内部に一緒に存在することも可能である。当業者には知られるように、合金は、半金属、又は、炭素又はシリコンのような非金属を含むことが可能である。
【0003】
このような金属表面に対し腐食保護を実現するための、当該技術分野で周知の一つの選択肢は、その加工品に対し、防食性の金属粒子含有コーティング剤を塗布することである。この場合、金属粒子は、その下に置かれる加工品に対し陽極性及び/又は陰極性腐食保護を提供する。
【0004】
含有される金属粒子は、様々な種類のものであることが可能である。これらは特に、亜鉛、アルミニウム、錫、マグネシウム、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、又はそれらの合金から構成することが可能である。さらに、異なる金属又は合金の粒子を混ぜ合わせることも可能と考えられる。粒子は、フレーク、顆粒、粉末、又はそれらの組み合わせの形状で存在することが可能である。従来から、亜鉛プレート又は亜鉛合金プレートは特に有利であることが証明されている。
【0005】
指定の種類のコーティング剤は、金属粒子の外に、典型的には、少なくとも一つの結合剤、並びに、水及び/又は有機溶媒を含む。結合剤は、アニーリングプロセス後、金属粒子がその中に取り込まれる、恒久的耐性コーティングフィルムを形成するのに役立つ。最初、結合剤は、液体又は固体であってもよい。水、並びに有機溶媒(例えば、試験ガソリン、低分子アルコール、ケトン、アセトン、アセテート、グリコール、及びグリコールエーテルを含む)は、主に、コーティング剤を簡単に加工可能とするので、該コーティング剤の適用は、塗布、吹き付けなどによって可能となる。これはさらに、アニーリングプロセスにとって決定的に重要な、結合剤と水の間の反応を引き起こす。
【0006】
典型的な結合剤としては、シラン、特に、有機官能性シラン、例えば、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。シランと並んで、シロキサン、例えば、メチルオキシポリシロキサン、又は、シリケート、例えば、アルカリシリケート又はアルキルシリケートも好適である。さらに、チタン酸塩又はジルコン酸塩、並びに、例えばクロム酸アンモニウム又はアルカリクロム酸塩などの塩の形で添加することが可能であるクロムVI化合物に基づく結合剤も考慮の対象とされる。指定の結合剤、例えば、シラン及びチタン酸塩の混合物、これらはアニーリング時に共通ポリマーを形成することが可能である、もまた好適である。さらに、有機結合剤、例えば、エポキシド、ウレタン、アクリレート(例えば、メタクリル酸メチル)、及び/又はポリエステルなどの結合剤は、上述の無機結合剤と組み合わせて有機コポリマーとして使用することが可能である。
【0007】
さらに、当該技術分野では、液体コーティング剤又はアニール済みコーティングフィルムの特性が設定される複数の添加剤が知られている。そのようなものとして、防食性添加剤(例えば、アルカリ、アルカリ土類、希土類塩、並びにリン酸塩)、増粘剤(例えば、メチルセルロース、ケイ酸マグネシウム、又はキサンタンガム)、潤滑剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイト、又はカルナウバワックス)、界面活性剤、消泡剤、又は殺生物剤が挙げられる。
【0008】
このようなコーティング剤は、典型的には、液体形状において加工品に塗布され、乾燥プロセスの後、その後の加工工程においてアニールされる。しかしながら、単一層コーティングは多くの用途において不十分である。
【0009】
いくつかの小型加工品(大半の小型部品)の同時コーティングは、一般に、バスケットを用い、これを、液体コーティング剤を含む浴槽の中に漬けることによって行われる。従って、加工品同士の接触点が、完全なコーティングを妨げる可能性がある。同様に、枠に納めてコーティング浴に挿入される加工品(枠製品)は、その枠と接触点を持つ可能性がある。これらのコートされない接触点はさらに、第2層のコーティング剤を必要とする場合がある。
【0010】
このような場合、二つの層が前後して塗布される。DE10 2006 012 103、DE10 2004 034 645、又はWO2005/090502では、第2層の塗布前に、第1層は乾燥される。この乾燥プロセスの際に、コーティング剤の液体成分、例えば、水又は有機溶媒は、少なくとも部分的に、多くの場合ほとんど又は完全に蒸発する。さらに、液体コーティング剤の第2層が−これも次いで乾燥される−この少なくとも大部分が固体状の層に塗布される。
