説明

金属蒸気放電ランプおよび金属蒸気放電ランプ点灯装置

【課題】
光束維持率などの寿命特性を犠牲にすることなく、高い発光効率と演色性を両立させることのできる透光性セラミックス放電容器を備えた金属蒸気放電ランプおよびこれを点灯する金属蒸気放電ランプ点灯装置を提供する。
【解決手段】
金属蒸気放電ランプは、内部に最大内径がD(mm)の包囲部および小径筒部を備えて一体的に成形された透光性セラミックス放電容器1、小径筒部に挿通されて先端が包囲部に臨んでいる一対の電極、ならびに35質量%以上の割合でツリウム(Tm)ハロゲン化物を含むハロゲン化金属を少なくとも有していて、透光性セラミックス放電容器1内に封入された放電媒体を備えた発光管1Aと、内部が真空または不活性雰囲気で発光管を収納している外管5とを具備し、ランプ電力をP(W)としたとき、0.04≦D/P≦0.20を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えた金属蒸気放電ランプおよびこれを点灯する金属蒸気放電ランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の透光性セラミックス放電容器を備えた金属蒸気放電ランプにおいては、例えば質量比で69:10:21の沃化ナトリウム、沃化タリウム、沃化ジスプロシウムなどの金属ハロゲン化物が封入されていた(特許文献1参照。)。また、近年の透光性セラミックス放電容器を備えた金属蒸気放電ランプにおいては、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)のヨウ化物に加えて、希土類金属であるジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)およびツリウム(Tm)のヨウ化物を添加したものが多い。
【特許文献1】特開平6−196131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の金属ハロゲン化物の組み合わせでは、発光効率と演色性は相反関係にあり、したがって発光効率を重視すると演色性が低下し、逆に演色性を重視すると発光効率が低下する問題があった。また、効率および演色性を向上させると光束維持率など寿命特性が極端に短縮される問題があった。
【0004】
発明者らは、透光性セラミックス放電容器を備えた金属蒸気放電ランプにおいて、光束維持率などの寿命特性を犠牲にすることなく、高い発光効率と演色性を両立させる方法を詳細に研究した。その結果、本発明をなすに至った。
【0005】
本発明は、光束維持率などの寿命特性を犠牲にすることなく、高い発光効率と演色性とを両立させることのできる透光性セラミックス放電容器を備えた金属蒸気放電ランプおよびこれを点灯する金属蒸気放電ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の金属蒸気放電ランプは、内部に最大内径がD(mm)の放電空間を有する包囲部および包囲部の両端に連通した小径筒部を備えて一体的に成形された透光性セラミックス放電容器、透光性セラミックス放電容器の小径筒部に挿通されているとともに先端が透光性セラミックス放電容器の包囲部に臨んでいる一対の電極、ならびに35質量%以上の割合でツリウム(Tm)ハロゲン化物を含むハロゲン化金属を少なくとも有していて、透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体を備えた発光管と;内部が真空または不活性雰囲気で発光管を収納している外管と;を具備し、ランプ電力をP(W)としたとき、下式を満足することを特徴としている。
【0007】
0.04≦D/P≦0.20
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0008】
<透光性セラミックス放電容器について> 透光性セラミックス放電容器は、単結晶の金属酸化物、例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えた材料からなる放電容器である。なお、透光性とは、放電によって発生した可視光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明であるのが好ましいが、要すれば光拡散性であってもよい。そして、少なくとも包囲部が透光性を備えていればよく、要すれば小径筒部は遮光性であってもよい。
【0009】
また、透光性セラミックス放電容器は、放電空間を包囲する包囲部と包囲部の端部に連通して配設された小径筒部とを備えている。そして、包囲部と小径筒部とは、一体的な成形により一体化するのが好ましいが、材料断面の熱的または光学的な不均質構造を特に問題としないのであれば、焼き嵌め構造であってもよい。包囲部は、その内部に放電を包囲して放電空間を画成するために、包囲部の内面を連続的な曲面に形成することが許容される。さらに、包囲部内部の主要部を俵形、楕円球状や球状の中空にすることができる。なお、包囲部の「主要部」とは、小径筒部と接している側の端部近傍を除いた残余の大部分であって、放電による発光が主として透過する部分をいう。
【0010】
次に、小径筒部は、その内部に後述する電極および電極に接続する導入導体が挿通し、電極の周囲にキャピラリーと称するわずかな隙間を形成して、その内部に最冷部が形成されるとともに、透光性セラミックス放電容器を封止するのに寄与する。なお、小径筒部の断面は、好ましくはほぼ円形である。
【0011】
さらに、透光性セラミックス放電容器の点灯中の外表面における温度が850〜1200℃になるように設計されているのが好ましい。
【0012】
<一対の電極について> 一対の電極は、透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しながら小径筒部内に挿通されているとともに先端が透光性放電容器の包囲部に臨んでいる。また、電極は、タングステン(W)、ドープドタングステン、モリブデン(Mo)、サーメットなどの導電性にして、かつ、耐火性の物質を単体で、または適宜組み合わせて用いて形成することができる。さらに、電極は、好ましくは細長い電極軸部および電極軸部の先端部に配設される電極主部から構成することができる。この場合、電極主部は、電極軸の先端に配設されて主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、電極の先端部を構成する。また、電極主部は、その表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じてタングステンのコイルを巻装することができる。
【0013】
さらに、電極は、上述のように、その先端部が、包囲部内を臨む位置にあるが、包囲部内を臨むとは、包囲部内に位置している態様と、包囲部内に連通している小径筒部内に位置している態様とを含む概念である。また、電極の中間部は、透光性放電容器の小径筒部の内面との間になるべく均一なわずかな隙間すなわちキャピラリーを形成するために、一定の太さであることが望ましい。さらに、電極の中間部に純タングステン、レニウム(Re)、タングステンーレニウム合金またはドープドタングステンのコイルを巻装することが許容される。これにより、電極が小径筒部に対してセンタリングしやすくなる。電極の基端部は、透光性放電容器に対して所要の相対的な位置に固定するとともに、外部から電流を導入するために機能する導入導体の先端に溶接などにより固着されることによって電気的および機械的に支持される。なお、溶接に際して熱的に緩衝するなどの目的のために、モリブデン、サーメットなどの部材を導入導体の先端部に配設して電極の基端との間に当該部材を介在させることができる。
