説明

金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸フイルム

【課題】 ニ軸延伸ポリエステル樹脂フイルムの優れた特性を失うことなく実用面の特性を維持し、良好なひねり性と折り曲げ性を具備し、さらにはガスバリア性と美装性にも優れ、実用性と経済性および生産性良好なひねり包装用フイルムとして有用な金属蒸着ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを提供すること。
【解決手段】 実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるフイルムであって、該フイルムの長手方向の屈折率Nxが幅方向の屈折率Nyより大きく、かつ該フイルム密度が1.34〜1.375g/cm3であることを特徴とする金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムに関する。更に詳しくは、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの優れた特性を維持しつつ、良好なひねり性と折り曲げ性を具備し、さらにはひねり包装用途として商品価値の高いバリア性と美装性も有する、実用性と経済性および生産性に優れた金属蒸着ひねり包装用フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からひねり性や折り曲げ性の優れたフイルムとしては、セロファンが知られている。金属蒸着セロファンはその優れた透明性と易切断性、ひねり性等の特性によりひねり包装をはじめとする各種包装材料や粘着テープ用として使用されている。しかし、一方でセロファンは吸湿性を有するために特性が季節により変動し、一定品質を維持しながら供給するこが困難であった。また、ポリエチレンテレフタレートをベースフイルムとした包装材は、延伸されたポリエチレンテレフタレートフイルムの強靭性、耐熱性、耐水性、透明性等の優れた特性により各種用途にて好適に使用されてきた。その反面、切断性や包装用袋での口引き裂き性における欠点、粘着テープでは切れにくいという欠点がある。また折り曲げ性が要求される用途では、腰が強いために、折り曲げ後にその形状保持ができないという欠点があった。さらに、ひねり包装用途においては、ひねり後の形状維持が悪いといったひねり保持性が劣る等の欠点があり、セロファン代替品として使用することは困難であった。
【0003】
コスト的に有利で生産性良好とする、ポリエチレンテレフタレート延伸フイルムとして長手方向または幅方向の一軸延伸フイルムがある。しかし、長手方向の一軸延伸フイルムでは長手方向の屈折率Nxが幅方向の屈折率Nyより大きくなり比較的ひねり性または折り曲げ性の良好なフイルムが得られるものの、得られる幅方向のフイルム長さが樹脂押出し時にキャスッティングロールで引き取られた時の幅に制約を受けることから生産性が悪くなるという問題があった。
【0004】
また幅方向の一軸延伸フイルムでは樹脂押出し時のキャスッティングロールで引き取る速度が限界になりこれも生産性が悪い。さらに上記各一軸延伸フイルムは共通して厚みムラが発生し易いといった問題もあり、ロール状において編肉やたるみなどが発生するという生産性における問題があった。
【0005】
つまり、経済性と生産性を考慮した場合、収率および収益性の高い延伸フイルムが要求されるのが現状であり、実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるひねり包装用フイルムにおいて、折り曲げ性、ひねり性を発現させるためにはフイルムの配向が無いあるいは配向度を低くすること及び/又は結晶化させないあるいは結晶化度を低くすることにより、フイルムの配向が無くかつフイルムが結晶化させないことは上記のように生産性に不利な方向であるという問題を有していた。
【0006】
上記欠点を解決する方法として、応力―ひずみ曲線において降伏点を有し、かつ該共重合物の未延伸フイルムの平均屈折率をN0、ニ軸延伸フイルムの平均屈折率をN1とした時、0.003≦N1―N0≦0.021を満足することを特徴とする易折り曲げポリエステルフイルム(例えば、特許文献1参照。)が報告されている。
【特許文献1】特許第2505474号公報
【0007】
しかしながら上記従来技術において、ポリエチレンテレフタレートの共重合物からなる二軸延伸フイルムであって、応力−ひずみ曲線において降伏点を有し、かつ該共重合物の未延伸フイルムの平均屈折率をN0、ニ軸延伸フイルムの平均屈折率をN1とした時、0.003≦N1−N0≦0.021とする方法は、フイルムの幅方向の屈折率Nyが長手方向の屈折率Nxより大きくなり、本発明が目標とする折り曲げ性およびひねり包装用途で必要となるひねり後の形状維持を得るには充分ではない。またイソフタル酸等の共重合物の使用および二軸延伸後の熱処理工程にて熱収縮率を小さくすることが記載されてはいるが、共重合物の使用はコストが高くなり生産性としては好ましくないといった問題も有していた。
【0008】
さらに、ポリエチレンテレフタレートからなるフイルムであって、密度が1.35〜1.375g/cm3の範囲にあり、120℃の熱収縮率が少なくとも10%以上であり、かつフイルム厚みが6〜30μmであるひねり包装用食品フイルム(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【特許文献2】特公昭59−12544公報
【0009】
しかしながら、上記従来技術においても、ひねり後の戻り角度が大きく、上記従来技術同様にひねり包装用途で必要となるひねり後の形状維持を得るには充分ではなく、内容物が出てしまい多くの不良率が発生するといった問題を有し実用的ではなかった。