【0011】
その後のアニーリングにおいて、コーティング剤に含まれる結合剤は、多くの場合架橋結合を通じて、又はそれぞれの重合化を通じて反応し、堅固な、耐性のあるコーティングフィルムとなる。さらに、ある種のコーティング剤は通常の条件下でも簡単に硬化する。一方、アニーリングは、120℃から350℃の高温によって相当程度加速することが可能であり、若しくは、場合によっては、そうすることによって初めて硬化させることが可能である。放射線、特に、赤外及び/又はUV放射線もまた、アニーリングの加速を促すことが可能である。熱アニーリングは、電気的に、又は燃焼によって加熱されるオーブン中で実行することが可能である。対流式オーブンは特に好適である。
【0012】
公知の方法に対するもう一つの変法では、第1層は、第2層を塗布する前に乾燥される。既に示したように、コーティング剤の揮発性成分はこれによって蒸発する。しかしながら、例えば、重合化によるアニーリングは起こらない。従って、その後のアニーリングは、二つの層において同時に起こることが可能である。
【0013】
従って、第1層のための乾燥プロセスは、持続時間、及び、使用される温度の両方に関して絶対最小値に限定されることが好ましい。当業者には公知のように、乾燥は、気流(例えば、対流式オーブンにおいて)によって強制することが可能である。これは室温では実行されない。
【0014】
従来技術による方法の場合、第1層は、第2層が塗布、乾燥、アニールされる前に、乾燥、アニールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】DE10 2006 012 103
【特許文献2】DE10 2004 034 645
【特許文献3】WO2005/090502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このプロセスフローにおいて、乾燥又はそれぞれのアニーリングプロセスは、容量隘路(キャパシティボトルネック)を招く。本発明の目的はこの隘路(ボトルネック)を取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1による方法、並びに、請求項7による装置によって解決される。
【0018】
金属粒子を含む少なくとも一つの防食性液体コーティング剤を、加工品に塗布するための本発明の方法の場合、先ず、コーティング剤の第1層が該加工品に塗布される。ここで且つ下記においても、コーティング剤という用語は、はっきりと明記されない限り、液体状態において塗布される、金属粒子を含む防食性コーティング剤を常に指す。さらに、このコーティング剤のためにベースコート(下塗り)という用語も使用される。従って、本コーティング剤は、当該技術分野で公知の全ての成分を含むことが可能である。この点で、可能な成分に関する上記リストを決定的又は限定的と見なしてはならない。
【0019】
本発明の方法によって塗布することが可能な加工品は、一般に、金属表面を有する。なぜなら、上述のコーティング剤は、そのために設計されるからである。従って、加工品は、金属表面のみを有すること、又は、完全に金属製であることが可能である。しかしながら、非金属表面に対する本発明の方法による塗布も一般に可能である。ネジ、ボルト、ナットなどの大半の小型部品は、本発明の方法によってコートすることが好ましい。一方、本発明は、フレーム製品のような比較的大型の加工品にも好適である。
【0020】
第1層を塗布した後、コーティング剤の第2層が第1層に塗布される。しかしながら、従来技術とは対照的に、第1層は、第2層の塗布前に、アニールされることはない。そうではなく、第2層は、第1層が未だアニール中に塗布される、すなわち、第2層は、未だアニールされていない第1層に塗布される。
【0021】
本発明は、第1層は、予めアニーリングを完了していなくとも、十分に良好な結合性を呈し、且つ、加工品に対しても十分な接着性を示すという知見に基づく。さらに、この非アニールコーティングフィルムは、さらに別の層の塗布のための下地としても使用することが可能である。
【0022】
既述したように、特に大半の小型部品の場合、加工品同士が互いにもたれ合うことによって、加工品の表面の部分領域が、第1層の塗布時に塗布されないということが起こり得る。これらの部位では、塗布可能となった場合、第2層は、第1層にではなく、該加工品に直接塗布される。「第1層に」という定義は、明らかに、本発明に関してこれらの場合を含む。さらに、やり方次第では、第1層は、加工品に対し単にセクション的に塗布されることも可能であるし、若しくは、やり方次第では、第2層は、第1層に対し単にセクション的に塗布されることも可能である。