【0014】
さらにまた、導入導体をニオブなどの封着性金属の棒状体、パイプ状体やコイル状体などによって構成することができる。この場合、ニオブなどの封着性金属は酸化性が強いので、高圧放電ランプを大気に通じた状態で点灯する場合には、耐酸化性の導体を導入導体にさらに接続するとともに、導入導体の酸化性の強い封着性金属の部分が大気に接触しないように例えばシールなどによって被覆する必要がある。
【0015】
<放電媒体について> 放電媒体は、35質量%以上の高濃度の割合でツリウム(Tm)ハロゲン化物を含むハロゲン化物を少なくとも有していて、透光性セラミックス放電容器内に封入されている。すなわち、従来技術に比べてツリウムの封入量を明らかに多くしたのが本発明の特徴である。ツリウムを上記範囲の高濃度で封入することにより、発光効率が頗る高くなるとともに、平均演色評価数Raを良好な値にすることができる。なお、従来技術では、ツリウムを封入する場合、せいぜい10質量%前後、高くても20%未満であった。
【0016】
一方、ツリウムの上限は、ツリウムの透光性セラミックス放電容器の材料、特にアルミナ(Al)との反応性が比較的高いために、封入量が多くなると色温度を所望値にすることが困難になるので、80質量%以下とすべきである。なお、ツリウムの好適な封入量範囲は、40〜70質量%である。
【0017】
また、放電媒体は、ハロゲン化金属の残量を所望の発光金属のハロゲン化物とすることができる。好ましくは、発光金属の金属ハロゲン化物として、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)、インジウム(In)および上記以外の希土類金属などを封入することができる。
【0018】
放電媒体中の金属ハロゲン化物を構成するハロゲンとしては、主としてヨウ素を用いるのがよい。所望により、臭素を適量添加することができ、これにより包囲部の黒化が抑制されて、光束維持率が向上する。すなわち、金属ハロゲン化物の総量に対して3〜35質量%、好適には5〜15質量%の割合で金属臭化物を添加することにより、光束維持率がさらに向上する。
【0019】
さらに、放電媒体は、ハロゲン化金属に加えて希ガスおよび主としてランプ電圧形成金属または金属ハロゲン化物を封入することができる。希ガスは、好適にはアルゴン(Ar)を用いることができる。また、その封入圧は、一般的には60〜500Torr、好適には75〜300Torr、最適には約150〜250Torr程度である。アルゴンの封入圧が60Torr未満になると、パッシェン曲線からも理解できるように放電開始が困難になる。また、500Torrを超えると、始動電圧が高くなるとともに、放電開始時に投入されるグロー電力が大きくなり、その結果、包囲部の黒化が顕著になる。ランプ電圧形成金属として水銀を適量封入することができる。しかし、水銀に代えて蒸気圧が高くて可視域に発光が相対的に少ない金属ハロゲン化物、例えばZnIなどを所望により封入することもできる。
【0020】
〔外管について〕 外管は、その内部に発光管を所定の位置に収納する。外管は、発光管を機械的に保護し、発光管の作動温度を所望の範囲に維持する。一般的には、発光管の管軸が外管の管軸に一致するように配置する。外管の内部は、真空ないし低圧の大気または不活性ガス、例えば希ガスや窒素を封入することができる。なお、外管は、適当な透光性、気密性、耐熱性および加工性を備えている材料、例えば硬質ガラスを用いて構成することができる。また、外管は、既知の各種形状を適宜選択的に採用することができる。
【0021】
また、外管は、片封止および両端封止のいずれの構造をも所望に応じて選択的に採用することができる。なお、「片封止」とは、外管の一端にのみピンチシール部が形成されていて、他端が封止部を形成しないで閉塞されている構造をいう。これに対して、「両端封止」とは、外管の両端にピンチシール部が形成されている構造をいう。なお、外管が片封止構造であると、汎用ランプソケットを用いる一般照明用として都合がよい。
【0022】
〔比D/Pについて〕 比D/Pが数式0.04≦D/P≦0.20を満足することが本発明の成立前提要件である。ここで、Dは、mm単位で表した透光性セラミックス放電容器の包囲部の最大内径である。また、Pは、本発明の金属蒸気放電ランプのW単位で表したランプ電力である。透光性セラミックス放電容器は、比較的熱伝導が良好なので、比D/Pは、発光管温度と相関があり、上記数式を満足する範囲であれば、その他の要件次第で本発明の目的を達成することができる。なお、比D/Pが0.04未満になると、発光管温度が高くなりすぎて白濁や黒化を生じやすくなって光束維持率に影響する。反対に0.20を超えると、発光管温度が低くなりすぎて適正動作温度から外れてしまい、ハロゲンサイクルにより透光性セラミックス放電容器の内面に付着したタングステンの除去作用が薄れるためであると考えられるが、発光効率が著しく低下する。
【0023】
〔本発明の作用について〕 本発明者は、ハロゲン化金属中のツリウムの割合を35質量%以上にしたことによって、比D/Pが数式0.04≦D/P≦0.20を満足することを前提としてツリウムからの発光が、金属蒸気放電ランプの発光効率、演色性および光束維持率に対して極めて重要な好影響をもたらしていることを発見した。なお、本発明は、定格ランプ電力が30〜400W程度の金属蒸気放電ランプに対して特に効果的である。
【0024】
また、異なる内径Dを有する透光性セラミックス放電容器あるいは異なるハロゲン種や封入ハロゲン化金属の組み合わせ、点灯方向、その他の条件を変化させた場合でも上記の作用に大差はなかった。これは、発光効率と演色性および光束維持率との両立においては、ツリウムからの発光が極めて重要であり、その封入比率および比D/P値の規制が本発明の目標を達成するための主要なパラメータであること裏付けるものである。
【0025】
〔その他の構成について〕 本発明の必須構成要件ではないが、以下の構成を必要に応じて適宜付加することにより、金属蒸気放電ランプの製造が容易になったり、機能が充実したりする。
【0026】
1.(導入導体について) 導入導体は、電極間に電圧を印加するとともに、電極に電流を供給し、かつ、透光性セラミックス放電容器を封止するために機能する導体で、先端が電極の基端部に接続し、基端が透光性放電容器の外部に露出している。なお、透光性放電容器の外部に露出しているとは、透光性放電容器から外部へ突出していてもよいし、また突出していなくてもよいが、外部から給電できる程度に外部に臨んでいることを意味する。
【0027】
また、導入導体は、その熱膨張係数が透光性セラミックスのそれと近似している導電性金属であるニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびバナジウムなどを用いることができる。透光性セラミックス放電容器の材料にアルミナセラミックスなどのアルミニウム酸化物を用いる場合、ニオブおよびタンタルは、平均熱膨張係数がアルミニウム酸化物とほぼ同一であるから、封止に好適である。イットリウム酸化物およびYAGの場合も差が少ない。窒化アルミニウムを透光性セラミックス放電容器に用いる場合には、導入導体にジルコニウムを用いるとよい。また、導入導体に用いる上記の金属は、水素、酸素透過性を有しているので、所望により透光性セラミックス放電容器の内部に残存している不純ガスを排出するのに寄与させることもできる。