【0010】
また、ひねり包装や折り曲げ包装に見られる固体物の包装フイルムは近年、金属蒸着された包装セロファンフイルムの使用が多様化されている。これは金属蒸着によるガスバリア性の向上とその優れた美装性によって、ひねり包装や折り曲げ包装された商品価値の向上を目的としており、販売を拡大する上で有効な包装手段の1つとなっている。したがって、金属蒸着されたポリエチレンテレフタレートをベースフイルムとするひねり包装や折り曲げ包装への需要は大きく開発が望まれてはいるが、未だ充分ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの優れた特性維持しつつ良好なひねり性と折り曲げ性を具備し、さらにはひねり包装用途として商品価値の高いバリア性と美装性も有する、実用性と経済性および生産性に優れた金属蒸着ひねり包装用フイルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み実用性を有しつつ、さらにはコスト的にも有利で生産性良好な実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるひねり包装用フイルムを得ることを目的として鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0013】
本発明は、二軸延伸フイルムのフイルムの配向(ここでは屈折率とする)と結晶化度(ここではフイルム密度とする)をコントロールした実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるフイルムである。
【0014】
すなわち、本発明は、実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるフイルムであって、該フイルムの長手方向の屈折率Nxが幅方向の屈折率Nyより大きく、かつ該フイルム密度が1.34〜1.375g/cm3であることを特徴とする金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを提供することである。ここでいう屈折率は試料の状態調節と測定温度を30℃とし、JIS−K−7142に準じアッベ屈折率計により、NaD線光で測定し、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)として求めた値を意味する。またフイルム密度は密度勾配管法(例えば硝酸カルシウムの溶解液など)、または浮沈法等の手段により25℃で測定した値を意味する。このように特定の組成を有するポリエステルを使用し、フイルムの長手方向の屈折率Nxと幅方向の屈折率Nyを上記特定の関係にすること、さらにはフイルム密度を上記特定範囲にすることが、経済性と生産性を満足しつつ実用性があり優れたひねり性と折り曲げ性を得る上で好ましく、金属蒸着ひねり包装用フイルムとして有用である。
【0015】
この場合において、前記フイルムの長手方向の屈折率Nxが1.60≦Nx≦1.68、かつ幅方向の屈折率Nyが1.59≦Ny≦1.64であることが好適である。長手方向の屈折率Nxが1.60未満および/または幅方向の屈折率Nyが1.59未満であると延伸倍率が低いことによる厚みむらが発生する。また長手方向の屈折率Nxが1.68を超えるとおよび/または幅方向の屈折率Nyが1.64を超えるとフイルムの配向度が高くなりひねり性や折り曲げ性が悪くなる。
【0016】
またこの場合において、さらに前記フイルムの120℃での長手方向における熱収縮率が20%以上であることが好適である。前記フイルムの120℃での長手方向における熱収縮率が20%未満であると、フイルム密度が高くなりひねり性や折り曲げ性が悪くなる。
【0017】
なお、本発明の金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの長手方向の屈折率Nxと幅方向の屈折率Nyは、その製造工程から容易にサンプルを採集することができるので、そのサンプルについて屈折率を測定することにより得られるが、金属蒸着されたひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの屈折率を測定するためには、例えば塩酸処理等にて金属蒸着膜を剥がすこによってこのフイルムの屈折率の測定が可能となり求めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるフイルムであって、該フイルムの長手方向の屈折率Nxが幅方向の屈折率Nyより大きく、かつ該フイルム密度が1.34〜1.375g/cm3とすることにより、良好なひねり性と折り曲げ性を具備し、さらには生産性良好である金属蒸着ひねり包装用二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を構成する実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂とは、テレフタル酸とエチレングリコールを直接エステル化反応させたものであって、副生成物としてジエチレングリコールやオリゴマーや環状オリゴマー等さらには未反応物として線状モノマーやオリゴマー等が含まれていても良い。また実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂の固有粘度は、好ましくは0.55〜1.30dl/gであり、さらに好ましくは0.60〜1.20dl/gである。このとき、樹脂密度は1.350〜1.450g/cm3のものが好適である。