【0023】
本発明による方法によって決定的な利点が得られる。すなわち、本方法によって相当のエネルギー節約がもたらされる。詳細に既述したように、アニーリングは、典型的には、塗布されたコーティング剤の加熱中に実行される。コーティング剤は加工品と熱的に接触するので、加工品の少なくとも部分的加熱は不可避である。第1層及び第2層の熱的に助長されるアニーリングが別々に起こる場合、加工品加熱のためのエネルギーは二度使用される。なぜなら、加工品は、第2コーティング工程を可能とするために、その中間期に、必然的に冷却するか、又は冷却されなければならないからである。加工品が、高い熱伝導度を有する金属から製造されており、且つ、その熱容量が、コーティング(僅かにミリメートルの数分の1の厚さ)のそれを相当に上回るものであることを考慮するならば、二つのアニーリングプロセスが一つで置き換えられた場合に得られるエネルギー節約は明白である。エネルギーコストの増大を考えると、これは、環境に優しいだけでなく、相当の経済的利点である。
【0024】
さらに、時間的節約もある。第1層だけの別個のアニーリングが省略されるので、コーティングプロセスにおいて数分の時間が節約される。アニーリングが、コーティングプロセス全体の相当部分を占めることを考慮するならば、全体プロセス時間の4分の1以上が節約されると考えられる。
【0025】
従って、本発明による方法は、時間、エネルギー、及びコストを節約することが明らかである。
【0026】
しかしながら、本発明よれば、第1層は、第2層の塗布前に乾燥されない。むしろ、第1層及び第2層は、第2層の塗布後に乾燥される、すなわち、第2層は、まだ乾いていない第1層に塗布される。その際、多くの場合、第1層は、液状フィルムとして加工品に対し優れた接着性を示すので、第2層の塗布前の乾燥は必要とされないことが示されている。
【0027】
さらに、多くのコーティング剤、特に溶媒含有コーティング剤の場合、コーティング剤フィルムの固体含量は、液体成分のほぼ自然的な蒸発、すなわち、積極的乾燥によって引き起こされたものではない蒸発によって上昇する。従って、さらに、この非乾燥フィルムは、新たに付加される層の塗布の下地としても使用することが可能である。
【0028】
本発明による上述の変法はさらに、二つの層が、別々に予め実行される乾燥工程を要することなく、直接熱的にアニールされる手順の方法を含む。このタイプのアニーリングはさらに、使用温度によって、コーティング剤の揮発性液体成分の蒸発を、すなわち、乾燥を必然的に誘発する。従って、この点で、この方法はまた、乾燥とアニーリングの間に技術的に違いはないものの、二層の乾燥とも呼ばれる。
【0029】
指定の変法はさらに他の利点を有する。エネルギー消費をさらに減らすことが可能である。下記にさらに詳述するように、乾燥は、典型的には、塗布されたコーティング剤の加熱の際に実行される。この場合も、アニーリングの場合と同様、加工品の加熱は不可避である。従って、加工品を加熱するためのエネルギーは、この場合、二つの層が別々に乾燥される場合の2倍使用される。後者と比べ、二つの乾燥プロセスが一つによって置き換えられると相当のエネルギー節約が得られる。次に、従来技術と比べた場合の時間消費は、第1層の乾燥が省略されるので、減少する。乾燥及びアニーリングの持続時間が同じ桁(オーダ)の大きさに納まることを考えれば、得られる時間利点は明白となる。
【0030】
塗布されるコーティング剤に関して言えば、二つの変法が考えられる。第1変法では、第1及び第2塗布時に同じコーティング剤が塗布される。この場合、単一層コーティングとは主に厚みで異なるが、組成では均等な、従来通りの二層コーティングが得られる。
【0031】
一方、第2変法では、第1及び第2塗布時に異なるコーティング剤を塗布することが可能である。この違いは、例えば、第1層が、第2層よりも多くの金属粒子を含むとか、又は、第2層は、第1層よりも高い潤滑剤含量を有するという事実に関するものであってもよい。この第2変法では、異なる特性を持つ複数のコーティング剤同士の組み合わせに関する興味ある選択肢を展開する。
【0032】