【0028】
さらに、導入導体は、これを支持することにより、高圧放電ランプ全体を支持するのに利用してもよい。
【0029】
2.(シュラウドガラスについて) シュラウドガラスは、外管内において、発光管を離間して包囲して発光管の万一の破裂に対して破裂片の飛散から保護する。
【0030】
3.(UVエンハンサまたは始動器について) 高圧放電ランプの始動性を良好にするために、UVエンハンサまたは始動器を外管内に配設することができる。UVエンハンサは、小形で紫外線透過性の気密容器内に一方の電極を封装するとともに紫外線放射性の希ガスなどを封入し、他方の電極を気密容器の外面に密接して配設したものである。そして、金属蒸気放電ランプの始動に先立って放電開始し、発生した紫外光を発光管の電極近傍に照射する。これにより発光管内の放電媒体が励起されて始動しやすくなる。
【0031】
始動器は、グロースタータ、バイメタルスイッチまたは非線形コンデンサなどのスイッチング手段を備えて構成されていて、外管内に配設されて、電源投入時に急速なスイッチング動作を行い、発生した高電圧パルスを発光管の電極間に印加して、金属蒸気放電ランプの始動を容易にする。例えば水銀灯安定器を用いて始動し、かつ、安定に点灯するように構成する場合に、始動器を内蔵することができる。
【0032】
請求項2に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記放電媒体は、そのハロゲン化金属が40質量%以上の割合でツリウム(Tm)ハロゲン化物を含むことを特徴としている。
【0033】
本発明によれば、ツリウムハロゲン化物の比率を40%以上とすることでさらに高い発光効率と良好な演色性を実現できる。
【0034】
請求項3の発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1または2記載の金属蒸気放電ランプにおいて、透光性セラミックス放電容器は、その包囲部の中央部の表面温度が850〜1200℃であることを特徴としている。
【0035】
本発明は、透光性セラミックス放電容器の包囲部中央部は、包囲部の中で最も反応による影響が出やすい箇所であるが、良好な光束維持率を得るために好ましい上記部分における表面温度の範囲を規定している。上記表面温度が850℃未満になると、透光性セラミックス放電容器の黒化により光束維持率が大幅に低下する。また、上記表面温度が1200℃を超えると、透光性セラミックス放電容器の反応による白濁や黒化が顕著になり、やはり光束維持率が低下する。
【0036】
請求項4に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1ないし3のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、透光性セラミックス放電容器は、その包囲部の内容積をV(cc)とし、ランプ電力をP(W)としたとき、以下の数式を満足することを特徴としている。
【0037】
0.002≦V/P≦0.030
本発明は、発光効率、演色性および光束維持率を良好にすることのできる比V/Pの数式条件を規定している。透光性セラミックス、特にアルミナセラミックス製の放電容器は、石英ガラスに較べて熱伝導率がよいために、発光管が均熱化され、結局、比V/P値が発光管温度を制御する一つのパラメータになるためと考えられる。しかし、V/Pが0.002未満であると、透光性セラミックス放電容器の反応による白濁や黒化が顕著になり、光束維持率が低下する。また、0.030を超えると、透光性セラミックス放電容器の黒化により光束維持率が大幅に低下する。
【0038】
請求項5に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1ないし4のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記透光性セラミックス放電容器の小径筒部の端面とシール部の包囲部側の端部との間の距離L(mm)が以下の数式を満足することを特徴としている。
【0039】
2.0≦L≦7.0
上記距離L(mm)は、小径筒部の内部に形成されるシール部の長さを表している。本発明においては、既述のようにツリウムを高濃度で封入しているため、シール部と反応しやすくなる。所望の寿命を確保するためには、シール部の長さを上記数式を満足する範囲内に規定するのがよい。しかし、シール部が2mm未満であると、ツリウムとシール材との反応によって早期リークが発生しやすくなる。また、シール部が7mmを超えると、シール材の温度自体が上昇して上記反応速度が上昇し、やはり早期リークが発生しやすい。
【0040】
請求項6にかかわる発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1ないし5のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、相関色温度が3000〜5000K、平均演色評価数Raが80〜98で、かつ、ランプ発光効率が100〜130lm/Wで点灯することが可能であることを特徴としている。
【0041】
本発明は、各指標値が良好で、しかも各指標値のバランスのとれた発光特性を備えた金属蒸気放電ランプを提供するものである。したがって、本発明によれば、従来は効率が優先されてきた街路灯などの屋外照明、あるいは演色性重視の店舗などの屋内照明など、極めて広範囲の用途に適応して、しかもより一層優れた照明を行うことができる。
【0042】
請求項7に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1ないし6のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記透光性セラミックス放電容器は、一体成形により構成されていることを特徴としている。
【0043】
本発明における一体成形の透光性セラミックス放電容器は、いくつかの部材を焼き嵌めて構成した透光性セラミックス放電容器に比較して熱伝導が良好なため、透光性セラミックス放電容器が均熱化されやすい。したがって、点灯方向を変化させた場合の特性変化が少なく、本発明の前記効果を助長する効果を有することが分かった。
【0044】
例えば、本発明の一実施例としてTmI:NaI:TlI:InI=60:25:10:5とし、ランプ電力を100Wとした金属蒸気放電ランプでは、垂直点灯時の色温度が4100K、水平点灯時が4050Kであった。これに対して、ほぼ同一内形状を有する従来の焼き嵌め構造の透光性セラミックス放電容器を用いた金属蒸気放電ランプでは、垂直点灯時の色温度が4000K、水平点灯時が3650Kであった。
【0045】
また、本発明においては、上記一体成形の透光性セラミックス放電容器を用いることにより、点灯方向を変化した際の色温度変化を大幅に抑制できることを見出した。
【0046】
請求項8に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1ないし7のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記外管内には発光管近傍にUVエンハンサが配設されており;前記外管内には前記発光管と略同心軸上ないしその周囲にシュラウドガラスが配設されており;上記UVエンハンサの中心軸と上記発光管の管軸との径方向最短距離をd1とし、上記シュラウドガラスの内半径をd2としたとき、以下の数式を満足することを特徴としている。
【0047】
