説明

金属粒子ナノ構造体

【解決手段】基体上に、薄膜が形成され、該薄膜の表面上に、物理気相成長法又は液相成長法によって、平底面を有する略半球状又は略半楕円球状の金属粒子が、上記平底面が上記薄膜の表面と接して形成され、上記薄膜の表面と上記金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満である金属粒子ナノ構造体。
【効果】本発明によれば、表面プラズモンの増強作用の高い金属粒子を、基体上に簡便な方法によって形成することができ、基体上に、このような金属粒子が形成された金属粒子ナノ構造体を提供することができる。本発明の金属粒子ナノ構造体は、表面プラズモンの増強効果が高く、表面増強ラマン分光法による薄膜の分子構造解析、光半導体素子等に好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上に薄膜が形成され、該薄膜の表面上に特定の形状を有する金属粒子が形成された金属粒子ナノ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
表面プラズモンは、金属に励起光が照射されたときに、金属中の自由電子が集団的に振動して、電荷密度波として金属表面を伝搬する現象である。表面プラズモンを設計し応用する科学技術分野はプラズモニクス(plasmonics)とよばれ、近年、この技術の研究は、世界的な拡がりを見せている。
【0003】
プラズモニクスは、フォトニクスの中でも注目を集める分野のひとつであり、表面増強ラマン分光法、発光素子、受光素子、太陽電池等への応用が提案されている。しかし、感度、効率、コスト等の問題があり、更なる技術の発展が望まれている。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、以下のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−025753号公報
【0006】
【非特許文献1】Langmuir、vol.23、p.12042−12047(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、表面プラズモンの増強作用が高い金属粒子が形成された金属粒子ナノ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、基体上に薄膜を形成し、この薄膜の表面上に、物理気相成長法又は液相成長法によって金属粒子を形成すれば、金属粒子を、平底面が薄膜の表面に接した状態の略半球状又は略半楕円球状に形成することができ、これにより、薄膜の表面と金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満であり、平面上に滴下された液滴のような形状の金属粒子を形成することができることを見出した。そして、このような形状の金属粒子が、高い表面プラズモンの増強作用を示すことを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記金属粒子ナノ構造体を提供する。
請求項1:
基体上に、薄膜が形成され、該薄膜の表面上に、物理気相成長法又は液相成長法によって、平底面を有する略半球状又は略半楕円球状の金属粒子が、上記平底面が上記薄膜の表面と接して形成され、上記薄膜の表面と上記金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満であることを特徴とする金属粒子ナノ構造体。
請求項2:
上記金属粒子の粒径Dが5〜100nm、高さHが1〜100nmであり、かつ粒径と高さとの比(H/D)が0.1〜3.0であることを特徴とする請求項1記載の金属粒子ナノ構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面プラズモンの増強作用の高い金属粒子を、基体上に簡便な方法によって形成することができ、基体上に、このような金属粒子が形成された金属粒子ナノ構造体を提供することができる。本発明の金属粒子ナノ構造体は、表面プラズモンの増強効果が高く、表面増強ラマン分光法による薄膜の分子構造解析、光半導体素子等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の金属粒子ナノ構造体の一実施形態を示す側面図である。