コーティング剤の塗布は、従来技術に従って様々なやり方で実行することが可能である。浸漬、流し(注出)、噴霧、及び/又はスパッタリングによる塗布が好ましい。例えば、噴霧による塗布は、可能な場合、コーティング剤塗布量の定量が実現可能であるという利点があり、一方、浸漬による塗布は、凹み及び中空域を含む加工品の全ての区域に行き届かせるのに特に好適である。二つの層は、同じ方法で塗布することも、異なる方法で塗布することも可能である。一つの層の塗布のために異なる方法を使用することも考慮することが可能である。
【0033】
コーティング剤の第2層が浸漬によって塗布される場合、コーティング剤によっては、これは、第1層の成分を再度溶解させる危険を伴う場合がある。従って、第2層は、流し(注出)、噴霧、及び/又はスパッタリングによって塗布することが好ましい。これらの方法は、第1層を攪乱することがない点で特に好適である。
【0034】
多くのコーティング剤は、特別の措置を要することなく時間と共に乾燥する。しかしながら、この乾燥プロセスを加速することは有利である。したがって、二つの層の共同乾燥の場合でも、好ましくは温度作用及び/又は熱風又は冷風によって乾燥が実行される。その場合、温度作用は、例えば、赤外線放射によって、又は、電気的に又は燃焼により加熱されるオーブンへの挿入によって、実行することが可能である。その際、持続時間はせいぜい5分、好ましくはせいぜい1分、もっとも好ましくはせいぜい30秒であると有利である。通例として、最短乾燥時間は3秒である。温度は、精々100℃、好ましくはせいぜい80℃、もっとも好ましくはせいぜい50℃であると有利である。
【0035】
当業者には公知のように、乾燥プロセスはさらに気流によって加速することが可能である。すなわち、気流は、コーティング剤の蒸発成分を加工品の表面から運び去るからである。これに関連して、気流という用語はさらに、通常の空気が大抵の用途においてもっとも親しい選択を表すが、各種の一気体流又は混合気体流を含む。例えば、対流式オーブンに見られるような温度と気流の組み合わせは特に効果的である。乾燥は、不連続的に、又は、連続的に、例えば、連続補給方式で実行することも可能である。前者の場合、少なくとも一つの加工品が乾燥区域に挿入され、乾燥のためにある一定期間そこに留まり、次に、該乾燥区域から再び取り出される。後者の場合、各加工品は、例えば、コンベアベルトに載せられて乾燥区域中を移動し、その中を通過する間に乾燥される。
【0036】
当業者に公知のように、噴霧、浸漬などの塗布法の際に、ほとんど常に、閉じられたコーティングフィルムの形成に必要なものよりも多量のコーティング剤が適用される。過剰なコーティング剤は、不均一なコーティングフィルムをもたらし、乾燥プロセスを難しくし、仕上げコーティングの特性に大きく影響を及ぼす可能性がある。従って、本発明による方法の好ましい実施態様では、過剰なコーティング剤は、第2回目のコーティング剤塗布の前に取り除かれる。これは、当該技術分野で公知の様々な方法によって実行することが可能である。
【0037】
その場合、滴下、遠心分離、及び/又は吹き飛ばしが好ましい。その際、滴下は、重力による過剰液体の除去であり、一方、遠心分離時には、遠心力が働く。滴下、遠心分離のいずれの場合も、加工品は、浸透可能な壁を有する容器、例えば、バスケットの中に個別にぶら下げるか、配置することが可能である。大半の小型部品の場合、後者が特に好ましい。滴下は、コーティング液の排出を可能とする篩いとして設計されるコンベアベルトにおいて実行することが可能である。吹き飛ばしは、加工品の表面に向けられた(通常、冷)気流によって実行される。これは連続方式で実行することが可能である。このような気流は、コーティング剤の乾燥のために比較的長い作用を要する場合に好適であると理解される。しかしながら、この作用は吹き飛ばしでは低い。気流は、過剰なコーティング液が除去されるまで作用するにすぎない。このため、加工品の上に残留するコーティング液の液体成分量の変化はせいぜいごく僅かである。従って、第2層の塗布後には乾燥は実行されない。提示の方法はさらに、中間休止を含む遠心分離と組み合わせると好都合である。すなわち、その中間休止の際に滴下を実行することが可能となる。
【0038】
大半の小型部品のコーティングの際は、加工品は、典型的には、互いに隣接して配置され互いに部分的に覆い合うので、必然的に少なくとも点として互いに接触する。これらは、第2層の包括的な塗布を、不可能と言わないまでも困難とする要因である。したがって、第1層の塗布がいくつかの加工品において実行される、本方法のさらなる進化形態では、加工品は、コーティング剤の第2塗布の前に分離される。分離は、隣接した加工品相互の離隔をもたらし、すなわち、それによって二つの加工品の間に隙間が形成されるものである限り、その全ての措置(方法)を含む。隙間は、好ましくは、加工品の最大直線幅の少なくとも半分である。この分離によって、トラブルの無い第2層の塗布が可能となる。