d1<d2
本発明は、UVエンハンサおよびシュラウドガラスを付加してより実際的で、しかも始動電圧が低下した金属蒸気放電ランプを提供する。すなわち、金属蒸気放電ランプにUVエンハンサおよびシュラウドガラスを付加する場合、上記数式を満足させることにより、UVエンハンサから発生する紫外光が効果的に発光管に直接照射されて始動電圧が所期のとおりに低下する。しかし、上記UVエンハンサの中心軸と上記発光管の管軸との径方向最短距離d1が上記シュラウドガラスの内半径d2と同等以上になると、UVエンハンサから発生する紫外光がシュラウドガラスによって遮られやすくなるので、始動電圧の低下が阻害される。
【0048】
請求項9に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項8記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記距離d1とd2の比d1/d2が以下の数式を満足すことを特徴としている。
【0049】
0.2<(d1/d2)<0.8
本発明は、上記距離d1とd2の好適な比率範囲を規定している。比d1/d2が1.0以下であると、UVエンハンサによる始動電圧が急激に低減するが、1.0を超えると始動電圧が高くなってUVエンハンサを用いない場合との差が小さくなる。比d1/d2が0.2以下になると、ランプ寿命中のUVエンハンサの劣化が大きくなるため好ましくない。おそらく、発光管から与えられる熱的なダメージによるものと推定される。以上を考慮して、上記数式の範囲が好適である。
【0050】
請求項10に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項8または9記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記UVエンハンサと前記発光管内の電極先端との最短距離L(mm)が以下の数式を満足すことを特徴としている。
【0051】
5≦L≦50
本発明は、UVエンハンサと発光管内の電極先端との最短距離L(mm)を所定範囲に規定することによって好適な始動電圧を得るようにしたものである。上記最短距離が50mmを超えると、50mmを超えると極端に始動電圧が高くなり、UVエンハンサの効果が小さくなってしまう。また、上記最短距離が5mm未満になると、ランプ寿命中のUVエンハンサの劣化が大きくなるため好ましくない。おそらく、ランプから与えられる熱的なダメージによるものと推定される。
【0052】
請求項11に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項8ないし10のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、前記UVエンハンサは、その内部に封入される不活性ガスが少なくともアルゴン(Ar)を含み、その封入圧力P(Torr)が以下の数式を満足することを特徴としている。
【0053】
2≦P≦50
本発明は、UVエンハンサの好適な不活性ガスの封入圧力P(Torr)の範囲を規定している。すなわち、上記封入圧力P(Torr)の範囲を上記数式範囲内とすることにより、UVエンハンサの始動電圧を効果的に低減でき、安定した動作を実現できる。
【0054】
請求項12に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項1ないし11のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプにおいて、透光性セラミックス放電容器は、添加剤がMgO、ZrOおよびYを含む透光性アルミナセラミックスからなることを特徴としている。
【0055】
本発明は、透光性セラミックス放電容器の構成材料を上記のように特定したことでツリウムハロゲン化物と透光性セラミックス放電容器の反応による放電容器の白濁および黒化を抑制する構成を規定している。すなわち、添加剤がMgO、ZrOおよびYを含む透光性アルミナセラミックスを用いて透光性セラミックス放電容器を形成したことが本発明の構成上の特徴である。なお、放電媒体中のツリウムハロゲン化物は、ハロゲン化金属全体に対して35質量%以上の割合で封入されていることが好ましい。しかしながら、本発明においては、ツリウムハロゲン化物がハロゲン化金属全体に対して少なくとも30質量%以上であれば、所期の作用、効果を得ることができる。なお、ツリウムハロゲン化物の上記割合が40質量%以上であれば、以下に述べる作用、効果がなお一層顕著になるので、より一層好ましい。
【0056】
そうして、本発明においては、放電媒体の主成分であるところのツリウムと透光性セラミックス放電容器の反応が抑制される。これに伴って、反応によるツリウムの消失およびこれに伴う遊離ハロゲンの発生も減少する。なお、添加剤が上記の構成であると、スピネルが生成されにくくなるが、これが上記作用に影響しているものと推定される。
【0057】
いずれにしても本発明によれば、ツリウムハロゲン化物を上記のように多く封入している場合には、透光性セラミックス放電容器に上記添加剤を含む透光性アルミナセラミックスを用いることにより、透光性セラミックス放電容器の白濁および黒化が低減して光束維持率が向上するとともに、発光の色温度の低下および始動電圧の上昇が抑制される。このため、金属蒸気放電ランプの寿命特性が顕著に改善されることが分かった。
【0058】
これに対して、添加剤がMgOのみを含む透光性アルミナセラミックスを用いて透光性セラミックス放電容器を形成した場合には、スピネルが生成され、ツリウムと透光性セラミックス放電容器の反応により放電容器の白濁および黒化が生じて光束維持率が大きく低下しやすいとともに、発光の色温度が大きく変化する。また、ツリウムの消失に伴って遊離ハロゲンが発生して始動電圧が急激に上昇しやすい。その結果、金属蒸気放電ランプの寿命特性が悪化しやすくなる。
【0059】
請求項13に係る発明の金属蒸気放電ランプは、請求項12記載の金属蒸気放電ランプにおいて、添加剤中のMgOは150〜300ppm、ZrOは300〜500ppm、Yは10〜30ppmの範囲内であることを特徴としている。
【0060】
本発明は、金属蒸気放電ランプの寿命特性の改善に対して効果的で、かつ、透光性セラミックスの工業的な規模での入手が容易な添加剤中の上記成分の含有量の範囲を規定している。
【0061】
請求項14に係る発明の金属蒸気放電ランプ点灯装置は、請求項1ないし13のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプと;以下の数式を満足する点灯周波数f(Hz)を有し、略矩形波の点灯波形を発生して金属蒸気放電ランプを点灯する電子安定器と;を具備していることを特徴としている。
【0062】
50≦f≦500
請求項1ないし11のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプに上記数式を満足する周波数の略矩形波電圧を印加して点灯すると、低周波交流電源電圧の位相変化に伴う光出力変動により生じるちらつきや騒音レベルが低減する。
【発明の効果】
【0063】
請求項1に係る発明によれば、光束維持率などの寿命特性を犠牲にすることなく、高い発光効率と演色性とを両立させることのできる金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0064】
