説明

金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物

【課題】金属薄膜に対する優れた密着性を有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の提供。
【解決手段】脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器、電子機器、通信機器(例えば、携帯電話)等のような、電波を発信、受信する機器が多用されている。このような機器には、電磁波ノイズによる誤作動や人体への悪影響といった電磁波障害を防止する目的で、機器の筐体に電磁波シールドが設けられている場合がある。このような電磁波シールドの1つとして、機器の筐体となるプラスチック成形体の表面に、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属薄膜が真空メッキ等により成膜されているものが知られている。真空メッキ法は環境への悪影響が少なく、プラスチックに金属薄膜を成膜させることができる。
【0003】
真空メッキ法による金属薄膜を有するプラスチック成形体としては、例えば、特許文献1〜5に記載されている電磁波シールドプラスチック成形品が挙げられる。特許文献1〜5には、予め洗浄することなく、しかもプライマーコート層を設けずに、ABS樹脂、ABS樹脂−ポリカーボネートアロイのようなプラスチック成形体の表面に、高周波励起プラズマにより銅膜を配設し、次いで種々の金属膜を配設してなる電磁波シールドプラスチック成形品が記載されている。
しかしながら、プラスチック成形体の材料としては、耐衝撃性、耐熱性、耐候性等の観点からポリカーボネートやナイロンが用いられるようになり、このような材料のプラスチック成形体は、成形体と金属薄膜との密着性が低いという問題があった。
この問題を解決することを目的として、特許文献6には、「ABS樹脂、ポリカーボネート、およびABS/PC系ポリマーアロイのいずれかで作られた成形品に、膜厚が0.2〜1.2μmとなるように、ポリウレタン樹脂をアンダーコートとして塗布し、乾燥し、励起放電し、該アンダーコート上に金属薄膜を真空成膜することを特徴とする電磁波シールド膜の製造方法。」が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−145396号公報
【特許文献2】特開平6−157797号公報
【特許文献3】特開平6−240027号公報
【特許文献4】特開平6−240034号公報
【特許文献5】特開平6−240035号公報
【特許文献6】特開2003−112388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、特許文献6に記載されている電磁波シールド膜の製造方法により得られる電磁波シールド膜は耐熱性、耐久性に劣ること、さらに、これらの原因が金属薄膜とアンダーコートとの密着性の低さにあることを見出した。
【0006】
また、本出願人は、以前に、プラスチック成形品の表面と真空蒸着により成膜される金属蒸着膜との密着性、特に耐湿熱性に優れるアンダーコート剤として、ウレタンプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、潜在性硬化剤(C)と、溶剤(D)とを含有する、金属蒸着膜のアンダーコート剤を提案している(特願2004−147792号)。しかし、本発明者は、このようなアンダーコート剤について、金属薄膜に対する密着性に改善の余地があることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、金属薄膜に対して優れた密着性を有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造のウレタンプレポリマーと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する組成物が、金属薄膜に対して優れた密着性を有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物となりうることを知見し、この知見に基づき本発明を完成させたのである。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)〜(6)を提供する。
(1)脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
(2)前記ウレタンプレポリマーAが、ポリカーボネートポリオールと、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物との反応により得られうるウレタンプレポリマーA1である上記(1)に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
(3)前記脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が、テトラメチルキシリレンジイソシアネートである上記(2)に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
(4)前記ウレタンプレポリマーAとして、さらに、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個以上有するウレタンプレポリマーA2を含有する上記(2)または(3)に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
(5)前記硬化剤が、イミンおよび/またはポリチオールである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
(6)前記イミンが、下記式(1)で表されるケトンおよび/または下記式(2)で表されるケトンとアミンとを反応させることにより得られうるものである請求項5に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【0010】
【化2】

【0011】
〔式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R4はRまたはR2と結合して環を形成してもよい。ただし、R4がR2と結合して環を形成し、さらに、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、前記環に含まれる炭素原子が、R2またはR4と二重結合で結合する場合、R3は存在しない。式(2)中、R5、R6は、それぞれ独立に、炭素数1以上の炭化水素基を表し、R5とR6は、お互いに結合して環を形成してもよい。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、金属薄膜に対して優れた密着性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する組成物である。
【0014】
脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAについて以下に説明する。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に用いられるウレタンプレポリマーAは、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。
本発明において、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基は、下記式(3)で表される。
【0015】
【化3】

【0016】
式中、Raは、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができる有機基を表し、Rbは酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができる有機基または水素原子を表し、RaとRbとは同一でも異なっていてもよく、RaはRbと結合して環を形成することができる。
イソシアネート基が結合している脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子は、ウレタンプレポリマーAの他の炭素原子に結合する。
aが有機基でありRbが水素原子である場合、イソシアネート基が結合する炭素原子は脂肪族第二級炭素原子となる。Ra、Rbがそれぞれ独立に有機基の場合、イソシアネート基が結合する炭素原子は脂肪族第三級炭素原子となる。
【0017】
有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。有機基は、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができ、具体的には例えば、カルボニル基、尿素基(カルバミド基)、イソシアネート基のような官能基;エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合のような結合を含むことができる。
【0018】
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、例えば、フェニル基;ナフタレン、アントラセンのような縮合多環炭化水素から水素原子を少なくとも1個除いた基;フラン、チオフェン、ピロール、ピリジンのような複素環から水素原子を少なくとも1個除いた基が挙げられる。アリール基はフェニル基であるのが、強度、接着性の観点から好ましい態様の1つとして挙げられる。
aがRbと結合して環を形成する場合、形成されうる環としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基のような脂環族炭化水素基が挙げられる。
中でも、RaおよびRbは、メチル基であるのが好ましい態様の1つである。
【0020】
脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基は、貯蔵安定性、硬化性、密着性、作業性の観点から、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基であるのが好ましい。式(3)中のRaおよびRbがいずれもメチル基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0021】
ウレタンプレポリマーAは、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を少なくとも1個有するものであればよい。中でも、貯蔵安定性、硬化性、密着性の観点から、ウレタンプレポリマーAは、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を2個以上有するのが好ましく、2〜4個有するのがより好ましい。また、ウレタンプレポリマーAのイソシアネート基は、すべて脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているのが、貯蔵安定性、硬化性の観点から好ましい。
ウレタンプレポリマーAにおいて、イソシアネート基に結合している脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子以外の構造は特に制限されない。
【0022】
ウレタンプレポリマーAは、その製造について特に制限されず、例えば、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させることによって得られうるウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0023】
ウレタンプレポリマーAの製造の際に使用されうる脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化4】