ここでいう実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂とは、構成成分のうち70モル%以上がエチレンテレフタレート単位よりなることが好ましく、より好ましくは80モル%以上である樹脂を意味する。
【0020】
上記実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂は、従来の方法により製造され得ることができる。例えば、酸性分とグリコール成分とを直接反応させる直接エステル化法、酸成分としてのエステルとグリコール成分とを反応させるエステル交換法などが挙げられるが、特に限定はされない。
【0021】
上記組成物中には、実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂の他に必要に応じて各種添加剤が含有されても良い。添加剤としては二酸化チタン、微粒子シリカ、カオリン、炭酸カルシウム等の無機滑剤やアクリル系架橋高分子よりなる微粒子の材料として、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等のアクリル系単量体からなる架橋高分子等の有機滑剤が挙げられる。また、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線防止剤、着色剤、染料等を単独で含有しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0022】
本発明に用いる添加剤としては微粒子シリカが好ましいが特に限定はされない。微粒子シリカの組成は二酸化ケイ素(SiO2)を主成分としたものであり、さらに形状は不定形、球状、凝集状などいずれであっても良いが、本発明においては結晶構造を持たない不定形が好ましい。更に平均粒径(コールターカウンター法)は1.4〜4.5μmが好ましく、より好ましくは1.8〜3.0μmである。平均粒径が1.4μm未満ではフイルム間でのブロッキングが発生し問題になる。また、平均粒径が4.5μmより大きいとフイルム加工時にて微粒子シリカの脱落が発生する問題や耐スクラッチ性が悪化するといった問題が発生する。本発明においては、富士シリシア社製サイリシア(グレード:310P、形状:不定形、平均粒径:2.7μm)を用いた。
【0023】
本発明の実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂フイルムは、公知のフイルム製膜方法により形成し得ることができる。フイルム製膜方法としては例えば押出し機により溶融混練された樹脂をキャストして未延伸フイルムを得る。その後、同時ニ軸延伸法または逐次二軸延伸法等のニ軸延伸を行い次いで熱固定する方法が用いられる。押出し条件、製膜方法、延伸条件等は適宜選択することができ、特に限定はされない。上記延伸条件の好ましくは、下記のような工程にて行うことができる。例えば、上記樹脂組成を構成する重合体組成物が有するガラス転移温度以上、融点以下の温度で予熱を行う。また延伸倍率としては、ニ軸延伸の場合は延伸後の面積倍率が延伸前の面積に対して2〜30倍、好ましくは9〜16倍が望ましい。さらに好ましくは、逐次二軸延伸法において先ず幅方向に延伸し、次いで縦方向に延伸することである。
【0024】
逐次二軸延伸法において先ず幅方向に延伸し、次いで縦方向に延伸することでフイルムの屈折率が幅方向の屈折率Nyより長手方向の屈折率Nxを大きくすることが可能となり、良好なひねり性および折り曲げ性を具備することが可能となる。
【0025】
本発明において、フイルム密度を好適範囲内にするためには、同時ニ軸延伸法または逐次二軸延伸法等のニ軸延伸を行い次いで熱固定する際に、該延伸フイルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する方法が用いられる。この場合熱処理温度は60℃〜120℃、より好ましくは80℃〜100℃の範囲で時間は0.5秒〜30秒の範囲で行うのが好ましい。さらに熱処理温度から冷却過程で長手方向および/または好ましくは幅方向に対して0.1%〜10%の範囲で弛緩処理を行う。弛緩処理は1段でも良いし、多段で行っても良く、温度分布の変化を設けても良い。
【0026】
本発明の実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂フイルムには、目的に応じて例えばコロナ放電処理,プラズマ処理,オゾン処理,薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、公知のアンカー処理剤を用いたアンカー処理等が施されていてもよい。また、帯電防止用コート剤としては例えば、アルキルスルホン酸、グリセリンエステル、ポリグリセンエステル等であり、帯電防止性を付与できるものであれば特に限定されない。コート方法は、従来公知の方法であるバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法等などであれば特に限定はされない。さらには、インラインによるコーティングによるコートであってもかまわない。
【0027】
また、本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの120℃における熱収縮率は20%以上であるこが好ましい。
【0028】
本発明の金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムとは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの少なくとも片面に金属蒸着層を形成させたものである。金属蒸着層を形成するのに用いる金属としては、Al、Zn、Mg、Sn、Ti、In、Cr、Ni、Cu、Pb、Fe等が挙げられる。これらの中でAl、Zn、Mgが本発明の金属蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムに形成する金属蒸着層として好ましい。特に、Alが生産性の点から好ましい金属である。