【図2】金属粒子の接触角の説明図である。
【図3】実施例1,2及び比較例1のグルタルアルデヒド修飾基板上に蒸着された銀の電子顕微鏡像であり、上段は俯瞰像、下段は斜視像である。
【図4】実施例1,2及び比較例1,2のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
本発明の金属粒子ナノ構造体は、基体上に薄膜が形成され、該薄膜の表面上に、物理気相成長法又は液相成長法によって、特定の形状を有する金属粒子が形成されたものである。
【0013】
本発明において、基体は特に制限されず、用途に応じて、金属、半導体、石英、ガラスなどの誘電体、プラスチック等の、有機材料又は無機材料を使用することができる。
【0014】
上記基体上には、薄膜が形成される。薄膜を形成する理由は、基体の表面エネルギーを変化させるためである。上記薄膜としては、有機単分子膜(自己集積膜)、ラングミュア−ブロジェット(LB)膜、ゾルゲル薄膜等が挙げられる。この薄膜は、基体の表面を処理することにより形成される表面処理層でもよい。薄膜としては、有機薄膜、特に有機単分子膜であることが好ましい。上記薄膜を形成する物質としては、有機単分子膜を形成する物質として、有機シラン化合物、例えば、炭素数3〜5個の、好ましくは直鎖状のアルキレン基の一端側に、炭素数1〜3のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)が1〜3個結合したアルコキシシリル基、他端側に、アミノ基、チオール基等が結合した構造の有機シラン化合物、具体的には、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、有機シラン化合物としては、パーフロロオクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等も好適である。また、表面処理層としては基体の表面側の分子結合の一部が水素、窒素、フッ素、メチル基などの炭化水素基、フロロメチル基などのフッ素化炭化水素基などで置換されたものが挙げられる。
【0015】
また、上記薄膜は、有機薄膜でも無機薄膜でもよいが、その表面と、上記金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満となる程度に、該薄膜の表面エネルギーが低い必要がある。一般に、本発明の金属粒子が形成されるには、その成長過程において、液滴の形状を表すヤングの式が適用できる。ここで、接触角θ、金属粒子の表面エネルギーγL、下地の表面エネルギーγS、金属粒子と基体の界面エネルギーγSLとすると、下記のヤングの式
γLcosθ+γSL=γS
が知られており、この式を満足する薄膜と金属粒子との組み合わせで得られる接触角θが、本発明の接触角の範囲を満足する必要がある。
【0016】
次いで、上記薄膜上に金属粒子が形成される。上記薄膜上に形成される金属は、プラズモン誘起金属とよばれるものであり、入射光の波長において、複素誘電率ε=ε’+iε”が、ε’<0、かつ[ε’の絶対値]>[ε”の絶対値]を満たすものが好適である。具体的には、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム等が挙げられ、いずれの金属も使用できるが、これらの金属のうち、特に、金、銀、銅又はアルミニウムを使用することが好ましい。また、上記金属は、表面プラズモンが得られる合金であってもよい。
【0017】
金属粒子は、物理気相成長法又は液相成長法により薄膜上に形成される。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、クラスターイオンビーム蒸着法等が挙げられる。これらのうち、特に、真空蒸着法が好適である。液相成長法としては、電気めっき法、無電解めっき法等の液相めっき法が挙げられる。上記方法によって、金属粒子が、薄膜の表面上に載った状態となる。この金属粒子は、金属粒子が形成された範囲を増強できることから、金属粒子の大きさ程度の極微小範囲を対象とする場合は、1粒子あれば、表面プラズモンの効果は得られる。例えば、光学デバイス等のサイズを十分小さくした場合、デバイスの単位毎に、1粒子ずつ形成すればよい。この場合、例えば、粒子成長点に走査型プローブ顕微鏡で、先のとがった針で押し込んで傷を作れば、そこが活性点として作用するので、単一粒子を生成、成長させることが可能である。一方、より広範囲を対象とする場合は、複数の金属粒子を点在するように形成することが好ましく、例えば、金属粒子により形成された金属領域を励起光が透過可能に点在させることができる。具体的には、各金属粒子が、薄膜の上で、互いに連結せずに独立して存在する程度に金属を堆積させることが有効である。