【0025】
式中、Ra、Rbは、上記と同様であり、pは2以上の整数であり、Rcは酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができる、2価以上の炭化水素基を表し、Raは、Rcの一部またはRbと結合して環を形成することができる。
ヘテロ原子により2価以上の炭化水素基が含むことができる官能基や結合は、上記と同様である。
2価以上の炭化水素基は、特に制限されず、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、ベンゼン環のような芳香族炭化水素基が挙げられる。2価以上の炭化水素基は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせることができる。
aがRcの一部またはRbと結合して環を形成する場合、形成されうる環としては、例えば、シクロペンチレン、シクロへキシレンのような2価以上の脂環族炭化水素基が挙げられる。
pは、2以上の整数であり、密着性、合成の容易さの観点から、2〜4の整数であるのが好ましく、2または3であるのがより好ましい。
【0026】
式(4)で表される化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(水添MDI)、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、トルエンジイソシアネートの水素添加物(水添TDI)のような脂肪族第二級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;式(5)で表されるm−またはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、α−メチルスチレン骨格のイソシアネート化合物(TMI)を重合させて得られるポリイソシアネート化合物;およびこれらのポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ビュレット体、アダクト体が挙げられる。
【0027】
【化5】

【0028】
中でも、貯蔵安定性、反応速度を遅くしうるという観点から、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。特に、密着性、貯蔵安定性、可使時間、反応速度、作業性に優れる観点から、式(5)で表されるm−またはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、TMIを重合させて得られるポリイソシアネート化合物、TMIを重合させて得られるポリイソシアネート化合物のアダクト体が好ましい。
脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
ウレタンプレポリマーAの製造の際に使用されうるポリオール化合物について以下に説明する。
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば、特に制限されない。例えば、低分子多価アルコール類、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオールが挙げられる。
【0030】
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールのようなジオール;1,2,5−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリンのような3価アルコール類;ペンタエリスリトールのような4価以上のアルコール類;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンのようなアルカノールアミン類;ソルビトールのような糖類が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートポリオールは、カーボネート結合(−O−CO−O−)と2個以上のヒドロキシ基とを有するものであれば特に限定されない。例えば、ジアルキルカーボネートのアルコキシ基と、ポリオール化合物のヒドロキシ基から水素原子を除いた基とのエステル交換反応により得られうるものが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造の際に使用されうるポリオール化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造の際に使用されうるジアルキルカーボネートとしては、例えば、下記式(6)で表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
式中、R7、R8は、それぞれ独立に、炭素数12以下のアルキル基を表す。中でも、炭素数12以下のアルキル基は、密着性、貯蔵安定性、ぬれ性、作業性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基であるのが好ましい。
【0034】
式(6)で表されるジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネートポリオールは、その製造について、特に制限されない。例えば、従来公知の方法に従って行うことができる。上述のようなエステル交換反応によりポリカーボネートポリオールを製造する場合、エステル交換反応は触媒の存在下で行うことができる。使用されうる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物;水酸化カリウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物;ナトリウムメチレート、カリウムメチレート、チタンテトライソプロピレート、ジルコニウムテトライソプロピレートのような金属アルコレートが挙げられる。
【0036】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールのような炭素数2〜10の鎖状脂肪族炭化水素化合物のジオール体から得られうるポリカーボネートポリオール、シクロヘキサンジオールのような炭素数3〜10の脂環式炭化水素化合物のジオール体から得られうるポリカーボネートポリオールが挙げられる。中でも、密着性、ぬれ性、原料の入手のしやすさの観点から、炭素数2〜10の脂肪族炭化水素化合物のジオール体から誘導されるポリカーボネートポリオールであるのが好ましい。
また、ポリカーボネートポリオールは、密着性、ぬれ性の観点から、その重量平均分子量が1000以上であるのが好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、密着性、ぬれ性の観点から、炭素数6以上の鎖状脂肪族炭化水素化合物のジオール体から誘導され、分子量が1000以上のものであるのがより好ましい。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、HO〔(CH26−O−C(=O)−O〕m(CH26−OH(mは、2〜50の整数である。)が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子多価アルコール類および/または芳香族ポリオール類から導かれるものが挙げられる。低分子多価アルコール類は特に限定されず、例えば、上述の低分子多価アルコール類と同様のものが挙げられる。芳香族ポリオール類としては、例えば、キシリレングリコール、スチレングリコールのようなモノフェニル系グリコール;4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール、下記に示すような、ビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のようなビスフェノール骨格を有するジオール;ピロガロール、ピロログルシノールのような3価フェノール類が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
ポリエーテルポリオールはその製法について特に制限されない。例えば、低分子多価アルコール類および芳香族ポリオール類からなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランのようなアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られうるものが挙げられる。
【0040】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオールおよびビスフェノールA(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)からなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加させることにより得られうるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0041】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子多価アルコール類および/または芳香族ポリオール類と多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール)、ラクトン系ポリオールが挙げられる。
縮合系ポリエステルポリオールの製造の際に使用されうる低分子多価アルコール類および芳香族ポリオール類は、ポリエーテルポリオールの製造の際に使用されうるものと同様である。
縮合系ポリエステルポリオールの製造の際に使用されうる多塩基性カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸のような低分子カルボン酸;オリゴマー酸;ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコールとの反応生成物のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
ラクトン系ポリオールとしては、例えば、プロピオンラクトン、バレロラクトンのような開環重合体が挙げられる。
【0042】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ビスフェノール骨格を有するポリエステルポリオールが挙げられる。このようなポリエステルポリオールは、例えば、ビスフェノール骨格を有するジオールと多塩基性カルボン酸と、必要に応じて低分子多価アルコール類とを反応させることにより得られうる。具体的には、例えば、ビスフェノールAとヒマシ油とから得られるポリエステルポリオール、ビスフェノールAとヒマシ油とエチレングリコールとプロピレングリコールとから得られうるものが挙げられる。
【0043】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールのような炭素炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオールが挙げられる。
【0044】
中でも、ポリカーボネートポリオールが、金属薄膜との密着性がより優れ、接着強度、耐水性、耐久性という観点から好ましい。
ウレタンプレポリマーAの製造の際に使用されうるポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
ウレタンプレポリマーAの製造の際に使用されうるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との混合比は、ポリオール化合物中のヒドロキシ基に対するポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が1.3〜2.5であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。このような範囲である場合、ウレタンプレポリマーAの粘度が適度となり、硬化物の伸びに優れる。
【0046】
ウレタンプレポリマーAの製造としては、例えば、上述の量比のポリオール化合物と脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを、50〜100℃で加熱しかくはんして反応させる方法が挙げられる。必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0047】
ウレタンプレポリマーAの製造の際に使用されうるポリオール化合物と脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物との組合せは特に制限されない。中でも、ウレタンプレポリマーAは、密着性、乾燥後のタック、貯蔵安定性、ぬれ性、耐水性、作業性、硬化性の観点から、ポリカーボネートポリオールと、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させることによって得られうるウレタンプレポリマー(以下、「ウレタンプレポリマーA1」という。)であるのが好ましい。
【0048】
ウレタンプレポリマーA1としては、例えば、TMXDIとポリカーボネートポリオールとの反応により得られうるウレタンプレポリマー、水添XDIとポリカーボネートポリオールとの反応により得られうるウレタンプレポリマー、TMXDIとポリエステルポリオールとの反応により得られうるウレタンプレポリマーが挙げられる。中でも、貯蔵安定性、硬化後の強度、被着体に対する密着性、耐水性、耐久性に優れ、ゲル化しにくいという観点から、TMXDIとポリカーボネートポリオールとの反応により得られうるウレタンプレポリマーが好ましい。
【0049】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物において、ウレタンプレポリマーAとして、ウレタンプレポリマーA1のほかに、さらに、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個以有するウレタンプレポリマーA2を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。中でも、ウレタンプレポリマーA1が脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を2個有するものである場合に、ウレタンプレポリマーAとして、さらに、ウレタンプレポリマーA2を含有するのが好ましい。なぜなら、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個以有するウレタンプレポリマーA2は三次元架橋しうるので、ウレタンプレポリマーA2を含有することによって、得られうる金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は密着性により優れ、硬化性、接着強度、耐久性、耐水性に優れるものとなりうるからである。
【0050】
ウレタンプレポリマーA2は、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個以有するものであれば特に制限されない。例えば、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物とを反応させることにより得られうるものが挙げられる。
【0051】
ウレタンプレポリマーA2の製造の際に用いられうる脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ウレタンプレポリマーAの製造の際に用いられうる脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と同様のものが挙げられる。
【0052】
ウレタンプレポリマーA2の製造の際に用いられうるヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物について以下に説明する。
ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物は、特に制限されない。例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン、1,2,5−ヘキサントリオールのような3価アルコール類;ペンタエリスリトールのような4価以上のアルコール類;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンのようなアルカノールアミン類;ピロガロールおよびピロログルシノールのような3価フェノール類からなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランのようなアルキレンオキサイドのなかの少なくとも1種を付加して得られるポリオール、ポリアミンが挙げられる。
中でも、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,5−ヘキサントリオールが、硬化性、接着性、耐水性、耐久性、原料の入手のしやすさの観点から好ましい。
ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物と脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物との混合比は、ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物中のヒドロキシ基に対する脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が1.3〜2.5であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。このような範囲である場合、ウレタンプレポリマーの粘度が適度であり、硬化物の伸びが優れている。
【0054】
ウレタンプレポリマーA2は、その製造について特に制限されない。例えば、上述の量比のヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物と脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを、50〜100℃で加熱しかくはんして製造する方法が挙げられる。必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0055】
ウレタンプレポリマーA2は、硬化性、接着性の観点から、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリスリトールとテトラメチルキシレンジイソシアネートとを反応させることにより得られうるものが好ましい。具体的には、例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とm−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)とを反応させることにより得られうる式(7)で表される化合物、1,1,1−トリメチロールプロパンとp−テトラメチルキシレンジイソシアネートとを反応させることにより得られうる化合物、α−メチルスチレン骨格のイソシアネート化合物(TMI)を重合して得られるポリイソシアネート化合物およびこれらのポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体が挙げられる。
【0056】
【化8】