請求項2に係る発明によれば、加えてツリウムハロゲン化物の比率を40%以上とすることでさらに高い発光効率と良好な演色性を実現した金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0065】
請求項3に係る発明によれば、加えて包囲部の中央部の表面温度が850〜1200℃であることにより、良好な光束維持率を得る金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0066】
請求項4の発明によれば、加えて包囲部の内容積V(cc)とランプ電力P(W)とが0.002≦V/P≦0.030を満足することにより、発光効率、演色性および光束維持率を良好にした金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0067】
請求項5の発明によれば、加えて透光性セラミックス放電容器の小径筒部の端面とシール部の包囲部側の端部との間の距離L(mm)が2.0≦L≦7.0を満足することにより、所望の寿命を確保する金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0068】
請求項6の発明によれば、加えて相関色温度が3000〜5000K、平均演色評価数Raが80〜98で、かつ、ランプ発光効率が100〜130lm/Wで点灯することが可能であることにより、各指標値が良好で、しかも各指標値のバランスのとれた発光特性を備えた金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0069】
請求項7の発明によれば、加えて透光性セラミックス放電容器が一体成形により構成されていることにより、点灯方向を変化させた場合の特性変化が少ない金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0070】
請求項8の発明によれば、加えてUVエンハンサおよびシュラウドガラスがd1<d2を満足するように配設されていることにより、実際的で、しかも始動電圧が低下した金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0071】
請求項9の発明によれば、加えて比d1/d2が0.2<(d1/d2)<0.を満足すことにより、UVエンハンサによる始動電圧が低減するとともに、ランプ寿命中のUVエンハンサの劣化が少ない金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0072】
請求項10の発明によれば、加えてUVエンハンサと前記発光管内の電極先端との最短距離L(mm)が5≦L≦50を満足すことにより、UVエンハンサによる始動電圧が低減するとともに、ランプ寿命中のUVエンハンサの劣化が少ない金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0073】
請求項11の発明によれば、加えてUVエンハンサの内部に封入される不活性ガスが少なくともアルゴン(Ar)を含み、その封入圧力P(Torr)が2≦P≦50を満足することより、UVエンハンサの始動電圧を効果的に低減でき、安定した動作を実現できる金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0074】
請求項12の発明によれば、加えて透光性セラミックス放電容器がMgO、ZrOおよびYを添加剤として含む透光性アルミナセラミックスからなることにより、寿命特性が顕著に改善される金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0075】
請求項13の発明によれば、加えて添加剤中のMgO、ZrO、Yの含有量を所定範囲に規定したことにより、寿命特性の改善に対して効果的で、かつ、透光性セラミックスの工業的な規模での入手が容易な金属蒸気放電ランプを提供することができる。
【0076】
請求項14の発明によれば、請求項1ないし13の効果を有する金属蒸気放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、図面を参照して本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための形態を説明する。
【0078】
図1ないし図3は、本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態を示しており、図1は外管の一部を破断して要部を示す一部切欠正面図、図2は発光管の拡大断面図、図3はUVエンハンサの正面図である。各図において、金属蒸気放電ランプは、定格ランプ電力100W用として好適な構造であり、図1に示すように、発光管1A、外管5、UVエンハンサ7、シュラウドガラス3、支持構体4A、4Bおよび口金6を具備して構成されている。
【0079】
まず、図2に示す発光管1Aについて説明する。発光管1Aは、透光性セラミックス放電容器1、電極2A、2B、一対の導入導体23a、23b、一対のシール部13、13および透光性セラミックス放電容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0080】
透光性セラミックス放電容器1は、透光性アルミナセラミックスからなり、包囲部11および包囲部1aの両端に連通して配設された一対の小径筒部12a、12bを備えている。そして、小径筒部12a、12bおよび包囲部11は、鋳込み成形により一体化されている。
【0081】
包囲部11は、2つの球体が、その一部が互いに重なるように軸方向に離間して、両端部の半球状の部分を形成し、半球状の部分の間を直線で結んでなるほぼ俵形の形状をなしていて、肉厚が0.8mmである。
【0082】
一対の小径筒部12a、12bは、それぞれ内径約1mmのパイプ状をなし、先端が対応する包囲部1aの半球状部分の中央部に接続している。なお、包囲部11および小径筒部12a、12bの境界部は、その内外両面が曲面によって形成されている。
【0083】
一対の電極2A、2Bは、外径0.5mmのタングステン棒からなる細長い軸部21および電極主部22を備えている。細長い軸部21は、小径筒部12a、12b内に挿通されていて、タングステン細線を巻き付けてコイル部25a、25bを形成している。そして、細長い軸部21と小径筒部12a、12bの内面との間にわずかな隙間が形成されている。電極主部22は、細長い軸部21の先端部に外径0.1mmのタングステン細線を5ターン巻き付けて形成されていて、包囲部11内に突出している。
【0084】
一対の導入導体23a、23bは、それぞれニオブ棒状体Nbおよびサーメット棒状体SMからなり、上記両棒状体が直線状に溶接されて一体に形成されている。ニオブ棒状体Nbは、その先端が小径筒部12a、12b内に挿入されるとともに、基端が小径筒部12a、12bから外部へ突出している。サーメット棒状体SMは、外径0.6mmで、モリブデン−アルミナセラミックスの焼結体からなり、その先端に電極2A、2Bの細長い軸部21の基端部が溶接などにより一体に接続されている
一対のシール部13、13は、いずれもDy−SiO−Alからなるセラミックス封止用コンパウンドを加熱して溶融し、固化することにより形成されている。そうして、一対のシール部13、13は、透光性セラミックス放電容器1の小径筒部12a、12bの端面側の部分と、これに対向する導入導体23a、23bのニオブ棒状体Nbと、の間に介在して透光性セラミックス放電容器1を気密に封止していて、いわゆる導入導体挿入封止構造を提供するとともに、導入導体23a、23bが透光性セラミックス放電容器1の内部に露出しないように小径筒部12a、12b内に挿入されている部分の全体を被覆している。以上の封止により、電極2A、2Bを透光性セラミックス放電容器1の所定の位置に固定している。