【0029】
本発明の上記金属蒸着層の膜厚は、通常1〜500nm、好ましくは5〜200nmである。膜厚が1nm未満では包装材として必要である良好な外観が得ることが困難である。また500nmを超えて過度に膜厚を厚くすると、金属蒸着後のフイルムの平面性や生産性、経済性で不利となる。また、該二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムと金属蒸着層との密着強度はテープ剥離評価にて金属蒸着層が剥離しない強度であることが好ましい。この密着強度がテープ剥離評価にて金属蒸着層が剥離すると包装物をテープ止めした後にテープを剥ぎ取った際、金属蒸着層がテープ側に取られて外観を損ねるといった問題が発生する。ここで言うテープ剥離評価とはニチバン社製セロテープ(登録商標)(15mm幅)を用い、長さ50mmを金属蒸着層側に接着後、剥離角度90度にて瞬時にテープ剥がしを行うことであり、剥離したテープ側にとられた金属蒸着層の有無を目視により観察することで判定することができる。二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムと金属蒸着層の密着強度を上げるには例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、公知のアンカー処理剤を用いたアンカー処理等があるが特に限定はされない。
【0030】
本発明の上記金属蒸着層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着方法、あるいはCVD等の化学蒸着法等があり、適宜使用可能であるが特に限定はされない。
【0031】
本発明の上記金属蒸着層を形成させる方法としては例えば下記のような工程にて行うことができる。フイルムを巻取り式真空蒸着装置の巻き出し側にセットし、チャンバー内を4×10-3Paまで減圧し、高周波誘導過熱によりアルミニウムを蒸発させ、厚さ50nmのアルミニウム蒸着層を形成した。このときのフイルム供給速度は40m/分、チルロール温度は−15℃とし、本発明の金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得たが特に限定はされない。
【0032】
本発明は、その優れたひねり性および折り曲げ性により各種食品、文具、工業部品等の固形物からなる被包装物を個包装したひねり包装体とすることができる他、種々の包装形態の包装体とすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得られたフイルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0034】
試験方法
(1)ひねり性
テンチ社製ひねり包装機TA300型を用い、200個/分の速度にてひねり包装を行った。フイルムは1.5回転(540度)ひねられて個包装となる。その後若干の戻りがあった後のひねりが保持された角度を測定。(以下「ひねり保持角度」と表記する)
この保持角度が大きいほどひねり性は優れており、下記のとおり分類評価した。
○:ひねり保持角度が240度以上
△:ひねり保持角度が180度以上、240度未満
×:ひねり保持角度が180度未満
【0035】
(2)屈折率
試料の状態調節と測定温度を30℃とした以外はJIS−K−7142に準じアッベ屈折率計により、NaD線光で測定した。マウント液はヨウ化メチレンを用い、長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)及び厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。
【0036】
(3)Tm(融点)
ロボットDSC(示差走査熱量計)DSC−60(島津製作所(株)製)にTA60WSディスクステーション(島津製作所(株)製)を接続して測定した。試料10mgをアルミニウムパンに調整後、DSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパン)、この試料を10℃/分の速度で昇温し、285℃の温度で15分間加熱した後、液体窒素を用いて急冷処理した。その後この試料を10℃/分の速度で再昇温し、そのDSCチャートから融点(Tm)を測定した。
【0037】
(4)熱収縮率
熱収縮率評価は、収縮条件を120℃、15分とした以外は、JIS C−2318に順じて測定した。
【0038】
(5)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、 測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0039】
(6)フイルム密度
フイルム密度は硝酸カルシウムの溶解液を濃度調整して得た密度勾配管により25℃で測定した。
【0040】
(7)平均粒径
サンプルの水分散液をコールターカウンター マルチサイザーII(ベックマン・コール
ター株)を用い、体積中位径を測定した。
【0041】
(8)金属蒸着層の形成方法
フイルムを巻取り式真空蒸着装置の巻き出し側にセットし、チャンバー内を4×10-3Paまで減圧し、高周波誘導過熱によりアルミニウムを蒸発させ、厚さ50nmのアルミニウム蒸着層を形成した。このときのフイルム供給速度は40m/分、チルロール温度は−15℃とした。