【0039】
分離のためには、例えば、遅いものから速いコンベアベルトへの移送、若しくは、回転テーブルにおける遠心分離などの機械的加速が特にしばしば用いられる。それとは別に、振動又は分散装置、若しくは、マグネットによる分離を使用することも可能である。後者の場合、例えば、電磁石又は永久磁石は、大量の中から加工品を個別につまみ上げるように構成される。
【0040】
当該技術分野において公知のように、本発明による方法においては、塗布される結合剤層はさらに、一般にアニールされる。ただし、第1層及び第2層は同時に共同的にアニールされるという条件付きである。さらに、本発明による方法の場合、コーティングの実行の前に、加工品に前処理を行うことが好ましい。この場合、可能な処理法は、特に、洗浄、脱脂、エッチング、サンドブラスト、サンドブラスト、圧縮空気ブラスト、及び/又はリン酸処理である。
【0041】
本発明のさらなる進化形態では、第1層及び第2層の先行乾燥後又はアニーリング後、単一又は複数層トップコートが、この二層コーティングの上に塗布される。この状況下で、結合剤を含むが防食用金属粒子を全く含まない各コーティングはトップコートと表示される、すなわち、「トップコート」と「目塗り(シーリング)」の間に差別は無い。トップコートは、色素、及び当業者には公知の他の成分と共に、「金属性外観」を生じるよう若干量の金属粒子を含む可能性が存在する。
【0042】
本発明による方法は、そのために特別に設計された装置によって実行することが可能である。これは、少なくとも一つの防食剤、液体、金属粒子含有コーティング剤によって加工品をコートするための装置を含む。
【0043】
第1変形態様では、この装置が、コーティング剤を塗布するための第1手段、コーティング剤を塗布するための第2手段、並びに塗布されたコーティング剤をアニールするための手段を含む。塗布手段は、様々に設計することが可能であり、例えば、浸漬、流し(注出)、又は噴霧デバイスとして設計することが可能である。アニーリング手段は、例えば、オーブン、赤外線又はUVランプである。
【0044】
最後に、デバイスは、加工品の運搬手段であって、運搬経路を画定し、第1塗布手段を第2塗布手段に、第2塗布手段をアニーリング手段に接続する運搬手段を含む。運搬手段は、様々に設計することが可能であり、例えば、爪又はマグネット付きのロボットアームとして、連続する機械的なコンベアとして(例えば、コンベアベルト、ローラーコンベア、又はチェインコンベアとして)、重力コンベア(例えば、シュート、又はローラートラックとして)、又は空気圧コンベアとして設計することが可能である。特に、指定の手段の組み合わせも考慮の対象とすることが可能である。
【0045】
運搬経路は、作業モードの加工品が、運搬手段によって移送される経路である。その際、第1塗布手段は、運搬経路において第2塗布手段の前に配置される、すなわち、作業モードでは、加工品は、第1塗布手段から第2塗布手段へ運搬される。
【0046】
装置のこの変形の場合、アニーリングのための手段は全て、運搬経路において第2塗布手段の後に配置される。これは、この装置を、既知の装置、すなわち、アニーリング手段が第1及び第2塗布手段の間に配置され、作業モードの加工品が第1塗布手段からアニーリング手段へ、次いで第2手段へ運ばれる、既知の装置から区別する。この装置のこの第1変形は、二つの層のコーティング剤の共同アニーリングのために設計される。
【0047】
第2変形では、この装置が、コーティング剤を塗布するための第1手段、コーティング剤を塗布するための第2手段、並びに、塗布されたコーティング剤を乾燥するための手段を含む。当業者には、様々な乾燥手段が知られており、それらの作業モードは既に上に説明した。
【0048】
この第2変形では、装置はさらに、加工品を運搬するための手段を含む。これらは、本装置において、第1塗布手段を第2塗布手段と接続し、第2塗布手段を乾燥手段と接続する運搬経路を画定する。次に、第1塗布手段は、運搬経路において第2塗布手段の前に配置される、すなわち、作業モードにおいて、加工品は、第1塗布手段から第2塗布手段へ運搬される。
【0049】
この装置のこの変形では、乾燥のための全ての手段は、運搬経路において第2塗布手段の後に配置される。これは、本装置を、既知の装置、すなわち、乾燥手段が第1及び第2塗布手段の間に配置され、作業モードの加工品が第1塗布手段から乾燥手段へ、次いで第2手段へ運ばれる、既知の装置から区別する。この装置のこの第2変形は、二つの層のコーティング剤の共同乾燥のために設計される。