【0057】
中でも、式(7)で表される化合物、TMXDIとTMPとのアダクト体が、硬化性、硬化後の強度、貯蔵安定性、密着性の観点から好ましい。
【0058】
ウレタンプレポリマーA2は、その重量平均分子量が1500以下であるのが、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の硬化後の架橋密度が上がり、密着性がより優れるという理由から好ましく、300〜1000であるのがより好ましい。
【0059】
ウレタンプレポリマーA2の含有量は、ウレタンプレポリマーA中、1〜100質量%であるのが、硬化性、硬化後の強度、貯蔵安定性、被着体との密着性、金属薄膜との密着性、耐久性の観点から、好ましい。
【0060】
ウレタンプレポリマーAが、さらに、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個以上有するウレタンプレポリマーA2を含有することによって、得られうる金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は硬化性、特に、貯蔵安定性、被着体との密着性に優れ、ゲル化しにくくなりうる。
【0061】
ウレタンプレポリマーAは、取扱いの観点から室温で液状であるのが好ましい。
ウレタンプレポリマーAは、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基のほかに、例えば、ヒドロキシ基、酸無水物基、アミノ基、潜在性アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基のような基を分子内に有することができる。これらのようなイソシアネート基と反応し架橋できる基を有する場合、得られうる硬化物の架橋密度が向上し、物性に優れる。
【0062】
脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基はイソシアネート基に比べて立体障害が大きく反応性が低い。このため、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAを含有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、貯蔵安定性、乾燥後のタック、塗布時の作業性、硬化性に優れ、ゲル化しにくい。
【0063】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAの他に、第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(以下、「ウレタンプレポリマーB」ということがある。)を含有することができる。このようなウレタンプレポリマーとしては、例えば、第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られうるものが挙げられる。
【0064】
ウレタンプレポリマーBの製造の際に使用されうる、第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)のような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;H6XDI(水添XDI)のような脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。中でも、密着性、貯蔵安定性、反応性の観点から、HDI、XDI、水添XDIであるのが好ましい。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
ウレタンプレポリマーBの製造の際に使用されうるポリオール化合物は、特に制限されない。例えば、ウレタンプレポリマーAの製造の際使用されうるポリオール化合物と同様のものが挙げられる。中でも、硬化性、密着性、貯蔵安定性の観点から、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、1,2,5−ヘキサントリオールが好ましい。ポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、その製法について特に制限されない。例えば、ウレタンプレポリマーAと同様の方法で製造することができる。
第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとしては、例えば、HDIとトリメチロールプロパンとの反応により得られうるもの、HDIのイソシアヌレート体、HDIのビュレット体、水添XDIとトリメチロールプロパンとの反応により得られうるものが挙げられる。中でも、密着性、硬化後の柔軟性、硬化性の観点から、HDIとトリメチロールプロパンとの反応により得られうるものが好ましい。
第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの含有量は、ウレタンプレポリマーA100質量部に対して、1〜100質量部であるのが、貯蔵安定性、密着性の観点から好ましい。
第一級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することにより、得られうる金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、金属薄膜との密着性、貯蔵安定性、硬化速度に優れる。
【0067】
エポキシ樹脂について以下に説明する。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物であれば特に限定されない。エポキシ樹脂は、室温で固体であり、かつ、エポキシ当量が350以上であるのが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いる場合、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、常温で迅速に硬化し、作業性に優れたものとなりうる。
【0068】
通常、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤中の活性水素を含有する官能基(例えば、アミノ基)との反応速度は、ウレタンのイソシアネート基と硬化剤中の活性水素を含有する官能基との反応速度と比較して遅いため、室温での硬化は長い時間を要する。また、硬化させる時間が短いと、表面にタックが残る場合があった。
これに対して、室温で固体であり、かつ、エポキシ当量が350以上のエポキシ樹脂を含有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の場合、塗布後室温(20〜30℃)の環境下で、比較的短い時間(例えば、数分以内)で表面のタックがなくなりうる。このようなタックの特性により優れる点から、エポキシ当量は350〜5000がより好ましく、400〜3000がさらに好ましい。
【0069】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に用いられうるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、三官能型、テトラフェニロールエタン型のような多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;下記式(8)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンのようなグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;下記式(9)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を有するエポキシ化合物(例えば、ジシクロペンタジエンとm−クレゾールのようなクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる製造方法によって得られうるエポキシ化合物)が挙げられる。
【0070】
【化9】