【0042】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度は0.63dl/g)に対し0.03重量%となるようにシリカ(富士シリシア社製サイリシア(グレード:310P、形状:不定形、平均粒径:2.7μm)を添加剤として加えポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。該ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を押出し機にて溶融混練し、溶融混錬したものをTダイに供給し、Tダイ内部より樹脂温度285℃になるように押出し、更に温度25℃のキャスティングロールにてキャスティングし後、該フイルムを一方向(横方向)に90℃で3.2倍延伸して一軸延伸ポリエステルフイルムを得た。次いで、該フイルムを前記延伸方向に対して直角方向(縦方向)に80℃で4.0倍延伸し、80℃にて弛緩率を3%で10秒の熱処理し、厚さ16μmとなるニ軸延伸ポリエステル樹脂フイルムを得た。その後、該フイルム片面に巻取り式真空蒸着装置を用いて厚さ50nmのアルミニウム蒸着層を形成し、金属蒸着ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得た。
【0043】
(実施例2)
フイルムを一方向(横方向)に90℃で3.5倍延伸して一軸延伸ポリエステルフイルムを得た。次いで、該フイルムを前記延伸方向に対して直角方向(縦方向)に80℃で3.8倍延伸し、100℃にて弛緩率を5%で11秒の熱処理したこと以外は実施例1と同様にして金属蒸着ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得た。
【0044】
(比較例1)
フイルムを一方向(横方向)に90℃で4.0倍延伸して一軸延伸ポリエステルフイルムを得た。次いで80℃にて熱処理し、横一軸延伸フイルムとしたこと以外は実施例1と同様にして金属蒸着一軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得た。
【0045】
(比較例2)
フイルムを一方向(縦方向)に80℃で3.5倍延伸して一軸延伸ポリエステルフイルムを得た。次いで90℃にて熱処理し、縦一軸延伸フイルムとしたこと以外は実施例1と同様にして金属蒸着一軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得た。
【0046】
(比較例3)
フイルムを一方向(縦方向)に80℃で3.5倍延伸して一軸延伸ポリエステルフイルムを得た。次いで、該フイルムを前記延伸方向に対して直角方向(横方向)に90℃で4.0倍延伸し、100℃にて弛緩率を8%で12秒の熱処理したこと以外は実施例1と同様にして金属蒸着ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得た。
【0047】
(比較例4)
フイルムを一方向(縦方向)に80℃で3.5倍延伸して一軸延伸ポリエステルフイルムを得た。次いで、該フイルムを前記延伸方向に対して直角方向(横方向)に90℃で4.0倍延伸し、160℃にて弛緩率を10%で12秒の熱処理したこと以外は実施例1と同様にして金属蒸着ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムを得た。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の金属蒸着ひねり包装用二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムは、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルムの優れた特性維持しつつひねり包装や折り曲げ包装に適した良好なひねり性と折り曲げ性を具備し、さらには商品価値として高いバリア性と美装性も有し、実用性と経済性および生産性に優れており、ひねり包装用途分野に利用でき、ひねり包装の産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるフイルムであって、該フイルムの長手方向の屈折率Nxが幅方向の屈折率Nyより大きく、かつ該フイルム密度が1.34〜1.375g/cm3であることを特徴とする金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム。
【請求項2】
請求項1記載のフイルムであって、該フイルムの長手方向の屈折率Nxが1.60≦Nx≦1.68、かつ幅方向の屈折率Nyが1.59≦Ny≦1.64であることを特徴とする金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム。
【請求項3】
請求項1〜2記載のフイルムであって、該フイルムの120℃での長手方向における熱収縮率が20%以上であることを特徴とする金属蒸着ひねり包装用ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム。
【請求項4】
請求項1〜3記載のフイルムであって、該フイルムが被包装物をひねり包装かつ/または折り曲げ包装してなるものであることを特徴とするひねり包装体。

【公開番号】特開2006−305883(P2006−305883A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131757(P2005−131757)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】