【0018】
また、薄膜上に形成された粒子の上に、更に別の粒子が形成されてもよいが、薄膜上に形成された粒子には、更に別の粒子が形成されることなく、金属領域が1粒子分の高さで形成されていることが好ましい。
【0019】
薄膜上に金属粒子が形成された状態の具体的な例を、図1に示す。図1において、基体(基板)1上に単分子膜等の薄膜2が形成され、薄膜2上に、所定の粒子間距離dで、金属粒子3が形成されている。なお、図1中、Dは金属粒子3の粒径、Hは金属粒子3の高さを表わす。
【0020】
金属粒子の形状は、平底面を有する凸形状であることが好ましく、この平底面が薄膜の表面と接して金属粒子が形成されることが好ましい。この平底面を有する凸形状は、例えば、上面が、集光作用を呈する曲面、具体的には、球面、楕円球面等の曲面であることが好ましく、特に、球又は楕円球を平面で2分割したときの1片の形状(例えば、略半球状、略半楕円球状等)などが挙げられる。
【0021】
特に、金属粒子が、略半球状、略半楕円球状等の上面が曲面の形状である場合、薄膜の表面と、金属粒子との間の接触角、即ち、図2に示されるように、薄膜2上に金属粒子3が形成された状態において、金属粒子3の平底面(該平底面と一致する薄膜2の表面)と、該平底面外周(金属粒子3の上面の下端)上に接点を有する金属粒子3上面の接線tとがなす角度である接触角θが90°以上180°未満であることが好ましく、より好ましくは105°以上163°以下である。この接触角θが上記範囲から外れると、表面プラズモンの増強効果が弱くなるおそれがある。
【0022】
金属粒子の粒径(粒子が複数の場合は平均粒径)Dは5〜100nm、特に15〜30nmであることが好ましい。粒径Dが上記範囲を外れると、表面プラズモンの増強効果が弱くなるおそれがある。この粒径は、薄膜の表面に形成された金属粒子を、粒子が形成された面に対して垂直方向から電子顕微鏡によって観察したときの粒子の最大径(粒子が複数の場合はその平均)として表わすことができる。
【0023】
また、金属粒子の高さ(粒子が複数の場合は平均高さ)Hは、1〜100nmであることが好ましく、より好ましくは12〜18nmである。金属粒子の高さHが1nmより低いと、表面プラズモン共鳴を得られる所望の形状の粒子を形成できないことがあり、100nmより高いと、金属が網状又は連続膜状で形成されるおそれがある。この高さも電子顕微鏡によって観察したときの粒子の最大高さ(粒子が複数の場合はその平均)として表わすことができる。
【0024】
更に、金属粒子の粒径Dと高さHとの比(H/D)は0.1〜3.0であることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0、更に好ましくは0.5〜1.0、特に好ましくは0.6〜0.8である。この比(H/D)が上記範囲を外れると、表面プラズモンの増強効果が弱くなるおそれがある。
【0025】
複数の金属粒子を点在するように形成する場合、粒子間距離dは、1〜20nmであることが好ましく、より好ましくは4〜8nmである。粒子間距離dは、隣り合う2つの粒子間に表面プラズモン共鳴による光電場増強が起こる距離であるとき、増強作用が向上し、より強い光電場増強が誘起される。粒子間距離dは短くてもよいが、2つの粒子が近すぎると、分子間力によって粒子同士が結合してしまうので、近接する金属粒子が独立して存在できる距離以上とする必要がある。粒子間距離dが上記範囲を外れると、表面プラズモンの増強効果が弱くなるおそれがある。この粒子間距離dは、薄膜の表面に形成された金属粒子を、粒子が形成された面に対して垂直方向から電子顕微鏡によって観察し、個々の粒子について最も近接する粒子を定め、その近接粒子との距離(粒子が複数の場合はその平均)として表わすことができる。
【0026】
また、複数の金属粒子を点在するように形成する場合、金属粒子全体で、薄膜の表面の一部が被覆されるように形成することが好ましいが、この場合の金属の被覆率(薄膜の面積に対する、薄膜の表面に対して垂直方向から見た金属の占有面積の割合)は5〜70%、特に、20〜55%であることが好ましい。