【0050】
しかしながら、この二つの変形はそれぞれを排除するものではない。この装置は、二つの乾燥手段の外、アニーリング手段を含むことが好ましい。その際、アニーリング手段は、一般に、乾燥手段の下に配置される。既述したように、アニーリング手段は、乾燥手段と同じとなることも可能である。
【0051】
この装置がさらに、第1態様によるアニーリング手段の外に乾燥手段を含む場合、乾燥のための全ての手段は、第2塗布手段の後に配置される(これは、第1及び第2変形の組み合わせを意味する)。
【0052】
指定の部品の外に、この装置は、過剰なコーティング剤を除去するための手段、加工品同士を分離するための手段、及びコーティング剤をアニールするための手段を含むことが可能である。その際、この除去手段及び分離手段は、典型的には、運搬経路において第1塗布手段及び第2塗布手段の間に配置される。これらの手段の作業モードは、既に上に説明しており、当業者には馴染みである。
【0053】
本発明の詳細を、図面を参照しながら例示実施態様を用いて下記に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による方法の例示実施態様を実行するための第1コーティングユニットであって、二つのコーティング剤層の分離乾燥と共同アニーリングを実行するユニットの模式図である。
【図2】本発明による方法の例示実施態様を実行するための第2コーティングユニットであって、二つのコーティング剤層の共同乾燥及び共同アニーリングを実行するユニットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1に示す、従来技術による方法を実行するためのコーティングユニット1は、主要要素として、第1層コーティング剤塗布のための第1コーティングステーション10、第1層乾燥のための第1乾燥ステーション23、第2層コーティング剤塗布のための第2コーティングステーション20、第2層乾燥のための第2乾燥ステーション24、並びに、コーティング剤アニーリングのための対流型オーブン50を含む。第1コーティングステーション10は、ベースコート、すなわち、防食性、液状、金属粒子含有コーティング手段から成るコートのコーティング浴12が納められる浸漬タンク11タンクを含む。
【0056】
浸漬タンク11に導く第1コンベアベルト30は、加工品2の搬送に従事する。第2コンベアベルト31は、浸漬タンク11から外部へ導く。このため、第2コンベアベルト31の運搬方向は、水平には走らず、むしろ対角線状に上方に向かう。加工品2の転落又は滑落を阻止するため、第2コンベアベルト31は、運搬方向に対して対角線状に配置される、一連の網(図示せず)を備えた表面構造を有する。第2コンベアベルト31は、ユニット1の図示の作業状態では、下方領域34においてコーティング浴12の中を走行する。第2コンベアベルトは、吹き付けステーション13の下部において上方領域35を走行し、第3コンベアベルト32の上で終わり、次に、第3コンベアベルトは水平に揃えられる。
【0057】
第3コンベアベルト32は、第1乾燥ステーション23、第2コンベアベルト32の内部に配置される注出装置21を含む第2コーティングステーション20、及び第2乾燥ステーション24を順次通過する。乾燥ステーション23、24は、それぞれ、第3コンベアベルト32の方に向けられた、一連の熱風ブローワー25によって形成される。
【0058】
第4コンベアベルト33は、第3コンベアベルト32に接続され、対流型オーブン50の中を走行する。
【0059】
第2及び第3コンベアベルト32は篩いとして設計され、そのため、液状コーティング剤の流下(流れ落ち)が可能とされる。
【0060】
図示のユニット1には、スチールネジ2がコーティングのために供給される。このために、これらのネジは、予め、1リットルの水、9gのリン酸カリウム、及び27gの水酸化カリウムを溶解させた水から成る洗浄液おいて75℃で脱脂され、次いで、水道水によって洗浄される。この脱脂及び洗浄手順は再び繰り返され、次いで、ネジは乾燥される。
【0061】
ネジ2は、10cm/sの速度で走行する、第2コンベアベルト30に渡される。第1コンベアベルト30の末端において、ネジ2はコーティング浴12に落下する。この浴は、本事例の場合、下記の組成を有する:

9.0重量%のγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