【0085】
また、シール部13を形成するには、透光性セラミックス放電容器1を縦位置にセットし、さらにセラミックス封止用コンパウンドのリング状フリットガラス(図示しない。)を、そのとき上側に位置して封止しようとする例えば小径筒部12aの端面の上に載置して、リング状ペレットを加熱して溶融させて導入導体23aおよび小径筒部12aの内面の間の隙間に進入させ、小径筒部12a内に挿入されている部分の導入導体23aのニオブ棒状体Nbの全体を被覆する。次に、透光性セラミックス放電容器1を180°反転して、他方の小径筒部12b側についても上記と同様にシール部13を形成する。なお、小径筒部12a、12bとシール部13、13の包囲部11側の端部との間の距離L(mm)は、2.0〜7.0mmの範囲内となるように選定されている。
【0086】
放電媒体は、始動ガスおよびバッファガスとしてアルゴン、下記のハロゲン化金属、ならびにバッファ蒸気としての水銀からなり、透光性セラミックス放電容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されているので、その一部が安定点灯時に小径筒部12a、12b内に形成されるわずかな隙間内のコイル部25a、25bに液相状態で滞留している。そして、点灯中下側となる例えば小径筒部12b内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。
【0087】
ハロゲン化金属は、その35質量%以上、好適には40質量%以上の割合でツリウムハロゲン化物を含んでいる。残余のハロゲン化物は、例えばナトリウム、タリウムおよび希土類金属などの発光金属から選択された金属のハロゲン化物により構成することができる。
【0088】
外管5は、硬質ガラスからなるT形バルブ状をなしていて、そのネック部にフレアステム4sを封着して備えている。フレアステム4sは、一対の導入線41a、41bを気密に導入している。そして、外管5は、その内部の所定位置に発光管1Aを後述する支持構体A、4Bにより支持して収納している。
【0089】
UVエンハンサ7は、図3に示すように、気密容器71、導入線73、内部電極74、放電媒体および外部電極75を具備して構成されている。気密容器71は、石英ガラスなどの紫外線透過性ガラス製で、その一端部にピンチシール部72が形成されていることにより、内部に細長い放電空間が形成されている。導入線73は、先端が後述する内部電極74に溶接し、ピンチシール部72から外部へ導出され、基端部73aの部分で図1に示すように、後述する支持枠42aに溶接されている。
【0090】
内部電極74は、モリブデン製の板状をなしていて、気密容器71の放電空間内に封装されており、その基部がピンチシール部72内に気密に埋設されている。放電媒体は、アルゴン約1.3kPaからなり、気密容器71の内部に封入されている。外部電極75は、外径0.4mmのモリブデン線からなり、気密容器71の外周に密着して5ターン巻き付けられているとともに、その基端部75bが支持構体42bに溶接されている。そうして、UVエンハンサ7は、その導入線73の基端部73aおよび外部電極75の基端部75aにより、外管5内の所定の位置に配置されている。
【0091】
以上説明した構造により、UVエンハンサ7は、外管5内において発光管1Aと並列に接続されているとともに、発光管1Aの一方の電極(図1中に点線で示す。)に接近した位置に保持されている。
【0092】
シュラウドガラス3は、肉厚1.0mmで内径がd2の円筒状石英ガラス体からなり、外管5内において発光管1Aを包囲する位置に後述する支持部材45aによって保持されている。
【0093】
支持構体4Aは、支持枠42a、ブリッジ導体43a、スプリング片44a、44aおよび支持部材45aからなる。支持枠42aは、図1において下端が導入線41aに接続し、上端が延長されてスプリング片44aを形成している。ブリッジ導体43aは、発光管1Aの図において側の導入導体23aに溶接されることによって発光管1Aの上部を支持している。スプリング片44aは、外管5の内面に弾力的に当接して、支持枠42aの上部を外管5の内面に対して横揺れを防止している。支持部材45aは、後述するシュラウドガラス3の上下両端を支持している。
【0094】
支持構体4Bは、直棒状をなしていて、その下部がフレアステム4sに封着されている導入線41bに溶接されることによって電気的に接続し、かつ、機械的に支持されている。そして、上端部が発光管11の図において下側の導入導体23bに接続導体を介して溶接されて、発光管1Aの下部を支持している。
【0095】
口金3は、E39形口金であり、外管5のネック部に固着され、外管5から外部へ露出した図示しない一対の導入線の一方がシェル部に、他方がセンターコンタクトに、それぞれ接続している。
【0096】
なお、図1において、符号Gはゲッタであり、外管5内を清浄化するもので、支持枠42aの上部に溶接されている。
【0097】
次に、実施例1について比較例1、2を参照しながら説明する。下記以外はいずれも上述した形態における仕様である。
【実施例1】
【0098】
放電媒体 NaI(30)−TlI(30)−TmI(40)=5mg、
水銀、アルゴン200Torr、括弧内は質量%を示す。
[比較例1]
放電媒体 NaI(30)−TlI(30)−DyI(40)=5mg、
水銀、アルゴン200Torr、括弧内は質量%を示す。
[比較例2]
放電媒体 NaI(30)−TlI(30)−HoI(40)=5mg、
水銀、アルゴン200Torr、括弧内は質量%を示す。
【0099】
図4は、実施例1、比較例1および比較例2における分光分布を示す曲線であり、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2の分光分布をそれぞれ示している。測定条件は、垂直点灯、点灯周波数100Hz、ランプ電力100W、矩形波点灯である。
【0100】
図4から明らかなように、実施例1は、比較例1および比較例2に較べて視感度曲線のピークとなる波長555nm付近での発光が顕著であるとともに、青色領域あるいは赤色領域における発光が適度であり、発光効率と演色性とを両立させている。
【0101】
図5は、実施例1、比較例1および比較例2における発光効率および平均演色評価数Raを示すグラフである。図において、横軸は左から比較例1、比較例2および実施例1を、縦軸は上部が発光効率(lm/W)、下部が平均演色評価数Raを、それぞれデータのばらつきの程度および平均値として示している。
【0102】
図5から理解できるように、発光効率は、実施例1が最も高く、比較例2、比較例1の順に低くなっている。また、平均演色評価数Raは、比較例1、比較例2および実施例1の順に低くなっているが、実施例1の値は十分に価値を認めることのできる程度である。
【0103】
次に、本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第2の形態について説明する。本形態では、放電媒体のハロゲン化金属としてヨウ化ツリウム(TmI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化タリウム(TlI)およびヨウ化インジウム(InI)の4種を用いている。
【0104】