【0027】
本発明の金属粒子は、基体上に、薄膜を形成し、次いで、金属粒子を物理気相成長法又は液相成長法により、基体上に形成された薄膜の表面に形成する。特に、金属粒子が平底面を有する略半球状又は略半楕円球状である場合、その平底面を基体表面に対向させて、薄膜の表面に形成する。
【0028】
ここで、基体及び薄膜としては、上記したものが挙げられる。基体上に薄膜を形成する方法としては、従来公知の方法でよく、例えば、液相成膜法、気相成膜法、スピンコーティング法等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、物理気相成長法又は液相成長法により、金属粒子を薄膜上で生成、成長させて形成するものであり、金属粒子を形成する際に、金属粒子を予め形成して単分散させる等の前処理をする必要がなく、簡便に金属粒子ナノ構造体を製造することができる。なお、金属粒子としては、上記したものが挙げられる。
【0030】
上記金属粒子の粒径D、高さH、粒子間距離d及び占有率は、物理気相成長法又は液相成長法における粒子形成条件を適宜設定することによって、所望の値とすることができる。真空蒸着法等の物理気相成長法又は液相成長法によっても、金属を膜状とすることなく粒子状に配置することが可能である。例えば、真空蒸着法によって金属粒子を薄膜上に配置する場合には、蒸着速度、到達真空度、蒸着時間等を適宜設定すればよい。具体的には、蒸着速度は0.01〜1nm/sであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1nm/sである。なお、この蒸着速度は、所定の厚さの金属薄膜を成膜するのに要した時間から算出した値に相当する。また、到達真空度は1.0×10-5〜1.0×10-3Paであることが好ましく、より好ましくは3.0×10-4〜5.0×10-4Paである。一方、蒸着時間は1〜1,000秒であることが好ましく、より好ましくは300〜500秒である。
【0031】
本発明の金属粒子ナノ構造体は、表面プラズモンの増強効果が強く、基体上に形成された薄膜の分子構造を表面増強ラマン分光法によって解析するための構造体として好適に使用できる。表面増強ラマン分光法では、金属粒子が形成された薄膜を分析対象として、薄膜及び金属粒子に励起光を照射することにより、金属により増強された、分析対象物の分子構造等の構造に由来するラマン散乱光を分光分析することができる。この場合、本発明では、物理気相成長法又は液相成長法により、金属粒子を分析対象物上で生成、成長させて形成することができる。これは、金属粒子を形成する際に、金属粒子を予め形成して単分散させるものではないので、金属粒子上に修飾分子を付与する等の分散化処理が不要であり、修飾分子による汚染が生じず、シグナルノイズのない分光分析が可能である。
【0032】
また、本発明の金属粒子ナノ構造体は、基体として半導体を使用した場合には、光半導体素子等の半導体素子として好適に使用できる。具体的には、太陽電池、CCD、フォトダイオード等の受光素子、発光ダイオード、有機又は無機の蛍光物質を用いた有機又は無機のEL(エレクトロルミネッセンス)素子等の発光素子として好適に使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[薄膜形成基板の作製]
金属粒子ナノ構造体の一例として、ラマンスペクトル測定に用いることができる、グルタルアルデヒドで修飾された有機単分子膜が形成され基板の作製方法を示す。基板として、シリコン酸化膜が形成されたシリコンウェーハを1cm2に切り出したものを用いた。上記基板をヤマト科学(株)製プラズマリアクターPR301を用いて酸素プラズマ処理し、基板表面洗浄及び親水化処理を施した。処理した基板を、1質量%アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を含むトルエン溶液中に60℃で、7分間浸漬することにより、シリコン酸化膜上にAPTESを導入した。
【0035】
次に、酸化シリコン/シリコン基板に形成したAPTESの有機単分子膜に対して、APTESのアミノ基に、該アミノ基と生体分子とを架橋するための架橋分子として広く用いられるグルタルアルデヒドを反応させた。反応は、2.5質量%のグルタルアルデヒド水溶液に、末端がアミノ基のAPTESの有機単分子膜が形成された酸化シリコン/シリコン基板を、室温で30分間浸漬することにより行った。