0.7重量%のホウ酸
4.7重量%のアセトン
0.8重量%の1−ニトロプロパン
25.9重量%の金属粒子
3.4重量%の非イオン性、エトキシル化ノニルフェノール湿潤剤
0.4重量%のスルホサクシネートビストリデシルナトリウム陰イオン性湿潤剤
55.0重量%の水

【0062】
フレーク状金属粒子は、約0.1から0.5μmの厚み、及び、約80μmの個別粒子最大長を有する。それらは、95%亜鉛と5%アルミニウムから成る合金によって構成される。
【0063】
ここで、第1コンベアベルト30及び第2コンベアベルト31の配置は、ネジ2が第2コンベアベルト31の上に着地するように行われる。これによって、落下及び第2コンベアベルト31への着地の際に、ネジ2のある程度の離隔が既に起こる。ネジ2は、これもまた10cm/sで作動する第2コンベアベルト31によって対角線状に上方に運ばれ、浸漬タンク11から排出される。このため、過剰なコーティング剤は、コンベアベルト31の開放構造によってネジ2から流れ落ちることが可能である。
【0064】
ここで、ネジ2はコーティング剤の第1層を有する。ネジ2からの過剰コーティング剤の流下を助長するために、約20m/sの冷気流を発生する吹き付けステーション13によってネジ2から液体が吹き飛ばされる。
【0065】
第2コンベアベルト31の末端において、ネジ2は落下して、30m/sの速度で作動する第3コンベアベルト32の上に落ちる。ネジ2の相関する加速によって、さらなる離隔が起こる。ここで、ネジ2は第1乾燥ステーション23の中を通過する。このステーションは、約5m/s、70℃の気流を発生する一連の熱風ブローワー25を含む。乾燥には4−5秒かかる。この乾燥の効果によって、コーティング手段の液状成分は大部分蒸発し、それによって、第1層は、強力な機械的作用無しでは、最早剥がれなくなるか、又は損傷されなくなるまで乾燥される。
【0066】
さらに進行し、ネジ2は、第2コーティングステーション20の注出装置21の下を通して運ばれる。注出装置21は、この場合は浸漬タンク11のものと同じコーティング剤のための、一連の出力開口(図示せず)を有する。この注出装置21は、きわめて密な注出カーテン22を生成し、そのため、コーティング剤の第1層に対する、第2コーティング剤の、正常では隙間の無い塗布が実行される。
【0067】
ネジ2が運ばれ続ける間、過剰なコーティング手段は、第3コンベアベルト32の篩い構造を通じて流下する。流下するコーティング剤は、貯留槽26の中に捕捉され、再使用することが可能である。その後、ネジ2は、第2乾燥ステーション24の中を走行する。これもまた、その構造及び動作パラメータが第1乾燥ステーション23のものと一致する、熱風ブローワー25を含む。第2乾燥ステーション24の通過後、第2層もまた乾燥する。
【0068】
第3コンベアベルト32の末端において、ネジ2は、2cm/sの速度で作動する第4コンベアベルト33の上に落ちる。このため、ネジ2の離隔は逆転されるが、これは問題とはならない。なぜなら、コーティング剤は乾いており、且つ、これ以上のコーティングは実行されないからである。ここで、ネジ2は、対流型オーブン50の中を通過する。ここで、コーティング剤の二つの層は320℃でアニールされる。第3コンベアベルト33の末端において、ネジ2は容器40の中に落ち、該容器によってそれらのネジは運び去ることが可能とされる。
【0069】
図2は、本発明による方法を実行するための第2コーティングユニット1´を示す。これもまた、コーティング剤の第1層塗布のための第1コーティングステーション10、及び、コーティング剤の第2層塗布のための第2コーティングステーション20を含む。しかしながら、この例では、単独の乾燥ステーション27、すなわち、コーティング剤アニーリング用の対流型オーブン50の上流に配される乾燥ステーションが設けられる。
【0070】
コーティング装置1´の構造は、図1に示す装置1のものとほとんど同じである。したがって、個別要素及び動作モードの詳細な説明は、両者が一致する限り、省略する。
【0071】
最初に説明した装置1と違って、第3コンベアベルト32は、第2コーティングステーション20及び乾燥ステーション27の中を走行し、従って、乾燥装置は、第2コーティングステーション20の上流には配されない。次に、乾燥ステーション27は、第3コンベアベルト32の方向に向けられた、一連の熱風ブローワー25によって形成される。
【0072】