【0071】
【化10】

【0072】
式(9)中、mは、0〜15の整数を表す。
【0073】
また、エポキシ樹脂としては、例えば、東レ・ファインケミカル社製のフレップ10のようなエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)のようなゴムを含有するゴム変性エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ソルビトール型エポキシ樹脂、ポリグリセロール型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂のような分子内にアセトアセテート基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0074】
中でも、エポキシ樹脂は、骨格に芳香環を有するエポキシ樹脂であるのが、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の耐熱性が高くなり、金属薄膜への密着性が良好となる点から好ましい。
また、被着体表面との密着性に優れる点からゴム変性エポキシ樹脂が好ましい。ゴム変性エポキシ樹脂は、両末端に官能基を有するゴムの両末端にエポキシ樹脂を反応して得られる。
【0075】
また、得られうる金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物がより迅速に硬化できる点から、分子内にアシルアセテート基を有するエポキシ樹脂が好ましい。分子内にアシルアセテート基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、アシルアセテート骨格を有する低分子量化合物と、エポキシ樹脂中のヒドロキシ基とのエステル交換反応、末端に置換基を有する1,3−ジケトン基を有する化合物と、エポキシ樹脂中のヒドロキシ基とを反応させる方法によって得られうるものが挙げられる。
エポキシ樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
エポキシ樹脂の含有量は、ウレタンプレポリマーA100質量部に対して、10〜90質量部であるのが好ましく、30〜80質量部であるのがより好ましい。このような範囲の場合、密着性により優れ、硬化物の耐久性、耐水性に優れる。
【0077】
フェノール樹脂について以下に説明する。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に用いられるフェノール樹脂は、特に制限されない。例えば、フェノール類とアルデヒド類との付加縮合反応で得られうる熱硬化性の樹脂が挙げられる。このようなフェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させてノボラックとしこれを硬化剤で硬化させて得られうるもの、フェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させてレゾールとしこれを加熱して硬化させて得られうるものが挙げられる。
【0078】
フェノール樹脂の製造の際に使用されうるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、p−t−ブチルフェノールような1価のフェノール類;ビスフェノールA、レゾルシノールのような多価フェノール類が挙げられる。
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0079】
また、フェノール樹脂として、例えば、下記式(10)で表される化合物、式(11)で表される化合物のようなメチロール系フェノール樹脂が挙げられる。メチロール系フェノール樹脂を縮合させる方法は特に制限されず、例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

【0082】
また、フェノール樹脂として、例えば、芳香族炭化水素樹脂、ジメトキシ−p−キシレン、ジシクロペンタジエン、マグネシウムキレートで変性されたものを用いることができる。
中でも、式(10)で表される化合物および/または式(11)で表される化合物が、密着性、耐久性、原料の入手のしやすさの観点から好ましい。
フェノール樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
フェノール樹脂の含有量は、ウレタンプレポリマーA100質量部に対して、0.01〜100質量部であるのが好ましく、0.5〜10質量部であるのがより好ましい。このような範囲の場合、金属薄膜との密着性により優れ、貯蔵安定性、耐久性、硬化性に優れる。
【0084】
硬化剤について以下に説明する。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に用いられる硬化剤は、ウレタンプレポリマーおよび/またはエポキシ樹脂に対して使用されうるものであれば特に制限されない。例えば、イミン、ポリチオール、ポリアミンが挙げられる。
硬化剤は、ウレタンプレポリマーおよび/またはエポキシ樹脂に対する硬化性、配合してから塗布するまでの作業性、貯蔵安定性の観点から、イミンおよび/またはポリチオールであるのが好ましい。
【0085】
イミンについて以下に説明する。
硬化剤として用いられるイミンは、エポキシ樹脂および/またはウレタンプレポリマーの潜在性硬化剤であって、ケトンまたはアルデヒドとアミンとを反応させることによって得られうる、イミノ結合(>N=C−)を有する化合物である。イミンは、加水分解によってアミンを生成し、生成したアミンはウレタンプレポリマーおよび/またはエポキシ樹脂に対する硬化剤として作用する。
【0086】
イミンとしては、例えば、下記式(1)で表されるケトンおよび/または下記式(2)で表されるケトンとアミンとを反応させることにより得られうるケチミンが好適に挙げられる。このようなケチミンを含有する場合、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の保存中、エポキシ樹脂および/またはウレタンプレポリマーとケチミンとの反応が抑制され、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物はゲル化しにくく、安定性に優れる。
【0087】
【化13】