【0036】
[実施例1]
上記薄膜を形成した基板に対して、薄膜上(即ち、グルタルアルデヒドで修飾された面上)に、真空蒸着装置((株)アルバック製)を用い、到達真空度3.6×10-4Pa、蒸着速度0.05nm/s、蒸着時間60秒の条件で銀を蒸着し、金属粒子ナノ構造体を作製した。なお、蒸着速度は、所定の厚さの銀薄膜を成膜するのに要した時間から算出した値に相当する。
【0037】
[実施例2]
実施例1において、蒸着時間を100秒にした以外は実施例1と同様に銀を蒸着し、金属粒子ナノ構造体を作製した。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、蒸着時間を200秒にした以外は実施例1と同様に銀を蒸着し、金属粒子ナノ構造体を作製した。
【0039】
[比較例2]
銀を蒸着しないグルタルアルデヒド修飾基板を、そのままラマンスペクトル分析用基板とした。
【0040】
[表面の電子顕微鏡観察]
実施例1,2及び比較例1において作製した金属粒子ナノ構造体に蒸着している銀を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。基板上に蒸着した銀の電子顕微鏡写真を図3に示す。実施例1及び2では、蒸着した銀は、半球状乃至半楕円球状の粒子が球面を上、平面を下に向けて薄膜上に生成した状態であった。また、実施例1は、平均粒径が15nm、平均高さが12nm、平均粒子間距離が5nm、接触角が118〜163°、実施例2は、平均粒径が30nm、平均高さが19nm、平均粒子間距離が5nm、接触角が105〜136°であり、粒子が孤立し、島状に分散して点在することが確認された。一方で、比較例1では、蒸着した銀は、網状に連続した状態で存在することが確認された。
【0041】
[ラマン分光分析]
実施例1,2及び比較例1,2の金属粒子ナノ構造体を形成した基板を用いて、基板上の薄膜をラマン分光法によって解析した。グルタルアルデヒドで修飾された有機単分子膜が形成された基板のラマンスペクトルは、三次元顕微レーザーラマン分光装置((株)東京インスツルメンツ製)を用い、633nmの励起光を照射して取得した。結果を図4に示す。実施例1及び2の銀蒸着基板からは、波長1,000cm-1から2,000cm-1の範囲において、グルタルアルデヒドのアルデヒド基と単分子膜のアミノ基が結合したときに形成されるシッフ塩基(1,600cm-1)のピークをはじめ、有機分子に由来するラマンスペクトルが確認された。特に、実施例2の銀蒸着基板からは、多くのラマンピークが確認された。一方、比較例1の銀蒸着基板からは、有機分子に由来するピークは確認されなかった。また、銀蒸着を行わなかった比較例2の基板からは、有機分子に由来するラマンスペクトルは確認されなかった。なお、520cm-1付近、及び950cm-1から1,000cm-1付近に確認されたラマンピークは、基板として用いたシリコンに由来するものである。
【符号の説明】
【0042】
1 基体(基板)
2 薄膜
3 金属粒子
d 粒子間距離
t 接線
D 粒径
H 粒子の高さ
θ 接触角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、薄膜が形成され、該薄膜の表面上に、物理気相成長法又は液相成長法によって、平底面を有する略半球状又は略半楕円球状の金属粒子が、上記平底面が上記薄膜の表面と接して形成され、上記薄膜の表面と上記金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満であることを特徴とする金属粒子ナノ構造体。
【請求項2】
上記金属粒子の粒径Dが5〜100nm、高さHが1〜100nmであり、かつ粒径と高さとの比(H/D)が0.1〜3.0であることを特徴とする請求項1記載の金属粒子ナノ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−230402(P2011−230402A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103735(P2010−103735)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】