図6は、本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第2の形態において、封入ハロゲン化物の封入量およびランプ電力を変化させた場合の比D/Pおよび発光特性の変化を示す表である。なお、発光形態が金属からの輝線スペクトルが細くて、発光効率および演色性Raにそれほど影響しないTlIとInIの質量比率を固定して、TmIとNaIの質量比率(なお、図中wt%は質量%を示している。)を変化させ、かつ、図2に示すように、発光管1Aの内径D(mm)とランプ電力P(W)を変化させたものである。また、金属蒸気放電ランプは、垂直点灯とし、点灯周波数100Hzで矩形波点灯させ、点灯100時間における各ランプの発光効率(lm/W)、平均演色評価数Raおよび6000時間における対100時間比の光束維持率(%)をそれぞれ調査した結果を示している。また、本発明における発光特性の目標値を効率100〜130lm/W、Raを80〜98、光束維持率を70%以上とした。
【0105】
図6から明らかなように、TmIを35%以上とし、さらに発光管(ここでは透光性セラミックス放電容器1を意味する。)の内径Dとランプ電力Pの比率D/P(mm/W)を0.04≦D/P≦0.20とすることで、目標とする発光特性を達成することができることを見出した。すなわち、本発明によれば、ツリウムハロゲン化物の封入比率を35質量%以上に高め、さらに比D/Pを所定の範囲に規制することにより、従来にない高発光効率、高演色性および長寿命をともに満足できるものであることが理解できる。
【0106】
図7は、図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサとシュラウドガラスの位置関係が始動電圧に与える影響を調査した結果を示す表である。なお、表中「UVエンハンサ中心軸との最短距離」は「UVエンハンサの中心軸と上記発光管の管軸との径方向最短距離」を意味する。また、「シュラウド内半径」は「シュラウドガラスの内半径」を意味している。
【0107】
図7から理解できるように、数式d1<d2または0.2<(d1/d2)<0.8を満足するのが好ましい。
【0108】
図8は、図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサとシュラウドガラスの位置関係のd1/d2と始動電圧の関係を示すグラフである。図において、横軸はd1/d2を、縦軸は始動電圧(kVp)を、それぞれ示している。
【0109】
図から理解できるように、0.2<(d1/d2)<0.8を満足するのが好ましい。
【0110】
図9は、図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサと前記発光管内の電極先端との最短距離と始動電圧の関係を示すグラフである。図において、横軸はL(mm)を、縦軸は始動電圧(kVp)を、それぞれ示している。
【0111】
図から理解できるように、UVエンハンサと前記発光管内の電極先端との最短距離L(mm)が5≦L≦50を満足するのが好ましい。
【0112】
図10は、図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサのAr封入圧と始動電圧の関係を示すグラフである。図において、横軸はAr封入圧(Torr)を、縦軸は始動電圧(kVp)を、それぞれ示している。
【0113】
図から理解できるように、UVエンハンサAr封入圧P(Torr)が2≦P≦50を満足するのが好ましい。
【0114】
次に、本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第3の形態について説明する。本形態では、透光性セラミック放電容器が、添加剤がMgO、ZrOおよびYを含む透光性アルミナセラミックスにより形成されている。その他の構成については第1の形態と同様である。
【0115】
以下、本形態における実施例を説明する。
【実施例2】
【0116】
透光性セラミックス放電容器:MgO約200ppm、ZrO約400ppm、
約15ppmの添加剤を含む透光性アルミナセラミックス製
放電媒体 :NaI(30)−TlI(15)−TmI(50)−InI(5)
=5mg なお、括弧内は質量%を示す。
【0117】
水銀、アルゴン200Torr
管壁負荷 :25W/cm
定格ランプ電力:100W
[比較例3]
透光性セラミックス放電容器:MgO約200ppmのみの添加剤を含む
透光性アルミナセラミックス製
その他は実施例2と同じ。
[比較例4]
透光性セラミックス放電容器:MgO約200ppm、ZrO約400ppm、
約15ppmの添加剤を含む透光性アルミナセラミックス製
放電媒体 :NaI(50)−TlI(15)−TmI(25)−InI(10)
=5mg なお、括弧内は質量%を示す。
【0118】
水銀、アルゴン200Torr
その他は実施例2と同じ。
【0119】
図11は、本発明の実施例2の点灯試験結果を比較例3および4のそれと比較して示す表である。点灯試験は、実施例2および比較例3および4のそれぞれの金属蒸気放電ランプを同一仕様の金属蒸気放電ランプ点灯装置を用いて実施例1と同じ条件で点灯し、点灯100時間、6000時間および12000時間におけるランプ特性を示している。
【0120】
図から理解できるように、本発明の第3の形態によれば、実施例2により得られた金属蒸気放電ランプは、発光効率および平均演色評価数Raがともに優れているのに加えて、光束維持率、したがって寿命特性が比較例3および4のそれよりも明らかに優れている。また、色温度の変化も比較例のそれより明らかに少ない。
【0121】
なお、比較例4は、透光性セラミックス放電容器が実施例と同じ添加剤を含む透光性アルミナセラミックス製であるが、ツリウムハロゲン化物の封入割合が25質量%であるために、演色性は優れているものの、発光効率および光束維持率が比較例3より優れているが実施例に比較すれば劣っている。
【0122】
また、例えば特開平06−196131号公報には透光性セラミックス放電容器を構成する透光性アルミナセラミックスの添加剤としてMgO、ZrOおよびYを含む金属蒸気放電ランプが記載されているが、ここで用いられているヨウ化ナトリウム:ヨウ化タリウム、ヨウ化ジスプロシウムを質量比で69:10:21の割合のように従来一般的な放電媒体の組成、換言すればツリウムハロゲン化物をハロゲン化金属全体に対して30質量%未満の割合で封入した金属蒸気放電ランプは、本発明者による追試において上記実施例2のように顕著な寿命特性改善効果は認められなかった。
【0123】
すなわち、上記実施例2および比較例3および4ならびに上記追試の結果は、透光性セラミックス放電容器を構成する透光性アルミナセラミックスの添加剤の種類による金属蒸気放電ランプの寿命特性の改善効果は、発光物質として封入する金属ハロゲン化物の種類と封入比率とにより変化し、高効率と高演色を両立させるためにツリウムハロゲン化物を30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より一層好ましくは40質量%以上封入する場合に効果的であることを示している。
【0124】
図12は、本発明の金属蒸気放電ランプ点灯装置を実施するための一形態を示す回路図である。図において、11は直流電源、12は直流−直流変換回路、13は直流−交流変換回路、14はイグナイタ、15は金属蒸気放電ランプである。
【0125】
直流電源11は、整流化直流電源からなり、低周波交流電源を整流して直流を得る。