【0088】
式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R4はRまたはR2と結合して環を形成してもよい。ただし、R4がR2と結合して環を形成し、さらに、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、前記環に含まれる炭素原子が、R2またはR4と二重結合で結合する場合、R3は存在しない。なお、R4が、RまたはR2と結合して環を形成する場合、形成されてなる環状炭化水素としては、例えば、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0089】
4で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
【0090】
式(2)中、R5、R6は、それぞれ独立に、炭素数1以上の炭化水素基を表し、R5とR6は、お互いに結合して環を形成することができる。なお、R5とR6が結合して環を形成する場合、形成されてなる環状炭化水素としては、例えば、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0091】
5、R6は炭素数1〜5の炭化水素基であるのが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基が挙げられる。
【0092】
式(1)で表されるケトンとアミンとを反応させて得られうるケチミンにおいて、イミノ結合(>C=N−)を構成する炭素原子(以下、「イミン炭素原子」ということがある。)のα位の炭素原子の一方は、2個または3個の置換基を有し、いわば分岐炭素原子となっている。このように式(1)で表されるケトンから得られうるケチミンは、イミン炭素原子が、嵩高い基と比較的嵩の小さな基とを有するので、硬化性、可使時間に優れる。
【0093】
式(2)で表されるケトンとアミンとを反応させて得られうるケチミンにおいて、イミン炭素原子のα位の2つの炭素原子は、分岐炭素原子ではなくメチレン基であり、さらに、炭素数1以上の炭化水素基(R5とR6)がそれぞれのメチレン基に結合している。このように式(2)で表されるケトンから得られうるケチミンは、イミン炭素原子が2個の炭素数2以上の炭化水素基を有するので、硬化性、可使時間に優れる。
【0094】
式(1)で表されるケトンとしては、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチル−t−ブチルケトン(MTBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルペンチルケトン、エチルペンチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、メチルシクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノンが挙げられる。これらのうち、MIBK、MTBK、MIPKが好ましい。
【0095】
式(2)で表されるケトンとしては、例えば、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ブチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。これらのうち、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトンが好ましい。
ケトンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
ケチミンの原料であるアミンとしては、例えば、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンが挙げられる。
【0097】
ポリアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタンのような芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)、m−キシリレンジアミン(MXDA)のような脂肪族ポリアミン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミンのような脂環式ポリアミン;ノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)のようなノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、ポリプロピレングリコール(PPG)を骨格に持つサンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400が挙げられる。
【0098】
アミンは、これらのうち、1,3BAC、NBDA、MXDA、ジェファーミンEDR148(商品名)、ポリアミドアミンであるのが好ましい。
アミンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0099】
式(1)で表されるケトンおよび/または式(2)で表されるケトンとアミンとを反応させることにより得られうるケチミンとしては、例えば、MIBKとプロピレンジアミンとから得られるもの、MIPKおよび/またはMTBKとジェファーミンEDR148とから得られるもの、MIPKおよび/またはMTBKと1,3BACとから得られるもの、MIPKおよび/またはMTBKとNBDAとから得られるもの、MIPKおよび/またはMTBKとMXDAとから得られるもの、MIPKおよび/またはMTBKとポリアミドアミンとから得られるもの、ジエチルケトンとMXDAとから得られるものが挙げられる。
【0100】
これらのうち、貯蔵安定性、硬化性、作業性の観点から、MIPKまたはMTBKと1,3BACとから得られるもの、MIPKまたはMTBKとNBDAとから得られるもの、MIPKまたはMTBKとMXDAとから得られるものが好ましい。
【0101】
また、イミンとしては、例えば、アルデヒドとアミンとを反応させることにより得られうるアルジミンが挙げられる。アルジミンの製造時の使用されるアルデヒドとしては、例えば、ピバルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、シクロヘキサンカルボクスアルデヒドが挙げられる。アルジミンの製造時の使用されるアミンとしては、例えば、ケチミンの原料に使用されうるアミンと同様のものが挙げられる。アルジミンとしては、例えば、ピバルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、およびシクロヘキサンカルボクスアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルデヒドと、ノルボルナンジアミン(NBDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、ジェファーミンEDR148およびm−キシリレンジアミン(MXDA)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンとの組み合わせから選ばれるものが好適に挙げられる。
イミンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
イミンは、その製造について、特に制限されず、例えば、ケトンまたはアルデヒドとアミンとを、ベンゼン、トルエン、キシレンのような溶媒の存在下で、または、溶媒を使用せずに、加熱還流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることにより得ることができる。
【0103】
ポリチオールについて以下に説明する。
硬化剤として用いられうるポリチオールは、メルカプト基(−SH)を2個以上有する化合物である。メルカプト基は、例えば、ポリチオールの末端、骨格内に結合することができる。
ポリチオールは、特に制限されない。ポリチオールは、骨格内に、例えば、カルボニル基、尿素基(カルバミド基)、イソシアネート基のような官能基;エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合のような結合を有することができる。
ポリチオールとしては、メルカプト基を2個有するチオール、メルカプト基を3個以上有するチオールが挙げられる。
【0104】
メルカプト基を2個有するチオールとしては、例えば、エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール、ヘプタンジチオール、オクタンジチオール、ノナンジチオール、デカンジチオール、ベンゼンジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−メルカプト−3−チアヘキサン−1,6−ジチオール、5,5−ビス(メルカプトメチル)−3,7−ジチアノナン−1,9−ジチオール、5−(2−メルカプトエチル)−3,7−ジチアノナン−1,9−ジチオール、ジメルカプトプロパノール、ジチオエリトリトールが挙げられる。
【0105】
メルカプト基を3個以上有するチオールとしては、例えば、ポリエーテルの末端にメルカプト基を導入したポリチオール(例えば、東レ・ファインケミカル社製、QE−340M)、トリチオグリセリン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)メシチレン、トリス(メルカプトメチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、2,4,5−トリス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオランのようなトリチオール;ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、テトラメルカプトブタン、ペンタエリトリチオールのようなテトラチオールが挙げられる。
【0106】
中でも、硬化剤としてのポリチオールは、硬化性、接着強度の観点から、メルカプト基を3個以上有するチオールであるのが好ましく、ポリエーテルの末端にメルカプト基を導入したポリチオール、トリチオグリセリンであるのがより好ましい。
また、ポリチオールは、脂肪族ポリチオエステル、芳香族環ポリチオエーテルであるのが好ましい。脂肪族ポリチオエステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートが挙げられる。芳香族環ポリチオエーテルとしては、例えば、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)メシチレン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼンが挙げられる。
硬化剤としてのポリチオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0107】
硬化剤の含有量は、(本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に含有されうる全ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基+エポキシ樹脂中のエポキシ基)/(硬化剤中の活性水素を有する官能基)で表される当量比が、0.1〜3.0となるのが好ましく、0.3〜1.5となるのがより好ましい。このような範囲の場合、硬化性、耐久性に優れる。
イミンの含有量は、(本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に含有されうる全ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基+エポキシ樹脂中のエポキシ基)/(イミンから生成しうるアミン)で表される当量比が、0.3〜3.0となるのが好ましく、0.5〜1.5となるのがより好ましい。このような範囲の場合、硬化性、耐久性に優れる。
ポリチオールの含有量は、(本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物に含有されうる全ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基+エポキシ樹脂中のエポキシ基)/(メルカプト基)で表される当量比が、0.1〜3.0となるのが好ましく、0.3〜1.5となるのがより好ましい。このような範囲の場合、硬化性、耐久性、密着性に優れる。