ネジ2に対し、浸漬タンク11においてコーティング剤の第1層が付与され、過剰なコーティング剤が吹き付けステーション13によって吹き飛ばされた後、ネジ2は第2コンベアベルト31から落下し、第3コンベアベルト32の上に着地する。
【0073】
ここで、ネジ2は、第3コンベアベルト32において、あらかじめ乾燥されること無く、第2コーティングステーション20の注出装置21の下を通して運ばれる。この装置1´では、コーティング剤の二つの層はむしろ一緒に乾燥される。このため、ネジ2は、第2コーティングステーション20の後、乾燥ステーション27の中を走行する。熱風ブローワー25の構造及び動作パラメータは、第1例示実施態様の乾燥ステーション23、24のものと一致する。乾燥ステーション27の通過後、両層は十分に乾燥されるので、それらは、強力な機械的作用無しでは最早剥がされないし、損傷もされない。
【0074】
次に、両層は、対流型オーブン50において一緒にアニールされる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子を含む少なくとも一つの防食性液体コーティング剤を、加工品(2)に塗布するための方法であって、下記の工程:
−コーティング剤の第1層を加工品(2)に塗布すること、
−前記第1層にコーティング剤の第2層を塗布すること
を有し、
前記第1層及び第2層は、前記第2層の塗布後に乾燥される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1及び第2層の塗布の際に、同じコーティング剤が塗布されるか、又は、異なるコーティング剤が塗布される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
過剰なコーティング剤は、コーティング剤の前記第2層の塗布前に除去される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
いくつかの加工品(2)に対し前記第1層の塗布が実行され、これらの加工品(2)が、コーティング剤の前記第2層の塗布の前に互いに離隔される、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記第1層及び第2層は、好ましくは、温度及び/又は放射線、特に赤外線及び/又はUV放射の作用を通して、共同でアニールされる、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記第1層及び第2層の事前乾燥又はアニーリングの後に、単一層又は複数層のトップコートが塗布される、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
金属粒子を含む少なくとも一つの防食性液体コーティング剤によって加工品(2)をコートするための装置(1)であって、
−コーティング剤を塗布するための第1塗布手段(11)、
−コーティング剤を塗布するための第2塗布手段(21)、
−塗布されたコーティング剤をアニールするためのアニーリング手段(50)、及び
−加工品(2)を運搬する運搬経路を画定すると共に、前記第1塗布手段(11)を前記第2塗布手段(21)に、前記第2塗布手段(21)を前記アニーリング手段(50)に接続する運搬手段(30、31、32,33)を含み、
−前記第1塗布手段(11)は、前記運搬経路において、前記第2塗布手段(21)の前に配置され、
前記アニーリング手段(50)の全てが、前記運搬経路において、前記第2塗布手段(21)の後方に配置される、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
防食性、金属粒子含有のコーティング剤によってコートされる加工品において、前記コーティング剤が液状で第1層及び第2層として塗布され、アニーリングが前記第2層の塗布後に行われる、
ことを特徴とする加工品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500154(P2013−500154A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522081(P2012−522081)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059998
【国際公開番号】WO2011/012434
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(501241173)エーヴァルト デルケン アーゲー (7)
【Fターム(参考)】