【0126】
直流−直流変換回路12は、直流電源11から出力される直流電圧を異なる直流電圧に変換する。例えば、直流チョッパからなる。
【0127】
直流−交流変換回路13は、直流−直流変換回路12から出力される直流電圧を矩形波の低周波交流電圧に変換する。例えば、フルブリッジ形インバータからなる。
【0128】
イグナイタ14は、金属蒸気放電ランプ15の始動時に高電圧パルスを発生して金属蒸気放電ランプ15を始動させる。
【0129】
金属蒸気放電ランプ15は、図1に示す金属蒸気放電ランプであり、直流−交流変換回路13から出力される矩形波で、点灯周波数fが50≦f≦500を満足する低周波交流電圧が印加されて点灯する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態を外管の一部を破断して示す一部切欠正面図
【図2】同じく発光管の拡大断面図
【図3】同じくUVエンハンサの正面図
【図4】実施例、比較例1および比較例2における分光分布を示す曲線
【図5】実施例、比較例1および比較例2における発光効率および平均演色評価数Raを示すグラフ
【図6】本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第2の形態において、封入ハロゲン化物の封入量およびランプ電力を変化させた場合の比D/Pおよび発光特性の変化を示す表
【図7】図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサとシュラウドガラスの位置関係が始動電圧に与える影響を調査した結果を示す表
【図8】図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサとシュラウドガラスの位置関係のd1/d2と始動電圧の関係を示すグラフ
【図9】図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサと前記発光管内の電極先端との最短距離と始動電圧の関係を示すグラフ
【図10】図1に示す本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための第1の形態において、UVエンハンサのAr封入圧と始動電圧の関係を示すグラフ
【図11】本発明の実施例2および比較例の点灯試験結果を比較的に示す表
【図12】本発明の金属蒸気放電ランプ点灯装置を実施するための一形態を示す回路図
【符号の説明】
【0131】
1…透光性セラミックス放電容器、1A…発光管、3…シュラウドガラス、4A、4B…支持構体、5…外管、6…口金、7…UVエンハンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に最大内径がD(mm)の放電空間を有する包囲部および包囲部の両端に連通した小径筒部を備えて一体的に成形された透光性セラミックス放電容器、透光性セラミックス放電容器の小径筒部に挿通されているとともに先端が透光性セラミックス放電容器の包囲部に臨んでいる一対の電極、ならびに35質量%以上の割合でツリウム(Tm)ハロゲン化物を含むハロゲン化金属を少なくとも有していて、透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体を備えた発光管と;
内部が真空または不活性雰囲気で発光管を収納している外管と;
を具備し、ランプ電力をP(W)としたとき、以下の数式を満足することを特徴とする金属蒸気放電ランプ。
0.04≦D/P≦0.20
【請求項2】
前記放電媒体は、そのハロゲン化金属が40質量%以上の割合でツリウム(Tm)ハロゲン化物を含むことを特徴とする請求項1記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
透光性セラミックス放電容器は、その包囲部の中央部の表面温度が850〜1200℃であることを特徴とする請求項1または2記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
透光性セラミックス放電容器は、その包囲部の内容積をV(cc)とし、ランプ電力をP(W)としたとき、以下の数式を満足することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
0.002≦V/P≦0.030
【請求項5】
前記透光性セラミックス放電容器の小径筒部の端面とシール部の包囲部側の端部との間の距離L(mm)が以下の数式を満足することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
2.0≦L≦7.0
【請求項6】
相関色温度が3000〜5000K、平均演色評価数Raが80〜98で、かつ、ランプ発光効率が100〜130lm/Wで点灯することが可能であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項7】
前記透光性セラミックス放電容器は、一体成形により構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項8】
前記外管内には発光管近傍にUVエンハンサが配設されており;
前記外管内には前記発光管と略同心軸上ないしその周囲にシュラウドガラスが配設されており;
上記UVエンハンサの中心軸と上記発光管の管軸との径方向最短距離をd1とし、上記シュラウドガラスの内半径をd2としたとき、以下の数式を満足することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
d1<d2
【請求項9】
前記距離d1とd2の比d1/d2が以下の数式を満足すことを特徴とする請求項8記載の金属蒸気放電ランプ。
0.2<(d1/d2)<0.8
【請求項10】
前記UVエンハンサと前記発光管内の電極先端との最短距離L(mm)が以下の数式を満足すことを特徴とする請求項8または9記載の金属蒸気放電ランプ。
5≦L≦50
【請求項11】
前記UVエンハンサは、その内部に封入される不活性ガスが少なくともアルゴン(Ar)を含み、その封入圧力P(Torr)が以下の数式を満足することを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
2≦P≦50
【請求項12】
透光性セラミックス放電容器は、添加剤がMgO、ZrOおよびYを含む透光性アルミナセラミックスからなることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項13】
添加剤中のMgOは150〜300ppm、ZrOは300〜500ppm、Yは10〜30ppmの範囲内であることを特徴とする請求項12記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一記載の金属蒸気放電ランプと;
以下の数式を満足する点灯周波数f(Hz)を有し、略矩形波の点灯波形を発生して金属蒸気放電ランプを点灯する電子安定器と;
を具備していることを特徴とする金属蒸気放電ランプ点灯装置。
50≦f≦500

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−120599(P2006−120599A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133218(P2005−133218)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】