【0108】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、塗布性の観点から、溶剤を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。溶剤としては、ウレタンプレポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂ならびに硬化剤に対して不活性であれば特に制限されない。例えば、従来公知の各種の溶剤を用いることができる。
具体的には、ベンゼン、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類が挙げられる。
【0109】
中でも、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンが、沸点が低く乾きが速いという理由から好ましい。
溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
溶剤は、充分に乾燥または脱水してから用いるのが好ましい。
【0110】
溶剤は、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の固形分濃度が、1〜30質量%となるように添加されるのが好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。このような範囲の場合、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の塗布性が優れる。
【0111】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物において、さらに、硬化剤の触媒を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
用いられうる触媒としては、例えば、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸のようなカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートのようなリン酸類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートのような有機金属類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP−30)のような第三級アミンが挙げられる。
【0112】
硬化剤としてイミンを使用する場合、触媒はイミンの加水分解を促進するものが好ましい。例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であるのが、反応性、相溶性の観点から、好ましい。
また、硬化剤としてポリチオールを使用する場合、触媒は2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールであるのが、反応性、作業性の観点から、好ましい。
触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
触媒の含有量は、硬化剤100質量部に対して、0.01〜30質量部であるのが好ましく、0.1〜20質量部であるのがより好ましい。このような範囲の場合、作業性および密着性のバランスに優れる。
【0114】
触媒を含有する場合、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を塗布した後、硬化剤の湿気(水)による加水分解、硬化反応が促進され、作業性、密着性、硬化性に優れる。
【0115】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の成分以外に、必要に応じて、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、シランカップリング剤が挙げられる。添加剤の量は、例えば、ウレタン−エポキシ樹脂組成物に用いられうる量であれば特に制限されない。
【0116】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛のような無機充填剤;カーボンブラックのような有機充填剤が挙げられる。また、充填剤を、例えば、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルウレタン化合物で処理したものを使用することができる。
【0117】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体のような親水性化合物が挙げられる。
【0118】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、臭素および/またはリン含有化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0119】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシラン、イミノシラン、これらの反応物、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物が挙げられる。
添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0120】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、その製造について、特に制限されない。ウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤と、必要に応じて用いられる、ウレタンプレポリマーB、溶剤、触媒、添加剤とを、例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機により混合する方法が挙げられる。
【0121】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、1液型または2液型として使用することができる。
1液型の場合は、上記のように金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を調製して、これを容器に保存することができる。脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAは貯蔵安定性が優れるため、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を1液型とすることが可能である。
【0122】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を2液型とする場合、例えば、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAとエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを含む第1液と、硬化剤を含む第2液とを別々に調製して、保存し、使用する際に、第1液と第2液とを同時に添加し混合して使用することができる。脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーA、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および、硬化剤以外の、ウレタンプレポリマーB、溶剤、触媒、添加剤は、第1液および/または第2液に添加することができる。
【0123】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、例えば、基材に設けられる金属薄膜のアンダーコーティング剤として用いることができる。
基材(被着体)としては、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニルのようなプラスチックが挙げられる。基材は、その形態について特に制限されず、例えば、成形体(以下、「プラスチック成形体」という。)、フィルム、シート、織物、繊維、メッシュが挙げられる。
【0124】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を使用して基材上に金属薄膜を設ける方法としては、例えば、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を基材の表面に塗布する塗布工程と、次いで、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の層の上に金属薄膜を形成させる金属薄膜形成工程とを具備する方法が挙げられる。
【0125】
まず、塗布工程において、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を基材の表面に塗布する。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤接着剤を基材に塗布する方法は、特に制限されず、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、ディップ塗布が挙げられる。
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤接着剤の塗布量は、硬化性、作業性、密着性の観点から、1〜10g/m2であるのが好ましい。
【0126】
また、塗布工程において、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物が塗布された基材を乾燥させることができる。乾燥温度は、作業性、溶剤を使用している場合は溶剤の乾燥性、硬化速度、基材の安定性の観点から、20〜150℃であるのが好ましい。乾燥時間は特に制限されない。乾燥方法としては、例えば、循環式オーブンが挙げられる。
【0127】
次いで、金属薄膜形成工程において、金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の層の上に金属薄膜を形成する。
金属薄膜に使用されうる金属としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、黒色クロム、黒色ニッケル、錫合金、銅合金、ニッケル合金、金、金合金、銀、ロジウム、黒色ロジウム、パラジウム、白金が挙げられる。
金属薄膜は、その製造について、特に制限されず、例えば、電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ、真空メッキ、スパッタリング、イオンプレーティング、金属塗料の塗布が挙げられる。
このような製造方法によって、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物を使用して、金属薄膜が設けられた基材を得ることができる。金属薄膜は、例えば、電磁波シールド、電波受信用アンテナとして機能しうる。
【0128】
このような金属薄膜が設けられた基材の用途としては、例えば、携帯電話機、ゲーム機、コンピューター、テレビ、ディスプレイ、電子レンジのような家庭用電気機器、医療用電子機器、電子計測機器、自動車用電装部品が挙げられる。
【0129】
本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、金属薄膜に対して優れた密着性を有するものである。
このような金属薄膜に対する優れた密着性は、本発明の金属薄膜用アンダーコート剤組成物に含有されるフェノール樹脂と金属薄膜の金属とが、例えば、式(12)で表されるようなキレート構造を形成しうることにより発現すると本発明者は推察する。式(12)で表されるキレート構造は、フェノール樹脂として式(11)で表される化合物を使用し、かつ、金属として銅を使用した場合であり、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物と金属とのキレート構造はこのような構造に限定されない。なお、式(12)で表されるキレート構造において、式(11)で表されるフェノール樹脂はその端部が省略されている。
【0130】
【化14】

【0131】
また、本発明の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物において、硬化剤がポリチオールの場合、基材(例えば、上記のようなプラスチック)との密着性に優れる。特に基材の材料がナイロンである場合、ナイロンと金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物とを効果的に密着させることができる。
なお、上述のようなメカニズムはあくまでも本発明者の推定であり、仮にメカニズムが別であっても本発明の範囲内である。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の調製(実施例1〜11、比較例1〜3)
下記の成分を第1表に示す量比(質量部)で配合し、均一に混合して各組成物を調製した。
【0133】
2.金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物の評価
得られた各組成物について、以下に示す方法で、組成物の安定性、塗布後のタックおよび金属密着性の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0134】
(1)組成物の安定性
得られた組成物を、室温(23℃)、60RH%の条件下で3時間経過した後の各組成物の状態を目視で確認した。組成物が白濁していない場合を「○」、白濁している場合を「×」とした。白濁している組成物は、ゲル化しているといえる。
【0135】
(2)乾燥後のタック
ナイロン板(RENY1022H、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)の表面に得られた組成物を塗布して、60℃で30分間乾燥させた後、塗布面を指で触れたときのタックを観察した。
タックが全く無かったものを「○」、タックが少し残っていたものを「△」、タックが多く残っていたものを「×」とした。
【0136】
(3)金属密着性
金属密着性の評価は、碁盤目テープはく離試験により行った。
基板として、樹脂板の表面に銅を蒸着させた銅膜樹脂板を用いた。
得られた各組成物を、銅膜樹脂板の銅膜の表面に塗布し、60℃で30分間乾燥させた後、試験体の有効面に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を直角に保ち、瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の個数を調べた。完全に剥がれないで残った基盤目の個数が90〜100の場合を「○」、70〜89の場合を「△」、69以下の場合を「×」とした。
【0137】
【表1】

【0138】
第1表中で使用された各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンプレポリマー1:TMXDI−PCDプレポリマー(テトラメチルキシリレンジイソシアネートとポリカーボネートポリオールとから得られる、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を2個有するウレタンプレポリマー)、大都産業社製
・ウレタンプレポリマー2:サイセン3174(テトラメチルキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとから得られる、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個有するウレタンプレポリマー)、CYTEC社製
・ウレタンプレポリマー3:タケネートD−160N(ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとから得られるウレタンプレポリマー)、三井武田ケミカルズ社製
・ウレタンプレポリマー4:タケネートD−140N(MDIとポリカーボネートポリオールとから得られるウレタンプレポリマー)、三井武田ケミカルズ社製
・エポキシ樹脂:汎用ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EP4100E)、旭電化工業社製、エポキシ当量188
・フェノール樹脂1:メチロン、OxyChem社製
・フェノール樹脂2:スミライトレジンPR−11078、住友ベークライト社製
・ケチミン:下記式(13)で表される化合物
【0139】
【化15】

【0140】
式(13)で表される化合物の合成方法は、以下のとおりである。
ノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)と、メチルイソプロピルケトン(MIPK、クラレ社製)とを1/1.5の当量比で混合し、生成する水を除去しながら、150℃で10時間加熱、かくはんした。生成した水が理論量に達したところで反応を終了し、過剰なMIPKを減圧除去し、式(13)で表される化合物を得た。
【0141】
・ポリチオール:QE−340M、東レ・ファインケミカル社製
・触媒1:オレイン酸(LUNAC O−A、花王社製)
・触媒2:第三級アミンDMP−30(セイクオールTDMP、精工化学社製)
・溶剤:メチルエチルケトン(関東化学社製)
【0142】
第1表に示す結果から明らかなように、実施例の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、いずれも金属密着性に優れる。
これに対して、比較例1はフェノール樹脂を含有しないため、比較例2はエポキシ樹脂を含有しないため、金属密着性に劣る。また、比較例3に含有されるウレタンプレポリマー4は反応性が高く、組成物がゲル化してしまった。また、比較例3はフェノール樹脂を含まないため、乾燥後のタック、金属密着性に劣る。
また、実施例の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物は、いずれも、組成物の安定性、塗布後のタックに優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーAが、ポリカーボネートポリオールと、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物との反応により得られうるウレタンプレポリマーA1である請求項1に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が、テトラメチルキシリレンジイソシアネートである請求項2に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【請求項4】
前記ウレタンプレポリマーAとして、さらに、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を3個以上有するウレタンプレポリマーA2を含有する請求項2または3に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【請求項5】
前記硬化剤が、イミンおよび/またはポリチオールである請求項1〜4のいずれかに記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【請求項6】
前記イミンが、下記式(1)で表されるケトンおよび/または下記式(2)で表されるケトンとアミンとを反応させることにより得られうるものである請求項5に記載の金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物。
【化1】

〔式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R4はRまたはR2と結合して環を形成してもよい。ただし、R4がR2と結合して環を形成し、さらに、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、前記環に含まれる炭素原子が、R2またはR4と二重結合で結合する場合、R3は存在しない。式(2)中、R5、R6は、それぞれ独立に、炭素数1以上の炭化水素基を表し、R5とR6は、お互いに結合して環を形成してもよい。〕

【公開番号】特開2007−2050(P2007−2050A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181858(P2005−181858)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】